説明

テトラメチルシクロブタンジオールを含有する脂肪族ポリエステルコーティング組成物

2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールを含有する脂肪族ポリエステルレジン、そしてそれから製造される溶媒系の熱硬化性コーティング組成物を開示する。該脂肪族ポリエステルは、熱硬化性コーティング組成物に配合された場合に良好な硬度および可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
高い硬度を示す溶媒系のポリエステル熱硬化性コーティングは望ましい。高い硬度を有するコーティングは、典型的には高い光沢、良好な像の明瞭さ(DOI)、速い乾燥時間、耐スクラッチ性、耐ステイン性、耐化学物質性、および耐湿性、ならびに屋外耐久性を示す。
【0002】
脂肪族ポリエステルは、熱硬化性アクリル(本明細書で「TSA」と略す)コーティングの粘度を低減させ、そして固形分を増大させるのに頻繁に用いる。脂肪族ポリエステルはまた、高固形分コーティングにおける主要なフィルム形成要素として望ましい。これは、その揮発性有機化合物(「VOC」)放出低減という能力に起因する。脂肪族ポリエステルから製造されるコーティングは、一般的に可撓性であるが、柔らかい傾向があり、溶媒および化学物質に対する乏しい耐性、乏しい耐湿性、ならびに乏しい屋外耐久性をもたらす。
【0003】
脂肪族ポリエステルレジンの硬度および硬度関連特性は、1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書で「CHDM」と略す)および水素化ビスフェノールA(本明細書で「HBPA」と略す)の添加で改善できる場合がある。残念ながら、CHDM含有量がポリエステルレジン配合物中で増大するに従って、溶媒溶解性およびアクリルレジンとの親和性がしばしば乏しいことが観測されている。従って、レジン配合物中に組入れることができるCHDMの量は制限される。HBPAは同様な特徴を示すことが知られている。
【0004】
レジン溶解性が乏しいことは、しばしばそれ自体の経時的な相分離、溶液からのレジンの沈殿、および濁った状態から不透明のレジン溶液の発現によって現される。これらの特徴は不所望であり、そしてレジン溶液およびこれらの溶液から配合されたコーティングの貯蔵安定性を制限する。このようなコーティングは、例えば、粘度増大、相分離、含有成分の凝集等を被る場合があり、これらは不所望のより高い適用粘度、硬化されたフィルムの外観の悪さおよび機械特性の悪さをもたらす。
【0005】
熱硬化性アクリル(「TSA」)レジンは、工業用コーティングにおいて広く使用されている。これらは高ガラス転移温度(Tg)に配合され、そして優れた光安定性および耐加水分解性を示すことができる。これらの特性は:高硬度;速い乾燥時間;耐ステイン性、耐化学物質性および耐湿性;ならびに良好な屋外耐久性;という所望の特性を有するコーティングをもたらす。結果として、TSAレジンはしばしば、必要な用途(輸送、保守、海洋および建造物/構造物の市場が挙げられる)のためのコーティングにおける主なフィルム形成要素として働く。
【0006】
TSAレジンは多くの所望の特性を示すが、これらはしばしば可撓性を欠き、そして、実際的な適用粘度を実現するためにコーティング配合物中のより多くの溶媒を必要とする。TSAレジンへの溶媒要求がより高いことは、様々な連邦および国の大気質機関によって要求されている、低減されたVOC含有量を有する高固形分コーティングの実現を困難にする。
【0007】
レジンおよびコーティングの固形分を増大させ、粘度を低減し、そしてVOC放出をより少なくするために、脂肪族ポリエステルレジンをTSAレジンとブレンドできる。残念ながら、ブレンド物のガラス転移温度(「Tg」)は、ポリエステル量が増大するに従ってしばしば顕著に低下する。ブレンド物のTgがより低いことは、TSAレジンがコーティングに対して与える望ましい特徴に対して不利な影響を有する。
【0008】
コーティング産業においては、熱硬化性コーティング組成物中に配合された場合に良好な可撓性および溶解性とともに良好な硬度を示す脂肪族ポリエステルに対する要求が存在する。加えて、TSAレジンとブレンドした場合に、高固形分熱硬化性コーティング組成物において、TSAレジンのTgを保持しながら粘度がより低い、脂肪族ポリエステルレジンに対する要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明は、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールから製造される硬化性脂肪族ポリエステルを提供する。よって、我々の発明の一態様は:
i.二塩基酸残基の総モル基準で少なくとも90モル%の、50〜100モル%の脂環式ジカルボン酸を含む少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基、を含む二塩基酸残基;
ii.ジオール残基の総モル基準で50〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むジオール残基;および
iii.ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で2〜40モル%の、少なくとも1種のポリオール残基;
を含み、数平均分子量300〜10,000ダルトン、ガラス転移温度−35℃〜35℃、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/ポリエステルg、および酸価0〜80mgKOH/ポリエステルgを有する、硬化性脂肪族ポリエステルである。
【0010】
これらの全脂肪族ポリエステルレジンから配合されるコーティングは、高い光沢、像の明瞭性および反射性;良好な硬度(良好な可撓性とともに);溶媒および化学物質の耐性;ならびに良好な屋外耐久性のための、UVおよび湿度の曝露中の良好な光沢保持性;を示すことができる。よって、我々の発明の別の態様は:
(A).(A)および(B)の総質量基準で50〜90質量%の、少なくとも1種の硬化性脂肪族ポリエステルであって、
i.二塩基酸残基の総モル基準で少なくとも90モル%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基を含む二塩基酸残基であって、該脂肪族ジカルボン酸が50〜100モル%の脂環式ジカルボン酸を含む、二塩基酸残基;
ii.ジオール残基の総モル基準50〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むジオール残基;および
iii.ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で2〜40モル%の少なくとも1種のポリオール残基;
を含み、数平均分子量300〜10,000ダルトン、ガラス転移温度−35℃〜35℃、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/ポリエステルg、および酸価0〜80mgKOH/ポリエステルgを有する、硬化性脂肪族ポリエステル;
(B).(A)および(B)の総質量基準で10〜50質量%の、カルボン酸または水酸基との反応性を有する少なくとも1種の化合物を含む架橋剤;および
(C).(A)、(B)および(C)の総質量基準で10〜60質量%の少なくとも1種の非水性溶媒;
を含む、熱硬化性コーティング組成物である。
【0011】
これらの脂肪族ポリエステルは、アクリルとブレンドでき、または、自動車OEM、自動車補修、輸送、航空宇宙、保守、海洋、機械および設備、汎用金属、器具、金属家具、プラスチック、および建造物/構造物の用途において使用される、工場および現場で適用されるコーティングを配合するための主なフィルム形成要素として働くことができる。熱硬化性アクリル(TSA)レジンとブレンドする場合、我々の脂肪族ポリエステルは、ブレンド物の良好な溶解性、親和性および粘度低減を、良好なTg保持とともに示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
我々は、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(本明細書で「TMCD」と略す)を含有する硬化性脂肪族ポリエステルを用いて、高い光沢、良好な硬度および可撓性;ならびに溶媒および化学物質に対する耐性を示す、溶媒系で高固形分の熱硬化性コーティングを製造できることを見出した。これらの脂肪族ポリエステルはまた、熱硬化性アクリルレジン(「TSA」)とブレンドして、低粘度、良好な親和性、可撓性およびTg保持を有するブレンド物を製造できる。よって、一般的な態様において、我々の発明は:
i.二塩基酸残基の総モル基準で少なくとも90モル%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基を含む二塩基酸残基であって、該脂肪族ジカルボン酸が50〜100モル%の脂環式ジカルボン酸を含む、二塩基酸残基;
ii.ジオール残基の総モル基準で50〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むジオール残基;および
iii.ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で2〜40モル%の少なくとも1種のポリオール残基;
を含み、数平均分子量300〜10,000ダルトン、ガラス転移温度−35℃〜35℃、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/ポリエステルg、および酸価0〜80mgKOH/ポリエステルgを有する、硬化性脂肪族ポリエステルを提供する。本発明の別の側面は、上記脂肪族ポリエステルレジンを含む溶媒系熱硬化性コーティング配合物である。コーティング配合物は、任意に、架橋剤、種々の添加剤および顔料を含むことができる。
【0013】
特記がない限り、以下の説明および特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似である。最低でも、各数値パラメータは、少なくとも記載される有効数字の数を考慮し通常の四捨五入法を適用して解釈すべきである。更に、この開示および特許請求の範囲で記載される範囲は全範囲を具体的に含みかつ1つまたは複数の端点のみではないことが意図される。例えば、0から10と記載される範囲は、例えば1、2、3、4等のような0から10の間の全ての整数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113等のような0から10の間の全ての端数、ならびに端点0および10を開示することが意図される。また、例えば「C1〜C5のジオール」等の化学置換基に関連する範囲は、C1およびC5のジオール、更にC2、C3およびC4のジオールを具体的に含みかつ開示することが意図される。
【0014】
