説明

テモゾロマイドを含む放出制御システム

本発明は放出制御システムに関連し、特に、テモゾロマイドを含む放出制御システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の分野
本発明は、放出制御薬物システム(controlled release drug system)、特にテモゾロマイドを含む放出制御システムに関する。
【0002】
本発明の背景
テモゾロマイド(TMZ)、抗癌剤は、マウス腫瘍モデルにおいて、広範のスペクトルである、抗腫瘍性の生理活性を有する。臨床的な研究により、TMZは悪性黒色腫、菌状息肉腫、進行性神経膠腫に有効であることがわかる。加えて、マウスの異種移植性脳腫瘍および肺腫瘍に対する皮下的な治療効果も見られる。インビトロ抗腫瘍試験により、TMZは、脳腫瘍、卵巣腫瘍、黒色腫、および通常の薬物、ダカーバジン、カルムスチン、シスプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、エトポシドおよびビンブラスチンなどを用いる化学療法に耐性のある腫瘍を含む広範の腫瘍型に対し抗腫瘍作用を有することが示される。
【0003】
マウスモデルでの薬物動力学的研究により、インビボでは、TMZは投与後、直ちに吸収され、半減期は1.13時間(腹腔内)または1.29時間(経口)であることが判った。TMZのフェーズI臨床試験では、TMZは非常に迅速に吸収され、0.7時間内に最大血漿濃度に達し、半減期は1.8時間であることがわかった。また、全ての組織に良好に分布することが示され、それには、腎臓、肺、および肝臓を介する血液脳関門の通過も含まれる(Brindley et al., 1986; Newland et al., 1997)。しかし、テモゾロマイドの血漿濃度は、該薬物の投与後直ちに低下する。それ故、反復投与が、効果的な血中薬物濃度を維持するために必要であり、そのため、患者にとっては不便であり苦痛である。
【0004】
薬物の放出制御により、ある特定時間、比較的一定の速度でその薬物を放出することが可能である。放出制御システムの例には、生物分解性のインプラント可能な錠剤および非生物分解性のインプラント可能な錠剤があり得、それら両方とも薬物の放出制御に用いられる。しかし、TMZの放出制御システムは未だに報告されていない。
【0005】
本発明の詳細な説明
従って、本発明の主要目的は、テモゾロマイドの不便な反復投与を解決するべく、テモゾロマイドの治療的有効濃度を維持し得るそのテモゾロマイドの放出制御システムを提供することである。
【0006】
本発明の1つの態様は、テモゾロマイドを3wt%〜10wt%含み、生物分解性ポリマー物質を含む放出制御システムに関連する。
【0007】
本発明の他の態様は、テモゾロマイドを含む放出制御システムを作成する方法に関する。該方法には、3wt%〜10wt%のテモゾロマイドを生物分解性ポリマー物質と混合することが含まれる。
【0008】
本発明により、本発明の該放出制御システムは、テモゾロマイドの送達の制御に適当な種々の剤形で使用し得る。それらの剤形のうち、インプラント可能な錠剤のようなインプラント型が好ましい。
【0009】
ある実施態様により、このテモゾロマイド含有インプラント可能錠剤は、
a.溶媒にポリマー物質を溶解し、ポリマー物質溶液を得ること、
b.該ポリマー物質溶液にテモロゾマイドを分散させるか、または該ポリマー物質溶液とテモロゾマイドとを混合し、ポリマー物質とテモロゾマイドの混合物を作成すること、
c.ポリマー物質とテモロゾマイドとの該混合物を噴霧乾燥し、ミクロスフェアを得ること、そして
d.該ミクロスフェアを錠剤化し、インプラント可能錠剤を得ること、
を含む方法により、調製される。
【0010】
工程(a)において、ポリマー物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、可塑性ポリ塩化ビニル、架橋ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ(2−ペンテン)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(1,4−フェニレン)、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリ(アンヒドリド)(poly(anhydride))からなる群から選択される。好ましくは、該ポリマー物質は、20対80、50対50、80対20、70対30、または30対70の割合、好ましくは20対80の割合で、3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とから縮合するポリ(アンヒドリド)である。ポリマー物質の溶解に使用する溶媒は、ポリマー物質を溶解することができるのみであり、テモロゾマイドを溶解またはテモロゾマイドと反応することはできない。適当な溶媒には、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、またはアセトン、好ましくはジクロロメタンが含まれる。
【0011】
工程(c)の噴霧乾燥の工程において、テモロゾマイドは、緩衝溶液のような、他の賦形剤または更なる安定剤と混合され得る。好ましくは、担体は、非毒性かつ非免疫原性物質であり、そのため、拒絶されることはない。インプラントに適当な物質には、全種類のポリ(アンヒドリド)が含まれる。
【0012】
他の実施態様により、このテモゾロマイド含有インプラント可能錠剤は、
A.溶媒にポリマー物質を溶解し、ポリマー物質溶液を得ること、
