テトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物
下記一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物及びそれを含有する硬化性組成物は、レジストインキ、塗料、成形材等の種々の用途に使用可能である。また、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の他に、アルカリ可溶性であるカルボキシル基含有化合物(A)や、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)、1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)、硬化触媒(F)等を含有する硬化性組成物は、プリント配線板のソルダーレジスト、エッチングレジスト、メッキレジスト、多層配線板の層間絶縁層、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスク、カラーフィルター用レジストなどの用途に有用である。(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基、好ましくは脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基を表わす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なテトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物に関するものであり、レジストインキ、塗料、成形材等の種々の用途に使用可能である。
【0002】
さらに本発明は、プリント配線板の製造等に用いられる硬化性組成物に関し、より詳しくは、ヒートサイクルによる耐クラック性や電気絶縁性に優れ、且つPCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性などの諸特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、航空宇宙産業分野や電子材料分野では、優れた反応性や加工性を有することから、(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物が広く用いられている。特に、航空宇宙産業分野に用いられる複合材料の製造においては、(メタ)アクリレート化合物、重合開始剤、及び炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維強化材からなる組成物が多量に使用されているが、組成物の光硬化性及び/又は熱硬化性のみならず、その硬化物の耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性を得るためには、(メタ)アクリレート化合物が重要な成分である。
【0004】
しかしながら、従来市販の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物を用いて得られる複合材料では、高湿下での熱特性と柔軟性とを共に満足できず、高性能化の要求に対応できないのが現状である。即ち、従来市販の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物を用いて得られる複合材料では、湿気による熱的及び機械的長期信頼性が劣っていた。このような長期信頼性の問題は、航空宇宙産業分野に限られるものではなく、電子材料分野など、他の分野においても望ましくない。
【0005】
また、一般に、プリント配線板用レジスト材などの電子材料、特に、ソルダーレジストとして用いられる硬化性組成物の硬化皮膜においては、電気絶縁性に優れ、且つ、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れることが要求される。
【0006】
特に最近では、自動車に搭載されるプリント配線板において、長期に渡って高温や低温に曝されることから、前記した諸特性の他にヒートサイクルによる耐クラック性に優れることが要求されるようになった。かかる特性は、プリント配線板上のソルダーレジストに限られるものではなく、ビルドアップ多層配線板等の層間絶縁層など、他の用途の製品においても要求されている。
【0007】
しかしながら、従来の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物を用いて形成したソルダーレジストでは、ヒートサイクルによる耐クラック性と前記諸特性を共に満足させることができないのが実情である。
【0008】
上記のような問題の解決のために、これまで種々の(メタ)アクリレート化合物が新たに開発されているが、耐吸湿性並びに高湿下その耐熱性及び柔軟性の特性を充分に満足させるには未だ至っていないのが現状である。例えば、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の2級のアルコール性水酸基に塩化アクリロイルを反応させて得られる(メタ)アクリレート化合物が挙げられる(特開平9−124714号参照)。しかし、このような(メタ)アクリレート化合物は、優れた耐吸湿性と高湿下での耐熱性を共に満足させるには、まだ不充分である。一方、低吸湿性を有する(メタ)アクリレート化合物としては、テレフタル酸クロライドとヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるジ(メタ)アクリレート化合物が開発されている(特開2003−2919号参照)。しかし、この(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に有する不飽和基が2個であるため、光硬化性及び/又は熱硬化性に乏しく、その結果、高湿下での耐熱性が劣るという問題がある。他方、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れた(メタ)アクリレート化合物としては、テレフタル酸クロライドとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させて得られるヘキサ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる(特開昭62−52547号参照)。しかし、この(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に不飽和基を6個有するため、光硬化性及び/又は熱硬化性には優れるが、硬化により高架橋となるため、硬くて脆い硬化物を形成する。従って、硬化物が柔軟性に欠けるため、高湿下での老化中に破壊する恐れがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性にも優れた硬化物が得られる、新規なテトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れると共に、ヒートサイクルによる耐クラック性に優れ、且つ電気絶縁性、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性を充分に満足させる硬化物を与える硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【発明の開示】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物が提供される。
【化1】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【0012】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語であり、同様にアクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表記し、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表記する。
【0013】
好適な態様によれば、前記一般式(1)において、前記ジカルボン酸残基Xは、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基である。前記ジカルボン酸残基Xが芳香族ジカルボン酸残基の場合、好ましくは、前記ジカルボン酸残基Xは、下記式(B1)〜(B7)で表わされるいずれかの芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは下記式(B3)の芳香族ジカルボン酸残基である。
【化2】
【0014】
さらに本発明によれば、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物の硬化物が提供される。
【0015】
本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に4個の不飽和基を有し、二股状の末端にそれぞれ(メタ)アクリロイル基を有する一対のユニットが各々、熱的に安定なエステル結合を介する、又はエステル結合を介して、アルキレンもしくはポリメチレン又は芳香環などにより連結された構造を有するため、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れている。
【0016】
本発明の他の側面によれば、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。好適な態様によれば、前記一般式(1)において、前記ジカルボン酸残基Xが脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であるテトラ(メタ)アクリレート化合物が用いられる。前記ジカルボン酸残基Xが芳香族ジカルボン酸残基の場合、好ましくは、前記ジカルボン酸残基Xは、前記式(B1)〜(B7)で表わされるいずれかの芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは前記式(B3)の芳香族ジカルボン酸残基である。
【0017】
本発明の硬化性組成物のさらに好適な態様によれば、前記したようなテトラ(メタ)アクリレート化合物と共に、他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤を含有し、あるいはさらに繊維強化材を含有する。
【0018】
本発明のさらに他の側面によれば、上記硬化性組成物を用いて得られる硬化物が提供される。好適な態様によれば、硬化物はガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維強化材を含有する。
【0019】
前記硬化性組成物は、前記した構造を有するテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有するため、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れている。
【0020】
本発明の別の側面によれば、(A)カルボキシル基含有化合物、(B)前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物、(C)重合開始剤、及び(D)希釈溶剤を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。好適な態様によれば、前記一般式(1)において、前記ジカルボン酸残基Xが脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であるテトラ(メタ)アクリレート化合物が用いられる。前記ジカルボン酸残基Xが芳香族ジカルボン酸残基の場合、好ましくは、前記ジカルボン酸残基Xは、前記式(B1)〜(B7)で表わされるいずれかの芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは前記式(B3)の芳香族ジカルボン酸残基である。
【0021】
本発明の硬化性組成物のさらに好適な態様によれば、前記したような各成分に加えて、さらに(E)1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物、又はさらに(F)硬化触媒、あるいはさらにさらに(G)他のラジカル重合性モノマーを含有する。
【0022】
本発明のさらに別の側面によれば、上記硬化性組成物を用いて得られる硬化物が提供される。
【0023】
前記硬化性組成物は、アルカリ可溶性である(A)カルボキシル基含有化合物や、(C)重合開始剤、(D)希釈溶剤と共に、(B)前記した構造を有するテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有するため、アルカリ現像可能であると共に、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は、ヒートサイクルによる耐クラック性に優れると共に、電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の特性にも優れている。また、上記各成分に加えて、熱硬化性成分として(E)1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物を含有する硬化性組成物の場合、露光現像後の熱硬化により、電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性をさらに向上させることができ、さらに(F)硬化触媒を含有することにより硬化開始温度を低くでき、また熱硬化反応を促進することができる。あるいはさらに(G)他のラジカル重合性モノマーを含有する硬化性組成物の場合、光硬化性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】合成例1で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0025】
【図2】合成例1で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0026】
【図3】合成例1で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0027】
【図4】合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0028】
【図5】合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0029】
【図6】合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0030】
【図7】TG曲線から耐熱温度を求める方法を説明するためのグラフである。
【0031】
【図8】合成例3で得られたオイルの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0032】
【図9】合成例3で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0033】
【図10】合成例3で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0034】
【図11】合成例3で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0035】
【図12】合成例4で得られたオイルの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0036】
【図13】合成例4で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0037】
【図14】合成例4で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0038】
【図15】合成例4得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0039】
【図16】合成例4で得られた液体の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0040】
【図17】合成例4で得られた液体の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0041】
【図18】合成例4で得られた液体の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0042】
【図19】合成例5で得られたオイルの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0043】
【図20】合成例5で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0044】
【図21】合成例5で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0045】
【図22】合成例5で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0046】
【図23】合成例6で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0047】
【図24】合成例6で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0048】
【図25】合成例6で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0049】
【図26】3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0050】
【図27】3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0051】
【図28】後述する式(3)で示される構造のモノカルボン酸の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0052】
【図29】合成例7で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0053】
【図30】合成例8で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0054】
【図31】合成例8で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0055】
【図32】合成例8で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0056】
【図33】3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレートが、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れていることを見出した。
【0058】
また、本発明者は、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物、好ましくは、さらに他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤あるいはさらに繊維強化材を含有する硬化性組成物が、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示し、且つ、優れた耐吸湿性並びに高湿下での優れた耐熱性及び柔軟性を有する硬化物を与えることを見出した。すなわち、本発明の硬化性組成物に用いられる前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物は、熱的に安定なエステル結合を有し、また1分子中に4個の不飽和基を有しているため光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐吸湿性にも優れている。しかも、1分子中に4個という適切な数の不飽和基を有するため、硬くて脆い硬化皮膜を形成し難く、靭性に優れた硬化物が得られる。従って、このテトラ(メタ)アクリレート化合物と共に、他のラジカル重合性モノマー、重合開始剤、繊維強化材等を含有してなる硬化性組成物は、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示し、且つ、優れた耐吸湿性並びに高湿下での優れた耐熱性及び柔軟性を有する硬化物を与える。
【0059】
さらに本発明者は、カルボキシル基含有化合物(A)、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)等と共に、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する硬化性組成物が、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示すと共に、その硬化物が、優れた耐クラック性に加え、前記した電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れた硬化物を与えることを見出した。
【0060】
すなわち、硬化性成分として、前記したように光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐水性に優れると共に、靭性に優れた硬化物を与える前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)を含有すると共に、アルカリ可溶性のカルボキシル基含有化合物(A)、重合開始剤(C)及び希釈溶剤(D)を含有し、好ましくは、さらに1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)、又はさらに硬化触媒(F)、あるいはさらにさらに他のラジカル重合性モノマー(G)を含有してなる硬化性組成物は、アルカリ現像可能であると共に、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示し、且つ、その硬化物は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)によって、前記諸特性を得るために必要な密着性、低吸湿性、柔軟性及び耐熱性が付与される。
【0061】
以下に、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物について詳細に説明する。
【0062】
まず、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、種々の方法によって得ることができる。例えば、下記一般式(2)で表わされる3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、ジカルボン酸クロライド又はジカルボン酸もしくはその無水物又はジカルボン酸エステルとのエステル化などである。これらの中でも、好ましい方法は、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドとの脱塩酸反応、及び3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸との脱水縮合反応によるエステル化である。
【化3】
(但し、R1、R2は水素原子又はメチル基を表わす。)
【0063】
前記3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応によって得ることができるが、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル類とグリセリンとの反応、(メタ)アクリル酸とグリシドールとの反応などによっても得ることができる。
【0064】
前記脂肪族ジカルボン酸クロライドとしては、例えば、コハク酸クロライド、グルタル酸クロライド、アジピン酸クロライド、スベリン酸クロライド、アゼライン酸クロライド、セバシン酸クロライドなどの脂肪族飽和ジカルボン酸ハライド、フマル酸クロライドなどの脂肪族不飽和ジカルボン酸ハライドなどが挙げられる。
【0065】
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水グルタル酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸の無水物、無水マレイン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸の無水物などが挙げられる。
【0066】
さらに、前記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、セバシン酸ジメチルなどの脂肪族飽和ジカルボン酸エステル、マレイン酸ジメチルなどの脂肪族不飽和ジカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0067】
前記芳香族ジカルボン酸クロライドとしては、例えば、o−フタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライドなどが挙げられる。
【0068】
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、芳香族ジカルボン酸無水物としてはフタル酸無水物などが挙げられる。
【0069】
さらに、前記芳香族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルなどが挙げられる。
【0070】
これら芳香族ジカルボン酸クロライド、芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物、芳香族ジカルボン酸エステルの中でも、反応収率、入手の容易性等の観点から、芳香族ジカルボン酸クロライド、特にテレフタル酸クロライド及びナフタレンジカルボン酸クロライドが好ましい。
【0071】
脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドと3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとのエステル化反応は、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドとを反応容器に入れておいて行なってもよいし、また、予め3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを反応容器に入れておいて、脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドを滴下して行なってもよいし、逆に脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドを予め反応容器に入れておいて、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを加えて行なってもよい。
【0072】
3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライドとの配合割合(仕込み割合)は、通常、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/脂肪族ジカルボン酸クロライド=4/3以上であることが好ましく、一方、芳香族ジカルボン酸クロライドとの配合割合(仕込み割合)は、通常、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/芳香族ジカルボン酸クロライド=4/3以上、より好ましくは2/1以上であることが望ましい。使用する3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの割合が少ないと、ジ(メタ)アクリレートなどの所望のテトラ(メタ)アクリレート以外の生成物が生成し易くなり、収率が低下する。逆に3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの割合が多すぎると、不飽和基の重合反応が起こり易くなり、高分子化する恐れがあるので好ましくない。また、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの割合が多すぎると、未反応の3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが残るので、経済的にも好ましくない。従って、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライドとの割合は、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/脂肪族ジカルボン酸クロライド=4/3〜3/1であることが好ましく、一方、芳香族ジカルボン酸クロライドとの割合は、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/芳香族ジカルボン酸クロライド=4/3〜3/1、より好ましくは2/1〜3/1であることが望ましい。なお、上記配合割合は、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合についても同様である。
【0073】
