説明

テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法

【課題】 大量スケールであっても安定且つ収率良く、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法を提供する。
【解決手段】 フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)を主成分として含む原料ガスを、スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造する方法であって、下記工程(a)〜(c)の工程を有し、
(a)前記フロン21と前記フロン22とを、前記フロン21と前記フロン22とのモル比2/98〜80/20の割合で含む原料ガスを原料ガスの曇点超かつ400℃以下に加熱して供給する原料ガス供給工程、
(b)800℃〜1100℃に加熱したスチームを供給するスチーム供給工程、
(c)前記原料ガスを前記スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを得る反応工程、かつ前記工程(c)における前記原料ガスと前記スチームとの接触量が、前記原料ガスと前記スチームとのモル比で30/70〜2/98であることを特徴とするテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法に関する。より詳しくは、フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)を主成分として含む原料ガスから、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを同時に合成する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレン等の含フッ素エチレンは、含フッ素共重合体の重要な原料モノマーである。
【0003】
テトラフルオロエチレンやクロロトリフルオロエチレンの製造方法としては、フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)のような、分子内の同一炭素原子に塩素及び水素原子を結合するフルオロクロロ化合物を熱分解して、脱塩化水素・縮合し、それぞれテトラフルオロエチレンあるいは対称ジクロロジフルオロエチレンを単独で合成する反応が公知である(例えば、特許文献1参照)。熱分解反応は、分子の分解及び再結合を伴う複雑な反応であるため、多種類の副生物を伴う。
【0004】
また、異種のハイドロフルオロ化合物を同時に熱分解し、脱塩化水素させる場合、クロロトリフルオロエチレンを合成できることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、特許文献1と同様、熱分解反応であるために、テトラフルオロエチレンも生成する一方で、利用価値の少ない1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン(以下、「DDE」ともいう)や他の副生成物の生成も多いため、実用化はされていなかった。
【0005】
上記問題点を解決する方法として、ジフルオロクロロメタンとジクロロフルオロメタンとを適当な比率で同一反応相にて熱分解することにより、より好ましくは水蒸気存在下で熱分解することにより、DDE生成を抑制し、クロロトリフルオロエチレンを好収率で合成できる方法が提案されている(例えば、非特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許255573号
【特許文献2】特公昭40−2132号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】クロロジフルオロメタンの高温水蒸気または窒素共存熱分解によるテトラフルオロエチレン合成における希釈の影響、日本化学会誌、1978、(10)、1399〜1405ページ
【非特許文献2】クロロジフルオロメタンとジクロロフルオロメタンとの共熱分解によるクロロフルオロエチレン類の合成における原料組成の影響、日本化学会誌、1979、(2)、302〜304ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1〜2の方法では、実験室レベルの合成方法であって、これを大量スケールに適用したとしても再現性が得られないことが本発明者等の検討でわかった。
【0009】
テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレン等は、含フッ素共重合体の重要な原料モノマーであり需要も大きいことから、工業的に安定且つ収率良く製造できる方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)を特定の比率で主成分として含む原料ガスと、スチームとを、それぞれ特定の温度に加熱して、特定のモル比で接触させることにより、大量スケールであっても安定且つ収率良く、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)を主成分として含む原料ガスを、反応器中でスチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造する方法であって、下記工程(a)〜(c)の工程を有し、