B.テモロゾマイド水溶液を該ポリマー物質溶液に加え、得られた溶液を超音波乳化させることにより、最初のエマルジョンを得ること、
C.その最初のエマルジョンをポリビニルアルコール(PVA)と混合し、その後、該溶媒を蒸発させ、硬いミクロスフェアを得ること、
D.水で洗浄することによりPVAおよび残りの溶媒は除去し、該ミクロスフェアを得ること、そして
E.該ミクロスフェアを錠剤化し、インプラント可能錠剤を得ること、
を含む方法により、調製される。
【0013】
工程(A)において、ポリマー物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、可塑性ポリ塩化ビニル、架橋ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ(2−ペンテン)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(1,4−フェニレン)、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリ(アンヒドリド)からなる群から選択される。好ましくは、該ポリマー物質は、20対80、50対50、80対20、70対30、または30対70の割合、好ましくは20対80の割合で、CPPとSAとから縮合するポリ(アンヒドリド)である。ポリマー物質の溶解に使用する溶媒は、ポリマー物質を溶解することができるのみであり、テモロゾマイドを溶解またはテモロゾマイドと反応することはできない。適当な溶媒には、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、またはアセトン、好ましくはジクロロメタンが含まれる。CPPおよびSAから形成されるポリマーは、1%から5%の範囲、好ましくは2%の濃度でジクロロメタン中に存在する。
【0014】
工程(B)において、有機溶媒の体積に対するテモゾロマイド水溶液の体積の比は1:100から1:400、好ましくは1:100である。
【0015】
本発明に使用する生物分解性ポリマー物質、例えば、ポリ(アンヒドリド)は当分野に既知であり、市場において入手可能であるか、または当分野に既知の方法を使用することにより合成可能である。
【0016】
上記方法により作成された該テモゾロマイド含有放出制御システムは、シート、ミクロスフェア、シリンダー、フレークなどの形態であり得る。
【0017】
本発明のテモロゾマイドインプラント錠剤は、ヒトまたは他の動物の体に外科的にインプラントし得るか、または非全身性投与、例えば、皮下、頭蓋内、膣、筋内または皮内(sub-skin)によりインプラントし得、薬物を、疾患の治療に有効な量投与し得る。インプラント用量は、該疾患の重篤度、および患者の体重、年齢および性別により決定される。
【0018】
本発明の放出制御システムにより、テモロゾマイドは常に治療的に有効量が投与され得る。従って、インプラントは、1時間から4週間という種々の長期間に渡り、インビボで制御された方法でテモゾロマイドを放出することができ、それによって、薬物の治療効果を得ることができる。結果として、テモロゾマイドの生物活性は、本発明の放出制御システムを用いることにより、最高となり得る。
【0019】
加えて、本発明のテモロゾマイドインプラントは、種々の担体を用いることにより作成し得る。一般的に、インプラントは、インプラントした日から約30日後には分解され、ポリ(アンヒドリド)物質は、インプラントした日から約6から8週間後には分解される。
【0020】
図面の簡単な説明
図1は、インビボでのテモロゾマイドのインプラント可能錠剤の放出を示すグラフである。そのグラフにおいて、黒四角は、テモゾロマイドを3wt%含むインプラントを示す。丸は5wt%のテモゾロマイドであり、三角は10wt%のテモゾロマイドである。縦座標は放出の累積量を示す(%)。横座標は時間(時)を示す。
【0021】
図2は、時間の平方根に対するテモロゾマイドのインプラント可能錠剤のグラフである。そのグラフにおいて、黒四角は、テモゾロマイドを3wt%含むインプラントを示す。丸は5wt%のテモゾロマイドであり、三角は10wt%のテモゾロマイドである。縦座標は放出の累積量を示す(%)。横座標は時間の平方根を示す。
【0022】
発明を実施するための最良の形態
以下の実施例は単に本発明を述べるものであって、本願発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1
テモゾロマイドを3wt%含むインプラント
生物分解性ポリアンヒドリド97 gは、20対80の割合で3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CCP)とセバシン酸(SA)を混合することにより調製した。テモゾロマイド3gを、得られたポリアンヒドリドに加えた。それら2つは、塩化メチレン中、室温にて混合し、噴霧し、テモゾロマイドを3%含む徐放性ミクロスフェアを得た。残りの塩化メチレンは真空で蒸発させた。
【0024】
噴霧乾燥の条件は以下の通りであった:入り口温度70℃、出口温度65℃、および噴霧圧15 p.s.i。
【0025】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを3wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、その後、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0026】
実施例2
