説明

テバインのモルヒネ誘導体への変換

【課題】 テバインのモルヒネ誘導体への変換方法の提供。
【解決手段】本発明は、テバインの、ヒドロコドンのようなモルヒネ誘導体への変換方法を提供する。前記変換の新規なケタール中間体が提供される。前記変換のためのワンポット法は、金属触媒の存在下でテバインを酸で処理する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、モルヒネ誘導体製品に関する。特に、本発明は、新規な中間体及びモルヒネ誘導体の合成のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
医薬品におけるモルヒネ及びモルヒネ誘導体製品の供給は、構造が以下に示される、モルヒネ1、コデイン2及びテバイン3のようなケシの主成分の単離に依存している。
【化1】

【0003】
これらのアルカロイドはその後、半−合成により、ヒドロコドン4、オキシコドン5、ナルトレキソン6及びナロキソン7のような他の医学的に有用な薬剤に変換される。
【0004】
これらの製品の商業的重要性のために、それらの製造のための効率的な方法を見出すために多くの試みがなされてきた。例えば、米国特許出願第2006/0167258号明細書は、炭化水素溶媒中、カリウム第3アルキレートの存在下でジヒドロコデイン又はその類似体とベンゾフェノンを反応させて、対応するケトンのエノレートを含む反応混合物
を発生させ、続いて親電子剤へ該反応混合物を添加し且つ該生成物を単離することによる、ジヒドロテバイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、ヒドロコドン及びそれらの類似体の製造方法を開示する。米国特許第2006/0074239号明細書は、触媒としてハロゲン化第3ホスフィンの遷移金属錯体を利用する、コデイン、モルヒネ又はそれらの類似体のヒドロコドン、ヒドロモルフォン又はそれらの類似体への触媒的変換のための方法を開示する。米国特許出願第2003/0045720号明細書は、触媒の存在下で麻薬性アルカロイドと酸を混合する(ここで、該方法は水素ガスの実質的な非存在下で行われる。)ことを含む、アルカロイドからのヒドロモルフォン及びヒドロコドンの製造方法を開示する。米国特許第5571685号明細書は、モルヒノン還元酵素を含む、ネオピノン又はコデイノンからのヒドロコドンの製造方法を開示する。他の誘導体の製造方法は、例えば、米国特許第6235906号明細書、第6291675明細書、第6864370号明細書及び第7129248号明細書において、見出すことができる。
【0005】
テバインは、ヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン及びエトルフィンのような種々の化合物へ変換することができるため、特に有用なアヘンアルカロイドである。前駆体アルカロイドとしてのテバインの使用は、それがケシから得られた乳液の微量成分であるという事実により制限されてきた。しかしながら、遺伝子組み換え植物の出現で、乳液中のテバインの含有量は、30%を超え得る。テバインは、タスマニアンアルカロイズ(Tasmanian
Alkaloids)により導入された遺伝的に改変された植物からの主成分として単離され得、米国特許第6067749号明細書中に記載されている。
【0006】