3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライドとのエステル化反応における反応温度は、−70〜150℃、好ましくは−30〜120℃であり、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでも反応を行なうことができる。一方、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと芳香族ジカルボン酸クロライドとのエステル化反応における反応温度は、0〜150℃、好ましくは室温〜120℃であり、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでも反応を行なうことができる。
【0074】
エステル化反応は、有機溶媒中で行なうことが好ましい。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、n−ヘプタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物等が好適に用いられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドとの合計100質量部に対して、50〜1000質量部の範囲が好ましい。なお、上記反応温度及び溶媒の使用量は、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合についても同様である。
【0075】
また、上記エステル化反応は、重合禁止剤の存在下で行なうことが好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4−メトキシフェノール、4−ターシャリーブチルカテコール等が好適に用いられる。これらの重合禁止剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。重合禁止剤の使用量は、通常、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であればよい。なお、上記重合禁止剤の使用量は、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合についても同様である。
【0076】
さらに、エステル化の際に発生する塩化水素を捕捉するため、トリメチルアミン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級アミン類が適宜用いられる。これらの3級アミンは、塩化水素と4級アンモニウム塩を形成することにより、塩化水素を捕捉することができる。これら3級アミン類は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
なお、芳香族ジカルボン酸クロライド、芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物、芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合、エステル化反応終了後、トリエチルアミンなどのアミン類の塩基性塩を水に溶解させた後、酢酸エチルや塩化メチレンなどの抽出溶媒を加えて、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物を含む反応混合物を抽出する。また、反応混合物中に残存しているアミンを除去するために、反応混合物を塩酸水溶液や硫酸水溶液などで洗浄することが好ましい。さらに、反応混合物中に残存している芳香族ジカルボン酸クロライドを除去するために、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液などで洗浄することが好ましい。
【0078】
一方、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルと、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとのエステル化反応は、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、n−ヘプタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類等の有機溶媒中、硫酸、塩酸、燐酸、フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等のエステル化触媒を用いて、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4−メトキシフェノール、4−ターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤の存在下で行なわれる。
【0079】
また、上記エステル化反応は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、n−ヘプタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物等の有機溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などの脱水縮合剤、トリメチルアミン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級アミン類、1−ヒドロキシ−1−H−ベンゾトリアゾール水和物などを用いて、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4−メトキシフェノール、4−ターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤の存在下で行なうこともできる。
【0080】
本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、反応性稀釈剤として、また柔軟性を付与するために前記一般式(2)で表わされる3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを混合することができる。その混合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して70質量部以下の割合で充分であり、好ましくは50質量部以下の割合である。ジ(メタ)アクリレート化合物の混合量が70質量部を超えると、テトラ(メタ)アクリレート化合物の耐熱性を低下させる恐れがあるので、好ましくない。
【0081】
本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、重合開始剤(光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)の存在下に活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によって速やかにラジカル重合する他、単に加熱することによっても硬化し、またX線又は電子線照射によっても硬化可能である。
【0082】
また、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、複合材(繊維強化プラスチック)の樹脂マトリックスとして有用である。従って、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、前記したように光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性にも優れるという特性のため、複合材(繊維強化プラスチック)、特に航空宇宙産業分野に用いられる複合材として極めて有用であるが、プリント配線板の各種レジスト材料や塗料の硬化性成分としても有利に用いることができる。
【0083】
まず、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物、特に、さらに他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤あるいはさらに繊維強化材等を含有する硬化性組成物について説明する。
【0084】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類、あるいはさらに特開2003−2919号に記載のジ(メタ)アクリレート化合物、特開平9−124714号に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物、特開昭62−52547号に記載のヘキサ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を使用することができる。これらラジカル重合性モノマーの使用目的は、組成物の光硬化性及び/又は熱硬化性を上げることにある。室温で液状のラジカル重合性モノマーは、組成物の光硬化性及び/又は熱硬化性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整する役割も果たす。これらラジカル重合性モノマーの配合量は、使用目的や所望物性に応じて、任意の割合にすることができるが、通常、前記テトラ(メタ)アクリレート100質量部に対して200質量部以下が好ましい。
【0085】
本発明で用いるテトラ(メタ)アクリレート化合物は、単に加熱することによっても硬化し、またX線又は電子線照射によっても硬化可能であるが、重合開始剤(光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)の存在下に活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によって速やかにラジカル重合するので、このような重合開始剤を用いることが好ましい。
【0086】
前記重合開始剤としては後述するような光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤を好適に用いることかでき、その配合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部(前記ラジカル重合性モノマーを用いる場合にはこれらの合計量100質量部)に対して30質量部以下が好ましいが、例えば光ラジカル重合開始剤の場合には0.1〜30質量部の割合、熱ラジカル重合開始剤の場合には0.1〜10質量部の割合が好ましい。
【0087】
前記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これらの繊維は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。この繊維強化材の組成物中に占める割合は、好ましくは10〜80体積%、より好ましくは50〜70体積%である。
【0088】
なお、本発明の前記硬化性組成物には、前記3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、脂肪族ジカルボン酸クロライド又は脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステルとのエステル化反応の際の未反応のモノマーや、生成したジ(メタ)アクリレート化合物や重合物等の副生成物を含有しても構わない。
【0089】
本発明の前記硬化性組成物には、さらに必要に応じて、後述するような溶剤を単独で又は2種類以上の混合物として配合することができる。溶剤の使用目的は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物、ラジカル重合性モノマー、重合開始剤等を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整することにある。溶剤の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0090】
本発明の前記硬化性組成物には、硬化物の特性を低下させない程度において、後述するような無機増粘剤を配合することができる。無機増粘剤の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10.0質量部の割合である。
【0091】
本発明の前記硬化性組成物には、さらに必要に応じて、塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、高湿下での耐熱性などの特性を向上させる目的で、後述するような無機フィラーや有機フィラーを、単独で又は2種以上配合することができる。フィラーの配合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部当り10〜300質量部、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0092】
本発明の前記硬化性組成物は、さらに必要に応じて、後述するような着色剤、熱重合禁止剤、消泡剤及び/又はレベリング剤、シランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。さらに本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜50質量部の割合である。難燃剤の配合量が上記範囲内にあると、硬化物の難燃性、耐吸湿性、並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性とが、高度にバランスされて好適である。
【0093】
本発明に係るテトラ(メタ)アクリレート化合物は、複合材(繊維強化プラスチック)、特に航空宇宙産業分野に用いられる複合材の樹脂マトリックスとして極めて有用である。この種の複合材料は、一般に、繊維強化材、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維(例えば、ケブラー繊維)等の繊維によって構成される繊維強化材に液状の硬化性組成物を含浸させ、次いで硬化させることによって得られる。この際に用いられる繊維強化材は、種々の形態、例えば重層繊維、二次元シート又は三次元もしくは多次元織物の形態をとることができる。
【0094】
また、テトラ(メタ)アクリレート化合物と共に、他のラジカル重合性モノマー、重合開始剤及び繊維強化材を含有してなる硬化性組成物を金型に装填し、あるいは繊維強化材を予め金型に入れておいてから、該金型に繊維強化材を含まない本発明の硬化性組成物を注入し、次いで、組成物を満たした金型を加熱して硬化させることにより、繊維強化プラスチックを得ることができる。あるいは、金型内に満たされた組成物を活性エネルギー線の照射により硬化させることにより、繊維強化プラスチックを得ることができる。この場合、活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線、X線、電子線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0095】
次に、プリント配線板の各種レジスト材料、多層プリント配線板の層間絶縁層などとして有用な本発明の硬化性組成物について説明する。この組成物は、前記したテトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の他に、アルカリ可溶性であるカルボキシル基含有化合物(A)や、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)を含有し、好ましくはさらに熱硬化性成分として1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)や硬化触媒(F)を含有し、さらに必要に応じて他のラジカル重合性モノマー(G)を含有する。
【0096】
まず、上記硬化性組成物で用いるカルボキシル基含有化合物(A)は、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のカルボキシル基を有する化合物である。具体的には、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能であり、特定のものに限定されるものではないが、特に以下に列挙するような樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を好適に使用できる。
【0097】
(1)不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体に、不飽和カルボン酸(a)を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)不飽和二重結合を有する酸無水物(e)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体に、水酸基と不飽和二重結合を有する化合物(f)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(g)のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸(h)のカルボキシル基をエステル化反応(全エステル化又は部分エステル化、好ましくは全エステル化)させ、生成した水酸基にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)不飽和二重結合を有する化合物(b)とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸(i)を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(7)水酸基含有ポリマー(j)に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(8)水酸基含有ポリマー(j)に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(9)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(g)と、不飽和モノカルボン酸(h)と、1分子中に少なくとも2個の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基を有する化合物(k)との反応生成物(I)に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(10)上記反応生成物(I)と、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)と、不飽和基含有モノイソシアネート(m)との反応生成物からなる不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂、
(11)1分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物(n)に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(12)ビスエポキシ化合物(p)とジカルボン酸(q)との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(13)ビスエポキシ化合物(p)とビスフェノール類(r)との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(14)ノボラック型フェノール樹脂(s)とアルキレンオキシド(t)との反応生成物に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた反応生成物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0098】
前記(1)のカルボキシル基含有樹脂は、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸(a)と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体であり、一方、前記(2)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体のカルボキシル基の一部に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基とエポキシ基、酸クロライド等の反応性基を有する化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、該化合物の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。上記共重合体の一方のモノマー成分である不飽和カルボン酸(a)の有するカルボキシル基の一部は未反応のまま残存するため、得られるカルボキシル基含有感光性樹脂は、アルカリ水溶液に対して可溶性である。
【0099】
前記(3)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等と、前記不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体のエポキシ基に、前記不飽和カルボン酸(a)のカルボキシル基を反応させ、該不飽和カルボン酸の不飽和二重結合を側鎖に導入すると共に、上記付加反応で生成した二級の水酸基に、多塩基酸無水物(d)、例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0100】
前記(4)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、不飽和二重結合を有する酸無水物(e)、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等と、前記不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体の酸無水物基の一部に、水酸基と不飽和二重結合を有する化合物(f)、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリレートにカプロラクトンを反応させたモノマー、(メタ)アクリレートにポリカプロラクトンオリゴマーを反応させたマクロモノマー等の水酸基を反応させてハーフエステルとし、該化合物(f)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。
【0101】
前記(5)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、N−グリシジル型等の公知慣用のエポキシ化合物(g)のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸(h)のカルボキシル基を反応させ、例えばエポキシアクリレートを生成させると共に、上記付加反応で生成した二級の水酸基に前記多塩基酸無水物(d)をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0102】
前記(6)のカルボキシル基含有樹脂は、前記不飽和二重結合を有し、水酸基や酸性基を持たないアルキル(メタ)アクリレート、置換もしくは非置換スチレンなどの化合物(b)と、グリシジル(メタ)アクリレートを主鎖とする共重合体のグリシジル基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸(i)、例えば炭素数2〜17のアルキルカルボン酸、芳香族基含有アルキルカルボン酸等を反応させ、生成した二級の水酸基に前記多塩基酸無水物(d)を付加反応させて得られる樹脂である。
【0103】
前記(7)のカルボキシル基含有樹脂は、水酸基含有ポリマー(j)、例えばオレフィン系水酸基含有ポリマー、アクリル系ポリオール、ゴム系ポリオール、ポリビニルアセタール、スチレンアリルアルコール系樹脂、セルロース類等に、酸性度の比較的弱い前記多塩基酸無水物(d)を反応させてカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0104】
一方、前記(8)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記カルボキシル基含有樹脂(7)のカルボキシル基に、前記エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)のエポキシ基を反応させ、該化合物(c)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。
【0105】
前記(9)のカルボキシル基含有感光性樹脂の合成反応は、多官能エポキシ化合物(g)に不飽和モノカルボン酸(h)(又は化合物(k))を反応させ、次いで化合物(k)(又は不飽和モノカルボン酸(h))を反応させる第一の方法と、多官能エポキシ化合物(g)と不飽和モノカルボン酸(h)と化合物(k)を同時に反応させる第二の方法とがある。どちらの方法でもよいが、第二の方法が好ましい。
【0106】
前記1分子中に少なくとも2個以上の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基(例えば、カルボキシル基、二級アミノ基等)を有する化合物(k)の具体例としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシ含有モノカルボン酸;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミン類等が挙げられる。
【0107】
一方、前記(10)の不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂の合成反応は、前記反応生成物(I)と多塩基酸無水物(d)を反応させ、次いで、生成した不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂中の水酸基に対して不飽和基含有モノイソシアネート(m)を反応させるのが好ましい。
【0108】
前記不飽和モノイソシアネート(m)の具体例としては、例えばメタクリロイルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートや、有機ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と前記の1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類を約等モル比で反応させることにより得られる反応生成物等が挙げられる。
【0109】
前記(11)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、出発原料として、不飽和モノカルボン酸との反応によって主として二級の水酸基を生じるエポキシ樹脂に代えて、オキセタン環を有する化合物を用い、多官能オキセタン化合物(n)に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂の一級の水酸基に対してさらに多塩基酸無水物(d)を反応させることにより、結合部位が熱的に切断され難く、熱安定性に優れた樹脂としたものである。
【0110】
前記(12)及び(13)のカルボキシル基含有樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂等のビスエポキシ化合物(p)と、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸(q)又はビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類(r)との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き、上記反応で生成した二級の水酸基あるいは残存する水酸基等に対してさらに多塩基酸無水物(d)を反応させることにより、熱安定性に優れた樹脂としたものである。不飽和二重結合の導入は、一般に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基と、上記反応で残存する水酸基、カルボキシル基等や生成した水酸基との反応性を有するエポキシ基、酸クロライド等の反応性基を有する化合物を反応させることによって行なわれる。
【0111】
前記(14)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂(s)のアルキレンオキシド(t)の付加反応による鎖延長によって可撓性、伸びに優れ、かつ、アルキレンオキシドの付加反応によって生じた末端水酸基に不飽和モノカルボン酸(h)の付加及び多塩基酸無水物(d)の付加が行なわれ、不飽和基やカルボキシル基が同一側鎖上に存在せず、かつ、それぞれ側鎖の末端に位置するため、反応性に優れ、また、主鎖から離れた末端カルボキシル基の存在により優れたアルカリ現像性を有する。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0112】
前記したようなカルボキシル基含有化合物(A)の酸価は、好ましくは20〜200mgKOH/g、より好ましくは50〜120mgKOH/gである。酸価が20mgKOH/gよりも低い場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した塗膜の現像が困難になる。一方、200mgKOH/gよりも高くなると、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまい、好ましくない。
【0113】
また、前記したようなカルボキシル基含有化合物(カルボキシル基含有樹脂及びカルボキシル基含有感光性樹脂)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の配合割合は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して5〜100質量部(固形分として、以下同様)の割合が適当であり、好ましくは10〜50質量部の割合である。テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の配合割合が5質量部未満の場合、充分な光硬化性及び/又は熱硬化性が得られ難いので好ましくなく、一方、100質量部を超えると、硬化物の特性がそれ以上向上せず、過剰に入れた分だけ、経済的に好ましくない。