生物分解性ポリアンヒドリド99gは、80対20の割合で3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CCP)とセバシン酸(SA)を混合することにより調製した。テモゾロマイド1gを、得られたポリアンヒドリドに加えた。それら2つは、クロロホルム中、室温にて混合し、噴霧し、テモゾロマイドを1wt%含む徐放性ミクロスフェアを得た。残りの塩化メチレンは真空で蒸発させた。
【0027】
噴霧乾燥の条件は以下の通りであった:入り口温度75℃、出口温度70℃、および噴霧圧15 p.s.i。
【0028】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを1wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、その後、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0029】
実施例3
生物分解性ポリアンヒドリド90gは、30対70の割合で3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)を混合することにより調製した。テモゾロマイド10gを、得られたポリアンヒドリドに加えた。それら2つは、酢酸エチル中、室温にて混合し、噴霧し、テモゾロマイドを10wt%含む徐放性ミクロスフェアを得た。残りの塩化メチレンは真空で蒸発させた。
【0030】
噴霧乾燥の条件は以下の通りであった:入り口温度70℃、出口温度65℃、および噴霧圧15 p.s.i。
【0031】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを10wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、その後、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0032】
実施例 4
生物分解性ポリアンヒドリド95gは、70対30の割合で3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)を混合することにより調製した。テモゾロマイド5gを、得られたポリアンヒドリドに加えた。それら2つは、塩化メチレン中、室温にて混合し、噴霧し、テモゾロマイドを5wt%含む徐放性ミクロスフェアを得た。残りの塩化メチレンは真空で蒸発させた。
【0033】
噴霧乾燥の条件は以下の通りであった:入り口温度75℃、出口温度60℃、および噴霧圧15 p.s.i。
【0034】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを5wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、その後、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0035】
実施例 5
生物分解性ポリアンヒドリド95gは、50対50の割合で3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)を混合することにより調製した。テモゾロマイド5gを、得られたポリアンヒドリドに加えた。それら2つは、塩化メチレン中、室温にて混合し、噴霧し、テモゾロマイドを5wt%含む徐放性ミクロスフェアを得た。残りの塩化メチレンは真空で蒸発させた。
【0036】
噴霧乾燥の条件は以下の通りであった:入り口温度65℃、出口温度60℃、および噴霧圧15 p.s.i。
【0037】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを5wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、その後、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0038】
実施例 6
20対80の割合のCPPとSAの共重合体を室温にて塩化メチレンに溶解し、2%(w/v)の溶液を得、その溶液に、テモゾロマイド水溶液を適当量加えた。十分に混合した後、該混合物を超音波で乳化し、w/oの最初のエマルジョンを作成した。その最初のエマルジョンを、ハイスピードで2%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液と混合し、エマルジョンを作成した。このエマルジョンを、0.1% PVA水溶液中に注ぎ、室温にて4時間撹拌した。溶媒塩化メチレンを室温にて蒸発させると、固いミクロスフェアがPVA水溶液中に現れた。ミクロスフェアを3回蒸留水で洗浄し、残った塩化メチレンおよびPVAを除き、凍結乾燥させ、4wt% テモゾロマイドを含み直径約20マイクロメーターであり流動性の良好なミクロスフェアを得た。
【0039】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを4wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0040】
実施例 7
80対20の割合のCPPとSAの共重合体を室温にて酢酸エチルに溶解し、1%(w/v)の溶液を得、その溶液に、テモゾロマイド水溶液を適当量加えた。十分に混合した後、該混合物を超音波で乳化し、w/oの最初のエマルジョンを作成した。その最初のエマルジョンを、ハイスピードで2% PVA水溶液と混合し、エマルジョンを作成した。このエマルジョンを、0.1% PVA水溶液中に注ぎ、室温にて4時間撹拌した。溶媒酢酸エチルを室温にて蒸発させると、固いミクロスフェアがPVA水溶液中に現れた。ミクロスフェアを3回蒸留水で洗浄し、残った塩化メチレンおよびPVAを除き、凍結乾燥させ、6wt% テモゾロマイドを含み直径約20マイクロメーターであり流動性の良好なミクロスフェアを得た。