テバインは、今や、かなりの量で単離することができるため、ヒドロコドン及びオキシコドンのような、半−合成のオピオイド誘導体のための理想的な出発物質となり得る。しかしながら、現在の方法を用いるテバインの前記誘導体への変換は、結果として望ましくない中間体の生成を生じる。ICH(調和国際会議(International Conference on Harmonisation))からの最近の提言は、医薬品において、α,β−不飽和ケトンを含む化合物の量を制限すべきであると勧告している(ICH 安全性ガイドライン、ICH S2A、1995年:ICH S2B、1997年)。それゆえ、そのような中間体/不純物の生成を回避し且つ費用効率の高いモルヒネ誘導体の新規合成方法のための満たされていない要求が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第2006/0167258号明細書
【特許文献2】米国特許第2006/0074239号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2003/0045720号明細書
【特許文献4】米国特許第5571685号明細書
【特許文献5】米国特許第6235906号明細書
【特許文献6】米国特許第6291675明細書
【特許文献7】米国特許第6864370号明細書
【特許文献8】米国特許第7129248号明細書
【特許文献9】米国特許第6067749号明細書
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、活性なモルヒネ誘導体の新規な合成方法のための要求に対処する。本発明の方法に従えば、テバインはヒドロコドンのような誘導体へ変換される。本方法の変化はまた、テバインをC14ヒドロキシル化誘導体へ変換するために使用され得る。テバインから誘導された新規なケタール中間体が提供される。これらのケタール中間体はテバインの
活性なモルヒネ誘導体への変換において重要な役割を演じる。また同様にテバインのヒドロコドンへの変換のためのワンポット法も提供される。
【0009】
本発明の第一観点において、テバインのモルヒネ誘導体への変換の方法が提供される。該方法は、以下の工程を含む:テバインを触媒の存在下で少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物と結合して、ケタール中間体を得る工程;ケタール中間体を水素化に付して、水素化された中間体を得る工程;及び、水素化された中間体を加水分解して、モルヒネ誘導体を得る工程。好ましいモルヒネ誘導体は、ヒドロコドン及びオキシコドンを含み、より好ましくはヒドロコドンを含む。
【0010】
好ましい態様において、水素化工程及び加水分解工程は、ワンポット法において組み合わされる。
【0011】
本発明の方法において、有機化合物の種々のタイプが使用され得る。例えば、有機化合物は、メタノール以外の脂肪族アルコールであり得るか又はエチレングリコール又は2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオールのようなジオールであり得る。
【0012】
一つの好ましい態様において、触媒は、プロトン酸又はルイス酸である。好ましい酸触媒は、p−トルエンスルホン酸である。
【0013】
別の好ましい態様において、触媒は、金属触媒である。該触媒は、通常、Pd、Pd(OAc)2、PdCl2、PdBr2、PdO、RhCl3、PtO2、RhCl(PPh33、Rh/Al、Pd/C、Pt/C、CaCO3/Pbに担持したPd、Pd/Al、PtCl2、PtCl4、Al、Zn、Fe、Sn、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ti、Os、Cuから成る群より選択される。好ましい触媒は、Pd(OAc)2
、PdCl2、PdBr2、PdO、RhCl3、PtO2、RhCl(PPh33、Rh/Al、Pd/C、Pt/C、CaCO3/Pbに担持したPd(リンドラー)、Pd/A
l、PtCl2、PtCl4を含む。
【0014】
本発明の別の観点において、本方法に従って得られるケタール誘導体が提供される。
【0015】
好ましい態様において、テバインのケタール誘導体は、下式
【化2】

