説明

テモゾロミドを含む静脈内処方物を用いる治療方法

本発明は、特定の時間をかけた、テモゾロミドを含む静脈内処方物を用いて増殖性障害を治療するための方法および製剤に関連する。これらの方法および製剤は、経口処方物を嚥下できない患者に特にふさわしい。これらの方法および製剤はまた、既に他の治療を受けている患者に、さらなる利便性を提供する。いくつかの実施態様において、本方法を、癌腫、肉腫、グリオーマ、神経膠芽腫、脳癌、脳腫瘍、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、未分化星状細胞腫、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸および/または結腸癌または食道癌から選択される、増殖性障害を有する患者を治療するために使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、特定の注入時間でテモゾロミドを含む静脈内処方物を使用して、増殖性障害を治療するための方法および製剤に関連する。これらの方法および製剤は、経口処方物を嚥下できない患者に特に適切である。これらの方法および製剤はまた、既に他の治療的措置を受けている患者にさらなる利便性を与える。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
脳腫瘍は、全ての悪性疾患の約2%を構成する。非特許文献1。米国において毎年17,000を超える症例が診断され、関連する死亡は約13,000例である。悪性グリオーマを治療するための標準的なプロトコールは、外科的切除による細胞切除、もし実行可能なら、続いて術後補助化学療法ありまたは無しの放射線療法(RT)を含む。Stuppら、前出。
【0003】
脳腫瘍を治療するために認可された化学療法剤は、テモゾロミドまたはTMZである(米国においてはTemodar(登録商標)、ヨーロッパにおいてはTemodal(登録商標)という商品名で、Schering Corp.によって販売されている)。テモゾロミドの化学名は、3,4−ジヒドロ−3−メチル−4−オキソイミダゾ[5,1−d]−as−テトラジン−8−カルボキサミドである(米国特許第5,260,291号を参照のこと)。生物学的な条件下で、テモゾロミドはpH依存性の加水分解によって、その活性な代謝物、MTIC(3−メチル−(トリアゼン−1−イル)イミダゾール−4−カルボキサミド)に分解する。テモゾロミドまたはMTICの細胞毒性は、主にDNAのアルキル化によるものと考えられる。アルキル化(メチル化)は主にグアニンのOおよびN位で起こる。
【0004】
Temodar(登録商標)カプセルは、現在米国において、新規に診断された多形神経膠芽腫、および治療抵抗性未分化星状細胞腫を有する成人患者、すなわち、ニトロソウレアおよびプロカルバジンを含む薬剤レジメで疾患の進行を経験した、最初の再発の患者の治療に効能を有する。Temodal(登録商標)カプセルは、現在ヨーロッパにおいて、標準的な治療後に再発または進行を示す、多形神経膠芽腫または未分化星状細胞腫のような、悪性グリオーマを有する患者の治療のために認可されている。
【0005】
疾患の進行または年齢の結果として、TMZ治療を受けている患者の部分集団は、経口処方物を嚥下するのに困難を有する。嚥下困難は、患者コンプライアンスの低下、およびある場合には、患者が完全に経口処方物を摂取できないことを引き起こし得、それによって薬剤の治療的利点が最適以下になる。従って、TMZの静脈内(IV)処方物、およびそのような処方物を投与する方法を開発する即時の必要性が存在する。そのような処方物は、嚥下困難を有する患者に、代替投与経路を提供する。それに加えて、そのような処方物は、既に他の治療薬を投与されている患者に、重要な利便性を提供する。
【0006】
TMZのIV処方物の規制上の認可を支持するために、大規模な臨床有効性試験または経口(PO)およびIV処方物の間の生物学的同等性試験のいずれかを実施する必要がある。生物学的同等性を確立するために、IV投与後のTMZおよびMTIC両方の薬物動態学的(PK)プロファイルが、PO投与後のものに匹敵しなければならない。特に、IV投与後に得られるTMZおよびMTICの薬物動態学的パラメーター、最高血漿中濃度(Cmax)および血漿中濃度−時間曲線下全面積(AUC)が、PO投与後に得られるものと、90%の信頼区間(すなわち80−125%の割合の中)で匹敵しなければならない。経口投与のTMZおよびMTICのPKプロファイルは公知であるが(例えば非特許文献2を参照のこと)、IV投与のものは未知である。
【0007】
経口およびIV処方物の生物学的同等性を確立することに関連する因子は、TMZの生物学的利用能である。一般的に、経口で投与された薬剤の生物学的利用能は、静脈内に投与された同じ薬剤の生物学的利用能と異なり得る。これは、初回通過効果および/または不完全な吸収のためである。例えば、薬剤を経口投与した場合、それはまず胃腸管に吸収される。吸収された薬剤は、胃腸管膜を心臓脈管系の静脈へ通過し、それが今度は薬剤を肝臓へ、および次いで心臓へと運ぶ。次いで心臓は薬剤を全身の血液循環へ分配する。薬剤が肝臓を通過するときに、それは代謝され得、そして吸収された薬剤の、より少ない部分が全身の循環に入り、それによって薬剤の生物学的利用能を減少させる。他方、IV投与は、薬剤を全身の循環に直接注射し、そして従って、初回通過効果を回避する。
【0008】
TMZの経口生物学的利用能およびPKプロファイルは、生物学的同等性の確立において重要な因子であるが、それらはIVのPKプロファイルを予測しない。従って、TMZおよびMTICの静脈内PKプロファイルを決定するための重要な必要性が存在する。そのような決定は、生物学的同等性の確立、およびTMZのIV処方物の規制上の認可を支持するために有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,260,291号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Stuppら、J.Clin.Onc.、20(5):1375−1382(2002)
【非特許文献2】Baker、Clinical Cancer Research、5:309−317(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
現在TMZはヒトにおいて高い経口生物学的利用能を示すことが見出されている(96%;範囲:89−100%;n=13人の患者)。約0.6時間〜約2.9時間の時間をかけた、TMZを含む処方物の静脈内注入が、TMZおよびMTICの経口PKプロファイルと驚くほど匹敵することも見出された。
【0012】
よって、本発明は、特定の注入時間をかけた、テモゾロミドを含む静脈内処方物を用いて増殖性障害を治療する方法を提供する。これらの方法を、嚥下困難を有する患者、および/または1つまたは複数のさらなる治療薬による治療を受けている患者を治療するために使用し得る。
【0013】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、約0.6〜約2.9時間の時間をかけて注入する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、約0.8時間〜約2.5時間の時間をかけて注入する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、約1時間〜約2時間の時間をかけて注入する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、約1時間〜約1.75時間の時間をかけて注入する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、約1.25時間〜約1.75時間の時間をかけて注入する。他の実施態様において、その静脈内処方物を、約1.35時間〜約1.65時間の時間をかけて注入する。他の実施態様において、その静脈内処方物を、約1.45時間〜約1.55時間の時間をかけて注入する。他の実施態様において、その静脈内処方物を、約1.5時間の時間をかけて注入する。
【0014】
