説明

テトラフルオロエチレン重合体を含む懸濁粒子及びその製造方法

本発明は、テトラフルオロエチレン重合体を含む新規な懸濁重合体の製造方法とその方法により製造されたパウダーまたは粒子に関する。本発明の懸濁重合体は、スチレン系単量体、アクリル系単量体またはこれらの混合物をテトラフルオロエチレン重合体の存在下で懸濁重合した後、ろ過及び乾燥して得られ、エンジニアリング・プラスチックなどの難燃性改善剤として使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン重合体(Tetrafluoroethylene polymer:以下、「PTFE」と記す。)を含む新規な懸濁重合体とその製造方法に係り、さらに詳しくは、PTFEの存在下でスチレン系単量体、アクリル系単量体またはこれらの混合物を懸濁重合して製造されるパウダーまたは粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の家電及び電気材料としてABS/PC、PC、PBT、Noryl、ナイロンなどのエンジニアリング・プラスチックが用いられている。この種の製品を使用するに当たり、火災が起きたときに製品の難燃特性は重要な考慮事項となり、中でも、燃焼される製品が溶けながら炎を抱いて落下するようなドリップ現象は特に問題となる。ドリップ現象を防ぐための、すなわち、アンチドリップ性を与えるための種々の方法が開発されており、その一つがPTFEをアンチドリップ性難燃補助剤として用いる方法である。
【0003】
産業現場においては、PTFEパウダーをエンジニアリング・プラスチックに単に混錬して用いる方法が多用されている。しかしながら、PTFEを直接的に製品に用いる場合には分散性が低いため、これを改善するための方法が開発されてきているが、PTFEの分散性を高める目的で、このような重合体を含有するパウダーを製造する方法が主流をなしていた。
【0004】
EP−A−0、166、187号文献においては、含PTFEパウダー組成物が記述されている。このパウダーは、ポリ(テトラフルオロエチレン)分散体とグラフト重合体、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフト重合体のラテックスを混合し、これを塩析してろ過、及び乾燥することにより得られる。しかしながら、同時沈殿または同時塩析により得られるパウダーは、自己接着の特性を有するという欠点があり、特に、PTFEの含量を、例えば、25重量%以上に高める場合にそのような欠点はなお一層目立つ結果、自由に流れなくなり、これにより、保存及び操作が困難になるという欠点がある。
【0005】
米国特許第5,804,654号明細書においては、テトラフルオロエチレンポリマーラテックスの存在下でアクリロニトリルとスチレンモノマーとの混合物を乳化重合し、前記テトラフルオロエチレンポリマーをカプセル化してテトラフルオロエチレンポリマーを含有するパウダーを用いることにより、高含量のPTFEの存在下で自己接着の問題を発生させないような方法が開示されている。この方法は、テトラフルオロエチレンを乳化重合してPTFEラテックスを1次的に得、ここに単量体をさらに投入しかつ重合してラテックス製品を2次的に得た後、得られたラテックスをさらにパウダー状にするために粒子を肥大化させる塩析過程を経なければならないといった複雑な工程を有する。
このため、含PTFEパウダーがより簡単に得られるような方法への要求が強くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、懸濁重合により含PTFEパウダーを製造する方法を提供するところにある。
本発明の他の目的は、PTFEの存在下でスチレン系単量体、アクリル系単量体、またはこれら単量体の混合物を懸濁重合することにより、アンチドリップ性の含PTFEパウダーを製造する方法を提供するところにある。
本発明のさらに他の目的は、PTFEの存在下で単量体または単量体混合物を懸濁重合して得られるアンチドリップ性のPTFEを用いて製造される高分子重合体を提供するところにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは、前記の諸目的が、PTFE粒子の存在下でスチレン系単量体、アクリル系単量体、またはこれらの混合物を懸濁重合することにより達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、PTFEの存在下でスチレン系単量体、アクリル系単量体またはこれらの混合物を懸濁重合することにより含PTFE粒子を得る方法が提供される。
【0008】
前記テトラフルオロエチレン重合物粒子としては、ポリ(テトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレンコポリマー、及びテトラフルオロエチレンと共重合可能な少量のエチレン含有不飽和モノマーのコポリマーが使用可能である。これらポリマーは公知のものであり、inter alia,「Vinyl and related polymers」, Schidknecht, John Wiley & Sons, Inc., NewYork, 1952, pages 484-494と、「Fluoropolymers」 Woll, Wiley-Interscience, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1972に開示されている。好ましくは、ポリ(テトラフルオロエチレン)が使用可能である。