【0041】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを6wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0042】
実施例 8
50対50の割合のCPPとSAの共重合体を室温にてクロロホルムに溶解し、5%(w/v)の溶液を得、その溶液に、テモゾロマイド水溶液を適当量加えた。十分に混合した後、該混合物を超音波で乳化し、w/oの最初のエマルジョンを作成した。その最初のエマルジョンを、ハイスピードで2% PVA水溶液と混合し、エマルジョンを作成した。このエマルジョンを、0.1% PVA水溶液中に注ぎ、室温にて4時間撹拌した。溶媒クロロホルムを室温にて蒸発させると、固いミクロスフェアがPVA水溶液中に現れた。ミクロスフェアを3回蒸留水で洗浄し、残った塩化メチレンおよびPVAを除き、凍結乾燥させ、6wt% テモゾロマイドを含み直径約20マイクロメーターであり流動性の良好なミクロスフェアを得た。
【0043】
インプラントの直径およびテモゾロマイドの用量が望ましくなるように、ミクロスフェアを適当な量、圧力8000p.s.i、5秒間、モールドで錠剤化し、直径1.4cm、厚み1.0mmの、テモゾロマイドを6wt%含むインプラント錠剤を作成した。該インプラント錠剤は、窒素気流下でアルミニウム薄層化プラスチックに密封し、2.2*10 Gyのγ線で滅菌した。
【0044】
試験例
動物内にあるインプラント可能な錠剤からのテモロゾマイド放出の動力学
動物内にあるインプラント可能な錠剤からのテモロゾマイド放出の力学的変化についての特性を、この薬物の合理的な臨床的使用において参考となるように、研究により決定した。
【0045】
材料
1. 装置および試薬
Agilent 1100 高速液体クロマトグラフィー、ODS 逆相クロマトグラフィーカラム (Supelcolc-C18 カラム、250mm×4.6mm、5um)、および DADディテクターを用いた。標準的なテモロゾマイドの参照およびインプラント(実施例1の方法で作成)は、Tianjin Tasly Groupにより入手した。メタノール、酢酸 および 酢酸エチルはクロマトグラフィー品質であった。
【0046】
2. 動物
重さ200から250gのオスWisterラットは、Tianjin Medical UniversityのAnimal Centerより入手した。
【0047】
方法
1. ラットの大脳内にあるテモロゾマイドインプラントの浸食および放出
70匹のラットをランダムに4つのグループに分け、3つのグループにはそれぞれ21匹のラットがおり、4番目のグループでは7匹となった。外科的手順の前にラットはすべて麻酔し、毛を剃り、エタノールおよびヨードチンキで滅菌した。中線に沿って2-cm切開し、次いで、バーを用い、後方冠状縫合に対して5-6 mmおよび片側性矢状縫合に対して3 mmの位置に穴を開けた。マイクロサージャリーナイフで4 mmの深さの刻み目を皮質に付けた。最初の3つのグループには、テモロゾマイドを3%、5% および 10%有するインプラント錠剤を挿入し、4番目のグループには、ブランクのポリマー錠剤を挿入した。血液を完全に止めた後、バーの穴を骨蝋でシールし、傷を生理食塩水で洗浄し、手術用クランプでクランプした。
【0048】
最初の3つのグループそれぞれからはラット3匹および4番目のグループからはラット1匹を、インプラント挿入後、2、6、12時間後、および1、3、6、10日後に連続して屠殺した。インプラント錠剤は脳から別々に取り出され、ドライアイスで凍結乾燥した。インプラント中の有効成分テモゾロマイドを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
【0049】
2. テモゾロマイドの抽出
三種類の濃度のテモゾロマイドインプラント錠剤およびブランクの両方を、予定した時点でラットの脳から回収した。凍結乾燥後、残りの錠剤を、移動相2 mlに入れ、5分間超音波処理し、完全に溶解し、5分間、4000 rpmの超遠心分離機にかけ、その後、上清10μlを分析用に取り出した。
【0050】
3. テモゾロマイドの測定
ODS 逆相カラム (Supelcolc-C18 カラム、250mm×4.6mm、5um)を装備したAgilent 1100 HPLC および 最少検出限界0.1mg/mlのDADディテクターを、以下のようなクロマトグラフィー条件下で用いた: 流速1ml/minの移動相としてメタノール-0.5% 酢酸 (10:90)、および検出波長330 nm。テモロゾマイドインプラント錠剤は酢酸エチルで抽出した。
【0051】
4. テモロゾマイドのインビボ放出量
【数1】

【0052】
5. 標準曲線の作成
5、10、30、100、200、300、および400μlの量の100μg/ml テモロゾマイドの標準溶液を遠心分離管中にそれぞれ入れ、窒素気流下で乾燥させた。ブランク錠剤を添加し、テモロゾマイド錠剤と同じ方法で抽出し、それぞれ0.25、0.5、1.5、2.5、3.5、5.0、10.0、15.0、または20.0 μg/mlの濃度の一連のテモロゾマイド標準溶液を得た。その後、上清10μLをHPLCに注入し、ピーク面積を測定した。濃度(C)-ピーク面積(A)曲線を作成し、線形回帰方程式を算出した。