いくつかの実施態様において、本方法を、癌腫、肉腫、グリオーマ、神経膠芽腫、脳癌、脳腫瘍、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、未分化星状細胞腫、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸および/または結腸癌または食道癌から選択される、増殖性障害を有する患者を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は脳腫瘍である。いくつかの局面において、その脳腫瘍はグリオーマである。いくつかの局面において、そのグリオーマは未分化星状細胞腫または多形神経膠芽腫である。他の実施態様において、その増殖性障害は黒色腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は肺癌である。いくつかの局面において、その肺癌は非小細胞肺癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は癌腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は肉腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は脳癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は甲状腺濾胞性癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は膵臓癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は膀胱癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は脊髄形成異常である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は前立腺癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は精巣癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害はリンパ腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は白血病である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は菌状息肉腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は頭頚部癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は乳癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は卵巣癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は結腸直腸および/または結腸癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は食道癌である。
【0015】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物は、1つまたは複数の水性希釈剤、溶解促進剤、賦形剤、増量剤、緩衝液またはpH調整剤を含む。
【0016】
いくつかの実施態様において、本方法はさらに、1つまたは複数のさらなる治療薬を投与する工程を含む。いくつかの実施態様において、その1つまたは複数のさらなる治療薬を静脈内投与する。
【0017】
いくつかの実施態様において、増殖性障害を治療する方法は、投与レジメに従って静脈内処方物を投与する工程を含む。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、治療する状態に基づく。いくつかの実施態様において、そのレジメは、患者から得られたサンプル中のO−メチルグアニン−DNAトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子のメチル化状態に基づく。他の実施態様において、そのレジメは、患者から得られたサンプル中のMGMTタンパク質の存在または欠如に基づく。他の実施態様において、そのレジメは、患者から得られたサンプル中で検出されたMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性に基づく。
【0018】
いくつかの実施態様において、増殖性障害を治療する、1つまたは複数の上記の方法を、テモゾロミドを含む薬学的処方物と共に包装された製品情報において説明し、ここでその処方物は、約1時間〜約2時間の時間をかけた、好ましくは約1.25〜約1.75時間の時間をかけた、好ましくは約1.5時間の時間をかけた、静脈内注入による投与のためにデザインされる。その製品情報はまた、上記で記載したテモゾロミド投与レジメのいずれかを説明し得る。
【0019】
好ましい実施態様において、本発明は、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を患者に投与する工程を含む、増殖性障害を有する患者を治療する方法を含み、ここでその処方物は、約1時間〜約2時間の時間をかけて静脈内注入によって投与され、そしてここで150mg/mの処方物の単回投与量の投与は、約5.5〜約10.6μg/mLの範囲でテモゾロミドの算術的最高血漿中濃度(Cmax)を、そして約137〜約916ng/mLの範囲でMTICの算術的最高血漿中濃度(Cmax)を達成する。1つの実施態様において、テモゾロミドの算術的平均最高血漿中濃度(Cmax)は約7.4μg/mLであり、そしてMTICの平均最高血漿中濃度(Cmax)は約320ng/mLである。
【0020】
別の好ましい実施態様において、本発明は、約1時間〜約2時間の時間をかけた静脈内注入によって、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を、その必要のある患者に投与する工程を含む、増殖性障害を有する患者を治療する方法を含み、ここで150mg/mの処方物の単回投与量の投与後の、時間に対するテモゾロミドの血漿中濃度のプロットは、約17.6〜約37.0(μg.hr)/mLの範囲のテモゾロミドの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じ、そして時間に対するMTICの血漿中濃度のプロットは、約481〜約2639(ng.hr)/mLの範囲のMTICの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じる。1つの実施態様において、テモゾロミドの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約25(μg.hr)/mLであり、そしてMTICの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約1004(ng.hr)/mLである。
【0021】
別の好ましい実施態様において、本発明は、約1時間〜約2時間の時間をかけた静脈内注入によって、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を、その必要のある患者に投与する工程を含む、増殖性障害を有する患者を治療する方法を含み、ここで150mg/mの処方物の単回投与量の投与は、(a)約5.5〜約10.6μg/mLの範囲のテモゾロミドの算術的最高血漿中濃度(Cmax)および約137〜約916ng/mLの範囲のMTICの算術的最高血漿中濃度(Cmax)を達成する;そして(b)時間に対するテモゾロミドの血漿中濃度のプロットは、約17.6〜約37.0(μg.hr)/mLの範囲のテモゾロミドの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じ、そして時間に対するMTICの血漿中濃度のプロットは、約481〜約2639(ng.hr)/mLの範囲のMTICの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じる。1つの実施態様において、テモゾロミドの算術的平均最高血漿中濃度(Cmax)は約7.4μg/mLであり、そしてMTICの平均最高血漿中濃度(Cmax)は約320ng/mLである;そしてここでテモゾロミドの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約25(μg.hr)/mLであり、そしてMTICの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約1004(ng.hr)/mLである。
【0022】
好ましい実施態様において、その増殖性障害はグリオーマまたは黒色腫であり、そしてその処方物は約1.5時間の時間をかけて静脈内注入によって投与される。
【0023】
いくつかの実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を、ポンプを用いて静脈内に注入する。
【0024】
いくつかの実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物は、(a)少なくとも1つの水性希釈剤;および(b)テモゾロミドを実質的に溶解するために十分な、少なくとも1つの溶解促進剤をさらに含み、ここでその溶解促進剤は、尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、およびL−グルタミンからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、その処方物はさらに、請求項1〜請求項22のいずれか1つの方法を含み、ここでその処方物はさらに、マンニトール、L−スレオニン、ポリソルベート−80、クエン酸ナトリウム無水物、および塩酸を含む。
【0025】
いくつかの実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物はさらに、ポリソルベート80、L−スレオニン、およびマンニトールを含む。
【0026】