(a)上記フロン21と上記フロン22とを、上記フロン21と上記フロン22とのモル比2/98〜80/20の割合で含む原料ガスを原料ガスの曇点超かつ400℃以下に加熱して供給する原料ガス供給工程、
(b)800℃〜1100℃に加熱したスチームを供給するスチーム供給工程、
(c)上記原料ガスを上記スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを得る反応工程、
前記工程(c)における前記原料ガスと前記スチームとの接触量が、前記原料ガスと前記スチームとのモル比で30/70〜2/98であることを特徴とするテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【0012】
(2)上記工程(c)における反応時の温度が770〜900℃である上記(1)に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【0013】
(3)上記工程(c)において、原料ガスとスチームとの接触時間が、0.03〜1秒である上記(1)または(2)に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【0014】
(4)上記工程(c)の後に、上記生成ガスを取り出し120℃以下に冷却する冷却工程(d)をさらに有する上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【0015】
(5)上記工程(d)において、上記生成ガスを120℃以下に冷却するまでの時間が10秒以下である上記(4)に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大量スケールであっても安定且つ収率良く、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法>
本発明のテトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう)及びクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう)の製造方法を以下に説明する。
【0018】
本発明のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法は、フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)を主成分として含む原料ガスを、スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造する方法であって、下記工程(a)〜(c)の工程を有し、
かつ工程(c)における原料ガスとスチームとの接触量が、上記原料ガスと上記スチームとのモル比で30/70〜2/98であることを特徴とする。
【0019】
(a)上記フロン21と上記フロン22とを、上記フロン21と上記フロン22とのモル比2/98〜80/20の割合で含む原料ガスを原料ガスの曇点超かつ400℃以下に加熱して供給する原料ガス供給工程。
(b)800℃〜1100℃に加熱したスチームを供給するスチーム供給工程。
(c)上記原料ガスを上記スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを得る反応工程。
【0020】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0021】
工程(a):原料ガス供給工程
本発明における工程(a):原料ガス供給工程は、上記フロン21と上記フロン22とのモル比(フロン21/フロン22)が2/98〜80/20の割合で含む原料ガスを用い、該原料ガスを曇点超かつ400℃以下に加熱して、上記フロン21と上記フロン22とを供給することを特徴とする。
【0022】
原料に用いる原料ガスには、フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)が主成分として含まれる。
なお、「主成分として含まれる」とは、反応に悪影響を与えなければ、窒素やアルゴン等の不活性ガス;本願の製造方法で得られた反応生成ガスより目的物を分離し、未反応のフロン22及びフロン21を主に含む混合ガス;等が含まれていてもよいことを示す。
【0023】
原料ガスにおけるフロン21とフロン22とのモル比は、2/98〜80/20であることが重要である。この範囲内であれば、転化率、選択率及び収率が望ましい範囲となる。より好ましくは、5/95〜60/40のモル比の割合である。
フロン21が少なすぎると生成するCTFEの収率が低くなり、精製工程のロスなどを考えるとCTFEの回収率が低く採算性が合わない。また、フロン21が多すぎるとフロン21の熱分解したカルベン同士が反応して得られるDDE等の副生成物が多くなり、TFE、CTFEをあわせた選択率が低下するため、これも採算性が悪い。このため、さらに好ましくは10/90〜30/70の混合モル比が特に好ましい。
しかし、DDE等の有効利用が可能な場合やCTFE/TFEの生産比率を意図的に制御する場合は、配合比率は理論的には自由に変更可能であり、ここに提示した縮減範囲に限定されるものではない。