(式中、Vは炭素原子数2ないし10のアルキル基を表し、
WはH又は炭素原子数1ないし10のアルキル基を表し、
XはH又は炭素原子数1ないし10のアルキル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、プロペニル基、炭素原子数1ないし10のアシル基又は炭素原子数1ないし10のカルボキシ基を表し、
YはH又はI又はBr又はCl又はFを表し、
RはH、炭素原子数1ないし10のアルキル基、炭素原子数1ないし10のヒドロキシル
アルキル基又はアルコキシアルキル基を表し;
1はH、炭素原子数1ないし10のアルキル基、炭素原子数1ないし10のヒドロキシ
ルアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し;
ZはO、S又はNを表し;及び
ここで、R及びR1は同一又は異なり得る。)で示される群から選択される構造を含む。
【0016】
好ましいケタール中間体は、下式
【化3】

で示される化合物を含む。
【0017】
好ましい態様において、ケタール誘導体は、不飽和であるネオピノンのエチレングリコールケタールである。
【0018】
別の好ましい態様において、ケタール誘導体はハロゲン化されたケタールである。
【0019】
本発明の別の観点において、水素化されたケタール中間体が提供される。
【0020】
好ましい態様において、水素化された中間体は以下:
【化4】

で示される構造を有する。
【0021】
本発明の更なる別の観点において、ケタール中間体のアルキルアンモニウム塩が提供される。
【0022】
好ましい態様において、前記塩は、アリル基で誘導化されるか又はメチレンシクロプロピルで誘導化されたものである。
【0023】
本発明の更なる観点において、テバインからモルヒネ誘導体を得る方法が提供される。該方法は:テバインをプソイド−プロトン(pseudo−proton)の存在下で少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物と結合して、ケタール中間体を得る工程;および、前記中間体をワンポットの水素化及び加水分解に付して、モルヒネ誘導体、好ましくはヒドロコドンを得る工程、を含む
【0024】
好ましい態様において、プソイド−プロトンは、臭素、塩素及びヨウ素から成る群より選択されるハロゲン、好ましくは臭素によりもたらされる。
【0025】
別の好ましい態様において、プソイド−プロトンは、遷移金属触媒によりもたらされる。
【0026】
本発明の更なる観点において、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物の存在下で、テバインをPd(OAc)2に曝露することを含む、テバインからヒドロコド
ンを得るワンポット法が提供される。少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物は、好ましくは、エチレングリコールである。
【0027】
本発明の更なる観点において、テバインのヒドロコドンへの変換のためのワンポット法は、水性THFの存在下で、テバインをPd(OAc)2に曝露し、続いて水素化するこ
とを含む。
【0028】
更なる観点において、テバインからヒドロコドンを得るためのワンポット法であって、水性条件下、触媒の存在下において、水素の約1気圧下で、テバインを酸に曝露することを含む方法が提供される。前記酸は、典型的にはHCl又はH2SO4を含む。
【0029】
本発明の別の観点において、テバインをC14ヒドロキシル化誘導体へ変換する方法であって、該方法は以下の工程:
i)触媒の存在下で、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む有機化合物にテバインを曝露して、ケタール中間体を得る工程;前記誘導体を水素化及び加水分解に付す工程;及びii)水素原子をヒドロキシル基へ酸化する工程
を含む。
【0030】
更なる観点において、テバインをC14ヒドロキシル化誘導体へ変換する方法が提供される。該方法は以下の工程:触媒の存在下で、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物にテバインを曝露して、ケタール中間体を得る工程;前記ケタールを14−ヒドロキシケタールへ変換する工程;及び、前記14−ヒドロキシケタールを加水分解に付す工程、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、出発物質としてテバイン(C1921NO3)を用いるヒドロコドン及びその
類似体の製造方法を提供する。本発明の方法は、迅速で且つ費用効率の高いやり方でモルヒネ誘導体の製造を可能にする。
【0032】
ヒドロコドンは、本発明の方法に従って得られる好ましいケトン誘導体であるが、本方法における僅かな変化は、オキシコドン、ナルトレキソン、ナロキソン、14−ヒドロキシコデイノン、ネオピノン、ヒドロモルフォン及びオキシモルフォンのような他の誘導体を生成し得る。本発明は、テバインからのこれらの他の誘導体の製造並びに、本発明の方法を用いて得られる新規な誘導体も包含する。
【0033】
テバインのケトン誘導体への変換のための本発明の方法は、ケタール中間体の合成、それに続く水素化及びその後の加水分解を含み得る。さもなくば、テバインのヒドロコドンへの変換のためのワンポット法が使用され得る。本方法の好ましい態様を後述する。
【0034】
本発明の第一観点において、テバインは、触媒の存在下で、メタノール以外の少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物と結合され、新規のケタール誘導体が製造さ
れる。ケタール誘導体の性質は、使用したアルコールに依存して変化する。例えば、テバインの1,2ジオールへの曝露は、β,γ−不飽和ケタール中間体の生成を導く。
【0035】
典型的な反応スキームを以下に示す:
【化5】

【0036】
TsOHの存在下における、テバイン3のクロロホルム中のエチレングリコールへの曝露は、対応するケタール10への円滑な変換を導く。
【0037】
7-8異性体ケタールは反応混合物中で検出されなかった。ケタール中間体10は、水
素の1気圧下で水素化された中間体13に変換された。続く加水分解でヒドロコドン4が製造されることとなった。ケタール10はまた、ワンポットの水素化及び加水分解手法を用いて、直接4に変換され得る。
【0038】
10を生成するために、テバインのエノールエーテルの崩壊のための別の条件もまた調査された。幾つかの典型的な反応を以下に示す。
【化6】