【0053】
結果
1. 脳内にあるテモロゾマイドインプラントの浸食および放出を図1に示した。
【表1】

【0054】
2. HPLCの結果より、標準曲線は、0.4〜20μg/mlの範囲で良好な直線となった。
Y=79.4810+14182.0760x、r=0.9999
【0055】
結論
この試験より、テモロゾマイドはインプラント錠剤からゆっくりと放出し得ることが判った。時間の平方根に対する放出のグラフから、テモゾロマイドインプラントの埋込み後、初期段階で良好な直線が見られることが判った。このことから、インプラントの分解の全過程は2つの段階、導入段階および浸食段階に明確に分かれていることが判る。遊離のテモゾロマイドが、埋込み後1時間以内に該インプラントから放出し始めた。ラットの脳内あるテモゾロマイドインプラントは、10日間、薬物を放出し続け得た。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、インビボでのテモロゾマイドのインプラント可能錠剤の放出を示すグラフである。
【図2】図2は、時間の平方根に対するテモロゾマイドのインプラント可能錠剤のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テモゾロマイドを3〜10wt%および生物分解性ポリマー物質を含む、放出制御システム。
【請求項2】
インプラント可能錠剤である、請求項1の放出制御システム。
【請求項3】
生物分解性ポリマー物質が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、可塑性ポリ塩化ビニル、架橋ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ(2−ペンテン)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(1,4−フェニレン)、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリ(アンヒドリド)からなる群から選択される、請求項1または2の放出制御システム。
【請求項4】
生物分解性ポリマー物質がポリ(アンヒドリド)で有る、請求項3の放出制御システム。
【請求項5】
ポリ(アンヒドリド)が、3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とから縮合したものである、請求項4の放出制御システム。
【請求項6】
3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とが20対80の割合である、請求項5の放出制御システム。
【請求項7】
テモゾロマイド放出制御錠剤を作成する方法であって、
a. 溶媒にポリマー物質を溶解し、ポリマー物質溶液を得ること、
b. 該ポリマー物質溶液にテモロゾマイドを分散させるか、または該ポリマー物質溶液とテモロゾマイドとを混合し、ポリマー物質とテモロゾマイドの混合物を作成すること、
c. ポリマー物質とテモロゾマイドとの該混合物を噴霧乾燥し、ミクロスフェアを得ること、そして
d. 該ミクロスフェアを錠剤化し、インプラント可能錠剤を得ること、
を含む該方法。
【請求項8】
ポリマー物質が、3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とから縮合したものである、請求項7の方法。
【請求項9】
3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とが20対80の割合である、請求項7または8の方法。
【請求項10】
工程(a)の溶媒が塩化メチレンである、請求項7の方法。
【請求項11】
テモゾロマイド放出制御錠剤を作成する方法であって、
a. 溶媒にポリマー物質を溶解し、ポリマー物質溶液を得ること、
b. テモロゾマイドを該ポリマー物質溶液に加え、得られた溶液を超音波乳化させることにより、最初のエマルジョンを得ること、
c. その最初のエマルジョンをポリビニルアルコール(PVA)と混合し、その後、該溶媒を蒸発させ、硬いミクロスフェアを得ること、
d. 水で洗浄することによりPVAおよび残りの溶媒は除去し、該ミクロスフェアを得ること、そして
e. 該ミクロスフェアを錠剤化し、インプラント可能錠剤を得ること、
を含む該方法。
【請求項12】
ポリマー物質が、3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とから縮合したものである、請求項11の方法。
【請求項13】
3,4−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)とセバシン酸(SA)とが20対80の割合である、請求項11または12の方法。
【請求項14】
工程(a)の溶媒が塩化メチレンである、請求項11の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−504698(P2006−504698A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538664(P2004−538664)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000838
【国際公開番号】WO2004/028534
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505114558)天津天士力集団有限公司 (1)
【Fターム(参考)】