本発明の広範な範囲を説明する数値範囲およびパラメータが近似であることに関わらず、具体例において説明される数値は可能な限り厳密に記載される。しかしいずれの数値も、これらのそれぞれの試験測定で見られる標準偏差に起因して本質的にある程度の誤差を必然的に含む。
【0015】
明細書および特許請求の範囲で使用される単数形"a" "an"および"the"は、他を指す明確な記載がない限りこれらの複数の指示対象を包含する。例えば、a "polyester"、a "dicarboxylic acid "、a "residue"の記載は、「少なくとも1種」または「1種以上」のポリエステル、ジカルボン酸または残基と同義であり、よって単数種または複数種のポリエステル、ジカルボン酸、または残基の両者の意味を意図する。加えて、"an" ingredientまたは"a" polyesterを含有しまたは包含する組成物の記載は、名前の挙がったものに加えて他の含有成分または他のポリエステルをそれぞれ包含することが意図される。用語"containing(含有する)"または"including(包含する)"は、用語"comprising(含む)"と同義であることを意図し、少なくとも名前の挙がった化合物、要素、粒子、または方法ステップ等が組成物または物品または方法に存在するが、他の化合物、触媒、材料、粒子、方法ステップ等の存在は、他のこのような化合物、材料、粒子、方法ステップ等が名前の挙がったものと同じ機能を有しても、特許請求の範囲において明確に排除していない限りは排除されないことが意味される。
【0016】
また、1以上の方法ステップの記載は、組み合わされた列挙されるステップの前もしくは後の追加の方法ステップ、または明確に規定されるこれらのステップの間の途中の方法ステップの存在を排除しないことを理解すべきである。更に、方法ステップまたは含有成分の表記は別々の働きまたは含有成分を規定するための便宜的な手段であり、そして列挙された表記は特記がない限り任意の順序に並べることができる。
【0017】
本明細書で用いる用語「硬化性脂肪族ポリエステル」は、用語「レジン」と同義であり、1種以上の酸成分、ジオール成分、およびポリオール成分の重縮合によって得られる熱硬化性表面コーティングポリマーを意味することを意図する。本発明の硬化性脂肪族ポリエステルは熱硬化性ポリマーであり、そして溶媒系コーティング用のレジンとして好適である。このポリエステルは、低分子量,典型的には300〜10,000ダルトンを有し、そしてフィルム、シートおよび他の成形物の、押出し、キャスト、ブロー成形、および他の熱形成プロセス(高分子量熱可塑性ポリマーに一般的に用いるもの)による製造には好適でない。ポリエステルは、反応性官能基,典型的には水酸基またはカルボキシル基を、コーティング配合物中の架橋剤との後の反応のために有する。官能基は、ポリエステルレジン組成物中に過剰のジオールまたは酸(ジカルボン酸またはトリカルボン酸より)のいずれかを有することによって制御する。所望の架橋経路は、ポリエステルレジンがヒドロキシル末端であるかまたはカルボン酸末端であるかによって決定する。この概念は、当業者に公知であり、そして例えばOrganic Coatings Science and Technology,2nd ed.,p.246−257(Z.Wicks,F.Jones,およびS.Pappas,Wiley,New York,1999より)に記載されている。
【0018】
典型的には、酸成分は、少なくとも1種のジカルボン酸を含み、そして、任意に、単塩基または多塩基のカルボン酸を包含できる。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、脂肪族または脂環式のジカルボン酸,例えばアジピン酸または1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、または1種以上の脂肪族および脂環式の酸の混合物等を含む酸成分から得ることができる。ジオール成分は、1種以上の脂環式ジオール,例えば2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールの、単独、または1種以上の直鎖もしくは分岐の脂肪族ジオール,例えばネオペンチルグリコール等との組合せ等を含むことができる。触媒を用いて重縮合反応の速度を加速することができる。硬化性脂肪族ポリエステルの成分の各々の追加例としては、当業者で公知のものが挙げられ、これらに限定するものではないが、以下、および当該分野で公知の種々の文献,例えばResins for Surface Coatings,Vol.III,p.63−167,ed.(P.K.T.OldringおよびG.Hayward,SITA Technology,London,UK,1987より)等で議論されるものが挙げられる。
【0019】
本発明のポリマーに関して本明細書で用いる用語「残基」は、重縮合または開環反応を介してポリマー中に導入される任意の有機構造(対応するモノマーを含む)を意味する。当業者には、本発明の種々の硬化性ポリエステル中の関連する残基が、親モノマー化合物自体または親化合物の任意の誘導体に由来できることもまた理解されよう。例えば、本発明のポリマーにおいて言及されるジカルボン酸残基は、ジカルボン酸またはその関連の酸ハライド、エステル、塩、無水物、またはこれらの混合物に由来できる。よって、本明細書で用いる用語「ジカルボン酸」は、ジカルボン酸およびジカルボン酸の任意の誘導体(その関連の酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、またはこれらの混合物(硬化性脂肪族ポリエステルを形成するためのジオールとの重縮合プロセスで有用なもの)が挙げられる)を包含することを意図する。
【0020】
用語「脂肪族」は、当業者によって理解されるようなその一般的な意味、すなわち、非環式または環式、飽和または不飽和の炭素化合物の意味、を有することを意図し、ベンゼノイドまたは他の芳香族系は排除する。本明細書で用いる用語「脂環式」は、脂肪族の環式化合物を意味することを意図する。本明細書で用いる用語「脂肪族ポリエステル」は、二塩基酸残基またはジオール残基の総モル基準で90モル%以上の脂肪族の二塩基酸残基またはジオール残基を含有するポリエステルを意味することが理解される。少量(すなわち10モル%以下)の芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールもまた存在できる。
【0021】
硬化性脂肪族ポリエステルは、二塩基酸残基の総モル基準で少なくとも90モル%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基を含む二塩基酸残基を含み、該脂肪族ジカルボン酸は更には50〜100モル%の脂環式ジカルボン酸を含む。脂肪族および脂環式のジカルボン酸の幾つかの例としては、これらに限定するものではないが、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、コハク酸、グルタル酸、およびこれらの組合せが挙げられる。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基および50モル%のアジピン酸残基(二塩基酸残基の総モル基準で)を含むことができる。別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、50モル%のヘキサヒドロフタル酸無水物残基および50モル%のアジピン酸残基を含有できる。
【0022】
硬化性脂肪族ポリエステルの二塩基酸成分の幾つかの追加の非限定例は以下の通りである:(a)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに15〜50モル%の少なくとも1種の脂環式脂肪族ジカルボン酸であって4〜10個の炭素原子を有するものの残基;(b)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに15〜50モル%の、アジピン酸、コハク酸、およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;(c)50〜75モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに25〜50モル%の、アジピン酸、コハク酸、およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;(d)50〜65モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに35〜50モル%の、アジピン酸、コハク酸、およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;(e)50モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される1種または二塩基酸の残基;ならびに50モル%のアジピン酸の残基;ならびに(f)50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基および50モル%のアジピン酸残基。上記の脂環式および環状脂肪族のジカルボン酸の残基に加え、二塩基酸残基は、0〜10モル%の、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸の残基を更に含むことができる。
【0023】
上記の脂肪族ジカルボン酸残基に加え、我々の発明のポリエステル組成物の酸成分は、モノカルボン酸または多塩基酸(2つより多いカルボン酸基を含有するもの)の残基を更に含むことができる。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、少なくとも1種のモノカルボン酸または多塩基酸(安息香酸、酢酸、2−エチルヘキサン酸、プロピオン酸、tert−ブチル安息香酸、およびブタン酸から選択される);無水トリメリット酸;またはこれらの混合物、の残基を含むことができる。別の例において、酸成分は、少なくとも1種の脂肪族トリカルボン酸(例えば、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、およびこれらの酸の1種以上の混合物)の残基を含むことができる。
【0024】
硬化性脂肪族ポリエステルはまた、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(「TMCD」)残基を含む。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、ジオール残基の総モル基準で50〜100モル%のTMCDを含むことができる。TMCD濃度の他の代表例は、75〜100モル%、および85〜100モル%である。
【0025】
