テネイシンの主要な抗原に対する抗体
本明細書中に記載の発明は、抗原Ten−M2に指向する抗体およびこのような抗体の使用に関する。特に、抗原Ten−M2に指向する完全なヒトモノクローナル抗体を提供する。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードする単離ポリヌクレオチド配列およびこれらの免疫グロブリン分子を含むアミノ酸配列、特に、フレームワーク領域(FR)および/または相補決定領域(CDR)にわたる連続する重鎖および軽鎖配列に対応する配列(具体的には、FR1〜FR4またはCDR1〜CDR3)を提供する。このような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたは他の細胞株も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般に、Ten−M2タンパク質に結合する抗体およびこのような抗体の使用に関する。特に、抗原Ten−M2に指向する完全なヒトモノクローナル抗体を提供する。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列およびこれらの免疫グロブリン分子を含むアミノ酸配列、特に、フレームワーク領域および/または相補決定領域(CDR)にわたる連続する重鎖および軽鎖配列に対応する配列(具体的には、FR1〜FR4またはCDR1〜CDR3)を提供する。このような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたは他の細胞株も提供する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の説明
テネウリン(teneurin)またはhOdzとしても公知のヒトTen−M2遺伝子ファミリーは、短い細胞内N末端を含み、その後に膜貫通領域、8つのEGF様反復、細胞外側に巨大な球状ドメインが続くII型膜貫通タンパク質クラスである。Ten−M2タンパク質のEGF様反復は、二量体形成を媒介すると考えられている。マウスおよびニワトリのTen−M2タンパク質のホモログの発現パターンならびに神経突起伸長などの細胞移動のin vitroモデルにより、神経発達における役割が示唆されている。これは、細胞接着分子としての役割を示すヘパリンなどの細胞外基質タンパク質への結合も含み得る。
【0003】
Ten−M2タンパク質の構造および機能は以前に調査されている(例えば、非特許文献1)。タンパク質の種々の形態(例えば、M1、M2、M3、およびM4)は、一般に、2700〜2800アミノ酸長である。
【0004】
Ten−M2は、EGFドメインを介して二量体形成する。Ten−M2ファミリーは、PS2インテグリンと会合することが示されており、細胞外ドメインはヘパリンと相互作用することが公知である。
【非特許文献1】Oohashi et al.,J.Cell Biol.,145:563−577(1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
1つの実施形態では、細胞上のTen−M2タンパク質に選択的に結合し、Ten−M2機能に影響を及ぼす完全なヒト抗体を提供する。いくつかの実施形態では、完全なヒト抗体を患者に投与した場合、患者の癌転移を軽減する。1つの態様では、細胞に結合していないTen−M2タンパク質に選択的に結合する完全なヒト抗体を提供する。1つの実施形態では、抗体は、他のTen−Mホモログ(Ten−M3またはTen−M4など)に結合しない。
【0006】
1つの態様では、Ten−M2タンパク質に結合する結合体化した完全なヒト抗体を提供する。抗体に薬剤が結合されている場合、細胞への抗体の結合によって細胞に薬剤が送達される。1つの実施形態では、上記の結合体化した完全なヒト抗体は、Ten−M2タンパク質の細胞外区域(section)に結合する。別の実施形態では、抗体は、Ten−M2タンパク質のEGF様反復に結合する。別の実施形態では、抗体および結合体化した毒素を、Ten−M2タンパク質を発現する細胞によって内在化する。別の実施形態では、薬剤は細胞傷害薬である。別の実施形態では、薬剤はサポリンである。
【0007】
好ましい実施形態では、本明細書中に記載の抗体は、高親和性(Kd)でTen−M2に結合する。例えば、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12、10−13、10−14M未満または任意の範囲もしくはその間の値未満のKd(これらに限定されない)でTen−M2に結合することができるヒト抗体、ウサギ抗体、マウス抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体。親和性および/またはアビディティを、本明細書中に記載のKinExA(登録商標)および/またはBIACORE(登録商標)によって測定することができる。
【0008】
別の実施形態は、本明細書中に開示の完全なヒト抗体とTen−M2への結合を交差競合する(cross compete)抗体を含む。例えば、Ten−M2と中和することができる同一生殖細胞系のVHおよび/またはVL遺伝子由来の抗体は、標的上の同一の関連エピトープに結合することができ、互いに交差競合することができる。本発明の抗体を、競合ELISAおよび/または競合BIAcore研究で試験して、交差反応性を決定することができる。
【0009】
別の態様では、本明細書中に記載のモノクローナル抗体または抗原結合部分および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物を提供する。
【0010】
別の態様では、Ten−M2抗体およびTen−M2抗体を被験体に投与するための説明書を含むTen−M2関連障害を治療するためのキットを提供する。
【0011】
別の態様では、患者の癌転移を軽減する方法を提供する。本方法は、完全なヒト抗体を患者に投与する工程を含む。抗体は、Ten−M2に結合し、それにより、そのTen−M2タンパク質が第2のTen−M2タンパク質に結合して二重鎖を形成するのを回避する。それにより、抗体は患者の癌転移を軽減する。
【0012】
別の態様では、患者の癌転移リスクを軽減する方法を提供する。本方法は、完全なヒト抗体を患者に投与する工程を含む。抗体は、Ten−M2タンパク質が第2のTen−M2タンパク質と活性なTen−M2/Ten−M2二重鎖を形成するのを回避する様式で第1のTen−M2タンパク質に結合する。抗体は、第1のTen−M2タンパク質が依然として第2のTen−M2タンパク質に結合するように結合する。それにより、抗体は、患者の癌転移リスクを軽減する。
【0013】
別の態様では、患者の癌細胞を選択的に死滅させる方法を提供する。本方法は、完全なヒト抗体結合体を患者に投与する工程を含む。完全なヒト抗体結合体は、Ten−M2タンパク質および薬剤に結合することができる抗体を含む。薬剤は、癌細胞を死滅させる毒素または別の物質である。それにより、抗体結合体は癌細胞を選択的に死滅させる。薬剤はサポリンであり得る。
【0014】
別の態様では、患者の癌転移リスクを診断する方法を提供する。本方法は、細胞上のTen−M2タンパク質を選択的に結合する完全なヒト抗体結合体を患者に投与する工程を含む。抗体結合体は、Ten−M2に選択的に結合する抗体および標識を含む。本方法は、患者中の標識の存在を観察する工程をさらに含む。比較的多い量の標識は、比較的高い癌転移リスクを示し、比較的少ない量の標識は比較的低い癌転移リスクを示す。1つの実施形態では、標識は、緑色蛍光タンパク質である。
【0015】
異なる態様では、本発明は、細胞を抗Ten−M2抗体と接触させる工程と、Ten−M2の存在を検出する工程とを含む細胞中のTen−M2発現に関連する状態を診断する方法を含む。好ましい状態には、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、および脳腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
さらなる実施形態は、重鎖アミノ酸配列を含む単離抗体またはそのフラグメントを含む。他の実施形態は、重鎖核酸配列を含む単離抗体またはそのフラグメントを含む。
【0017】
1つの態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を有する単離抗体を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、および52からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を有する単離抗体を提供する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を含み、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、および52からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を含む単離抗体を提供する。
【0020】
1つの実施形態では、単離抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態では、単離抗体はキメラ抗体である。さらに別の実施形態では、単離抗体はヒト抗体である。
【0021】
別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、以下のCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD [1991],vols.1−3によって定義)を含む重鎖アミノ酸配列を含む単離抗体を提供する:(a)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50のアミノ酸26〜35の配列からなるCDR1、(b)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50のアミノ酸50〜66の配列からなるCDR2、および(c)配列番号10、18、もしくは42のアミノ酸99〜111、配列番号2のアミノ酸99〜105、配列番号14もしくは22のアミノ酸99〜114、配列番号6の99〜117、配列番号26もしくは30のアミノ酸99〜110、配列番号34もしくは38のアミノ酸99〜109、または配列番号46〜50のアミノ酸99〜112の配列からなるCDR3。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、以下のCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD [1991],vols.1−3によって定義)を含む軽鎖アミノ酸配列を含む単離抗体を提供する:(a)配列番号4、16、36、もしくは40のいずれかのアミノ酸24〜39、配列番号8、24、28、もしくは32のいずれかのアミノ酸24〜35、配列番号12、44、48、52のアミノ酸24〜34、または配列番号20のアミノ酸24〜40の配列からなるCDR1、(b)配列番号4、16、36、もしくは40のいずれかのアミノ酸55〜61、配列番号8、24、28、もしくは32のいずれかのアミノ酸51〜57、配列番号12、44、48、もしくは52のアミノ酸50〜56、または配列番号20のアミノ酸56〜62の配列からなるCDR2、および(c)配列番号4のアミノ酸94〜101、配列番号8、24、28、または32のいずれかのアミノ酸90〜98、配列番号12のアミノ酸89〜96、配列番号16、36、または40のアミノ酸94〜102、配列番号20のアミノ酸95〜103、または配列番号44、48、または52のアミノ酸89〜97の配列からなるCDR3。
【0023】
これらの実施形態では、単離抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、および/またはヒト化抗体であり得ることが認識される。好ましくは、抗体はヒト抗体である。
【0024】
本発明の実施形態が抗体の任意の特定の形態に制限されないことも認識される。例えば、提供された抗体は、全長抗体(例えば、インタクトなヒトFc領域を有する)または抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、またはF(ab’)2)であり得る。さらに、抗体を、抗体を分泌するハイブリドーマまたは形質転換されたか抗体をコードする遺伝子でトランスフェクトされた組換え産生された細胞から製造することができる。
【0025】
本発明の他の実施形態は、本明細書中に記載の抗Ten−M2抗体のいずれかをコードする単離核酸分子、抗Ten−M2抗体をコードする単離核酸分子を有するベクター、および核酸分子で形質転換された宿主細胞を含む。さらに、本発明の1つの実施形態は、核酸分子が発現して抗体を産生する条件下で宿主細胞を培養し、その後に宿主細胞から抗体を回収することによって抗Ten−M2抗体を産生する方法である。
【0026】
なおさらなる実施形態では、本発明は、本明細書中に記載の単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、他のTen−mファミリーメンバー(Ten−M3、Ten−M4が含まれる)に結合する完全なヒト抗体である。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、Ten−M2を発現する細胞を有効量の抗Ten−M2抗体で処置する工程を含む、Ten−M2の発現に関連する細胞増殖を阻害する方法を含む。別の態様では、本発明は、抗Ten−M2抗体を含む組成物および組成物を使用してTen−M2の過剰発現によって特徴づけられる癌を治療することができることを示す添付文書またはラベルを含む容器を含む製品を提供する。好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトに抗Ten−M2抗体を投与する。好ましい実施形態では、腫瘍または癌(肺癌、結腸癌、胃癌、腎臓癌、前立腺癌、もしくは卵巣癌またはNHL(非ホジキンリンパ腫)などの癌が含まれるがこれらに限定されない)を治療する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、有効量の抗Ten−M2抗体を患者に投与する工程を含む、患者におけるTen−M2発現に関連する疾患または状態を治療する方法を含む。患者は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者である。
【0030】
好ましい実施形態では、本方法は、腫瘍(肺、腎臓、脳、および卵巣の腫瘍ならびに一定の神経膠腫および非ホジキンリンパ腫(NHL)が含まれるがこれらに限定されない)の治療に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
好ましい実施形態の詳細な説明
一定の癌では、ヒトTen−Mタンパク質の伝令RNAレベルを上方制御することができる。したがって、Ten−M2タンパク質は、癌転移中の細胞移動で役割を果たし得る。ヒト癌における細胞移動およびTen−M2タンパク質発現における役割を示唆する発生研究を考慮すると、Ten−Mに対してデザインした療法は原発性腫瘍の転移を阻害することが可能である。したがって、Ten−M2タンパク質の二重鎖形成領域への抗体の投与により、癌転移を阻害することができる。
【0032】
さらに、Ten−M2タンパク質は、ニューロンの成長およびガイダンスに関与するようである。したがって、本発明の組成物および方法を、このような必要性が生じる状況におけるニューロンの成長および発達を促進または阻害するために適用することができる。例えば、Ten−Mタンパク質への抗体の結合によってニューロン成長を促進する本明細書中に開示の抗体を、損傷組織における神経再生などの状況で使用することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、Ten−M2タンパク質に結合する単離された、好ましくは完全なヒトのモノクローナル抗体の生成および同定に関する。いくつかの実施形態では、これらの抗体は、高親和性、高力価、またはその両方でTen−M2に結合することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、これらの抗体を毒素または類似の化合物に会合し、これを使用して毒素を特定の位置または細胞型に会合し、所望の位置での細胞型または細胞の死滅を促進する。いくつかの実施形態では、抗体を、高効率で内在化する。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗体は、Ten−M2タンパク質の有効な機能(例えば、シグナル伝達)を防止する。例えば、抗体は、タンパク質の二量体形成ドメイン(例えば、EGF様反復)への結合によってTen−M2タンパク質の別のTen−M2タンパク質との二量体形成を防止することができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、Ten−M2タンパク質のEGF様反復ドメインに結合する単離抗体またはこれらの抗体のフラグメントを提供する。
【0036】
本発明の実施形態はまた、これらの抗体を産生するための細胞を提供する。さらに、実施形態は、Ten−M2タンパク質の過小発現または過剰発現に関連する疾患の診断または治療としてのこれらの抗体の使用を提供する。
【0037】
本明細書中に記載の核酸ならびにそのフラグメントおよび変異型(variant)を使用して、例として、(a)組換えまたは異種遺伝子産物、(b)本明細書中に開示の核酸の検出および定量のためのプローブ、(c)配列テンプレート(これらに限定されない)としての対応するコードされたタンパク質、ポリペプチド、フラグメント、および変異型の生合成を指示することができる。このような用途を、以下により完全に記載する。
【0038】
定義:
他で定義しない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈中にて他で必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書中に提供した定義は、外部出典(参照として援用される引例に記載の定義が含まれる)由来の定義に優先する。
【0039】
一般に、本明細書中に記載の細胞培養および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法および技術は、種々の一般的およびより詳細な参考文献(本明細書中に引用され、本明細書を通して考察されているものなど)に記載のように、当該分野で周知であり、一般的に使用されている。例えば、Singleton et al,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換のための標準的な技術(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)を使用する。酵素反応および精製技術を、製造者の説明書にしたがって行うか、当該分野で一般に行われているように行うか、本明細書中に記載のように行う。化学合成、化学分析、薬学的調製、処方、および送達、ならびに患者の治療のための標準的な技術も使用する。
【0040】
本開示で使用されるように、他で示さない限り、以下の用語を、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0041】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、少量の特定の核酸片、RNA片および/またはDNA片を、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号に記載のように増幅する手順または技術をいう。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーをデザインすることができるように目的またはそれを超える領域の末端由来の配列情報が利用可能である必要がある。これらのプライマーは、増幅すべきテンプレートの反対の鎖と配列が同一であるか類似する。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅された材料の末端と一致し得る。PCRを使用して、全ゲノムDNAから特定のRNA配列、特定のDNA配列を増幅することができ、全細胞RNA、バクテリオファージ、またはプラスミド配列などから転写されたcDNAを増幅することができる。一般に、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987);Erlich,ed.,PCR Technology(Stockton Pres,NY,1989)を参照のこと。本明細書中で使用される場合、PCRは、プライマーとしての公知の核酸および特定の核酸片を増幅または生成するための核酸ポリメラーゼの使用を含む核酸試験サンプルを増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の一例であると見なされるが、それが唯一というわけではない。
【0042】
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は、同一の構造特性を有する糖タンパク質である。抗体が特定の抗原への結合特異性を示す一方で、免疫グロブリンには、抗体および抗原特異性を欠く他の抗体様分子が含まれる。後者のポリペプチド類は、例えば、リンパ系によって低レベルで産生され、骨髄腫によって高レベルで産生される。
【0043】
「未変性の抗体および免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖と連結する一方で、ジスルフィド結合数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的な間隔を有する鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)およびその後に多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)および他方の末端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインが重鎖の第1の定常ドメインと一列に並び、軽鎖可変ドメインが重鎖の可変ドメインと一列に並んでいる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている(Chothia et al.J.Mol.Biol.186:651(1985;NovotnyおよびHaber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:4592(1985);Chothia et al,Nature 342:877−883(1989))。
【0044】
本明細書中の用語「抗体」を、最も広い意味で使用し、所望の生物活性を示す限り、特に、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメント(FabおよびF(ab)’2が含まれる)を対象とする。任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてκおよびλと呼ばれる2つの明確に異なる型のうちの1つに割り当てることができる。組換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって結合フラグメントを産生する。以下により詳細に記載のように、結合フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、および単鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二機能性(bifunctional)」抗体以外の抗体は、それぞれその結合部位が同一であると理解される。
【0045】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクトな抗体を、異なる「クラス」に割り当てることができる。インタクトな抗体には以下の5つの主なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。これらのうちのいくつかを、「サブクラス」(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2)にさらに分類することができる。異なる抗体クラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元高次構造は周知である。
【0046】
本明細書中で使用される、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団(すなわち、この集団を含む各抗体が少量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である)から得た抗体をいう。モノクローナル抗体は、特異性が高く、1つの抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に指向する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されることなく合成することができるという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法によって抗体を産生する必要があると解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体を、Kohler et al,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製するか、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製することができる。「モノクローナル抗体」を、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0047】
「単離」抗体は、同定され、その自然環境の成分から単離および/または回収された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断または治療での使用を妨害するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、抗体を、(1)ローリー法、およびスピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)の使用による末端または内部のアミノ酸配列によって決定したところ、抗体の95重量%を超えるまでか、(3)還元または非還元条件下でのクーマーシーブルー、好ましくは銀染色を使用したSDS−PAGEによって均一になるまで精製する。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離抗体には、in situでの組換え細胞内の抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体を、少なくとも1つの精製工程によって調製する。
【0048】
「中和抗体」は、結合する標的抗原のエフェクター機能を排除するか有意に減少させることができる抗体分子である。したがって、「中和」Ten−M2抗体は、Ten−M2活性などのエフェクター機能を排除または有意に減少させることができる。1つの実施形態では、中和抗体は、エフェクター機能を、1〜10、10〜20、20〜30、30〜50、50〜70、70〜80、80〜90、90〜95、95〜99、99〜100%減少させる。1つの実施形態では、Ten−M2抗体は、いくらかの程度で、2つのTen−M2タンパク質の二量体形成を阻害することによって機能を阻害する。別の実施形態では、Ten−M2抗体は、いくらかの程度で二量体形成したTen−M2タンパク質の別のタンパク質との会合を阻害することによって機能を阻害する。1つの実施形態では、中和抗体は、第2のTen−M2タンパク質に結合するTen−M2タンパク質上の位置への直接結合によって二量体形成を阻害する。別の実施形態では、中和抗体はTen−M2タンパク質の一部に結合する一方で、抗体の一部または抗体に会合しているものがTen−M2タンパク質の二量体形成を遮断する。別の実施形態では、抗体がTen−M2タンパク質に結合してタンパク質の高次構造を変化させ、二量体が生じるのを妨害する。
【0049】
別の実施形態では、Ten−M2抗体は、実際に、二量体形成の可能性を増加させる。別の実施形態では、抗体は活性化抗体であり、抗体の結合により、別のTen−M2タンパク質と二量体形成したかのようにTen−M2タンパク質を有効に作用させるように機能する。
【0050】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」および「ADCC」は、IgFc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、その後に標的細胞を溶解する細胞媒介性反応をいう。主なADCC媒介細胞(NK細胞)はFcγRIIIのみを発現するのに対して、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464頁の表3にまとめられている。目的分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号などに記載のin vitro ADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的分子のADCC活性を、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656(1988)などに開示の動物モデルにおいてin vivoで評価することができる。
【0051】
用語「可変」は、一定の可変ドメイン部分の配列が抗体間で非常に異なり、これを各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用するという事実をいう。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。可変性は、相補性決定領域(CDR)またはIg軽鎖および重鎖可変ドメイン中の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。より高度に保存された可変ドメイン部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。未変性の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれFR領域を含み、これは主にβシート立体配置を使用し、3つのCDRによって連結してループ連結を形成し、場合によっては、βシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域によって極めて近接して互いに保持され、他の鎖由来のCDRは抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能(抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与など)を示す。
【0052】
酵素、パパインでの抗体の消化により、「Fab」フラグメントおよび「Fc」フラグメントとしても公知の2つの同一の抗原結合フラグメントが得られ、これらは抗原結合活性を持たないが結晶化能力を有する。酵素ペプシンでの抗体の消化により、F(ab’)2フラグメントが得られ、これは、抗体分子の2つのアームが連結したままであり、2つの抗原結合部位を含む。F(ab’)2フラグメントは、抗原を架橋する能力を有する。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「Fv」は、抗原認識部位および抗原結合部位の両方が保持された最小の抗体フラグメントをいう。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「Fab」は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖のCH1ドメインを含む抗体のフラグメントをいう。
【0055】
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。2鎖Fv種では、この領域は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが非共有結合で強固に結合した二量体からなる。単鎖Fv種では、1つの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを、軽鎖および重鎖が2鎖Fv種に類似の「二量体」構造で結合することができるように可動性ペプチドリンカーによって共有結合することができる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体表面上に抗原結合部位を定義するのはこの立体配置においてである。集合的に、6つのCDRは抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、1つの可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえも抗原を認識して結合する能力を有するが、完全な結合部位よりも親和性が低い。
【0056】
本明細書中で使用する場合、用語「超可変領域」は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基をいう。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜62(L2)、および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜55(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))および/または「超可変ループ」(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、53〜55(L2)、および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk J.Mol Biol.196:901−917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書中に定義の超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0057】
本明細書中で使用する場合、用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特定のリガンドと接触してその特異性を決定する免疫受容体部分をいう。免疫受容体のCDRは、受容体にその多様性を付与する受容体タンパク質の最も可変性の高い部分であり、受容体の可変ドメインの遠位末端に6つのループを有し、受容体の2つの各可変ドメイン由来の3つのループを有する。
【0058】
用語「エピトープ」を、タンパク質抗原上の抗体の結合部位をいうために使用する。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸および糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団からなり、通常、特異的な三次元特性および特異的荷電特性を有する。抗体は、解離定数が1μM以下、好ましくは100nM以下、最も好ましくは10nM以下の場合に抗原に結合するといわれる。解離定数(「KD」)の増加またはより高い解離定数は、エピトープと抗体との間の親和性がより低いことを意味する。言い換えると、抗体およびエピトープは結合または結合状態の維持を好む傾向がより低いことを意味する。解離定数の減少または(of)より低い解離定数は、エピトープと抗体との間で親和性がより高いことを意味する。言い換えると、抗体およびエピトープが結合するか結合状態を維持する可能性がより高い。一定量「に過ぎない」KDの抗体は、抗体が所与の親和性(すなわち、より強い(または強固な)親和性)でエピトープに結合することを意味する。
【0059】
KDがエピトープと抗体との結合特性を説明する一方で、「力価」は抗体機能についての抗体自体の有効性を説明する。比較的低いKDは自動的に高力価を意味しない。したがって、抗体は比較的低いKDおよび高い力価(例えば、十分に結合して機能を強く変化させる)、比較的高いKDおよび高い力価(例えば、十分に結合しないが機能に強い影響を及ぼす)、比較的低いKDおよび低い力価(例えば、十分であるが、特定の機能を変化させるのに有効でない様式で結合する)、または比較的高いKDおよび低い力価(例えば、単に標的に十分に結合しない)を有し得る。1つの実施形態では、高力価は、低濃度の抗体で阻害レベルが高いことを意味する。1つの実施形態では、抗体は、そのIC50が低い場合(例えば、1300〜600、600〜200、200〜130、130〜120、12〜50、50〜10、10〜1、または1未満のpM)、強力であるか力価が高い。
【0060】
「実質的に」は、他で特定しない限り、別の用語と組み合わせて、値が任意の量の範囲内で変化し得ることであって、この任意の量が実施形態の作製または実施中に起こり得る測定時のエラーに寄与し得ることを意味する。「有意に」は、特許請求の範囲に記載の発明がその目的の用途のために機能するのに十分である限り、値が変化し得ることを意味する。
【0061】
抗体に関する用語「選択的に結合する」は、抗体が1つの物質のみに結合することを意味しない。むしろ、第1の物質に対する抗体のKDが第2の物質に対するKDよりも低いことを示す。エピトープに排他的に結合する抗体は、1つのエピトープのみに結合する。
【0062】
本明細書中で使用される、用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、変異型に関して以下にさらに記載の天然に存在するLアミノ酸またはDアミノ酸をいう。一般的に使用されるアミノ酸の一文字表記および三文字表記を、本明細書中で使用する(Bruce Alberts et al.,Molecular Biology of the Cell,Garland Publishing,Inc.,New York(3d ed.1994))。
【0063】
用語「mAb」は、モノクローナル抗体をいう。
【0064】
用語「XENOMOUSE(登録商標)」は、Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)(本明細書中で参考として援用される)に記載のヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖細胞系の立体配置フラグメントを含むように操作されたマウス株をいう。XENOMOUSE(登録商標)株は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)から利用可能である。
【0065】
用語「XENOMAX(登録商標)」は、XENOMOUSE(登録商標)動物を使用した場合、「選択されたリンパ球抗体法(Selected Lymphocyte Antibody Method)」(Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,i93:7843−7848(1996))の使用をいう。
【0066】
用語「SLAM(登録商標)」は、「選択されたリンパ球抗体法」(Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,i93:7843−7848(1996)およびSchrader、米国特許第5,627,052号(共にその全体が本明細書中で参考として援用される)をいう。
【0067】
用語「疾患」、「病状」、および「障害」は、細胞、身体機能、系、または器官の中断、停止、または障害が起こった細胞または哺乳動物全体の生理学的状態をいう。
【0068】
用語「症状」は、ある障害に一般的な特徴であるかどうかにかかわらず、該障害の任意の物理的または認められる徴候を意味する。用語「症状」は、全てのこのような徴候またはその任意の一部を意味し得る。
【0069】
用語「処置する」または「処置」は、望ましくない生理学的変化または障害(癌の発症または拡大など)を防止するか遅延させる(減少させる)ことを目的とする治療上の処置および予防または防止手段をいう。本発明の目的のために、有利または所望の臨床結果には、症状の緩和、疾患範囲の縮小、状態の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患の進行の遅延または減速、病状の緩和または待期的緩和(palliation)、寛解(部分的または全体)(検出可能かどうかにかかわらず)が含まれるがこれらに限定されない。「処置」はまた、治療を受けなかった場合の予想される寿命と比較した場合の延命を意味し得る。治療を必要とする者は、状態または障害を既に罹患した者および状態または障害を有する傾向のある者または状態または障害を防止すべき者である。疾患または症状と組み合わせて使用する場合、用語「阻害する」は、抗体が疾患または症状を軽減または消失させることができることを意味し得る。
【0070】
用語「患者」には、ヒトおよび脊椎動物の被験体が含まれる。
【0071】
処置を目的とした「投与」は、患者への送達を意味する。制限されない例として、このような送達は、静脈内、腹腔内、吸入、筋肉内、皮下、経口、局所、経皮、または外科的であり得る。
【0072】
処置を目的とした「治療有効量」は、患者の状態および/または症状の観察可能な変化がその投与(単独または他の処置と組み合わせた)に起因し得るような量を意味する。
【0073】
処置を目的とした「薬学的に許容可能なビヒクル」は、患者に投与することができる物理的実施形態である。薬学的に許容可能なビヒクルは、丸薬、カプセル、カプレット、錠剤、経口投与用液体、注射用液体、スプレー、エアロゾル、ロゼンジ、栄養補助食品、クリーム、ローション、オイル、溶液、ペースト、粉末、蒸気、または液体であり得るがこれらに限定されない。薬学的に許容可能なビヒクルの一例は、緩衝化等張液(リン酸緩衝化生理食塩水(PBS))である。