【0115】
なお、本発明の硬化性組成物には、前記3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、脂肪族ジカルボン酸クロライド又は脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステルとのエステル化反応の際の未反応のモノマーや、生成したジ(メタ)アクリレート化合物や重合物等の副生成物を含有しても構わない。
【0116】
本発明で用いるテトラ(メタ)アクリレート化合物は、単に加熱することによっても硬化し、またX線又は電子線照射によっても硬化可能であるが、重合開始剤(C)(光ラジカル重合開始剤(C1)、熱ラジカル重合開始剤(C2))の存在下に活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によって速やかにラジカル重合するので、このような重合開始剤を用いることが好ましい。
【0117】
光ラジカル重合開始剤(C1)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら公知慣用の光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用でき、さらにはN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。また、可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加することもできる。特に好ましい光重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等であるが、特にこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0118】
熱ラジカル重合開始剤(C2)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1´−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレイト、4,4´−アゾビス−4−シアノバリックアシツド、2−メチル−2,2´−アゾビスプロパンニトリル等のアゾ系開始剤などが挙げられる。
【0119】
前記したような重合開始剤(C)の配合量は、通常の量的割合で充分であるが、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して、光ラジカル重合開始剤の場合には0.5〜25質量部の割合、熱ラジカル重合開始剤の場合には0.1〜10質量部の割合が好ましい。
【0120】
前記希釈溶剤(D)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。これら稀釈溶剤の使用目的は、前記カルボキシル基含有化合物(A)等を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整することにある。稀釈溶剤(D)の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0121】
前記1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)としては、オキシラン化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物などが挙げられる。
オキシラン化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、Y6−128、ダウケミカル(株)製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成(株)製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル(株)製のD.E.R.542、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル(株)製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート807、東都化成(株)製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成(株)製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のエポトートYH−434、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシELM−120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS−200、旭電化工業(株)製のEPX−30、大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1573(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL−931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成(株)製のZX−1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学(株)製のESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業(株)製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP−503、CP−50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにヒダントイン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、1,5−ジヒドロキシナフタレンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基に、エピハロヒドリンを反応させて得られる多官能エポキシ樹脂(国際公開WO01/024774号公報)等が挙げられる。
【0122】
オキセタン化合物としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3´−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられる。
【0123】
前記した1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの環状エーテルを有する化合物は、熱硬化することにより、レジストの密着性、耐熱性等の特性を向上させる。その配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して10質量部以上、100質量部以下の割合で充分であり、好ましくは15〜60質量部の割合である。環状エーテルを有する化合物(E)の配合量が上記範囲未満の場合、硬化膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり、又はんだ耐熱性や無電解めっき耐性も低くなり易い。一方、上記範囲を超えると、塗膜の現像性や硬化膜の無電解めっき耐性が悪くなり、またPCT耐性も劣ったものとなる。
【0124】
前記硬化触媒(F)としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを用いることができる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ(株)製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、熱硬化特性を向上させるためであれば、これらに限られるものではなく、環状エーテルを有する化合物の硬化触媒、もしくは環状エーテルを有する化合物とカルボン酸の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれらの化合物を前記硬化触媒と併用する。上記硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15.0質量部の割合である。
【0125】
前記ラジカル重合性モノマー(G)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これらラジカル重合性モノマーの使用目的は、組成物の光反応性を上げることにある。室温で液状のラジカル重合性モノマーは、組成物の光反応性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。ラジカル重合性モノマー(G)の配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して100質量部以下が好ましい。
【0126】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の特性を低下させない程度において、無機増粘剤を配合することができる。無機増粘剤としては、例えば、日本アエロジル社製の#50、#200、#380などの親水性シリカ、日本アエロジル社製の#R974、#R972などの疎水性シリカ、ウイルバー・エリス社製のオルベン、ベントン38などの有機ベントナイトなどが挙げられる。これら無機増粘剤の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10.0質量部の割合である。
【0127】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーや、ゴム微粒子、粉体エポキシ樹脂(例えば、日産化学工業社製TEPIC等)、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂(例えば、日本触媒社製M−30、S、MS等)、尿素樹脂、架橋アクリルポリマー(例えば、綜研化学社製MR−2G、MR−7G等、積水化成品社製テクポリマー)等の有機フィラーを、単独で又は2種以上配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、耐熱性などの特性を向上させる目的で用いられる。フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部当り10〜300質量部、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0128】
本発明の硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0129】
さらに本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜50質量部の割合である。難燃剤の配合量が上記範囲内にあると、得られる硬化物の難燃性、耐熱性、耐水性及び密着性が高度にバランスされて好適である。
また、本発明の組成物の引火性の低下のために、また増粘性を高めるために、水を添加することもできる。
【0130】
本発明の硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で光硬化及び/又は熱硬化させることにより、容易に硬化物を得ることができる。例えば、上記硬化性組成物をロールを用いて均一になるまで充分に混合し、用途に応じて所望の基材に、例えばスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の公知の塗工方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる希釈溶剤を揮発乾燥させることにより、ダレを生ずることもなく指触乾燥性に優れた塗膜を形成できる。また、本発明の硬化性組成物はレジスト用ドライフィルムを形成することもでき、その場合にはそのままラミネートすればよい。その後、活性エネルギー線により露光して光硬化させる。次いで、約100℃〜200℃で加熱硬化させることにより、優れた耐クラック性に加え、電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れた硬化物を得ることができる。プリント配線板のソルダーレジスト形成の場合には、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に紫外線等の活性エネルギー線により露光し、又はレーザー光線により直接描画し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成し、加熱硬化させることにより、上記のような諸特性に優れたレジスト膜が得られる。上記現像に使用される希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等の水溶液が挙げられる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0132】
合成例1
窒素導入管、温度計を取り付けた100mlのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)10.0g(46.68ミリモル)、テトラヒドロフラン80ml、テレフタル酸クロライド4.7g(23.34ミリモル)、トリエチルアミン5.9g(58.35ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.5g(4.09ミリモル)、メチルハイドロキノン0.4mgを加えて窒素気流下、65℃で20時間加熱還流させた。その反応液に水50mlを加えてトリエチルアミンの塩基性塩を水に溶解させた後、酢酸エチルで反応混合物を抽出した。さらに、水層中の反応混合物を酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層を1Nの塩酸水溶液50mlで洗浄し、続いで飽和食塩水50mlで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム5.0gで乾燥後、減圧ろ過、濃縮を行ない、11.7gの化合物を得た。このものを中性シリカゲル230gを用いてカラム精製を行なった。その結果、4.5gのテトラ(メタ)アクリレート化合物が得られた。これは、理論量の34.5%の収率であった。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図1、図2及び図3に示す。また、1H−NMRの同定結果を表1に示す。なお、図3に示すクロマトグラムにピークが一つしか現われていないことから、純粋な化合物が得られたことがわかる。
【0133】
【表1】
【0134】
合成例2
窒素導入管、温度計を取り付けた10リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)1.0kg(4.67モル)、テトラヒドロフラン7.0リットル、テレフタル酸クロライド475.0g(2.34モル)、トリエチルアミン590g(5.83モル)、メチルハイドロキノン0.4g、フェノチアジン0.4gを加えて窒素気流下、室温で6時間反応させた。その反応液に水5.0リットルを加えてトリエチルアミンの塩基性塩を水に溶解させた後、酢酸エチル5.0リットルで反応混合物を抽出した。さらに、水層中の反応混合物を酢酸エチル2.5リットルで抽出した。得られた有機層を1Nの塩酸水溶液5.0リットルで洗浄し、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5.0リットルで洗浄し、さらに飽和食塩水5.0リットルで洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウム500gで乾燥後、減圧ろ過して濃縮し、反応濃縮混合物(粘性黄色液体)1.5kgを得た。得られた反応濃縮混合物にメタノール2.5リットルを加えて均一にした後、−30℃まで冷却し、結晶を生じさせ、ろ過(メタノールで洗浄)して、融点約82℃の白色のテトラ(メタ)アクリレート化合物350gを得た。これは、理論量の27.0%の収率であった。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図4、図5及び図6に示す。
【0135】
試験例1
上記白色結晶のテトラ(メタ)アクリレート化合物を100℃で溶融させ、バーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリイミドフィルムに塗布し、(1)120℃で120分間、(2)140℃で30分間、(3)160℃で20分間、又は(4)180℃で10分間加熱し、次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、ポリイミドフィルムから硬化膜を剥がし、4種類の評価サンプルを得た。これらの評価サンプルの耐熱性、柔軟性及び耐折性を後述する方法で測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を後述する方法で測定し、評価した。上記測定結果を下記表2に示す。
【0136】
【表2】
上記表2中の性能試験の評価方法は以下の通りである。
【0137】
(1)耐熱性
評価サンプルを熱重量測定(TG)により測定し、耐熱性を評価した。
なお、本明細書においては、図7に示すようにTG曲線の変曲部での接線から求めた外挿点を耐熱温度とする。
【0138】
(2)柔軟性
評価サンプルを幅10mm、長さ90mmに加工して作製したフィルム状試験片の一側辺部を電子秤上に載せ、他側辺部を折り曲げる方法で、フィルム間が10mmになるまでに電子秤にかかる最大荷重を反発力として、以下の基準で評価した。
○:10g未満
△:10〜30g未満
×:30g以上、又は資料が折れて測定不可能
【0139】
(3)耐折性
評価サンプルを幅10mm、長さ90mmに加工して作製したフィルム状試験片を135°に折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化膜が折れないもの
△:硬化膜は折れないが、クラックがあるもの
×:硬化膜が折れるもの
【0140】
(4)吸水率
評価サンプルの質量を測定し、次にこの評価サンプルをPCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、処理後の硬化物の質量を測定し、下記算式により硬化物の吸水率を求めた。
吸水率(%)={(W2−W1)/(W1−Wg)}×100
ここで、W1は評価サンプルの質量、W2はPCT処理後の評価サンプルの質量、Wgはガラス板の質量である。
【0141】
予備合成例1
1リットルのフラスコに2,6−ナフタレンジカルボン酸40g(0.185モル)、塩化チオニル120ミリリットル(1.67モル)を仕込み、アルゴン気流下、約80℃で1時間加熱還流した。その後、ジメチルホルムアミド1ミリリットルを添加し、さらに24時間、約80℃で加熱還流を行なった。反応終了後、未反応の塩化チオニルを減圧留去し、黄色結晶の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド31.0gを得た。
【0142】
予備合成例2
1リットルのフラスコに2,6−ナフタレンジカルボン酸80g(0.37モル)、塩化チオニル240ミリリットル(3.3モル)、ピリジン2ミリリットルを仕込み、アルゴン気流下、約80℃で1時間加熱還流した。その後、ジメチルホルムアミド1ミリリットルを添加し、さらに4時間、約80℃で加熱還流を行なった。続いて、塩化チオニル100ミリリットルを加え、14.5時間、約80℃で加熱還流した。反応終了後、未反応の塩化チオニルを減圧留去し、黄色結晶の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド73.8gを得た。
【0143】
予備合成例3
予備合成例2で得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド53.8gをトルエンに溶解させ、−30℃で12時間冷却し、析出した結晶を濾過して、高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド22.7gを得た。
【0144】
合成例3
1リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)43.3g(202ミリモル)、テトラヒドロフラン400ミリリットル、フェノチアジン4.3mg、トリエチルアミン51.1g(505ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、約0℃で攪拌した。次いで、予備合成例1で得た2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド19g(80ミリモル)をテトラヒドロフラン200ミリリットルに溶解させ、10℃以下で、反応系内に滴下した。滴下終了後反応系内の温度を約25℃にし、2時間反応を行なった。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、エチルエーテルで抽出を行なった。分液した有機層を水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過し、濃縮して、茶褐色オイル57gを得た。得られたオイルのクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)を図8に示す。次に、得られたオイルをカラム精製(SiO2:200g、展開溶媒:40%酢酸エチル/n−ヘキサン中)し、黄色オイル2.5gを得た。得られたオイルにメタノール10ミリリットルを加え、−30℃で5時間冷却し、濾過して、白色結晶1.5gを得た。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図9、図10及び図11に示す。
【0145】
合成例4
1リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート28.3g(79ミリモル)、テトラヒドロフラン230ミリリットル、フェノチアジン2.0mg、トリエチルアミン24.0g(237ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、約0℃で攪拌した。次いで、予備合成例2で得た2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド20.0g(79ミリモル)をテトラヒドロフラン200ミリリットルに溶解させ、10℃以下で、反応系内に滴下した。滴下終了後、反応系内の温度を約25℃にし、2時間反応を行なった。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、エチルアセテートで抽出を行なった。分液した有機層を水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過し、濃縮して、茶褐色オイル37gを得た。得られたオイルのクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)を図12に示す。得られたオイルをカラム精製(SiO2:320g、展開溶媒:20%酢酸エチル/n−ヘキサン中)し、無色透明液体14.0gを得た。得られたオイルにエチルエーテル20ミリリットルを加え、合成例3で得た白色結晶4mgを種結晶として加え、−30℃で12時間掛けて再結晶を行なった。その結果、白色半固体物質が得られた。そこで、エチルエーテルを除去し、次いでn−ヘキサンを加え、攪拌した後、除去しきれなかったエチルエーテルとn−ヘキサンとの混合溶媒を除去し、再びエチルエーテル20ミリリットルを加え、濾過して、融点約92℃の白色結晶2.7gを得た。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図13、図14及び図15に示す。1H−NMRの同定結果を表3に示す。
【表3】
【0146】
また、上記濾過液を濃縮し、無色透明液体11.3gを得た。得られた液体の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図16、図17及び図18に示す。
【0147】
合成例5
1リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート38.4g(179ミリモル)、テトラヒドロフラン230ミリリットル、フェノチアジン2.5mg、トリエチルアミン27.2g(269ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、約0℃で攪拌した。次いで、予備合成例3で得た2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド22.7g(90ミリモル)をテトラヒドロフラン360ミリリットルに溶解させ、10℃以下で、反応系内に滴下した。滴下終了後反応系内の温度を約25℃にし、2時間反応を行なった。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、エチルアセテートで抽出を行なった。分液した有機層を水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過し、濃縮して、茶褐色オイル60.1gを得た。得られたオイルのクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)を図19に示す。次に、得られたオイルをカラム精製(SiO2:500g、展開溶媒:20%酢酸エチル/n−ヘキサン中)し、無色透明オイル25.2gを得た。得られたオイルにエチルエーテル70ミリリットルを加え、攪拌、次いで濾過して、白色結晶6.6gを得た。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図20、図21及び図22に示す。
【0148】
試験例2
合成例1〜3で得た白色結晶のテトラ(メタ)アクリレート化合物をそれぞれ100℃で溶融させ、バーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリイミドフィルムに塗布し、180℃で30分間、次いで、200℃で10分間加熱した。得られた硬化フィルムをPCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、ポリイミドフィルムから硬化膜を剥がし、評価サンプルを得た。これらの評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で測定し、柔軟性及び耐折性は後述する方法で測定し、評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記測定結果を下記表4に示す。
【0149】
【表4】
上記表4中の性能試験の柔軟性及び耐折性の評価方法は以下の通りである。
【0150】
(2’)柔軟性
評価サンプルを幅5mm、長さ40mmに加工して作製したフィルム状試験片の一側辺部を電子秤上に載せ、他側辺部を折り曲げる方法で、フィルム間が10mmになるまでに電子秤にかかる最大荷重を反発力として、以下の基準で評価した。
○:10g未満
△:10〜30g未満
×:30g以上、又は試験片が折れて測定不可能
【0151】
(3’)耐折性
評価サンプルを幅5mm、長さ40mmに加工して作製したフィルム状試験片を135°に折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化膜が折れないもの
△:硬化膜は折れないが、クラックがあるもの
×:硬化膜が折れるもの
【0152】
合成例6
50ミリリットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)2.0g(9.33ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド20ミリリットル、4−ターシャリーブチルカテコール1mg、1−ヒドロキシ−1−H−ベンゾトリアゾール水和物1.71g(11.2ミリモル)、トリエチルアミン2.4g(23.34ミリモル)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩2.2g(11.2ミリモル)、コハク酸826mg(7ミリモル)を加え、アルゴン気流下、攪拌しながら、室温で14時間反応させた。得られた反応溶液に酢酸エチルと水を加えて抽出を行ない、分液した有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮し、2.3gの黄色液体を得た。このものをシリカゲル50gを用いてカラム精製を行ない、酸価1mgKOH/g以下のテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの液状混合物1.5gが得られた。
【0153】
得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))、クロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)及び赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)をそれぞれ図23、図24及び図25に示す。また、1H−NMRの同定結果を表5に示す。
【0154】
【表5】
【0155】
