説明

テニススイング分析方法

【課題】簡易な装置によって精度よくテニススイングが分析されうる方法を提供する。
【解決手段】スイング分析装置2は、(1)テニスラケットに取り付けられており、このテニスラケットによるテニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの方向の加速度を計測する三軸加速度センサ28、(2)テニスラケットに取り付けられており、三軸のそれぞれの回りの角速度を計測する三軸ジャイロセンサ30、及び(3)解析装置8を備える。この解析装置8は、(3−1)三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30から、加速度及び角速度に関するデータを受信する受信機能、(3−2)角速度に基づいて加速度の相対座標軸を絶対座標軸に変換する座標軸変換機能、及び(3−3)座標軸の変換後の加速度に基づき、スイングの指標を算出する算出機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニススイングの分析方法と、この方法の実施に用いられる装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
テニスのスイングは、プレーヤーごとに異なる。スイングは、テニスラケットのスペックの影響を受ける。例えば、反発係数の小さなラケットで高速の打球を得ようとすれば、プレーヤーに力みが生じる。一方、反発係数が大きすぎるラケットで打球速度をコントロールしようとすると、プレーヤーの手に緩みが生じる。プレーヤーとラケットとのマッチングは、重要である。適切なスイング分析は、正確なフィッティングを可能とする。適切なスイング分析は、プレーヤーの技量の向上に寄与しうる。
【0003】
スイング分析は、テニスラケットの研究開発にも寄与しうる。さらに、スイング分析は、ラケットの販売促進にも寄与しうる。
【0004】
特開2002−126147公報には、3台の高速カメラでスイングが撮影され、得られた画像に基づいてラケットの挙動が分析される装置が開示されている。
【0005】
特開2006−263340公報には、スイングスピード計測方法が開示されている。この方法では、ラケットの先端にマグネットが装着される。このマグネットの通過をセンサーが検知することで、スイングスピードが算出されうる。
【0006】
特開2009−125499公報には、三軸加速度センサ及び三軸ジャイロセンサが用いられてスイングが分析される方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−126147公報
【特許文献2】特開2006−263340公報
【特許文献3】特開2009−125499公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2002−126147公報に記載された計測装置は、大型且つ複雑である。このような計測装置は、テニス倶楽部等でのフィッティングには適さない。
【0009】
特開2006−263340公報に記載された方法では、素振りのときのスイングスピードのみが計測されうる。テニスボールを打撃するためのスイングのスピードは、この方法では計測され得ない。
【0010】
特開2009−125499公報に記載された方法では、各センサーがどのように用いられるのか、明らかではない。
【0011】
本発明の目的は、簡易な構成によって精度よくスイングを分析しうる装置、及び、この装置を用いてスイングを分析する方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るテニススイング分析装置は、
グランドストローク、ボレー又はサーブにおけるテニススイングの分析装置であって、
(1)グリップ及びヘッドを備えたテニスラケットに取り付けられており、このテニスラケットによるテニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの方向の加速度を計測する三軸加速度センサ、
(2)上記テニスラケットに取り付けられており、上記打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの回りの角速度を計測する三軸ジャイロセンサ、
及び
(3)解析装置
を備える。この解析装置(3)は、
(3−1)上記三軸加速度センサ及び上記三軸ジャイロセンサから、上記加速度及び上記角速度に関するデータを受信する受信機能、
(3−2)上記角速度に基づいて上記加速度の相対座標軸を絶対座標軸に変換する座標軸変換機能、
(3−3)上記座標軸の変換後の加速度に基づき、スイングの指標を算出する算出機能
を有する。
【0013】
好ましい指標は、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道である。特に好ましい指標は、テニスラケットとテニスボールとのインパクトの直前のグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度又はヘッド速度成分比である。
【0014】
好ましくは、三軸加速度センサ及び三軸ジャイロセンサは、グリップの端に取り付けられる。解析装置は、
(3−4)グリップ速度に基づいてヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道を算出する算出機能
をさらに有する。
【0015】
他の観点によれば、本発明に係るテニススイング分析方法は、
グランドストローク、ボレー又はサーブにおけるテニススイングの分析方法であって、
グリップ及びヘッドを備えておりかつ三軸加速度センサ及び三軸ジャイロセンサが取り付けられたテニスラケットによる、テニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの方向の加速度がこの三軸加速度センサで計測され、三軸のそれぞれの回りの角速度がこの三軸ジャイロセンサで計測されるステップ、
上記角速度に基づいて上記加速度の相対座標軸が絶対座標軸に変換されるステップ、
及び
上記座標軸の変換後の加速度に基づき、解析装置がスイングの指標を算出するステップ
を含む。
【0016】
好ましい指標は、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道である。特に好ましい指標は、テニスラケットとテニスボールとのインパクトの直前のグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度又はヘッド速度成分比である。
【0017】
好ましくは、この分析方法は、
グリップ速度に基づいてヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道が算出されるステップをさらに含む。
【0018】
本発明に係るフィッティング方法には、前述の分析方法が用いられる。このフィッティング方法は、
上記指標に基づいて、当該テニスラケットの適否が判定されるステップを含む。
【0019】
好ましくは、本発明に係るフィッティング方法は、
ヘッド速度成分の一方を縦軸とし他方を横軸とするグラフが表示部に表示されるステップを含む。
【0020】
好ましくは、本発明に係るフィッティング方法は、
ヘッド速度成分比に基づいてスイングタイプの分類がなされるステップを含む。
【0021】
好ましくは、上記一方の速度成分の方向と他方の速度成分の方向とが90°をなしており、
上記グラフに、縦軸及び横軸の原点を中心とした、複数個の同心状の円弧が記載されており、
この円弧の半径が、ヘッド速度成分の一方と他方とから算出されるヘッド速度を示している。
【0022】
好ましくは、上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、同一プレーヤーによる複数本のテニスラケットの各スイング時の、ヘッド速度成分値を示す点が表示される。
【0023】
好ましくは、上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、同一プレーヤーによる1本のテニスラケットの複数回のスイング時の、各ヘッド速度成分値を示す点が表示される。
【0024】
好ましくは、上記グラフ上に示された、スイング時のヘッド速度成分値のバラツキの比較、及び、スイング時のヘッド速度の比較の少なくともいずれか一方に基づいて、当該テニスラケットの適否が判定されるステップを含んでいる。
【0025】
本発明に係るテニスプレーヤーのコーチング方法には、前述の分析方法が用いられる。このコーチング方法は、上記指標に基づいて、当該テニスプレーヤーのスイングの良否が判定されるステップを含む。
【0026】
好ましくは、本発明に係るテニスプレーヤーのコーチング方法は、ヘッド速度成分の一方を縦軸とし他方を横軸とするグラフが表示部に表示されるステップを含む。
【0027】
好ましくは、本発明に係るテニスプレーヤーのコーチング方法は、ヘッド速度成分比に基づいて当該テニスプレーヤーのスイングタイプの傾向が判定されるステップを含む。
【0028】
好ましくは、上記一方の速度成分の方向と他方の速度成分の方向とが90°をなしており、