いくつかの実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物は、凍結乾燥粉末である。いくつかの実施態様において、その凍結乾燥粉末を、滅菌水で再構成する。いくつかの実施態様において、その再構成した処方物は、2.5mg/mLのテモゾロミドを含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、その処方物を、1日あたり75mg/mの投与量で、42日間連続で投与する。他の実施態様において、その処方物を、1日あたり150−200mg/mの投与量で、28日サイクルにおいて5日間連続で投与する。さらに他の実施態様において、その処方物を、1日あたり150−200mg/mの投与量で、14日サイクルにおいて7日間連続で投与する。(挙げた投与量は、体表面積に基づく。)。
【0028】
いくつかの実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を投与されている患者は、さらに併用局所放射線治療を受ける。いくつかの実施態様において、その併用局所放射線治療は、30に分割して投与される60Gyから成る。
【0029】
本発明はまた、増殖性障害を治療するための、製造された製剤を含み、それは(a)テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的処方物、ここでその処方物は凍結乾燥粉末形態である;および約1.5時間(90分)の時間をかけた静脈内注入によって薬学的処方物を投与するための説明書を含む製品情報を含む。1つの実施態様において、その製品情報はさらに、1日あたり75mg/mの投与量で、42日間連続で静脈内注入によって処方物を投与するための説明書を含む。1つの実施態様において、その製品情報はさらに、併用局所放射線治療を施行するための説明書を含む。1つの実施態様において、その併用局所放射線治療は、30に分割して施行される60Gyから成る。別の実施態様において、その製品情報はさらに、1日あたり150−200mg/mの投与量で、28日サイクルにおいて5日間連続で静脈内注入によって処方物を投与するための説明書を含む。さらに別の実施態様において、その製品情報はさらに、1日あたり150−200mg/mの投与量で、14日サイクルにおいて7日間連続で静脈内注入によって処方物を投与するための説明書を含む。
【0030】
上記の方法のいずれにおいても、本発明はさらに、テモゾロミドを含む処方物の経口投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、PO投与後のTMZおよびMTIC両方の性質を特徴付けるために開発された、集団薬物動態学的モデルを示す。
【図2】図2は、予測されたおよびTMZの経口投与後に観察された、TMZ(図2A)およびMTIC(図2B)の血漿中濃度のプロットを示す。IPREは、個々の予測値である。CONCは濃度である。線は、一致線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で記載された本発明を完全に理解し得るために、以下の詳細な説明を述べる。
【0033】
他に規定されなければ、本明細書中で使用された全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で記載されたものと同様の、または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用し得るが、適当な方法および材料を下記で記載する。その材料、方法および例は単なる説明であり、そして制限することを意図しない。本明細書中で述べた全ての出版物、特許および他の文書は、その全体として参考文献に組み込まれる。
【0034】
この明細書を通して、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」のようなバリエーションは、述べた整数または整数のグループを含むことを意味するが、他のあらゆる整数または整数のグループの除外を意味しないと理解される。
【0035】
本発明をさらに規定するために、以下の用語および定義を本明細書中で提供する。
【0036】
「薬学的に許容可能な担体またはアジュバント」という用語は、テモゾロミドと共に患者に投与し得、そしてその薬理学的活性を破壊しない、無毒性の担体またはアジュバントを指す。
【0037】
「治療する」または「治療」という用語は、ヒトのような哺乳類において、細胞増殖性障害の症状を緩和または軽減すること、または細胞増殖性障害に関連する確認可能な測定値の改善を意味することが意図される。
【0038】
「患者」という用語は、哺乳類(例えばヒト)を含む動物を指す。
【0039】
「増殖性障害」という用語は、新生物であり得る。そのような新生物は、良性または悪性のいずれかである。
【0040】
「新生物」という用語は、細胞の新しい、異常な増殖、または正常より速く複製する異常な細胞の増殖を指す。新生物は、良性または悪性のいずれかであり得る、組織化されていない塊(腫瘍)を産生する。
【0041】
「良性」という用語は、非癌性の腫瘍を指し、例えばその細胞は周囲の組織に浸潤しない、または遠い部位に転移しない。
【0042】
「悪性」という用語は、癌性、転移性、近接する組織に浸潤する、またはもはや正常な細胞増殖調節下にない腫瘍を指す。
【0043】
「脳腫瘍」という用語は、グリオーマ、多形神経膠芽腫、上衣腫、星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、乏突起神経膠腫および髄膜腫を含む。
【0044】
「生物学的利用能」という用語は、活性成分または活性部分が、製剤から吸収され、そして作用部位で利用可能になる速度および程度を指す。
【0045】
「生物学的同等性」という用語は、適当にデザインされた試験において、同様の条件下で、同じモル投与量で投与した場合に、医薬品同等物または医薬品代替物における活性成分または活性部分が、薬剤作用部位において利用可能になる速度および程度に、有意差が存在しないことを指す。
【0046】
「薬物動態学的」という用語は、薬剤が体によって吸収、分布、代謝、および排泄される過程を指す。薬物動態学的パラメーターは、「最高血漿中濃度」または「Cmax」、および「血漿中濃度時間曲線下面積」または「AUC」を含む。
【0047】
「血液血漿中濃度」という用語は、試験した患者の血液の血漿成分中の活性成分の濃度を指す。
【0048】
「水性希釈剤」という用語は、患者への注射に適当な水性液体を指す。
【0049】
本発明の目的のための「重量パーセンテージ」または「重量%」という用語は、処方物の全重量に基づいて計算する。
【0050】
「サンプル」という用語は、腫瘍組織、脳組織、脳脊髄液、血液、血漿、血清、リンパ液、リンパ節、脾臓、肝臓、骨髄、またはMGMTタンパク質またはMGMT遺伝子の核酸のいずれかを含む、あらゆる他の生物学的標本として得られた、またはそれらから単離された標本を指す。
【0051】
「MGMT」という用語は、O−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼを指す。MGMTは、O−アルキルグアニン−DNA−アルキルトランスフェラーゼ(AGAT)としても知られる。
【0052】
「GM−CSF」という用語は、(a)Leeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、82:4360(1985)によって記載された、成熟(すなわちシグナルペプチドを欠く)ヒトGM−CSFの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する;および(b)天然GM−CSFと共通の生物学的活性を有するタンパク質を意味する。
【0053】
「アミノ酸配列の実質的同一性」という用語は、その配列が同一であるか、または生物学的活性を実質的に損なわない、1つまたは複数のアミノ酸変化(欠失、追加、置換)によって異なることを意味する。
【0054】
増殖性障害を治療する方法
本発明は、約0.6時間〜約2.9時間の時間をかけて、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩の静脈内処方物を患者に投与することによって、増殖性障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0055】
増殖性障害は、癌腫、肉腫、グリオーマ、神経膠芽腫、脳癌、脳腫瘍、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、未分化星状細胞腫、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸および/または結腸癌、または食道癌を含むがこれに限らない。
【0056】
いくつかの実施態様において、本方法を用いて、脳腫瘍、グリオーマ、黒色腫、肺癌、リンパ腫、直腸結腸および/または結腸癌、頭部および頚部、乳癌、卵巣癌、または食道癌を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて脳腫瘍を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いてグリオーマを治療する。いくつかの局面において、そのグリオーマは未分化星状細胞腫または多形神経膠芽腫である。他の実施態様において、本方法を用いて黒色腫を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて肺癌を治療する。いくつかの局面において、その肺癌は、非小細胞肺癌である。いくつかの実施態様において、本方法を用いてリンパ腫を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて結腸直腸および/または結腸癌を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて頭頚部癌を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて乳癌を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて卵巣癌を治療する。いくつかの実施態様において、本方法を用いて食道癌を治療する。