【0074】
処置を目的とした「中和する」は、化学的および/または生物学的活性を部分的または完全に抑制することを意味する。
【0075】
処置を目的とした「下方制御」は、特定の標的組成物レベルを低下させることを意味する。
【0076】
処置を目的とした「哺乳動物」は、哺乳動物(ヒト、家畜、動物園の動物、競技用動物、またはペット(サル、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなど)が含まれる)として分類される任意の動物をいう。
【0077】
本明細書中で言及される、用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10塩基長のヌクレオチド(リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか)の重合形態またはいずれかのヌクレオチド型の修飾形態を意味する。この用語には、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態が含まれる。
【0078】
本明細書中で使用される、用語「単離ポリヌクレオチド」は、ゲノム起源、cDNA起源、合成起源、またはいくつかのその組み合わせのポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源によって、「単離ポリヌクレオチド」は、(1)「単離ポリヌクレオチド」が天然で見出されるポリヌクレオチドの全部または一部と会合しないか、(2)天然に連結しないポリヌクレオチドと作動可能に連結するか、(3)より大きな配列の一部として天然に存在しない。
【0079】
本明細書中で言及される、用語「オリゴヌクレオチド」には、天然に存在するオリゴヌクレオチドならびに天然に存在するオリゴヌクレオチド結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合によって互いに連結した修飾ヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドは、一般に、200塩基または200より少ない塩基を含むポリヌクレオチド小集団である。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、10〜60塩基長、最も好ましくは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、通常、一本鎖(プローブのため)であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築で使用するために二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。
【0080】
本明細書中で使用される、用語「天然に存在するヌクレオチド」には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。本明細書中で言及される、用語「修飾ヌクレオチド」には、修飾されているか置換された糖基などを有するヌクレオチドが含まれる。本明細書中で言及される、用語「オリゴヌクレオチド結合」には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、およびホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合が含まれる。例えば、LaPlanche et al.Nucl Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984);Stein et al.Nucl. Acids Res.16:3209(1988);Zon et al.Anti−Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al.Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87−108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.、米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543(1990)(その開示が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。オリゴヌクレオチドには、必要に応じて、検出用標識が含まれ得る。
【0081】
本明細書中で言及される、用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能且つ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびそのフラグメントは、かなりの量の非特異的核酸への検出可能な結合を最小にするハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を使用して、当該分野で公知および本明細書中で考察される選択的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。一般に、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、または抗体フラグメントと目的の核酸配列との間の核酸配列の相同性は、少なくとも80%、より典型的には、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%に相同性が増加することが好ましい。
【0082】
本明細書中で使用される、用語「調節配列」は、結合するコード配列を発現およびプロセシングするために必要であるポリヌクレオチド配列をいう。調節配列の性質は、宿主生物に応じて異なる。原核生物では、このような調節配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれる。真核生物では、一般に、このような調節配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。用語「調節配列」は、その存在が発現およびプロセシングに必須である最低限の全ての成分が含まれ、その存在が有利であるさらなる成分(例えば、リーダー配列および融合パートナー配列)も含まれ得ることが意図される。
【0083】
本明細書中で使用される、用語「作動可能に連結される」は、成分が意図する様式で機能することが可能になる関係であるように説明される成分の位置をいう。例えば、コード配列に「作動可能に連結された」調節配列を、調節配列と適合する条件下でコード配列の発現が達成されるような様式で連結する。
【0084】
本明細書中で言及される、用語「単離タンパク質」は、その起源または誘導源によって、「単離タンパク質」が、(1)天然で見出されたタンパク質に会合しないか、(2)同一供給源由来の他のタンパク質を含まないか(例えば、マウスタンパク質を含まない)、(3)異なる種由来の細胞によって発現するか、(4)天然に存在しないcDNA、組換えRNA、合成起源、またはそのいくつかの組み合わせのタンパク質を意味する。
【0085】
用語「ポリペプチド」を、未変性のタンパク質、フラグメント、ポリペプチド配列のアナログをいうための一般名として本明細書中で使用する。したがって、未変性のタンパク質、フラグメント、およびアナログは、ポリペプチド属の種である。本発明の好ましいポリペプチドは、例えば、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、および38によって示されるヒト重鎖免疫グロブリン分子、例えば、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、および40によって示されるヒトκ軽鎖免疫グロブリン分子、重鎖免疫グロブリン分子と軽鎖免疫グロブリン分子(κ軽鎖免疫グロブリン分子など)との組み合わせおよびその逆によって形成された抗体分子ならびにそのフラグメントおよびアナログを含む。
【0086】
他で明記しない限り、一本鎖ポリペプチド配列の左側の末端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側の方向は5’方向をいう。未完成RNA転写物の5’→3’方向への付加を転写方向といい、RNAと同一の配列を有し、且つRNA転写物の5’末端に対して5’であるDNA鎖上の配列領域を「上流配列」といい、RNAと同一の配列を有し、且つRNA転写物の3’末端に対して3’であるDNA鎖上の配列領域を「下流配列」という。
【0087】
本明細書中で使用される場合、20種の従来のアミノ酸およびその略語は、従来の用法に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition,E.S.GolubおよびD.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。20種の従来のアミノ酸、非天然アミノ酸(α−など)、α二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)はまた、本発明のポリペプチドに適切な成分であり得る。非従来型のアミノ酸の例には、以下が含まれる:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書中で使用されるポリペプチドの表記では、標準的な用法および慣習に従って、左側方向はアミノ末端方向であり、右側方向はカルボキシ末端方向である。
【0088】
用語「〜に対応する」は、ポリヌクレオチド配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部もしくは一部に相同である(すなわち、同一である(厳密には進化的に関連しない))こと、またはポリペプチド配列が基準ポリペプチド配列と同一であることを意味するために本明細書中で使用される。
【0089】
対照的に、用語「〜と相補的である」は、相補配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同であることを意味するために本明細書中で使用される。例として、ヌクレオチド配列「TATAC」は、基準配列「TATAC」に対応し、基準配列「GTATA」に相補的である。
【0090】
以下の用語は、2つまたは2つよりも多いポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列の関係を説明するために使用される用語の例である:「基準配列」、「比較ウィンドウ(comparison window)」、「配列同一性」、「配列同一率」、「実質的同一性」、および「相同性」。「基準配列」は、配列比較の基本として使用される定義された配列である。基準配列は、例えば、全長cDNAのセグメントまたは配列表に示した遺伝子配列としてのより大きな配列の小集団であり得るか、完全なcDNAまたは遺伝子配列を含み得る。一般に、基準配列は、少なくとも18ヌクレオチド長または6アミノ酸長、頻繁には24ヌクレオチド長または8アミノ酸長、しばしば少なくとも48ヌクレオチド長または16アミノ酸長である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、それぞれ、(1)2分子間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含むことができ、(2)2ポリヌクレオチド配列間または2アミノ酸配列間で異なる配列をさらに含み得るので、2つ(または2つより多い)分子の間の配列比較を、典型的には、配列類似性の局所領域を識別および比較するために「比較ウィンドウ」にわたって2分子の配列を比較することによって行う。
【0091】
本明細書中で使用される、「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を少なくとも18個の連続するヌクレオチドまたは6個のアミノ酸配列の基準配列と比較する少なくとも約18個の連続するヌクレオチド部分または6個のアミノ酸の概念セグメントをいい、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列部分には、2配列の至適なアラインメントのために基準配列(付加や欠失を含まない)と比較して20%または20%未満の付加、欠失、および置換など(すなわち、ギャップ)が含まれ得る。配列ウィンドウのアラインメントのための配列の至適なアラインメントを、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman Proc.Natl Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行プログラム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、GENEWORKS(商標)、またはMACVECTOR(登録商標)ソフトウェアパッケージ)、または目視(inspection)によって行うことができ、種々の方法によって得られた最適なアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたる最も高い相同率が得られる)を選択する。
【0092】
用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が比較ウィンドウにわたって同一である(すなわち、ヌクレオチド毎または残基毎を基本とする)ことを意味する。用語「配列同一率」を、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントした配列を比較し、両配列中に同一のヌクレオチド塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)またはアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して適合位置数を得て、適合位置数を比較ウィンドウ中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、この結果に100を乗じて配列同一率を得ることによって計算する。本明細書中で使用される、用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ、頻繁に、少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置のウィンドウにわたって基準配列と比較した場合、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特徴を示し、この配列同一率を、基準配列と比較ウィンドウにわたって基準配列の合計20%または20%未満の欠失または付加を含み得る配列との比較によって計算する。基準配列は、より大きな配列の小集団であり得る。
【0093】
2つのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、その配列間で部分的または完全に同一である場合、「相同」である。例えば、85%相同は、最大に適合するように2つの配列をアラインメントした場合に85%のアミノ酸が同一であることを意味する。最大に適合させるためのギャップ(2つの配列のいずれかが適合する)が可能である。5または5未満のギャップ長が好ましく、2または2未満がより好ましい。あるいは、および好ましくは、2つのタンパク質配列(または少なくとも約30アミノ酸長のポリペプチド由来のポリペプチド配列)は、変異データ行列および6または6を超えるギャップペナルティを用いたプログラムALIGNを使用して5(標準偏差単位)を超えるアラインメントスコアを有する場合、相同(本明細書中でこの用語を使用する場合)である。Dayhoff,M.O.,in Atlas of Protein Sequence and Structure,pp.101−110(Volume 5,National Biomedical Research Foundation(1972))およびこの巻の増補(pp.1−10)を参照のこと。2つの配列またはその一部は、より好ましくは、ALIGNプログラムを使用して最適にアラインメントした場合、そのアミノ酸が50%以上同一である場合に相同である。
【0094】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的同一性」は、デフォルトギャップウェイトを使用してプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントした場合、2つのペプチド配列が少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、および最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換と異なる。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族水酸基の側鎖を有するアミノ酸群はセリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0095】
本明細書中で考察されるように、アミノ酸配列の変動を少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%に維持する場合、抗体分子または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の小さな変動が本発明に含まれることが意図される。特に、保存的アミノ酸置換が意図される。保存的置換は、その側鎖に関連するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。遺伝子コードされたアミノ酸は、一般に、以下のファミリーに分類される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、ならびに(4)無電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは、以下である。セリンおよびトレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーである。アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリーである。アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは脂肪族ファミリーである。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンからイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸からグルタミン酸、トレオニンからセリンへの単独の置換、またはアミノ酸から構造的に関連するアミノ酸への類似の置換が、特に、置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合に、得られた分子の結合または性質に大きな影響を及ぼさないと予想するのは妥当である。アミノ酸の変化によって機能的ペプチドが得られるかどうかを、ポリペプチド誘導体の特定の活性のアッセイによって容易に決定することができる。アッセイを、本明細書中に詳述する。当業者は、抗体分子または免疫グロブリン分子のフラグメントまたはアナログを容易に調製することができる。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシル末端は、機能ドメインの境界付近に生じる。構造ドメインおよび機能ドメインを、ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列のデータと公的または独自の配列データベースとの比較によって同定することができる。好ましくは、コンピュータ化された比較方法を使用して、公知の構造および/または機能の他のタンパク質中で起こる配列モチーフまたは予想されるタンパク質の高次構造ドメインを同定する。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列の同定方法は公知である。Bowie et al.Science 253:164(1991)。上記の例は、当業者が本発明の構造ドメインおよび機能ドメインを定義するために使用することができる配列モチーフおよび構造の高次構造を認識することができることを証明している。
【0096】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させる置換、(2)酸化に対する感受性を減少させる置換、(3)タンパク質複合体形成に対する結合親和性を変化させる置換、(4)結合親和性を変化させる置換、(5)このようなアナログの他の物理化学的または機能的性質を付与するか改変する置換である。アナログには、天然に存在するペプチド配列以外の配列の種々のムテインが含まれる。例えば、天然に存在する配列(好ましくは、分子内接触するドメインの外側のポリペプチドの一部)中に1つまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を行うことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造の特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸が親配列で起こるらせんを破壊する、または親配列を特徴づける他の二次構造型を破壊する傾向があるべきではない)。当該分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));およびThornton et at.Nature 354:105(1991)(それぞれ本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0097】
本明細書中で使用される、用語「ポリペプチドフラグメント」は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端が欠失しているが、残りのアミノ酸配列は、例えば、全長cDNA配列から推定された天然に存在する配列中の対応する位置と同一であるポリペプチドをいう。フラグメントは、典型的には、少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長である。他の実施形態では、ポリペプチドフラグメントは、少なくとも25アミノ酸長、より好ましくは少なくとも50アミノ酸長、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0098】
一般に、製薬工業では、テンプレートペプチドの性質に類似の性質を有する非ペプチド薬としてペプチドアナログを使用する。これらの非ペプチド化合物型を、「ペプチド模倣物(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)」という。Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);およびEvans et al.J.Med.Chem.30:1229(1987)(本明細書中で参考として援用される)。このような化合物を、しばしば、コンピュータ化された分子モデリングを活用して開発する。治療に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣物を使用して、等価な治療効果または予防効果を得ることができる。一般に、ペプチド模倣物は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、当該分野で周知の方法によって、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−CH2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−−CH2SO−−からなる群から選択される結合と任意選択的に置換された1つまたは複数のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の同型のD−アミノ酸との合成的置換(例えば、L−リジンのD−リジンとの置換)を使用して、より安定なペプチドを生成することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列の異形(variation)を含む拘束されたペプチドを、当該分野で周知の方法(RizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)(本明細書中で参考として援用される))、例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド結合を形成することができる内部システイン残基の付加によって生成することができる。
【0099】
本明細書中で使用される、用語「標識」または「標識された」は、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込みによる検出可能なマーカーの組み込みまたは印をつけたアビジン(例えば、光学的方法または比色分析法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチへの結合をいう。一定の状況では、標識またはマーカーは、治療マーカーでもあり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質の種々の標識方法が当該分野で公知であり、これらを使用することができる。ポリペプチド用標識の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光体、ビオチニル基、二次受容体によって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、種々の長さのスペーサーアームによって標識を結合して潜在的な立体障害を減少させる。
【0100】
本明細書中で使用される、用語「薬学的薬剤(Pharmaceutical agent)または薬物」は、患者に適切に投与した場合に所望の治療効果を誘導することができる化合物または組成物をいう。本明細書中の他の化学用語を、例えばThe McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw−Hill,San Francisco(1985))(本明細書中で参考として援用される)に例示されるような、当該分野における従来の用法に従って使用する。
【0101】
「薬剤」は、哺乳動物(ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、イヌ、ネコ、または任意の他の温血動物が含まれるが、これらに限定されない)の活動期の疾患の治療、予防的治療、または診断で有用な物質をいう。例えば、薬剤は、放射性同位体、毒素、薬学的薬剤、オリゴヌクレオチド、細胞傷害薬、組換えタンパク質、抗体フラグメント、抗癌薬、抗接着薬、抗血栓症薬、抗再狭窄薬、抗自己免疫薬、抗凝固薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、および抗炎症薬からなる群から選択される。このような薬剤の他の例には、抗ウイルス薬(アシクロビル、ガンシクロビル、およびジドブジンが含まれる);抗血栓症薬/再狭窄薬剤(シロスタゾール、ダルテパリンナトリウム、レビパリンナトリウム、およびアスピリンが含まれる);抗炎症薬(ザルトプロフェン、プラノプロフェン、ドロキシカム、アセチルサリチル酸17、ジクロフェナク、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、スリンダク、ナプロキセン、アムトレメチン(amtolmetin)、セレコキシブ、インドメタシン、ロフェコキシブ、およびニメスリドが含まれる);抗自己免疫薬(レフルノミド、デニロイキンジフチトクス、スブレウム(subreum)、WinRhoSDF、デフィブロチド、およびシクロホスファミドが含まれる);および抗接着薬/抗凝集薬(リマプロスト、クロルクロメン(clorcromene)、およびヒアルロン酸が含まれるが、これらに限定されない。用語「薬剤」は、所望の方法で標的細胞または標的領域に影響を及ぼし得る当業者に公知であるか本明細書中に開示の任意の化合物を含むことを意味する。薬剤には、標識および種々の治療薬も含まれ得る。
【0102】
本明細書中で使用される、用語「実質的に純粋な」は、目的の種(obeject species)が存在する種のうちで主な種であり(モルに基づいて組成物中の任意の他のそれぞれの種よりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製された画分は、目的の種が存在する全ての高分子種の少なくとも50%(モルベースで)含まれる組成物であることを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子種の約80%超、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%超含まれる。最も好ましくは、目的の種を、本質的に均一になるまで(従来の検出方法によって組成物中に夾雑種を検出することができなくなるまで)精製し、組成物は本質的に1つの高分子種からなる。
【0103】
用語「Ten−Mタンパク質」は、テネウリン(teneurin)またはhOdzとしても公知のTen−M遺伝子ファミリー由来のタンパク質を示す。Ten−Mタンパク質は、短い細胞内N末端を含み、その後に膜貫通領域、8つのEGF様反復(上皮成長因子様反復)、細胞外側に巨大な球状ドメインが続くII型膜貫通タンパク質クラスである。Ten−M2は、このタンパク質ファミリーの特定のメンバーを示す。Ten−M2は、CG50426としても公知である。開示の抗体の調製で使用されるTen−M2タンパク質の単離区域を、図1Aの配列番号53(アミノ酸400〜1226)および図1Bの配列番号54(アミノ酸400〜2733)に示す。当業者に認識され、以下により詳細に記載されるように、Ten−M2の他の区域を使用して、本明細書中に記載の様式と同一の様式で抗体を生成することができる。
【0104】
さらに、当業者によって認識されるように、本明細書および本開示を容易に適用して、種々のTen−Mファミリーの種々のメンバーに指向する抗体を作製および使用することができるが、簡潔にするために、本発明の例としてTen−M2タンパク質を考察する。ラット(Otaki et al.,Dev.Biol.212,165−1813(1999));ニワトリ(Minet et al.,J.Cell Sci. 112,2019−2032(1999);Rubin et al.,R.,Dev.Biol.216,195−209(1999);Tucker et al.,Mech.Dev.98,187−191(2000);Tucker et al.,Dev.Dyn.220,27−39(2001))、ヒト(Brandau et al.,Hum.Mol.Genet.8,2407−2413(1999);Minet et al.,Gene 257,87−97(2000))、ゼブラフィッシュ(Mieda et al.,Mech.Dev.87,223−227(1999))、および線虫(Wilson et al.,Nature 368,32−38(1994))のTen−Mタンパク質ファミリーのメンバーが記載されている。
【0105】
Ten−M2抗体
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、癌細胞におけるTenM2/Ten−M2二重鎖の形成を防止し、それにより、癌が別の位置に拡大する可能性を軽減することができる。当業者に認識されているように、抗体は、多数の方法でTenM2/Ten−M2二重鎖形成を防止または減少させることができる。例えば、抗体は、Ten−M2タンパク質のTenM2/Ten−M2二重鎖形成のための結合に関与する区分(例えば、EGF様反復)に直接結合し、それにより、2つのTen−M2タンパク質の相互の有効な結合を防止することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、二重鎖形成に関与するEGF様反復に直接結合する。任意の1つまたは複数のEGF様反復(例えば、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、および第8の反復が含まれる)に結合するための抗体を作製することができる。したがって、1つの実施形態では、抗体は、第2および第4のEGF様反復に結合することができる。これらの特定の区域に結合する完全なヒト抗体を、本明細書中に開示の方法および当業者の知識によって生成することができる。あるいは、抗体は別の位置に結合することができ、抗体の非結合区域はタンパク質の2つの半分(two halves)の結合を立体的に妨害することができる。あるいは、抗体はTen−M2タンパク質上のある位置に結合してタンパク質の高次構造の変化を誘導し、二重鎖形成を防止することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体は2つのTen−M2タンパク質を結合させるが、任意の機能的シグナル伝達が起こるのを防止するような方法で結合する。いくつかの実施形態では、これは二重鎖形成に直接関与するTen−M2タンパク質区分の一部のみ(例えば、1つのEGF様反復)に結合する抗体を含み、そうでなければ抗体は2つのTen−M2タンパク質の結合に干渉しない。各抗体が2つのTen−M2タンパク質に結合することができるので、この特定の抗体は、二重鎖を形成するために利用可能なTen−M2タンパク質数を減少させる利点を有する。同様に、いくつかの実施形態では、2つのTen−M2タンパク質に一度に結合する抗体もこの利点を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、TenM2/Ten−M2二重鎖の解離を実際に促進する。他の実施形態では、抗体は、TenM2/Ten−M2二重鎖の形成を促進する。このような抗体を、Ten−M2タンパク質またはその二重鎖の特定の位置に対して抗体を惹起することによって作製することができ、その結果、Ten−M2タンパク質またはその二重鎖に結合した場合、抗体がTen−M2タンパク質の他の状態(個別または二重鎖形成状態)の安定化に役立つ。
【0108】
当業者は、1)本教示、2)Ten−M2タンパク質からの論理的な選択(例えば、EGF様反復lの1つ、いくつか、または全て)、3)標準的な抗体結合アッセイ(例えば、BIACORE(商標)デバイスにおける表面プラズモン共鳴)、および4)機能的二重鎖形成アッセイ(例えば、下記に類似の細胞移動アッセイ)と組み合わせて、上記抗体を容易に生成し、同定し、単離し、使用することができることを認識する。
【0109】
いくつかの実施形態では、Ten−M2に対する抗体は、種々のTen−M形態および種々のTen−M2形態に選択性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、Ten−M2に対する抗体は、Ten−Mの他の形態(例えば、Ten−M4、Ten−M1、およびTen−M3)よりもTen−M2に強固に結合する。例えば、抗体は、他のTen−Mタンパク質の任意の組み合わせの1つよりもTen−M2に1〜5倍、5〜10倍、10〜20倍、20〜30倍、30〜40倍、または40〜50倍強固に結合することができる。他の実施形態では、抗体は、細胞に会合したTen−Mタンパク質および細胞から解離したTen−Mタンパク質(特に、Ten−M2)に選択性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、細胞表面に付着するTen−M2タンパク質により強固に結合することができる。他の実施形態では、抗体は、細胞から除去されたか分泌または切断されるTen−M2タンパク質により強固に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、等しい強度で両方の形態に結合することができる。他の実施形態では、抗体は、Ten−M2タンパク質の1つの形態のみに有効に結合することができる。選択性は、一方の形態について他方の形態と比較して、任意の量(2〜10倍、10〜20倍、20〜30倍、30〜40倍、40〜50倍または50倍を超える選択性)であり得る。どのようにしてこのような選択的抗体を生成し、このような選択性を決定するのかについての例を、以下の実施例に示す。
【0110】
他の実施形態では、Ten−M2に結合する抗体を、いくつかの薬剤型または化合物型に会合する。薬剤の抗体との会合により、薬剤または化合物がTen−M2を発現する細胞に送達することが可能である。認められるように、Ten−M2は癌細胞中で発現するので、この組み合わせは細胞傷害薬または治療薬などの薬剤を癌細胞に送達することが可能である。薬剤を、種々の方法で抗体に会合することができる。例えば、薬剤を抗体に直接連結するか、リンカー(切断可能なリンカーであり得る)を介して付着させるか、二次抗体を介して会合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、他の抗体または薬剤による抗体の結合を可能にするためのエピトープを含む。当業者に認識されるように、薬剤を毒素に会合させる正確な様式はデバイスまたは方法に重要ではない。これらの組成物およびその使用方法に関連するこの問題および他の問題を、特に、以下の「他の治療薬のデザインおよび生成」というタイトルの項でより詳細に考察する。
【0111】
抗体の構造
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが公知である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110または110を超えるアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分により、主にエフェクター機能を担う定常領域が定義される。ヒト軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それにより、それぞれ、IgM、IgD、IgA、およびIgEとして抗体のイソ型が定義される。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域が約12または12を超えるアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)(全ての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。各軽鎖および/または重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0112】
したがって、抗体は2つの結合部位を有する。二機能性抗体または二重特異性抗体を除き、2つの結合部位は同一である。
【0113】
全ての鎖は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRがフレームワーク領域と一列に並び、特異的エピトープと結合することができる。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))またはChothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothia et al.Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。
【0114】
二重特異性抗体または二機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および異なる結合部位を有する人為的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体を、種々の方法(ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結が含まれる)によって産生することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann Cln.Exp.Immunol.79:315−321(1990),Kostelny et al.J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照のこと。二重特異性抗体の産生は、従来の抗体の産生と比較して比較的骨の折れる集中的なプロセスであり得、二重特異性抗体の収率および純度は、一般に、低い。二重特異性抗体は、1つの結合部位を有するフラグメントの形態(例えば、Fab、Fab’、およびFv)で存在しない。
【0115】
ヒト抗体および抗体のヒト化
ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変領域および/または定常領域を有する抗体に関連するいくつかの問題が回避される。このようなマウスまたはラット由来のタンパク質の存在により抗体が急速にクリアランスされ得るか、患者によって抗体に対する免疫応答が生成され得る。マウスまたはラット由来の抗体の利用を回避するために、げっ歯類が完全なヒト抗体を産生するようなげっ歯類へのヒト抗体機能の導入によって完全なヒト抗体を生成することができる。
【0116】
完全なヒト抗体の1つの生成方法は、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖細胞系立体配置フラグメントを含むように操作されたマウスのXENOMOUSE(登録商標)の使用による。Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照のこと。XENOMOUSE(登録商標)株は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)から市販されている。
【0117】