なお、参考のために、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート単独の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図26及び図27に、さらに下記式(3)で示される構造のモノカルボン酸の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))を図28に示す。
【0156】
【化4】
(但し、R1、R2は水素原子又はメチル基を表わす。)
【0157】
図23と図26とを比較すると、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物では、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートにはないコハク酸のシングルピークが2.6ppm付近に出現している。また、図23と図28とを比較すると、上記モノカルボン酸では、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物にはないカルボン酸のシングルピークが10.3ppm付近に出現している。さらに、図24と図27とを比較すると、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物では、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートにはないピークが6分付近に出現している。以上のデータから、図24の6分付近に出現しているピークは、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物によるものである。
【0158】
合成例7
50mlのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)1.71g(8ミリモル)、テトラヒドロフラン20ml、4−メトキシフェノール0.8mg、トリエチルアミン2.02g(20ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、0℃で攪拌しながら、アジピン酸クロライド1.02g(5.6ミリモル)を滴下し、滴下終了後、室温で約14時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及びジエチルエーテルを加えて抽出を行なった。次いで、分液した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、濃縮した後、カラム精製(シリカゲル40g、展開溶媒:20%酢酸エチル/n−ヘキサン)を行ない、無色透明のオイル状のテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの液状混合物を得た。得られた混合物の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))を図29に示す。また、1H−NMRの同定結果を表6に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
合成例8
50mlのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)1.71g(8ミリモル)、テトラヒドロフラン20ml、4−メトキシフェノール0.8mg、トリエチルアミン2.02g(20ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、0℃で攪拌しながら、アジピン酸クロライド1.02g(5.6ミリモル)を滴下し、滴下終了後、室温で約13時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、ショートカラム(シリカゲル25g、展開溶媒:テトラヒドロフラン)処理を施し、濃縮して、テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を約64%含む、液状混合物2.5gが得られた。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))、ゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラム及び赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図30、図31及び図32に示す。なお、参考のために、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート単独のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを図33に示す。
【0161】
試験例3
上記合成例6及び合成例8のテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの液状の混合物を、バーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、180℃で30分間加熱し、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化塗膜を剥がし、その後、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、評価サンプルを得た。これらの評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で測定し、耐折性は前記試験例2で用いた方法(3’)で測定し、また、柔軟性は後述する方法で測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記測定結果を下記表7に宗す。
【0162】
【表7】
上記表5中の性能試験の柔軟性の評価方法は以下の通りである。
【0163】
(2”)柔軟性
評価サンプルを幅5mm、長さ40mmに加工して作製したフィルム状試験片の一側辺部を電子秤上に載せ、他側辺部を折り曲げる方法で、フィルム間が10mmになるまでに電子秤にかかる最大荷重を反発力として、以下の基準で評価した。
○:20g未満
△:20〜40g未満
×:20g以上、又は試験片が折れて測定不可能
【0164】
実施例1〜5及び比較例1、2
表8に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合した。実施例1〜3についてはそれぞれ90℃で攪拌し、実施例4については室温で攪拌し、また実施例5については100℃で攪拌し、硬化性組成物を調製した。比較例1及び2については、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、硬化性組成物を調製した。これらをバーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリイミドフィルムに塗布し、実施例1〜3及び比較例1、2については、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、実施例4については室温で6時間放置後、60分間かけて徐々に115℃まで温度を上げ、115℃で60分間加熱し、実施例5については180℃で30分間、次いで200℃で10分間加熱した。次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、各ポリイミドフィルムから硬化膜を剥がし、評価サンプルを得た。
【0165】
【表8】
【0166】
実施例6及び7
実施例6については、実施例1で得られた組成物を100℃で溶融させ、ガラスクロスに含浸させた後、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、また、実施例7については、合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物を100℃で溶融させ、ガラスクロスに含浸させた後、140℃で30分間の条件で加熱し、次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、評価サンプルを得た。
【0167】
前記各実施例及び各比較例で得られた評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で測定し、また、実施例1〜4、6、7及び比較例1、2で得られた評価サンプルの柔軟性及び耐折性は前記試験例1で用いた方法(2)、(3)で測定し、実施例5で得られた評価サンプルの柔軟性及び耐折性は前記試験例2で用いた方法(2’)、(3’)で測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記各実施例及び各比較例における方法と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記各試験の結果を表9に示す。
【0168】
【表9】
【0169】
実施例8、9、11、12及び比較例3、4
表10に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合した。実施例8、11、12及び比較例3、4については、それぞれ配合成分を攪拌し、硬化性組成物を調製した。実施例9については、90℃で攪拌し、硬化性組成物を調製した。これらをバーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、実施例8及び比較例3、4については、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、実施例9及び12については、150℃で60分間加熱し、実施例11については、室温で6時間放置後、60分間かけて80℃まで温度を上げ、80℃で30分間、次いで100℃で30分間、次いで150℃で30分間加熱した。次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、各ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化膜を剥がし、評価サンプルを得た。
【0170】
実施例10
実施例10については、実施例8の組成物と同様な組成物をガラスクロスに含浸させた後、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、評価サンプルを得た。
【0171】
【表10】
【0172】
前記各実施例及び各比較例で得られた評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で、また柔軟性及び耐折性は前記試験例2で用いた方法(2’)及び(3’)でそれぞれ測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。
また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記各実施例及び各比較例における方法と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記各試験の結果を表11に示す。
【0173】
【表11】
【0174】
合成例9
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショーノールCRG951」、昭和高分子(株)製、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基当量が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0175】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
【0176】
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形分の酸価87.7mgKOH/gであった。
【0177】
合成例10
ガス導入管、撹拌装置、冷却管、温度計、及びアルカリ金属水酸化物水溶液の連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器に、水酸基当量が80g/eq.の1,5−ジヒドロキシナフタレン224gとビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828、エポキシ当量189g/eq.)1075gを仕込み、窒素雰囲気下にて、撹拌下110℃で溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン0.65gを添加し、反応容器内の温度を150℃まで昇温し、温度を150℃に保持しながら、約90分間反応させ、エポキシ当量452g/eq.のエポキシ化合物(3−a)を得た。次に、フラスコ内の温度を40℃まで冷却し、エピクロルヒドリン1920g、トルエン1690g、テトラメチルアンモニウムブロマイド70gを加え、撹拌下45℃まで昇温し保持した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液364gを60分間かけて連続滴下し、その後、さらに6時間反応させた。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンの大半を減圧蒸留して回収し、副生塩とトルエンを含む反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ水洗した。有機溶媒層と水層を分離後、有機溶媒層よりメチルイソブチルケトンを減圧蒸留して留去し、エポキシ当量277g/eq.の多核エポキシ樹脂(3−b)を得た。得られた多核エポキシ樹脂(3−b)は、エポキシ当量から計算すると、エポキシ化合物(3−a)におけるアルコール性水酸基1.98個のうち約1.59個がエポキシ化されている。従って、アルコール性水酸基のエポキシ化率は約80%である。
【0178】
次に、得られた多核エポキシ樹脂(3−b)277gを、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート290gを加え、加熱溶解し、メチルハイドロキノン0.46gと、トリフェニルホスフィン1.38gを加え、95〜105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物129gを加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸化、全酸化測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分62%、固形分の酸価100mgKOH/gであった。
【0179】
実施例13〜15及び比較例5、6
表12に示す配合組成に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、硬化性組成物を調製した。これをスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルホールプリント配線基板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥し、次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射(露光量700mJ/cm2)し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像し、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。
【0180】
得られた硬化皮膜を有する試験基板について、後述の試験方法及び評価方法にて、耐クラック性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、無電解金めっき耐性の試験を行なった。
【0181】
また、銅スルホールプリント配線基板の代わりにIPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、上記と同じ条件で試験基板を作製し、電気絶縁抵抗の試験を行なった。上記各試験の結果を表13に示す。
【0182】
【表12】
【0183】
【表13】
表13に示される結果から明らかなように、感光性成分としてカルボキシル基含有感光性樹脂を用いた比較例5、6ではヒートサイクル時の耐クラック性に劣っていたが、本発明に従ってさらにテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する実施例13〜15では耐クラック性に優れていた。上記表13中の性能試験の評価方法は以下の通りである。
【0184】
(5)耐クラック性:
硬化皮膜の耐クラック性を楠本化成社製のThermal Shock Chamber NT 1020Wを用い、−65℃〜150℃を1サイクルとし、以下の基準で評価した。
○:クラックが500サイクル以上で発生したもの
△:クラックが300〜499サイクルで発生したもの
×:クラックが299サイクル以下で発生したもの
【0185】
(6)PCT耐性:
硬化皮膜のPCT耐性を、121℃、飽和水蒸気中50時間の条件にて以下の基準で評価した。
○:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化皮膜に若干のふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0186】
(7)密着性:
JIS D 0202の試験方法に従って硬化皮膜に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリングテスト後の剥れの状能を目視判定した。
◎:100/100で全く剥れのないもの
○:100/100でクロスカット部が少し剥れたもの
△:50/100〜90/100
×:0/100〜50/100
【0187】
(8)はんだ耐熱性:
JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴への試験基板の10秒浸漬を3回行ない、外観の変化を評価した。なお、ポストフラックス(ロジン系)としては、JIS C 6481に従ったフラックスを使用した。
○:外観変化なし
△:硬化皮膜の変色が認められるもの
×:硬化皮膜の浮き、剥れ、はんだ潜りあり
【0188】
(9)耐酸性:
試験基板を10容量%硫酸水溶液に20℃で30分間浸漬後取り出し、硬化皮膜の状態を以下の基準で評価した。
○:変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化しているもの
×:硬化皮膜にフクレあるいは膨潤脱落があるもの
【0189】
(10)耐アルカリ性:
試験基板を、10容量%硫酸水溶液を10質量%水酸化ナトリウム水溶液に代えた以外は耐酸性試験と同様に評価した。
【0190】
(11)無電解金めっき耐性:
後述する工程に従って試験基板に無電解金めっきを行ない、その試験基板について外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、硬化皮膜の剥離状態を以下の基準で判定した。
○:外観変化もなく、硬化皮膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、硬化皮膜にわずかに剥れがある。
×:硬化皮膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験で硬化皮膜の剥れが大きい。
【0191】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:
試験基板を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、Metex L−5Bの20容量%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:
試験基板を、14.3質量%の過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間、浸漬した。
4.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:
試験基板を、10容量%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:
試験基板を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10容量%水溶液)に7分間、浸漬した。
8.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:
試験基板を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20容量%水溶液)に20分間、浸漬した。
10.酸浸漬:
試験基板を、10容量%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:
試験基板を、95℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレスUP 15容量%、シアン化金カリウム3質量%の水溶液)に10分間、浸漬した。
13.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:
試験基板を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗後、水をよくきり、乾燥した。
このような工程を経て無電解金めっきした試験基板を得た。
【0192】
(12)電気絶縁性:
硬化皮膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度110℃、湿度85%R.H.、印加電圧5V、50時間。
測定条件:測定時間60秒、印加電圧500V。
○:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションなし
△:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションあり
×:加湿後の絶縁抵抗値109Ω以下、銅のマイグレーションあり
【0193】
実施例16〜20及び比較例7、8
表14に示す配合組成に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、硬化性組成物を調製した。これをスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルホールプリント配線基板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥し、次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射(露光量600mJ/cm2)し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像し、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。
【0194】
得られた硬化皮膜を有する試験基板について、前述の試験方法及び評価方法にて、耐クラック性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、無電解金めっき耐性の試験を行なった。
【0195】
また、銅スルホールプリント配線基板の代わりにIPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、上記と同じ条件で試験基板を作製し、電気絶縁抵抗の試験を行なった。
【0196】
【表14】
【0197】
上記各試験の結果を表15に示す。
【表15】
【0198】
表15に示される結果から明らかなように、感光性成分としてカルボキシル基含有感光性樹脂を用いた比較例7、8ではヒートサイクル時の耐クラック性に劣っていたが、本発明に従ってさらにテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する実施例16〜20では耐クラック性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0199】
以上説明したように、本発明の(メタ)アクリレート化合物及びそれを含有する硬化性組成物は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れた硬化物が得られるため、レジストインキ、塗料、成形材等の種々の用途に使用可能である。
【0200】
また、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の他に、アルカリ可溶性であるカルボキシル基含有化合物(A)や、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)、1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)、硬化触媒(F)等を含有する硬化性組成物は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、高温及び低温に曝されても、硬化皮膜にクラックが発生するといったようなことはなく、しかも前記したような諸特性に優れた硬化物が得られるため、プリント配線板のソルダーレジスト、エッチングレジスト、メッキレジスト、多層配線板の層間絶縁層、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスク、フレキシブル配線基板用レジスト、カラーフィルター用レジスト、上記レジストのドライフィルム、上記レジストのインキジェット方式の印刷などの用途に有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なテトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物に関するものであり、レジストインキ、塗料、成形材等の種々の用途に使用可能である。
【0002】
さらに本発明は、プリント配線板の製造等に用いられる硬化性組成物に関し、より詳しくは、ヒートサイクルによる耐クラック性や電気絶縁性に優れ、且つPCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性などの諸特性に優れた硬化物を与える硬化性組成物及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、航空宇宙産業分野や電子材料分野では、優れた反応性や加工性を有することから、(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物が広く用いられている。特に、航空宇宙産業分野に用いられる複合材料の製造においては、(メタ)アクリレート化合物、重合開始剤、及び炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維強化材からなる組成物が多量に使用されているが、組成物の光硬化性及び/又は熱硬化性のみならず、その硬化物の耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性を得るためには、(メタ)アクリレート化合物が重要な成分である。
【0004】
しかしながら、従来市販の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物を用いて得られる複合材料では、高湿下での熱特性と柔軟性とを共に満足できず、高性能化の要求に対応できないのが現状である。即ち、従来市販の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物を用いて得られる複合材料では、湿気による熱的及び機械的長期信頼性が劣っていた。このような長期信頼性の問題は、航空宇宙産業分野に限られるものではなく、電子材料分野など、他の分野においても望ましくない。
【0005】
また、一般に、プリント配線板用レジスト材などの電子材料、特に、ソルダーレジストとして用いられる硬化性組成物の硬化皮膜においては、電気絶縁性に優れ、且つ、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れることが要求される。
【0006】
特に最近では、自動車に搭載されるプリント配線板において、長期に渡って高温や低温に曝されることから、前記した諸特性の他にヒートサイクルによる耐クラック性に優れることが要求されるようになった。かかる特性は、プリント配線板上のソルダーレジストに限られるものではなく、ビルドアップ多層配線板等の層間絶縁層など、他の用途の製品においても要求されている。
【0007】
しかしながら、従来の(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物を用いて形成したソルダーレジストでは、ヒートサイクルによる耐クラック性と前記諸特性を共に満足させることができないのが実情である。
【0008】