【0057】
いくつかの実施態様において、約0.6時間〜約2.9時間の時間をかけて、静脈内処方物を投与することによって、本発明の方法を用いて増殖性障害を有する患者を治療する。他の実施態様において、その静脈内処方物を、約0.8時間〜約2.5時間の時間をかけて注入する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、約0.9時間〜約2時間の時間をかけて投与する。他の実施態様において、その静脈内処方物を、約1.25時間〜約1.75時間の時間をかけて注入する。好ましい実施態様において、その静脈内処方物を、約1.35時間〜約1.65時間の時間をかけて注入する。より好ましい実施態様において、その静脈内処方物を、約1.45時間〜約1.55時間の時間をかけて注入する。さらにより好ましい実施態様において、その静脈内処方物を、約1.5時間の時間をかけて注入する。これらの実施態様のいくつかの局面において、その増殖性障害は、癌腫、肉腫、グリオーマ、神経膠芽腫、脳癌、脳腫瘍、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、未分化星状細胞腫、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸および/または結腸癌、または食道癌から選択される。いくつかの局面において、その増殖性障害は脳腫瘍である。いくつかの局面において、その増殖性障害はグリオーマである。いくつかの局面において、その増殖性障害は未分化星状細胞腫または多形神経膠芽腫である。他の局面において、その増殖性障害は黒色腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は肺癌である。さらなる局面において、その肺癌は非小細胞肺癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は癌腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は肉腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は脳癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は甲状腺濾胞性癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は膵臓癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は膀胱癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は脊髄形成異常である。いくつかの局面において、その増殖性障害は前立腺癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は精巣癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害はリンパ腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は白血病である。いくつかの局面において、その増殖性障害は菌状息肉腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は頭頚部癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は乳癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は卵巣癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は結腸直腸および/または結腸癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は食道癌である。
【0058】
本方法において使用される静脈内処方物
本発明の方法において使用される静脈内処方物は、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む。適当な薬学的に許容可能な塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルタミン酸、パモ酸、および酸、およびJournal of Pharmaceutical Science、66、2(1977)において列挙された薬学的に許容可能な塩に関連する他の酸を含むがこれに限らない。
【0059】
いくつかの実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩は、約1重量%〜約50重量%の範囲の量で処方物中に存在する。好ましい実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩は、約2重量%〜約30重量%の範囲の量で処方物中に存在する。より好ましい実施態様において、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩は、約4重量%〜約16重量%の範囲の量で処方物中に存在する。
【0060】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物はさらに、少なくとも1つの水性希釈剤、およびテモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を実質的に溶解するために十分な、少なくとも1つの溶解促進剤を含む。
【0061】
本実施態様によって、薬学的処方物に溶解した、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩のパーセンテージは、約50%〜約100%の範囲であり得る。好ましい実施態様において、そのパーセンテージは、約75%〜約100%の範囲である。より好ましい実施態様において、そのパーセンテージは約100%である。
【0062】
適当な水性希釈剤は、水、通常の生理食塩水、5%のデキストロース溶液およびその混合物を含むがこれに限らない。
【0063】
適当な溶解促進剤は、尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはその混合物を含むがこれに限らない。溶解促進剤は、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩が水性希釈剤に溶解する速度を増加させる。25mgのバイアル中で、少なくとも1つの水性希釈剤中で溶解剤と共に、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩の完全な溶解にかかる時間は、約30秒〜約90秒の範囲であり得る。好ましい実施態様において、その溶解時間は、約30秒〜約60秒の範囲である。その他の実施態様において、その溶解時間は約30秒である。
【0064】
いくつかの実施態様において、尿素を溶解促進剤として使用する。この実施態様によって、その溶解促進剤は、約4重量%〜約60重量%の範囲の量で処方物中に存在し得る。好ましい実施態様において、その溶解促進剤は、約8重量%〜約30重量%の範囲の量で存在し得る。より好ましい実施態様において、その溶解促進剤は、約12重量%〜約22重量%の範囲の量で存在し得る。
【0065】
いくつかの実施態様において、その溶解促進剤は、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、L−グルタミン、またはその混合物である。この実施態様によって、その溶解促進剤は、約2重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し得る。好ましい実施態様において、その溶解促進剤は、約4重量%〜約40重量%の範囲の量で存在し得る。より好ましい実施態様において、その溶解促進剤は、約8重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し得る。
【0066】
いくつかの実施態様において、その溶解促進剤はL−ヒスチジンのみである。この実施態様によって、その溶解促進剤は、約1重量%〜約30重量%の範囲の量で存在し得る。好ましい実施態様において、その溶解促進剤は、約2重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し得る。より好ましい実施態様において、その溶解促進剤は、約4重量%〜約10重量%の範囲の量で存在し得る。
【0067】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物はさらに、少なくとも1つの賦形剤を含む。その賦形剤を、テモゾロミドの溶解性を増加させるために使用し得る。適当な賦形剤は、ポリソルベート、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、ポリソルベート、またはその適当な混合物を含むがこれに限らない。