上記グラフに、縦軸及び横軸の原点を中心とした、複数個の同心状の円弧が記載されており、
この円弧の半径が、ヘッド速度成分の一方と他方とから算出されるヘッド速度を示している。
【0029】
好ましくは、上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、当該テニスプレーヤーによるスイング時のヘッド速度成分値を示す点と、目標とするスイングのヘッド速度成分値を示す点とが表示される。
【0030】
好ましくは、上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、当該テニスプレーヤーの、複数の異なる時点における各スイング時のヘッド速度成分値を示す点が表示される。
【0031】
他の観点によれば、本発明に係るテニススイングの分析プログラムは、
グリップ及びヘッドを備えたテニスラケットによってテニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、上記テニスラケットを基準とした相対座標系における三軸それぞれの方向の上記テニスラケットの加速度のデータと、三軸それぞれの回りの上記テニスラケットの角速度のデータとを受信するステップ、
上記角速度に基づき、上記加速度の相対座標軸を絶対座標軸に変換するステップ、
及び、
上記座標軸の変換後の加速度に基づき、スイングの指標を算出するステップを、
コンピュータに実行させることができる。
【0032】
好ましくは、上記指標が、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道である。特に好ましい指標は、テニスラケットとテニスボールとのインパクトの直前のグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度又はヘッド速度成分比である。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るスイング分析方法では、簡便にかつ精度よく、テニススイングが分析されうる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るテニススイング分析装置が示された概念図である。
【図2】図2は、図1の分析装置のセンサ部及び送信部がテニスラケットと共に示された正面図である。
【図3】図3は、図1の装置が用いられたスイング分析方法が実施されるテニスコートが示された斜視図である。
【図4】図4は、図1の装置が用いられたスイング分析方法の一例が示されたフローチャートである。
【図5】図5は、スイングタイプの判定方法が示されたフローチャートである。
【図6】図6は、出力部に出力されたグラフの一例である。
【図7】図7は、出力部に出力されたグラフの他の例である。
【図8】図8は、出力部に出力されたグラフのさらに他の例である。
【図9】図9は、出力部に出力されたグラフのさらに他の例である。
【図10】図10は、出力部に出力されたグラフのさらに他の例である。
【図11】図11は、出力部に出力されたグラフのさらに他の例である。
【図12】図12は、ラケット角速度の測定に供されるテニスラケットがテニスボールと共に示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0036】
図1及び2に示されたテニススイング分析装置2は、センサ部4、送信部6、解析装置8及び出力部10を備えている。図2には、この分析装置2の一部が、テニスラケット12と共に示されている。このテニスラケット12は、ヘッド14と、シャフト16と、このヘッド14から延びてシャフト16に至る左右一対のスロート18と、このシャフト16に連続するグリップ20とを備えている。このラケット12はさらに、ヘッド14に縦横に張り渡されたガット22も備えている。このガット22により、フェース24が形成されている。
【0037】
図2では、プレーヤーの右手26によってグリップ20が把持されている。図2に示されるように、シャフト16の長手方向は、y軸の方向と一致している。y軸の方向は、フェース24と平行でもある。ヘッド14からグリップ20に向かう方向が、y軸の正の方向である。z軸の方向も、フェース24に平行である。z軸は、y軸と直交している。図2に示されたフェース24が時計の文字盤とみなされたとき、3時の位置から9時の位置へ向かう方向が、z軸の正の方向である。図2には示されていないが、x軸の方向は、フェース24に対して垂直である。x軸は、y軸と直交し、z軸とも直交している。ヘッド14の厚み方向における、裏側から表側に向かう方向が、x軸の正の方向である。表側は、フォアハンドのストロークのときにテニスボールと接触する側である。x軸、y軸及びz軸は、ラケット12が基準とされた軸である。これらの軸によって規定される(x,y、z)座標は、ラケット12が基準とされた座標である。x軸、y軸及びz軸の方向は、ラケット12の姿勢に応じて変動する。x軸、y軸及びz軸は、相対座標軸である。これらの軸によって規定される(x、y、z)座標は、相対座標である。
【0038】
図2から明らかなように、センサ部4はグリップ20の端21に取り付けられている。この位置にあるセンサ部4は、プレーヤーのスイングの妨げとならない。図1に示されるように、センサ部4は、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30を備えている。
【0039】
三軸加速度センサ28は、相対座標におけるx軸方向、y軸方向及びz軸方向の加速度を測定できる。三軸ジャイロセンサ30は、相対座標におけるx軸回り、y軸回り及びz軸回りの角速度を測定できる。しかし、相手陣にボールを送るためのラケットのスイングを分析するためには、ラケットの移動速度等は、テニスコート等の固定された地面及び空間を基準としたものである必要がある。すなわち、ラケットの移動速度等は、変位するこのラケット自身を基準とした上記相対座標ではなく、固定された地面及び空間を基準とした絶対座標に基づくべきである。相対座標軸における加速度の、絶対座標軸における加速度への変換については後述される。ここでいうラケットのスイングには、後述するように、グランドストローク時のみならず、ボレー時及びサーブ時のスイングも含まれる。
【0040】
図2に示されるように、送信部6は、バンド32によって上腕34に固定されている。この位置にある送信部6は、プレーヤーのスイングの妨げとならない。センサ部4と送信部6とは、ケーブル36によって接続されている。送信部6は、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30で測定されたデータを、ケーブル36を通じてセンサ部4から受け取る。送信部6は、このデータを、解析装置8に向けて無線送信する。なお、センサ部4及び送信部6を駆動させるためのバッテリー(図示されず)も、バンド32によって上腕34に固定されている。センサ部4による測定データを解析装置8へ送信する方法としては、上記無線には限定されず、種々の手段が採用されうる。例えば、データ送信方法は有線であってもよい。この場合、例えば、データ送信用のケーブルが、送信部6からプレーヤーの背等を経由して解析装置8に接続されてもよい。データ送信方法としてUSB(Universal Serial Bus)メモリが用いられてもよい。この場合、例えば、スイング時にセンサ部4に搭載されていたUSBメモリが、測定終了後に解析装置8のUSBドライブに装着されることにより、データが移送されてもよい。このUSBメモリに代えて、他のメモリカード及びメモリカードアダプタ等が用いられてもよい。上記以外にも、公知の様々なデータ移送手段が採用されうる。
【0041】
解析装置8は、受信部38、演算部40、記憶部42及び入力部44を備えている。受信部38は、送信部6から無線送信されたデータを受け取る。受信部38は、このデータを演算部40に伝達する。典型的な演算部40は、コンピュータのCPUである。演算部40は、このデータを記憶部42に記憶させる。演算部40はさらに、このデータに基づく各種演算を行い、この演算の結果も記憶部42に記憶させる。これらの諸動作は、コンピュータとしての解析装置8に組み込まれた制御プログラム(テニススイング分析プログラム)の指令に基づいて実行される。記憶部42として、RAMが用いられてもよく、ハードディスクが用いられてもよい。記憶部42として、外部記憶媒体が用いられてもよい。
【0042】
典型的な出力部10は、モニタである。演算部40は、測定の結果又は演算の結果を、この出力部10に表示させる。プリンタ、プロッタ等が、出力部10として用いられてもよい。測定の結果又は演算の結果のうち、入力部44でのオペレートによって選択されたもののみが、出力部10に出力されてもよい。入力部44としては、キーボード、マウス及びタッチパネルが例示される。
【0043】
図3は、図1の装置2が用いられたスイング分析方法が実施されるテニスコート46が示された斜視図である。図3には、スイングを行うプレーヤー48が示されている。このプレーヤー48は、右利きである。このプレーヤー48は、右手26でラケット12を握っている。このプレーヤー48は、右手26でフォアハンドのグランドストロークを行う。
【0044】