XENOMOUSE(登録商標)の産生は以下でさらに考察し、示されている:1990年1月12日出願の米国特許出願番号07/466,008号、1990年11月8日出願の07/610,515号、1992年7月24日出願の07/919,297号、1992年7月30日出願の07/922,649号、1993年3月15日出願の08/031,801号、1993年8月27日出願の08/112,848号、1994年4月28日出願の08/234,145号、1995年1月20日出願の08/376,279号、1995年4月27日出願の08/430,938号、1995年6月5日出願の08/464,584号、1995年6月5日出願の08/464,582号、1995年6月5日出願の08/463,191号、1995年6月5日出願の08/462,837号、1995年6月5日出願の08/486,853号、1995年6月5日出願の08/486,857号、1995年6月5日出願の08/486,859号、1995年6月5日出願の08/462,513号、1996年10月2日出願の08/724,752号、1996年12月3日出願の08/759,620号、米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、同第6,075,181号、および同第5,939,598号、日本特許第3 068 180 B2号、同第3 068 506 B2号、および同第3 068 507 B2号。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)およびGreenおよびJakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)も参照のこと。1996年6月12日付与された欧州特許第0 463 151 Bl号、1994年2月3日に公開された国際特許出願番号WO94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願番号WO96/34096号、1998年6月11日に公開された国際特許出願番号WO98/24893号、2000年12月21日に公開されたWO00/76310号も参照のこと。上記引用の各特許、出願、および引例の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0118】
別のアプローチでは、その他(GenPharm International,Inc.が含まれる)は、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチを使用した。ミニ遺伝子座アプローチでは、外因性Ig遺伝子座を、Ig遺伝子座由来の小片(pieces)(各遺伝子)の封入によって模倣する。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、μ定常領域、および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)を、動物への挿入のための構築物に形成する。このアプローチは、以下に記載されている:Surani et al.に付与された米国特許第5,545,807号、それぞれがLonbergおよびKayに付与された米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,789,650号、同第5,814,318号、同第5,877,397号、同第5,874,299号、および同第6,255,458号、KrimpenfortおよびBernsに付与された米国特許第5,591,669号および同第6,023.010号、Berns et al.に付与された米国特許第5,612,205号、同第5,721,367号、および同第5,789,215号、ChoiおよびDunnに付与された米国特許第5,643,763号、1990年8月29日出願のGenPharm Internationalの米国特許出願番号07/574,748号、1990年8月31日出願の07/575,962号、1991年12月17日出願の07/810,279号、1992年3月18日出願の07/853,408号、1992年6月23日出願の07/904,068号、1992年12月16日出願の07/990,860号、1993年4月26日出願の08/053,131号、1993年7月22日出願の08/096,762号、1993年11月18日出願の08/155,301号、1993年12月3日出願の08/161,739号、1993年12月10日出願の08/165,699号、1994年3月9日出願の08/209,741号(その開示が本明細書中で参考として援用される)。欧州特許第0 546 073 Bl号、国際特許出願番号WO92/03918号、WO92/22645号、WO92/22647号、WO92/22670号、WO93/12227号、WO94/00569号、WO94/25585号、WO96/14436号、WO97/13852、およびWO98/24884号、ならびに米国特許第5,981,175号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。Taylor et al.,1992,Chen et al.,1993,Tuaillon et al.,1993,Choi et al.,1993,Lonberg et al.,(1994),Taylor et al.,(1994),and Tuaillon et al.,(1995),Fishwild et al.,(1996)(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)をさらに参照のこと。
【0119】
Kirinは、微小細胞融合によって大きな染色体片または全染色体を導入したマウス由来のヒト抗体の生成も証明した。欧州特許出願番号773288号および843961号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0120】
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答により、キメラ抗体、そうでなければヒト化抗体が産業的に調製されている。キメラ抗体がヒト定常領域およびマウス可変領域を有するが、特に、慢性用量または複数回用量の抗体の利用において一定のヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が認められると予想される。したがって、HAMAまたはHACA応答の懸念および/または効果を無効にするために多量体酵素に対する完全なヒト抗体を得ることが望ましいであろう。
【0121】
抗体の調製
本明細書中で使用される場合、抗体を、下記のXENOMOUSE(登録商標)テクノロジーを使用して調製した。このようなマウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を産生することができ、マウス免疫グロブリン分子および抗体の産生能を欠く。これを達成するために使用されるテクノロジーは、本明細書中で言及した特許、出願、および引例に開示されている。しかし、特に、マウスのトランスジェニック産生およびトランスジェニック由来の抗体の好ましい実施形態は、1996年12月3日出願の米国特許出願番号08/759,620号および1998年6月11日出願の国際特許出願番号WO98/24893号、2000年12月21日出願のWO00/76310号(その開示が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)(その開示が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
【0122】
以下に詳述するように、このようなテクノロジーの使用により、Ten−M2に対する完全なヒトモノクローナル抗体を産生した。本質的に、マウスのXENOMOUSE(登録商標)株を、目的の抗原(例えば、ヒトTen−M2)で免疫化し、リンパ細胞(B細胞など)を、抗体を発現したマウスから回収し、回収した細胞株を骨髄型細胞株と融合して不死化ハイブリドーマ細胞株を調製する。これらのハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生したハイブリドーマ細胞株を同定する。所望の多量体酵素サブユニットオリゴマー形成ドメインに特異的な抗体を産生する複数のハイブリドーマ細胞株の産生方法を本明細書中に提供する。さらに、このような細胞株によって産生された抗体の特徴付け(このような抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列分析が含まれる)を本明細書中に提供する。
【0123】
あるいは、ハイブリドーマを生成するために骨髄腫細胞に融合する代わりに、マウスの免疫化XENOMOUSE(登録商標)株から単離した回収細胞を、最初の抗原、好ましくはヒトTen−M2に対する反応性についてさらにスクリーニングする。このようなスクリーニングには、所望のTen−M2タンパク質を用いたELISAおよびTen−M2媒介性抗体内在化などの機能アッセイが含まれる。次いで、目的の1つのB細胞分泌抗体を、所望のTen−M2特異的溶血性プラークアッセイを使用して単離する(Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,i93:7843−7848(1996))。溶解についてターゲティングした細胞は、好ましくは、所望のTen−M2抗原でコーティングされたヒツジ赤血球(SRBC)である。目的の免疫グロブリンおよび補体を分泌するB細胞培養物の存在下で、プラークの形成は、標的細胞の特異的Ten−M2媒介性溶解を示す。
【0124】
プラーク中心の1つの抗原特異的形質細胞を単離することができ、抗体特異性をコードする遺伝情報を1つの形質細胞から単離する。逆転写酵素PCRを使用して、分泌された抗体の可変領域をコードするDNAをクローン化することができる。次いで、このようなクローン化DNAを、適切な発現ベクター、好ましくはpcDNAなどのベクターカセット、より好ましくは免疫グロブリン重鎖および軽鎖の定常ドメインを含むpcDNAベクターにさらに挿入することができる。次いで、生成されたベクターを、宿主細胞、好ましくはCHO細胞にトランスフェクトし、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なように改変された従来の栄養培地中で培養することができる。Ten−M2に特異的な抗体を産生する複数の単一の形質細胞の単離をここに記載する。さらに、抗Ten−M2抗体の特異性をコードする遺伝物質を単離し、適切な発現ベクターに導入し、次いで、宿主細胞にトランスフェクトする。
【0125】
一般に、上記細胞株によって産生された抗体は、ヒトκ軽鎖と共に完全なヒトIgG1またはIgG2重鎖を有していた。抗体は、固相および液相によって測定した場合、高親和性を有していた(典型的には、約10−9M〜約10−13MのKdを保有する)。
【0126】
上記のように、抗Ten−M2抗体を、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株中で発現することができる。特定の抗体をコードする配列を、CHO細胞などの適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用することができる。形質転換は、宿主細胞へのポリヌクレオチドの任意の公知の導入方法(例えば、ウイルス中への(またはウイルスベクターへの)ポリヌクレオチドのパッケージングおよびウイルス(またはベクター)での宿主細胞の形質導入が含まれる)または米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号(これらの特許が本明細書中で参考として援用される)に例示される当該分野で公知のトランスフェクション手順により行われる。使用される形質転換手順は、形質転換されるべき宿主に依存する。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入方法が当該分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接微量注入が含まれる。
【0127】
発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当該分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から利用可能な多数の不死化細胞株(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、および多数の他の細胞株が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。特定の好ましい細胞株を、どの細胞株が高い発現レベルを有し、且つTen−M2結合特性を有する抗体を産生するかを決定することによって選択する。
【0128】
当業者によって認識されるように、抗原選択は、単純に、抗原から生成された抗体がその自然環境で完全なタンパク質に結合することを自動的に意味しない。したがって、いくつかの実施形態では、元のタンパク質または抗原の変異型よりもむしろ、未変性タンパク質への結合について、抗体を試験し選択する。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質を特に意図する。
【0129】
抗体配列
代表的なヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、配列表に示し、その内容を以下の表1および図5〜17にまとめる。
【0130】
【表1−1】
【0131】
【表1−2】
【0132】
【表1−3】
抗体治療薬
抗Ten−M2抗体は、Ten−M2活性に関連する症状および状態に治療効果を有することができる。例えば、抗体は、Ten−M2/Ten−M2二重鎖の形成を阻害し、それにより、癌転移を阻害することができるか、抗体を薬剤と会合させ、ターゲティングされた細胞に致死毒素を送達させることができる。さらに、抗Ten−M2抗体は、病状、特に、癌および癌転移の診断薬として有用である。
【0133】
必要に応じて、抗Ten−M2抗体のアイソタイプをスイッチして、例えば、異なるアイソタイプの生物学的性質を活用することができる。例えば、いくつかの環境では、Ten−M2に対する治療抗体として抗体生成と組み合わせて、抗体が補体を固定し、補体依存性細胞傷害性(CDC)に関与することができることが望ましいかもしれない。上記が可能な抗体の多数のアイソタイプが存在し、以下が含まれるが、これらに限定されない:マウスIgM、マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgM、ヒトIgG1、およびヒトIgG3。生成された抗体がこのようなアイソタイプを最初に保有する必要がなく、むしろ、生成された抗体は任意のアイソタイプを保有することができ、抗体は当該分野で周知の従来技術を使用してその後にスイッチされたアイソタイプであり得ると認識される。このような技術には、特に、直接組換え技術(例えば、米国特許第4,816,397号を参照のこと)、細胞−細胞融合技術(例えば、米国特許第5,916,771号および同第6,207,418号を参照のこと)の使用が含まれる。
【0134】
例として、本明細書中で考察された抗Ten−M2抗体は、ヒト抗体である。抗体がTen−M2に望ましく結合した場合、抗体のアイソタイプを容易にスイッチして、ヒトIgM、ヒトIgG1、またはヒトIgG3アイソタイプを生成する一方で、依然として同一の可変領域(抗体の特異性およびいくつかのその親和性を定義する)を保有することができる。次いで、このような分子は、補体を固定し、CDCに関与することができるであろう。
【0135】
細胞−細胞融合技術では、任意の所望のアイソタイプを有する重鎖を保有する骨髄腫細胞株または他の細胞株を調製し、軽鎖を保有する別の骨髄腫細胞株または他の細胞株を調製する。その後、このような細胞を融合し、インタクトな抗体を発現する細胞株を単離することができる。
【0136】
したがって、上記で考察される所望の「構造」特性を満たす抗体候補を生成する場合、一般に、アイソタイプスイッチングによる少なくとも一定の所望の「機能」特性を有する抗体候補を得ることができる。
【0137】
Ten−M2に結合する生物学的に活性な抗体を、好ましくは、Ten−M2活性を減少させるための滅菌薬学的調製物または処方物中で使用する。抗Ten−M2抗体は、好ましくは、標的治療範囲内にTen−M2活性を強く抑制するのに適切な親和性を保有する。抑制は、抗体が別のTen−M2タンパク質へのTen−M2への結合を妨害する能力に起因し得る。さらに、抗体は、Ten−M2シグナル伝達事象が一般に起こらないように、高次構造またはTen−M2タンパク質を変化させることができる。
【0138】
in vivo投与のために使用する場合、抗体処方物は、無菌であることが好ましい。これは、当該分野で公知の任意の方法(例えば、滅菌濾過膜による濾過)によって容易に達成される。抗体は、通常、滅菌形態または液体で保存される。凍結乾燥および再構成の前後で滅菌濾過を行う。
【0139】
治療抗体組成物を、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器(例えば、静脈注射液バッグ)または処方を補助するアダプター(皮下注射針によって突き刺すことができるストッパーなど)を有するバイアルに入れる。
【0140】
抗体の投与経路は、公知の方法に従う(例えば、以下に記載の静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、鞘内の注射もしくは注入、吸入もしくは病変内経路、または徐放系)。いくつかの状況では、抗体を、好ましくは、注入またはボーラス注射によって投与する。他の状況では、抗体を含む治療組成物を、好ましくは液体または粉末のエアロゾル(凍結乾燥)として、鼻または肺を介して投与することができる。必要に応じて、組成物を、静脈内、非経口、または皮下に投与することができる。全身に投与する場合、治療組成物は、滅菌され、発熱物質を含まず、pH、等張性、および安定性に関して十分に考慮した非経口で許容可能な溶液であるべきである。これらの条件は、当業者に公知である。
【0141】
本明細書中に記載のように、治療用の抗体を、典型的に、処方物に組み込んで輸送、送達、および耐性などが改良される適切なキャリア、賦形剤、他の薬剤を使用して調製する。簡潔に述べれば、保存または投与のための本明細書中に記載の抗体の投薬処方物を、所望の純度を有する抗体を1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製する。これらの処方物には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、小胞(リポフェクチン(商標)など)を含む脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油滴型乳濁液、油中水滴型乳濁液、カルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、カルボワックスを含む半固体混合物が含まれ得る。処方物には、緩衝液(TRIS HCl、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、および他の有機酸塩など)、抗酸化剤(アスコルビン酸など)、低分子量(約10残基未満)のペプチド(ポリアルギニンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニンなど)、モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストランが含まれる)、キレート剤(EDTAなど)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、対イオン(ナトリウムなど)、および/または非イオン性界面活性剤(TWEEN、PLURONICS、またはポリエチレングリコールなど)が含まれ得る。他の許容可能なキャリア、賦形剤、および安定剤は、当業者に周知である。処方物中の有効成分が処方物によって不活化されず、且つ処方物が投与経路と生理学的に適合可能且つ許容可能なである場合、任意の上記混合物は、本発明の治療および療法で適切であり得る。Baldrick P.”Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.” Regul.Toxicol.Pharmacol 32(2):210−8(2000),Wang W.”Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int.J.Pharm.203(1−2):1−60(2000),Charman WN ”Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery−some emerging concepts.” J Pharm Sci .89(8):967−78(2000),Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)、およびさらなる情報を得るための参考文献も参照のこと。
【0142】
注射用滅菌組成物を、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed,Lippincott Williams & Wilkens Publishers(2003))に記載の従来の薬務にしたがって処方することができる。例えば、水またはゴマ油、ラッカセイ油、もしくは綿実油のような天然に存在する植物油のようなビヒクル中の活性化合物の溶解物または懸濁物、またはオレイン酸エチルのような合成脂肪ビヒクルが望ましいかもしれない。許容される薬務にしたがって、緩衝液、防腐剤、および抗酸化剤などを組み込むことができる。
【0143】
抗体を徐放性調製物として投与し、長期にわたり放出させることもできる。徐放性処方物の適切な例には、ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。マトリックスは、成型品、フィルム、またはマイクロカプセルの形態であり得る。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langer et al.,J.Biomed Mater.Res.,(1981)15:167−277およびLanger,Chem.Tech.,(1982)12:98−105に記載のポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、欧州特許第58,481号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸とのコポリマー(Sidman et al,Biopolymers,(1983)22:547−556)、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al、前出)、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(LUPRON Depot(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフィア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)が含まれる。
【0144】
エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが100日間にわたって分子を放出することができる一方で、一定のヒドロゲルは、より短い時間間隔でタンパク質を放出する。カプセル化タンパク質が長期間体内に保持される場合、これらは、37℃で水分に曝露された結果として変性または凝集し、生物活性を喪失し、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機構に応じて、タンパク質安定化のための妥当なストラテジーを考案することができる。例えば、凝集機構がジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であると発見された場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、適切な添加物を使用した含水量の調節、および特異的ポリマーマトリックス組成物の開発によって安定化することができる。
【0145】
徐放性組成物には、懸濁液中に結晶を維持することができる適切な処方物中に懸濁された抗体の結晶の調製物も含まれる。皮下または腹腔内に注射された場合、これらの調製物は、徐放効果を発揮することができる。他の組成物には、リポソーム捕捉抗体も含まれる。このような抗体を含むリポソームを、それ自体が公知の方法によって調製する(米国特許第DE 3,218,121号;Epstein et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.USA,(1985)82:3688−3692;Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1980)77:4030−4034;欧州特許第52,322号;欧州特許第36,676号;欧州特許第88,046号;欧州特許第143,949号;欧州特許第142,641号;日本特許出願83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびに欧州特許第102,324号)。
【0146】
所与の患者のための抗体処方物の投薬量を、担当医が決定することができる。適切な投薬量の決定では、医師は治療薬の作用を改変することが公知の種々の要因(例えば、疾患の重症度および型、体重、性別、食事、投与時間および経路、他の投薬ならびに他の関連する臨床要因が含まれる)を考慮することができる。治療有効投薬量を、in vitroまたはin vivoのいずれかによって決定することができる。
【0147】
本明細書中に記載の治療で使用すべき有効量の抗体は、例えば、治療目的、投与経路、および患者の状態に依存する。したがって、セラピストは、至適な治療効果を得るために必要な投薬量の力価を測定し(titer)、投与経路を修正することが好ましい。典型的な1日投薬量は、上記要因に応じて、約0.001mg/kgから100mg/kgまたは100mg/kgを超えるまでの範囲であり得る。典型的には、臨床家は、投薬量が所望の効果を達成するまで治療抗体を投与する。この治療の進行を、従来のアッセイによって容易にモニタリングする。
【0148】
本明細書中に記載の抗体がTen−M2活性に起因するか関連する症状および状態の治療で治療効果を有すると予想される。
【0149】
他の治療薬のデザインおよび生成
本発明に従い、且つTen−M2に関して本明細書中で産生されて特徴づけられた抗体の活性に基づくと、他の治療方法のデザインが容易になり、これらのデザインが当業者に開示される。このような方法には、高度な抗体治療薬(二重特異性抗体、免疫毒素、および放射性標識治療薬など)、ペプチド治療薬の生成、遺伝子療法(特に、細胞内発現抗体)、アンチセンス治療薬、および小分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
高度な抗体治療薬の生成と組み合わせて、補体固定が望ましい特性である場合、例えば、二重特異性物質、免疫毒素、または放射性標識の使用によって細胞死滅のための補体への依存を回避することが可能である。
【0151】
例えば、(i)2つの抗体(一方のTen−M2に特異性を有する抗体および他方の第2の分子に対する抗体が互いに結合体化している)、(ii)Ten−M2に特異的な一方の鎖および第2の分子に特異的な第2の鎖を有する1つの抗体、または(iii)Ten−M2および他の分子の両方に特異性を有する単鎖抗体を含む二重特異性抗体を生成することができる。このような二重特異性抗体を、周知の技術(例えば、(i)および(ii)との組み合わせ(例えば、Fanger et al.Immunol Methods 4:72−81(1994)およびWrightおよびHarris,前出を参照のこと)および(iii)との組み合わせ(例えば、Traunecker et al.Int.J.Cancer(Snppl.)7:51−52(1992)を参照のこと))を使用して生成することができる。いずれの場合にも、必要に応じて第2の特異性を得ることができる。例えば、重鎖活性化受容体(CD16またはCD64(例えば、Deo et al.18:127(1997)を参照のこと)またはCD89(例えば、Valerius et al.Blood 90:4485−4492(1997)を参照のこと)(ただしこれらに限定されない)に対する第2の特異性を得ることができる。いくつかの実施形態では、2つのTen−M2タンパク質に結合するように抗体をデザインする。いくつかの実施形態では、2つのTen−M2タンパク質に結合し、且つ2つのTen−M2タンパク質がシグナル伝達が起こり得る様式で実際に互いに接触することをさらに回避するように抗体をデザインする。この実施形態では、結果は、Ten−M2の抗体によるシグナル伝達が防止され、各抗体が2つのTen−M2分子を停止させることができるという点で有利であり得る。
【0152】
当該分野で周知の技術を使用して、免疫毒素として作用するように抗体を修飾することもできる。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252(1993)を参照のこと。米国特許第5,194,594号も参照のこと。放射性標識抗体の調製と組み合わせて、当該分野で周知の技術を使用して、このような修飾抗体を容易に調製することもできる。例えば、Junghans et al.in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655−686(2d edition,ChafherおよびLongo,eds.,Lippincott Raven(1996))を参照のこと。米国特許第4,681,581号、同第4,735,210号、同第5,101,827号、同第5,102,990号(再発行第35,500号)、同第5,648,471号、および同第5,697,902号も参照のこと。各免疫毒素および放射性標識分子は、所望の多量体酵素サブユニットドメインを発現する細胞を死滅させる可能性が高いであろう。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて有効量の抗体を含む薬学的組成物を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗Ten−M2抗体を、薬剤(例えば、放射性同位体、薬学的組成物、または毒素)に連結する。好ましくは、このような抗体を、疾患の治療のために使用することができ、このような疾患は、ten−Mタンパク質、および特にTen−M2の過剰発現または過小発現に関し得る。例えば、薬物が抗有糸分裂薬、アルキル化薬、抗代謝産物、抗血管形成薬、アポトーシス薬、アルカロイド、COX−2、および抗菌薬ならびにその組み合わせの群から選択される薬学的性質を保有することが意図される。薬物を、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン、COX−2インヒビター、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、代謝拮抗薬、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、白金配位複合体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制薬、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ならびにそのアナログおよび組み合わせからなる群から選択することができる。
【0154】
毒素の例には、さらに、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス外毒素(PE)、PE40、PE38、ジフテリア毒素、リシン、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、RNA分解酵素(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス内毒素、ならびにその誘導体、組み合わせおよび修飾物が含まれる。
【0155】
放射性同位体の例には、局在化および/または療法のために使用することができるγ線放射体、陽電子放射体、およびX線放射体ならびに療法のために使用することができるβ線放射体およびα線放射体が含まれる。診断、予後、および病期分類に有用であることが以前に記載されている放射性同位体も療法に有用である。抗癌薬および抗白血病薬の非限定的な例には、アントラサイクリン(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、イダルビシン、デトルビシン(detorubicin)、カルミノマイシン(carmninomycin)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、およびモルフォリノなど)、ならびにその誘導体、組み合わせ、および修飾物が含まれる。例示的医薬品には、シスプラチン、タキソール、カリチアマイシン、ビンクリスチン、シタラビン(ara−C)、シクロホスファミド、プレドニゾン、ダウノルビシン、イダルビシン、フルダラビン、クロラムブシル、インターフェロンα、ヒドロキシ尿素、テモゾロミド、サリドマイド、およびブレオマイシン、ならびにその誘導体、組み合わせ、および修飾物が含まれる。好ましくは、抗癌薬および抗白血病薬は、ドキソルビシン、モルホリノドキソイルビシン、またはモルホリノダウノルビシンである。
【0156】
当業者に認識されるように、上記実施形態では親和性値が重要であり得る一方で、特定の抗体の機能に応じて、他の要因も同様またはそれ以上に重要であり得る。例えば、免疫毒素(抗体に会合した毒素)について、標的への抗体の結合作用が有用であり得るが、いくつかの実施形態では、細胞への毒素の内在化が所望の最終結果である。そのようなものとして、これらの状況では、内在化率の高い抗体が望ましい可能性がある。しかし、抗体がTen−M2タンパク質と別のTen−M2タンパク質との二重鎖形成を防止しようとするならば、これらの抗体を望む必要はない。したがって、1つの実施形態では、高効率で内在化する抗体が意図される。高効率の内在化を、内在化抗体率として測定することができ、低い値から100%までであり得る。例えば、種々の実施形態では、0.1〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜45、45〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜99、および99〜100%が高効率であり得る。当業者によって認識されるように、所望の効率は、実施形態によって異なる(例えば、会合する薬剤、領域に投与することができる抗体の量、抗体−薬剤複合体の副作用、処置すべき問題の型(例えば、癌型)および重症度に応じて異なる)。
【0157】
他の実施形態では、本明細書中に開示の抗体により、Ten−M2レベルの変化に関連する疾患または障害をスクリーニングするための哺乳動物組織又は細胞中のTen−M2タンパク質の検出のためのアッセイキットが得られる。キットは、抗原タンパク質と結合する抗体および抗体と抗原(存在する場合)との反応を示すための手段を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗Ten−M2抗体を含む組成物および組成物を使用してTen−M2によって媒介される疾患を治療することができることを示す添付文書またはラベルを含む容器を含む製品を提供する。好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトに抗Ten−M2抗体を投与する。
【実施例】
【0159】
実施される実験および達成される結果が含まれる以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、これらの実施例は、本明細書中に記載の本発明を制限すると解釈すべきではない。
【0160】
実施例1
抗Ten−M2抗体の生成
Ten−M2に対するモノクローナル抗体を、図1Aおよび1Bに示す配列を有する抗原を使用したXenoMouse(登録商標)マウス(IgG2κXenoMouse株),Abgenix,Inc.Fremont,CA)の免疫化によって構築した。図1Aに示した抗原は、V5−6xHis(二重下線および斜体で示す)およびヒトFcタグ(太字で示す)も付加し、図1Bに示した抗原は、6xHis−V5タグ(斜体および二重下線で示す)も付加した。シグナルペプチドに下線を引いている。
【0161】
上記免疫化マウスから産生したハイブリドーマおよびB細胞クローンを、Ten−M2特異的モノクローナル抗体についてスクリーニングした。ELISAプレートを、可溶性Ten−M2抗原でコーティングし(図1Bを参照のこと)、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、洗浄緩衝液(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。ブロッキング緩衝液(200μL/ウェル、0.5%BSA、0.1%Tween20、0.01%チメロサールを含む1×PBS)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ハイブリドーマまたはB細胞クローンの上清(50μL/ウェル)、ポジティブコントロール、およびネガティブコントロールを添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。
【0162】
インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ヤギ抗huIgGfc−HRP検出抗体(100μL/ウェル)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。TMB基質(100μL/ウェル)を添加し、プレートを10分間発色させ(ネガティブコントロールウェルが辛うじて発色し始めるまで)、50μL/ウェルの停止溶液を添加し、プレートをELISAプレートリーダーにて450nmの波長について読み取った。
【0163】
次いで、上記ELISAで結合について陽性と同定されたハイブリドーマまたはB細胞クローン上清を、天然に抗原が発現するSNB−19細胞株を使用して内因的に発現したTen−M2に結合する能力についてアッセイした。上記スクリーニングで同定した247個のB細胞クローンサンプルについてFMATベースの蛍光アッセイを行った。簡潔に述べれば、96ウェルマイクロタイター皿中に、10,000細胞/ウェルでSNB−19細胞を播種した。細胞が接着した後、培地を除去し、B細胞クローン上清と置換した。1時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、結合した抗体を、Cy5結合体化抗ヒトIgGFc特異的ポリクローナル抗体を介して検出した。陽性ウェルを、FMATリーダーを使用して画像化した。以下の表2は、可溶性Ten−M2(Cur007)ECDに結合したハイブリドーマおよびB細胞クローンの数ならびにその後にSNB−19細胞株にも結合したB細胞数をまとめている。
【0164】
表2
可溶性Ten−M2および細胞表面Ten−M2への抗Ten−M2抗体結合
【0165】
【表2】
全B細胞クローンを、V5−His可溶性ペプチドへのその結合について試験し、247個がこれに交差反応しなかった。6個のハイブリドーマクローンを可溶性Ten−M2−V5−Hisタンパク質への結合についてのみ試験し、このアッセイ以降に進めなかった。その配列を、図5〜9に示す。
【0166】
実施例2
Ten−M2抗体の結合特異性
本実施例は、生成された種々の抗体の特異性を証明する。抗体を、安定な細胞株を発現するTen−M3(Cur026)および癌細胞株上に内因的に発現したTen−M4(CR105)に結合する能力について試験した。上記スクリーニングで同定された247個のB細胞クローンサンプルについてFMATベースの蛍光アッセイを行った。簡潔に述べれば、96ウェルのマイクロタイター皿中に、10,000細胞/ウェルで細胞を播種した。細胞が接着した後、培地を除去し、B細胞クローン上清と置換した。1時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、結合した抗体を、Cy5結合体化抗ヒトIgGFc特異的ポリクローナル抗体を介して検出した。陽性ウェルを、FMATリーダーを使用して画像化した。以下の表3は、たった1つの抗体179がTen−M3に交差反応することを示すデータをまとめている。
【0167】
表3
関連相同Ten−M3(CUR026)およびTen−M4(CUR105)への抗Ten−M2抗体の結合プロフィール
【0168】
【表3】
上記データから認められるように、記載の抗体は、バックグラウンドレベルと比較して結合が増加したことを証明した。これらの結果は、抗体が他の密接に関連する抗原およびタンパク質に比べてTen−M2への結合に比較的選択性を示すか特異的であり得ることを証明した。
【0169】
実施例3
種々のTen−M2抗体の内在化アッセイ
本実施例は、種々のTen−M2抗体をSNB−19細胞内に内在化することができることを証明した。下に報告するように、いくつかの抗体を、わずかに高レベルの効率(例えば、比較的大量の抗体を細胞に内在化することができる)で内在化した。
【0170】
Ten−M2抗体を使用して、SNB−19細胞を染色した。最初に4℃でこれを行い(バックグラウンド測定のために内在化されない)、37℃に30分間シフトして内在化を誘導した。
【0171】