【0009】
本発明において、前記PTFEは微粉粒子、懸濁粒子、またはラテックスなどの製造形態で本発明の懸濁重合系に使用可能である。
【0010】
本発明による一実施態様において、前記PTFEは乾燥された微粉粒子の状態で使用可能である。この場合、前記微粉粒子は、重合される単量体の存在下または非在下で反応系に微粉の状態で直接的に導入可能である。
【0011】
本発明による別の実施態様において、前記PTFEとしては、溶媒への分散粒子が使用可能である。前記溶媒は、本発明による懸濁重合時に用いられる水と相溶性を有する極性溶媒であることが好ましく、好ましくは、水である。本発明による一実施態様において、前記水に分散されたPTFEは水性懸濁重合により製造された後、本発明の反応系に導入可能である。
【0012】
本発明によるさらに別の実施態様において、前記PTFEはラテックスとして使用可能である。通常、PTFEのラテックスは20〜80重量%の固体含量を有するように製造される。前記PTFEラテックスは、回分、半連続、または連続重合方法などにより製造可能であるが、製造方法に特に制限はない。
本発明において、前記PTFEは種々の製造会社から商業的に購入可能であり、例えば、PTFEの含量が約60%のZhejiung Jusheng Fluorochemical Co., Ltd.社製のJF−4DCや、Shanghai 3F New Materials Co., Ltd.社製のFR301Bがある。
【0013】
本発明において、PTFEは最終製品の分散性とアンチドリップ性のために、平均粒度が約0.005〜約500のものを使用することが好ましく、より好ましくは、平均粒度が約0.1〜約40のものである。前記PTFEの粒子が大きすぎると、分散の問題があり、小さすぎると、アンチドリップ効果が低下するという問題がある。
【0014】
本発明による実施の形態において、使用するPTFEの粒度が小さな場合にはPTFEをラテックスの形で使用することが好ましく、粒度が大きな場合には微粉粒子、または分散粒子の形で使用することが好ましい。本発明の一実施態様において、前記微粉粒子は、ラテックス粒子の塩析条件を調節して種々のサイズのものが得られる。もし、微粉粒子の平均粒径が大きな場合、ミルやボールミルなどを用いて粉砕して使用することができ、前記ミルやボールミルに特に制限はない。
【0015】
本発明において、PTFEの存在下で懸濁重合されて得られるポリマーは、共重合可能な少量のエチレン含有不飽和モノマーを含有しまたは含有しないスチレン系単量体、アクリル系単量体、またはこれらの混合単量体の重合によるポリマーである。スチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−アルキルスチレン)、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−α−エチルスチレン、ポリ−α−プロピルスチレン、ポリ−α−ブチルスチレン、ポリ−p−メチルスチレン、ハロゲン化ポリスチレンなどがあり、アクリル系ポリマーとしては、例えば、ポリアクリロニトリルなどのアクリルポリマー、ポリメタアクリロニトリル、ポリ(メチルアクリレート)、
【0016】
ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(プロピルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)などのポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(メチルメタアクリレート)、ポリ(エチルメタアクリレート)、ポリ(プロピルメタアクリレート)、ポリ(ブチルメタアクリレート)などのポリ(アルキルメタアクリレート)、ポリブタジエン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(ビニルアルコール)、及びこれらの混合物などがある。
【0017】
本発明の好適な一実施態様において、PTFEの存在下で懸濁重合により得られるポリマーとしては、好ましくは、ポリスチレン、ポリ(α−アルキルスチレン)、特に、ポリ(α−メチルスチレン)、ビニルポリマー、特に、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニルアセテート)、及びポリ(メチルメタアクリレート)がある。
【0018】
本発明の他の好適な一実施態様において、PTFEの存在下で懸濁重合されて得られるコポリマーとしては、好ましくは、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタアクリレート、ビニルクロリドとアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アルキルメタアクリレート、またはアルキルアクリレートモノマーなどの他のモノマーのコポリマー、また、グラフトされた重合物、例えば、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、またはスチレン−ブタジエン、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーゴム、アルキルアクリレートゴム、スチレン−ブタジエンゴム、EPDMゴムまたはシリコンゴムよりなる。
【0019】