図3に示されるように、テニスコート46のサイドライン49の方向は、x軸の方向と一致している。プレーヤー48にとっての自陣50から相手陣52に向かう方向が、x軸の正の方向である。テニスコート46のエンドライン54の方向は、y軸の方向と一致している。相手陣52を向いたプレーヤー48にとっての右から左に向かう方向が、y軸の正の方向である。z軸の方向は、鉛直方向である。上向きの方向が、z軸の正の方向である。このx軸、y軸及びz軸は、テニスコート46が基準とされた軸である。換言すれば、このx軸、y軸及びz軸は、地面が基準とされた軸である。このx軸、y軸及びz軸は、絶対座標軸である。この軸によって規定される(x,y、z)座標は、絶対座標である。
【0045】
図4は、図1の装置が用いられたスイング分析方法の一例が示されたフローチャートである。この方法では、プレーヤー48がラケット12をスイングする(STEP1)。このスイングは、いわゆる素振りではない。プレーヤー48は、スイングによってテニスボールを打撃する。プレーヤー48の自陣50には、打撃すべきテニスボールが供給される。ボール供給装置により、一定方向及び一定速度のテニスボールが供給されることが好ましい。プレーヤー48は、テニスボールを相手陣52に打ち返すように心がける。もし打撃したテニスボールが相手陣52に入らないときは、当該スイングはその後の分析の対象とされない。打撃したテニスボールが相手陣52に入ったときでも、明らかなミスショットであれば、当該スイングはその後の分析の対象とされない。
【0046】
スイング中、三軸加速度センサ28は、時刻毎に、相対的なx軸方向、相対的なy軸方向及び相対的なz軸方向のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)を測定する(STEP2)。同時に、三軸ジャイロセンサ30は、時刻毎に、相対的なx軸の回り、相対的なy軸の回り及び相対的なz軸の回りのグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)を測定する(STEP3)。グリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びにグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータは、送信部6から、解析装置8の受信部38へと、刻々と送信される(STEP4)。演算部40は、これらのデータを記憶部42に記憶させる(STEP5)。
【0047】
演算部40は、制御プログラムの指令により、グリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びにグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータの全て又は一部を用いて、スイングの指標を算出する(STEP6)。指標としては、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道及びラケット角速度が例示される。演算部40は、得られた指標のデータを、記憶部42に記憶させる(STEP7)。さらに演算部40は、入力部44からの指定に基づき、所定の指標を出力部10に出力する(STEP8)。この出力結果は、プレーヤー48に対するラケット12の適否の判定に供される。
【0048】
前述の通り、グリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びにグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータは、時刻毎に得られる。例えば1/500秒毎に、データが得られる。これらのデータの中から、プレーヤー48とラケット12とのマッチングを判定するのに適した時刻が選定される。マッチングを判定するのに適した時刻の一例として、ヘッド速度が最大となる時刻が挙げられる。スイングの開始以降、ヘッド速度は徐々に上昇する。テニスボールとのインパクトによって、ヘッド14は急激に減速する。この減速が発生する直前の時刻が、ヘッド速度が最大となる時刻である。
【0049】
以下、各指標の算出方法の具体例が説明される。
【0050】
[グリップ加速度]
絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度は、測定された相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びに相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータに基づいて算出される。このグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)が、演算部40によって、絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度AA(gx)、AA(gy)及びAA(gz)に変換される。変換に用いられるクォータニオンは、下記数式によって表される。
Q=[cos(θ);ω(gx)/θ*sin(θ/2),ω(gy)/θ*sin(θ/2),ω(gz)/θ*sin(θ/2)]
R=[cos(θ);-ω(gx)/θ*sin(θ/2),-ω(gy)/θ*sin(θ/2),-ω(gz)/θ*sin(θ/2)]
上記数式におけるθは、下記数式によって求められる。
θ=SQRT(ω(gx)+ω(gy)+ω(gz)
【0051】
この変換では、グリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)に基づいて、グリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)の相対座標軸が絶対座標軸に変換されている。
【0052】
上記絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度AA(gx)、AA(gy)及びAA(gz)から、演算部40によって、時刻毎のグリップ加速度AA(g)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
AA(g)=SQRT(AA(gx)+AA(gy)+AA(gz)
この時刻毎のグリップ加速度AA(g)は、記憶部42に記憶される。
【0053】
演算部40は、記憶部42に記憶された時刻毎のグリップ加速度AA(g)の中から、最大グリップ加速度AA(g)を選択する。演算部40は、この最大グリップ加速度AA(g)を出力部10に出力する。最大グリップ加速度AA(g)が大きいことは、プレーヤー48の腕の力みや手の緩みが少なく、しかも、テニスボールに強い打撃を与えうることを意味する。最大グリップ加速度AA(g)が大きいことは、当該ラケット12がこのプレーヤー48にマッチしていることを意味する。最大グリップ加速度AA(g)に基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。このような判定は、指導者等の人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準、判定自体も、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0054】
フィッティングでは、その最大グリップ加速度AA(g)が基準ラケットの最大グリップ加速度AA(g)よりも大きくなるラケット12が、プレーヤー48に推奨される。基準ラケットは、プレーヤー48が日頃使用しているラケットである。このようなフィッティング時のラケットの推奨は、人によってなされる場合がある。しかし、この特定のラケットの推奨も、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。推奨されるラケットが、その推奨理由と共に出力部10に表示されるようにされてもよい。
【0055】
複数回のスイングがなされ、複数個の最大グリップ加速度AA(g)が得られてもよい。これらの最大グリップ加速度AA(g)の平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0056】
[グリップ速度]
グリップ速度は、前述した絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度AA(gx)、AA(gy)及びAA(gz)から、演算部40によって算出される。すなわち、絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ速度V(gx)、V(gy)及びV(gz)が、下記数式に基づいて算出される。
V(gx)=AA(gx)*T
V(gy)=AA(gy)*T
V(gz)=AA(gz)*T
上記数式において、Tは時間である。
【0057】
絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ速度V(gx)、V(gy)及びV(gz)から、演算部40によって、時刻毎のグリップ速度V(g)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