SNB−19細胞を、細胞解離培地(Sigma)を使用して培養皿から除去し、計数し、96ウェルVEE底プレートに移した(100,000細胞)。細胞をスピンして沈殿させ、培地を除去し、細胞を、100μLのハイブリドーマ上清で再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。インキュベートした細胞をスピンして沈殿させ、ジスルフィド結合を介してAlex647色素に連結した二次抗体(1μg/mlの抗HuIgG Fc−SS−Alexa647または抗HuIgG Fab−SS−Alexa647)を使用して、結合抗体を検出した。二次抗体を、氷上で7分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、氷冷10%FCS/PBSで再懸濁した。次いで、サンプルを3つのサンプルに分け、スピンして沈殿させ、上清を除去した。
【0172】
2つの複製物(replicate)を、氷冷10%FCS/PBSで再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。他の複製物を、加温10%FCS/PBSで再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。30分間のインキュベーション後、細胞をスピンして沈殿させ、以下の緩衝液の1つで再懸濁した。1つの緩衝液は、250μLの冷50mMグルタチオンであり、4℃のサンプルに添加した。これを、ジスルフィド結合の不完全な還元によるバックグラウンド蛍光の基準として使用した。第2の緩衝液は、250μLの冷50mMグルタチオンを有し、37℃の複製物に添加した。グルタチオンのみが細胞表面の二次抗体に接近した。抗体が内在化された場合、ジスルフィド結合は、グルタチオンによって還元されず、細胞は依然として蛍光を発する。したがって、残存する蛍光強度は、抗体の内在化量に比例した。第3の緩衝液は250μLの冷10%FCS/PBSであり、他の4℃のサンプルに添加した。このサンプルは、最大蛍光を示すためのコントロールであった。
【0173】
次いで、サンプルを氷上で30分間インキュベートし、スピンして沈殿させ、300μLの氷冷10%FCS/PBSで再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。結果を表4に示す。
【0174】
表4
内在化:4℃でSNB−19細胞株を染色するために使用し(内在化せず)、その後に内在化を誘導するために37℃に30分間シフトしたTen−M2(Cur0007)特異的抗体
【0175】
【表4】
上記表で認められるように、試験した全抗体がいくらかの範囲で内在化された。最小内在化率は29%であった。いくつかの抗体は40%超で内在化され、1つの抗体(188)は約50%の内在化率で内在化された。
【0176】
実施例4
抗体毒素結合体
本実施例は、どのようにして毒素に結合体化した抗体を癌細胞の増殖の防止に有効な組成物として使用するのかを証明した。クローン原性アッセイを使用して、抗体をサポリン毒素結合体化二次抗体試薬と結合体化した場合に一次抗体が癌細胞死を誘導することができるかどうかを決定した(例えば、KohlsおよびLappi,”Mab−ZAP:A tool for evaluating antibody efficacy for use in an immunotoxin,” Biotechniques,28(1):162−5(Jan.2000)(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載)。
【0177】
簡潔に述べれば、細胞を、約3000細胞/ウェルの密度で平底組織培養プレートにプレートした。2日目または細胞密集度が約25%に到達した場合、100ng/ウェルの二次mAb−毒素(ヤギ抗ヒトIgG−サポリン;Advanced Targeting Systems;HUM−ZAP;cat.no.IT−22)を添加した。抗EGFR抗体(ポジティブコントロール)、抗Ten−M2mAb、またはアイソタイプコントロールAbを、所望の濃度(典型的には、1〜500ng/mL)で各ウェルに添加した。5日目に、細胞をトリプシン処理し、6ウェル組織培養皿に移し、37℃でインキュベートした。プレートを毎日試験した。10〜12日目に、プレートをギムザで染色し、プレート上のコロニーを計数した。最終的に形成されたコロニー数によってプレーティング効率を決定した。
【0178】
細胞傷害性化学療法試薬である5フルオロウラシル(5−FU)をポジティブコントロールとして使用し、これによってほとんど完全な死滅を誘導したのに対して、サポリン結合体化ヤギ抗二次抗体のみではほとんど効果がなかった。両細胞株によって発現されたEGF様受容体に対して生成されたモノクローナル抗体(NeoMarkers MS−269−PABX)を使用して、一次抗体および二次抗体−サポリン結合体特異的死滅を証明した。
【0179】
種々の濃度(例えば、5pMと1000pMとの間)の抗体/毒素結合体を、抗体/毒素結合体が内在化可能な条件下でSNB−19細胞に投与した。次いで、細胞を、96時間増殖させ続けた。次いで、コロニーを計数して、SNB−19細胞増殖の阻害量を決定した。結果を図3に示す。
【0180】
図に認められるように、いくつかの抗Ten−M2抗体により、6ngと100ngとの間の範囲の量でSNB−19細胞の濃度が50%または50%を超えて減少した。図4は、Ten−M2を発現しない癌細胞株IGROV−1を使用した増殖アッセイの阻害を示す。予想されるように、IGROV−1細胞の増殖は、抗Ten−M2抗体の添加に影響を受けず、図3で認められるSNB−19細胞の増殖阻害が抗Ten−M2抗体の特定の性質に起因することを示した。
【0181】
実施例5
抗Ten−M2抗体の構造分析
抗Ten−M2抗体の可変重鎖および可変軽鎖を、そのDNA配列を決定するために配列決定した。全ての抗Ten−M2抗体についての完全な配列情報を、各γ鎖およびκ鎖の組み合わせのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列と共に、図5〜17に示す。
【0182】
可変重鎖ヌクレオチド配列を分析して、VHファミリー、D領域配列、およびJ領域配列を決定した。次いで、配列を翻訳して一次アミノ酸配列を決定し、生殖細胞系のVH領域、D領域、およびJ領域の配列を比較して体細胞高頻度変異を評価した。抗Ten−M2重鎖の一次アミノ酸配列を、図18に示す。生殖細胞系配列を上記に示し、新規のアミノ酸配列と共に変異を示す。示した生殖細胞系配列と同一の配列中のアミノ酸を、ダッシュ(−)を使用して示す。軽鎖を同様に分析して、V領域およびJ領域を決定し、生殖細胞系軽鎖配列由来の任意の体細胞変異を同定した(図19)。
【0183】
実施例6
種々の抗体のV遺伝子使用
本実施例は、上記で特徴づけられた特定の抗体と会合する種々のV遺伝子を証明した。多数の抗体中のV遺伝子を分析して、どの遺伝子が特定の抗体で使用されたかを決定した。抗体の重鎖および軽鎖の両方に関与するV遺伝子を、以下の表5に示す。
【0184】
【表5】
上記表で認められるように、全ての抗体はJH6B遺伝子またはJH4B遺伝子に関与していた。
【0185】
実施例7
エピトープ結合およびBiaCore(登録商標)親和性の決定
エピトープ結合
本明細書中に記載の一定の抗体は、米国特許出願公開番号20030157730号に記載のプロトコールにしたがって、「ビン化(binned)」する。一次抗体へのカップリングのためのMxhIgG結合体化ビーズを調製する。必要な上清体積を、以下の式を使用して計算する:(n+10)×50μL(式中、n=プレート上の総サンプル数)。濃度が既知である場合、0.5μg/mLを使用する。ビーズストックを穏やかにボルテックスし、次いで、上清でウェルあたり2500個のビーズおよび0.5×105/mLの濃度に希釈し、震盪機にて暗所の室温で一晩インキュベートしたか、0.5μg/mLの既知濃度の場合、2時間インキュベートした。吸引後、50μLの各ビーズをフィルタープレートの各ウェルに添加し、100μL/ウェルの洗浄緩衝液を加えて1回洗浄し、吸引した。50μL/ウェルの抗原およびコントロールをフィルタープレートに添加し、被覆し、震盪機にて暗所で1時間インキュベートした。洗浄工程後、一次抗体で使用した濃度と同一の希釈(または既知である場合、濃度)を使用して、50μL/ウェルの未知の二次抗体を添加する。次いで、プレートを、震盪機にて暗所の室温で2時間インキュベートし、その後に洗浄工程を行った。次に、50μL/ウェルのビオチン化mxhIgGの500倍希釈物を添加し、震盪機にて暗所の室温で1時間インキュベートした。洗浄工程後、50μL/ウェルのストレプトアビジン−PEの1000倍希釈物を添加し、震盪機にて暗所の室温で15分間インキュベートした。洗浄工程後、各ウェルを、80μLのブロッキング緩衝液中に再懸濁し、Luminexを使用して読み取った。結果は、モノクローナル抗体が異なるビン(bin)に属することを示す。異なるビン由来の抗体による競合結合は、類似のエピトープまたは隣接エピトープに対する抗体特異性を支持する。非競合結合は、固有のエピトープに対する抗体特異性を支持する。
【0186】
BiaCore(登録商標)分析を使用した抗Ten−M2mAb親和性の決定
BiaCore(登録商標)を使用して、Ten−M2抗原に対する抗Ten−M2抗体の結合親和性を決定した。研究用CM5センサーチップを備えたBiaCore(登録商標)2000バイオセンサを使用して、25℃で分析を行った。日常的なカップリングを使用して、CM5 BiaCore(登録商標)チップ上に高密度ヤギαヒト抗体表面を調製した。抗体上清を、100μg/mL BSAおよび10mg/mLカルボキシメチルデキストランを含むHBS−P泳動緩衝液で約5μg/mLに希釈した。次いで、抗体を、2分間接触させて個別の表面上にそれぞれ捕捉し、抗体ベースラインの安定化のために5分間洗浄した。
【0187】
292nMのTen−M2抗原を、各表面上に75秒間注入し、その後に3分間解離させた。コントロールフローセル由来のシグナルを引き、Ten−M2注入直前の緩衝液注入のベースラインのドリフトを引くことによって二重参照(double−referenced)データを得た。各mAbのTen−M2結合データを、各表面上に捕捉されたmAb量について正規化した。正規化されたドリフト修正応答も測定した。25℃での抗Ten−M2 mAb結合の速度分析の結果を、以下の表7に列挙する。
【0188】
表7 精製したTen−M2 mAbのTen−M2低分解能BiaCore(登録商標)スクリーニング
【0189】
【表7】
$Kdは、非線形適合プロセスにおいてこの値にて一定に保持される。
*極めて複雑な動態。
【0190】
実施例8
ウエスタンブロット分析、免疫組織化学的分析、およびFACS分析による抗Ten−M2 mAbによるTen−M2タンパク質の検出
抗Ten−M2モノクローナル抗体の抗原結合特性および交差反応性を決定するために、1μgのTen−M2(M2)、Ten−M3(M3)、またはTen−M4(M4)組換えタンパク質(R&D system)を、還元条件下で、4〜20%Tris−グリシンゲル(Invitrogen)にロードし、電気泳動によって0.45μmPVDF膜(Invitrogen)に移した。膜を、3%BSA(Sigma,St.Louis,MO)を含むTBSTで3時間ブロッキングし、2μg/mlの濃度のTEN−M2mAb抗体で3時間探索した。図20に示すように、TEN−M2 mAbは、p125 Ten−M2種を特異的に認識するが、Ten−M3タンパク質やTen−M4タンパク質を認識しない。
【0191】
抗Ten−M2 mAbが癌細胞中の内因性Ten−M2タンパク質を認識することができることも決定した。IGROV−1、SK−OV−3、SNB−19、および786−0細胞から作製した総タンパク質溶解物を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。次に、ウエスタンブロットを、Ten−M2タンパク質(図21の上のパネル)および抗Ten−M2抗体(図21の下のパネル)に対して生成されたウサギポリクローナル抗体のいずれかとインキュベートした。内因性Ten−M2タンパク質のサイズに対応する約30kDのバンドを、SNB−19細胞中でTen−M2ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方によって検出した。さらなるコントロールとして、転写陰性細胞株IGROV−1細胞およびSK−OV−3細胞中にTen−M2タンパク質は検出されなかった。
【0192】
免疫組織化学
種々のヒト癌組織におけるTen−M2発現を、抗Ten−M2 mAbを使用した免疫組織化学によって分析した。免疫組織化学のために、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した種々のヒト癌組織由来の組織サンプル切片を、Ten−M2 mAbで染色した。プロテイナーゼK(DakoCytomation,Carpinteria,CA)による部分的タンパク質分解を使用して抗原賦活を行い、内因性ペルオキシダーゼ活性を3%過酸化水素のメタノール溶液で反応停止させた。
【0193】
組織切片を、5%BSA溶液(Sigma)および1%ヤギ血清(Jackson ImmunoResearch Lab)のPBS溶液で最初に1時間ブロッキングし、次いで、ブロッキング緩衝液で希釈したビオチン化TEN−M2またはビオチン化アイソタイプコントロールIgG2抗体とインキュベートした。1時間後、切片を洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジン(200倍)と45分間インキュベートした。洗浄工程を繰り返し、その後、DAB試薬(Vector labs,Burlingame,CA)を使用して色素を発色させた。DAB反応を停止させ、切片を、ヘマトキシリン(Fisher Scientific)中で対比染色し、脱水し、permount(Fisher Scientific)を使用してマウントした。
【0194】
以下の表8で認められるように、乳癌、腎臓癌、および前立腺癌中の膜上が強く染色された(+2)。ほとんどのヒトの乳癌、前立腺癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓明細胞癌、肺癌、脳腫瘍、卵巣癌、リンパ腫、および黒色腫の検体において、強度スコア+1または+1を超えるより弱い陽性染色も同定された。
【0195】
表8
抗Ten−M2免疫組織化学のまとめ
【0196】
【表8】
乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎臓明細胞癌、肺癌、卵巣癌、および黒色腫の染色例を、図22A〜Gにそれぞれ示す。抗Ten−M2抗体染色により、大部分のTen−M2タンパク質が乳癌、卵巣癌、腎臓明細胞癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、および前立腺癌の腫瘍細胞の膜上および細胞質領域に見出されることが明らかとなった。興味深いことに、抗Ten−M2抗体は黒色腫サンプルの内皮も染色し、抗血管形成の可能性が示唆されたが、多数の正常組織の内皮を染色しなかった。コントロールIgGに関して癌組織染色は認められなかった。表8に列挙される正常なヒト組織に対しても抗Ten−M2抗体での免疫組織化学染色を行った。主に、正常な腎臓、前立腺、卵巣、扁桃腺、および甲状腺で陽性染色が認められた。腎臓の尿細管で認められるように、ほとんどの組織染色が細胞質で起こることに注目すべきである。前立腺は、ストロマの膜染色が認められた(図22H〜I)。
【0197】
フローサイトメトリー
15個の異なる細胞株の表面のCG50426(Ten−M2)発現の定量分析を、フローサイトメトリー(FACS)によって決定した。約1×106細胞を採取し、洗浄し、PBS(pH7.4)、4%FBS、および0.1%NaN3を含む染色緩衝液中で飽和量(1μg/ml)のTEN−M2またはアイソタイプ適合コントロール抗体のいずれかと氷上で30分間インキュベートし、その後、R−フィコエリトリン(PE)結合体化ヤギ抗ヒト抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc,West Grove,PA)の100倍希釈物にて氷上で30分間洗浄および染色した。細胞を、1%パラホルムアルデヒド/PBS中で固定し、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターにて試験した。Becton Dickinson Cell Questソフトウェアバージョン3.3を使用してデータ分析を行い、各細胞型について相乗平均蛍光強度比(GMR)を決定した。
【0198】
以下の表9で認められるように、FACS分析により、抗Ten−M2mAbで表面染色された7つの癌細胞株(SNB−19細胞、RXF631細胞、RXF393細胞、786−0細胞、T47D細胞、NCl−H82細胞、およびHop62細胞が含まれる)がアイソタイプコントロールmAbバックグラウンドの少なくとも3倍であることが同定された。
【0199】
表9
RTQ PCR、FACS、および抗Ten−M2−mAbでのヒト癌細胞株のin vitro増殖阻害のまとめ
【0200】
【表9】
aTEN−M2:材料と方法に記載のRTQ PCRによってCT値を決定した。フローサイトメトリー分析によって相乗平均比(GMR)を決定した。記載のクローン原性アッセイによって抗体−薬物細胞傷害性(ADC)または細胞死滅を決定した。
bIC50値は、三連のウェルで行った各実験を使用した2つの独立したクローン原性アッセイの平均およびSDである。
ND:実施せず。
【0201】
実施例9
抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2−MMAFを使用した脳腫瘍および腎臓細胞癌のin vitro増殖阻害
抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2−MMAFが抗原陽性細胞を特異的に阻害したかどうかを調査するために、細胞死滅アッセイを行い、抗Ten−M2薬結合体処置後の細胞生存率を評価した。細胞を96ウェルプレートにプレートし、一晩回復させた。種々の濃度の抗Ten−M2−vcMMAEまたは抗Ten−M2−MMAF抗体結合体を、サブコンフルエントの細胞培養物に添加し、37℃で4日間インキュベートした。次いで、細胞を、6ウェルプレートに移し、さらに7日間増殖させた。RXF631細胞、RXF393細胞、および786−0細胞はコロニーを形成せず、細胞計数法を使用した。簡潔に述べれば、各ウェル中の細胞を回収し、50μlの増殖培地に再懸濁した。血球計を使用して、顕微鏡下で細胞を計数した。処置サンプルと未処置サンプルとの間の比に基づいて、生存細胞画分を計算した。IC50を、未処置のコントロール培養物と比較してコロニー形成または細胞数が50%減少する濃度と定義した。
【0202】
表9で認められるように、Ten−M2発現細胞は、抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2−MMAFによって誘導された増殖阻害に感受性を示すが、抗原を発現しない細胞は感受性を示さなかった。抗Ten−M2薬結合体の最高の死滅効果は、SNB−19細胞およびRXF393細胞にて約60pMのIC50で認められた(図23A、B)。RXF631細胞は、抗Ten−M2−vcMMAE(IC50=7.6nM)よりも抗Ten−M2−MMAF(IC50<60pM)に対して感受性が高かった(図23C)。786−0が遊離MMAEや遊離MMAFのいずれにも感受性を示さなかったという本発明者らの前の観察と一致して、抗Ten−M2 mAb結合体は、786−0細胞にほとんど影響を及ぼさなかった(図23D)。抗体PK16.3をvcMMAEと結合体化し、同一の実験においてIgGコントロールとして使用した。RXF−393細胞に対して約30%の非特異的増殖阻害効果が得られたが、他の3つの細胞株のいずれにも効果がなかった。
【0203】
これらのデータは、MMAEまたはMMAFなどの薬物と結合体化した抗Ten−M2 mAbが脳腫瘍および腎臓細胞癌の治療に非常に強力且つ選択的な薬剤であることを示す。
【0204】
参照による援用
本明細書中で引用した全ての引例(特許、特許出願、論文、およびテキストブックなどが含まれる)およびこれらが引用した参考文献は、既に引用していない範囲で、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0205】
等価物
上記明細書は、当業者が本発明を実施することができるために十分であると見なされる。上記説明および実施例は、本発明の一定の好ましい実施形態を詳述し、本発明が意図する最良の形態を記載している。しかし、上でいかに詳述しようとも、本発明を多数の方法で実施することができ、本発明を添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物にしたがって解釈すべきであると認識される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1A】図1は、XenoMouse(登録商標)の免疫化のために使用されたTen−M2抗原のアミノ酸配列の図である。
【図1B】図1は、XenoMouse(登録商標)の免疫化のために使用されたTen−M2抗原のアミノ酸配列の図である。
【図2】図2は、SNB−19細胞株(Ten−M2発現に陽性)およびIGROV−1(Ten−M2発現に陰性)へのTen−M2抗体の結合FACSプロフィールである。
【図3】SNB−19細胞上でのTen−M2抗体薬物結合体による増殖阻害を示す棒グラフである。
【図4】図4は、IGROV−1細胞上でのTen−M2抗体薬物結合体による増殖阻害を示す棒グラフである。
【図5】図5は、Ten−M2−7.1.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図5Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。図5Bは、図5Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。図5Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。図5Dは、図5Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図6】図6は、Ten−M2−7.2.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図6Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。図6Bは、図6Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)を示す。図6Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号7)を示す。図6Dは、図6Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図7】図7は、Ten−M2−7.3.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図7Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号9)を示す。図7Bは、図7Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号10)を示す。図7Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号11)を示す。図7Dは、図7Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図8】図8は、Ten−M2−7.7.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図8Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。図8Bは、図8Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号14)を示す。図8Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号15)を示す。図8Dは、図8Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号16)を示す。
【図9】図9は、Ten−M2−8.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図9Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。図9Bは、図9Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号18)を示す。図9Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。図9Dは、図9Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【図10】図10は、Ten−M2−8.6と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図10Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号21)を示す。図10Bは、図10Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号22)を示す。図10Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号23)を示す。図10Dは、図10Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号24)を示す。
【図11】図11は、Ten−M2−120と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図11Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号25)を示す。図11Bは、図11Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号26)を示す。図11Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号27)を示す。図11Dは、図11Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号28)を示す。
【図12】図12は、Ten−M2−140と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図12Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号29)を示す。図12Bは、図12Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号30)を示す。図12Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号31)を示す。図12Dは、図12Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号32)を示す。
【図13】図13は、Ten−M2−171と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図13Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号33)を示す。図13Bは、図13Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号34)を示す。図13Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号35)を示す。図13Dは、図13Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号36)を示す。
【図14】図14は、Ten−M2−179と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図14Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号37)を示す。図14Bは、図14Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号38)を示す。図14Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号39)を示す。図14Dは、図14Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号40)を示す。
【図15】図15は、Ten−M2−188と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図15Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号41)を示す。図15Bは、図15Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号42)を示す。図15Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号43)を示す。図15Dは、図15Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号44)を示す。
【図16】図16は、Ten−M2−199と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図16Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号45)を示す。図16Bは、図16Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号46)を示す。図16Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号47)を示す。図16Dは、図16Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号48)を示す。
【図17】図17は、Ten−M2−213と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図17Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号49)を示す。図17Bは、図17Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号50)を示す。図17Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号51)を示す。図17Dは、図17Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号52)を示す。
【図18】図18は、12種の抗Ten−M2抗体の重鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列のその各生殖細胞系配列とのアラインメントを示す表である。「−」は、生殖細胞系配列と同一であることを示す。体細胞高頻度変異に起因する生殖細胞系との相違を、各アミノ酸によって示す。免疫グロブリン中のCDR(CDR1、CDR2、CDR3)およびFR(FR1、FR2、およびFR3)を、各カラムの見出しに示す。
【図19】図19は、12種の抗Ten−M2抗体の軽鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列のその各生殖細胞系配列とのアラインメントを示す表である。「−」は、生殖細胞系配列と同一であることを示す。体細胞高頻度変異に起因する生殖細胞系との相違を、各アミノ酸によって示す。免疫グロブリン中のCDR(CDR1、CDR2、CDR3)およびFR(FR1、FR2、およびFR3)を、各カラムの見出しに示す。
【図20】図20は、抗Ten−M2抗体がp125 Ten−M2(レーンM2)タンパク質を特異的に認識することを示すウエスタンブロットである。
【図21】図21は、抗Ten−M2ウサギポリクローナル抗体(上のパネル)または抗Ten−M2モノクローナル抗体クローン140(下のパネル)を使用したIGROV、SK−OV−3、SNB−19、および786−0細胞中の内因性Ten−M2抗体を示すウエスタンブロットである。
【図22A】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Aは、乳癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の膜および細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。12サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22B】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Bは、卵巣癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22C】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Cは、腎臓癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の膜および細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。9サンプルのうち9サンプルが陽性に染色された。
【図22D】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Dは、結腸癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち7サンプルが陽性に染色された。
【図22E】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Eは、肺癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞および炎症細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22F】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Fは、黒色腫およびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞および内皮の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22G】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Gは、前立腺癌およびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞およびストロマの細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22H】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Hは、腎臓およびアイソタイプコントロールの正常な管状細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。
【図22I】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Iは、正常な前立腺サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける上皮およびストロマの膜および細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。
【図23−1】図23は、抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2MMAFのin vitro増殖阻害を示す棒グラフを示す。図23Aは、SNB−19脳腫瘍細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAb薬物結合体を示す棒グラフである。図23Bは、RXF−393腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Cは、RXF−631腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Dは、786−0腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。
【図23−2】図23は、抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2MMAFのin vitro増殖阻害を示す棒グラフを示す。図23Aは、SNB−19脳腫瘍細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAb薬物結合体を示す棒グラフである。図23Bは、RXF−393腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Cは、RXF−631腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Dは、786−0腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般に、Ten−M2タンパク質に結合する抗体およびこのような抗体の使用に関する。特に、抗原Ten−M2に指向する完全なヒトモノクローナル抗体を提供する。重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列およびこれらの免疫グロブリン分子を含むアミノ酸配列、特に、フレームワーク領域および/または相補決定領域(CDR)にわたる連続する重鎖および軽鎖配列に対応する配列(具体的には、FR1〜FR4またはCDR1〜CDR3)を提供する。このような免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたは他の細胞株も提供する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の説明
テネウリン(teneurin)またはhOdzとしても公知のヒトTen−M2遺伝子ファミリーは、短い細胞内N末端を含み、その後に膜貫通領域、8つのEGF様反復、細胞外側に巨大な球状ドメインが続くII型膜貫通タンパク質クラスである。Ten−M2タンパク質のEGF様反復は、二量体形成を媒介すると考えられている。マウスおよびニワトリのTen−M2タンパク質のホモログの発現パターンならびに神経突起伸長などの細胞移動のin vitroモデルにより、神経発達における役割が示唆されている。これは、細胞接着分子としての役割を示すヘパリンなどの細胞外基質タンパク質への結合も含み得る。
【0003】
Ten−M2タンパク質の構造および機能は以前に調査されている(例えば、非特許文献1)。タンパク質の種々の形態(例えば、M1、M2、M3、およびM4)は、一般に、2700〜2800アミノ酸長である。
【0004】
Ten−M2は、EGFドメインを介して二量体形成する。Ten−M2ファミリーは、PS2インテグリンと会合することが示されており、細胞外ドメインはヘパリンと相互作用することが公知である。
【非特許文献1】Oohashi et al.,J.Cell Biol.,145:563−577(1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
1つの実施形態では、細胞上のTen−M2タンパク質に選択的に結合し、Ten−M2機能に影響を及ぼす完全なヒト抗体を提供する。いくつかの実施形態では、完全なヒト抗体を患者に投与した場合、患者の癌転移を軽減する。1つの態様では、細胞に結合していないTen−M2タンパク質に選択的に結合する完全なヒト抗体を提供する。1つの実施形態では、抗体は、他のTen−Mホモログ(Ten−M3またはTen−M4など)に結合しない。
【0006】
1つの態様では、Ten−M2タンパク質に結合する結合体化した完全なヒト抗体を提供する。抗体に薬剤が結合されている場合、細胞への抗体の結合によって細胞に薬剤が送達される。1つの実施形態では、上記の結合体化した完全なヒト抗体は、Ten−M2タンパク質の細胞外区域(section)に結合する。別の実施形態では、抗体は、Ten−M2タンパク質のEGF様反復に結合する。別の実施形態では、抗体および結合体化した毒素を、Ten−M2タンパク質を発現する細胞によって内在化する。別の実施形態では、薬剤は細胞傷害薬である。別の実施形態では、薬剤はサポリンである。
【0007】
好ましい実施形態では、本明細書中に記載の抗体は、高親和性(Kd)でTen−M2に結合する。例えば、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12、10−13、10−14M未満または任意の範囲もしくはその間の値未満のKd(これらに限定されない)でTen−M2に結合することができるヒト抗体、ウサギ抗体、マウス抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体。親和性および/またはアビディティを、本明細書中に記載のKinExA(登録商標)および/またはBIACORE(登録商標)によって測定することができる。
【0008】
別の実施形態は、本明細書中に開示の完全なヒト抗体とTen−M2への結合を交差競合する(cross compete)抗体を含む。例えば、Ten−M2と中和することができる同一生殖細胞系のVHおよび/またはVL遺伝子由来の抗体は、標的上の同一の関連エピトープに結合することができ、互いに交差競合することができる。本発明の抗体を、競合ELISAおよび/または競合BIAcore研究で試験して、交差反応性を決定することができる。