上記のような問題の解決のために、これまで種々の(メタ)アクリレート化合物が新たに開発されているが、耐吸湿性並びに高湿下その耐熱性及び柔軟性の特性を充分に満足させるには未だ至っていないのが現状である。例えば、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の2級のアルコール性水酸基に塩化アクリロイルを反応させて得られる(メタ)アクリレート化合物が挙げられる(特開平9−124714号参照)。しかし、このような(メタ)アクリレート化合物は、優れた耐吸湿性と高湿下での耐熱性を共に満足させるには、まだ不充分である。一方、低吸湿性を有する(メタ)アクリレート化合物としては、テレフタル酸クロライドとヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるジ(メタ)アクリレート化合物が開発されている(特開2003−2919号参照)。しかし、この(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に有する不飽和基が2個であるため、光硬化性及び/又は熱硬化性に乏しく、その結果、高湿下での耐熱性が劣るという問題がある。他方、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れた(メタ)アクリレート化合物としては、テレフタル酸クロライドとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させて得られるヘキサ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる(特開昭62−52547号参照)。しかし、この(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に不飽和基を6個有するため、光硬化性及び/又は熱硬化性には優れるが、硬化により高架橋となるため、硬くて脆い硬化物を形成する。従って、硬化物が柔軟性に欠けるため、高湿下での老化中に破壊する恐れがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性にも優れた硬化物が得られる、新規なテトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れると共に、ヒートサイクルによる耐クラック性に優れ、且つ電気絶縁性、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性を充分に満足させる硬化物を与える硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【発明の開示】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物が提供される。
【化1】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【0012】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語であり、同様にアクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表記し、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表記する。
【0013】
好適な態様によれば、前記一般式(1)において、前記ジカルボン酸残基Xは、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基である。前記ジカルボン酸残基Xが芳香族ジカルボン酸残基の場合、好ましくは、前記ジカルボン酸残基Xは、下記式(B1)〜(B7)で表わされるいずれかの芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは下記式(B3)の芳香族ジカルボン酸残基である。
【化2】
【0014】
さらに本発明によれば、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物の硬化物が提供される。
【0015】
本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に4個の不飽和基を有し、二股状の末端にそれぞれ(メタ)アクリロイル基を有する一対のユニットが各々、熱的に安定なエステル結合を介する、又はエステル結合を介して、アルキレンもしくはポリメチレン又は芳香環などにより連結された構造を有するため、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れている。
【0016】
本発明の他の側面によれば、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。好適な態様によれば、前記一般式(1)において、前記ジカルボン酸残基Xが脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であるテトラ(メタ)アクリレート化合物が用いられる。前記ジカルボン酸残基Xが芳香族ジカルボン酸残基の場合、好ましくは、前記ジカルボン酸残基Xは、前記式(B1)〜(B7)で表わされるいずれかの芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは前記式(B3)の芳香族ジカルボン酸残基である。
【0017】
本発明の硬化性組成物のさらに好適な態様によれば、前記したようなテトラ(メタ)アクリレート化合物と共に、他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤を含有し、あるいはさらに繊維強化材を含有する。
【0018】
本発明のさらに他の側面によれば、上記硬化性組成物を用いて得られる硬化物が提供される。好適な態様によれば、硬化物はガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維強化材を含有する。
【0019】
前記硬化性組成物は、前記した構造を有するテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有するため、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れている。
【0020】
本発明の別の側面によれば、(A)カルボキシル基含有化合物、(B)前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物、(C)重合開始剤、及び(D)希釈溶剤を含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。好適な態様によれば、前記一般式(1)において、前記ジカルボン酸残基Xが脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であるテトラ(メタ)アクリレート化合物が用いられる。前記ジカルボン酸残基Xが芳香族ジカルボン酸残基の場合、好ましくは、前記ジカルボン酸残基Xは、前記式(B1)〜(B7)で表わされるいずれかの芳香族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは前記式(B3)の芳香族ジカルボン酸残基である。
【0021】
本発明の硬化性組成物のさらに好適な態様によれば、前記したような各成分に加えて、さらに(E)1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物、又はさらに(F)硬化触媒、あるいはさらにさらに(G)他のラジカル重合性モノマーを含有する。
【0022】
本発明のさらに別の側面によれば、上記硬化性組成物を用いて得られる硬化物が提供される。
【0023】
前記硬化性組成物は、アルカリ可溶性である(A)カルボキシル基含有化合物や、(C)重合開始剤、(D)希釈溶剤と共に、(B)前記した構造を有するテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有するため、アルカリ現像可能であると共に、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は、ヒートサイクルによる耐クラック性に優れると共に、電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の特性にも優れている。また、上記各成分に加えて、熱硬化性成分として(E)1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物を含有する硬化性組成物の場合、露光現像後の熱硬化により、電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性をさらに向上させることができ、さらに(F)硬化触媒を含有することにより硬化開始温度を低くでき、また熱硬化反応を促進することができる。あるいはさらに(G)他のラジカル重合性モノマーを含有する硬化性組成物の場合、光硬化性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】合成例1で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0025】
【図2】合成例1で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0026】
【図3】合成例1で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0027】
【図4】合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0028】
【図5】合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0029】
【図6】合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0030】
【図7】TG曲線から耐熱温度を求める方法を説明するためのグラフである。
【0031】
【図8】合成例3で得られたオイルの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0032】
【図9】合成例3で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0033】
【図10】合成例3で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0034】
【図11】合成例3で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0035】
【図12】合成例4で得られたオイルの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0036】
【図13】合成例4で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0037】
【図14】合成例4で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0038】
【図15】合成例4得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0039】
【図16】合成例4で得られた液体の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0040】
【図17】合成例4で得られた液体の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0041】
【図18】合成例4で得られた液体の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0042】
【図19】合成例5で得られたオイルの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0043】
【図20】合成例5で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0044】
【図21】合成例5で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0045】
【図22】合成例5で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0046】
【図23】合成例6で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0047】
【図24】合成例6で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0048】
【図25】合成例6で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0049】
【図26】3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0050】
【図27】3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの高速液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0051】
【図28】後述する式(3)で示される構造のモノカルボン酸の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0052】
【図29】合成例7で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0053】
【図30】合成例8で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトルを示すグラフである。
【0054】
【図31】合成例8で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【0055】
【図32】合成例8で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
【0056】
【図33】3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明者は、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレートが、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れていることを見出した。
【0058】
また、本発明者は、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物、好ましくは、さらに他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤あるいはさらに繊維強化材を含有する硬化性組成物が、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示し、且つ、優れた耐吸湿性並びに高湿下での優れた耐熱性及び柔軟性を有する硬化物を与えることを見出した。すなわち、本発明の硬化性組成物に用いられる前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物は、熱的に安定なエステル結合を有し、また1分子中に4個の不飽和基を有しているため光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐吸湿性にも優れている。しかも、1分子中に4個という適切な数の不飽和基を有するため、硬くて脆い硬化皮膜を形成し難く、靭性に優れた硬化物が得られる。従って、このテトラ(メタ)アクリレート化合物と共に、他のラジカル重合性モノマー、重合開始剤、繊維強化材等を含有してなる硬化性組成物は、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示し、且つ、優れた耐吸湿性並びに高湿下での優れた耐熱性及び柔軟性を有する硬化物を与える。
【0059】
さらに本発明者は、カルボキシル基含有化合物(A)、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)等と共に、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する硬化性組成物が、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示すと共に、その硬化物が、優れた耐クラック性に加え、前記した電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れた硬化物を与えることを見出した。
【0060】
すなわち、硬化性成分として、前記したように光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐水性に優れると共に、靭性に優れた硬化物を与える前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)を含有すると共に、アルカリ可溶性のカルボキシル基含有化合物(A)、重合開始剤(C)及び希釈溶剤(D)を含有し、好ましくは、さらに1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)、又はさらに硬化触媒(F)、あるいはさらにさらに他のラジカル重合性モノマー(G)を含有してなる硬化性組成物は、アルカリ現像可能であると共に、優れた光硬化性及び/又は熱硬化性を示し、且つ、その硬化物は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)によって、前記諸特性を得るために必要な密着性、低吸湿性、柔軟性及び耐熱性が付与される。
【0061】
以下に、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物、それを含有する硬化性組成物及びそれらの硬化物について詳細に説明する。
【0062】
まず、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、種々の方法によって得ることができる。例えば、下記一般式(2)で表わされる3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、ジカルボン酸クロライド又はジカルボン酸もしくはその無水物又はジカルボン酸エステルとのエステル化などである。これらの中でも、好ましい方法は、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドとの脱塩酸反応、及び3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸との脱水縮合反応によるエステル化である。
【化3】
(但し、R1、R2は水素原子又はメチル基を表わす。)
【0063】
前記3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応によって得ることができるが、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル類とグリセリンとの反応、(メタ)アクリル酸とグリシドールとの反応などによっても得ることができる。
【0064】
前記脂肪族ジカルボン酸クロライドとしては、例えば、コハク酸クロライド、グルタル酸クロライド、アジピン酸クロライド、スベリン酸クロライド、アゼライン酸クロライド、セバシン酸クロライドなどの脂肪族飽和ジカルボン酸ハライド、フマル酸クロライドなどの脂肪族不飽和ジカルボン酸ハライドなどが挙げられる。
【0065】
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水グルタル酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸の無水物、無水マレイン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸の無水物などが挙げられる。
【0066】
さらに、前記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、セバシン酸ジメチルなどの脂肪族飽和ジカルボン酸エステル、マレイン酸ジメチルなどの脂肪族不飽和ジカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0067】
前記芳香族ジカルボン酸クロライドとしては、例えば、o−フタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、テレフタル酸クロライドなどが挙げられる。
【0068】
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、芳香族ジカルボン酸無水物としてはフタル酸無水物などが挙げられる。
【0069】
さらに、前記芳香族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルなどが挙げられる。
【0070】
これら芳香族ジカルボン酸クロライド、芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物、芳香族ジカルボン酸エステルの中でも、反応収率、入手の容易性等の観点から、芳香族ジカルボン酸クロライド、特にテレフタル酸クロライド及びナフタレンジカルボン酸クロライドが好ましい。
【0071】
脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドと3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとのエステル化反応は、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドとを反応容器に入れておいて行なってもよいし、また、予め3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを反応容器に入れておいて、脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドを滴下して行なってもよいし、逆に脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドを予め反応容器に入れておいて、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを加えて行なってもよい。
【0072】
3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライドとの配合割合(仕込み割合)は、通常、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/脂肪族ジカルボン酸クロライド=4/3以上であることが好ましく、一方、芳香族ジカルボン酸クロライドとの配合割合(仕込み割合)は、通常、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/芳香族ジカルボン酸クロライド=4/3以上、より好ましくは2/1以上であることが望ましい。使用する3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの割合が少ないと、ジ(メタ)アクリレートなどの所望のテトラ(メタ)アクリレート以外の生成物が生成し易くなり、収率が低下する。逆に3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの割合が多すぎると、不飽和基の重合反応が起こり易くなり、高分子化する恐れがあるので好ましくない。また、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの割合が多すぎると、未反応の3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが残るので、経済的にも好ましくない。従って、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライドとの割合は、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/脂肪族ジカルボン酸クロライド=4/3〜3/1であることが好ましく、一方、芳香族ジカルボン酸クロライドとの割合は、モル比で3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/芳香族ジカルボン酸クロライド=4/3〜3/1、より好ましくは2/1〜3/1であることが望ましい。なお、上記配合割合は、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合についても同様である。
【0073】
3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライドとのエステル化反応における反応温度は、−70〜150℃、好ましくは−30〜120℃であり、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでも反応を行なうことができる。一方、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと芳香族ジカルボン酸クロライドとのエステル化反応における反応温度は、0〜150℃、好ましくは室温〜120℃であり、減圧下、常圧下、加圧下のいずれでも反応を行なうことができる。
【0074】
エステル化反応は、有機溶媒中で行なうことが好ましい。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、n−ヘプタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物等が好適に用いられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと脂肪族ジカルボン酸クロライド又は芳香族ジカルボン酸クロライドとの合計100質量部に対して、50〜1000質量部の範囲が好ましい。なお、上記反応温度及び溶媒の使用量は、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合についても同様である。
【0075】
また、上記エステル化反応は、重合禁止剤の存在下で行なうことが好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4−メトキシフェノール、4−ターシャリーブチルカテコール等が好適に用いられる。これらの重合禁止剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。重合禁止剤の使用量は、通常、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であればよい。なお、上記重合禁止剤の使用量は、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合についても同様である。
【0076】
さらに、エステル化の際に発生する塩化水素を捕捉するため、トリメチルアミン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級アミン類が適宜用いられる。これらの3級アミンは、塩化水素と4級アンモニウム塩を形成することにより、塩化水素を捕捉することができる。これら3級アミン類は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
なお、芳香族ジカルボン酸クロライド、芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物、芳香族ジカルボン酸エステルを用いる場合、エステル化反応終了後、トリエチルアミンなどのアミン類の塩基性塩を水に溶解させた後、酢酸エチルや塩化メチレンなどの抽出溶媒を加えて、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物を含む反応混合物を抽出する。また、反応混合物中に残存しているアミンを除去するために、反応混合物を塩酸水溶液や硫酸水溶液などで洗浄することが好ましい。さらに、反応混合物中に残存している芳香族ジカルボン酸クロライドを除去するために、反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液などで洗浄することが好ましい。
【0078】
一方、脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステル、あるいは芳香族ジカルボン酸もしくはその無水物又は芳香族ジカルボン酸エステルと、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとのエステル化反応は、通常、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、n−ヘプタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類等の有機溶媒中、硫酸、塩酸、燐酸、フッ化ホウ素、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂等のエステル化触媒を用いて、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4−メトキシフェノール、4−ターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤の存在下で行なわれる。
【0079】
また、上記エステル化反応は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、n−ヘプタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物等の有機溶媒中、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などの脱水縮合剤、トリメチルアミン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等の3級アミン類、1−ヒドロキシ−1−H−ベンゾトリアゾール水和物などを用いて、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン、4−メトキシフェノール、4−ターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤の存在下で行なうこともできる。