本発明において、PTFEの存在下で懸濁重合により得られるコポリマーとしては、より好ましくは、スチレン−アクリロニトリル(SAN)及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、α−アルキル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、特に、α−メチルスチレン−アクリロニトリル(AMSAN)コポリマー、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、及びこれらの混合物がある。最も好ましいコポリマーとしては、スチレン−アクリロニトリルコポリマーがある。
【0020】
本発明において、PTFEとこの存在下で懸濁重合される単量体との重量比は、懸濁重合反応系の安定性のために調節される必要がある。本発明の実施の形態において、PTFEとこの存在下で懸濁重合される単量体との重量比は、約0.001:99.999〜9:1であることが好ましい。より好ましくは、PTFEとこの存在下で懸濁重合される単量体との重量比が約2:8〜8:2である。本発明の実施の形態において、PTFEの投入比が高すぎる場合には分散性に劣り、その一方、PTFEの投入比が小さすぎる場合には反応上の問題はないものの、経済性が問題となる。
【0021】
本発明において、懸濁反応系にPTFEが導入されるタイミングは、懸濁重合反応系の安定性のために調節可能である。前記PTFEは、原則としては、懸濁重合中にのみ投入可能であり、好ましくは、安定した懸濁反応系のために重合サイクルの前期中に添加する。単量体の投入方式としては、回分式や半回分式が採用可能であり、より好ましくは、前記PTFEは重合反応開始前に投入される。
【0022】
本発明において、単量体または単量体混合物を重合させるために重合開始剤が使用可能である。重合開始剤単量体としては、有機過酸化物、アゾ系ニトリル化合物、アゾ系非環状アミジン化合物、アゾ系環状アミジン化合物、アゾ系アミド化合物、アゾ系アルキル化合物及びアゾ系エステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合開始剤を用いる。有機過酸化物としては、具体的には、ベンゾイルパーオキシド、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、メチルエチルケトパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンヒドロパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単体で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記アゾ系重合開始剤は、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ系ニトリル化合物、2、2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2、2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリドなどのアゾ系非環状アミジン化合物、2、2’−アゾビス2−メチル−N−[1、1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2、2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ系アミド化合物、2、2’−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロパン)などのアゾ系アルキル化合物、ジメチル−2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系エステル化合物を含む。これらアゾ系重合開始剤は、単体で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明において、前記重合開始剤は、重合に用いられる単量体または単量体の一部に溶解させて使用可能であり、そのとき、懸濁重合される単量体100重量部に対して約0.001〜5.0重量部を使用することが好ましい。前記重合開始剤の添加方法には特に制限がなく、当業界における公知の方法を利用することができる。
【0025】
本発明による製造方法においては、懸濁液(反応液)の安定化を図るために、前記懸濁液に、必要に応じて、分散安定剤を添加することが好ましい。分散安定剤としては、具体的には、ポリビニルアルコール、ゼラチン、トラガカント、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムなどの水溶性高分子やピロリン酸ナトリウム、ヒドロキシアパタイト、メチルセルロース、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウムなど水に難溶性の無機物質を使用することが好ましい。より好ましくは、難溶性の無機分散剤である。分散安定剤の使用量は、単量体の量に対して0.01〜29重量%の範囲内であることがより好ましく、0.1〜20重量%の範囲内であることが特に好ましい。分散安定剤の使用量を前記範囲内に設定することにより、一定範囲の粒子が得られる。また、分散安定剤の添加方法は、公知の方法を利用することが可能である。
【0026】