他の脂肪族ジオールをTMCDに加えて用いて本発明の硬化性脂肪族ポリエステルを得ることができる。脂肪族ジオールの代表例としては、これらに限定するものではないが、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、および水素化ビスフェノールAが挙げられる。例えば、一態様において、硬化性脂肪族ポリエステルレジンは、ネオペンチルグリコールとTMCDとの残基の組合せを含む。上記で列挙したジオールは、TMCDおよび上記の二塩基酸成分との任意の組合せで、上記で記載される範囲内の任意の量で使用できることを理解すべきである。
【0026】
例えば、一態様において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物から選択される少なくとも1種の脂環式ジカルボン酸の残基、および15〜50モル%の、ドデカン二酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびグルタル酸から選択される少なくとも1種のアシル脂肪族ジカルボン酸の残基、を含む二塩基酸残基;ならびに(ii)50〜100モル%のTMCD残基および50〜0モル%の、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、p−キシレンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、および水素化ビスフェノールAから選択される少なくとも1種のジオールの残基、を含むジオール残基;を含むことができる。別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物またはこれらの混合物の残基、および15〜50モル%のアジピン酸残基を含む二塩基酸残基;ならびに(ii)50〜100モル%のTMCD残基および50〜0モル%のネオペンチルグリコール残基を含むジオール残基;を含むことができる。更に別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50モル%のヘキサヒドロフタル酸無水物残基および50モル%のアジピン酸残基を含む二塩基酸残基;ならびに(ii)75〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基および25〜0モル%のネオペンチルグリコール残基を含むジオール残基;を含むことができる。
【0027】
二塩基酸残基およびジオール残基に加え、硬化性脂肪族ポリエステルは、ジオールおよびポリオールの残基の総モル基準で2〜40モル%の少なくとも1種のポリオールの残基を含む。これらのポリオールとしては、脂肪族、脂環式、および環式のアルキルポリオールを挙げることができる。ポリオールの幾つかの具体例としては、これらに限定するものではないが、トリメチロールプロパン(本明細書で「TMP」と略す)、ペンタエリスリトール(本明細書で「PE」と略す)、トリメチロールエタン(本明細書で「TME」と略す)、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン等が挙げられる。一例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、3〜30モル%の、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、およびグリセリンから選択される少なくとも1種のポリオールの残基を含むことができる。別の態様において、硬化性脂肪族ポリエステルは、トリメチロールプロパンを含む。
【0028】
本発明の硬化性脂肪族ポリエステルは、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/レジンgを有する。ヒドロキシル価の更なる例は、25〜300mgKOH/レジンg、および30〜250mgKOH/レジンgである。加えて、硬化性脂肪族ポリエステルは、酸価0〜80mgKOH/ポリエステルg、または、他の例においては、2〜25mgKOH/ポリエステルg、および2〜15mgKOH/ポリエステルgを有する。硬化性脂肪族ポリエステルの数平均分子量は、300ダルトン〜10,000ダルトンである。分子量範囲の追加例は、400〜7000ダルトン、および500〜5000ダルトンである。硬化性脂肪族ポリエステルは、ガラス転移温度(本明細書で「Tg」と略す)−35℃〜35℃を有する。硬化性脂肪族ポリエステルのTg範囲の幾つかの追加の代表例は、−35℃〜30℃、−35℃〜25℃、−35℃〜20℃未満、−35℃〜19℃、−35℃〜18℃、−35℃〜17℃、−35℃〜16℃、−35℃〜15℃、−35℃〜10℃である。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、ヒドロキシル価30〜250mg水酸化カリウム毎ポリエステルグラム、酸価2〜15mg水酸化カリウム毎ポリエステルグラム、および数平均分子量700〜7000ダルトン、およびTg−20℃〜20℃を有することができる。
【0029】
本発明の更なる側面は、
i.二塩基酸残基の総モル基準で50〜100モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、またはこれらの混合物の残基から選択される脂環式ジカルボン酸、を含む少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基から本質的になる二塩基酸残基;
ii.ジオール残基の総モル基準で75〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基、から本質的になるジオール残基;および
iii.ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で2〜40モル%の、少なくとも1種のポリオールの残基;
から本質的になり、数平均分子量300〜10,000ダルトン、ガラス転移温度−35℃〜35℃、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/ポリエステルg、および酸価0〜80mgKOH/ポリエステルgを有する、硬化性脂肪族ポリエステルである。
【0030】
本明細書で用いる語句「から本質的になる」は、上記に列挙する成分(i)〜(iii)を有する硬化性ポリエステルを網羅することを意図し、そして該語句が言及するポリエステルの本質的な特性を実質的に変化させる任意の要素を排除することが理解される。例えば、二塩基酸およびジオールの残基は、硬化性脂肪族ポリエステルの溶解性およびそのTSAレジンとの混和性を変えない他の成分を包含できる。例えば、Tg45℃超を有するレジンを生成するジオール、二塩基酸、およびポリオールのモノマーの任意の組合せは、ポリエステルポリマーの溶解性を低下させ、この態様から排除されることが当該分野で理解される。Tgを増大させ、そして溶解性を低減することが期待される二塩基酸およびジオールの幾つかの代表的な分類としては、これらに限定するものではないが、脂環式のジオールまたは二塩基酸の成分、およびポリ脂環式の二塩基酸またはジオールが挙げられる。この態様から排除される二塩基酸およびジオールの成分の幾つかの例は、50モル%以上での水素化ビスフェノールAおよび25モル%以上でのテトラヒドロフタル酸または無水物である。全てのモル%は二塩基酸残基またはジオール残基の総モル基準である。
【0031】
一方、上記態様に包含される組成物の幾つかの例は、例えば、脂肪族ポリエステルが、(i)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物から選択される少なくとも1種の脂環式ジカルボン酸の残基、ならびに50〜15モル%の、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の非環式脂肪族ジカルボン酸の残基から本質的になる二塩基酸残基;ならびに(ii)75〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基、および25〜0モル%の、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、および水素化ビスフェノールAから選択される少なくとも1種のジオールの残基から本質的になるジオール残基;から本質的になるものである。別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、またはこれらの混合物の残基、および15〜50モル%のアジピン酸の残基から本質的になる二塩基酸残基;ならびに(ii)75〜100モル%のTMCD残基および25〜0モル%のネオペンチルグリコール残基から本質的になるジオール残基;から本質的になる。更に別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50モル%のヘキサヒドロフタル酸無水物の残基および50モル%のアジピン酸の残基から本質的になる二塩基酸の残基;ならびに(ii)75〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基および25〜0モル%のネオペンチルグリコール残基から本質的になるジオール残基;から本質的になることができる。
【0032】
硬化性脂肪族ポリエステルは、ガラス転移温度(本明細書で「Tg」と略す)−35℃〜35℃を有する。硬化性脂肪族ポリエステルについてのTg範囲の幾つかの追加の代表例は、−35℃〜30℃、−35℃〜25℃、−35℃〜20℃未満、−35℃〜19℃、−35℃〜18℃、−35℃〜17℃、−35℃〜16℃、−35℃〜15℃、−35℃〜10℃である。
【0033】
硬化性脂肪族ポリエステルは、所望の分子量、酸価、またはヒドロキシル価に到達するまで反応物質を加熱することによって製造できる。反応は水(二塩基酸を出発物質として用いる場合)またはアルコール(ジエステルを用いる場合)の収集によって監視できる。ポリエステルは、典型的には、温度範囲150〜250℃で、大気圧または減圧下にて製造できる。一態様において、例えば、ポリエステルの二塩基酸成分およびジオール成分は、ポリオールを添加する前に部分的に反応させることができる。ポリオールを反応混合物に添加したら、目的の酸価が満足されるまで加熱を継続する。
【0034】
代替として、硬化性脂肪族ポリエステルをプロセス溶媒の存在下で製造して、反応の水またはアルコールの副生成物の除去を助け、そしてポリエステルレジンの合成を促進することができる。プロセス溶媒は、ポリエステルポリマーの製造に有用であることが当該分野で公知である任意の溶媒であることができる。例えば、プロセス溶媒は、炭化水素溶媒であることができる。別の例において、プロセス溶媒は、芳香族炭化水素,例えばキシレン等を含むことができる。キシレンは、純粋な異性体、またはオルト、メタ、およびパラの異性体の混合物であることができる。プロセス溶媒の量は、当業者によって理解されるように、日常実験によって決定できる。プロセス溶媒は、反応混合物の総質量基準で0.5〜5質量%の範囲の量で添加できる。
【0035】