V(g)=SQRT(V(gx)+V(gy)+V(gz)
時刻毎のグリップ速度V(g)は、記憶部42に記憶される。
【0058】
演算部40は、記憶部42に記憶された時刻毎のグリップ速度V(g)の中から、最大グリップ速度V(g)を選択する。演算部40は、この最大グリップ速度V(g)を出力部10に出力する。最大グリップ速度V(g)が大きいことは、プレーヤー48の腕の力みや手の緩みが少ないことを意味する。最大グリップ速度V(g)が大きいことは、当該ラケット12がこのプレーヤー48にマッチしていることを意味する。最大グリップ速度V(g)に基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。このような判定及び後述するフィッティング時のラケットの推奨は、指導者等の人によってなされる場合がある。しかし、この判定の基準、判定及び特定のラケットの推奨も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0059】
フィッティングでは、その最大グリップ速度V(g)が基準ラケットの最大グリップ速度V(g)よりも大きくなるラケット12が、プレーヤー48に推奨される。基準ラケットは、プレーヤー48が日頃使用しているラケットである。
【0060】
複数回のスイングがなされ、複数個の最大グリップ速度V(g)が得られてもよい。これらの最大グリップ速度V(g)の平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0061】
[ヘッド速度]
絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のヘッド速度は、相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)のデータ;相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータ;並びにラケット長のデータに基づいて算出される。ラケット長のデータは、オペレータにより、分析装置2に適宜入力される。具体的には、まず、演算部40が、前述の数式により、絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ速度V(gx)、V(gy)及びV(gz)を算出する。一方、前述のクォータニオンから、演算部40が回転行列RMを算出する。演算部40はさらに、絶対座標軸x、y及びzにおける時刻毎の回転による速度ベクトルVrを、下記数式に基づいて算出する。
Vr=cross(ω,tV)*RM
この数式において、cross(ω,tV)は、相対座標軸x、y及びzの時刻毎の角速度ベクトルωとラケット長ベクトルtVとの外積である。
【0062】
続いて、演算部40により、時刻毎のヘッド速度の、絶対座標軸x、y及びzの各成分であるV(hx)、V(hy)及びV(hz)が、下記数式によって算出される。
V(hx)=V(gx)+Vr(x)
V(hy)=V(gy)+Vr(y)
V(hz)=V(gz)+Vr(z)
【0063】
絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のヘッド速度V(hx)、V(hy)及びV(hz)から、演算部40により、xyz絶対座標系における時刻毎のヘッド速度の大きさV(h)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
V(h)=SQRT(V(hx)+V(hy)+V(hz)
この時刻毎のヘッド速度V(h)は、記憶部42に記憶される。
【0064】
演算部40は、記憶部42に記憶された時刻毎のヘッド速度V(h)の中から、最大ヘッド速度V(h)を選択する。演算部40は、この最大ヘッド速度V(h)を出力部10に出力する。最大ヘッド速度V(h)が大きいことは、プレーヤー48がテニスボールを強く打撃できていることを意味する。最大ヘッド速度V(h)が大きいことは、当該ラケット12がこのプレーヤー48にマッチしていることを意味する。最大ヘッド速度V(h)に基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。このような判定は、人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準、及び、判定自体も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0065】
この分析方法では、グリップ速度に基づいてヘッド速度が算出されうる。従って、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30がヘッド14に取り付けられる必要はない。しかし、これらのセンサ28、30は、ヘッド14に取り付けられてもよい。
【0066】
フィッティングでは、その最大ヘッド速度V(h)が基準ラケットの最大ヘッド速度V(h)よりも大きくなるラケット12が、プレーヤー48に推奨される。基準ラケットは、プレーヤー48が日頃使用しているラケットである。このラケットの推奨は、人によってなされる場合がある。しかし、この特定のラケットの推奨は、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0067】
複数回のスイングがなされ、複数個の最大ヘッド速度V(h)が得られてもよい。これらの最大ヘッド速度V(h)の平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0068】
[ヘッド加速度]
絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のヘッド加速度は、前述した絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のヘッド速度V(hx)、V(hy)、V(hz)を、時間で微分することにより得られる。絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のヘッド加速度AA(hx)、AA(hy)及びAA(hz)から、演算部40により、時刻毎のヘッド加速度AA(h)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
AA(h)=SQRT(AA(hx)+AA(hy)+AA(hz)
この時刻毎のヘッド加速度AA(h)は、記憶部42に記憶される。
【0069】
演算部40は、記憶部42に記憶された時刻毎のヘッド加速度AA(h)の中から、最大ヘッド加速度AA(h)を選択する。演算部40は、この最大ヘッド加速度AA(h)を出力部10に出力する。最大ヘッド加速度AA(h)が大きいことは、プレーヤー48が、テニスボールにより大きい運動エネルギーを与え、強く打撃できていることを意味する。最大ヘッド加速度AA(h)が大きいことは、当該ラケット12がこのプレーヤー48にマッチしていることを意味する。最大ヘッド加速度AA(h)に基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。この判定は、人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準、及び、判定自体も、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0070】
この分析方法では、グリップ速度に基づいてヘッド加速度が算出されうる。従って、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30がヘッド14に取り付けられる必要はない。しかし、これらのセンサ28、30は、ヘッド14に取り付けられてもよい。
【0071】
フィッティングでは、その最大ヘッド加速度AA(h)が基準ラケットの最大ヘッド加速度AA(h)よりも大きくなるラケット12が、プレーヤー48に推奨される。基準ラケットは、プレーヤー48が日頃使用しているラケットである。このラケットの推奨は、人によってなされる場合がある。しかし、この特定のラケットの推奨は、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0072】
複数回のスイングがなされ、複数個の最大ヘッド加速度AA(h)が得られてもよい。この場合、これらの最大ヘッド加速度AA(h)の平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0073】
[ヘッド速度成分比]
ヘッド速度成分比Iは、相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)のデータ;相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータ;並びにラケット長に基づいて算出される。まず、前述の数式により、絶対座標軸x及びzの、時刻毎のヘッド速度V(hx)及びV(hz)が算出される。演算部40は、ヘッド速度成分比Iを、下記数式に基づいて算出する。
I=V(hz)/V(hx)
【0074】