【0039】
提示されたスキームの一つにおいて‘プソイド−プロトン’として臭素が使用されている。エチレングリコールの存在下において、中間体であるケタール14が形成される。このケタール中間体は、順に、水素化及び加水分解によりヒドロコドンへ変換される。一方、この例においては臭素が使用されているが、他の“プソイド−プロトン”もまた使用され得る。例えば、他のハロゲン並びに金属触媒が置き換えられ得る。
【0040】
ネオピノンケタール10及び14のような、以前に未同定のβ,γ−不飽和ケタールは、単にヒドロコドンだけでなく、種々の麻酔性ケトン誘導体合成のための有益な中間体である。例えば、ケタール10は、オレフィン部分の官能化を経由する、C14ヒドロキシル化種への前駆体として使用され得る。この方法論は、例えば、オキシコドン又はオキシモルフォンを製造するために使用し得る。
【0041】
上述の本発明の改良法において、エチレングリコールの存在下におけるPd(OAc)2の使用は、最初にプロトンの代理を提供し、後に水素化触媒として作用するという二重
の目的を提供する。中間体15はヒドロコドンへ迅速に変換される。この手法を用いて、ヒドロコドンはテバインからのワンポットシークエンスで得られた。
【0042】
本方法の別の変化において、テバインは、水性THF中、Pd(OAc)2で処理され
る。これは中間体16へ迅速に導かれるが、これは直ちに水素の1気圧で処理されてヒドロコドン4を生成する。このことはテバインからのヒドロコドンの製造のための迅速で、効率的な方法を提供する。
【0043】
これらの反応において、Pd(OAc)2が使用されているが、他の触媒も同様に使用
できることは明らかである。
【0044】
本発明はまた、触媒の存在下におけるテバインのヒドロコドンへの1つの1段階変換工程のための方法も提供する。触媒は、例えば、C、Al、Al23、SiO2等のような
固体担体上に担持され得るか又は担持され得ない白金族(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)からの何れの金属でもあり得る。好ましい態様において、以下に示される、Pd/C(10%)の存在下、水素の約1気圧下でのHCl又はH2SO4のような水性の酸中におけるテバインの処理は、ヒドロコドン4を提供する。
【化7】