【0024】
供給される原料ガスは、原料ガスの曇点超かつ400℃以下に加熱される。下限値未満であると液化する可能性があり、原料ガスとして適さない。また、上限値を超えると、供給される前、あるいは供給途中でフロン21及びフロン22が重合反応を起こしてしまう恐れがある。
供給される原料ガスは、供給圧力でフロン21が凝結する温度以上で400℃以下に加熱されることが好ましく、さらにはフロン21の沸点以上(常圧の場合は8.9℃)〜400℃以下に加熱されることが好ましい。また、より好ましくは50℃〜400℃であることが安定運転のためには良い。
【0025】
原料ガスの加熱方法としては、原料ガスの温度が原料ガスの曇点超かつ400℃以下の範囲となれば特に制限はないが、高温スチームによる加熱等が挙げられる。具体的には、例えば、原料ガスの加熱目標温度〜その加熱目標温度より50℃以上高い温度範囲の高温スチームを用いて、熱交換器のチューブ内を流れる原料ガスを短時間で規定の温度に昇温させる。
【0026】
なお、曇点の測定は、以下のように行う。
供給される原料ガスを真空減圧した圧力容器に仕込み、温度を徐々に下げて、気相部のガス組成を測定する。フロン21とフロン22は共沸しないので、フロン21の凝結が始まると気相部分の組成がフロン22が多くなるように変化する。この状態の開始温度をこの圧力での曇点とする。曇点以下の温度に下げることはガス組成の安定供給ができないことを意味する。
なお、曇点を測定するための圧力容器は、特に制限はないが、圧力容器全体が恒温となる恒温手段や圧力容器内を攪拌する攪拌手段等を有することが好ましい。
【0027】
工程(b):スチーム供給工程
本発明における工程(b):スチーム供給工程は、800℃〜1100℃に加熱したスチームを供給することを特徴とする。
【0028】
供給されるスチームは、800℃〜1100℃に加熱される。下限値未満であると原料混合ガスと接触しても原料混合ガスを充分に加熱できない可能性がある。また、上限値を超えると、原料混合ガスと接触させた際、温度にむらが発生しやすくなることから好ましくない。反応器に供給されるスチームは、800〜1100℃に加熱されることが好ましく、さらには850〜1000℃に加熱されることが好ましい。
スチームの加熱方法としては、スチームの温度が800℃〜1100℃の範囲となれば特に制限はないが、ボイラーで発生した高温蒸気をさらに熱量の高い天然ガス等の燃焼により加熱する方法等が挙げられる。
【0029】
工程(c):反応工程
本発明における工程(c):反応工程は、上記原料ガスを上記スチームと接触させることにより加熱し、反応(熱分解、脱塩化水素・縮合)させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを得る工程である。
【0030】
工程(c)における原料ガスとスチームとの接触量は、上記原料ガスと上記スチームとのモル比で30/70〜2/98であることが重要である。原料供給熱量以外に反応場に持ち込まれるエネルギーがなく反応器で短時間で混合されるため、原料ガスの接触量が下限値未満であると、原料ガスに対するスチームの量が多くなり原料ガスが過熱される傾向がある。一方で、原料ガスの接触量が上限値を超えると、原料ガスに対するスチームの量が少なくなり、原料ガスがスチームで充分に加熱されないおそれがある。加えて高濃度の原料ガスの場合は副反応も進行しやすくなる。
【0031】
原料ガスとスチームとの好ましい接触量は、上記原料ガスと上記スチームとのモル比で30/70〜2/98であり、よりこのましくは20/80〜2/98であり、さらに好ましくは15/85〜5/95である。
【0032】
工程(c)における原料ガスとスチームとの接触方法は、原料ガスとスチームとの接触量がモル比で上記範囲となり、且つ供給される原料ガスとスチームとの温度を上記範囲とすれば特に制限されないが、十分に断熱した反応器に原料ガスとスチームを対向混合する方法等が挙げられる。原料ガスとスチームは乱流状態で混合することが好ましい。
本発明においては、原料ガス供給、スチーム供給、反応(熱分解、脱塩化水素・縮合)、生成ガスの取り出し等の一連の流れを連続的に行うことが好ましい。
なお、R21、R22それぞれの分解温度は、フロン21:425℃、フロン22:260℃である。
【0033】
なお、工程(c)における反応時の温度は、770〜900℃であることが好ましい。反応時の温度をこの範囲とすることにより、原料ガスが効率よく反応し、外部からの伝熱加熱をすることなく安定に製造可能となる。
【0034】
反応時の温度が下限値未満であると、反応収率が低くなり実用性に乏しい。また、反応時の温度が上限値を超えると、反応が進みすぎて副生成物が多くなり、原料の反応率は上がるが目的生成物(テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレン)の選択率が低くなり、これも実用性に欠ける。
【0035】
本発明における「反応時の温度」とは、原料ガスが混合された瞬間の反応前の反応ガス混合計算温度を意味する。なお、その計算は、下記の式を用いて簡便に計算する。
【0036】
【数1】

【0037】
なお、上記式において各値は下記を意味する。
C1:フロン21の比熱(100℃)=0.6525kJ/kg/℃