【0080】
本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、反応性稀釈剤として、また柔軟性を付与するために前記一般式(2)で表わされる3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを混合することができる。その混合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して70質量部以下の割合で充分であり、好ましくは50質量部以下の割合である。ジ(メタ)アクリレート化合物の混合量が70質量部を超えると、テトラ(メタ)アクリレート化合物の耐熱性を低下させる恐れがあるので、好ましくない。
【0081】
本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、重合開始剤(光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)の存在下に活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によって速やかにラジカル重合する他、単に加熱することによっても硬化し、またX線又は電子線照射によっても硬化可能である。
【0082】
また、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、複合材(繊維強化プラスチック)の樹脂マトリックスとして有用である。従って、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物は、前記したように光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、その硬化物は耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性にも優れるという特性のため、複合材(繊維強化プラスチック)、特に航空宇宙産業分野に用いられる複合材として極めて有用であるが、プリント配線板の各種レジスト材料や塗料の硬化性成分としても有利に用いることができる。
【0083】
まず、前記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する硬化性組成物、特に、さらに他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤あるいはさらに繊維強化材等を含有する硬化性組成物について説明する。
【0084】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類、あるいはさらに特開2003−2919号に記載のジ(メタ)アクリレート化合物、特開平9−124714号に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物、特開昭62−52547号に記載のヘキサ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を使用することができる。これらラジカル重合性モノマーの使用目的は、組成物の光硬化性及び/又は熱硬化性を上げることにある。室温で液状のラジカル重合性モノマーは、組成物の光硬化性及び/又は熱硬化性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整する役割も果たす。これらラジカル重合性モノマーの配合量は、使用目的や所望物性に応じて、任意の割合にすることができるが、通常、前記テトラ(メタ)アクリレート100質量部に対して200質量部以下が好ましい。
【0085】
本発明で用いるテトラ(メタ)アクリレート化合物は、単に加熱することによっても硬化し、またX線又は電子線照射によっても硬化可能であるが、重合開始剤(光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)の存在下に活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によって速やかにラジカル重合するので、このような重合開始剤を用いることが好ましい。
【0086】
前記重合開始剤としては後述するような光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤を好適に用いることかでき、その配合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部(前記ラジカル重合性モノマーを用いる場合にはこれらの合計量100質量部)に対して30質量部以下が好ましいが、例えば光ラジカル重合開始剤の場合には0.1〜30質量部の割合、熱ラジカル重合開始剤の場合には0.1〜10質量部の割合が好ましい。
【0087】
前記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これらの繊維は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。この繊維強化材の組成物中に占める割合は、好ましくは10〜80体積%、より好ましくは50〜70体積%である。
【0088】
なお、本発明の前記硬化性組成物には、前記3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、脂肪族ジカルボン酸クロライド又は脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステルとのエステル化反応の際の未反応のモノマーや、生成したジ(メタ)アクリレート化合物や重合物等の副生成物を含有しても構わない。
【0089】
本発明の前記硬化性組成物には、さらに必要に応じて、後述するような溶剤を単独で又は2種類以上の混合物として配合することができる。溶剤の使用目的は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物、ラジカル重合性モノマー、重合開始剤等を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整することにある。溶剤の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0090】
本発明の前記硬化性組成物には、硬化物の特性を低下させない程度において、後述するような無機増粘剤を配合することができる。無機増粘剤の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10.0質量部の割合である。
【0091】
本発明の前記硬化性組成物には、さらに必要に応じて、塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、高湿下での耐熱性などの特性を向上させる目的で、後述するような無機フィラーや有機フィラーを、単独で又は2種以上配合することができる。フィラーの配合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部当り10〜300質量部、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0092】
本発明の前記硬化性組成物は、さらに必要に応じて、後述するような着色剤、熱重合禁止剤、消泡剤及び/又はレベリング剤、シランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。さらに本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記テトラ(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜50質量部の割合である。難燃剤の配合量が上記範囲内にあると、硬化物の難燃性、耐吸湿性、並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性とが、高度にバランスされて好適である。
【0093】
本発明に係るテトラ(メタ)アクリレート化合物は、複合材(繊維強化プラスチック)、特に航空宇宙産業分野に用いられる複合材の樹脂マトリックスとして極めて有用である。この種の複合材料は、一般に、繊維強化材、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維(例えば、ケブラー繊維)等の繊維によって構成される繊維強化材に液状の硬化性組成物を含浸させ、次いで硬化させることによって得られる。この際に用いられる繊維強化材は、種々の形態、例えば重層繊維、二次元シート又は三次元もしくは多次元織物の形態をとることができる。
【0094】
また、テトラ(メタ)アクリレート化合物と共に、他のラジカル重合性モノマー、重合開始剤及び繊維強化材を含有してなる硬化性組成物を金型に装填し、あるいは繊維強化材を予め金型に入れておいてから、該金型に繊維強化材を含まない本発明の硬化性組成物を注入し、次いで、組成物を満たした金型を加熱して硬化させることにより、繊維強化プラスチックを得ることができる。あるいは、金型内に満たされた組成物を活性エネルギー線の照射により硬化させることにより、繊維強化プラスチックを得ることができる。この場合、活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線、X線、電子線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0095】
次に、プリント配線板の各種レジスト材料、多層プリント配線板の層間絶縁層などとして有用な本発明の硬化性組成物について説明する。この組成物は、前記したテトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の他に、アルカリ可溶性であるカルボキシル基含有化合物(A)や、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)を含有し、好ましくはさらに熱硬化性成分として1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)や硬化触媒(F)を含有し、さらに必要に応じて他のラジカル重合性モノマー(G)を含有する。
【0096】
まず、上記硬化性組成物で用いるカルボキシル基含有化合物(A)は、1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上のカルボキシル基を有する化合物である。具体的には、それ自体がエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能であり、特定のものに限定されるものではないが、特に以下に列挙するような樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を好適に使用できる。
【0097】
(1)不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体に、不飽和カルボン酸(a)を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)不飽和二重結合を有する酸無水物(e)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体に、水酸基と不飽和二重結合を有する化合物(f)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(g)のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸(h)のカルボキシル基をエステル化反応(全エステル化又は部分エステル化、好ましくは全エステル化)させ、生成した水酸基にさらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)不飽和二重結合を有する化合物(b)とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸(i)を反応させ、生成した二級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(7)水酸基含有ポリマー(j)に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(8)水酸基含有ポリマー(j)に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(9)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(g)と、不飽和モノカルボン酸(h)と、1分子中に少なくとも2個の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基を有する化合物(k)との反応生成物(I)に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(10)上記反応生成物(I)と、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)と、不飽和基含有モノイソシアネート(m)との反応生成物からなる不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂、
(11)1分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物(n)に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(12)ビスエポキシ化合物(p)とジカルボン酸(q)との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(13)ビスエポキシ化合物(p)とビスフェノール類(r)との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(14)ノボラック型フェノール樹脂(s)とアルキレンオキシド(t)との反応生成物に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた反応生成物に飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0098】
前記(1)のカルボキシル基含有樹脂は、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸(a)と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体であり、一方、前記(2)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体のカルボキシル基の一部に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基とエポキシ基、酸クロライド等の反応性基を有する化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、該化合物の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。上記共重合体の一方のモノマー成分である不飽和カルボン酸(a)の有するカルボキシル基の一部は未反応のまま残存するため、得られるカルボキシル基含有感光性樹脂は、アルカリ水溶液に対して可溶性である。
【0099】
前記(3)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等と、前記不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体のエポキシ基に、前記不飽和カルボン酸(a)のカルボキシル基を反応させ、該不飽和カルボン酸の不飽和二重結合を側鎖に導入すると共に、上記付加反応で生成した二級の水酸基に、多塩基酸無水物(d)、例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0100】
前記(4)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、不飽和二重結合を有する酸無水物(e)、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等と、前記不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体の酸無水物基の一部に、水酸基と不飽和二重結合を有する化合物(f)、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリレートにカプロラクトンを反応させたモノマー、(メタ)アクリレートにポリカプロラクトンオリゴマーを反応させたマクロモノマー等の水酸基を反応させてハーフエステルとし、該化合物(f)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。
【0101】
前記(5)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、N−グリシジル型等の公知慣用のエポキシ化合物(g)のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸(h)のカルボキシル基を反応させ、例えばエポキシアクリレートを生成させると共に、上記付加反応で生成した二級の水酸基に前記多塩基酸無水物(d)をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0102】
前記(6)のカルボキシル基含有樹脂は、前記不飽和二重結合を有し、水酸基や酸性基を持たないアルキル(メタ)アクリレート、置換もしくは非置換スチレンなどの化合物(b)と、グリシジル(メタ)アクリレートを主鎖とする共重合体のグリシジル基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸(i)、例えば炭素数2〜17のアルキルカルボン酸、芳香族基含有アルキルカルボン酸等を反応させ、生成した二級の水酸基に前記多塩基酸無水物(d)を付加反応させて得られる樹脂である。
【0103】
前記(7)のカルボキシル基含有樹脂は、水酸基含有ポリマー(j)、例えばオレフィン系水酸基含有ポリマー、アクリル系ポリオール、ゴム系ポリオール、ポリビニルアセタール、スチレンアリルアルコール系樹脂、セルロース類等に、酸性度の比較的弱い前記多塩基酸無水物(d)を反応させてカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0104】
一方、前記(8)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記カルボキシル基含有樹脂(7)のカルボキシル基に、前記エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物(c)のエポキシ基を反応させ、該化合物(c)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。
【0105】
前記(9)のカルボキシル基含有感光性樹脂の合成反応は、多官能エポキシ化合物(g)に不飽和モノカルボン酸(h)(又は化合物(k))を反応させ、次いで化合物(k)(又は不飽和モノカルボン酸(h))を反応させる第一の方法と、多官能エポキシ化合物(g)と不飽和モノカルボン酸(h)と化合物(k)を同時に反応させる第二の方法とがある。どちらの方法でもよいが、第二の方法が好ましい。
【0106】
前記1分子中に少なくとも2個以上の水酸基と、エポキシ基と反応する水酸基以外の1個の他の反応性基(例えば、カルボキシル基、二級アミノ基等)を有する化合物(k)の具体例としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシ含有モノカルボン酸;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミン類等が挙げられる。
【0107】
一方、前記(10)の不飽和基含有ポリカルボン酸ウレタン樹脂の合成反応は、前記反応生成物(I)と多塩基酸無水物(d)を反応させ、次いで、生成した不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂中の水酸基に対して不飽和基含有モノイソシアネート(m)を反応させるのが好ましい。
【0108】
前記不飽和モノイソシアネート(m)の具体例としては、例えばメタクリロイルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートや、有機ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と前記の1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類を約等モル比で反応させることにより得られる反応生成物等が挙げられる。
【0109】
前記(11)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、出発原料として、不飽和モノカルボン酸との反応によって主として二級の水酸基を生じるエポキシ樹脂に代えて、オキセタン環を有する化合物を用い、多官能オキセタン化合物(n)に不飽和モノカルボン酸(h)を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂の一級の水酸基に対してさらに多塩基酸無水物(d)を反応させることにより、結合部位が熱的に切断され難く、熱安定性に優れた樹脂としたものである。
【0110】
前記(12)及び(13)のカルボキシル基含有樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂等のビスエポキシ化合物(p)と、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸(q)又はビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類(r)との反応生成物に、不飽和二重結合を導入し、引き続き、上記反応で生成した二級の水酸基あるいは残存する水酸基等に対してさらに多塩基酸無水物(d)を反応させることにより、熱安定性に優れた樹脂としたものである。不飽和二重結合の導入は、一般に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基と、上記反応で残存する水酸基、カルボキシル基等や生成した水酸基との反応性を有するエポキシ基、酸クロライド等の反応性基を有する化合物を反応させることによって行なわれる。
【0111】
前記(14)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂(s)のアルキレンオキシド(t)の付加反応による鎖延長によって可撓性、伸びに優れ、かつ、アルキレンオキシドの付加反応によって生じた末端水酸基に不飽和モノカルボン酸(h)の付加及び多塩基酸無水物(d)の付加が行なわれ、不飽和基やカルボキシル基が同一側鎖上に存在せず、かつ、それぞれ側鎖の末端に位置するため、反応性に優れ、また、主鎖から離れた末端カルボキシル基の存在により優れたアルカリ現像性を有する。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0112】
前記したようなカルボキシル基含有化合物(A)の酸価は、好ましくは20〜200mgKOH/g、より好ましくは50〜120mgKOH/gである。酸価が20mgKOH/gよりも低い場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が悪くなり、形成した塗膜の現像が困難になる。一方、200mgKOH/gよりも高くなると、露光の条件によらず露光部の表面まで現像されてしまい、好ましくない。
【0113】
また、前記したようなカルボキシル基含有化合物(カルボキシル基含有樹脂及びカルボキシル基含有感光性樹脂)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
前記テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の配合割合は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して5〜100質量部(固形分として、以下同様)の割合が適当であり、好ましくは10〜50質量部の割合である。テトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の配合割合が5質量部未満の場合、充分な光硬化性及び/又は熱硬化性が得られ難いので好ましくなく、一方、100質量部を超えると、硬化物の特性がそれ以上向上せず、過剰に入れた分だけ、経済的に好ましくない。
【0115】
なお、本発明の硬化性組成物には、前記3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、脂肪族ジカルボン酸クロライド又は脂肪族ジカルボン酸もしくはその無水物又は脂肪族ジカルボン酸エステルとのエステル化反応の際の未反応のモノマーや、生成したジ(メタ)アクリレート化合物や重合物等の副生成物を含有しても構わない。
【0116】
本発明で用いるテトラ(メタ)アクリレート化合物は、単に加熱することによっても硬化し、またX線又は電子線照射によっても硬化可能であるが、重合開始剤(C)(光ラジカル重合開始剤(C1)、熱ラジカル重合開始剤(C2))の存在下に活性エネルギー線の照射及び/又は加熱によって速やかにラジカル重合するので、このような重合開始剤を用いることが好ましい。
【0117】
光ラジカル重合開始剤(C1)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これら公知慣用の光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用でき、さらにはN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。また、可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加することもできる。特に好ましい光重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等であるが、特にこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0118】
熱ラジカル重合開始剤(C2)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1´−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレイト、4,4´−アゾビス−4−シアノバリックアシツド、2−メチル−2,2´−アゾビスプロパンニトリル等のアゾ系開始剤などが挙げられる。
【0119】
前記したような重合開始剤(C)の配合量は、通常の量的割合で充分であるが、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して、光ラジカル重合開始剤の場合には0.5〜25質量部の割合、熱ラジカル重合開始剤の場合には0.1〜10質量部の割合が好ましい。
【0120】
前記希釈溶剤(D)としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。これら稀釈溶剤の使用目的は、前記カルボキシル基含有化合物(A)等を溶解させ、また組成物を塗布方法に適した粘度に調整することにある。稀釈溶剤(D)の配合量は、塗布方法に応じた任意の量とすることができる。
【0121】
前記1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)としては、オキシラン化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物などが挙げられる。
オキシラン化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、Y6−128、ダウケミカル(株)製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成(株)製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル(株)製のD.E.R.542、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル(株)製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート807、東都化成(株)製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成(株)製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のエポトートYH−434、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシELM−120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS−200、旭電化工業(株)製のEPX−30、大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1573(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL−931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業(株)製のTEPIC(商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成(株)製のZX−1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学(株)製のESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業(株)製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP−503、CP−50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにヒダントイン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、1,5−ジヒドロキシナフタレンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるアルコール性の二級の水酸基に、エピハロヒドリンを反応させて得られる多官能エポキシ樹脂(国際公開WO01/024774号公報)等が挙げられる。