【0045】
上記の開示は本発明を一般的に記載するものである。当業者は前述の説明を使用して、本発明の組成物を作成及び使用することができ且つ本発明の方法を実施することができると考えられる。より完全な理解は以下に示す特定の実施例を参照することにより得られ得る。これらの実施例は、単に本発明の好ましい態様を説明するために記載するものであり、本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。形態における変化及び等価物の置換は、状況からみて目的にかなうよう提案され得、または考慮され得るよう、考えられる。他の一般的な構造は当業者に明白であると思われる。。ここで参照された特許又は特許出願のような全ての学術論文及び他の資料は、参照することによってここに組み込まれる。
【実施例】
【0046】
実施例
これらの実施例中で特定の用語が使用されているが、そのような用語は記述的な意義を意図するものであって、限定を目的とするものではない。開示及びこれらの実施例において、言及されているが詳細には記載されていない化学的方法は、科学文献中に報告されており、それらは当業者にとって周知である。
【0047】
実施例1.ネオピノンエチレングリコールケタール(10)
テバイン(500mg、1.6mmol、1.0当量)をCHCl3(0.9mL)中
に溶解し、エチレングリコール(1.0g、16.1mmol、10.0当量)を添加した。この2相性溶液に、激しい攪拌下でTsOH・H2O(1.0g、5.3mmol、
3.3当量)を添加した。この反応を還流で45分間加熱し、0℃まで冷却し、飽和の水性K2CO3又は水酸化アンモニウムを用いてpHを>11に調整した。CHCl3(5m
L×3)を用いる反応溶液の抽出、Na2SO4での乾燥及び濾過により暗黄色残渣が得られた。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製(CHCl3:MeOH:NH4OH=98:2:1)により表題の生成物が38%の収率で淡黄色油状物として得られた。
【0048】
FTIR(Vmax cm-1)フィルム:3407,3031,2924,2903,283
3,2791,1634,1603,1504,1448,1325,1277,1258,11
65,1050,1035,825;
1H NMR(CDCl3、600MHz):6.74(d、J=8.2Hz、1H)、6.64(d、J=8.2Hz、1H)、5.56(d、J=5.6Hz、1H)、4.70(s、1H)、4.28(q、J=6.2Hz、1H)、3.93(q、J=6.8Hz、1H)、3.86−3.90(m、4H)、3.81(q、J=6.2Hz、1H)
、3.64(d、J=3.64Hz、1H)、3.26(d、J=18.1Hz、1H)、2.67−2.78(m、2H)、2.61(dd、J=12.6、4.6Hz、1H)、2.50(d、J=1.1Hz、1H)、2.47(s、3H)、2.14(dd、J=16.2、6.4Hz、1H)、2.06(td、J=12.5、5.0Hz、1H)、1.85(dd、J=12.3、1.9Hz、1H);
13C NMR(CDCl3、125.5MHz):145.6、142.1、138.4
、131.8、127.2、119.4、113.8、113.2、108.1、93.1、66.7、65.4、61.2、56.8、45.9、45.8、42.2、36.2、32.7、26.8;
MS(EI)m/z(%):342(23.1)、341(100.0)、326(10.0)、269(10.6)、268(21.24)、255(17.5)、254(52.4)、240(10.0)、226(14.5)、212(11.1)、85(22.2)、83(34.4)、42(18.4);
HRMS(EI)C2023NO4の計算値:341.1627;実測値 341.162

【0049】
実施例2.ジヒドロネオピノンエチレングリコールケタール(13)
CHCl3(1mL)中の10(100mg、0.3mmol)の溶液を、H2の1気圧下でPt/C(10%)を用いて16時間処理した。CHCl3:MeOH:NH4OH=92:8:1を用いてシリカの栓を通過させて濾過し、表題化合物を定量的な収率で得た。
【0050】
FTIR(Vmax cm-1)フィルム:2941,2926,2889,1636,161
1,1502,1441,1325,1275,1258,1190,1155,1060,922;
1H NMR(CDCl3、600MHz):6.67(d、J=8.2Hz、1H)、6.55(d、J=8.2Hz、1H)、4.42(s、1H)、4.12(q、J=6.5Hz、1H)、3.97(q、J=5.0Hz、1H)、3.78−3.85(m、5H)、3.72(q、J=6.3Hz、1H)、3.01−3.05(m、1H)、2.93(d、J=18.3Hz、1H)、2.44(dd、J=12.1、4.3Hz、1H)、2.33(s、3H)、2.27(dd、J=18.2、5.4Hz、1H)、2.09−2.17(m、2H)、1.79(dt、J=12.3、4.9Hz、1H)、1.56−1.66(m、2H)、1.41−1.50(m、2H)、1.08(td、J=12.7、2.2Hz、1H);
13C NMR(CDCl3、125.5MHz):146.6、142.1、129.2
、126.5、118.6、113.4、108.6、94.4、66.4、64.9、59.5、56.5、47.1、43.6、42.9、42.6、36.5、33.4、22.3、20.1;
MS(EI)m/z(%):344(23.3)、343(100.0)、342(13.4)、329(14.4)、256(11.4)、244(17.2)、198(11.1)、99(86.9)、59(16.5)、55(12.0);
HRMS(EI)C2025NO4の計算値:343.1784;実測値 343.177