任意に、触媒を用いてポリエステルの合成を促進できる。触媒は、ポリエステルレジンの形成に有用であることが当該分野で公知である任意の触媒であることができる。例えば、触媒は、スズ触媒,例えばFASCAT(商標) 4100(Arkema Corporationから入手可能)等であることができる。触媒は、上記のように、ポリエステルレジン反応の速度を増大させ、そしてその量は、当業者によって理解されるように日常実験によって決定できる。通常、触媒は、反応物質の総質量基準で0.01〜1.00質量%の範囲の量で添加する。
【0036】
我々の発明はまた、上記の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(TMCD)を含有する硬化性脂肪族ポリエステルレジンの種々の態様を含むコーティング組成物を提供する。よって、本発明の別の側面は:
(A).(A)および(B)の総質量基準で50〜90質量%の、少なくとも1種の硬化性脂肪族ポリエステルであって、
i.二塩基酸残基の総モル基準で少なくとも90モル%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基を含む二塩基酸残基であって、該脂肪族ジカルボン酸が50〜100モル%の脂環式ジカルボン酸を含む、二塩基酸残基;
ii.ジオール残基の総モル基準で50〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むジオール残基;および
iii.ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で2〜40モル%の少なくとも1種のポリオール残基;
を含み、数平均分子量300〜10,000ダルトン、ガラス転移温度−35℃〜35℃、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/ポリエステルg、および酸価0〜80mgKOH/ポリエステルgを有する、硬化性脂肪族ポリエステル;
(B).(A)および(B)の総質量基準で10〜50質量%の、カルボン酸または水酸基との反応性を有する少なくとも1種の化合物を含む架橋剤;および
(C).(A)、(B)および(C)の総質量基準で10〜60質量%の少なくとも1種の非水性溶媒;
を含む、熱硬化性コーティング組成物である。
【0037】
コーティング組成物の硬化性脂肪族ポリエステル成分は、本発明に関して上記した、種々の態様の二塩基酸、ジオール、ポリオール、酸価およびヒドロキシル価、ならびにガラス転移温度の任意の組合せを包含できることが理解される。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、二塩基酸残基の総モル基準で50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基および50モル%のアジピン酸残基を含むことができる。別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、50モル%のヘキサヒドロフタル酸無水物残基および50モル%のアジピン酸残基を含有できる。硬化性脂肪族ポリエステルの二塩基酸成分の幾つかの追加の非限定例は以下の通りである:(a)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに15〜50モル%の、4〜10炭素原子を有する少なくとも1種の脂環式脂肪族ジカルボン酸の残基;(b)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに15〜50モル%の、アジピン酸、コハク酸およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;(c)50〜75モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される1種または二塩基酸の残基;ならびに25〜50モル%の、アジピン酸、コハク酸およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;(d)50〜65モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに35〜50モル%の、アジピン酸、コハク酸およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;(e)50モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の二塩基酸の残基;ならびに50モル%の、アジピン酸残基;ならびに(f)50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基;ならびに50モル%のアジピン酸残基である。上記の脂環式および環状脂肪族のジカルボン酸の残基に加え、二塩基酸残基は、0〜10モル%の、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組合せから選択される少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸の残基を更に含むことができる。
【0038】
前記したように、我々の発明のポリエステル組成物の酸成分は、2つより多いカルボン酸基を含有するモノカルボン酸または多塩基酸の残基,例えば、安息香酸、酢酸、2−エチルヘキサン酸、プロピオン酸、tert−ブチル安息香酸、ブタン酸;トリメリット酸;1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,4−ブタントリカルボン酸、および1,2,5−ヘキサントリカルボン酸から選択される少なくとも1種の一塩基または多塩基のカルボン酸の残基等を更に含むことができる。
【0039】
TMCDに加え、コーティング組成物の硬化性脂肪族ポリエステルは、0〜50モル%の少なくとも1種の脂肪族ジオールを含むことができる。脂肪族ジオールの代表例としては、これらに限定するものではないが、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサン−ジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、および水素化ビスフェノールAが挙げられる。例えば、一態様において、硬化性脂肪族ポリエステルレジンは、ネオペンチルグリコールとTMCDとの残基の組合せを含む。上記で列挙したジオールは、TMCDおよび二塩基酸成分の任意の組合せで、そして上記した範囲内の任意の量で、使用できることを理解すべきである。
【0040】
例えば、一態様において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物から選択される少なくとも1種の脂環式ジカルボン酸の残基、および15〜50モル%の、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、およびグルタル酸から選択される少なくとも1種のアシル脂肪族ジカルボン酸の残基、を含む二塩基酸残基;ならびに(ii)50〜100モル%のTMCD残基、および50〜0モル%の、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、p−キシレンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、および水素化ビスフェノールAから選択される少なくとも1種のジオールの残基、を含むジオール残基;を含むことができる。別の例において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50〜85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物またはこれらの混合物の残基、および15〜50モル%のアジピン酸残基、を含む二塩基酸残基;ならびに(ii)50〜100モル%のTMCD残基、および50〜0モル%のネオペンチルグリコール残基、を含むジオール残基;を含むことができる。更に別の態様において、硬化性脂肪族ポリエステルは、(i)50モル%のヘキサヒドロフタル酸無水物残基および50モル%のアジピン酸残基を含む二塩基酸残基;ならびに(ii)75〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基、および25〜0モル%のネオペンチルグリコール残基、を含むジオール残基;を含むことができる。
【0041】
二塩基酸残基およびジオール残基に加え、コーティング組成物の硬化性脂肪族ポリエステルは、ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で2〜40モル%の少なくとも1種のポリオール残基を含む。これらのポリオールは、脂肪族、脂環式、および環式のアルキルポリオールを包含できる。ポリオールの幾つかの具体例としては、これらに限定されないが、トリメチロールプロパン(本明細書で「TMP」と略す)、ペンタエリトリトール(本明細書で「PE」と略す)、トリメチロールエタン(本明細書で「TME」と略す)、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン等が挙げられる。一例では、硬化性脂肪族ポリエステルは、3〜30モル%の、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、およびグリセリンから選択される少なくとも1種のポリオールの残基を含むことができる。別の態様では、硬化性脂肪族ポリエステルはトリメチロールプロパンを含む。
【0042】
本発明の硬化性脂肪族ポリエステルは、ヒドロキシル価20〜450mgKOH/レジンgを有する。ヒドロキシル価の更なる例は、25〜300mgKOH/レジンg、および30〜250mgKOH/レジンgである。加えて、硬化性脂肪族ポリエステルは、酸価0〜80mgKOH/ポリエステルg、または、別の例では、2〜25mgKOH/ポリエステルg、および2〜15mgKOH/ポリエステルgを有する。硬化性脂肪族ポリエステルの数平均分子量は、300ダルトン〜10,000ダルトンである。分子量範囲の追加の例は、400〜7000ダルトン、および500〜5000ダルトンである。硬化性脂肪族ポリエステルは、ガラス転移温度(本明細書で「Tg」と略す)−35℃〜35℃を有する。硬化性脂肪族ポリエステルについてのTg範囲の幾つかの追加の代表例は、−35℃〜30℃、−35℃〜25℃、−35℃〜20℃未満、−35℃〜19℃、−35℃〜18℃、−35℃〜17℃、−35℃〜16℃、−35℃〜15℃、−35℃〜10℃である。例えば、硬化性脂肪族ポリエステルは、ポリエステル1グラム当たりのヒドロキシル価30〜250mg水酸化カリウム、およびポリエステル1グラム当たりの酸価2〜15mg水酸化カリウム。および数平均分子量700〜7000ダルトン、およびTg−20℃〜20℃を有することができる。