ヘッド速度成分比Iは、プレーヤー48のスイングタイプと相関する。ヘッド速度V(h)が最大である時刻のヘッド速度成分比Iの絶対値が大きくかつ正の値であるスイングでは、テニスボールにトップスピンがかかりやすい。このヘッド速度成分比Iの絶対値が大きくかつ負の値であるスイングでは、テニスボールにスライススピンがかかりやすい。このヘッド速度成分比Iの絶対値がゼロに近いスイングでは、テニスボールにスピンがかかりにくい。
【0075】
この分析方法では、グリップ速度に基づいてヘッド速度成分比Iが算出されうる。従って、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30がヘッド14に取り付けられる必要はない。しかし、これらのセンサ28、30は、ヘッド14に取り付けられてもよい。
【0076】
図5は、スイングタイプの判定方法が示されたフローチャートである。このフローは、図1に示された演算部40によってなされる。このフローでは、演算部40が、ヘッド速度V(h)が最大である時刻を決定する(STEP1)。演算部40は、この時刻における、ヘッド速度成分比Iを算出する(STEP2)。
【0077】
演算部40は、ヘッド速度成分比Iが0.60以上であるか否かを判定する(STEP3)。ヘッド速度成分比Iが0.60以上である場合、このスイングは、トップスピンタイプと判定される(STEP4)。ヘッド速度成分比Iが0.60以上でない場合、演算部40は、ヘッド速度成分比Iが0.25以上であるか否かを判定する(STEP5)。ヘッド速度成分比Iが0.25以上である場合、このスイングは、ドライブタイプと判定される(STEP6)。ヘッド速度成分比Iが0.25以上でない場合、演算部40は、ヘッド速度成分比Iが0.00以上であるか否かを判定する(STEP7)。ヘッド速度成分比Iが0.00以上である場合、このスイングは、フラットタイプと判定される(STEP8)。ヘッド速度成分比Iが0.00以上でない場合、このスイングは、スライスタイプと判定される(STEP9)。
【0078】
判定の結果は、出力部10に出力される。この分析方法では、ヘッド速度成分比Iに基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。プレーヤー48は、自らのスイングタイプに適したラケット12を選択しうる。上記スイングタイプの分類に関する判定、及び、その判定結果に基づくプレーヤーに対するラケットの適不適に関する判定は、人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準、及び、判定自体も、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0079】
複数回のスイングがなされ、複数のヘッド速度成分比Iが得られてもよい。これらのヘッド速度成分比Iの平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0080】
図6は、出力部10に出力されたグラフである。このグラフにおいて、横軸は、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるx軸方向のヘッド速度V(hx)である。縦軸は、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるz軸方向のヘッド速度V(hz)である。このグラフ上の点(V(hx),V(hz))の、原点(0,0)からの距離Lは、下記数式によって算出される。
L=SQRT(V(hx)+V(hz)
この距離Lは、y軸方向のヘッド速度V(hy)がゼロであると仮定されたときのヘッド速度V’(h)である。図6には、多数の円弧が画かれている。それぞれの円弧の中心は、原点(0,0)である。この円弧の半径は、ヘッド速度V’(h)を示している。
【0081】
図6に示された直線L1は、下記数式で表される。
V(hz)=0.60*V(hx)
直線L2は、下記数式で表される。
V(hz)=0.25*V(hx)
直線L3は、下記数式で表される。
V(hz)=0.00
【0082】
図6には、第一点56、第二点58及び第三点60が示されている。第一点56は、塗りつぶされた正方形で示されている。第二点58は、塗りつぶされた円で示されている。第三点60は、塗りつぶされた三角形で示されている。第一点56は、第一ラケットがスイングされたときの点(V(hx),V(hz))を示している。第二点58は、第二ラケットがスイングされたときの点(V(hx),V(hz))を示している。第三点60は、第三ラケットがスイングされたときの点(V(hx),V(hz))を示している。
【0083】
第一点56は、直線L1と直線L2とに挟まれている。第二点58は、直線L2と直線L3とに挟まれている。第三点60は、直線L3よりも下方に位置している。原点(0,0)からの第二点58の距離は、原点(0,0)からの第一点56の距離よりも大きい。原点(0,0)からの第二点58の距離は、原点(0,0)からの第三点60の距離よりも大きい。
【0084】
図6より、以下のことが判明する。
(1)第一ラケットでのスイングは、ドライブタイプである。
(2)第二ラケットでのスイングは、フラットタイプである。
(3)第三ラケットでのスイングは、スライスタイプである。
(4)第二ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)が、最も大きい。
これらの情報に基づいて、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。これらの情報に基づいて、ラケット12のフィッティングがなされる。上記スイングタイプの分類は、人によってなされる場合がある。しかし、分類の基準及び分類自体も、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0085】
図7は、出力部10に出力されたグラフである。このグラフにおいては、図6と同様に、その横軸が、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるx軸方向のヘッド速度V(hx)を示している。縦軸は、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるz軸方向のヘッド速度V(hz)を示している。また、図中の円弧の半径は、ヘッド速度V’(h)を示している。原点(0、0)からグラフ上の点までの距離Lの算出方法は、図6について前述した算出方法と同一である。従って、算出方法の説明は省略される。
【0086】
図7には、塗りつぶされた正方形である第一点62、塗りつぶされた円である第二点64、塗りつぶされた三角形である第三点66、塗りつぶされた星形である第四点68、及び、白抜きの円である第五点70が示されている。第一点62は第一ラケットがスイングされたときの点、第二点64は第二ラケットがスイングされたときの点、第三点66は第三ラケットがスイングされたときの点、第四点68は第四ラケットがスイングされたときの点、及び、第五点70は基準ラケットがスイングされたときの点を示している。基準ラケットとは、前述したとおり、上記プレーヤー48が日頃使用しているラケットである。これら5本のラケットをスイングしたのは、一人のプレーヤー48である。各点は、グラフ上において(V(hx),V(hz))で特定される。各点はそれぞれ、5回スイングしたときの平均速度V(h)、V(hz)によって特定されている。もちろん、スイング回数は5回には限定されない。
【0087】
原点(0,0)からの第一点62の距離は、原点(0,0)からの第五点70の距離と略同一である。原点(0,0)からの第三点66の距離は、原点(0,0)からの第五点70の距離よりも小さい。原点(0,0)からの第二点64の距離、及び、原点(0,0)からの第四点68の距離は、いずれも、原点(0,0)からの第五点70の距離よりも大きい。原点(0,0)と第一点62とを結ぶ直線は、原点(0,0)と第二点64とを結ぶ直線と較べて、原点(0,0)と第五点70とを結ぶ直線より上方に位置している。原点(0,0)と第三点66とを結ぶ直線は、原点(0,0)と第四点68とを結ぶ直線と較べて、原点(0,0)と第五点70とを結ぶ直線より下方に位置している。
【0088】
図7より、以下のことが判明する。
(1)第二ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)、及び、第四ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)は、いずれも、基準ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)と較べて大きい。
(2)第一ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)、及び、第三ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)は、いずれも、基準ラケットでスイングされたときのヘッド速度V’(h)と較べて小さい。
(3)第二ラケットでのスイングは、基準ラケットよりドライブタイプであるが、第一ラケットでのスイングは、第二ラケットでのスイングよりさらにドライブタイプである。