【0051】
実施例3.ヒドロコドン(4)の10からのワンポット法
MeOH(90μL)中の10(45mg、0.13mmol、1.0当量)の溶液を、H2の1気圧下でPt/C(10%)を用いて12時間処理した。この反応溶液に25
% v/v H2SO4/MeOH(0.5mL)を添加し、これを3時間攪拌した。飽和の水性K2CO3を用いて溶液のpHを>11に調整し、CHCl3(5mL×3)で抽出
した。合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮して、粗物をカラムクロ
マトグラフィー(CHCl3:MeOH:NH4OH=98:2:1)により精製して、75%の収率でヒドロコドンを得た。
【0052】
この方法で合成したヒドロコドンのために作り出した全ての分析データは、ヒドロコドンの標準サンプルのデータと一致した。
【0053】
実施例4.3からのワンポット法
テバイン(100mg、0.32mmol、1.0当量)をTHF(1mL)中に溶解し、H2O(1mL)を添加した。この溶液にPd(OAc)2(72mg、0.32mmol、1.0当量)を添加した。室温で2時間後、この橙色/赤色の反応溶液は、TLCでも分るように、テバインを含んでない。H2を風船を用いて反応容器に添加し、更に4
時間攪拌した。風船をはずし、反応をシリカの栓を通過させて濾過し(CHCl3:Me
OH:NH4OH=92:8:1)、粗生成物4及び20を、1:1.34の比率で得た
。精製をカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH:NH4OH=98:2:1)により行い、4を43%で及び20を52%で得た。
【0054】
この方法で合成したヒドロコドンのために作り出した全ての分析データは、ヒドロコドンの標準サンプルのデータと一致した。20のデータは文献中で公開されているデータと一致した。11
β−ジヒドロ−テバイノン(20)
FTIR(Vmax cm-1)フィルム:3401,2935,2839,2243,171
0,1604,1583,1483,1439,1277,1228,1062,922;
1H NMR(CDCl3、600MHz):6.68(d、J=8.3Hz、1H)、6.60(d、J=8.3Hz、1H)、4.25(dd、J=13.3、2.5Hz、1H)、3.82(s、3H)、3.13−3.16(m、1H)、2.98(d、J=18.5Hz、1H)、2.76(dd、J=18.5、6.0Hz、1H)、2.60−2.64(m、1H)、2.46(s、3H)、2.41−2.45(m、1H)、2.31(dt、J=12.8、3.2Hz、1H)、2.23−2.28(m、2H)、2.12(td、J=12.0、4.1Hz、1H)、2.05(s、1H)、1.84−1.93(m、3H)、1.68(qd、J=13.2、5.0Hz、3H);
13C NMR(CDCl3、125.5MHz):210.7、145.1、144.8
、129.7、122.6、118.5、109.0、57.0、56.1、50.4、46.4、44.3、42.1、41.0、40.9、38.0、27.0、23.8;MS(EI)m/z(%):302(11.6)、301(56.2)、300(18.0)、242(10.3)、164(53.3)、88(11.2)、86(64.3)、84(100.0)、60(19.3)、59(16.7)、49(19.7)、47(23.5)、45(24.7)、44(13.3)、43(34.7)、42(17.8);
HRMS(EI)C1823NO3の計算値:301.1678;実測値 301.167