【0043】
硬化性脂肪族ポリエステルは、後にコーティング配合物中で架橋剤と反応させる目的で、反応性官能基、典型的に水酸基、またはカルボキシル基を含む。官能基は、ポリエステルレジン組成物中に過剰なジオールまたは酸(ジカルボン酸またはトリカルボン酸由来)のいずれかを有することによって制御される。所望される架橋経路は、ポリエステルレジンがヒドロキシル末端であるか、またはカルボン酸末端であるかで決定されることになる。概念は、当業者に公知であり、且つ例えばOrganic Coatings Science and Technology,第2版、第246〜257頁(Z.Wicks,F.Jones、およびS.Pappas,Wiley,New York,1999より)に記載されている。
【0044】
熱硬化性コーティング組成物は、ポリエステルと架橋剤との組合せ質量基準で10〜50質量%の少なくとも1種の架橋剤をさらに含むことができる。典型的に、架橋剤は、カルボン酸末端またはヒドロキシル末端のいずれかのポリエステルレジンと反応し得る、一般的に当該分野において公知である化合物である。例えば、架橋剤は、エポキシド、メラミン、ヒドロキシアルキルアミド、およびイソシアネートから選択される少なくとも1種の化合物を含むことができる。例えば、エポキシド架橋剤は、カルボン酸末端ポリエステルレジンと反応し、一方、メラミン、イソシアネート、およびイソシアヌレートは、ヒドロキシル末端ポリエステルと反応することになる。
【0045】
メラミンまたは「アミノ」架橋剤も当該分野において周知であり、本発明のコーティング組成物において使用できる。例えば、本発明のコーティング組成物は、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメトキシメチル尿素、および混合ブトキシ/メトキシ置換メラミンから選択される少なくとも1種のメラミン化合物を含むことができる。市販で入手可能なメラミン架橋剤の幾つかの例としては、CYMELTM 300シリーズおよびCYMELTM 1100シリーズのメラミン架橋剤(Cytec Surface Specialtiesから入手可能)が挙げられる。ポリエステル対メラミンの質量比は、典型的には50:50〜90:10である。ポリエステル:メラミンの質量比の他の例は、60:40〜85:15、および65:35〜80:20である。
【0046】
メラミンに加えて、イソシアネートおよびイソシアヌレートを本発明に係る架橋剤として使用できる。代表的なイソシアネートおよびイソシアヌレートとしては、これらに限定するものではないが、トルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートのイソシアヌレート、メチレンビス−4,4’−イソシアナトシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、およびトリフェニルメタン4,4’,4”−トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ポリイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、およびエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリメチロールプロパンまたはこれらの組合せのイソシアネート末端付加物が挙げられる。
【0047】
コーティング組成物はまた、ジオールおよびポリオール,例えばエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリメチロールプロパン等、のイソシアネート末端付加物を架橋剤として含むことができる。これらの架橋剤は、上記のもののような1当量超のジイソシアネートを、1当量のジオールまたはポリオールと反応させて、2〜3のイソシアネート官能性を有する、より高分子量のイソシアネートプレポリマーを形成することによって形成される。いくつかの商業的なイソシアネート末端付加物の例としては、商品名DESMODURTMおよびMONDURTMでBayer Material Scienceから、ならびに商品名TOLONATETMでPerstorp Corporationから入手可能なイソシアネート架橋剤が挙げられる。
【0048】
本発明の一態様において、架橋剤は、硬化したーティングにおいて良好な屋外耐久性および色安定性を提供できる少なくとも1種の脂肪族イソシアネートを含む。脂肪族イソシアネートの例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、およびこれらの組合せが挙げられる。イソシアネート架橋剤の混合物もまた使用できる。更に別の態様において、架橋剤は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0049】
硬化性脂肪族ポリエステルおよびイソシアネートの反応についてのストイキオメトリー計算は、当業者に公知であり、The Chemistry of Polyurethane Coatings,Technical Publication p.20(Bayer Material Science, 2005より)に記載されている。当業者は、ポリエステルレジンとイソシアネートとの間の架橋が、最大分子量および最適な特性(イソシアネート:ヒドロキシルの当量比1:1(すなわち1当量のイソシアネート(−NCO)が1当量のヒドロキシル(−OH)と反応する場合)での分子量に関連し)に到達することを理解するであろう。しかし、典型的には、雰囲気、溶媒、および顔料からの付随の湿気との反応によるイソシアネートの損失を見越して小過剰のイソシアネート、例えば1:1当量から5〜10%過剰、を用いる。他のNCO:OH比を用いることができる;例えば、NCO対OHの比を1未満:1に変えて可撓性を改善すること、または1超:1にしてより硬く、より化学物質耐性で、かつより耐候性のコーティングを製造することが望ましい場合がある。
【0050】
本発明について、溶媒系熱硬化性コーティング組成物は、当量基準で、NCO:OH比0.9:1.0〜1.5:1.0を有する。他のNCO:OH比の例は、0.95:1.0〜1.25:1.0および0.95:1.0〜1.1:1.0である。
【0051】
熱硬化性コーティング組成物はまた、成分(A)、(B)および(C)の総質量基準で10〜60質量%の溶媒を含む。溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、ベンゼン、キシレン、ミネラルスピリット、ナフサ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、t−ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、エチルアセテート、メチルアセテート、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジアセトンアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(Eastman Chemical Co.から、商標名TEXANOLTMで入手可能)、またはこれらの組合せが挙げられる。コーティング組成物はまた、反応性溶媒,例えば、ジアリルフタレート、SANTOLINKTM XI−100 ポリグリシジルアリルエーテル(Cytecから入手可能)、および他の、例えば米国特許第5,349,026号および第5,371,148号に記載されるもの等を含むことができる。
【0052】
コーティング組成物は、任意に、少なくとも1種の架橋触媒を更に含むことができる。代表的な架橋触媒としては、カルボン酸、スルホン酸、3級アミン、3級ホスフィン、スズ化合物、またはこれらの化合物の組合せが挙げられる。架橋触媒の幾つかの具体例は、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、およびジノニルナフタレンジスルホン酸、安息香酸、トリフェニルホスフィン、ジブチルスズジラウレート、およびジブチルスズジアセテートから選択される少なくとも1種の化合物である。架橋触媒の選択は、典型的には、コーティング組成物において用いる架橋剤の種類に左右される。例えば、架橋剤はメラミンまたは「アミノ」架橋剤を含むことができ、そして架橋触媒は、p−トルエンスルホン酸、非ブロック化ドデシルベンゼンスルホンおよびブロック化ドデシルベンゼンスルホン(本明細書で「DDBSA」と略す)、ジノニルナフタレンスルホン酸(本明細書で「DNNSA」と略す)およびジノニルナフタレンジスルホン酸(本明細書で「DNNDSA」と略す)を含むことができる。これらの触媒の幾つかは、商標名例えばNACURETM 155,5076,1051,および5225(King Industriesから入手可能)、BYK−CATALYSTSTM(BYK−Chemie USAから入手可能)、ならびにCYCATTM触媒(Cytec Surface Specialtiesから入手可能)等で市販で入手可能である。
【0053】
別の態様において、硬化性脂肪族ポリエステルは、ヒドロキシル末端の末端基を含むことができ、そして架橋剤はイソシアネートを含むことができる。コーティング組成物はまた、少なくとも1種のイソシアネート架橋触媒,例えばFASCATTM 4202(ジブチルスズジラウレート)、FASCATTM 4200(ジブチルスズジアセテート)(両者はArkemaから入手可能)、DABCOTM T−12(Air Productsから入手可能)およびK−KATTM 348,4205,5218,XC−6212TM 非スズ触媒(King Industriesから入手可能)、ならびに3級アミンを含むことができる。
【0054】
別の例において、熱硬化性コーティング組成物は、25〜35質量%の溶媒、20〜35質量%のメラミン架橋剤、およびp−トルエンスルホン酸を含む架橋触媒、を含む。別の例において、熱硬化性コーティング組成物は、25〜35質量%の溶媒、および20〜35質量%のヘキサメトキシメチルメラミンを含むことができる。
【0055】
本発明のコーティング組成物は、当該分野で公知の少なくとも1種のコーティング添加剤を更に含むことができる。コーティング添加剤の例としては、これらに限定するものではないが、レベリング剤、レオロジー調整剤、流動調整剤,例えばシリコーン、フッ化炭素またはセルロース化合物;増量剤;可塑剤、艶消し剤;顔料湿潤および分散剤;紫外光(UV)吸収剤;UV光安定剤;消泡剤および泡止め剤;沈降防止剤、垂れ防止剤および増粘剤;皮張り防止剤;色むら防止剤および色浮き防止剤;ならびに腐食防止剤が挙げられる。このような添加剤の具体例は、Raw Material Index and Buyer’s Guide,発行元 National Paint&Coatings Association,1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington.,DC 20005、に見出すことができる。このような添加剤の更なる例は、米国特許第5,371,148号に見出すことができる。