【0009】
別の態様では、本明細書中に記載のモノクローナル抗体または抗原結合部分および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物を提供する。
【0010】
別の態様では、Ten−M2抗体およびTen−M2抗体を被験体に投与するための説明書を含むTen−M2関連障害を治療するためのキットを提供する。
【0011】
別の態様では、患者の癌転移を軽減する方法を提供する。本方法は、完全なヒト抗体を患者に投与する工程を含む。抗体は、Ten−M2に結合し、それにより、そのTen−M2タンパク質が第2のTen−M2タンパク質に結合して二重鎖を形成するのを回避する。それにより、抗体は患者の癌転移を軽減する。
【0012】
別の態様では、患者の癌転移リスクを軽減する方法を提供する。本方法は、完全なヒト抗体を患者に投与する工程を含む。抗体は、Ten−M2タンパク質が第2のTen−M2タンパク質と活性なTen−M2/Ten−M2二重鎖を形成するのを回避する様式で第1のTen−M2タンパク質に結合する。抗体は、第1のTen−M2タンパク質が依然として第2のTen−M2タンパク質に結合するように結合する。それにより、抗体は、患者の癌転移リスクを軽減する。
【0013】
別の態様では、患者の癌細胞を選択的に死滅させる方法を提供する。本方法は、完全なヒト抗体結合体を患者に投与する工程を含む。完全なヒト抗体結合体は、Ten−M2タンパク質および薬剤に結合することができる抗体を含む。薬剤は、癌細胞を死滅させる毒素または別の物質である。それにより、抗体結合体は癌細胞を選択的に死滅させる。薬剤はサポリンであり得る。
【0014】
別の態様では、患者の癌転移リスクを診断する方法を提供する。本方法は、細胞上のTen−M2タンパク質を選択的に結合する完全なヒト抗体結合体を患者に投与する工程を含む。抗体結合体は、Ten−M2に選択的に結合する抗体および標識を含む。本方法は、患者中の標識の存在を観察する工程をさらに含む。比較的多い量の標識は、比較的高い癌転移リスクを示し、比較的少ない量の標識は比較的低い癌転移リスクを示す。1つの実施形態では、標識は、緑色蛍光タンパク質である。
【0015】
異なる態様では、本発明は、細胞を抗Ten−M2抗体と接触させる工程と、Ten−M2の存在を検出する工程とを含む細胞中のTen−M2発現に関連する状態を診断する方法を含む。好ましい状態には、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、および脳腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
さらなる実施形態は、重鎖アミノ酸配列を含む単離抗体またはそのフラグメントを含む。他の実施形態は、重鎖核酸配列を含む単離抗体またはそのフラグメントを含む。
【0017】
1つの態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を有する単離抗体を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、および52からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を有する単離抗体を提供する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50からなる群から選択される重鎖アミノ酸配列を含み、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、および52からなる群から選択される軽鎖アミノ酸配列を含む単離抗体を提供する。
【0020】
1つの実施形態では、単離抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態では、単離抗体はキメラ抗体である。さらに別の実施形態では、単離抗体はヒト抗体である。
【0021】
別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、以下のCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD [1991],vols.1−3によって定義)を含む重鎖アミノ酸配列を含む単離抗体を提供する:(a)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50のアミノ酸26〜35の配列からなるCDR1、(b)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、および50のアミノ酸50〜66の配列からなるCDR2、および(c)配列番号10、18、もしくは42のアミノ酸99〜111、配列番号2のアミノ酸99〜105、配列番号14もしくは22のアミノ酸99〜114、配列番号6の99〜117、配列番号26もしくは30のアミノ酸99〜110、配列番号34もしくは38のアミノ酸99〜109、または配列番号46〜50のアミノ酸99〜112の配列からなるCDR3。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、Ten−M2に結合し、以下のCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD [1991],vols.1−3によって定義)を含む軽鎖アミノ酸配列を含む単離抗体を提供する:(a)配列番号4、16、36、もしくは40のいずれかのアミノ酸24〜39、配列番号8、24、28、もしくは32のいずれかのアミノ酸24〜35、配列番号12、44、48、52のアミノ酸24〜34、または配列番号20のアミノ酸24〜40の配列からなるCDR1、(b)配列番号4、16、36、もしくは40のいずれかのアミノ酸55〜61、配列番号8、24、28、もしくは32のいずれかのアミノ酸51〜57、配列番号12、44、48、もしくは52のアミノ酸50〜56、または配列番号20のアミノ酸56〜62の配列からなるCDR2、および(c)配列番号4のアミノ酸94〜101、配列番号8、24、28、または32のいずれかのアミノ酸90〜98、配列番号12のアミノ酸89〜96、配列番号16、36、または40のアミノ酸94〜102、配列番号20のアミノ酸95〜103、または配列番号44、48、または52のアミノ酸89〜97の配列からなるCDR3。
【0023】
これらの実施形態では、単離抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、および/またはヒト化抗体であり得ることが認識される。好ましくは、抗体はヒト抗体である。
【0024】
本発明の実施形態が抗体の任意の特定の形態に制限されないことも認識される。例えば、提供された抗体は、全長抗体(例えば、インタクトなヒトFc領域を有する)または抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、またはF(ab’)2)であり得る。さらに、抗体を、抗体を分泌するハイブリドーマまたは形質転換されたか抗体をコードする遺伝子でトランスフェクトされた組換え産生された細胞から製造することができる。
【0025】
本発明の他の実施形態は、本明細書中に記載の抗Ten−M2抗体のいずれかをコードする単離核酸分子、抗Ten−M2抗体をコードする単離核酸分子を有するベクター、および核酸分子で形質転換された宿主細胞を含む。さらに、本発明の1つの実施形態は、核酸分子が発現して抗体を産生する条件下で宿主細胞を培養し、その後に宿主細胞から抗体を回収することによって抗Ten−M2抗体を産生する方法である。
【0026】
なおさらなる実施形態では、本発明は、本明細書中に記載の単離ポリヌクレオチド分子を提供する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、他のTen−mファミリーメンバー(Ten−M3、Ten−M4が含まれる)に結合する完全なヒト抗体である。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、Ten−M2を発現する細胞を有効量の抗Ten−M2抗体で処置する工程を含む、Ten−M2の発現に関連する細胞増殖を阻害する方法を含む。別の態様では、本発明は、抗Ten−M2抗体を含む組成物および組成物を使用してTen−M2の過剰発現によって特徴づけられる癌を治療することができることを示す添付文書またはラベルを含む容器を含む製品を提供する。好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトに抗Ten−M2抗体を投与する。好ましい実施形態では、腫瘍または癌(肺癌、結腸癌、胃癌、腎臓癌、前立腺癌、もしくは卵巣癌またはNHL(非ホジキンリンパ腫)などの癌が含まれるがこれらに限定されない)を治療する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、有効量の抗Ten−M2抗体を患者に投与する工程を含む、患者におけるTen−M2発現に関連する疾患または状態を治療する方法を含む。患者は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者である。
【0030】
好ましい実施形態では、本方法は、腫瘍(肺、腎臓、脳、および卵巣の腫瘍ならびに一定の神経膠腫および非ホジキンリンパ腫(NHL)が含まれるがこれらに限定されない)の治療に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
好ましい実施形態の詳細な説明
一定の癌では、ヒトTen−Mタンパク質の伝令RNAレベルを上方制御することができる。したがって、Ten−M2タンパク質は、癌転移中の細胞移動で役割を果たし得る。ヒト癌における細胞移動およびTen−M2タンパク質発現における役割を示唆する発生研究を考慮すると、Ten−Mに対してデザインした療法は原発性腫瘍の転移を阻害することが可能である。したがって、Ten−M2タンパク質の二重鎖形成領域への抗体の投与により、癌転移を阻害することができる。
【0032】
さらに、Ten−M2タンパク質は、ニューロンの成長およびガイダンスに関与するようである。したがって、本発明の組成物および方法を、このような必要性が生じる状況におけるニューロンの成長および発達を促進または阻害するために適用することができる。例えば、Ten−Mタンパク質への抗体の結合によってニューロン成長を促進する本明細書中に開示の抗体を、損傷組織における神経再生などの状況で使用することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、Ten−M2タンパク質に結合する単離された、好ましくは完全なヒトのモノクローナル抗体の生成および同定に関する。いくつかの実施形態では、これらの抗体は、高親和性、高力価、またはその両方でTen−M2に結合することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、これらの抗体を毒素または類似の化合物に会合し、これを使用して毒素を特定の位置または細胞型に会合し、所望の位置での細胞型または細胞の死滅を促進する。いくつかの実施形態では、抗体を、高効率で内在化する。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗体は、Ten−M2タンパク質の有効な機能(例えば、シグナル伝達)を防止する。例えば、抗体は、タンパク質の二量体形成ドメイン(例えば、EGF様反復)への結合によってTen−M2タンパク質の別のTen−M2タンパク質との二量体形成を防止することができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、Ten−M2タンパク質のEGF様反復ドメインに結合する単離抗体またはこれらの抗体のフラグメントを提供する。
【0036】
本発明の実施形態はまた、これらの抗体を産生するための細胞を提供する。さらに、実施形態は、Ten−M2タンパク質の過小発現または過剰発現に関連する疾患の診断または治療としてのこれらの抗体の使用を提供する。
【0037】
本明細書中に記載の核酸ならびにそのフラグメントおよび変異型(variant)を使用して、例として、(a)組換えまたは異種遺伝子産物、(b)本明細書中に開示の核酸の検出および定量のためのプローブ、(c)配列テンプレート(これらに限定されない)としての対応するコードされたタンパク質、ポリペプチド、フラグメント、および変異型の生合成を指示することができる。このような用途を、以下により完全に記載する。
【0038】
定義:
他で定義しない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈中にて他で必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書中に提供した定義は、外部出典(参照として援用される引例に記載の定義が含まれる)由来の定義に優先する。
【0039】
一般に、本明細書中に記載の細胞培養および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法および技術は、種々の一般的およびより詳細な参考文献(本明細書中に引用され、本明細書を通して考察されているものなど)に記載のように、当該分野で周知であり、一般的に使用されている。例えば、Singleton et al,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養、および形質転換のための標準的な技術(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)を使用する。酵素反応および精製技術を、製造者の説明書にしたがって行うか、当該分野で一般に行われているように行うか、本明細書中に記載のように行う。化学合成、化学分析、薬学的調製、処方、および送達、ならびに患者の治療のための標準的な技術も使用する。
【0040】
本開示で使用されるように、他で示さない限り、以下の用語を、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0041】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、少量の特定の核酸片、RNA片および/またはDNA片を、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号に記載のように増幅する手順または技術をいう。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーをデザインすることができるように目的またはそれを超える領域の末端由来の配列情報が利用可能である必要がある。これらのプライマーは、増幅すべきテンプレートの反対の鎖と配列が同一であるか類似する。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅された材料の末端と一致し得る。PCRを使用して、全ゲノムDNAから特定のRNA配列、特定のDNA配列を増幅することができ、全細胞RNA、バクテリオファージ、またはプラスミド配列などから転写されたcDNAを増幅することができる。一般に、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987);Erlich,ed.,PCR Technology(Stockton Pres,NY,1989)を参照のこと。本明細書中で使用される場合、PCRは、プライマーとしての公知の核酸および特定の核酸片を増幅または生成するための核酸ポリメラーゼの使用を含む核酸試験サンプルを増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の一例であると見なされるが、それが唯一というわけではない。
【0042】
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は、同一の構造特性を有する糖タンパク質である。抗体が特定の抗原への結合特異性を示す一方で、免疫グロブリンには、抗体および抗原特異性を欠く他の抗体様分子が含まれる。後者のポリペプチド類は、例えば、リンパ系によって低レベルで産生され、骨髄腫によって高レベルで産生される。
【0043】
「未変性の抗体および免疫グロブリン」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖と連結する一方で、ジスルフィド結合数は異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的な間隔を有する鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)およびその後に多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)および他方の末端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインが重鎖の第1の定常ドメインと一列に並び、軽鎖可変ドメインが重鎖の可変ドメインと一列に並んでいる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている(Chothia et al.J.Mol.Biol.186:651(1985;NovotnyおよびHaber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:4592(1985);Chothia et al,Nature 342:877−883(1989))。
【0044】
本明細書中の用語「抗体」を、最も広い意味で使用し、所望の生物活性を示す限り、特に、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメント(FabおよびF(ab)’2が含まれる)を対象とする。任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてκおよびλと呼ばれる2つの明確に異なる型のうちの1つに割り当てることができる。組換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって結合フラグメントを産生する。以下により詳細に記載のように、結合フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、および単鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二機能性(bifunctional)」抗体以外の抗体は、それぞれその結合部位が同一であると理解される。
【0045】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクトな抗体を、異なる「クラス」に割り当てることができる。インタクトな抗体には以下の5つの主なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。これらのうちのいくつかを、「サブクラス」(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2)にさらに分類することができる。異なる抗体クラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元高次構造は周知である。
【0046】
本明細書中で使用される、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団(すなわち、この集団を含む各抗体が少量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である)から得た抗体をいう。モノクローナル抗体は、特異性が高く、1つの抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に指向する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されることなく合成することができるという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法によって抗体を産生する必要があると解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体を、Kohler et al,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製するか、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製することができる。「モノクローナル抗体」を、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0047】
「単離」抗体は、同定され、その自然環境の成分から単離および/または回収された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断または治療での使用を妨害するであろう物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、抗体を、(1)ローリー法、およびスピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)の使用による末端または内部のアミノ酸配列によって決定したところ、抗体の95重量%を超えるまでか、(3)還元または非還元条件下でのクーマーシーブルー、好ましくは銀染色を使用したSDS−PAGEによって均一になるまで精製する。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離抗体には、in situでの組換え細胞内の抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体を、少なくとも1つの精製工程によって調製する。
【0048】
「中和抗体」は、結合する標的抗原のエフェクター機能を排除するか有意に減少させることができる抗体分子である。したがって、「中和」Ten−M2抗体は、Ten−M2活性などのエフェクター機能を排除または有意に減少させることができる。1つの実施形態では、中和抗体は、エフェクター機能を、1〜10、10〜20、20〜30、30〜50、50〜70、70〜80、80〜90、90〜95、95〜99、99〜100%減少させる。1つの実施形態では、Ten−M2抗体は、いくらかの程度で、2つのTen−M2タンパク質の二量体形成を阻害することによって機能を阻害する。別の実施形態では、Ten−M2抗体は、いくらかの程度で二量体形成したTen−M2タンパク質の別のタンパク質との会合を阻害することによって機能を阻害する。1つの実施形態では、中和抗体は、第2のTen−M2タンパク質に結合するTen−M2タンパク質上の位置への直接結合によって二量体形成を阻害する。別の実施形態では、中和抗体はTen−M2タンパク質の一部に結合する一方で、抗体の一部または抗体に会合しているものがTen−M2タンパク質の二量体形成を遮断する。別の実施形態では、抗体がTen−M2タンパク質に結合してタンパク質の高次構造を変化させ、二量体が生じるのを妨害する。
【0049】
別の実施形態では、Ten−M2抗体は、実際に、二量体形成の可能性を増加させる。別の実施形態では、抗体は活性化抗体であり、抗体の結合により、別のTen−M2タンパク質と二量体形成したかのようにTen−M2タンパク質を有効に作用させるように機能する。
【0050】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」および「ADCC」は、IgFc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、その後に標的細胞を溶解する細胞媒介性反応をいう。主なADCC媒介細胞(NK細胞)はFcγRIIIのみを発現するのに対して、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464頁の表3にまとめられている。目的分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号などに記載のin vitro ADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的分子のADCC活性を、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656(1988)などに開示の動物モデルにおいてin vivoで評価することができる。
【0051】
用語「可変」は、一定の可変ドメイン部分の配列が抗体間で非常に異なり、これを各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用するという事実をいう。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。可変性は、相補性決定領域(CDR)またはIg軽鎖および重鎖可変ドメイン中の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。より高度に保存された可変ドメイン部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。未変性の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれFR領域を含み、これは主にβシート立体配置を使用し、3つのCDRによって連結してループ連結を形成し、場合によっては、βシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域によって極めて近接して互いに保持され、他の鎖由来のCDRは抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能(抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与など)を示す。
【0052】
酵素、パパインでの抗体の消化により、「Fab」フラグメントおよび「Fc」フラグメントとしても公知の2つの同一の抗原結合フラグメントが得られ、これらは抗原結合活性を持たないが結晶化能力を有する。酵素ペプシンでの抗体の消化により、F(ab’)2フラグメントが得られ、これは、抗体分子の2つのアームが連結したままであり、2つの抗原結合部位を含む。F(ab’)2フラグメントは、抗原を架橋する能力を有する。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「Fv」は、抗原認識部位および抗原結合部位の両方が保持された最小の抗体フラグメントをいう。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「Fab」は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖のCH1ドメインを含む抗体のフラグメントをいう。
【0055】
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。2鎖Fv種では、この領域は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが非共有結合で強固に結合した二量体からなる。単鎖Fv種では、1つの重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを、軽鎖および重鎖が2鎖Fv種に類似の「二量体」構造で結合することができるように可動性ペプチドリンカーによって共有結合することができる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体表面上に抗原結合部位を定義するのはこの立体配置においてである。集合的に、6つのCDRは抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、1つの可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえも抗原を認識して結合する能力を有するが、完全な結合部位よりも親和性が低い。
【0056】
本明細書中で使用する場合、用語「超可変領域」は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基をいう。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜62(L2)、および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31〜55(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))および/または「超可変ループ」(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、53〜55(L2)、および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk J.Mol Biol.196:901−917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書中に定義の超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0057】
本明細書中で使用する場合、用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特定のリガンドと接触してその特異性を決定する免疫受容体部分をいう。免疫受容体のCDRは、受容体にその多様性を付与する受容体タンパク質の最も可変性の高い部分であり、受容体の可変ドメインの遠位末端に6つのループを有し、受容体の2つの各可変ドメイン由来の3つのループを有する。
【0058】
用語「エピトープ」を、タンパク質抗原上の抗体の結合部位をいうために使用する。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸および糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団からなり、通常、特異的な三次元特性および特異的荷電特性を有する。抗体は、解離定数が1μM以下、好ましくは100nM以下、最も好ましくは10nM以下の場合に抗原に結合するといわれる。解離定数(「KD」)の増加またはより高い解離定数は、エピトープと抗体との間の親和性がより低いことを意味する。言い換えると、抗体およびエピトープは結合または結合状態の維持を好む傾向がより低いことを意味する。解離定数の減少または(of)より低い解離定数は、エピトープと抗体との間で親和性がより高いことを意味する。言い換えると、抗体およびエピトープが結合するか結合状態を維持する可能性がより高い。一定量「に過ぎない」KDの抗体は、抗体が所与の親和性(すなわち、より強い(または強固な)親和性)でエピトープに結合することを意味する。
【0059】
KDがエピトープと抗体との結合特性を説明する一方で、「力価」は抗体機能についての抗体自体の有効性を説明する。比較的低いKDは自動的に高力価を意味しない。したがって、抗体は比較的低いKDおよび高い力価(例えば、十分に結合して機能を強く変化させる)、比較的高いKDおよび高い力価(例えば、十分に結合しないが機能に強い影響を及ぼす)、比較的低いKDおよび低い力価(例えば、十分であるが、特定の機能を変化させるのに有効でない様式で結合する)、または比較的高いKDおよび低い力価(例えば、単に標的に十分に結合しない)を有し得る。1つの実施形態では、高力価は、低濃度の抗体で阻害レベルが高いことを意味する。1つの実施形態では、抗体は、そのIC50が低い場合(例えば、1300〜600、600〜200、200〜130、130〜120、12〜50、50〜10、10〜1、または1未満のpM)、強力であるか力価が高い。
【0060】
「実質的に」は、他で特定しない限り、別の用語と組み合わせて、値が任意の量の範囲内で変化し得ることであって、この任意の量が実施形態の作製または実施中に起こり得る測定時のエラーに寄与し得ることを意味する。「有意に」は、特許請求の範囲に記載の発明がその目的の用途のために機能するのに十分である限り、値が変化し得ることを意味する。
【0061】
抗体に関する用語「選択的に結合する」は、抗体が1つの物質のみに結合することを意味しない。むしろ、第1の物質に対する抗体のKDが第2の物質に対するKDよりも低いことを示す。エピトープに排他的に結合する抗体は、1つのエピトープのみに結合する。
【0062】
本明細書中で使用される、用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、変異型に関して以下にさらに記載の天然に存在するLアミノ酸またはDアミノ酸をいう。一般的に使用されるアミノ酸の一文字表記および三文字表記を、本明細書中で使用する(Bruce Alberts et al.,Molecular Biology of the Cell,Garland Publishing,Inc.,New York(3d ed.1994))。
【0063】
用語「mAb」は、モノクローナル抗体をいう。
【0064】
用語「XENOMOUSE(登録商標)」は、Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)(本明細書中で参考として援用される)に記載のヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖細胞系の立体配置フラグメントを含むように操作されたマウス株をいう。XENOMOUSE(登録商標)株は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)から利用可能である。
【0065】
用語「XENOMAX(登録商標)」は、XENOMOUSE(登録商標)動物を使用した場合、「選択されたリンパ球抗体法(Selected Lymphocyte Antibody Method)」(Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,i93:7843−7848(1996))の使用をいう。
【0066】
用語「SLAM(登録商標)」は、「選択されたリンパ球抗体法」(Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,i93:7843−7848(1996)およびSchrader、米国特許第5,627,052号(共にその全体が本明細書中で参考として援用される)をいう。
【0067】
用語「疾患」、「病状」、および「障害」は、細胞、身体機能、系、または器官の中断、停止、または障害が起こった細胞または哺乳動物全体の生理学的状態をいう。
【0068】
用語「症状」は、ある障害に一般的な特徴であるかどうかにかかわらず、該障害の任意の物理的または認められる徴候を意味する。用語「症状」は、全てのこのような徴候またはその任意の一部を意味し得る。
【0069】
用語「処置する」または「処置」は、望ましくない生理学的変化または障害(癌の発症または拡大など)を防止するか遅延させる(減少させる)ことを目的とする治療上の処置および予防または防止手段をいう。本発明の目的のために、有利または所望の臨床結果には、症状の緩和、疾患範囲の縮小、状態の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患の進行の遅延または減速、病状の緩和または待期的緩和(palliation)、寛解(部分的または全体)(検出可能かどうかにかかわらず)が含まれるがこれらに限定されない。「処置」はまた、治療を受けなかった場合の予想される寿命と比較した場合の延命を意味し得る。治療を必要とする者は、状態または障害を既に罹患した者および状態または障害を有する傾向のある者または状態または障害を防止すべき者である。疾患または症状と組み合わせて使用する場合、用語「阻害する」は、抗体が疾患または症状を軽減または消失させることができることを意味し得る。
【0070】
用語「患者」には、ヒトおよび脊椎動物の被験体が含まれる。
【0071】
処置を目的とした「投与」は、患者への送達を意味する。制限されない例として、このような送達は、静脈内、腹腔内、吸入、筋肉内、皮下、経口、局所、経皮、または外科的であり得る。
【0072】
処置を目的とした「治療有効量」は、患者の状態および/または症状の観察可能な変化がその投与(単独または他の処置と組み合わせた)に起因し得るような量を意味する。
【0073】
処置を目的とした「薬学的に許容可能なビヒクル」は、患者に投与することができる物理的実施形態である。薬学的に許容可能なビヒクルは、丸薬、カプセル、カプレット、錠剤、経口投与用液体、注射用液体、スプレー、エアロゾル、ロゼンジ、栄養補助食品、クリーム、ローション、オイル、溶液、ペースト、粉末、蒸気、または液体であり得るがこれらに限定されない。薬学的に許容可能なビヒクルの一例は、緩衝化等張液(リン酸緩衝化生理食塩水(PBS))である。
【0074】
処置を目的とした「中和する」は、化学的および/または生物学的活性を部分的または完全に抑制することを意味する。
【0075】
処置を目的とした「下方制御」は、特定の標的組成物レベルを低下させることを意味する。
【0076】
処置を目的とした「哺乳動物」は、哺乳動物(ヒト、家畜、動物園の動物、競技用動物、またはペット(サル、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなど)が含まれる)として分類される任意の動物をいう。
【0077】
本明細書中で言及される、用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10塩基長のヌクレオチド(リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか)の重合形態またはいずれかのヌクレオチド型の修飾形態を意味する。この用語には、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態が含まれる。
【0078】
本明細書中で使用される、用語「単離ポリヌクレオチド」は、ゲノム起源、cDNA起源、合成起源、またはいくつかのその組み合わせのポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源によって、「単離ポリヌクレオチド」は、(1)「単離ポリヌクレオチド」が天然で見出されるポリヌクレオチドの全部または一部と会合しないか、(2)天然に連結しないポリヌクレオチドと作動可能に連結するか、(3)より大きな配列の一部として天然に存在しない。
【0079】
本明細書中で言及される、用語「オリゴヌクレオチド」には、天然に存在するオリゴヌクレオチドならびに天然に存在するオリゴヌクレオチド結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合によって互いに連結した修飾ヌクレオチドが含まれる。オリゴヌクレオチドは、一般に、200塩基または200より少ない塩基を含むポリヌクレオチド小集団である。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、10〜60塩基長、最も好ましくは、12、13、14、15、16、17、18、19、または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、通常、一本鎖(プローブのため)であるが、オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築で使用するために二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかであり得る。
【0080】
本明細書中で使用される、用語「天然に存在するヌクレオチド」には、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドが含まれる。本明細書中で言及される、用語「修飾ヌクレオチド」には、修飾されているか置換された糖基などを有するヌクレオチドが含まれる。本明細書中で言及される、用語「オリゴヌクレオチド結合」には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、およびホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド結合が含まれる。例えば、LaPlanche et al.Nucl Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984);Stein et al.Nucl. Acids Res.16:3209(1988);Zon et al.Anti−Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al.Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87−108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.、米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman Chemical Reviews 90:543(1990)(その開示が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。オリゴヌクレオチドには、必要に応じて、検出用標識が含まれ得る。
【0081】