W1:フロン21の配合量(kg)
C2:フロン22の比熱(100℃)=0.7282kJ/kg/℃
W2:フロン22の配合量(kg)
C3:HOの比熱(100℃)=1.994kJ/kg/℃
W3:HOの配合量(kg)
Ta:原料ガス温度
Ts:スチーム温度
Tm:混合時の温度
【0038】
反応時の温度の調整は、原料ガスの温度、スチームの温度、これらの接触モル比で適宜調整可能である。
【0039】
本発明のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法において、工程(c)における、原料ガスとスチームとの接触時間(「反応時間」ともいう)は、0.03〜1秒であることが好ましい。接触時間が短すぎると、反応が不十分で生成物の収量が低下して採算性が低下する傾向がある。接触時間が長すぎると、副反応が多くなり採算性が低下する傾向がある。また、長時間の加熱で生成した二重結合含有化合物が重合反応を起こし反応器内で炭化したり、後プロセスの冷却装置に堆積して閉塞の原因になったりすることがある。
なお、本発明において「接触時間」とは、前期原料とスチームの混合ガス温度での混合ガスの体積ガス流量M[L/sec]で反応器の体積V[L]を割った値である。その計算方法は、V/Mとする。
【0040】
なお、本願の製造方法は、工程(c)の後にさらに下記工程(d)を含むことが好ましい。
【0041】
工程(d):生成ガスを取り出し冷却する工程
本発明における工程(d):生成ガスを取り出し冷却する工程は、得られたテトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンを含む生成ガスとして得ることを特徴とする。この生成ガスとして得るときには、反応エリアから取り出す等して温度を下げ、反応を停止させることが好ましい。
【0042】
具体的には、工程(d)において、上記生成ガスを120℃以下に冷却することが好ましい。
工程(d)において、上記生成ガスを120℃以下に冷却するまでの時間は10秒以下であることが好ましい。
【0043】
工程(d)で生成ガスを冷却することで、得られたテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンが重合したり、付近化反応したりする等の副反応を抑制できる。
冷却方法としては、冷媒と生成ガスとを直接接触させる方法、冷媒と生成ガスとを直接接触させずに冷却する外部冷却方法等により行うことができる。
【0044】
本発明の製造方法により、テトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとを含む生成ガスを得られる。得られた生成ガスを必要により、塩化水素又は塩酸等を除去するために、アルカリ水溶液への吸収溶解等によって精製してもよい。精製の方法としては、特に制限はないが、生成ガスに含まれるスチームが凝縮した水やガスを、アルカリ水溶液で吸収洗浄する方法等が挙げられる。
【0045】
<本発明のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法を実施するための反応器>
本発明のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法を実施するための反応器としては、特に制限はないが、原料ガスを供給する原料ガス供給口と、スチームを供給するスチーム供給口と、原料ガスとスチームとを接触させる反応エリアと、得られた生成ガスを反応器から取り出すための反応器出口と、好ましくは生成ガスを冷却する冷却手段と、を有し、さらに原料ガスとスチームとを特定の温度に加熱する手段と、原料ガスとスチームとの接触量を特定のモル比に調整する手段と、好ましくは原料ガスとスチームとの接触時間を特定の範囲に調整する手段と、を有する構成であれば特に制限はない。
【0046】
なお、本発明においては、反応器自体を加熱する必要はなく、反応の熱供給源としては、原料ガス及びスチームのエネルギーのみを用いることで反応を達成できることが特徴である。
【0047】
原料ガス供給口と、スチーム供給口と、反応器出口とは、それぞれ異なる位置であることが好ましい。特に、原料ガス供給口とスチーム供給口とは、混合が瞬間的に行われる点から近接した配置で各々の流れの方向が対向または直行する構造であることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
【0049】
(実施例1)
フロン21(旭硝子(株)製)及びフロン22(旭硝子(株)製)を混合した原料ガスを350℃に加熱し、880℃に加熱したスチームとモル比が(フロン22/フロン21/スチーム)=9.12/0.89/90となるように反応器に導入し、流量接触時間(滞留時間)が0.188secとなるようにガス流量を制御して、生成ガスを反応器出口より取り出した。
【0050】
反応時の温度は、793℃であった。また、反応器出口より取り出した生成ガスを85℃に冷却し、水洗浄とアルカリ洗浄を実施してから、ガスクロマトグラフィで分析したところ、フロン21の反応率は74%、フロン22の反応率は62%であり、得られたテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンは、炭素数換算による選択率で71.9%と14.7%であった。