(4)第四ラケットでのスイングは、基準ラケットよりスライスタイプであるが、第三ラケットでのスイングは、第四ラケットでのスイングよりさらにスライスタイプである。
【0089】
判定の結果は、出力部10に出力される。この分析方法では、ヘッド速度成分比Iに基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。自らのスイングタイプに適し、且つ、基準ラケットの最大ヘッド速度より大きいヘッド速度が得られるラケット12が、プレーヤー48に推奨される。上記判定及びラケットの推奨は、人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準、判定自体及びラケットの推奨も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0090】
図8から図11は、いずれも、出力部10に出力されたグラフである。図8から図11のいずれも、一人のプレーヤー48が、1本のテニスラケットを5回スイングした結果を示している。図8から図11の各テニスラケットはそれぞれ異なるテニスラケットである。もちろん、スイング回数は5回には限定されない。これらのグラフにおいては、図6と同様に、その横軸が、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるx軸方向のヘッド速度V(hx)を示している。縦軸は、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるz軸方向のヘッド速度V(hz)を示している。また、図中の円弧の半径は、ヘッド速度V’(h)を示している。原点(0、0)からグラフ上の点までの距離の算出方法は、図6について前述した算出方法と同一である。従って、算出方法の説明は省略される。
【0091】
図8には、第一ラケットがスイングされたときの点72、74、76、78、80が示されている。図9には、第二ラケットがスイングされたときの点82、84、86、88、90が示されている。図10には、第三ラケットがスイングされたときの点92、94、96、98、100が示されている。図11には、第四ラケットがスイングされたときの点102、104、106、108、110が示されている。
【0092】
図8には、塗りつぶされた正方形である第一点72、塗りつぶされた円である第二点74、塗りつぶされた三角形である第三点76、塗りつぶされた菱形である第四点78、及び、塗りつぶされた星形である第五点80が示されている。図9には、塗りつぶされた正方形である第一点82、塗りつぶされた円である第二点84、塗りつぶされた三角形である第三点86、塗りつぶされた菱形である第四点88、及び、塗りつぶされた星形である第五点90が示されている。図10には、塗りつぶされた正方形である第一点92、塗りつぶされた円である第二点94、塗りつぶされた三角形である第三点96、塗りつぶされた菱形である第四点98、及び、塗りつぶされた星形である第五点100が示されている。図11には、塗りつぶされた正方形である第一点102、塗りつぶされた円である第二点104、塗りつぶされた三角形である第三点106、塗りつぶされた菱形である第四点108、及び、塗りつぶされた星形である第五点110が示されている。各点は、グラフ上において(V(hx),V(hz))で特定される。
【0093】
図8では、原点(0,0)から第一点72までの距離、原点(0,0)から第二点74までの距離、原点(0,0)から第三点76までの距離、原点(0,0)から第四点78までの距離、及び、原点(0,0)から第五点80までの距離は、いずれも略等しい。換言すれば、全ての点72、74、76、78、80が、円弧の半径方向に集まっている。また、全ての点72、74、76、78、80が、円弧の周方向にも集まっている。
【0094】
図9では、原点(0,0)から第一点82までの距離、原点(0,0)から第二点84までの距離、原点(0,0)から第三点86までの距離、原点(0,0)から第四点88までの距離、及び、原点(0,0)から第五点90までの距離は、いずれも略等しい。換言すれば、全ての点82、84、86、88、90が、円弧の半径方向に集まっている。一方、白抜き矢印で示されるように、全ての点82、84、86、88、90が、円弧の周方向に離間している。換言すれば、全ての点82、84、86、88、90が、円弧の周方向にばらついている。
【0095】
図10では、原点(0,0)から第一点92までの距離、原点(0,0)から第二点94までの距離、原点(0,0)から第三点96までの距離、原点(0,0)から第四点98までの距離、及び、原点(0,0)から第五点80までの距離が、互いに大きく異なっている。換言すれば、白抜き矢印で示されるように、全ての点92、94、96、98、100が、円弧の半径方向にばらついている。一方、全ての点92、94、96、98、100が、円弧の周方向に集まっている。
【0096】
図11では、原点(0,0)から第一点102までの距離、原点(0,0)から第二点104までの距離、原点(0,0)から第三点106までの距離、原点(0,0)から第四点108までの距離、及び、原点(0,0)から第五点110までの距離が、互いに大きく異なっている。換言すれば、白抜き矢印で示されるように、全ての点102、104、106、108、110が、円弧の半径方向にばらついている。また、同じく白抜き矢印で示されるように、全ての点102、104、106、108、110が、円弧の周方向にもばらついている。
【0097】
図8から図11により、以下のことが判明する。
(1)図8から明らかなように、第一ラケットによるスイングでは、ヘッド速度V’(h)のバラツキが小さく、及び、トップスピン及びスライスの方向のバラツキも小さい。
(2)図9から明らかなように、第二ラケットによるスイングでは、ヘッド速度V’(h)のバラツキは小さいが、トップスピン及びスライスの方向のバラツキが大きい。
(3)図10から明らかなように、第三ラケットによるスイングでは、ヘッド速度V’(h)のバラツキは大きいが、トップスピン及びスライスの方向のバラツキが小さい。
(4)図11から明らかなように、第四ラケットによるスイングでは、ヘッド速度V’(h)のバラツキが大きく、トップスピン及びスライスの方向のバラツキも大きい。
【0098】
判定の結果は、出力部10に出力される。図8から図11により、スイングの安定性が評価されうる。この分析方法では、ヘッド速度成分に基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。ヘッド速度V’(h)のバラツキ、及び、トップスピン及びスライスの方向のバラツキが、ともに小さいラケット12、すなわち、第一ラケットがプレーヤー48に推奨される。この場合、推奨するラケットの評価基準として、バラツキの絶対的基準及び相対的基準が採用されてもよい。絶対的基準としては、例えば、ヘッド速度V’(h)のバラツキ幅の基準値、及び、トップスピン及びスライスの方向のバラツキ幅の基準値が定められる。この基準値を超えないラケットが推奨されてもよい。相対的基準としては、例えば、複数本の評価対象ラケットのうち、ヘッド速度V’(h)のバラツキ幅の値、及び、トップスピン及びスライスの方向のバラツキ幅の値が最も小さいラケット、又は、値が小さい所定本数のラケットが推奨されてもよい。ここで、トップスピン及びスライスの方向のバラツキ幅とは、例えば、図8から図11のグラフにおける原点(0,0)と測定点(速度成分値を示す点)とを結ぶ直線同士の開き角度で示されてもよい。上記判定及びラケットの推奨は、人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準、判定自体及びラケットの推奨も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0099】
[スイング軌道]
スイング軌道は、相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)のデータ;相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータ;並びにラケット長に基づいて算出される。まず、前述の数式により、絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ速度V(gx)、V(gy)及びV(gz)を演算部40が算出する。このグリップ速度から、下記数式に基づき、演算部40が時刻毎のグリップ位置P(gx)、P(gy)及びP(gz)を算出する。
P(gx)=V(gx)*T
P(gy)=V(gy)*T
P(gz)=V(gz)*T
上記数式において、Tは時間である。
【0100】
演算部40は、ヘッド14のトップの相対位置P(h)を、下記数式によって算出する。
P(h)=tV*RM
上記数式において、tVはラケット長ベクトルであり、RMは前述の回転行列である。演算部40は、下記数式により、時刻毎のヘッド14の絶対座標(Xt,Yt,Zt)を算出する。
(Xt,Yt,Zt)=P(g)+P(h)
演算部40は、時刻toからtまでの絶対座標軸x方向のヘッド14の移動距離Jxを、下記数式によって算出する。
Jx=(Xt−Xto)