【0122】
オキセタン化合物としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3´−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられる。
【0123】
前記した1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの環状エーテルを有する化合物は、熱硬化することにより、レジストの密着性、耐熱性等の特性を向上させる。その配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して10質量部以上、100質量部以下の割合で充分であり、好ましくは15〜60質量部の割合である。環状エーテルを有する化合物(E)の配合量が上記範囲未満の場合、硬化膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり、又はんだ耐熱性や無電解めっき耐性も低くなり易い。一方、上記範囲を超えると、塗膜の現像性や硬化膜の無電解めっき耐性が悪くなり、またPCT耐性も劣ったものとなる。
【0124】
前記硬化触媒(F)としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを用いることができる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ(株)製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、熱硬化特性を向上させるためであれば、これらに限られるものではなく、環状エーテルを有する化合物の硬化触媒、もしくは環状エーテルを有する化合物とカルボン酸の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれらの化合物を前記硬化触媒と併用する。上記硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15.0質量部の割合である。
【0125】
前記ラジカル重合性モノマー(G)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル又はフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、及び上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用することができる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。これらラジカル重合性モノマーの使用目的は、組成物の光反応性を上げることにある。室温で液状のラジカル重合性モノマーは、組成物の光反応性を上げる目的の他、組成物を各種の塗布方法に適した粘度に調整したり、アルカリ水溶液への溶解性を助ける役割も果たす。ラジカル重合性モノマー(G)の配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して100質量部以下が好ましい。
【0126】
本発明の硬化性組成物には、硬化物の特性を低下させない程度において、無機増粘剤を配合することができる。無機増粘剤としては、例えば、日本アエロジル社製の#50、#200、#380などの親水性シリカ、日本アエロジル社製の#R974、#R972などの疎水性シリカ、ウイルバー・エリス社製のオルベン、ベントン38などの有機ベントナイトなどが挙げられる。これら無機増粘剤の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10.0質量部の割合である。
【0127】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカ等の公知慣用の無機フィラーや、ゴム微粒子、粉体エポキシ樹脂(例えば、日産化学工業社製TEPIC等)、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂(例えば、日本触媒社製M−30、S、MS等)、尿素樹脂、架橋アクリルポリマー(例えば、綜研化学社製MR−2G、MR−7G等、積水化成品社製テクポリマー)等の有機フィラーを、単独で又は2種以上配合することができる。これらは塗膜の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度、耐熱性などの特性を向上させる目的で用いられる。フィラーの配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部当り10〜300質量部、好ましくは30〜200質量部の割合が適当である。
【0128】
本発明の硬化性組成物は、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0129】
さらに本発明の硬化性組成物は、難燃性を得る目的で、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、及びアンチモン系難燃剤等の難燃剤を配合することができる。難燃剤の配合量は、前記カルボキシル基含有化合物(A)100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは5〜50質量部の割合である。難燃剤の配合量が上記範囲内にあると、得られる硬化物の難燃性、耐熱性、耐水性及び密着性が高度にバランスされて好適である。
また、本発明の組成物の引火性の低下のために、また増粘性を高めるために、水を添加することもできる。
【0130】
本発明の硬化性組成物は、従来知られている方法と同様の方法で光硬化及び/又は熱硬化させることにより、容易に硬化物を得ることができる。例えば、上記硬化性組成物をロールを用いて均一になるまで充分に混合し、用途に応じて所望の基材に、例えばスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の公知の塗工方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる希釈溶剤を揮発乾燥させることにより、ダレを生ずることもなく指触乾燥性に優れた塗膜を形成できる。また、本発明の硬化性組成物はレジスト用ドライフィルムを形成することもでき、その場合にはそのままラミネートすればよい。その後、活性エネルギー線により露光して光硬化させる。次いで、約100℃〜200℃で加熱硬化させることにより、優れた耐クラック性に加え、電気絶縁性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れた硬化物を得ることができる。プリント配線板のソルダーレジスト形成の場合には、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に紫外線等の活性エネルギー線により露光し、又はレーザー光線により直接描画し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成し、加熱硬化させることにより、上記のような諸特性に優れたレジスト膜が得られる。上記現像に使用される希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等の水溶液が挙げられる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明の実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0132】
合成例1
窒素導入管、温度計を取り付けた100mlのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)10.0g(46.68ミリモル)、テトラヒドロフラン80ml、テレフタル酸クロライド4.7g(23.34ミリモル)、トリエチルアミン5.9g(58.35ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン0.5g(4.09ミリモル)、メチルハイドロキノン0.4mgを加えて窒素気流下、65℃で20時間加熱還流させた。その反応液に水50mlを加えてトリエチルアミンの塩基性塩を水に溶解させた後、酢酸エチルで反応混合物を抽出した。さらに、水層中の反応混合物を酢酸エチル25mlで抽出した。得られた有機層を1Nの塩酸水溶液50mlで洗浄し、続いで飽和食塩水50mlで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム5.0gで乾燥後、減圧ろ過、濃縮を行ない、11.7gの化合物を得た。このものを中性シリカゲル230gを用いてカラム精製を行なった。その結果、4.5gのテトラ(メタ)アクリレート化合物が得られた。これは、理論量の34.5%の収率であった。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図1、図2及び図3に示す。また、1H−NMRの同定結果を表1に示す。なお、図3に示すクロマトグラムにピークが一つしか現われていないことから、純粋な化合物が得られたことがわかる。
【0133】
【表1】
【0134】
合成例2
窒素導入管、温度計を取り付けた10リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)1.0kg(4.67モル)、テトラヒドロフラン7.0リットル、テレフタル酸クロライド475.0g(2.34モル)、トリエチルアミン590g(5.83モル)、メチルハイドロキノン0.4g、フェノチアジン0.4gを加えて窒素気流下、室温で6時間反応させた。その反応液に水5.0リットルを加えてトリエチルアミンの塩基性塩を水に溶解させた後、酢酸エチル5.0リットルで反応混合物を抽出した。さらに、水層中の反応混合物を酢酸エチル2.5リットルで抽出した。得られた有機層を1Nの塩酸水溶液5.0リットルで洗浄し、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5.0リットルで洗浄し、さらに飽和食塩水5.0リットルで洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウム500gで乾燥後、減圧ろ過して濃縮し、反応濃縮混合物(粘性黄色液体)1.5kgを得た。得られた反応濃縮混合物にメタノール2.5リットルを加えて均一にした後、−30℃まで冷却し、結晶を生じさせ、ろ過(メタノールで洗浄)して、融点約82℃の白色のテトラ(メタ)アクリレート化合物350gを得た。これは、理論量の27.0%の収率であった。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図4、図5及び図6に示す。
【0135】
試験例1
上記白色結晶のテトラ(メタ)アクリレート化合物を100℃で溶融させ、バーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリイミドフィルムに塗布し、(1)120℃で120分間、(2)140℃で30分間、(3)160℃で20分間、又は(4)180℃で10分間加熱し、次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、ポリイミドフィルムから硬化膜を剥がし、4種類の評価サンプルを得た。これらの評価サンプルの耐熱性、柔軟性及び耐折性を後述する方法で測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を後述する方法で測定し、評価した。上記測定結果を下記表2に示す。
【0136】
【表2】
上記表2中の性能試験の評価方法は以下の通りである。
【0137】
(1)耐熱性
評価サンプルを熱重量測定(TG)により測定し、耐熱性を評価した。
なお、本明細書においては、図7に示すようにTG曲線の変曲部での接線から求めた外挿点を耐熱温度とする。
【0138】
(2)柔軟性
評価サンプルを幅10mm、長さ90mmに加工して作製したフィルム状試験片の一側辺部を電子秤上に載せ、他側辺部を折り曲げる方法で、フィルム間が10mmになるまでに電子秤にかかる最大荷重を反発力として、以下の基準で評価した。
○:10g未満
△:10〜30g未満
×:30g以上、又は資料が折れて測定不可能
【0139】
(3)耐折性
評価サンプルを幅10mm、長さ90mmに加工して作製したフィルム状試験片を135°に折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化膜が折れないもの
△:硬化膜は折れないが、クラックがあるもの
×:硬化膜が折れるもの
【0140】
(4)吸水率
評価サンプルの質量を測定し、次にこの評価サンプルをPCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、処理後の硬化物の質量を測定し、下記算式により硬化物の吸水率を求めた。
吸水率(%)={(W2−W1)/(W1−Wg)}×100
ここで、W1は評価サンプルの質量、W2はPCT処理後の評価サンプルの質量、Wgはガラス板の質量である。
【0141】
予備合成例1
1リットルのフラスコに2,6−ナフタレンジカルボン酸40g(0.185モル)、塩化チオニル120ミリリットル(1.67モル)を仕込み、アルゴン気流下、約80℃で1時間加熱還流した。その後、ジメチルホルムアミド1ミリリットルを添加し、さらに24時間、約80℃で加熱還流を行なった。反応終了後、未反応の塩化チオニルを減圧留去し、黄色結晶の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド31.0gを得た。
【0142】
予備合成例2
1リットルのフラスコに2,6−ナフタレンジカルボン酸80g(0.37モル)、塩化チオニル240ミリリットル(3.3モル)、ピリジン2ミリリットルを仕込み、アルゴン気流下、約80℃で1時間加熱還流した。その後、ジメチルホルムアミド1ミリリットルを添加し、さらに4時間、約80℃で加熱還流を行なった。続いて、塩化チオニル100ミリリットルを加え、14.5時間、約80℃で加熱還流した。反応終了後、未反応の塩化チオニルを減圧留去し、黄色結晶の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド73.8gを得た。
【0143】
予備合成例3
予備合成例2で得られた2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド53.8gをトルエンに溶解させ、−30℃で12時間冷却し、析出した結晶を濾過して、高純度の2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド22.7gを得た。
【0144】
合成例3
1リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)43.3g(202ミリモル)、テトラヒドロフラン400ミリリットル、フェノチアジン4.3mg、トリエチルアミン51.1g(505ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、約0℃で攪拌した。次いで、予備合成例1で得た2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド19g(80ミリモル)をテトラヒドロフラン200ミリリットルに溶解させ、10℃以下で、反応系内に滴下した。滴下終了後反応系内の温度を約25℃にし、2時間反応を行なった。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、エチルエーテルで抽出を行なった。分液した有機層を水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過し、濃縮して、茶褐色オイル57gを得た。得られたオイルのクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)を図8に示す。次に、得られたオイルをカラム精製(SiO2:200g、展開溶媒:40%酢酸エチル/n−ヘキサン中)し、黄色オイル2.5gを得た。得られたオイルにメタノール10ミリリットルを加え、−30℃で5時間冷却し、濾過して、白色結晶1.5gを得た。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図9、図10及び図11に示す。
【0145】
合成例4
1リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート28.3g(79ミリモル)、テトラヒドロフラン230ミリリットル、フェノチアジン2.0mg、トリエチルアミン24.0g(237ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、約0℃で攪拌した。次いで、予備合成例2で得た2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド20.0g(79ミリモル)をテトラヒドロフラン200ミリリットルに溶解させ、10℃以下で、反応系内に滴下した。滴下終了後、反応系内の温度を約25℃にし、2時間反応を行なった。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、エチルアセテートで抽出を行なった。分液した有機層を水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過し、濃縮して、茶褐色オイル37gを得た。得られたオイルのクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)を図12に示す。得られたオイルをカラム精製(SiO2:320g、展開溶媒:20%酢酸エチル/n−ヘキサン中)し、無色透明液体14.0gを得た。得られたオイルにエチルエーテル20ミリリットルを加え、合成例3で得た白色結晶4mgを種結晶として加え、−30℃で12時間掛けて再結晶を行なった。その結果、白色半固体物質が得られた。そこで、エチルエーテルを除去し、次いでn−ヘキサンを加え、攪拌した後、除去しきれなかったエチルエーテルとn−ヘキサンとの混合溶媒を除去し、再びエチルエーテル20ミリリットルを加え、濾過して、融点約92℃の白色結晶2.7gを得た。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図13、図14及び図15に示す。1H−NMRの同定結果を表3に示す。
【表3】
【0146】
また、上記濾過液を濃縮し、無色透明液体11.3gを得た。得られた液体の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図16、図17及び図18に示す。
【0147】
合成例5
1リットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート38.4g(179ミリモル)、テトラヒドロフラン230ミリリットル、フェノチアジン2.5mg、トリエチルアミン27.2g(269ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、約0℃で攪拌した。次いで、予備合成例3で得た2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド22.7g(90ミリモル)をテトラヒドロフラン360ミリリットルに溶解させ、10℃以下で、反応系内に滴下した。滴下終了後反応系内の温度を約25℃にし、2時間反応を行なった。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、エチルアセテートで抽出を行なった。分液した有機層を水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過し、濃縮して、茶褐色オイル60.1gを得た。得られたオイルのクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)を図19に示す。次に、得られたオイルをカラム精製(SiO2:500g、展開溶媒:20%酢酸エチル/n−ヘキサン中)し、無色透明オイル25.2gを得た。得られたオイルにエチルエーテル70ミリリットルを加え、攪拌、次いで濾過して、白色結晶6.6gを得た。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物の赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)、核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図20、図21及び図22に示す。
【0148】
試験例2
合成例1〜3で得た白色結晶のテトラ(メタ)アクリレート化合物をそれぞれ100℃で溶融させ、バーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリイミドフィルムに塗布し、180℃で30分間、次いで、200℃で10分間加熱した。得られた硬化フィルムをPCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、ポリイミドフィルムから硬化膜を剥がし、評価サンプルを得た。これらの評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で測定し、柔軟性及び耐折性は後述する方法で測定し、評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記測定結果を下記表4に示す。
【0149】
【表4】
上記表4中の性能試験の柔軟性及び耐折性の評価方法は以下の通りである。
【0150】
(2’)柔軟性
評価サンプルを幅5mm、長さ40mmに加工して作製したフィルム状試験片の一側辺部を電子秤上に載せ、他側辺部を折り曲げる方法で、フィルム間が10mmになるまでに電子秤にかかる最大荷重を反発力として、以下の基準で評価した。
○:10g未満
△:10〜30g未満
×:30g以上、又は試験片が折れて測定不可能
【0151】
(3’)耐折性
評価サンプルを幅5mm、長さ40mmに加工して作製したフィルム状試験片を135°に折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化膜が折れないもの
△:硬化膜は折れないが、クラックがあるもの
×:硬化膜が折れるもの
【0152】
合成例6
50ミリリットルのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)2.0g(9.33ミリモル)、N,N−ジメチルホルムアミド20ミリリットル、4−ターシャリーブチルカテコール1mg、1−ヒドロキシ−1−H−ベンゾトリアゾール水和物1.71g(11.2ミリモル)、トリエチルアミン2.4g(23.34ミリモル)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩2.2g(11.2ミリモル)、コハク酸826mg(7ミリモル)を加え、アルゴン気流下、攪拌しながら、室温で14時間反応させた。得られた反応溶液に酢酸エチルと水を加えて抽出を行ない、分液した有機層を飽和食塩水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過して濃縮し、2.3gの黄色液体を得た。このものをシリカゲル50gを用いてカラム精製を行ない、酸価1mgKOH/g以下のテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの液状混合物1.5gが得られた。
【0153】
得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))、クロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)及び赤外線吸収スペクトル(フーリエ変換赤外分光光度計FT−IRを用いて測定)をそれぞれ図23、図24及び図25に示す。また、1H−NMRの同定結果を表5に示す。
【0154】
【表5】
【0155】
なお、参考のために、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート単独の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))及びクロマトグラム(高速液体クロマトグラフィーを用いて測定)をそれぞれ図26及び図27に、さらに下記式(3)で示される構造のモノカルボン酸の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))を図28に示す。
【0156】
【化4】
(但し、R1、R2は水素原子又はメチル基を表わす。)
【0157】
図23と図26とを比較すると、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物では、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートにはないコハク酸のシングルピークが2.6ppm付近に出現している。また、図23と図28とを比較すると、上記モノカルボン酸では、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物にはないカルボン酸のシングルピークが10.3ppm付近に出現している。さらに、図24と図27とを比較すると、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物では、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートにはないピークが6分付近に出現している。以上のデータから、図24の6分付近に出現しているピークは、上記テトラ(メタ)アクリレート化合物によるものである。
【0158】
合成例7
50mlのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)1.71g(8ミリモル)、テトラヒドロフラン20ml、4−メトキシフェノール0.8mg、トリエチルアミン2.02g(20ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、0℃で攪拌しながら、アジピン酸クロライド1.02g(5.6ミリモル)を滴下し、滴下終了後、室温で約14時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及びジエチルエーテルを加えて抽出を行なった。次いで、分液した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、濃縮した後、カラム精製(シリカゲル40g、展開溶媒:20%酢酸エチル/n−ヘキサン)を行ない、無色透明のオイル状のテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの液状混合物を得た。得られた混合物の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))を図29に示す。また、1H−NMRの同定結果を表6に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
合成例8
50mlのフラスコに3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステル701A)1.71g(8ミリモル)、テトラヒドロフラン20ml、4−メトキシフェノール0.8mg、トリエチルアミン2.02g(20ミリモル)を仕込み、アルゴン気流下、0℃で攪拌しながら、アジピン酸クロライド1.02g(5.6ミリモル)を滴下し、滴下終了後、室温で約13時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、ショートカラム(シリカゲル25g、展開溶媒:テトラヒドロフラン)処理を施し、濃縮して、テトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を約64%含む、液状混合物2.5gが得られた。得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの混合物の核磁気共鳴スペクトル(溶媒CDCl3、基準物質TMS(テトラメチルシラン))、ゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラム及び赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図30、図31及び図32に示す。なお、参考のために、3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート単独のゲル浸透クロマトグラフィーによるクロマトグラムを図33に示す。