【0068】
いくつかの実施態様において、その賦形剤はポリソルベートである。適当なポリソルベートは、約500g/モル〜約1900g/モルの範囲の平均分子量を有するポリソルベートを含むがこれに限らない。好ましい実施態様において、そのポリソルベートは、約800g/モル〜約1600g/モルの範囲の平均分子量を有する。より好ましい実施態様において、そのポリソルベートは、約1000g/モル〜約1400g/モルの範囲の平均分子量を有する。ポリソルベートの例は、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート81、ポリソルベート85、およびポリソルベート120を含むがこれに限らない。好ましい実施態様において、そのポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはその混合物である。
【0069】
いくつかの実施態様において、その賦形剤はPEGである。適当なPEGは、約200g/モル〜約600g/モルの範囲の平均分子量を有するPEGを含むがこれに限らない。好ましい実施態様において、そのPEGは、約200g/モル〜約500g/モルの範囲の平均分子量を有する。より好ましい実施態様において、そのPEGは、約200g/モル〜約400g/モルの範囲の平均分子量を有する。PEGの例は、PEG200、PEG300、PEG400、PEG540、およびPEG600を含むがこれに限らない。
【0070】
いくつかの実施態様において、その賦形剤は、プロピレングリコールである。プロピレングリコールは、約76.1g/モルの分子量を有する小分子である。
【0071】
いくつかの実施態様において、その賦形剤は、約1重量%〜約50重量%の範囲の量で静脈内処方物中に存在する。好ましい実施態様において、その賦形剤は、約2重量%〜約30重量%の範囲の量で存在する。より好ましい実施態様において、その賦形剤は、約4重量%〜約16重量%の範囲の量で存在する。
【0072】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物はさらに、少なくとも1つの増量剤を含む。適当な増量剤は、マンニトール、ラクトース、ショ糖、塩化ナトリウム、トレハロース、デキストロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(ヘタスターチ)、セルロース、シクロデキストリン、グリシン、およびその混合物を含むがこれに限らない。この実施態様のいくつかの局面において、その増量剤はマンニトールである。
【0073】
いくつかの実施態様において、その増量剤は、約20重量%〜約80重量%の範囲の量で静脈内処方物中に存在する。好ましい実施態様において、その増量剤は、約35重量%〜約65重量%の範囲の量で存在する。より好ましい実施態様において、その増量剤は、約40重量%〜約56重量%の範囲の量で存在する。
【0074】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物はさらに、少なくとも1つの緩衝液を含む。適当な緩衝液は、クエン酸緩衝液、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、マレイン酸リチウム、マレイン酸ナトリウム、マレイン酸カリウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、コハク酸リチウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、およびその混合物を含むがこれに限らない。
【0075】
いくつかの実施態様において、その緩衝液はクエン酸緩衝液である。適当なクエン酸緩衝液は、クエン酸リチウム一水和物、クエン酸ナトリウム一水和物、クエン酸カリウム一水和物、クエン酸カルシウム一水和物、クエン酸リチウム二水和物、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸カリウム二水和物、クエン酸カルシウム二水和物、クエン酸リチウム三水和物、クエン酸ナトリウム三水和物、クエン酸カリウム三水和物、クエン酸カルシウム三水和物、クエン酸リチウム四水和物、クエン酸ナトリウム四水和物、クエン酸カリウム四水和物、クエン酸カルシウム四水和物、クエン酸リチウム五水和物、クエン酸ナトリウム五水和物、クエン酸カリウム五水和物、クエン酸カルシウム五水和物、クエン酸リチウム六水和物、クエン酸ナトリウム六水和物、クエン酸カリウム六水和物、クエン酸カルシウム六水和物、クエン酸リチウム七水和物、クエン酸ナトリウム七水和物、クエン酸カリウム七水和物、およびクエン酸カルシウム七水和物を含むがこれに限らない。
【0076】
いくつかの実施態様において、その緩衝液は、約5重量%〜約60重量%の範囲の量で静脈内処方物中に存在する。好ましい実施態様において、その緩衝液は、約10重量%〜約40重量%の範囲の量で存在する。より好ましい実施態様において、その緩衝液は、約15重量%〜約28重量%の範囲の量で存在する。
【0077】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物はさらに、pH調整剤を含む。適当なpH調整剤は、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、およびその混合物を含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、そのpH調整剤は塩酸である。
【0078】
いくつかの実施態様において、そのpH調整剤は約1重量%〜約20重量%の範囲の量で静脈内処方物中に存在する。好ましい実施態様において、そのpH調整剤は、約2重量%〜約12重量%の範囲の量で存在する。より好ましい実施態様において、そのpH調整剤は、約4重量%〜約8重量%の範囲の量で存在する。
【0079】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物のpHは、約2.5〜約6.0の範囲である。好ましい実施態様において、そのpHは約3.0〜約4.5の範囲である。より好ましい実施態様において、そのpHは約3.8〜約4.2の範囲である。
【0080】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物は、テモゾロミド、水性希釈剤、尿素、塩酸、少なくとも1つのクエン酸緩衝液、およびマンニトールを含む。
【0081】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物は、テモゾロミド、尿素、塩酸、クエン酸緩衝液、マンニトール、および水、通常の生理食塩水、5%デキストロース溶液、およびその混合物から選択される水性希釈剤を含む。この実施態様のいくつかの局面において、テモゾロミドは、約1重量%〜約50重量%の範囲の量で存在し、塩酸は約1重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し、クエン酸緩衝液は約5重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、尿素は約4重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、そしてマンニトールは約10重量%〜約85重量%の範囲の量で存在する。
【0082】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物は、テモゾロミド、ポリソルベート、塩酸、少なくとも1つのクエン酸緩衝液、マンニトール、水、およびL−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、およびL−グルタミンからなる群から選択される溶解促進剤を含む。この実施態様のいくつかの局面において、テモゾロミドは約1重量%〜約50重量%の範囲の量で存在し、塩酸は約1重量%〜約20重量%の範囲の量で存在し、クエン酸緩衝液は約5重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、ポリソルベートは約1重量%〜約50重量%の範囲の量で存在し、溶解促進剤は約2重量%〜約60重量%の範囲の量で存在し、そしてマンニトールは約15重量%〜約85重量%の範囲の量で存在する。
【0083】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物は、テモゾロミド、ポリソルベート、塩酸、少なくとも1つのクエン酸緩衝液、マンニトール、水、およびL−スレオニンを含む。この実施態様のいくつかの局面において、その静脈内処方物は、テモゾロミド、ポリソルベート80、塩酸、クエン酸ナトリウム緩衝液、マンニトール、水、およびL−スレオニンを含む。
【0084】
本発明の静脈内処方物を、米国特許第6,987,108号において記載された方法によって調製し得、その内容全体は参考文献に組み込まれる。
【0085】
投与レジメ
本発明の静脈内処方物を、投与レジメによって患者に投与する。あらゆる特定の患者に関する特異的投与レジメは、種、年齢、体重、体表面積、身長、一般的な健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄速度、薬剤の組み合わせ、治療する特定の疾患、状態の重症度、患者の腎臓および肝臓機能、採用する特定の活性成分またはその塩、および治療する医師の判断を含む、様々な因子に依存する。