演算部40は、時刻toからtまでの絶対座標軸y方向のヘッド14の移動距離Jyを、下記数式によって算出する。
Jy=(Yt−Yto)
移動距離Jx及びJyは、記憶部42に記憶される。
【0101】
様々な時間帯における移動距離Jx及びJyが測定されうる。例えば、インパクトのt秒前と、インパクトとの間の移動距離Jx及びJyが測定されうる。インパクトと、インパクトからt秒後との間の移動距離Jx及びJyが測定されうる。
【0102】
移動距離Jx及びJyにより、ラケット12の軌道が判明する。この軌道に基づき、当該ラケット12がこのプレーヤー48に適しているか否かが、判定されうる。理想的な軌道を画くラケット12が、当該プレーヤー48にマッチしたラケット12である。上記判定は、人によってなされる場合がある。しかし、判定の基準及び判定自体も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0103】
この分析方法では、グリップ速度に基づいてヘッド14の軌道が算出されうる。従って、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30がヘッド14に取り付けられる必要はない。しかし、これらのセンサ28、30は、ヘッド14に取り付けられてもよい。
【0104】
複数回のスイングがなされ、複数個の移動距離Jx及びJyが得られてもよい。これらの移動距離Jx及びJyの平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0105】
[ラケット角速度]
ラケット角速度は、相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータに基づいて算出される。特に、相対座標軸yの回りのグリップ角速度ω(gy)により、ラケット角速度の分析がなされる。
【0106】
図12には、ラケット角速度の測定に供されるテニスラケット12が示されている。図12には、相対座標軸yの方向に沿って見られたヘッド14が示されている。図12には、ラケット12とインパクトする直前のテニスボール112も示されている。この図において矢印Aで示されているのは、ヘッド14の回転方向である。この回転の角速度が、前述のグリップ角速度ω(gy)である。このグリップ角速度ω(gy)が、演算部40によって、出力部10に出力される。
【0107】
グリップ角速度ω(gy)が正の値であることは、フェース24を閉じつつテニスボール112を打撃するスイングタイプであることを意味する。グリップ角速度ω(gy)が負の値であることは、フェース24を開きつつテニスボール112を打撃するスイングタイプであることを意味する。プレーヤー48は、自らのスイングタイプに適したラケット12を選択しうる。プレーヤーのスイングタイプの分類に関する判定、及び、その判定結果に基づくプレーヤーに対するラケットの適不適に関する判定は、人によってなされる場合がある。しかし、分類の基準及び分類自体も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。
【0108】
複数回のスイングがなされ、複数のグリップ角速度ω(gy)が得られてもよい。これらのグリップ角速度ω(gy)の平均値が、演算部40により算出される。この平均値が、出力部10に出力されることが好ましい。
【0109】
以上に説明されたラケットのフィッティングにおいては、複数のラケットがプレーヤー48によってスイングされる。この複数のラケットについて、予め特定の性質を異ならせておくことができる。例えば、ガットの種類が異なる複数のラケット、ガットの張力が異なる複数のラケット、フレームの大きさが異なる複数のラケット、フレームの質量が異なる複数のラケット等である。
【0110】
ここで説明されるスイングとは、グランドストローク時のみならず、ボレー時及びサーブ時のスイングも含まれる。グランドストロークとは、一度テニスコートの地面でバウンドしたテニスボールを打撃することをいう。ボレーとは、相手プレーヤーが打撃したテニスボールを、テニスコートの地面に落ちる前に直接打撃することをいう。サーブとは、打撃するプレーヤー自身が放り上げたテニスボールを、テニスコートの地面に落ちる前に、相手陣52に向けて直接打撃することをいう。
【0111】
ボレー時のスイング及びサーブ時のスイングのいずれにおいても、三軸加速度センサ28及び三軸ジャイロセンサ30による計測値から、指標としてのグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道、ラケット角速度等を得ることができる。ボレーやサーブについてのラケットのフィッティング時の判断基準についても、グランドストロークについての判断基準と同様の基準が採用されうる。すなわち、最大グリップ加速度、最大グリップ速度、最大ヘッド速度及び最大ヘッド加速度のそれぞれが大きいラケットがプレーヤー48に推奨される。ヘッド速度成分比に基づけば、プレーヤー48のスイングタイプに適したラケットが当該プレーヤー48にとって好ましい。また、ヘッド速度成分比のバラツキの小さいラケットがプレーヤー48に推奨される。さらに、最大ヘッド速度及び最大ヘッド加速度それぞれのバラツキの小さいラケットがプレーヤー48に推奨される。また、理想的なスイング軌道を画くラケット12が、プレーヤー48にマッチしたラケットである。このような判定及びフィッティング時のラケットの推奨は、指導者等の人によってなされる場合がある。しかし、この判定の基準、判定及び特定のラケットの推奨も、前述したように、解析装置8の動作の一部としてプログラミングしておくことが可能である。さらに、上記したバラツキ幅の基準値(絶対的基準、相対的基準)も、前述したとおりである。
【0112】
以上説明された実施形態では、分析装置2及び分析方法の適用対象として、ラケットのフィッティングが例にとられている。しかし、この分析装置2及び分析方法は、ラケットのフィッティングには限定されず、テニススクール等における生徒(プレーヤー48)に対するコーチング等にも適用されうる。上記分析装置2及び分析方法によって得られる指標としてのグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道、ラケット角速度等は、プレーヤー48のスイングの特徴を表しているとも言える。スイングの特徴を客観的に表したデータに基づけば、適切なコーチングが期待できる。
【0113】
この分析装置2及び分析方法を用いたコーチングの一例としては、目標とするスイングのデータと、プレーヤー48のスイングのデータとを比較することを含んでいる。分析装置2及び分析方法により、例えば、目標とするスイングの指標であるグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道、ラケット角速度等と、当該プレーヤー48のスイングの上記各指標とが得られる。目標スイングの指標とプレーヤーのスイングの指標とを比較することにより、両者のスイングの相違が定量的に明確になる。例えば、両者のスイングのグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ラケット角速度等の差異は数値で表されうる。また、図6から図11と同様のグラフ上に、目標スイング及びプレーヤー48の各スイングの、ヘッド速度成分値を示す点が表示されうる。このグラフから、両者のヘッド速度、スイングタイプ等の相違が明確となる。例えば、目標スイングと比較して、プレーヤー48のスイングに、ドライブの傾向があるか、スライスの傾向があるかが判断されうる。以上のような定量的なデータの比較により、目標スイングを基準とした場合のプレーヤー48のスイングの良否が判定されうる。この判定結果に基づき、プレーヤー48に対して、スイングの修正のポイントが的確に伝えられうる。プレーヤー48は、目標とすべきスイングについて、明確なイメージを持つことができる。これらにより、効率的且つ適切なコーチングが期待できる。
【0114】
この分析装置2及び分析方法を用いたコーチングの他の例としては、同一プレーヤー48の時点を違えた複数のスイングのデータ同士を比較することを含んでいる。例えば、当該プレーヤー48に対する、指導員のコーチングの前後のスイングのデータ同士を比較することが含まれる。このコーチングとは、例えば、プレーヤー48のスイングに関する修正点、修正方法等の指摘、指導等である。この場合も、スイングの指標であるグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道、ラケット角速度等が比較されうる。また、図6から図11と同様のグラフから、コーチング前後のヘッド速度、スイングタイプ等の変化が明確化されうる。このようなコーチング前後の定量的なデータの比較により、指導の成果の確認が明確になされうる。具体的には、プレイヤー48が、指導どおりのスイングをすることができているか否か、が明確に判定されうる。その結果、再指導等のためのフィードバックが可能となり、プレーヤー48の上達の速度が上昇しうる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係る分析方法は、ラケットフレームのフィッティング、ガットの張力のフィッティング、テニスのコーチング等に適用されうる。