【0056】
艶消し剤の例としては、これらに限定するものではないが、合成シリカ(Davison Chemical Division of W.R.Grace&CompanyからSYLOIDTMとして入手可能);ポリプロピレン(Hercules Inc.からHERCOFLATTMとして入手可能);および合成シリケート(J.M.Huber CorporationからZEOLEXTMとして入手可能)が挙げられる。分散剤の例としては、これらに限定するものではないが、ナトリウムビス(トリデシル)スルホサクシネート、ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウムスルホサクシネート、ナトリウムジヘキシルスルホサクシネート、ナトリウムジシクロヘキシルスルホサクシネート、ジアミルナトリウムスルホサクシネート、ナトリウムジイソブチルスルホサクシネート、ジナトリウムイソデシルスルホサクシネート、スルホコハク酸のジナトリウムエトキシ化アルコール半エステル、ジナトリウムアルキルアミドポリエトキシスルホサクシネート、テトラ−ナトリウムN−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホサクシナメート、ジナトリウムN−オクタスルホサクシナメート、硫酸化エトキシ化ノニルフェノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0057】
粘度、懸濁、および流動の調整剤としては、これらに限定するものではないが、ポリアミノアミドホスフェート、ポリアミンアミドの高分子量カルボン酸塩、および不飽和脂肪酸のアルキレンアミン塩(全てBYK Chemie USAからANTI TERRATMとして入手可能)が挙げられる。更なる例としては、これらに限定するものではないが、ポリシロキサンコポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0058】
幾つかの独占所有権で保護された泡止め剤は市販で入手可能であり、これらに限定するものではないが、BUBREAKTM(Buckman Laboratories Inc.から入手可能)、BYKTM(BYK Chemie,U.S.A.から入手可能)、FOAMASTERTMおよびNOPCOTM(Henkel Corp./Coating Chemicalsから入手可能)、DREWPLUSTM(Drew Industrial Division of Ashland Chemical Companyから入手可能)、TROYSOLTMおよびTROYKYDTM(Troy Chemical Corporationから入手可能)、ならびにSAGTM(Union Carbide Corporationから入手可能)が挙げられる。
【0059】
UV吸収剤、UV光安定剤、および酸化防止剤の例としては、これらに限定するものではないが、置換ベンゾフェノン、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、ヒンダードベンゾエート、フェノール、およびホスファイトが挙げられ、これらの幾つかは、Cytec Specialty ChemicalsからCYASORB(登録商標) UVとして、そしてCiba Specialty ChemicalsからTINUVIN(登録商標),CHIMASSORB(登録商標),IRGANOX(登録商標)およびIRGAFOS(登録商標)として入手可能であり;ジエチル−3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ならびにレゾルシノールモノベンゾエートが挙げられる。例えば、一態様において、熱硬化性コーティング組成物は、IRGANOX(登録商標) 1010酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)を含有できる。
【0060】
上記の塗料またはコーティングの添加剤は、コーティング組成物の比較的小さい比率、一般的には0.05質量%〜5.00質量%を形成する。例えば、コーティング組成物は、任意に、少なくとも1種の上記の添加剤および少なくとも1種の顔料を含有できる。
【0061】
溶媒系熱硬化性コーティング組成物はまた、上記のように、少なくとも1種の顔料を含むことができる。典型的には、顔料は、組成物の総質量基準で20〜60質量%の量で存在する。顔料の例としては、表面コーティングの当業者によって一般的に理解されるものが挙げられる。例えば、顔料は、典型的な有機または無機の顔料、特にColour Index,3rd ed.,2nd Rev.,1982,発行元 Society of Dyers and Colourists(American Association of Textile Chemists and Colorists関連)に記載されるものであることができる。好適な顔料の他の例としては、これらに限定するものではないが、二酸化チタン、バライト、クレー、炭酸カルシウム、CI Pigment White 6(二酸化チタン)、CI Pigment Red 101(赤色酸化鉄)、CI Pigment Yellow 42、CI Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4(銅フタロシアニン);CI Pigment Red 49:1およびCI Pigment Red 57:1が挙げられる。着色剤,例えばフタロシアニンブルー、モリブデートオレンジ、またはカーボンブラック等もまたコーティング組成物に添加できる。例えば、溶媒系の熱硬化性コーティング配合物は、二酸化チタンを顔料として含有できる。
【0062】
本発明の熱硬化性コーティング組成物は、TSAレジンを任意に含むことができる。熱硬化性アクリル(「TSA」)レジンは、バルク中または溶媒中でのフリーラジカル重合によって得られる。開始剤はフリーラジカル型のものであり、そして通常は有機過酸化物またはアゾ化合物,例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル)−バレロニトリルが挙げられる。反応は、好ましくは、用いる溶媒の還流温度で実施する。これは一般的には用いる開始剤の熱分解温度よりも高い。アクリルレジンは、エチレン性不飽和モノマー(アクリレート、メタクリレート、スチレン、(メタ)アクリル酸、およびビニルエステルが挙げられる)で構成されている。これらは、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、ブロック化フェノールおよび/またはアセトアセトキシ基を更に含有する。アクリルレジンの調製方法および成分の好適例としては当該分野で公知のものが挙げられ、これらに限定するものではないが、上記、およびResins for Surface Coatings,Vol.II,p.121−210,ed.P.K.T.OldringおよびG.Hayward,SITA Technology,London,UK,1987より、に記載されるものが挙げられる。
【0063】
ヒドロキシル官能性TSAレジンの例としては、MACRYNALTMシリーズ(Cytec Surface Specialtiesから入手可能)、ACRYLOIDTMシリーズ(Rohm and Haas Companyから入手可能)、およびJONCRYLTMシリーズ(BASF Corporationから入手可能)が挙げられる。用いるヒドロキシル官能性TSAレジンの1つの具体例は、MACRYNALTM SM 515/70BAC(Cytec Surface Specialtiesから入手可能)である。
【0064】
硬化性脂肪族ポリエステルおよびTSAレジンは、一緒にブレンドすることができる。ブレンド物中のポリエステルの質量%は、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、および最も好ましくは15〜30質量%である。
【0065】
典型的には、熱硬化性コーティング組成物および添加剤は、40〜90%の不揮発分を含有するコーティング中に配合できる。配合後、コーティング組成物を基材または物品に適用できる。よって、本発明の更なる側面は、本発明のコーティング組成物でコートされた、成形または形成された物品である。基材は任意の一般的な基材,例えば紙;ポリマーフィルム,例えばポリエチレンまたはポリプロピレン;木材;金属,例えばアルミニウム、スチールまたはガルバナイズドシート;ガラス;ウレタンエラストマー;プライマー付の(塗装された)基材;等であることができる。コーティング組成物は、基材上に、当該分野で公知の方法を用いて、例えばスプレー、ドローダウン、ロールコート等によって、0.5〜4milのウエットコーティングを基材上にコートできる。コーティングは、環境温度(室温)で硬化させることができ、または強制換気オーブン内で温度50℃〜175℃に、典型的には5〜90分間加熱し、その後放冷することができる。典型的な適用および硬化方法の更なる例は、米国特許第4,737,551号および第4,698,391号および第3,345,313号に見出すことができる。以下の例により本発明を更に説明する。
【0066】

硬化性脂肪族ポリエステルの調製−比較例P1、例P2、例P3および例P4−例および比較の脂肪族ポリエステルレジン(表1)は、以下の手順に従い、目的の数平均分子量=1250、ヒドロキシル質量当量=500、ヒドロキシ官能性=2.5、および最終酸価=8、で調製した。
【0067】
レジンは溶媒法を用いて調製してエステル化の水の除去を助けた。レジンは、2リットルの反応ケトル(加熱マントル、機械撹拌器、熱電対、窒素雰囲気生成器(0.6scfh)、油熱分縮器(103℃〜105℃)、凝縮物トラップ、および水冷全縮器(15℃)を備える)内で調製した。凝縮物トラップ、ケトル頂部およびケトルからカラムへのアダプタは、アルミニウム箔および繊維ガラステープによって覆って水除去を容易にした。段階1の原料を反応器に入れた。追加のキシレン(約30g)を用いて凝縮物トラップを満たした。次いで温度を室温から150℃まで90分間に亘って増大させて、均一な溶融物を形成した。撹拌(300rpm)を開始し、温度を最大230℃まで240分間に亘って増大させた。理論上半分の凝縮物が収集された時点で、段階2のTMPを添加した。最終酸価6±2mgKOH/レジンgが得られるまで、反応混合物を230℃で保持した。次いでレジンを金属塗料缶内に注ぎ入れた。
【0068】
ポリエステルの酸価(「AN」と略す)、ヒドロキシル価(「OH♯」と略す)、数平均分子量(「Mn」と略す)およびガラス転移温度(「Tg」と略す)を表1に示す。酸