【0051】
(実施例2)
フロン21(旭硝子(株)製)及びフロン22(旭硝子(株)製)を混合した原料ガスを350℃に加熱し、880℃に加熱したスチームとモル比が(フロン22/フロン21/スチーム)=8.74/1.26/90となるように反応器に導入し、流量接触時間(滞留時間)が0.188secとなるようにガス流量を制御して、生成ガスを反応器出口より取り出した。
反応時の温度は、793℃であった。また、反応器出口より取り出した生成ガスを85℃に冷却し、水洗浄とアルカリ洗浄を実施してから、ガスクロマトグラフィで分析したところ、フロン21の反応率は76.3%、フロン22の反応率は63.8%であり、得られたテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンは、炭素数換算による選択率で62.9%と19.3%であった。
【0052】
(実施例3)
フロン21(旭硝子(株)製)及びフロン22(旭硝子(株)製)を混合した原料ガスを350℃に加熱し、880℃に加熱したスチームとモル比が(フロン22/フロン21/スチーム)=8.29/1.71/90となるように反応器に導入し、流量接触時間(滞留時間)が0.188secとなるようにガス流量を制御して、生成ガスを反応器出口より取り出した。
反応時は、793℃であった。また、反応器出口より取り出した生成ガスを85℃に冷却し、水洗浄とアルカリ洗浄を実施してから、ガスクロマトグラフィで分析したところ、フロン21の反応率は77.2%、フロン22の反応率は64.3%であり、得られたテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンは、炭素数換算による選択率で55.88%と23.93%であった。
【0053】
(実施例4)
フロン21(旭硝子(株)製)及びフロン22(旭硝子(株)製)を混合した原料ガスを350℃に加熱し、870℃に加熱したスチームとモル比が(フロン22/フロン21/スチーム)=8.29/1.71/90となるように反応器に導入し、流量接触時間(滞留時間)が0.188secとなるようにガス流量を制御して、生成ガスを反応器出口より取り出した。
反応時は、784℃であった。また、反応器出口より取り出した生成ガスを85℃に冷却し、水洗浄とアルカリ洗浄を実施してから、ガスクロマトグラフィで分析したところ、フロン21の反応率は73.9%、フロン22の反応率は61.8%であり、得られたテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンは、炭素数換算による選択率で55.41%と23.81%であった。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、大量スケールであっても安定且つ収率良く、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロン21(CHClF)及びフロン22(CHClF)を主成分として含む原料ガスを、スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを製造する方法であって、下記工程(a)〜(c)の工程を有し、
(a)前記フロン21と前記フロン22とを、前記フロン21と前記フロン22とのモル比で2/98〜80/20の割合で含む原料ガスを原料ガスの曇点超かつ400℃以下に加熱して供給する原料ガス供給工程、
(b)800℃〜1100℃に加熱したスチームを供給するスチーム供給工程、
(c)前記原料ガスを前記スチームと接触させることにより加熱し、反応させて、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを得る反応工程、
前記工程(c)における前記原料ガスと前記スチームとの接触量が、前記原料ガスと前記スチームとのモル比で30/70〜2/98であることを特徴とするテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)における反応時の温度が770〜900℃である請求項1に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)において、原料ガスとスチームとの接触時間が、0.03〜1秒である請求項1または2に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)の後に、前記生成ガスを取り出し120℃以下に冷却する冷却工程(d)をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。
【請求項5】
前記工程(d)において、前記生成ガスを120℃以下に冷却するまでの時間が10秒以下である請求項4に記載のテトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの製造方法。

【公開番号】特開2013−71912(P2013−71912A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212428(P2011−212428)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】