【0086】
いくつかの実施態様において、本発明の静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、増殖性障害を治療するために投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/mである。
【0087】
これらの実施態様のいくつかの局面において、その増殖性障害は、癌腫、肉腫、グリオーマ、神経膠芽腫、脳癌、脳腫瘍、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、未分化星状細胞腫、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸および/または結腸癌、または食道癌から選択される。いくつかの局面において、その増殖性障害は脳腫瘍である。いくつかの局面において、その増殖性障害はグリオーマである。いくつかの局面において、その増殖性障害は未分化星状細胞腫または多形神経膠芽腫である。他の局面において、その増殖性障害は黒色腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は肺癌である。さらなる局面において、その肺癌は非小細胞肺癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は癌腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は肉腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は脳癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は甲状腺濾胞性癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は膵臓癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は膀胱癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は脊髄形成異常である。いくつかの局面において、その増殖性障害は前立腺癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は精巣癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害はリンパ腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は白血病である。いくつかの局面において、その増殖性障害は菌状息肉腫である。いくつかの局面において、その増殖性障害は頭頚部癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は乳癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は卵巣癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は結腸直腸および/または結腸癌である。いくつかの局面において、その増殖性障害は食道癌である。
【0088】
【表1】

いくつかの実施態様において、本発明の方法を、グリオーマを治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、グリオーマを有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0089】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、黒色腫を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、黒色腫を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0090】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、肺癌を治療するために使用する。この実施態様のいくつかの局面において、その肺癌は、非小細胞肺癌である。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、肺癌を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0091】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、リンパ腫を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、リンパ腫を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0092】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、頭頚部癌を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、頭頚部癌を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0093】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、卵巣癌を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、卵巣癌を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0094】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、結腸直腸および/または結腸癌を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、結腸直腸および/または結腸癌を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0095】
いくつかの実施態様において、本発明の方法を、食道癌を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、表1に示す投与レジメの1つによって、食道癌を有する患者に投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを、28日サイクルにおいて5日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり100mg/mを、21日サイクルにおいて14日間である。他の実施態様において、その投与レジメは、1日あたり150mg/mを、14日サイクルにおいて7日間である。さらに他の実施態様において、その投与レジメは、56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。
【0096】
1つまたは複数のさらなる治療薬を投与するための方法
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、テモゾロミドの静脈内処方物および1つまたは複数のさらなる治療薬を投与する工程を含む。その1つまたは複数のさらなる治療薬を、あらゆる経路によって投与し得る。いくつかの実施態様において、その1つまたは複数のさらなる治療薬を、静脈内に投与する。この実施態様のいくつかの局面において、その1つまたは複数のさらなる治療薬を、静脈内注射によって投与する。他の局面において、その1つまたは複数のさらなる治療薬を、静脈内注入によって投与する。
【0097】
適当なさらなる治療薬は、増殖因子、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤、O−ベンジルグアニン(OBG)、制吐剤、ステロイド、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、P−糖タンパク質(P−gp)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、チェックポイントキナーゼ−1(CHK−1)阻害剤、他の抗腫瘍性薬または抗癌剤、およびテモゾロミドの性質を変えて有効性および/または安全性に影響を与える薬剤を含むがこれに限らない。
【0098】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、増殖因子と組み合わせて投与する。適当な増殖因子は、GM−CSF、G−CSF、IL−1、IL−3、IL−6、またはエリスロポエチンを含むがこれに限らない。制限しない増殖因子は、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ)、Procrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、Neupogen(登録商標)(フィルグラスチム、ヒトG−CSF)、Aranesp(登録商標)(高グリコシル化組換えダルベポエチンアルファ)、Neulasta(登録商標)(Neuropegという商標もあり、ペグ化組換えフィルグラスチム、ペグフィルグラスチム)、AlbupoietinTM(長時間作用型エリスロポエチン)、およびAlbugraninTM(アルブミンG−CSF、長時間作用型G−CSF)を含む。いくつかの実施態様において、その増殖因子はG−CSFである。