価は、ASTM法 D1639を用いて評価した。ヒドロキシル価は、レジンを過剰の無水酢酸とピリジン中で反応させることによってエステル化し、次いで未反応無水物を水で分解することにより評価した。次いで、得られる酢酸を、KOHの標準溶液で滴定する。1グラムのレジンサンプルに対する当量のKOHのミリグラム数を、ヒドロキシル価として報告する。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって、屈折率検出器を用いてポリスチレン標準で評価した。
【0069】
溶媒プロセスからのレジン中に残存する残留キシレンは、Tg測定を低くする可能性があった。より正確なTgを得るために、レジンサンプルをまず、TGA(熱重量分析)装置内で前状態調整に供した。これをステンレススチールDSCパン内に入れ、そして窒素雰囲気下で室温から150℃まで、速度5℃/分で加熱した。次いでサンプルを示差走査熱量計(調整能力を有する)(TA Instruments Q2000 MDSC,Universal software V4.3Aを備える)に移した。1回目加熱サイクルで、サンプルを窒素雰囲気下で−120℃から125℃まで速度5℃/分で、±0.796℃/分で調整して、加熱した。次に、これを−120℃まで5℃/分で、±0.796℃/分で調整して冷却した。2回目加熱サイクルについて、サンプルを1回目加熱サイクルで用いたのと同じ条件下で加熱した。2回目加熱サイクルの中間点をサンプルのTgとして報告する。
【0070】
各レジンの固形分を70質量%までn−ブチルアセテート(n−BuOAc)中にて低減した。次いで溶液を色、明澄性および溶液粘度について評価した。白金−コバルト色を、Gardco LICO 100熱量計で、ASTM法 D1209に従って測定した。色値0から100の範囲は、それぞれ無色から極めて薄い黄色である。
【0071】
溶液の明澄性は、BYK−Gardner haze−gard plus装置で、ASTM法 D1003,Method Aに従って測定した。そしてヘイズパーセントとして報告する。
【0072】
溶液粘度は、Brookfield Model LV DV II+ Pro粘度計を用いて評価した。粘度は、4オンス瓶内で100rpmにて、スピンドル♯63を用いて測定した。粘度読み1000センチポイズ未満は、極めて低いと解釈される。
【0073】
表1に示すように、ポリエステルP2、P3およびP4は、低い色、良好な明澄性および低い粘度を有する。全ては、TSAレジンとのブレンドおよび高固形分の溶媒系熱硬化性コーティング中への配合に好適である。
【0074】
【表1】

【0075】
(a)計算された使用質量基準で1質量%過剰のグリコールを含む
(b)2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(Eastman)
(c)2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(Eastman)
(d)トリメチロールプロパン(Perstorp)
(e)アジピン酸(DuPont)
(f)ブチルスタノイック酸(Arkema)
(g)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
(h)ヘキサヒドロフタル酸無水物
【0076】
TSA/脂肪族ポリエステルブレンド物の調製−例B3、B4、B5、B7、B8、B9、B11、B12、およびB13は、TSAと本発明の脂肪族ポリエステルとのブレンド物を示す。一方、例B1、B2、B6、およびB10は比較例である。TSA/脂肪族ポリエステルブレンド物の特性を表2に列挙する。
【0077】
脂肪族ポリエステルレジンは、市販で入手可能なTSAレジン、MACRYNALTM SM 515/70BAC(Cytec Surface Specialtiesから入手可能)との混和性について評価した。MACRYNALTM SM 515は、脂肪族ポリイソシアネートと架橋可能なヒドロキシル官能性アクリルである。このTSAレジンは、製造元によって、風乾および強制乾燥の2液型高固形分熱硬化性コーティングにおいて用いることが推奨されている。
【0078】
TSA/ポリエステルレジンブレンド物は、固形分70質量%で、n−ブチルアセテート中、TSA:ポリエステル質量比85:15、75:25および65:35にて評価した。MACRYNALTM SM 515は、n−ブチルアセテート中の70質量%溶液として供給し、全てのポリエステルレジンを、n−ブチルアセテート中の固形分70質量%に低減した。適切量のアクリルおよびポリエステルレジンの溶液を、表2中に示すように、4オンス瓶内で組合せた。次いで溶液を室温で24時間回転させて、成分を完全に混合した。
【0079】
TSA/ポリエステルブレンド物の粘度は、Brookfield Model LV DV II+ Pro粘度計を用いて評価した。粘度は、4オンス瓶内で20rpmにて、スピンドル♯63を用いて測定した。センチポイズ単位で報告する。各々のTSA/ポリエステルブレンド物の一部を、10mil湿潤フィルムとしてガラス上にキャストし、そして7時間、80℃(176°F)にて強制乾燥させ、次いで室温で4日間乾燥させた後評価した。
【0080】
ブレンド物のTgは、乾燥させたキャストフィルムのサンプルで、示差走査熱量計(調整能力を有する)(TA Instruments Q2000 MDSC,Universal software V4.3Aを備える)を用いて評価した。1回目加熱サイクルで、サンプルをヘリウム雰囲気下で−120℃から125℃まで速度5℃/分で、±0.531℃/40秒で調整して、加熱した。次いでサンプルを液体窒素で−120℃まで急冷した。2回目加熱サイクルについて、サンプルを1回目加熱サイクルで用いたのと同じ条件下で加熱した。2回目加熱サイクルの中間点をサンプルのTgとして報告する。
【0081】
脂肪族ポリエステルとTSAレジンとの親和性を、乾燥させたフィルムのヘイズ%を、ASTM法 D1003,Method Aに従って、BYK−Gardner HAZE−GARD PLUSTM装置を用いて測定することによって評価した。
【0082】
表2は、TSAレジンの粘度が、いずれかのポリエステルとブレンドしたときに低下したことを示す。粘度は、ポリエステル量が増大するに従って低下する。加えて、比較例B2、B6およびB10は、Tgにおいて、特にポリエステル量が増大するに従って、TSA単独からの最大の低減を示す。例のブレンド物B3,B4,B5,B7,B8,B9,B11,B12およびB13は、Tgに対する影響がより少ない。ポリエステルP4におけるTMCD/HHPAの組合せは、最も大きいTg保持を示す。35%のポリエステル量にて、ポリエステルP4から製造した例のブレンド物B13は、TSAの元のTgから7℃低下したのみであったのに対し、ポリエステルP1を含有する比較のブレンド物B10については35℃低下した。
【0083】
ヘイズ%で示したときの、例のポリエステルP2、P3およびP4とTSAとの混和性は、比較ポリエステルP1から製造したブレンド物およびTSA単独と同様であった。
【0084】
【表2】

【0085】
(a)比較例
(b)全てのレジンは、n−BuOAC中の固形分70質量%
【0086】
ポリウレタンコーティングの調製−白色顔料入りポリウレタンコーティングを、脂肪族ポリエステルレジンP1、P3およびP4から調製した。そして表3に示す。レジンは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのトリイソシアヌレートと、1.1:1のNCO:OH比で架橋した。
【0087】
パートAの脂肪族ポリエステルおよび顔料を、500mLのステンレススチールビーカーに添加した。コールズ分散器を用いて、レジンおよび顔料を7+Hegmanまで約5分間5000rpmで粉砕した。次いで流動助剤を添加し、数分間完全に混合した。最後に、触媒および溶媒のブレンド物を添加して完全に混合した。全パートA混合物をガラス瓶内に移し、必要になるまで回転させた。パートB架橋剤をパートAに添加し、木製舌圧子で完全に混合し、次いでHayward PE 100 PN164 300Mフェルトペイントフィルター(中メッシュ紙フィルター内側)に通してろ別した。
【0088】
コーティング粘度を、Gardco mini Ford dip cup #4で評価した。初期粘度測定は、パートBをパートAと組合せて完全に混合した後に行った。次いで、その後粘度を2時間毎に測定した。表3に示す。
【0089】
ワイヤーを巻いた棒を用いてコーティングをガラス顕微鏡スライドに塗布し、低温回転スチール試験パネルをBonderite 1000前処理で艶出しした。棒は、1.5±0.2milドライフィルム厚みを実現するように選択した。
【0090】
コーティングを30分間250°F(121.1℃)で強制乾燥させた。ケーニッヒ振り子硬度を除き、全てのコーティング機械特性は、21日間の環境中エージング後に評価した。コーティングの鏡面光沢度、像の明瞭性、反射性、色、硬度、可撓性、溶剤耐性、化学物質耐性、および加速耐候性(UVAおよび恒湿)を評価し、表4〜9に報告した。
【0091】
ドライフィルム厚み(「DFT」と略す)を、Fischerscope MMS Multi Measuring System permascope(Fischer Technology)で、鉄基材用のプローブを用いて測定した。鏡面光沢度は、BYK−Gardner micro−TRI−gloss meterで、ASTM法 D523に従って測定した。像の明瞭性(「DOI」と略す)は、BYK−Gardner wave−scan DOI装置で、ASTM法 E430に従って測定した。
【0092】
色(CIE L***)および反射率(CIE Y)値は、HunterLab UltraScan PRO分光光度計で、ASTM法 E313に従って測定した。値は、D65光源および10度視野を用いて算出した。MEK二重摩擦耐溶剤性は、16層のコットンチーズクロス内に巻かれた32オンスボールピーンハンマーにて、ASTM法D1308に従って行った。合格の数を、金属に対するコーティングの任意の突破が観察されたまでの最後の摩擦として報告する。試験は最大300の二重摩擦で行い、観察は、摩擦経路の左側、中央、および右側で行った。
【0093】
硬度は、3つの方法で評価した:BYK−Gardner振り子硬度試験機でASTM法 D4366を用い;鉛筆試験によってASTM法 D3363を用い;そしてInstron Wilson−Wolpert Tukon 2100B押し込み硬度試験機でASTM法 E384を用いた。振り子硬度に関し、ケーニッヒ法(「KPH」と略す)を報告する。KPHは、21日の過程に亘って追跡した。第1の測定、第1日は、250°Fでの硬化から24時間後に採った。鉛筆試験について、報告した値は、金属までコーティングが突き抜けなかった最後の鉛筆である。ツーコン(Tukon)硬度は、ガラス顕微鏡スライドに塗布されたコーティング上で測定した。装置は、10gの重りおよび13秒の圧入時間で実行されるように、20X倍率を用いて設定した。ツーコン硬度は、ヌープスケール(「HK」と略す)を用いて報告する。
【0094】