最終的に得られる粒子径は回収と配合時に分散に影響するため、好ましくは、PTFEを含有する粒子の平均粒径を約0.01〜20mmの範囲内、より好ましくは、0.2〜5mmの範囲内にする。平均粒径が小さすぎると、懸濁重合物をろ過して回収するのに難点があり、大きすぎると、分散性が低下するという問題が発生することがある。
【0027】
本発明においては、懸濁重合中に安定した分散系を得るために、分散補助剤をさらに使用してもよい。分散補助剤としては、アニオン性の界面活性剤、カチオン性の界面活性剤、両イオン性の界面活性剤、ノニオン性の界面活性剤などが使用可能である。前記アニオン性の界面活性剤としては、具体的には、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリルなどの脂肪酸油のアルカリ金属塩、ラウリル硫黄酸ナトリウム、
【0028】
ラウリル硫黄酸アンモニウムなどのアルキル硫黄酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合化物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫黄酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫黄酸エステル塩などが挙げられる。前記カチオン性の界面活性剤としては、具体的には、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムク
【0029】
ロリドなどの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシドなどが挙げられる。前記ノニオン性の界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらの分散補助剤の使用量は、水に対して0.003〜5.0重量部であることが好ましい。
【0030】
本発明の懸濁重合において、より安定した分散系を得るために、有機相の量、すなわち、懸濁重合後の固体の含量を調節することができ、固体の含量は、最終的に得られる懸濁重合体中における約5重量%〜80重量%であることが好ましい。最終的に得られる分散体の含量が5%未満であれば、経済性に劣り、それ以上であれば、反応容器の洗浄などの問題を引き起こすことがある。
【0031】
懸濁重合の重合温度は、10〜250℃の範囲内であることが好適であり、30〜150℃の範囲内であることが最適である。また、懸濁重合は、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことがより好ましい。懸濁重合時の攪拌方法としては、得られる含PTFE粒子が肥大化されたり、粒子同士が凝集したりすることを防ぐために、より強力に攪拌可能な装置を用いるような方法であることが好ましい。
【0032】
具体例としては、ラインミキサーなどのいわゆる高速攪拌器とホモミキサーを用いる方法であることが好ましい。前記懸濁重合により粒径が制御可能であるため、粒径の揃っている(粒度分布の狭い)含PTFE粒子が得られる。また、懸濁液には、重合に差し支えない範囲内において、かつ、必要に応じて、顔料や染料などの着色剤、可塑剤、重合安定剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などの各種の添加剤を添加・配合してもよい。
【0033】
含PTFE粒子を懸濁液から抽出する方法としては、ろ過する方法と、遠心分離機などの分離機を利用する方法が簡単であるために推奨されるが、特に制限はない。懸濁液から抽出した後の粒子は、必要に応じて、洗浄・乾燥させればよいが、乾燥温度や乾燥方式には特に制限がない。前記本発明の含PTFE粒子の水分量は、10%以下、好ましくは、7%以下、より好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、3%以下である。この乾燥後の水分量は、乾燥前後における重量の減少により測定する。
本発明において、製造されたパウダーは乾燥後にアンチトリップ用の難燃補助剤として使用可能である。前記乾燥は、通常の乾燥器を用いて行うことができ、熱風乾燥器、流動床乾燥器、真空乾燥器などが利用可能である。本発明において乾燥されたパウダーは、エンジニアリング・プラスチックと混錬されて使用可能である。混錬は、通常のミキサー、例えば、タンブラー、V−ミキサー、回転ミキサーなどを用いて行うことができる。本発明の一実施の形態において、前記混錬された製品は、通常のシングル押出器やツイン押出器を用いて押出可能であり、押出方法に特に制限はない。
【0034】
実施例
懸濁重合
実施例1
脱イオン水75kgと固体含量60%のL−テフロン(登録商標)50kg(製品名:FR301B)が入れられている反応器にスチレン27kgとアクリロニトリル3kg及びベンゾイルパーオキシド210gを投入して攪拌後、ヒドロキシアパタイト1.2kgとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム80gを入れ、攪拌器を300RPMにて攪拌させた。反応器を75℃まで昇温させた後、7時間維持し、ついで、120℃まで昇温させて3時間維持して重合を終えた。水性相を分離して平均直径が1.1mmの均一なビーズを得た。得られたビーズは温風器を用いて乾燥した。
【0035】
実施例2