【符号の説明】
【0116】
2・・・分析装置
4・・・センサ部
6・・・送信部
8・・・解析装置
10・・・出力部
12・・・テニスラケット
14・・・ヘッド
20・・・グリップ
28・・・三軸加速度センサ
30・・・三軸ジャイロセンサ
38・・・受信部
40・・・演算部
42・・・記憶部
44・・・入力部
46・・・テニスコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドストローク、ボレー又はサーブにおけるテニススイングの分析装置であって、
(1)グリップ及びヘッドを備えたテニスラケットに取り付けられており、このテニスラケットによるテニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの方向の加速度を計測する三軸加速度センサ、
(2)上記テニスラケットに取り付けられており、上記打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの回りの角速度を計測する三軸ジャイロセンサ、
及び、
(3)解析装置
を備えており、
上記解析装置(3)が、
(3−1)上記三軸加速度センサ及び上記三軸ジャイロセンサから、上記加速度及び上記角速度に関するデータを受信する受信機能、
(3−2)上記角速度に基づいて上記加速度の相対座標軸を絶対座標軸に変換する座標軸変換機能、
(3−3)上記座標軸の変換後の加速度に基づき、スイングの指標を算出する算出機能
を有するテニススイング分析装置。
【請求項2】
上記指標が、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道である請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
上記指標が、テニスラケットとテニスボールとのインパクトの直前の上記グリップ加速度、上記グリップ速度、上記ヘッド速度、上記ヘッド加速度又は上記ヘッド速度成分比である請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
上記三軸加速度センサ及び上記三軸ジャイロセンサが、上記グリップの端に取り付けられており、
上記解析装置が、
(3−4)上記グリップ速度に基づいて上記ヘッド速度、上記ヘッド加速度、上記ヘッド速度成分比又は上記スイング軌道を算出する算出機能
をさらに有する請求項2又は3に記載の分析装置。
【請求項5】
グランドストローク、ボレー又はサーブにおけるテニススイングの分析方法であって、
グリップ及びヘッドを備えておりかつ三軸加速度センサ及び三軸ジャイロセンサが取り付けられたテニスラケットによる、テニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、三軸のそれぞれの方向の加速度がこの三軸加速度センサで計測され、三軸のそれぞれの回りの角速度がこの三軸ジャイロセンサで計測されるステップ、
上記角速度に基づいて上記加速度の相対座標軸が絶対座標軸に変換されるステップ、
及び、
上記座標軸の変換後の加速度に基づき、解析装置がスイングの指標を算出するステップ
を含むテニススイング分析方法。
【請求項6】
上記指標が、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道である請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
上記指標が、テニスラケットとテニスボールとのインパクトの直前の上記グリップ加速度、上記グリップ速度、上記ヘッド速度、上記ヘッド加速度又は上記ヘッド速度成分比である請求項6に記載の分析方法。
【請求項8】
上記グリップ速度に基づいて上記ヘッド速度、ヘッド加速度、上記ヘッド速度成分比又は上記スイング軌道が算出されるステップ
をさらに含む請求項6又は7に記載の分析方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の分析方法を用いたテニスラケットのフィッティング方法であって、
上記指標に基づいて、当該テニスラケットの適否が判定されるステップ
を含むフィッティング方法。
【請求項10】
請求項6から8のいずれかに記載の分析方法を用いたテニスラケットのフィッティング方法であって、
ヘッド速度成分の一方を縦軸とし他方を横軸とするグラフが表示部に表示されるステップ
を含むフィッティング方法。
【請求項11】
請求項6から8のいずれかに記載の分析方法を用いたテニスラケットのフィッティング方法であって、
ヘッド速度成分比に基づいてスイングタイプの分類がなされるステップ
を含むフィッティング方法。
【請求項12】
上記一方の速度成分の方向と他方の速度成分の方向とが90°をなしており、
上記グラフに、縦軸及び横軸の原点を中心とした、複数個の同心状の円弧が記載されており、
この円弧の半径が、ヘッド速度成分の一方と他方とから算出されるヘッド速度を示す請求項10に記載のフィッティング方法。
【請求項13】
上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、同一プレーヤーによる複数本のテニスラケットの各スイング時の、ヘッド速度成分値を示す点が表示される請求項10又は12に記載のフィッティング方法。
【請求項14】
上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、同一プレーヤーによる1本のテニスラケットの複数回のスイング時の、各ヘッド速度成分値を示す点が表示される請求項10又は12に記載のフィッティング方法。
【請求項15】
上記グラフ上に示された、スイング時のヘッド速度成分値のバラツキの比較、及び、スイング時のヘッド速度の比較の少なくともいずれか一方に基づいて、当該テニスラケットの適否が判定されるステップを含む請求項13又は14に記載のフィッティング方法。
【請求項16】
請求項5から8のいずれかに記載の分析方法を用いたテニスプレーヤーのコーチング方法であって、
上記指標に基づいて、当該テニスプレーヤーのスイングの良否が判定されるステップ
を含むテニスプレーヤーのコーチング方法。
【請求項17】
請求項6から8のいずれかに記載の分析方法を用いたテニスプレーヤーのコーチング方法であって、
ヘッド速度成分の一方を縦軸とし他方を横軸とするグラフが表示部に表示されるステップ
を含むテニスプレーヤーのコーチング方法。
【請求項18】
請求項6から8のいずれかに記載の分析方法を用いたテニスプレーヤーのコーチング方法であって、
ヘッド速度成分比に基づいて当該テニスプレーヤーのスイングタイプの傾向が判定されるステップ
を含むテニスプレーヤーのコーチング方法。
【請求項19】
上記一方の速度成分の方向と他方の速度成分の方向とが90°をなしており、
上記グラフに、縦軸及び横軸の原点を中心とした、複数個の同心状の円弧が記載されており、
この円弧の半径が、ヘッド速度成分の一方と他方とから算出されるヘッド速度を示す請求項17に記載のテニスプレーヤーのコーチング方法。
【請求項20】
上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、当該テニスプレーヤーによるスイング時のヘッド速度成分値を示す点と、目標とするスイングのヘッド速度成分値を示す点とが表示される請求項17又は19に記載のテニスプレーヤーのコーチング方法。
【請求項21】
上記グラフが表示されるステップにおいて、上記グラフ上に、当該テニスプレーヤーの、複数の異なる時点における各スイング時のヘッド速度成分値を示す点が表示される請求項17又は19に記載のテニスプレーヤーのコーチング方法。
【請求項22】
グリップ及びヘッドを備えたテニスラケットによってテニスボールの打撃のためのスイングがなされたときの、上記テニスラケットを基準とした相対座標系における三軸それぞれの方向の上記テニスラケットの加速度のデータと、三軸それぞれの回りの上記テニスラケットの角速度のデータとを受信するステップ、
上記角速度に基づき、上記加速度の相対座標軸を絶対座標軸に変換するステップ、
及び、
上記座標軸の変換後の加速度に基づき、スイングの指標を算出するステップを、
コンピュータに実行させるための、テニススイングの分析プログラム。
【請求項23】
上記指標が、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比又はスイング軌道である請求項22に記載の分析プログラム。
【請求項24】
上記指標が、テニスラケットとテニスボールとのインパクトの直前の上記グリップ加速度、上記グリップ速度、上記ヘッド速度、上記ヘッド加速度又は上記ヘッド速度成分比である請求項23に記載の分析プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−99523(P2013−99523A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227091(P2012−227091)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)