【0055】
実施例5.1,7,10−トリブロモ−ネオピノンエチレングリコールケタール(14)
テバイン(50mg、0.16mmol、1.0当量)をTHF(1mL)中に溶解し、エチレングリコール(100mg、1.61mmol、10.0当量)を添加した。Br2(103mg、0.64mmol、4.0当量)を一度に添加し、この反応を10時
間攪拌した。過剰の臭素を除去するために、Na2SO3(飽和水溶液)を添加した。反応を0℃に冷却し、飽和の水性K2CO3を用いてpHを>11に調整した。反応用液をCHCl3(5×5mL)で抽出し、この有機抽出物を合わせ、Na2SO4で乾燥した。20
0:1のCHCl3:MeOHを用いる粗残渣のカラムクロマトグラフィーにより、27
%の収率で表題化合物を得た。
【0056】
IR(Vmax cm-1)フィルム:2391,2937,2891,1654,1632,1611、1487,1435,1287,1203,1160,1125,1089,1051、909;
1H NMR(CDCl3、600MHz):6.92(s、1H)、5.88(d、J=6.4Hz、1H)、5.25(s、1H)、4.61(d、J=6.4Hz、1H)、3.94−3.99(m、1H)、3.88(s、3H)、3.81−3.87(m、1H)、3.61−3.64(m、1H)、3.11(d、J=18.6Hz、1H)、3.04(s、3H)、2.70−2.79(m、1H)、2.56−2.68(m、2H)、2.50(s、3H)、2.37−2.43(m、1H)、1.76(dd、J=12.8、2.3Hz、1H);
13C NMR(CDCl3、125.5MHz):145.2、143.1、132.3
、126.5、117.0、116.3、112.0、98.4、92.0、77.2、64.4、62.0、60.1、57.0、49.5、46.4、45.3、41.9、35.1、30.3;
MS(EI)m/z(%):344(23.3)、343(100.0)、342(13.4)、329(14.4)、256(11.4)、244(17.2)、198(11.1)、99(86.9)、59(16.5)、55(12.0);
HRMS(EI)C2025NO4の計算値:343.1784;実測値 343.177

【0057】
実施例6.テバインのPd/C水素化
テバイン(100mg、0.32mmol)を20%HCl(500μL)中に溶解し、Pd/C(10%、5mg)を添加した。この反応を室温でH2の1気圧下で12時間
攪拌し、その後、反応をNH4OHで塩基性にした。反応混合物をCHCl3で3回抽出し、合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH:NH4OH=98:2:1)により、適用された条件に依存する種々の比率における、ヒドロコドン、β−ジヒドロテバイノン及びテトラヒドロテバインの純粋なサンプルが得られた。
【0058】
今や、1つ以上の好ましい態様が実施例の形式で記載された。請求項で特定された発明の範囲から逸脱することなく多数の変化及び改良が実施できることは、当業者にとって明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テバインをモルヒネ誘導体へ変換する方法であって、
該方法は、以下の工程:
a.テバインを触媒の存在下で少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物と結合して、ケタール中間体を得る工程、
b.前記ケタール中間体を水素化に付して、水素化された中間体を得る工程、及び
c.前記水素化された中間体を加水分解して、モルヒネ誘導体を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
前記モルヒネ誘導体が、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、ナルブフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン及びエトルフィンからなる群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モルヒネ誘導体が、ヒドロコドンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記水素化工程及び加水分解工程が、ワンポット法において組み合わされる請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記有機化合物が、メタノール以外の脂肪族アルコールである請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記有機化合物が、ジオールである請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ジオールが、エチレングリコールである請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記ジオールが2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオールである請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、プロトン酸又はルイス酸である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、p−トルエンスルホン酸である請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、金属触媒である請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、Pd、Pd(OAc)2、PdCl2、PdBr2、PdO、RhCl3、PtO2、RhCl(PPh33、Rh/Al、Pd/C、Pt/C、CaCO3/Pbに担持したPd、Pd/Al、PtCl2、PtCl4、Al、Zn、Fe、Sn、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Ti、Os、Cuから成る群より選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、Pd(OAc)2、PdCl2、PdBr2、PdO、RhCl3、PtO2
RhCl(PPh33、Rh/Al、Pd/C、Pt/C、CaCO3/Pbに担持した
Pd(リンドラー)、Pd/Al、PtCl2、PtCl4から成る群より選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、Al、Zn、Fe、Sn、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから成る群より選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、Ti、Os、Cuから成る群より選択される請求項12記載の方法。
【請求項16】
テバインを触媒の存在下で少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物と結合し
てケタール中間体を得る工程を含む、テバインからケタール誘導体の製造方法。
【請求項17】
下式
【化1】