脱イオン水75kgと固体含量60%のL−テフロン(登録商標)50kg(製品名:FR301B)が入れられている反応器にスチレン27kgとアクリロニトリル3kg及びベンゾイルパーオキシド210gを投入して攪拌後、ポリビニルアルコール78g(東洋製鉄化学工業(株))とアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム80gを入れ、攪拌器を400RPMにて攪拌させた。反応器を75℃まで昇温させた後、7時間維持し、ついで、120℃まで昇温させて3時間維持して重合を終えた。水性相を分離して平均直径が0.8mmの均一なビーズを得た。得られたビーズは温風器を用いて乾燥した。
【0036】
実施例3
脱イオン水75kgと固体含量60%のL−テフロン(登録商標)50kg(製品名:FR301B)が入れられている反応器にスチレン21kgとアクリロニトリル9kg及びベンゾイルパーオキシド210gを投入して攪拌後、ヒドロキシアパタイト1.2kgとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム80gを入れ、攪拌器を300RPMにて攪拌させた。反応器を75℃まで昇温させた後、7時間維持し、ついで、120℃まで昇温させて3時間維持して重合を終えた。水性相を分離して平均直径が1.8mmの均一なビーズを得た。得られたビーズは温風器を用いて乾燥した。
【0037】
実施例4
脱イオン水90kgが入れられている反応器に、別途の容器に用意されているテフロン(登録商標)粉末(製品名;JF−4DC)30kgとスチレン21kgとアクリロニトリル9kgを混合した混合物を投入し、ヒドロキシアパタイト1.2kgとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム80gを入れ、攪拌器を500RPMにて攪拌させた。反応器を75℃まで昇温させた後、8時間維持し、ついで、120℃まで昇温させて3時間維持して重合を終えた。水性相を分離して平均直径が1.4mmの均一なビーズを得た。得られたビーズは温風器を用いて乾燥した。
【0038】
難燃性改善試験
実施例5
上記実施例1〜4から得られたビーズを、LG化学から入手したABS/PCと混練してUL4難燃試験を施した。難燃試験はアンチドリップ性に対して行われ、その結果を表1に示した。
【0039】
比較例1、2
LG化学から入手した同じABS/PCに同量のPTFE(JF4DC)を混錬し、標準試験方法(UL94難燃試験法)に従いアンチドリップ性をチェックした。テトラフルオロエチレン(Tetrafluoroethylene)重合体を入れていないABS/PCに対する結果も一緒にチェックし、その結果を表1に示した。
【0040】
【表1】

以上、本発明について具体的な実施例を挙げて詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の思想と範囲を逸脱しない限度で各種の変形及び修正が可能であることは、当業者にとって自明であり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するということは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、懸濁重合による含PTFEパウダーの製造方法を提供することが可能である。また、本発明によれば、PTFEの存在下でスチレン系及びアクリル系単量体、またはこれら単量体の混合物を懸濁重合することにより、含PTFEパウダーを製造する方法を提供することが可能である。さらに、本発明によれば、PTFEの存在下で単量体または単量体混合物を懸濁重合して得られるPTFEを含むパウダーを提供することが可能である。前記パウダーは、難燃剤のアンチトリップ用の補助剤として使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン重合体の存在下でスチレン系単量体、アクリル系単量体またはこれらの混合単量体を水性懸濁重合して得られるテトラフルオロエチレン重合体含有パウダーの製造方法。
【請求項2】
テトラフルオロエチレン重合体と単量体との重量比が、約0.001:99.999〜約9:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
テトラフルオロエチレン重合体粒子は、微粉パウダー、懸濁分散体及びラテックスよりなる群から選ばれて投入可能な請求項1に記載の方法。
【請求項4】
テトラフルオロエチレン重合体粒子の平均粒度が、約0.005〜約500μmの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
テトラフルオロエチレン重合体の存在下でスチレン系単量体、アクリル系単量体、またはこれらの混合物の水性懸濁重合により製造される水性懸濁重合体。
【請求項6】
約0.01〜20mmの平均粒径を有する請求項5に記載の水性懸濁重合体。
【請求項7】
水性懸濁重合体を含む請求項5または6に記載のアンチドリップ性難燃補助剤。

【公表番号】特表2008−533234(P2008−533234A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500607(P2008−500607)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000235
【国際公開番号】WO2006/095963
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507302287)
【Fターム(参考)】