本明細書中で言及される、用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能且つ特異的に結合することを意味する。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびそのフラグメントは、かなりの量の非特異的核酸への検出可能な結合を最小にするハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を使用して、当該分野で公知および本明細書中で考察される選択的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。一般に、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、または抗体フラグメントと目的の核酸配列との間の核酸配列の相同性は、少なくとも80%、より典型的には、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%に相同性が増加することが好ましい。
【0082】
本明細書中で使用される、用語「調節配列」は、結合するコード配列を発現およびプロセシングするために必要であるポリヌクレオチド配列をいう。調節配列の性質は、宿主生物に応じて異なる。原核生物では、このような調節配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列が含まれる。真核生物では、一般に、このような調節配列には、プロモーターおよび転写終結配列が含まれる。用語「調節配列」は、その存在が発現およびプロセシングに必須である最低限の全ての成分が含まれ、その存在が有利であるさらなる成分(例えば、リーダー配列および融合パートナー配列)も含まれ得ることが意図される。
【0083】
本明細書中で使用される、用語「作動可能に連結される」は、成分が意図する様式で機能することが可能になる関係であるように説明される成分の位置をいう。例えば、コード配列に「作動可能に連結された」調節配列を、調節配列と適合する条件下でコード配列の発現が達成されるような様式で連結する。
【0084】
本明細書中で言及される、用語「単離タンパク質」は、その起源または誘導源によって、「単離タンパク質」が、(1)天然で見出されたタンパク質に会合しないか、(2)同一供給源由来の他のタンパク質を含まないか(例えば、マウスタンパク質を含まない)、(3)異なる種由来の細胞によって発現するか、(4)天然に存在しないcDNA、組換えRNA、合成起源、またはそのいくつかの組み合わせのタンパク質を意味する。
【0085】
用語「ポリペプチド」を、未変性のタンパク質、フラグメント、ポリペプチド配列のアナログをいうための一般名として本明細書中で使用する。したがって、未変性のタンパク質、フラグメント、およびアナログは、ポリペプチド属の種である。本発明の好ましいポリペプチドは、例えば、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、および38によって示されるヒト重鎖免疫グロブリン分子、例えば、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36、および40によって示されるヒトκ軽鎖免疫グロブリン分子、重鎖免疫グロブリン分子と軽鎖免疫グロブリン分子(κ軽鎖免疫グロブリン分子など)との組み合わせおよびその逆によって形成された抗体分子ならびにそのフラグメントおよびアナログを含む。
【0086】
他で明記しない限り、一本鎖ポリペプチド配列の左側の末端は5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側の方向は5’方向をいう。未完成RNA転写物の5’→3’方向への付加を転写方向といい、RNAと同一の配列を有し、且つRNA転写物の5’末端に対して5’であるDNA鎖上の配列領域を「上流配列」といい、RNAと同一の配列を有し、且つRNA転写物の3’末端に対して3’であるDNA鎖上の配列領域を「下流配列」という。
【0087】
本明細書中で使用される場合、20種の従来のアミノ酸およびその略語は、従来の用法に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition,E.S.GolubおよびD.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。20種の従来のアミノ酸、非天然アミノ酸(α−など)、α二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)はまた、本発明のポリペプチドに適切な成分であり得る。非従来型のアミノ酸の例には、以下が含まれる:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書中で使用されるポリペプチドの表記では、標準的な用法および慣習に従って、左側方向はアミノ末端方向であり、右側方向はカルボキシ末端方向である。
【0088】
用語「〜に対応する」は、ポリヌクレオチド配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部もしくは一部に相同である(すなわち、同一である(厳密には進化的に関連しない))こと、またはポリペプチド配列が基準ポリペプチド配列と同一であることを意味するために本明細書中で使用される。
【0089】
対照的に、用語「〜と相補的である」は、相補配列が基準ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同であることを意味するために本明細書中で使用される。例として、ヌクレオチド配列「TATAC」は、基準配列「TATAC」に対応し、基準配列「GTATA」に相補的である。
【0090】
以下の用語は、2つまたは2つよりも多いポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列の関係を説明するために使用される用語の例である:「基準配列」、「比較ウィンドウ(comparison window)」、「配列同一性」、「配列同一率」、「実質的同一性」、および「相同性」。「基準配列」は、配列比較の基本として使用される定義された配列である。基準配列は、例えば、全長cDNAのセグメントまたは配列表に示した遺伝子配列としてのより大きな配列の小集団であり得るか、完全なcDNAまたは遺伝子配列を含み得る。一般に、基準配列は、少なくとも18ヌクレオチド長または6アミノ酸長、頻繁には24ヌクレオチド長または8アミノ酸長、しばしば少なくとも48ヌクレオチド長または16アミノ酸長である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、それぞれ、(1)2分子間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含むことができ、(2)2ポリヌクレオチド配列間または2アミノ酸配列間で異なる配列をさらに含み得るので、2つ(または2つより多い)分子の間の配列比較を、典型的には、配列類似性の局所領域を識別および比較するために「比較ウィンドウ」にわたって2分子の配列を比較することによって行う。
【0091】
本明細書中で使用される、「比較ウィンドウ」は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を少なくとも18個の連続するヌクレオチドまたは6個のアミノ酸配列の基準配列と比較する少なくとも約18個の連続するヌクレオチド部分または6個のアミノ酸の概念セグメントをいい、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列部分には、2配列の至適なアラインメントのために基準配列(付加や欠失を含まない)と比較して20%または20%未満の付加、欠失、および置換など(すなわち、ギャップ)が含まれ得る。配列ウィンドウのアラインメントのための配列の至適なアラインメントを、SmithおよびWaterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman Proc.Natl Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行プログラム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、GENEWORKS(商標)、またはMACVECTOR(登録商標)ソフトウェアパッケージ)、または目視(inspection)によって行うことができ、種々の方法によって得られた最適なアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたる最も高い相同率が得られる)を選択する。
【0092】
用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が比較ウィンドウにわたって同一である(すなわち、ヌクレオチド毎または残基毎を基本とする)ことを意味する。用語「配列同一率」を、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントした配列を比較し、両配列中に同一のヌクレオチド塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)またはアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して適合位置数を得て、適合位置数を比較ウィンドウ中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、この結果に100を乗じて配列同一率を得ることによって計算する。本明細書中で使用される、用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ、頻繁に、少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置のウィンドウにわたって基準配列と比較した場合、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特徴を示し、この配列同一率を、基準配列と比較ウィンドウにわたって基準配列の合計20%または20%未満の欠失または付加を含み得る配列との比較によって計算する。基準配列は、より大きな配列の小集団であり得る。
【0093】
2つのアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、その配列間で部分的または完全に同一である場合、「相同」である。例えば、85%相同は、最大に適合するように2つの配列をアラインメントした場合に85%のアミノ酸が同一であることを意味する。最大に適合させるためのギャップ(2つの配列のいずれかが適合する)が可能である。5または5未満のギャップ長が好ましく、2または2未満がより好ましい。あるいは、および好ましくは、2つのタンパク質配列(または少なくとも約30アミノ酸長のポリペプチド由来のポリペプチド配列)は、変異データ行列および6または6を超えるギャップペナルティを用いたプログラムALIGNを使用して5(標準偏差単位)を超えるアラインメントスコアを有する場合、相同(本明細書中でこの用語を使用する場合)である。Dayhoff,M.O.,in Atlas of Protein Sequence and Structure,pp.101−110(Volume 5,National Biomedical Research Foundation(1972))およびこの巻の増補(pp.1−10)を参照のこと。2つの配列またはその一部は、より好ましくは、ALIGNプログラムを使用して最適にアラインメントした場合、そのアミノ酸が50%以上同一である場合に相同である。
【0094】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的同一性」は、デフォルトギャップウェイトを使用してプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントした場合、2つのペプチド配列が少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、および最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換と異なる。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族水酸基の側鎖を有するアミノ酸群はセリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0095】
本明細書中で考察されるように、アミノ酸配列の変動を少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%に維持する場合、抗体分子または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の小さな変動が本発明に含まれることが意図される。特に、保存的アミノ酸置換が意図される。保存的置換は、その側鎖に関連するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。遺伝子コードされたアミノ酸は、一般に、以下のファミリーに分類される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、ならびに(4)無電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは、以下である。セリンおよびトレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーである。アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリーである。アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは脂肪族ファミリーである。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンからイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸からグルタミン酸、トレオニンからセリンへの単独の置換、またはアミノ酸から構造的に関連するアミノ酸への類似の置換が、特に、置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合に、得られた分子の結合または性質に大きな影響を及ぼさないと予想するのは妥当である。アミノ酸の変化によって機能的ペプチドが得られるかどうかを、ポリペプチド誘導体の特定の活性のアッセイによって容易に決定することができる。アッセイを、本明細書中に詳述する。当業者は、抗体分子または免疫グロブリン分子のフラグメントまたはアナログを容易に調製することができる。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシル末端は、機能ドメインの境界付近に生じる。構造ドメインおよび機能ドメインを、ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列のデータと公的または独自の配列データベースとの比較によって同定することができる。好ましくは、コンピュータ化された比較方法を使用して、公知の構造および/または機能の他のタンパク質中で起こる配列モチーフまたは予想されるタンパク質の高次構造ドメインを同定する。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列の同定方法は公知である。Bowie et al.Science 253:164(1991)。上記の例は、当業者が本発明の構造ドメインおよび機能ドメインを定義するために使用することができる配列モチーフおよび構造の高次構造を認識することができることを証明している。
【0096】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させる置換、(2)酸化に対する感受性を減少させる置換、(3)タンパク質複合体形成に対する結合親和性を変化させる置換、(4)結合親和性を変化させる置換、(5)このようなアナログの他の物理化学的または機能的性質を付与するか改変する置換である。アナログには、天然に存在するペプチド配列以外の配列の種々のムテインが含まれる。例えば、天然に存在する配列(好ましくは、分子内接触するドメインの外側のポリペプチドの一部)中に1つまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を行うことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造の特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸が親配列で起こるらせんを破壊する、または親配列を特徴づける他の二次構造型を破壊する傾向があるべきではない)。当該分野で認識されているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));およびThornton et at.Nature 354:105(1991)(それぞれ本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0097】
本明細書中で使用される、用語「ポリペプチドフラグメント」は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端が欠失しているが、残りのアミノ酸配列は、例えば、全長cDNA配列から推定された天然に存在する配列中の対応する位置と同一であるポリペプチドをいう。フラグメントは、典型的には、少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長である。他の実施形態では、ポリペプチドフラグメントは、少なくとも25アミノ酸長、より好ましくは少なくとも50アミノ酸長、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0098】
一般に、製薬工業では、テンプレートペプチドの性質に類似の性質を有する非ペプチド薬としてペプチドアナログを使用する。これらの非ペプチド化合物型を、「ペプチド模倣物(peptide mimeticsまたはpeptidomimetics)」という。Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);およびEvans et al.J.Med.Chem.30:1229(1987)(本明細書中で参考として援用される)。このような化合物を、しばしば、コンピュータ化された分子モデリングを活用して開発する。治療に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣物を使用して、等価な治療効果または予防効果を得ることができる。一般に、ペプチド模倣物は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、当該分野で周知の方法によって、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−CH2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−−CH2SO−−からなる群から選択される結合と任意選択的に置換された1つまたは複数のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の同型のD−アミノ酸との合成的置換(例えば、L−リジンのD−リジンとの置換)を使用して、より安定なペプチドを生成することができる。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列の異形(variation)を含む拘束されたペプチドを、当該分野で周知の方法(RizoおよびGierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)(本明細書中で参考として援用される))、例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド結合を形成することができる内部システイン残基の付加によって生成することができる。
【0099】
本明細書中で使用される、用語「標識」または「標識された」は、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込みによる検出可能なマーカーの組み込みまたは印をつけたアビジン(例えば、光学的方法または比色分析法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチへの結合をいう。一定の状況では、標識またはマーカーは、治療マーカーでもあり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質の種々の標識方法が当該分野で公知であり、これらを使用することができる。ポリペプチド用標識の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光体、ビオチニル基、二次受容体によって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、種々の長さのスペーサーアームによって標識を結合して潜在的な立体障害を減少させる。
【0100】
本明細書中で使用される、用語「薬学的薬剤(Pharmaceutical agent)または薬物」は、患者に適切に投与した場合に所望の治療効果を誘導することができる化合物または組成物をいう。本明細書中の他の化学用語を、例えばThe McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw−Hill,San Francisco(1985))(本明細書中で参考として援用される)に例示されるような、当該分野における従来の用法に従って使用する。
【0101】
「薬剤」は、哺乳動物(ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、マウス、イヌ、ネコ、または任意の他の温血動物が含まれるが、これらに限定されない)の活動期の疾患の治療、予防的治療、または診断で有用な物質をいう。例えば、薬剤は、放射性同位体、毒素、薬学的薬剤、オリゴヌクレオチド、細胞傷害薬、組換えタンパク質、抗体フラグメント、抗癌薬、抗接着薬、抗血栓症薬、抗再狭窄薬、抗自己免疫薬、抗凝固薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、および抗炎症薬からなる群から選択される。このような薬剤の他の例には、抗ウイルス薬(アシクロビル、ガンシクロビル、およびジドブジンが含まれる);抗血栓症薬/再狭窄薬剤(シロスタゾール、ダルテパリンナトリウム、レビパリンナトリウム、およびアスピリンが含まれる);抗炎症薬(ザルトプロフェン、プラノプロフェン、ドロキシカム、アセチルサリチル酸17、ジクロフェナク、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、スリンダク、ナプロキセン、アムトレメチン(amtolmetin)、セレコキシブ、インドメタシン、ロフェコキシブ、およびニメスリドが含まれる);抗自己免疫薬(レフルノミド、デニロイキンジフチトクス、スブレウム(subreum)、WinRhoSDF、デフィブロチド、およびシクロホスファミドが含まれる);および抗接着薬/抗凝集薬(リマプロスト、クロルクロメン(clorcromene)、およびヒアルロン酸が含まれるが、これらに限定されない。用語「薬剤」は、所望の方法で標的細胞または標的領域に影響を及ぼし得る当業者に公知であるか本明細書中に開示の任意の化合物を含むことを意味する。薬剤には、標識および種々の治療薬も含まれ得る。
【0102】
本明細書中で使用される、用語「実質的に純粋な」は、目的の種(obeject species)が存在する種のうちで主な種であり(モルに基づいて組成物中の任意の他のそれぞれの種よりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製された画分は、目的の種が存在する全ての高分子種の少なくとも50%(モルベースで)含まれる組成物であることを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子種の約80%超、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%超含まれる。最も好ましくは、目的の種を、本質的に均一になるまで(従来の検出方法によって組成物中に夾雑種を検出することができなくなるまで)精製し、組成物は本質的に1つの高分子種からなる。
【0103】
用語「Ten−Mタンパク質」は、テネウリン(teneurin)またはhOdzとしても公知のTen−M遺伝子ファミリー由来のタンパク質を示す。Ten−Mタンパク質は、短い細胞内N末端を含み、その後に膜貫通領域、8つのEGF様反復(上皮成長因子様反復)、細胞外側に巨大な球状ドメインが続くII型膜貫通タンパク質クラスである。Ten−M2は、このタンパク質ファミリーの特定のメンバーを示す。Ten−M2は、CG50426としても公知である。開示の抗体の調製で使用されるTen−M2タンパク質の単離区域を、図1Aの配列番号53(アミノ酸400〜1226)および図1Bの配列番号54(アミノ酸400〜2733)に示す。当業者に認識され、以下により詳細に記載されるように、Ten−M2の他の区域を使用して、本明細書中に記載の様式と同一の様式で抗体を生成することができる。
【0104】
さらに、当業者によって認識されるように、本明細書および本開示を容易に適用して、種々のTen−Mファミリーの種々のメンバーに指向する抗体を作製および使用することができるが、簡潔にするために、本発明の例としてTen−M2タンパク質を考察する。ラット(Otaki et al.,Dev.Biol.212,165−1813(1999));ニワトリ(Minet et al.,J.Cell Sci. 112,2019−2032(1999);Rubin et al.,R.,Dev.Biol.216,195−209(1999);Tucker et al.,Mech.Dev.98,187−191(2000);Tucker et al.,Dev.Dyn.220,27−39(2001))、ヒト(Brandau et al.,Hum.Mol.Genet.8,2407−2413(1999);Minet et al.,Gene 257,87−97(2000))、ゼブラフィッシュ(Mieda et al.,Mech.Dev.87,223−227(1999))、および線虫(Wilson et al.,Nature 368,32−38(1994))のTen−Mタンパク質ファミリーのメンバーが記載されている。
【0105】
Ten−M2抗体
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、癌細胞におけるTenM2/Ten−M2二重鎖の形成を防止し、それにより、癌が別の位置に拡大する可能性を軽減することができる。当業者に認識されているように、抗体は、多数の方法でTenM2/Ten−M2二重鎖形成を防止または減少させることができる。例えば、抗体は、Ten−M2タンパク質のTenM2/Ten−M2二重鎖形成のための結合に関与する区分(例えば、EGF様反復)に直接結合し、それにより、2つのTen−M2タンパク質の相互の有効な結合を防止することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、二重鎖形成に関与するEGF様反復に直接結合する。任意の1つまたは複数のEGF様反復(例えば、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、および第8の反復が含まれる)に結合するための抗体を作製することができる。したがって、1つの実施形態では、抗体は、第2および第4のEGF様反復に結合することができる。これらの特定の区域に結合する完全なヒト抗体を、本明細書中に開示の方法および当業者の知識によって生成することができる。あるいは、抗体は別の位置に結合することができ、抗体の非結合区域はタンパク質の2つの半分(two halves)の結合を立体的に妨害することができる。あるいは、抗体はTen−M2タンパク質上のある位置に結合してタンパク質の高次構造の変化を誘導し、二重鎖形成を防止することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体は2つのTen−M2タンパク質を結合させるが、任意の機能的シグナル伝達が起こるのを防止するような方法で結合する。いくつかの実施形態では、これは二重鎖形成に直接関与するTen−M2タンパク質区分の一部のみ(例えば、1つのEGF様反復)に結合する抗体を含み、そうでなければ抗体は2つのTen−M2タンパク質の結合に干渉しない。各抗体が2つのTen−M2タンパク質に結合することができるので、この特定の抗体は、二重鎖を形成するために利用可能なTen−M2タンパク質数を減少させる利点を有する。同様に、いくつかの実施形態では、2つのTen−M2タンパク質に一度に結合する抗体もこの利点を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、TenM2/Ten−M2二重鎖の解離を実際に促進する。他の実施形態では、抗体は、TenM2/Ten−M2二重鎖の形成を促進する。このような抗体を、Ten−M2タンパク質またはその二重鎖の特定の位置に対して抗体を惹起することによって作製することができ、その結果、Ten−M2タンパク質またはその二重鎖に結合した場合、抗体がTen−M2タンパク質の他の状態(個別または二重鎖形成状態)の安定化に役立つ。
【0108】
当業者は、1)本教示、2)Ten−M2タンパク質からの論理的な選択(例えば、EGF様反復lの1つ、いくつか、または全て)、3)標準的な抗体結合アッセイ(例えば、BIACORE(商標)デバイスにおける表面プラズモン共鳴)、および4)機能的二重鎖形成アッセイ(例えば、下記に類似の細胞移動アッセイ)と組み合わせて、上記抗体を容易に生成し、同定し、単離し、使用することができることを認識する。
【0109】
いくつかの実施形態では、Ten−M2に対する抗体は、種々のTen−M形態および種々のTen−M2形態に選択性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、Ten−M2に対する抗体は、Ten−Mの他の形態(例えば、Ten−M4、Ten−M1、およびTen−M3)よりもTen−M2に強固に結合する。例えば、抗体は、他のTen−Mタンパク質の任意の組み合わせの1つよりもTen−M2に1〜5倍、5〜10倍、10〜20倍、20〜30倍、30〜40倍、または40〜50倍強固に結合することができる。他の実施形態では、抗体は、細胞に会合したTen−Mタンパク質および細胞から解離したTen−Mタンパク質(特に、Ten−M2)に選択性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、細胞表面に付着するTen−M2タンパク質により強固に結合することができる。他の実施形態では、抗体は、細胞から除去されたか分泌または切断されるTen−M2タンパク質により強固に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、等しい強度で両方の形態に結合することができる。他の実施形態では、抗体は、Ten−M2タンパク質の1つの形態のみに有効に結合することができる。選択性は、一方の形態について他方の形態と比較して、任意の量(2〜10倍、10〜20倍、20〜30倍、30〜40倍、40〜50倍または50倍を超える選択性)であり得る。どのようにしてこのような選択的抗体を生成し、このような選択性を決定するのかについての例を、以下の実施例に示す。
【0110】
他の実施形態では、Ten−M2に結合する抗体を、いくつかの薬剤型または化合物型に会合する。薬剤の抗体との会合により、薬剤または化合物がTen−M2を発現する細胞に送達することが可能である。認められるように、Ten−M2は癌細胞中で発現するので、この組み合わせは細胞傷害薬または治療薬などの薬剤を癌細胞に送達することが可能である。薬剤を、種々の方法で抗体に会合することができる。例えば、薬剤を抗体に直接連結するか、リンカー(切断可能なリンカーであり得る)を介して付着させるか、二次抗体を介して会合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、他の抗体または薬剤による抗体の結合を可能にするためのエピトープを含む。当業者に認識されるように、薬剤を毒素に会合させる正確な様式はデバイスまたは方法に重要ではない。これらの組成物およびその使用方法に関連するこの問題および他の問題を、特に、以下の「他の治療薬のデザインおよび生成」というタイトルの項でより詳細に考察する。
【0111】
抗体の構造
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことが公知である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110または110を超えるアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分により、主にエフェクター機能を担う定常領域が定義される。ヒト軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それにより、それぞれ、IgM、IgD、IgA、およびIgEとして抗体のイソ型が定義される。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域が約12または12を超えるアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)(全ての目的のためにその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。各軽鎖および/または重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0112】
したがって、抗体は2つの結合部位を有する。二機能性抗体または二重特異性抗体を除き、2つの結合部位は同一である。
【0113】
全ての鎖は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRがフレームワーク領域と一列に並び、特異的エピトープと結合することができる。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))またはChothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothia et al.Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。
【0114】
二重特異性抗体または二機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および異なる結合部位を有する人為的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体を、種々の方法(ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結が含まれる)によって産生することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann Cln.Exp.Immunol.79:315−321(1990),Kostelny et al.J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照のこと。二重特異性抗体の産生は、従来の抗体の産生と比較して比較的骨の折れる集中的なプロセスであり得、二重特異性抗体の収率および純度は、一般に、低い。二重特異性抗体は、1つの結合部位を有するフラグメントの形態(例えば、Fab、Fab’、およびFv)で存在しない。
【0115】
ヒト抗体および抗体のヒト化
ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変領域および/または定常領域を有する抗体に関連するいくつかの問題が回避される。このようなマウスまたはラット由来のタンパク質の存在により抗体が急速にクリアランスされ得るか、患者によって抗体に対する免疫応答が生成され得る。マウスまたはラット由来の抗体の利用を回避するために、げっ歯類が完全なヒト抗体を産生するようなげっ歯類へのヒト抗体機能の導入によって完全なヒト抗体を生成することができる。
【0116】
完全なヒト抗体の1つの生成方法は、ヒト重鎖遺伝子座およびκ軽鎖遺伝子座の245kbおよび190kbサイズの生殖細胞系立体配置フラグメントを含むように操作されたマウスのXENOMOUSE(登録商標)の使用による。Green et al.Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照のこと。XENOMOUSE(登録商標)株は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)から市販されている。
【0117】
XENOMOUSE(登録商標)の産生は以下でさらに考察し、示されている:1990年1月12日出願の米国特許出願番号07/466,008号、1990年11月8日出願の07/610,515号、1992年7月24日出願の07/919,297号、1992年7月30日出願の07/922,649号、1993年3月15日出願の08/031,801号、1993年8月27日出願の08/112,848号、1994年4月28日出願の08/234,145号、1995年1月20日出願の08/376,279号、1995年4月27日出願の08/430,938号、1995年6月5日出願の08/464,584号、1995年6月5日出願の08/464,582号、1995年6月5日出願の08/463,191号、1995年6月5日出願の08/462,837号、1995年6月5日出願の08/486,853号、1995年6月5日出願の08/486,857号、1995年6月5日出願の08/486,859号、1995年6月5日出願の08/462,513号、1996年10月2日出願の08/724,752号、1996年12月3日出願の08/759,620号、米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、同第6,075,181号、および同第5,939,598号、日本特許第3 068 180 B2号、同第3 068 506 B2号、および同第3 068 507 B2号。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)およびGreenおよびJakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998)も参照のこと。1996年6月12日付与された欧州特許第0 463 151 Bl号、1994年2月3日に公開された国際特許出願番号WO94/02602号、1996年10月31日に公開された国際特許出願番号WO96/34096号、1998年6月11日に公開された国際特許出願番号WO98/24893号、2000年12月21日に公開されたWO00/76310号も参照のこと。上記引用の各特許、出願、および引例の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0118】
別のアプローチでは、その他(GenPharm International,Inc.が含まれる)は、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチを使用した。ミニ遺伝子座アプローチでは、外因性Ig遺伝子座を、Ig遺伝子座由来の小片(pieces)(各遺伝子)の封入によって模倣する。したがって、1つまたは複数のVH遺伝子、1つまたは複数のDH遺伝子、1つまたは複数のJH遺伝子、μ定常領域、および第2の定常領域(好ましくはγ定常領域)を、動物への挿入のための構築物に形成する。このアプローチは、以下に記載されている:Surani et al.に付与された米国特許第5,545,807号、それぞれがLonbergおよびKayに付与された米国特許第5,545,806号、同第5,625,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,789,650号、同第5,814,318号、同第5,877,397号、同第5,874,299号、および同第6,255,458号、KrimpenfortおよびBernsに付与された米国特許第5,591,669号および同第6,023.010号、Berns et al.に付与された米国特許第5,612,205号、同第5,721,367号、および同第5,789,215号、ChoiおよびDunnに付与された米国特許第5,643,763号、1990年8月29日出願のGenPharm Internationalの米国特許出願番号07/574,748号、1990年8月31日出願の07/575,962号、1991年12月17日出願の07/810,279号、1992年3月18日出願の07/853,408号、1992年6月23日出願の07/904,068号、1992年12月16日出願の07/990,860号、1993年4月26日出願の08/053,131号、1993年7月22日出願の08/096,762号、1993年11月18日出願の08/155,301号、1993年12月3日出願の08/161,739号、1993年12月10日出願の08/165,699号、1994年3月9日出願の08/209,741号(その開示が本明細書中で参考として援用される)。欧州特許第0 546 073 Bl号、国際特許出願番号WO92/03918号、WO92/22645号、WO92/22647号、WO92/22670号、WO93/12227号、WO94/00569号、WO94/25585号、WO96/14436号、WO97/13852、およびWO98/24884号、ならびに米国特許第5,981,175号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。Taylor et al.,1992,Chen et al.,1993,Tuaillon et al.,1993,Choi et al.,1993,Lonberg et al.,(1994),Taylor et al.,(1994),and Tuaillon et al.,(1995),Fishwild et al.,(1996)(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)をさらに参照のこと。