【0161】
試験例3
上記合成例6及び合成例8のテトラ(メタ)アクリレート化合物と3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの液状の混合物を、バーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、180℃で30分間加熱し、ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化塗膜を剥がし、その後、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、評価サンプルを得た。これらの評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で測定し、耐折性は前記試験例2で用いた方法(3’)で測定し、また、柔軟性は後述する方法で測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記測定結果を下記表7に宗す。
【0162】
【表7】
上記表5中の性能試験の柔軟性の評価方法は以下の通りである。
【0163】
(2”)柔軟性
評価サンプルを幅5mm、長さ40mmに加工して作製したフィルム状試験片の一側辺部を電子秤上に載せ、他側辺部を折り曲げる方法で、フィルム間が10mmになるまでに電子秤にかかる最大荷重を反発力として、以下の基準で評価した。
○:20g未満
△:20〜40g未満
×:20g以上、又は試験片が折れて測定不可能
【0164】
実施例1〜5及び比較例1、2
表8に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合した。実施例1〜3についてはそれぞれ90℃で攪拌し、実施例4については室温で攪拌し、また実施例5については100℃で攪拌し、硬化性組成物を調製した。比較例1及び2については、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、硬化性組成物を調製した。これらをバーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリイミドフィルムに塗布し、実施例1〜3及び比較例1、2については、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、実施例4については室温で6時間放置後、60分間かけて徐々に115℃まで温度を上げ、115℃で60分間加熱し、実施例5については180℃で30分間、次いで200℃で10分間加熱した。次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、各ポリイミドフィルムから硬化膜を剥がし、評価サンプルを得た。
【0165】
【表8】
【0166】
実施例6及び7
実施例6については、実施例1で得られた組成物を100℃で溶融させ、ガラスクロスに含浸させた後、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、また、実施例7については、合成例2で得られたテトラ(メタ)アクリレート化合物を100℃で溶融させ、ガラスクロスに含浸させた後、140℃で30分間の条件で加熱し、次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、評価サンプルを得た。
【0167】
前記各実施例及び各比較例で得られた評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で測定し、また、実施例1〜4、6、7及び比較例1、2で得られた評価サンプルの柔軟性及び耐折性は前記試験例1で用いた方法(2)、(3)で測定し、実施例5で得られた評価サンプルの柔軟性及び耐折性は前記試験例2で用いた方法(2’)、(3’)で測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記各実施例及び各比較例における方法と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記各試験の結果を表9に示す。
【0168】
【表9】
【0169】
実施例8、9、11、12及び比較例3、4
表10に示す配合組成(数値は質量部である)に従って各成分を配合した。実施例8、11、12及び比較例3、4については、それぞれ配合成分を攪拌し、硬化性組成物を調製した。実施例9については、90℃で攪拌し、硬化性組成物を調製した。これらをバーコーターを用いて50μmの厚さになるように、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、実施例8及び比較例3、4については、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、実施例9及び12については、150℃で60分間加熱し、実施例11については、室温で6時間放置後、60分間かけて80℃まで温度を上げ、80℃で30分間、次いで100℃で30分間、次いで150℃で30分間加熱した。次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、その後、各ポリエチレンテレフタレートフィルムから硬化膜を剥がし、評価サンプルを得た。
【0170】
実施例10
実施例10については、実施例8の組成物と同様な組成物をガラスクロスに含浸させた後、露光量300mJ/cm2の条件で露光し、次いで、PCT装置(TABAI ESPEC HAST SYSTEM TPC−412MD)を用いて121℃、100%RHの条件で24時間処理し、評価サンプルを得た。
【0171】
【表10】
【0172】
前記各実施例及び各比較例で得られた評価サンプルの耐熱性は前記試験例1で用いた方法(1)で、また柔軟性及び耐折性は前記試験例2で用いた方法(2’)及び(3’)でそれぞれ測定し、高湿下での熱的劣化等の度合いを評価した。
また、予め質量を測定したガラス板上に、PCT装置による処理を実施しないこと以外は上記各実施例及び各比較例における方法と同様にして硬化膜を作成し、評価サンプルを得た。この硬化膜の吸水率を前記試験例1で用いた方法(4)で測定し、評価した。上記各試験の結果を表11に示す。
【0173】
【表11】
【0174】
合成例9
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショーノールCRG951」、昭和高分子(株)製、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基当量が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0175】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
【0176】
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形分の酸価87.7mgKOH/gであった。
【0177】
合成例10
ガス導入管、撹拌装置、冷却管、温度計、及びアルカリ金属水酸化物水溶液の連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器に、水酸基当量が80g/eq.の1,5−ジヒドロキシナフタレン224gとビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828、エポキシ当量189g/eq.)1075gを仕込み、窒素雰囲気下にて、撹拌下110℃で溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン0.65gを添加し、反応容器内の温度を150℃まで昇温し、温度を150℃に保持しながら、約90分間反応させ、エポキシ当量452g/eq.のエポキシ化合物(3−a)を得た。次に、フラスコ内の温度を40℃まで冷却し、エピクロルヒドリン1920g、トルエン1690g、テトラメチルアンモニウムブロマイド70gを加え、撹拌下45℃まで昇温し保持した。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液364gを60分間かけて連続滴下し、その後、さらに6時間反応させた。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンの大半を減圧蒸留して回収し、副生塩とトルエンを含む反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ水洗した。有機溶媒層と水層を分離後、有機溶媒層よりメチルイソブチルケトンを減圧蒸留して留去し、エポキシ当量277g/eq.の多核エポキシ樹脂(3−b)を得た。得られた多核エポキシ樹脂(3−b)は、エポキシ当量から計算すると、エポキシ化合物(3−a)におけるアルコール性水酸基1.98個のうち約1.59個がエポキシ化されている。従って、アルコール性水酸基のエポキシ化率は約80%である。
【0178】
次に、得られた多核エポキシ樹脂(3−b)277gを、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート290gを加え、加熱溶解し、メチルハイドロキノン0.46gと、トリフェニルホスフィン1.38gを加え、95〜105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物129gを加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸化、全酸化測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分62%、固形分の酸価100mgKOH/gであった。
【0179】
実施例13〜15及び比較例5、6
表12に示す配合組成に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、硬化性組成物を調製した。これをスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルホールプリント配線基板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥し、次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射(露光量700mJ/cm2)し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像し、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。
【0180】
得られた硬化皮膜を有する試験基板について、後述の試験方法及び評価方法にて、耐クラック性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、無電解金めっき耐性の試験を行なった。
【0181】
また、銅スルホールプリント配線基板の代わりにIPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、上記と同じ条件で試験基板を作製し、電気絶縁抵抗の試験を行なった。上記各試験の結果を表13に示す。
【0182】
【表12】
【0183】
【表13】
表13に示される結果から明らかなように、感光性成分としてカルボキシル基含有感光性樹脂を用いた比較例5、6ではヒートサイクル時の耐クラック性に劣っていたが、本発明に従ってさらにテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する実施例13〜15では耐クラック性に優れていた。上記表13中の性能試験の評価方法は以下の通りである。
【0184】
(5)耐クラック性:
硬化皮膜の耐クラック性を楠本化成社製のThermal Shock Chamber NT 1020Wを用い、−65℃〜150℃を1サイクルとし、以下の基準で評価した。
○:クラックが500サイクル以上で発生したもの
△:クラックが300〜499サイクルで発生したもの
×:クラックが299サイクル以下で発生したもの
【0185】
(6)PCT耐性:
硬化皮膜のPCT耐性を、121℃、飽和水蒸気中50時間の条件にて以下の基準で評価した。
○:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化皮膜に若干のふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化皮膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
【0186】
(7)密着性:
JIS D 0202の試験方法に従って硬化皮膜に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリングテスト後の剥れの状能を目視判定した。
◎:100/100で全く剥れのないもの
○:100/100でクロスカット部が少し剥れたもの
△:50/100〜90/100
×:0/100〜50/100
【0187】
(8)はんだ耐熱性:
JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴への試験基板の10秒浸漬を3回行ない、外観の変化を評価した。なお、ポストフラックス(ロジン系)としては、JIS C 6481に従ったフラックスを使用した。
○:外観変化なし
△:硬化皮膜の変色が認められるもの
×:硬化皮膜の浮き、剥れ、はんだ潜りあり
【0188】
(9)耐酸性:
試験基板を10容量%硫酸水溶液に20℃で30分間浸漬後取り出し、硬化皮膜の状態を以下の基準で評価した。
○:変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化しているもの
×:硬化皮膜にフクレあるいは膨潤脱落があるもの
【0189】
(10)耐アルカリ性:
試験基板を、10容量%硫酸水溶液を10質量%水酸化ナトリウム水溶液に代えた以外は耐酸性試験と同様に評価した。
【0190】
(11)無電解金めっき耐性:
後述する工程に従って試験基板に無電解金めっきを行ない、その試験基板について外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、硬化皮膜の剥離状態を以下の基準で判定した。
○:外観変化もなく、硬化皮膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、硬化皮膜にわずかに剥れがある。
×:硬化皮膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験で硬化皮膜の剥れが大きい。
【0191】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:
試験基板を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、Metex L−5Bの20容量%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:
試験基板を、14.3質量%の過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間、浸漬した。
4.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:
試験基板を、10容量%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:
試験基板を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10容量%水溶液)に7分間、浸漬した。
8.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:
試験基板を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20容量%水溶液)に20分間、浸漬した。
10.酸浸漬:
試験基板を、10容量%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:
試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:
試験基板を、95℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレスUP 15容量%、シアン化金カリウム3質量%の水溶液)に10分間、浸漬した。
13.水洗:
試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:
試験基板を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗後、水をよくきり、乾燥した。
このような工程を経て無電解金めっきした試験基板を得た。
【0192】
(12)電気絶縁性:
硬化皮膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度110℃、湿度85%R.H.、印加電圧5V、50時間。
測定条件:測定時間60秒、印加電圧500V。
○:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションなし
△:加湿後の絶縁抵抗値1010Ω以上、銅のマイグレーションあり
×:加湿後の絶縁抵抗値109Ω以下、銅のマイグレーションあり
【0193】
実施例16〜20及び比較例7、8
表14に示す配合組成に従って各成分を配合し、3本ロールミルでそれぞれ別々に混練し、硬化性組成物を調製した。これをスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されている銅スルホールプリント配線基板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥し、次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射(露光量600mJ/cm2)し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像し、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。
【0194】
得られた硬化皮膜を有する試験基板について、前述の試験方法及び評価方法にて、耐クラック性、PCT耐性、密着性、はんだ耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、無電解金めっき耐性の試験を行なった。
【0195】
また、銅スルホールプリント配線基板の代わりにIPCで定められたプリント回路基板(厚さ1.6mm)のBパターンを用い、上記と同じ条件で試験基板を作製し、電気絶縁抵抗の試験を行なった。
【0196】
【表14】
【0197】
上記各試験の結果を表15に示す。
【表15】
【0198】
表15に示される結果から明らかなように、感光性成分としてカルボキシル基含有感光性樹脂を用いた比較例7、8ではヒートサイクル時の耐クラック性に劣っていたが、本発明に従ってさらにテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有する実施例16〜20では耐クラック性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0199】
以上説明したように、本発明の(メタ)アクリレート化合物及びそれを含有する硬化性組成物は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、耐吸湿性並びに高湿下での耐熱性及び柔軟性に優れた硬化物が得られるため、レジストインキ、塗料、成形材等の種々の用途に使用可能である。
【0200】
また、本発明のテトラ(メタ)アクリレート化合物(B)の他に、アルカリ可溶性であるカルボキシル基含有化合物(A)や、重合開始剤(C)、希釈溶剤(D)、1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物(E)、硬化触媒(F)等を含有する硬化性組成物は、光硬化性及び/又は熱硬化性に優れ、且つ、高温及び低温に曝されても、硬化皮膜にクラックが発生するといったようなことはなく、しかも前記したような諸特性に優れた硬化物が得られるため、プリント配線板のソルダーレジスト、エッチングレジスト、メッキレジスト、多層配線板の層間絶縁層、テープキャリアパッケージの製造に用いられる永久マスク、フレキシブル配線基板用レジスト、カラーフィルター用レジスト、上記レジストのドライフィルム、上記レジストのインキジェット方式の印刷などの用途に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物。
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【請求項2】
前記ジカルボン酸残基Xが、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基である請求項1に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸残基Xが、下記式(B1)〜(B7)のいずれかで表わされる芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項1に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物。
【化2】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物の硬化物。
【請求項5】
下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化3】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【請求項6】
前記ジカルボン酸残基Xが、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸残基Xが、下記式(B1)〜(B7)のいずれかで表わされる芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【化4】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)
【請求項8】
さらに他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤を含有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記請求項5乃至8のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項10】
繊維強化材を含有することを特徴とする請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
(A)カルボキシル基含有化合物、(B)下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物、(C)重合開始剤、及び(D)希釈溶剤を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化5】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【請求項12】
前記ジカルボン酸残基Xが、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記ジカルボン酸残基Xが、下記式(B1)〜(B7)のいずれかで表わされる芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項11に記載の硬化性組成物。
【化6】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)
【請求項14】
さらに(E)1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物を含有することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
さらに(F)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
さらに(G)他のラジカル重合性モノマーを含有することを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記請求項11乃至16のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物。
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【請求項2】
前記ジカルボン酸残基Xが、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基である請求項1に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸残基Xが、下記式(B1)〜(B7)のいずれかで表わされる芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項1に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物。
【化2】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載のテトラ(メタ)アクリレート化合物の硬化物。
【請求項5】
下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化3】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【請求項6】
前記ジカルボン酸残基Xが、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸残基Xが、下記式(B1)〜(B7)のいずれかで表わされる芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。
【化4】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)
【請求項8】
さらに他のラジカル重合性モノマー及び/又は重合開始剤を含有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記請求項5乃至8のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項10】
繊維強化材を含有することを特徴とする請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
(A)カルボキシル基含有化合物、(B)下記一般式(1)で表わされるテトラ(メタ)アクリレート化合物、(C)重合開始剤、及び(D)希釈溶剤を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化5】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わし、Xはジカルボン酸残基を表わす。)
【請求項12】
前記ジカルボン酸残基Xが、脂肪族ジカルボン酸残基又は芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記ジカルボン酸残基Xが、下記式(B1)〜(B7)のいずれかで表わされる芳香族ジカルボン酸残基であることを特徴とする請求項11に記載の硬化性組成物。
【化6】
(但し、R1、R2、R3、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)
【請求項14】
さらに(E)1分子中に2個以上の環状エーテルを有する化合物を含有することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
さらに(F)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
さらに(G)他のラジカル重合性モノマーを含有することを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
前記請求項11乃至16のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【国際公開番号】WO2005/044777
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515314(P2005−515314)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016419
【国際出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/016419
【国際出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】
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