(式中、Vは炭素原子数2ないし10のアルキル基を表し、
WはH又は炭素原子数1ないし10のアルキル基を表し、
XはH又は炭素原子数1ないし10のアルキル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、プロペニル基、炭素原子数1ないし10のアシル基又は炭素原子数1ないし10のカルボキシ基を表し、
YはH又はI又はBr又はCl又はFを表し、
RはH、炭素原子数1ないし10のアルキル基、炭素原子数1ないし10のヒドロキシルアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し;
1はH、炭素原子数1ないし10のアルキル基、炭素原子数1ないし10のヒドロキシ
ルアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し;
ZはO、S又はNを表し;及び
ここで、R及びR1は同一又は異なり得る。)で示される群から選択される構造を含む、
テバインのケタール誘導体。
【請求項18】
ZがOである、請求項17記載のケタール誘導体。
【請求項19】
WがCH3である、請求項17記載のケタール誘導体。
【請求項20】
不飽和であるネオピノンのエチレングリコールケタールを含む請求項17記載のケタール誘導体。
【請求項21】
YがBrである、請求項17記載のケタール誘導体。
【請求項22】
請求項1の方法に従って得られる水素化されたケタール中間体。
【請求項23】
化合物17を含む請求項22記載の水素化されたケタール中間体。
【請求項24】
請求項17で示されるケタールのアルキルアンモニウム塩。
【請求項25】
前記塩はアリル基で誘導されたものである請求項24記載のアルキルアンモニウム塩。
【請求項26】
前記塩はメチレンシクロプロピルで誘導されたものである請求項24記載のアルキルアンモニウム塩。
【請求項27】
テバインからモルヒネ誘導体を得る方法であって、該方法は以下の工程:
a.テバインをプソイド−プロトン(pseudo−proton)の存在下で少なくと
も1つのヒドロキシル基を有する有機化合物と結合して、ケタール中間体を得る工程;および
b.前記中間体をワンポットの水素化及び加水分解に付して、モルヒネ誘導体を得る工程を含む方法。
【請求項28】
前記プソイド−プロトンがハロゲンによりもたらされる請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記ハロゲンが、臭素、塩素及びヨウ素から成る群より選択される請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記ハロゲンが臭素である請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記プソイド−プロトンが遷移金属触媒によりもたらされる請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記モルヒネ誘導体がヒドロコデイン、ヒドロモルフォン、オキシコドン又はオキシモルフォンである請求項24記載の方法。
【請求項33】
前記誘導体がヒドロコドンである請求項29記載の方法。
【請求項34】
テバインからヒドロコドンを得るワンポット法であって、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物の存在下で、テバインをPd(OAc)2に曝露することを含む方
法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物がエチレングリコールである請求項31記載の方法。
【請求項36】
テバインのヒドロコドンへの変換のためのワンポット法であって、水性THFの存在下で、テバインをPd(OAc)2に曝露し、続いて水素化することを含む方法。
【請求項37】
テバインからヒドロコドンを得るためのワンポット法であって、水性条件下、触媒の存在下において、水素の約1気圧下で、テバインを酸に曝露することを含む方法。
【請求項38】
前記酸が、HCl又はH2SO4を含む請求項34記載の方法。
【請求項39】
テバインをC14ヒドロキシル化誘導体へ変換する方法であって、該方法は以下の工程:i)触媒の存在下で、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む有機化合物にテバインを曝露して、ケタール中間体を得る工程;
ii)前記誘導体を水素化及び加水分解に付す工程;及び
iii)水素原子をヒドロキシル基へ酸化する工程
を含む方法。
【請求項40】
テバインをC14ヒドロキシル化誘導体へ変換する方法であって、該方法は以下の工程:i)触媒の存在下で、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む有機化合物にテバインを曝露して、ケタール中間体を得る工程;
ii)前記ケタールを14−ヒドロキシケタールへ変換する工程;及び
iii)前記14−ヒドロキシケタールを加水分解に付す工程
を含む方法。

【公表番号】特表2010−531813(P2010−531813A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513589(P2010−513589)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001178
【国際公開番号】WO2009/003271
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510003140)ブロック ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】