【0119】
Kirinは、微小細胞融合によって大きな染色体片または全染色体を導入したマウス由来のヒト抗体の生成も証明した。欧州特許出願番号773288号および843961号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0120】
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答により、キメラ抗体、そうでなければヒト化抗体が産業的に調製されている。キメラ抗体がヒト定常領域およびマウス可変領域を有するが、特に、慢性用量または複数回用量の抗体の利用において一定のヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が認められると予想される。したがって、HAMAまたはHACA応答の懸念および/または効果を無効にするために多量体酵素に対する完全なヒト抗体を得ることが望ましいであろう。
【0121】
抗体の調製
本明細書中で使用される場合、抗体を、下記のXENOMOUSE(登録商標)テクノロジーを使用して調製した。このようなマウスは、ヒト免疫グロブリン分子および抗体を産生することができ、マウス免疫グロブリン分子および抗体の産生能を欠く。これを達成するために使用されるテクノロジーは、本明細書中で言及した特許、出願、および引例に開示されている。しかし、特に、マウスのトランスジェニック産生およびトランスジェニック由来の抗体の好ましい実施形態は、1996年12月3日出願の米国特許出願番号08/759,620号および1998年6月11日出願の国際特許出願番号WO98/24893号、2000年12月21日出願のWO00/76310号(その開示が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。Mendez et al.Nature Genetics 15:146−156(1997)(その開示が本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
【0122】
以下に詳述するように、このようなテクノロジーの使用により、Ten−M2に対する完全なヒトモノクローナル抗体を産生した。本質的に、マウスのXENOMOUSE(登録商標)株を、目的の抗原(例えば、ヒトTen−M2)で免疫化し、リンパ細胞(B細胞など)を、抗体を発現したマウスから回収し、回収した細胞株を骨髄型細胞株と融合して不死化ハイブリドーマ細胞株を調製する。これらのハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生したハイブリドーマ細胞株を同定する。所望の多量体酵素サブユニットオリゴマー形成ドメインに特異的な抗体を産生する複数のハイブリドーマ細胞株の産生方法を本明細書中に提供する。さらに、このような細胞株によって産生された抗体の特徴付け(このような抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列分析が含まれる)を本明細書中に提供する。
【0123】
あるいは、ハイブリドーマを生成するために骨髄腫細胞に融合する代わりに、マウスの免疫化XENOMOUSE(登録商標)株から単離した回収細胞を、最初の抗原、好ましくはヒトTen−M2に対する反応性についてさらにスクリーニングする。このようなスクリーニングには、所望のTen−M2タンパク質を用いたELISAおよびTen−M2媒介性抗体内在化などの機能アッセイが含まれる。次いで、目的の1つのB細胞分泌抗体を、所望のTen−M2特異的溶血性プラークアッセイを使用して単離する(Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,i93:7843−7848(1996))。溶解についてターゲティングした細胞は、好ましくは、所望のTen−M2抗原でコーティングされたヒツジ赤血球(SRBC)である。目的の免疫グロブリンおよび補体を分泌するB細胞培養物の存在下で、プラークの形成は、標的細胞の特異的Ten−M2媒介性溶解を示す。
【0124】
プラーク中心の1つの抗原特異的形質細胞を単離することができ、抗体特異性をコードする遺伝情報を1つの形質細胞から単離する。逆転写酵素PCRを使用して、分泌された抗体の可変領域をコードするDNAをクローン化することができる。次いで、このようなクローン化DNAを、適切な発現ベクター、好ましくはpcDNAなどのベクターカセット、より好ましくは免疫グロブリン重鎖および軽鎖の定常ドメインを含むpcDNAベクターにさらに挿入することができる。次いで、生成されたベクターを、宿主細胞、好ましくはCHO細胞にトランスフェクトし、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なように改変された従来の栄養培地中で培養することができる。Ten−M2に特異的な抗体を産生する複数の単一の形質細胞の単離をここに記載する。さらに、抗Ten−M2抗体の特異性をコードする遺伝物質を単離し、適切な発現ベクターに導入し、次いで、宿主細胞にトランスフェクトする。
【0125】
一般に、上記細胞株によって産生された抗体は、ヒトκ軽鎖と共に完全なヒトIgG1またはIgG2重鎖を有していた。抗体は、固相および液相によって測定した場合、高親和性を有していた(典型的には、約10−9M〜約10−13MのKdを保有する)。
【0126】
上記のように、抗Ten−M2抗体を、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株中で発現することができる。特定の抗体をコードする配列を、CHO細胞などの適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用することができる。形質転換は、宿主細胞へのポリヌクレオチドの任意の公知の導入方法(例えば、ウイルス中への(またはウイルスベクターへの)ポリヌクレオチドのパッケージングおよびウイルス(またはベクター)での宿主細胞の形質導入が含まれる)または米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号(これらの特許が本明細書中で参考として援用される)に例示される当該分野で公知のトランスフェクション手順により行われる。使用される形質転換手順は、形質転換されるべき宿主に依存する。哺乳動物細胞への異種ポリヌクレオチドの導入方法が当該分野で周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接微量注入が含まれる。
【0127】
発現用宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当該分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から利用可能な多数の不死化細胞株(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、および多数の他の細胞株が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。特定の好ましい細胞株を、どの細胞株が高い発現レベルを有し、且つTen−M2結合特性を有する抗体を産生するかを決定することによって選択する。
【0128】
当業者によって認識されるように、抗原選択は、単純に、抗原から生成された抗体がその自然環境で完全なタンパク質に結合することを自動的に意味しない。したがって、いくつかの実施形態では、元のタンパク質または抗原の変異型よりもむしろ、未変性タンパク質への結合について、抗体を試験し選択する。いくつかの実施形態では、これらのタンパク質を特に意図する。
【0129】
抗体配列
代表的なヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、配列表に示し、その内容を以下の表1および図5〜17にまとめる。
【0130】
【表1−1】
【0131】
【表1−2】
【0132】
【表1−3】
抗体治療薬
抗Ten−M2抗体は、Ten−M2活性に関連する症状および状態に治療効果を有することができる。例えば、抗体は、Ten−M2/Ten−M2二重鎖の形成を阻害し、それにより、癌転移を阻害することができるか、抗体を薬剤と会合させ、ターゲティングされた細胞に致死毒素を送達させることができる。さらに、抗Ten−M2抗体は、病状、特に、癌および癌転移の診断薬として有用である。
【0133】
必要に応じて、抗Ten−M2抗体のアイソタイプをスイッチして、例えば、異なるアイソタイプの生物学的性質を活用することができる。例えば、いくつかの環境では、Ten−M2に対する治療抗体として抗体生成と組み合わせて、抗体が補体を固定し、補体依存性細胞傷害性(CDC)に関与することができることが望ましいかもしれない。上記が可能な抗体の多数のアイソタイプが存在し、以下が含まれるが、これらに限定されない:マウスIgM、マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgM、ヒトIgG1、およびヒトIgG3。生成された抗体がこのようなアイソタイプを最初に保有する必要がなく、むしろ、生成された抗体は任意のアイソタイプを保有することができ、抗体は当該分野で周知の従来技術を使用してその後にスイッチされたアイソタイプであり得ると認識される。このような技術には、特に、直接組換え技術(例えば、米国特許第4,816,397号を参照のこと)、細胞−細胞融合技術(例えば、米国特許第5,916,771号および同第6,207,418号を参照のこと)の使用が含まれる。
【0134】
例として、本明細書中で考察された抗Ten−M2抗体は、ヒト抗体である。抗体がTen−M2に望ましく結合した場合、抗体のアイソタイプを容易にスイッチして、ヒトIgM、ヒトIgG1、またはヒトIgG3アイソタイプを生成する一方で、依然として同一の可変領域(抗体の特異性およびいくつかのその親和性を定義する)を保有することができる。次いで、このような分子は、補体を固定し、CDCに関与することができるであろう。
【0135】
細胞−細胞融合技術では、任意の所望のアイソタイプを有する重鎖を保有する骨髄腫細胞株または他の細胞株を調製し、軽鎖を保有する別の骨髄腫細胞株または他の細胞株を調製する。その後、このような細胞を融合し、インタクトな抗体を発現する細胞株を単離することができる。
【0136】
したがって、上記で考察される所望の「構造」特性を満たす抗体候補を生成する場合、一般に、アイソタイプスイッチングによる少なくとも一定の所望の「機能」特性を有する抗体候補を得ることができる。
【0137】
Ten−M2に結合する生物学的に活性な抗体を、好ましくは、Ten−M2活性を減少させるための滅菌薬学的調製物または処方物中で使用する。抗Ten−M2抗体は、好ましくは、標的治療範囲内にTen−M2活性を強く抑制するのに適切な親和性を保有する。抑制は、抗体が別のTen−M2タンパク質へのTen−M2への結合を妨害する能力に起因し得る。さらに、抗体は、Ten−M2シグナル伝達事象が一般に起こらないように、高次構造またはTen−M2タンパク質を変化させることができる。
【0138】
in vivo投与のために使用する場合、抗体処方物は、無菌であることが好ましい。これは、当該分野で公知の任意の方法(例えば、滅菌濾過膜による濾過)によって容易に達成される。抗体は、通常、滅菌形態または液体で保存される。凍結乾燥および再構成の前後で滅菌濾過を行う。
【0139】
治療抗体組成物を、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器(例えば、静脈注射液バッグ)または処方を補助するアダプター(皮下注射針によって突き刺すことができるストッパーなど)を有するバイアルに入れる。
【0140】
抗体の投与経路は、公知の方法に従う(例えば、以下に記載の静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、鞘内の注射もしくは注入、吸入もしくは病変内経路、または徐放系)。いくつかの状況では、抗体を、好ましくは、注入またはボーラス注射によって投与する。他の状況では、抗体を含む治療組成物を、好ましくは液体または粉末のエアロゾル(凍結乾燥)として、鼻または肺を介して投与することができる。必要に応じて、組成物を、静脈内、非経口、または皮下に投与することができる。全身に投与する場合、治療組成物は、滅菌され、発熱物質を含まず、pH、等張性、および安定性に関して十分に考慮した非経口で許容可能な溶液であるべきである。これらの条件は、当業者に公知である。
【0141】
本明細書中に記載のように、治療用の抗体を、典型的に、処方物に組み込んで輸送、送達、および耐性などが改良される適切なキャリア、賦形剤、他の薬剤を使用して調製する。簡潔に述べれば、保存または投与のための本明細書中に記載の抗体の投薬処方物を、所望の純度を有する抗体を1つまたは複数の薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤と混合することによって調製する。これらの処方物には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、小胞(リポフェクチン(商標)など)を含む脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油滴型乳濁液、油中水滴型乳濁液、カルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、カルボワックスを含む半固体混合物が含まれ得る。処方物には、緩衝液(TRIS HCl、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、および他の有機酸塩など)、抗酸化剤(アスコルビン酸など)、低分子量(約10残基未満)のペプチド(ポリアルギニンなど)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニンなど)、モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストランが含まれる)、キレート剤(EDTAなど)、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、対イオン(ナトリウムなど)、および/または非イオン性界面活性剤(TWEEN、PLURONICS、またはポリエチレングリコールなど)が含まれ得る。他の許容可能なキャリア、賦形剤、および安定剤は、当業者に周知である。処方物中の有効成分が処方物によって不活化されず、且つ処方物が投与経路と生理学的に適合可能且つ許容可能なである場合、任意の上記混合物は、本発明の治療および療法で適切であり得る。Baldrick P.”Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.” Regul.Toxicol.Pharmacol 32(2):210−8(2000),Wang W.”Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int.J.Pharm.203(1−2):1−60(2000),Charman WN ”Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery−some emerging concepts.” J Pharm Sci .89(8):967−78(2000),Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)、およびさらなる情報を得るための参考文献も参照のこと。
【0142】
注射用滅菌組成物を、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed,Lippincott Williams & Wilkens Publishers(2003))に記載の従来の薬務にしたがって処方することができる。例えば、水またはゴマ油、ラッカセイ油、もしくは綿実油のような天然に存在する植物油のようなビヒクル中の活性化合物の溶解物または懸濁物、またはオレイン酸エチルのような合成脂肪ビヒクルが望ましいかもしれない。許容される薬務にしたがって、緩衝液、防腐剤、および抗酸化剤などを組み込むことができる。
【0143】
抗体を徐放性調製物として投与し、長期にわたり放出させることもできる。徐放性処方物の適切な例には、ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。マトリックスは、成型品、フィルム、またはマイクロカプセルの形態であり得る。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、Langer et al.,J.Biomed Mater.Res.,(1981)15:167−277およびLanger,Chem.Tech.,(1982)12:98−105に記載のポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、欧州特許第58,481号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸とのコポリマー(Sidman et al,Biopolymers,(1983)22:547−556)、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al、前出)、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(LUPRON Depot(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフィア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)が含まれる。
【0144】
エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが100日間にわたって分子を放出することができる一方で、一定のヒドロゲルは、より短い時間間隔でタンパク質を放出する。カプセル化タンパク質が長期間体内に保持される場合、これらは、37℃で水分に曝露された結果として変性または凝集し、生物活性を喪失し、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機構に応じて、タンパク質安定化のための妥当なストラテジーを考案することができる。例えば、凝集機構がジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であると発見された場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、適切な添加物を使用した含水量の調節、および特異的ポリマーマトリックス組成物の開発によって安定化することができる。
【0145】
徐放性組成物には、懸濁液中に結晶を維持することができる適切な処方物中に懸濁された抗体の結晶の調製物も含まれる。皮下または腹腔内に注射された場合、これらの調製物は、徐放効果を発揮することができる。他の組成物には、リポソーム捕捉抗体も含まれる。このような抗体を含むリポソームを、それ自体が公知の方法によって調製する(米国特許第DE 3,218,121号;Epstein et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.USA,(1985)82:3688−3692;Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1980)77:4030−4034;欧州特許第52,322号;欧州特許第36,676号;欧州特許第88,046号;欧州特許第143,949号;欧州特許第142,641号;日本特許出願83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびに欧州特許第102,324号)。
【0146】
所与の患者のための抗体処方物の投薬量を、担当医が決定することができる。適切な投薬量の決定では、医師は治療薬の作用を改変することが公知の種々の要因(例えば、疾患の重症度および型、体重、性別、食事、投与時間および経路、他の投薬ならびに他の関連する臨床要因が含まれる)を考慮することができる。治療有効投薬量を、in vitroまたはin vivoのいずれかによって決定することができる。
【0147】
本明細書中に記載の治療で使用すべき有効量の抗体は、例えば、治療目的、投与経路、および患者の状態に依存する。したがって、セラピストは、至適な治療効果を得るために必要な投薬量の力価を測定し(titer)、投与経路を修正することが好ましい。典型的な1日投薬量は、上記要因に応じて、約0.001mg/kgから100mg/kgまたは100mg/kgを超えるまでの範囲であり得る。典型的には、臨床家は、投薬量が所望の効果を達成するまで治療抗体を投与する。この治療の進行を、従来のアッセイによって容易にモニタリングする。
【0148】
本明細書中に記載の抗体がTen−M2活性に起因するか関連する症状および状態の治療で治療効果を有すると予想される。
【0149】
他の治療薬のデザインおよび生成
本発明に従い、且つTen−M2に関して本明細書中で産生されて特徴づけられた抗体の活性に基づくと、他の治療方法のデザインが容易になり、これらのデザインが当業者に開示される。このような方法には、高度な抗体治療薬(二重特異性抗体、免疫毒素、および放射性標識治療薬など)、ペプチド治療薬の生成、遺伝子療法(特に、細胞内発現抗体)、アンチセンス治療薬、および小分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
高度な抗体治療薬の生成と組み合わせて、補体固定が望ましい特性である場合、例えば、二重特異性物質、免疫毒素、または放射性標識の使用によって細胞死滅のための補体への依存を回避することが可能である。
【0151】
例えば、(i)2つの抗体(一方のTen−M2に特異性を有する抗体および他方の第2の分子に対する抗体が互いに結合体化している)、(ii)Ten−M2に特異的な一方の鎖および第2の分子に特異的な第2の鎖を有する1つの抗体、または(iii)Ten−M2および他の分子の両方に特異性を有する単鎖抗体を含む二重特異性抗体を生成することができる。このような二重特異性抗体を、周知の技術(例えば、(i)および(ii)との組み合わせ(例えば、Fanger et al.Immunol Methods 4:72−81(1994)およびWrightおよびHarris,前出を参照のこと)および(iii)との組み合わせ(例えば、Traunecker et al.Int.J.Cancer(Snppl.)7:51−52(1992)を参照のこと))を使用して生成することができる。いずれの場合にも、必要に応じて第2の特異性を得ることができる。例えば、重鎖活性化受容体(CD16またはCD64(例えば、Deo et al.18:127(1997)を参照のこと)またはCD89(例えば、Valerius et al.Blood 90:4485−4492(1997)を参照のこと)(ただしこれらに限定されない)に対する第2の特異性を得ることができる。いくつかの実施形態では、2つのTen−M2タンパク質に結合するように抗体をデザインする。いくつかの実施形態では、2つのTen−M2タンパク質に結合し、且つ2つのTen−M2タンパク質がシグナル伝達が起こり得る様式で実際に互いに接触することをさらに回避するように抗体をデザインする。この実施形態では、結果は、Ten−M2の抗体によるシグナル伝達が防止され、各抗体が2つのTen−M2分子を停止させることができるという点で有利であり得る。
【0152】
当該分野で周知の技術を使用して、免疫毒素として作用するように抗体を修飾することもできる。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252(1993)を参照のこと。米国特許第5,194,594号も参照のこと。放射性標識抗体の調製と組み合わせて、当該分野で周知の技術を使用して、このような修飾抗体を容易に調製することもできる。例えば、Junghans et al.in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655−686(2d edition,ChafherおよびLongo,eds.,Lippincott Raven(1996))を参照のこと。米国特許第4,681,581号、同第4,735,210号、同第5,101,827号、同第5,102,990号(再発行第35,500号)、同第5,648,471号、および同第5,697,902号も参照のこと。各免疫毒素および放射性標識分子は、所望の多量体酵素サブユニットドメインを発現する細胞を死滅させる可能性が高いであろう。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせて有効量の抗体を含む薬学的組成物を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗Ten−M2抗体を、薬剤(例えば、放射性同位体、薬学的組成物、または毒素)に連結する。好ましくは、このような抗体を、疾患の治療のために使用することができ、このような疾患は、ten−Mタンパク質、および特にTen−M2の過剰発現または過小発現に関し得る。例えば、薬物が抗有糸分裂薬、アルキル化薬、抗代謝産物、抗血管形成薬、アポトーシス薬、アルカロイド、COX−2、および抗菌薬ならびにその組み合わせの群から選択される薬学的性質を保有することが意図される。薬物を、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸アナログ、アントラサイクリン、タキサン、COX−2インヒビター、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、代謝拮抗薬、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、白金配位複合体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制薬、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ならびにそのアナログおよび組み合わせからなる群から選択することができる。
【0154】
毒素の例には、さらに、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス外毒素(PE)、PE40、PE38、ジフテリア毒素、リシン、リシン、アブリン、α毒素、サポリン、RNA分解酵素(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス内毒素、ならびにその誘導体、組み合わせおよび修飾物が含まれる。
【0155】
放射性同位体の例には、局在化および/または療法のために使用することができるγ線放射体、陽電子放射体、およびX線放射体ならびに療法のために使用することができるβ線放射体およびα線放射体が含まれる。診断、予後、および病期分類に有用であることが以前に記載されている放射性同位体も療法に有用である。抗癌薬および抗白血病薬の非限定的な例には、アントラサイクリン(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、イダルビシン、デトルビシン(detorubicin)、カルミノマイシン(carmninomycin)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、およびモルフォリノなど)、ならびにその誘導体、組み合わせ、および修飾物が含まれる。例示的医薬品には、シスプラチン、タキソール、カリチアマイシン、ビンクリスチン、シタラビン(ara−C)、シクロホスファミド、プレドニゾン、ダウノルビシン、イダルビシン、フルダラビン、クロラムブシル、インターフェロンα、ヒドロキシ尿素、テモゾロミド、サリドマイド、およびブレオマイシン、ならびにその誘導体、組み合わせ、および修飾物が含まれる。好ましくは、抗癌薬および抗白血病薬は、ドキソルビシン、モルホリノドキソイルビシン、またはモルホリノダウノルビシンである。
【0156】
当業者に認識されるように、上記実施形態では親和性値が重要であり得る一方で、特定の抗体の機能に応じて、他の要因も同様またはそれ以上に重要であり得る。例えば、免疫毒素(抗体に会合した毒素)について、標的への抗体の結合作用が有用であり得るが、いくつかの実施形態では、細胞への毒素の内在化が所望の最終結果である。そのようなものとして、これらの状況では、内在化率の高い抗体が望ましい可能性がある。しかし、抗体がTen−M2タンパク質と別のTen−M2タンパク質との二重鎖形成を防止しようとするならば、これらの抗体を望む必要はない。したがって、1つの実施形態では、高効率で内在化する抗体が意図される。高効率の内在化を、内在化抗体率として測定することができ、低い値から100%までであり得る。例えば、種々の実施形態では、0.1〜5、5〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜45、45〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜99、および99〜100%が高効率であり得る。当業者によって認識されるように、所望の効率は、実施形態によって異なる(例えば、会合する薬剤、領域に投与することができる抗体の量、抗体−薬剤複合体の副作用、処置すべき問題の型(例えば、癌型)および重症度に応じて異なる)。
【0157】
他の実施形態では、本明細書中に開示の抗体により、Ten−M2レベルの変化に関連する疾患または障害をスクリーニングするための哺乳動物組織又は細胞中のTen−M2タンパク質の検出のためのアッセイキットが得られる。キットは、抗原タンパク質と結合する抗体および抗体と抗原(存在する場合)との反応を示すための手段を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗Ten−M2抗体を含む組成物および組成物を使用してTen−M2によって媒介される疾患を治療することができることを示す添付文書またはラベルを含む容器を含む製品を提供する。好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトに抗Ten−M2抗体を投与する。
【実施例】
【0159】
実施される実験および達成される結果が含まれる以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、これらの実施例は、本明細書中に記載の本発明を制限すると解釈すべきではない。
【0160】
実施例1
抗Ten−M2抗体の生成
Ten−M2に対するモノクローナル抗体を、図1Aおよび1Bに示す配列を有する抗原を使用したXenoMouse(登録商標)マウス(IgG2κXenoMouse株),Abgenix,Inc.Fremont,CA)の免疫化によって構築した。図1Aに示した抗原は、V5−6xHis(二重下線および斜体で示す)およびヒトFcタグ(太字で示す)も付加し、図1Bに示した抗原は、6xHis−V5タグ(斜体および二重下線で示す)も付加した。シグナルペプチドに下線を引いている。
【0161】
上記免疫化マウスから産生したハイブリドーマおよびB細胞クローンを、Ten−M2特異的モノクローナル抗体についてスクリーニングした。ELISAプレートを、可溶性Ten−M2抗原でコーティングし(図1Bを参照のこと)、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、洗浄緩衝液(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。ブロッキング緩衝液(200μL/ウェル、0.5%BSA、0.1%Tween20、0.01%チメロサールを含む1×PBS)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ハイブリドーマまたはB細胞クローンの上清(50μL/ウェル)、ポジティブコントロール、およびネガティブコントロールを添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。
【0162】
インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。ヤギ抗huIgGfc−HRP検出抗体(100μL/ウェル)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した。TMB基質(100μL/ウェル)を添加し、プレートを10分間発色させ(ネガティブコントロールウェルが辛うじて発色し始めるまで)、50μL/ウェルの停止溶液を添加し、プレートをELISAプレートリーダーにて450nmの波長について読み取った。
【0163】
次いで、上記ELISAで結合について陽性と同定されたハイブリドーマまたはB細胞クローン上清を、天然に抗原が発現するSNB−19細胞株を使用して内因的に発現したTen−M2に結合する能力についてアッセイした。上記スクリーニングで同定した247個のB細胞クローンサンプルについてFMATベースの蛍光アッセイを行った。簡潔に述べれば、96ウェルマイクロタイター皿中に、10,000細胞/ウェルでSNB−19細胞を播種した。細胞が接着した後、培地を除去し、B細胞クローン上清と置換した。1時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、結合した抗体を、Cy5結合体化抗ヒトIgGFc特異的ポリクローナル抗体を介して検出した。陽性ウェルを、FMATリーダーを使用して画像化した。以下の表2は、可溶性Ten−M2(Cur007)ECDに結合したハイブリドーマおよびB細胞クローンの数ならびにその後にSNB−19細胞株にも結合したB細胞数をまとめている。
【0164】
表2
可溶性Ten−M2および細胞表面Ten−M2への抗Ten−M2抗体結合
【0165】
【表2】
全B細胞クローンを、V5−His可溶性ペプチドへのその結合について試験し、247個がこれに交差反応しなかった。6個のハイブリドーマクローンを可溶性Ten−M2−V5−Hisタンパク質への結合についてのみ試験し、このアッセイ以降に進めなかった。その配列を、図5〜9に示す。
【0166】
実施例2
Ten−M2抗体の結合特異性
本実施例は、生成された種々の抗体の特異性を証明する。抗体を、安定な細胞株を発現するTen−M3(Cur026)および癌細胞株上に内因的に発現したTen−M4(CR105)に結合する能力について試験した。上記スクリーニングで同定された247個のB細胞クローンサンプルについてFMATベースの蛍光アッセイを行った。簡潔に述べれば、96ウェルのマイクロタイター皿中に、10,000細胞/ウェルで細胞を播種した。細胞が接着した後、培地を除去し、B細胞クローン上清と置換した。1時間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、結合した抗体を、Cy5結合体化抗ヒトIgGFc特異的ポリクローナル抗体を介して検出した。陽性ウェルを、FMATリーダーを使用して画像化した。以下の表3は、たった1つの抗体179がTen−M3に交差反応することを示すデータをまとめている。
【0167】
表3
関連相同Ten−M3(CUR026)およびTen−M4(CUR105)への抗Ten−M2抗体の結合プロフィール
【0168】
【表3】
上記データから認められるように、記載の抗体は、バックグラウンドレベルと比較して結合が増加したことを証明した。これらの結果は、抗体が他の密接に関連する抗原およびタンパク質に比べてTen−M2への結合に比較的選択性を示すか特異的であり得ることを証明した。
【0169】
実施例3
種々のTen−M2抗体の内在化アッセイ
本実施例は、種々のTen−M2抗体をSNB−19細胞内に内在化することができることを証明した。下に報告するように、いくつかの抗体を、わずかに高レベルの効率(例えば、比較的大量の抗体を細胞に内在化することができる)で内在化した。
【0170】
Ten−M2抗体を使用して、SNB−19細胞を染色した。最初に4℃でこれを行い(バックグラウンド測定のために内在化されない)、37℃に30分間シフトして内在化を誘導した。
【0171】
SNB−19細胞を、細胞解離培地(Sigma)を使用して培養皿から除去し、計数し、96ウェルVEE底プレートに移した(100,000細胞)。細胞をスピンして沈殿させ、培地を除去し、細胞を、100μLのハイブリドーマ上清で再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。インキュベートした細胞をスピンして沈殿させ、ジスルフィド結合を介してAlex647色素に連結した二次抗体(1μg/mlの抗HuIgG Fc−SS−Alexa647または抗HuIgG Fab−SS−Alexa647)を使用して、結合抗体を検出した。二次抗体を、氷上で7分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、氷冷10%FCS/PBSで再懸濁した。次いで、サンプルを3つのサンプルに分け、スピンして沈殿させ、上清を除去した。
【0172】
2つの複製物(replicate)を、氷冷10%FCS/PBSで再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。他の複製物を、加温10%FCS/PBSで再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。30分間のインキュベーション後、細胞をスピンして沈殿させ、以下の緩衝液の1つで再懸濁した。1つの緩衝液は、250μLの冷50mMグルタチオンであり、4℃のサンプルに添加した。これを、ジスルフィド結合の不完全な還元によるバックグラウンド蛍光の基準として使用した。第2の緩衝液は、250μLの冷50mMグルタチオンを有し、37℃の複製物に添加した。グルタチオンのみが細胞表面の二次抗体に接近した。抗体が内在化された場合、ジスルフィド結合は、グルタチオンによって還元されず、細胞は依然として蛍光を発する。したがって、残存する蛍光強度は、抗体の内在化量に比例した。第3の緩衝液は250μLの冷10%FCS/PBSであり、他の4℃のサンプルに添加した。このサンプルは、最大蛍光を示すためのコントロールであった。
【0173】
次いで、サンプルを氷上で30分間インキュベートし、スピンして沈殿させ、300μLの氷冷10%FCS/PBSで再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。結果を表4に示す。
【0174】
表4
内在化:4℃でSNB−19細胞株を染色するために使用し(内在化せず)、その後に内在化を誘導するために37℃に30分間シフトしたTen−M2(Cur0007)特異的抗体
【0175】
【表4】
上記表で認められるように、試験した全抗体がいくらかの範囲で内在化された。最小内在化率は29%であった。いくつかの抗体は40%超で内在化され、1つの抗体(188)は約50%の内在化率で内在化された。
【0176】
実施例4
抗体毒素結合体
本実施例は、どのようにして毒素に結合体化した抗体を癌細胞の増殖の防止に有効な組成物として使用するのかを証明した。クローン原性アッセイを使用して、抗体をサポリン毒素結合体化二次抗体試薬と結合体化した場合に一次抗体が癌細胞死を誘導することができるかどうかを決定した(例えば、KohlsおよびLappi,”Mab−ZAP:A tool for evaluating antibody efficacy for use in an immunotoxin,” Biotechniques,28(1):162−5(Jan.2000)(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載)。
【0177】
簡潔に述べれば、細胞を、約3000細胞/ウェルの密度で平底組織培養プレートにプレートした。2日目または細胞密集度が約25%に到達した場合、100ng/ウェルの二次mAb−毒素(ヤギ抗ヒトIgG−サポリン;Advanced Targeting Systems;HUM−ZAP;cat.no.IT−22)を添加した。抗EGFR抗体(ポジティブコントロール)、抗Ten−M2mAb、またはアイソタイプコントロールAbを、所望の濃度(典型的には、1〜500ng/mL)で各ウェルに添加した。5日目に、細胞をトリプシン処理し、6ウェル組織培養皿に移し、37℃でインキュベートした。プレートを毎日試験した。10〜12日目に、プレートをギムザで染色し、プレート上のコロニーを計数した。最終的に形成されたコロニー数によってプレーティング効率を決定した。
【0178】
細胞傷害性化学療法試薬である5フルオロウラシル(5−FU)をポジティブコントロールとして使用し、これによってほとんど完全な死滅を誘導したのに対して、サポリン結合体化ヤギ抗二次抗体のみではほとんど効果がなかった。両細胞株によって発現されたEGF様受容体に対して生成されたモノクローナル抗体(NeoMarkers MS−269−PABX)を使用して、一次抗体および二次抗体−サポリン結合体特異的死滅を証明した。
【0179】
種々の濃度(例えば、5pMと1000pMとの間)の抗体/毒素結合体を、抗体/毒素結合体が内在化可能な条件下でSNB−19細胞に投与した。次いで、細胞を、96時間増殖させ続けた。次いで、コロニーを計数して、SNB−19細胞増殖の阻害量を決定した。結果を図3に示す。
【0180】