可撓性は、Gardco Model 172万能衝撃試験機でASTM法 D2794に従って耐衝撃性として測定した。報告される値は、コーティングフィルム中のクラックまたは基材からのコーティングの剥離を何ら生じさせない最後の衝撃である。
【0095】
硫酸(H2SO4)の50%溶液に対する耐性を、雰囲気条件下で、36日間で実施し、ASTM法 D1308に従って測定した。酸溶液の落下をコーティング上に位置させ、時計ガラスで覆い、パラフィンワックスでシールした。ブリスターの形成を調べる前に、試験領域を水でリンスした。
【0096】
屋外耐久性を測定するために、コーティングをQUVA(340nm)加速気候にQUV/SE装置(Q−Lab)を用いて供した。ADTM法 D4587についての「一般的な金属」コーティング用の試験条件(4時間60℃でのUV暴露、続いて4時間50℃での凝縮)を選択した。試験パネルの端部および背部をテープ貼りして、錆形成から保護した。測定を、UV光サイクル中へ2時間行って乾燥表面および測定の不変性を確保した。試験パネルを各観察間隔の後に回転させた。コーティングを、光沢保持(20°および60°、ASTM法 D523にて)および色変化(Hunter ΔE*および黄色度、ASTM法 E308およびASTM法 D1925)について試験した。結果を表5および6に示す。
【0097】
コーティングの屋外耐久性もまた、ASTM法 D4585に記載されるような制御された凝縮を用いてその耐水性を試験することによって評価した。コーティングをクリーブランド(Cleveland)凝縮型湿潤キャビネット(Q.−Lab Model QCT/ADO)内に、脱イオン水での連続60℃ミストで入れた。試験パネルの端部および背部をテープ貼りして錆形成から保護した。各々の観察間隔の後にこれらを回転させた。コーティングを、光沢保持(20°および60°、ASTM法 D523にて)およびブリスターの度合い(ASTM法 D714を用い)について評価した。結果を表7、8および9に示す。
【0098】
表3は、例のコーティングC2およびC3が、比較例C1(ジオールとしてのNPGグリコールを基にする)と同様のポットライフを示すことを示す。コーティング機械特性を表4に与える。
【0099】
例C2およびC3は、比較例C1よりも高い光沢、DOI、および反射率を示す。色は、全てのコーティングについて比較的同様である。例C2およびC3はまた、より高い光沢、DOIおよび反射率の値で示されるようなより均一かつ鮮やかな外観を有する。
【0100】
MEK二重摩擦耐溶剤性は、コーティング表面に亘って、比較例C1よりも例C2およびC3で高かった。特に、例C2でのTMCD/CHDAの組合せは、基材に対するコーティングの突破を何ら示さなかった。
【0101】
鉛筆、ツーコンおよびケーニッヒ振り子試験によって測定したときの硬度は、例C2およびC3でより大きかった。加えて、例C2およびC3は、比較例C1と同様の可撓性を示す。例C2およびC3は、H2SO4溶液への36日曝露後にも影響されなかった。一方比較例C1はブリスターが生じた。
【0102】
約3500時間のQUVA(340nm)加速気候曝露後、例C2およびC3は、比較例C1よりも大きい光沢保持を有した(表5参照のこと)。例C2およびC3の光沢保持は、約4.5倍長かった。例C2およびC3はまた、全試験期間に亘って1単位のみのHunter ΔE*シフトおよび黄色度シフトを示した(表6参照のこと)。
【0103】
クリーブランド湿度試験に供した際、例C2およびC3は、比較例C1よりも大きい光沢保持を、ブリスターの発生を殆どまたは全く伴わずに有した(表7、8および9参照のこと)。特に、例C3は、10,000時間曝露後に、ブリスター形成を伴わずに、その元の20°光沢の73%を保持した。
【0104】
【表3】

【0105】
(a)DuPont Titanium Technologies
(b)BYK−Chemie
(c)Arkema (ジブチルスズジラウレート)
(d)Bayer MaterialScience (脂肪族ポリイソシアネートHDIトリマー)
【0106】
【表4】

【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
【表7】

【0110】
【表8】

【0111】
【表9】

【0112】
【表10】

【0113】
【表11】

【0114】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.二塩基酸残基の総モル基準で少なくとも90モル%の、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の残基を含む二塩基酸残基であって、該脂肪族ジカルボン酸が約50〜100モル%の脂環式ジカルボン酸を含む、二塩基酸残基;
ii.ジオール残基の総モル基準で約50〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基を含むジオール残基;および
iii.ジオール残基とポリオール残基との総モル基準で約2〜約40モル%の少なくとも1種のポリオール残基;
を含み、数平均分子量約300〜約10,000ダルトン、ガラス転移温度約−35℃〜約35℃、ヒドロキシル価約20〜約450mgKOH/ポリエステルg、および酸価0〜約80mgKOH/ポリエステルgを有する、硬化性脂肪族ポリエステル。
【請求項2】
該二塩基酸残基が、約50〜約85モル%の、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物から選択される少なくとも1種の脂環式ジカルボン酸の残基、および約50〜約15モル%の、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびグルタル酸から選択される少なくとも1種の非環式脂肪族ジカルボン酸の残基を含み;そして該ジオール残基が、約50〜0モル%の、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−ヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,2−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、p−キシレンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,10−デカンジオール、および水素化ビスフェノールAから選択される少なくとも1種のジオールの残基を含む、請求項1に記載の硬化性脂肪族ポリエステル。
【請求項3】
該二塩基酸残基が、約50〜約85モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物またはこれらの混合物の残基、および約15〜約50モル%のアジピン酸残基を含み;そして該ジオール残基が、約50〜0モル%のネオペンチルグリコール残基を含む、請求項2に記載の硬化性脂肪族ポリエステル。
【請求項4】
該二塩基酸残基が、約50モル%のヘキサヒドロフタル酸無水物残基および約50モル%のアジピン酸残基を含み;そして該ジオール残基が、約75〜100モル%の2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基および約25〜0モル%のネオペンチルグリコール残基を含む、請求項3に記載の硬化性脂肪族ポリエステル。
【請求項5】
約3〜約30モル%の、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールおよびグリセリンから選択される少なくとも1種のポリオールの残基を含む、請求項1に記載の硬化性脂肪族ポリエステル。
【請求項6】
ポリエステル1グラム当たりのヒドロキシル価約30〜約250mg水酸化カリウム、ポリエステル1グラムあたりの酸価約2〜約15mg水酸化カリウム、および数平均分子量約700〜約7000ダルトン、およびTg約−20℃〜約20℃を有する、請求項1に記載の硬化性脂肪族ポリエステル。
【請求項7】
(A).(A)および(B)の総質量基準で約50〜約90質量%の、請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の硬化性脂肪族ポリエステル;
(B).(A)および(B)の総質量基準で約10〜約50質量%の、カルボン酸または水酸基との反応性を有する少なくとも1種の化合物を含む架橋剤;および
(C).(A)、(B)および(C)の総質量基準で約10〜約60質量%の少なくとも1種の非水性溶媒;
を含む、熱硬化性コーティング組成物。
【請求項8】
該架橋剤が、メラミン、イソシアネートおよびイソシアヌレートから選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
該架橋剤が、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、テトラメトキシメチルウレア、および混合ブトキシ/メトキシ置換メラミンから選択される少なくとも1種のメラミン化合物を含む、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
該架橋剤が、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー、またはこれらの組合せを含む、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
該非水性溶媒が、ベンゼン、キシレン、ミネラルスピリット、ナフサ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、t−ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、エチルアセテート、メチルアセテート、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノ−イソブチレート、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジアセトンアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、またはこれらの組合せを含む、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
請求項7に記載のコーティング組成物でコートされている、成形品。

【公表番号】特表2012−517497(P2012−517497A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549145(P2011−549145)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/000213
【国際公開番号】WO2010/090712
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】