【0099】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤と組み合わせて投与する。そのPARP阻害剤を、本発明の単位剤形の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与し得る。適当なPARP阻害剤は、CEP−6800(Cephalon;Miknyoczkiら、Mol Cancer Ther、2(4):371−382(2003)において記載される);3−アミノベンズアミド(3−ABとしても知られる;Inotek;Liaudetら、Br J Pharmacol、133(8):1424−1430(2001)において記載される);PJ34(Inotek;Abdelkarimら、Int J Mol Med、7(3):255−260(2001)において記載される);5−ヨード−6−アミノ−1,2−ベンゾピロン(INH(2)BPとしても知られる;Inotek;Mableyら、Br J Pharmacol、133(6):909−919(2001)において記載される)、GPI15427(Tentoriら、Int J Oncol、26(2):415−422(2005)において記載される);1,5−ジヒドロキシイソキノリン(DIQとしても知られる;WalisserおよびThies、Exp Cell Res、251(2):401−413(1999)において記載される);5−アミノイソキノリノン(5−AIQとしても知られる;Di Paolaら、Eur J Pharmacol、492(2−3):203−210(2004)において記載される);AG14361(BryantおよびHelleday、Biochem Soc Trans、32(Pt6):959−961(2004);Veugerら、Cancer Res、63(18):6008−6015(2003);およびVeugerら、Oncogene、23(44):7322−7329(2004)において記載される));ABT−472(Abbott);INO−1001(Inotek);AAI−028(Novartis);KU−59436(KuDOS;Farmerら、「Targeting the DNA repair defect in BRCA mutant cells as a therapeutic strategy」、Nature、434(7035):917−921(2005)において記載される);およびJagtapら、Crit Care Med、30(5):1071−1082(2002);Lohら、Bioorg Med Chem Lett、15(9):2235−2238(2005);Ferrarisら、J Med Chem、46(14):3138−3151(2003);Ferrarisら、Bioorg Med Chem Lett、13(15):2513−2518(2003);Ferrarisら、Bioorg Med Chem、11(17):3695−3707(2003);LiおよびZhang IDrugs、4(7):804−812(2001);Steinhagenら、Bioorg Med Chem Lett、12(21):3187−3190(2002);国際公開第02/06284(Novartis);および国際公開第02/06247(Bayer)において記載されたものを含む。
【0100】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、造血性の毒性を強調するために、O−ベンジルグアニン(OBG)と組み合わせて投与する。OBGを、本発明の静脈内処方物の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与し得る。
【0101】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、制吐剤と組み合わせて投与する。適当な制吐剤は、パロノセトロン、トロピセトロン、オンダンセトロン、グラニセトロン、ベメセトロンまたはその混合物を含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、1つの投与単位中の活性な制吐物質の量は2から10mgであり、1つの投与単位中5から8mgの活性物質の量が特に好ましい。1日投与量は、一般的に2から20mgの活性物質の量を含み、特に好ましいのは5から16mgの活性物質の量である。いくつかの実施態様において、アプレピタントのような、ニューロキニン−1アンタゴニスト(NK−1アンタゴニスト)を、制吐剤と組み合わせて、単独で、またはデキサメタゾンのようなステロイドと組み合わせて投与し得る。他の実施態様において、その静脈内処方物を、NK−1アンタゴニスト単独と、またはステロイドと共に組み合わせて投与する。
【0102】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤と組み合わせて投与する。
【0103】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、P−gp阻害剤と組み合わせて投与する。適当なP−gp阻害剤は、アクチノマイシンD、アミオダロン、アトルバスタチン、ブロモクリプチン、カルベジロール、クラリスロマイシン、デスメチルセルトラリン、ジピリダモール、ドキソルビシン、エメチン、エリスロマイシン、エソメプラゾール、フェノフィブラート、フルペンチキソール、フルオキセチン、インジナビル、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ランソプラゾール、メフロキン、酢酸メゲストロール、メサドン、10,11−メタノジベンゾスベラン、ネルフィナビル、ニカルジピン、オメプラゾール、パントプラゾール、パロキセチン、ペンタゾシン、フェノチアジン、プロゲステロン、プロパフェノン、キニジン、レセルピン、リトナビル、サキナビル、セルタリン(sertaline)、シロリムス、スピロノラクトン、タクロリムス、タモキシフェン、バルスポダール、ベラパミル、ビンブラスチン、ビタミンE−TGPS、GF120918のようなアクリジン誘導体、FK506、VX710、LY335979、PSC−833、GF−102,918および他のステロイド、および米国特許第6,703,400号において開示されたP−gp阻害剤を含み、その内容はその全体として参考文献に組み込まれる。
【0104】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、CDK阻害剤と組み合わせて投与する。適当なCDK阻害剤は、フラボピリドール、オロモウシン、ロスコビチン、米国特許第7,119,200号、米国特許第7,161,003号、米国特許第7,166,602号、米国特許第7,196,078号、米国特許第6,107,305号、K.S.Kimら、J.Med.Chem.45(2002)3905 3927、国際公開第02/10162号、国際公開第0164653号、および国際公開第0164656号において開示されたCDK阻害剤を含み、それらはすべてその全体として参考文献に組み込まれる。
【0105】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、CHK−1阻害剤と組み合わせて投与する。適当なCHK−1阻害剤は、XL−844、Sanchez,Yら(1997)Science 277:1497 1501およびFlaggs,G.ら(1997)Current Biology 7:977 986;米国特許第6,413,755号、同第6,383,744号、および同第6,211,164号;および国際公開第01/16306号、国際公開第01/21771号、国際公開第00/16781号、および国際公開第02/070494号において開示されるCDK−1阻害剤を含み、それらは全てその全体として参考文献に組み込まれる。
【0106】
本発明において有用な、他のCDKおよびCHK阻害剤は、国際公開第2007/044449号;国際公開第2007/044441号;国際公開第2007/044426号;国際公開第2007/044420号;国際公開第2007/044410号;国際公開第2007/044407号;国際公開第2007/044401号;および国際公開第2007/041712号において記載され、それらは全てその全体として参考文献に組み込まれる。
【0107】
他の実施態様において、その静脈内処方物を、別の抗腫瘍性薬と組み合わせて投与する。適当な抗腫瘍性薬は、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、ゲムシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、パクリタキセル、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、インターフェロン、エトポシド、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、タモキシフェン、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシウレア、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミソール、ナベルベン(navelbene)、アナストラゾール(anastrazole)、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフィン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン(Eloxatine(登録商標))、イレッサ(ゲフィニチブ、Zd1839)、XELODA(登録商標)(カペシタビン)、Tarceva(登録商標)(エルロチニブ)、アザシチジン(5−アザシチジン;5−AzaC)、およびその混合物を含むがこれに限らない。