図に認められるように、いくつかの抗Ten−M2抗体により、6ngと100ngとの間の範囲の量でSNB−19細胞の濃度が50%または50%を超えて減少した。図4は、Ten−M2を発現しない癌細胞株IGROV−1を使用した増殖アッセイの阻害を示す。予想されるように、IGROV−1細胞の増殖は、抗Ten−M2抗体の添加に影響を受けず、図3で認められるSNB−19細胞の増殖阻害が抗Ten−M2抗体の特定の性質に起因することを示した。
【0181】
実施例5
抗Ten−M2抗体の構造分析
抗Ten−M2抗体の可変重鎖および可変軽鎖を、そのDNA配列を決定するために配列決定した。全ての抗Ten−M2抗体についての完全な配列情報を、各γ鎖およびκ鎖の組み合わせのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列と共に、図5〜17に示す。
【0182】
可変重鎖ヌクレオチド配列を分析して、VHファミリー、D領域配列、およびJ領域配列を決定した。次いで、配列を翻訳して一次アミノ酸配列を決定し、生殖細胞系のVH領域、D領域、およびJ領域の配列を比較して体細胞高頻度変異を評価した。抗Ten−M2重鎖の一次アミノ酸配列を、図18に示す。生殖細胞系配列を上記に示し、新規のアミノ酸配列と共に変異を示す。示した生殖細胞系配列と同一の配列中のアミノ酸を、ダッシュ(−)を使用して示す。軽鎖を同様に分析して、V領域およびJ領域を決定し、生殖細胞系軽鎖配列由来の任意の体細胞変異を同定した(図19)。
【0183】
実施例6
種々の抗体のV遺伝子使用
本実施例は、上記で特徴づけられた特定の抗体と会合する種々のV遺伝子を証明した。多数の抗体中のV遺伝子を分析して、どの遺伝子が特定の抗体で使用されたかを決定した。抗体の重鎖および軽鎖の両方に関与するV遺伝子を、以下の表5に示す。
【0184】
【表5】
上記表で認められるように、全ての抗体はJH6B遺伝子またはJH4B遺伝子に関与していた。
【0185】
実施例7
エピトープ結合およびBiaCore(登録商標)親和性の決定
エピトープ結合
本明細書中に記載の一定の抗体は、米国特許出願公開番号20030157730号に記載のプロトコールにしたがって、「ビン化(binned)」する。一次抗体へのカップリングのためのMxhIgG結合体化ビーズを調製する。必要な上清体積を、以下の式を使用して計算する:(n+10)×50μL(式中、n=プレート上の総サンプル数)。濃度が既知である場合、0.5μg/mLを使用する。ビーズストックを穏やかにボルテックスし、次いで、上清でウェルあたり2500個のビーズおよび0.5×105/mLの濃度に希釈し、震盪機にて暗所の室温で一晩インキュベートしたか、0.5μg/mLの既知濃度の場合、2時間インキュベートした。吸引後、50μLの各ビーズをフィルタープレートの各ウェルに添加し、100μL/ウェルの洗浄緩衝液を加えて1回洗浄し、吸引した。50μL/ウェルの抗原およびコントロールをフィルタープレートに添加し、被覆し、震盪機にて暗所で1時間インキュベートした。洗浄工程後、一次抗体で使用した濃度と同一の希釈(または既知である場合、濃度)を使用して、50μL/ウェルの未知の二次抗体を添加する。次いで、プレートを、震盪機にて暗所の室温で2時間インキュベートし、その後に洗浄工程を行った。次に、50μL/ウェルのビオチン化mxhIgGの500倍希釈物を添加し、震盪機にて暗所の室温で1時間インキュベートした。洗浄工程後、50μL/ウェルのストレプトアビジン−PEの1000倍希釈物を添加し、震盪機にて暗所の室温で15分間インキュベートした。洗浄工程後、各ウェルを、80μLのブロッキング緩衝液中に再懸濁し、Luminexを使用して読み取った。結果は、モノクローナル抗体が異なるビン(bin)に属することを示す。異なるビン由来の抗体による競合結合は、類似のエピトープまたは隣接エピトープに対する抗体特異性を支持する。非競合結合は、固有のエピトープに対する抗体特異性を支持する。
【0186】
BiaCore(登録商標)分析を使用した抗Ten−M2mAb親和性の決定
BiaCore(登録商標)を使用して、Ten−M2抗原に対する抗Ten−M2抗体の結合親和性を決定した。研究用CM5センサーチップを備えたBiaCore(登録商標)2000バイオセンサを使用して、25℃で分析を行った。日常的なカップリングを使用して、CM5 BiaCore(登録商標)チップ上に高密度ヤギαヒト抗体表面を調製した。抗体上清を、100μg/mL BSAおよび10mg/mLカルボキシメチルデキストランを含むHBS−P泳動緩衝液で約5μg/mLに希釈した。次いで、抗体を、2分間接触させて個別の表面上にそれぞれ捕捉し、抗体ベースラインの安定化のために5分間洗浄した。
【0187】
292nMのTen−M2抗原を、各表面上に75秒間注入し、その後に3分間解離させた。コントロールフローセル由来のシグナルを引き、Ten−M2注入直前の緩衝液注入のベースラインのドリフトを引くことによって二重参照(double−referenced)データを得た。各mAbのTen−M2結合データを、各表面上に捕捉されたmAb量について正規化した。正規化されたドリフト修正応答も測定した。25℃での抗Ten−M2 mAb結合の速度分析の結果を、以下の表7に列挙する。
【0188】
表7 精製したTen−M2 mAbのTen−M2低分解能BiaCore(登録商標)スクリーニング
【0189】
【表7】
$Kdは、非線形適合プロセスにおいてこの値にて一定に保持される。
*極めて複雑な動態。
【0190】
実施例8
ウエスタンブロット分析、免疫組織化学的分析、およびFACS分析による抗Ten−M2 mAbによるTen−M2タンパク質の検出
抗Ten−M2モノクローナル抗体の抗原結合特性および交差反応性を決定するために、1μgのTen−M2(M2)、Ten−M3(M3)、またはTen−M4(M4)組換えタンパク質(R&D system)を、還元条件下で、4〜20%Tris−グリシンゲル(Invitrogen)にロードし、電気泳動によって0.45μmPVDF膜(Invitrogen)に移した。膜を、3%BSA(Sigma,St.Louis,MO)を含むTBSTで3時間ブロッキングし、2μg/mlの濃度のTEN−M2mAb抗体で3時間探索した。図20に示すように、TEN−M2 mAbは、p125 Ten−M2種を特異的に認識するが、Ten−M3タンパク質やTen−M4タンパク質を認識しない。
【0191】
抗Ten−M2 mAbが癌細胞中の内因性Ten−M2タンパク質を認識することができることも決定した。IGROV−1、SK−OV−3、SNB−19、および786−0細胞から作製した総タンパク質溶解物を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜にブロッティングした。次に、ウエスタンブロットを、Ten−M2タンパク質(図21の上のパネル)および抗Ten−M2抗体(図21の下のパネル)に対して生成されたウサギポリクローナル抗体のいずれかとインキュベートした。内因性Ten−M2タンパク質のサイズに対応する約30kDのバンドを、SNB−19細胞中でTen−M2ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方によって検出した。さらなるコントロールとして、転写陰性細胞株IGROV−1細胞およびSK−OV−3細胞中にTen−M2タンパク質は検出されなかった。
【0192】
免疫組織化学
種々のヒト癌組織におけるTen−M2発現を、抗Ten−M2 mAbを使用した免疫組織化学によって分析した。免疫組織化学のために、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した種々のヒト癌組織由来の組織サンプル切片を、Ten−M2 mAbで染色した。プロテイナーゼK(DakoCytomation,Carpinteria,CA)による部分的タンパク質分解を使用して抗原賦活を行い、内因性ペルオキシダーゼ活性を3%過酸化水素のメタノール溶液で反応停止させた。
【0193】
組織切片を、5%BSA溶液(Sigma)および1%ヤギ血清(Jackson ImmunoResearch Lab)のPBS溶液で最初に1時間ブロッキングし、次いで、ブロッキング緩衝液で希釈したビオチン化TEN−M2またはビオチン化アイソタイプコントロールIgG2抗体とインキュベートした。1時間後、切片を洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジン(200倍)と45分間インキュベートした。洗浄工程を繰り返し、その後、DAB試薬(Vector labs,Burlingame,CA)を使用して色素を発色させた。DAB反応を停止させ、切片を、ヘマトキシリン(Fisher Scientific)中で対比染色し、脱水し、permount(Fisher Scientific)を使用してマウントした。
【0194】
以下の表8で認められるように、乳癌、腎臓癌、および前立腺癌中の膜上が強く染色された(+2)。ほとんどのヒトの乳癌、前立腺癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓明細胞癌、肺癌、脳腫瘍、卵巣癌、リンパ腫、および黒色腫の検体において、強度スコア+1または+1を超えるより弱い陽性染色も同定された。
【0195】
表8
抗Ten−M2免疫組織化学のまとめ
【0196】
【表8】
乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎臓明細胞癌、肺癌、卵巣癌、および黒色腫の染色例を、図22A〜Gにそれぞれ示す。抗Ten−M2抗体染色により、大部分のTen−M2タンパク質が乳癌、卵巣癌、腎臓明細胞癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、および前立腺癌の腫瘍細胞の膜上および細胞質領域に見出されることが明らかとなった。興味深いことに、抗Ten−M2抗体は黒色腫サンプルの内皮も染色し、抗血管形成の可能性が示唆されたが、多数の正常組織の内皮を染色しなかった。コントロールIgGに関して癌組織染色は認められなかった。表8に列挙される正常なヒト組織に対しても抗Ten−M2抗体での免疫組織化学染色を行った。主に、正常な腎臓、前立腺、卵巣、扁桃腺、および甲状腺で陽性染色が認められた。腎臓の尿細管で認められるように、ほとんどの組織染色が細胞質で起こることに注目すべきである。前立腺は、ストロマの膜染色が認められた(図22H〜I)。
【0197】
フローサイトメトリー
15個の異なる細胞株の表面のCG50426(Ten−M2)発現の定量分析を、フローサイトメトリー(FACS)によって決定した。約1×106細胞を採取し、洗浄し、PBS(pH7.4)、4%FBS、および0.1%NaN3を含む染色緩衝液中で飽和量(1μg/ml)のTEN−M2またはアイソタイプ適合コントロール抗体のいずれかと氷上で30分間インキュベートし、その後、R−フィコエリトリン(PE)結合体化ヤギ抗ヒト抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc,West Grove,PA)の100倍希釈物にて氷上で30分間洗浄および染色した。細胞を、1%パラホルムアルデヒド/PBS中で固定し、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターにて試験した。Becton Dickinson Cell Questソフトウェアバージョン3.3を使用してデータ分析を行い、各細胞型について相乗平均蛍光強度比(GMR)を決定した。
【0198】
以下の表9で認められるように、FACS分析により、抗Ten−M2mAbで表面染色された7つの癌細胞株(SNB−19細胞、RXF631細胞、RXF393細胞、786−0細胞、T47D細胞、NCl−H82細胞、およびHop62細胞が含まれる)がアイソタイプコントロールmAbバックグラウンドの少なくとも3倍であることが同定された。
【0199】
表9
RTQ PCR、FACS、および抗Ten−M2−mAbでのヒト癌細胞株のin vitro増殖阻害のまとめ
【0200】
【表9】
aTEN−M2:材料と方法に記載のRTQ PCRによってCT値を決定した。フローサイトメトリー分析によって相乗平均比(GMR)を決定した。記載のクローン原性アッセイによって抗体−薬物細胞傷害性(ADC)または細胞死滅を決定した。
bIC50値は、三連のウェルで行った各実験を使用した2つの独立したクローン原性アッセイの平均およびSDである。
ND:実施せず。
【0201】
実施例9
抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2−MMAFを使用した脳腫瘍および腎臓細胞癌のin vitro増殖阻害
抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2−MMAFが抗原陽性細胞を特異的に阻害したかどうかを調査するために、細胞死滅アッセイを行い、抗Ten−M2薬結合体処置後の細胞生存率を評価した。細胞を96ウェルプレートにプレートし、一晩回復させた。種々の濃度の抗Ten−M2−vcMMAEまたは抗Ten−M2−MMAF抗体結合体を、サブコンフルエントの細胞培養物に添加し、37℃で4日間インキュベートした。次いで、細胞を、6ウェルプレートに移し、さらに7日間増殖させた。RXF631細胞、RXF393細胞、および786−0細胞はコロニーを形成せず、細胞計数法を使用した。簡潔に述べれば、各ウェル中の細胞を回収し、50μlの増殖培地に再懸濁した。血球計を使用して、顕微鏡下で細胞を計数した。処置サンプルと未処置サンプルとの間の比に基づいて、生存細胞画分を計算した。IC50を、未処置のコントロール培養物と比較してコロニー形成または細胞数が50%減少する濃度と定義した。
【0202】
表9で認められるように、Ten−M2発現細胞は、抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2−MMAFによって誘導された増殖阻害に感受性を示すが、抗原を発現しない細胞は感受性を示さなかった。抗Ten−M2薬結合体の最高の死滅効果は、SNB−19細胞およびRXF393細胞にて約60pMのIC50で認められた(図23A、B)。RXF631細胞は、抗Ten−M2−vcMMAE(IC50=7.6nM)よりも抗Ten−M2−MMAF(IC50<60pM)に対して感受性が高かった(図23C)。786−0が遊離MMAEや遊離MMAFのいずれにも感受性を示さなかったという本発明者らの前の観察と一致して、抗Ten−M2 mAb結合体は、786−0細胞にほとんど影響を及ぼさなかった(図23D)。抗体PK16.3をvcMMAEと結合体化し、同一の実験においてIgGコントロールとして使用した。RXF−393細胞に対して約30%の非特異的増殖阻害効果が得られたが、他の3つの細胞株のいずれにも効果がなかった。
【0203】
これらのデータは、MMAEまたはMMAFなどの薬物と結合体化した抗Ten−M2 mAbが脳腫瘍および腎臓細胞癌の治療に非常に強力且つ選択的な薬剤であることを示す。
【0204】
参照による援用
本明細書中で引用した全ての引例(特許、特許出願、論文、およびテキストブックなどが含まれる)およびこれらが引用した参考文献は、既に引用していない範囲で、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0205】
等価物
上記明細書は、当業者が本発明を実施することができるために十分であると見なされる。上記説明および実施例は、本発明の一定の好ましい実施形態を詳述し、本発明が意図する最良の形態を記載している。しかし、上でいかに詳述しようとも、本発明を多数の方法で実施することができ、本発明を添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物にしたがって解釈すべきであると認識される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1A】図1は、XenoMouse(登録商標)の免疫化のために使用されたTen−M2抗原のアミノ酸配列の図である。
【図1B】図1は、XenoMouse(登録商標)の免疫化のために使用されたTen−M2抗原のアミノ酸配列の図である。
【図2】図2は、SNB−19細胞株(Ten−M2発現に陽性)およびIGROV−1(Ten−M2発現に陰性)へのTen−M2抗体の結合FACSプロフィールである。
【図3】SNB−19細胞上でのTen−M2抗体薬物結合体による増殖阻害を示す棒グラフである。
【図4】図4は、IGROV−1細胞上でのTen−M2抗体薬物結合体による増殖阻害を示す棒グラフである。
【図5】図5は、Ten−M2−7.1.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図5Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。図5Bは、図5Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。図5Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。図5Dは、図5Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図6】図6は、Ten−M2−7.2.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図6Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。図6Bは、図6Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号6)を示す。図6Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号7)を示す。図6Dは、図6Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図7】図7は、Ten−M2−7.3.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図7Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号9)を示す。図7Bは、図7Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号10)を示す。図7Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号11)を示す。図7Dは、図7Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【図8】図8は、Ten−M2−7.7.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図8Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。図8Bは、図8Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号14)を示す。図8Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号15)を示す。図8Dは、図8Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号16)を示す。
【図9】図9は、Ten−M2−8.1と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図9Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。図9Bは、図9Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号18)を示す。図9Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。図9Dは、図9Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【図10】図10は、Ten−M2−8.6と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図10Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号21)を示す。図10Bは、図10Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号22)を示す。図10Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号23)を示す。図10Dは、図10Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号24)を示す。
【図11】図11は、Ten−M2−120と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図11Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号25)を示す。図11Bは、図11Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号26)を示す。図11Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号27)を示す。図11Dは、図11Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号28)を示す。
【図12】図12は、Ten−M2−140と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図12Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号29)を示す。図12Bは、図12Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号30)を示す。図12Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号31)を示す。図12Dは、図12Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号32)を示す。
【図13】図13は、Ten−M2−171と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図13Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号33)を示す。図13Bは、図13Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号34)を示す。図13Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号35)を示す。図13Dは、図13Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号36)を示す。
【図14】図14は、Ten−M2−179と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図14Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号37)を示す。図14Bは、図14Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号38)を示す。図14Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号39)を示す。図14Dは、図14Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号40)を示す。
【図15】図15は、Ten−M2−188と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図15Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号41)を示す。図15Bは、図15Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号42)を示す。図15Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号43)を示す。図15Dは、図15Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号44)を示す。
【図16】図16は、Ten−M2−199と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図16Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号45)を示す。図16Bは、図16Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号46)を示す。図16Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号47)を示す。図16Dは、図16Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号48)を示す。
【図17】図17は、Ten−M2−213と示した本発明のヒト抗Ten−M2抗体の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一連の描写である。図17Aは、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号49)を示す。図17Bは、図17Aに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号50)を示す。図17Cは、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号51)を示す。図17Dは、図17Cに示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列(配列番号52)を示す。
【図18】図18は、12種の抗Ten−M2抗体の重鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列のその各生殖細胞系配列とのアラインメントを示す表である。「−」は、生殖細胞系配列と同一であることを示す。体細胞高頻度変異に起因する生殖細胞系との相違を、各アミノ酸によって示す。免疫グロブリン中のCDR(CDR1、CDR2、CDR3)およびFR(FR1、FR2、およびFR3)を、各カラムの見出しに示す。
【図19】図19は、12種の抗Ten−M2抗体の軽鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列のその各生殖細胞系配列とのアラインメントを示す表である。「−」は、生殖細胞系配列と同一であることを示す。体細胞高頻度変異に起因する生殖細胞系との相違を、各アミノ酸によって示す。免疫グロブリン中のCDR(CDR1、CDR2、CDR3)およびFR(FR1、FR2、およびFR3)を、各カラムの見出しに示す。
【図20】図20は、抗Ten−M2抗体がp125 Ten−M2(レーンM2)タンパク質を特異的に認識することを示すウエスタンブロットである。
【図21】図21は、抗Ten−M2ウサギポリクローナル抗体(上のパネル)または抗Ten−M2モノクローナル抗体クローン140(下のパネル)を使用したIGROV、SK−OV−3、SNB−19、および786−0細胞中の内因性Ten−M2抗体を示すウエスタンブロットである。
【図22A】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Aは、乳癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の膜および細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。12サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22B】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Bは、卵巣癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22C】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Cは、腎臓癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の膜および細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。9サンプルのうち9サンプルが陽性に染色された。
【図22D】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Dは、結腸癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち7サンプルが陽性に染色された。
【図22E】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Eは、肺癌サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞および炎症細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22F】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Fは、黒色腫およびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞および内皮の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22G】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Gは、前立腺癌およびアイソタイプコントロールにおける腫瘍細胞およびストロマの細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。10サンプルのうち10サンプルが陽性に染色された。
【図22H】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Hは、腎臓およびアイソタイプコントロールの正常な管状細胞の細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。
【図22I】図22は、抗Ten−M2抗体の免疫組織化学分析である。図22Iは、正常な前立腺サンプルおよびアイソタイプコントロールにおける上皮およびストロマの膜および細胞質に対するTen−M2抗体染色を示す。
【図23−1】図23は、抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2MMAFのin vitro増殖阻害を示す棒グラフを示す。図23Aは、SNB−19脳腫瘍細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAb薬物結合体を示す棒グラフである。図23Bは、RXF−393腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Cは、RXF−631腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Dは、786−0腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。
【図23−2】図23は、抗Ten−M2−vcMMAEおよび抗Ten−M2MMAFのin vitro増殖阻害を示す棒グラフを示す。図23Aは、SNB−19脳腫瘍細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAb薬物結合体を示す棒グラフである。図23Bは、RXF−393腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Cは、RXF−631腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。図23Dは、786−0腎臓細胞の癌細胞を死滅させる抗Ten−M2 mAB薬物結合体を示す棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ten−M2に結合してTen−M2活性を中和する、完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体が全長抗体である、請求項1に記載の完全なヒトモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記抗体またはそのフラグメントが18nM未満のKDでTen−M2に結合する、請求項1に記載の完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体またはそのフラグメントが15nM未満のKDでTen−M2に結合する、請求項1に記載の完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項5】
Ten−M2に結合し、配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号18、配列番号22、配列番号26、配列番号30、配列番号34、配列番号38、配列番号42、配列番号46、および配列番号50からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含むヒトモノクローナル抗体。
【請求項6】
配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号36、配列番号40、配列番号44、配列番号48、および配列番号52からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖をさらに含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
不溶性マトリックスに固定された抗体であって、該抗体が請求項1に記載の抗体である、抗体。
【請求項8】
患者サンプルにおけるTen−M2レベルをアッセイする方法であって、以下の工程:
(a)前記患者サンプルを請求項1に記載の抗Ten−M2抗体と接触させる工程と、
(b)Ten−M2に結合した抗Ten−M2抗体の存在または量を決定する工程、
を含み、それにより、前記患者サンプル中のTen−M2レベルを検出する、方法。
【請求項9】
前記患者サンプルが血液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体またはその結合フラグメント、および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項11】
Ten−M2またはその結合フラグメントに特異的に結合する治療有効用量の抗体を、悪性腫瘍の治療を必要とする動物に投与する工程を含む、悪性腫瘍を治療する方法。
【請求項12】
前記動物がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が完全なヒトモノクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記悪性腫瘍が、肺、腎臓、脳、および卵巣からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が請求項1に記載の抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
Ten−M2に結合する抗体またはその結合フラグメントであって、前記抗体またはその結合フラグメントがTen−M2誘導活性を中和し、前記抗体またはその結合フラグメントがMab120、Mab140、およびMab171、Mab179、Mab199、Mab213からなる群から選択される完全なヒト抗Ten−M2抗体、または完全なヒト抗Ten−M2抗体であるMab120、Mab140、およびMab171、Mab179、Mab199、もしくはMab213と抗原結合ビンが同一の抗体と交差反応する、抗体またはその結合フラグメント。
【請求項1】
Ten−M2に結合してTen−M2活性を中和する、完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体が全長抗体である、請求項1に記載の完全なヒトモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記抗体またはそのフラグメントが18nM未満のKDでTen−M2に結合する、請求項1に記載の完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体またはそのフラグメントが15nM未満のKDでTen−M2に結合する、請求項1に記載の完全なヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメント。
【請求項5】
Ten−M2に結合し、配列番号2、配列番号6、配列番号10、配列番号14、配列番号18、配列番号22、配列番号26、配列番号30、配列番号34、配列番号38、配列番号42、配列番号46、および配列番号50からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含むヒトモノクローナル抗体。
【請求項6】
配列番号4、配列番号8、配列番号12、配列番号16、配列番号20、配列番号24、配列番号28、配列番号32、配列番号36、配列番号40、配列番号44、配列番号48、および配列番号52からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖をさらに含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
不溶性マトリックスに固定された抗体であって、該抗体が請求項1に記載の抗体である、抗体。
【請求項8】
患者サンプルにおけるTen−M2レベルをアッセイする方法であって、以下の工程:
(a)前記患者サンプルを請求項1に記載の抗Ten−M2抗体と接触させる工程と、
(b)Ten−M2に結合した抗Ten−M2抗体の存在または量を決定する工程、
を含み、それにより、前記患者サンプル中のTen−M2レベルを検出する、方法。
【請求項9】
前記患者サンプルが血液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体またはその結合フラグメント、および薬学的に許容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項11】
Ten−M2またはその結合フラグメントに特異的に結合する治療有効用量の抗体を、悪性腫瘍の治療を必要とする動物に投与する工程を含む、悪性腫瘍を治療する方法。
【請求項12】
前記動物がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が完全なヒトモノクローナル抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記悪性腫瘍が、肺、腎臓、脳、および卵巣からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が請求項1に記載の抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
Ten−M2に結合する抗体またはその結合フラグメントであって、前記抗体またはその結合フラグメントがTen−M2誘導活性を中和し、前記抗体またはその結合フラグメントがMab120、Mab140、およびMab171、Mab179、Mab199、Mab213からなる群から選択される完全なヒト抗Ten−M2抗体、または完全なヒト抗Ten−M2抗体であるMab120、Mab140、およびMab171、Mab179、Mab199、もしくはMab213と抗原結合ビンが同一の抗体と交差反応する、抗体またはその結合フラグメント。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図22G】
【図22H】
【図22I】
【図23−1】
【図23−2】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図22G】
【図22H】
【図22I】
【図23−1】
【図23−2】
【公表番号】特表2008−535823(P2008−535823A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503274(P2008−503274)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/011031
【国際公開番号】WO2006/104978
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(301062363)キュラジェン コーポレイション (18)
【出願人】(501343271)アブジェニックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/011031
【国際公開番号】WO2006/104978
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(301062363)キュラジェン コーポレイション (18)
【出願人】(501343271)アブジェニックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]