【0108】
いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、米国特許第5,824,346、5号,同第939,098号、同第5,942,247号、同第6,096,757号、同第6,251,886号、同第6,316,462号、同第6,333,333号、同第6,346,524号、および同第6,703,400号において開示されたもののような、他の抗癌剤と共に投与し得、その全てはその全体として参考文献に組み込まれる。
【0109】
MGMT遺伝子のメチル化状態を評価するための方法
テモゾロミドは、アルキル化剤として、DNAらせん構造を構造的にゆがめてDNA転写および翻訳を阻害する、DNAへの結合によって細胞死を引き起こす。正常細胞において、アルキル化剤の損傷作用は、細胞DNA修復酵素、特にMGMTによって修復され得る。MGMTのレベルは、腫瘍細胞において、同じ型の腫瘍細胞の間でさえ異なる。MGMTをコードする遺伝子は、普通変異または欠失していない。むしろ、腫瘍細胞における低レベルのMGMTは、後成的な修飾による;MGMTプロモーター領域はメチル化され、従ってMGMT遺伝子の転写を阻害し、そしてMGMTの発現を阻止する。
【0110】
米国特許公開第20060100188号は、患者のMGMTレベルに基づいて、改善した投与レジメおよび/またはスケジュールに従ってテモゾロミドを投与する工程を含む、患者において癌を治療するための方法を開示し、その内容全体は参考文献に組み込まれる。
【0111】
いくつかの実施態様において、その投与レジメは、患者から得られたサンプル中のMGMT遺伝子のメチル化状態に基づく。いくつかの実施態様において、そのメチル化状態を、MGMT遺伝子がメチル化されているかどうかを決定することによって評価する。他の実施態様において、そのメチル化状態を、MGMT遺伝子のメチル化のレベルを定量的に決定することによって評価する。他の実施態様において、そのメチル化状態を、MGMTタンパク質が発現するかどうかを決定することによって評価する。さらに他の実施態様において、そのメチル化状態を、発現したMGMTタンパク質のレベルを決定すること、または患者サンプル中のMGMTの酵素活性を測定することによって評価する。
【0112】
MGMT遺伝子がメチル化されているかどうかの評価を、当業者に公知のあらゆる方法を用いて行い得る。遺伝子または核酸のメチル化を検出するために有用な技術は、Ahrendtら、J.Natl.Cancer Inst.91:332−339(1999);Belsinkyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:11891−11896(1998);Clarkら、Nucleic Acids Res.22:2990−2997(1994);Hermanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:9821−9826(1996);XiongおよびLaird、Nucleic Acids Res.25:2532−2534(1997);Eadsら、Nuc.Acids.Res.28:e32(2002);Cottrellら、Nucleic Acids Res.32:1−8(2004)によって記載されるものを含むがこれに限らない。
【0113】
メチル化特異的PCR(MSP)は、メチル化感受性制限酵素の使用とは独立に、CpG島内の実質的にあらゆるグループのCpG部位のメチル化状態を迅速に評価し得る。MSP;Hermanら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93(18):9821−9826(1996);Estellerら、CancerRes.59:793−797(1999)を参照のこと。1998年7月28日に発行された米国特許第5,786,146号;2000年1月25日に発行された米国特許第6,017,704号;2001年3月13日に発行された米国特許第6,200,756号;および2001年7月24日に発行された米国特許第6,265,171号;2004年8月10日に発行された米国特許第6,773,897号も参照のこと;これらそれぞれの内容全体は、本明細書中で参考文献に組み込まれる。MSPアッセイは、亜硫酸水素ナトリウムによるDNAの最初の修飾、メチル化されているものではなく全てのメチル化されていないシトシンをウラシルに変換すること、および続いて非メチル化DNAに対してメチル化されたDNAに特異的なプライマーによる増幅を含む。MSPは少量のDNAしか必要とせず、所定のCpG島遺伝子座の0.1%のメチル化アレルに感受性であり、そしてパラフィン包埋サンプルから抽出されたDNAに対して実施し得る。MSPは、メチル化されたDNAを非メチル化DNAと区別するために、差次的制限酵素切断に依存する以前のPCRに基づくアプローチに固有の偽陽性の結果を排除する。この方法は非常に単純であり、そして少量の組織または少数の細胞に対して使用し得る。当業者によって理解されるように、もしMGMTをコードする遺伝子がメチル化されていないなら、MGMTタンパク質は発現し、そして本明細書中で下記に詳述するように検出し得る(例えばウェスタンブロット、免疫組織化学的技術またはMGMT活性に関する酵素的アッセイ等によって)。
【0114】
患者サンプルにおいてMGMTタンパク質のレベルを測定するために、本発明のこの実施態様に有用なウェスタンブロットアッセイの説明的な例は、Liらによる米国特許第5,817,514号において提示され、その開示全体は本明細書中で参考文献に組み込まれる。Liらは、天然ヒトMGMTタンパク質またはアルキル化された活性部位を有するヒトMGMTタンパク質のいずれかに特異的に結合し得るモノクローナル抗体を記載した。
【0115】
患者サンプルにおいてMGMTタンパク質のレベルを測定するために、本発明のこの実施態様に有用な免疫組織化学的技術の説明的な例は、米国特許第5,407,804号において提示され、その開示全体は本明細書中で参考文献に組み込まれる。単一の細胞調製物(免疫組織化学的染色アッセイ)において、および細胞抽出物(イムノアッセイ)において、MGMTタンパク質に特異的に結合し得るモノクローナル抗体が開示される。細胞イメージのデジタル化と組み合わせた蛍光読み取りの使用が記載され、そして腫瘍生検サンプルを含むがこれに限らない、患者またはコントロールサンプルにおけるMGMTレベルの定量的測定を可能にする。
【0116】
MGMTタンパク質の酵素活性を測定するために有用な技術は、Myrnesら、Carcinogenesis、5:1061−1064(1984);Futscherら、Cancer Comm.1:65−73(1989);Kreklawら、J.Pharmacol.Exper.Ther.297(2):524−530(2001);およびNagelら、Anal.Biochem.321(1):38−43(2003)によって記載された方法を含むがこれに限らず、これらの開示全体はその全体として本明細書中に組み込まれる。
【0117】
患者から得られたサンプルにおいて発現するMGMTタンパク質のレベルを、例えばMGMTに特異的な抗体を用いたウェスタンブロットによって、MGMTタンパク質を測定することによって評価し得る。例えば米国特許第5,817,514号を参照のこと。サンプルにおいて発現するMGMTのレベルをまた、例えばMGMTに特異的な標識抗体を採用して、および同じ規定した数のMGMTを発現することが公知の正常リンパ球によって発現されるものとそのレベルを比較して、規定した数の患者細胞において免疫組織化学的技術を用いて、MGMTタンパク質を測定することによって評価し得る(例えば、有用な定量的免疫組織化学的アッセイの説明に関して、Yaroshによる米国特許第5,407,804号を参照のこと)。あるいは、MGMTのレベルを、酵素的アッセイ、すなわちDNAのOまたはNグアニンの位置をメチル化する能力によって評価し得る。これらの方法それぞれにおいて、発現したMGMTタンパク質の測定レベルを、MGMTを発現することが公知の正常リンパ球によって発現されるものと比較する。患者MGMTタンパク質レベルを、以下のように分類する:低=正常リンパ球によって発現されるMGMTの0−30%;中程度=正常リンパ球によって発現されるMGMTの31−70%;そして高=正常リンパ球によって発現されるMGMTの71−300%またはそれより高い。患者MGMTレベルを、以下のように分類する:低=正常リンパ球のMGMT酵素活性の0−30%;中程度=正常リンパ球のMGMT酵素活性の31−70%;そして高=正常リンパ球のMGMT酵素活性の71−300%またはそれより高い。
【0118】
MGMTの特異的活性を評価し得、そしてMGMTを発現することが公知の細胞系統との比較に基づいて以下のように分類する:低=20fmol/mgより低い;中程度=20−60fmol/mg、または高=60fmol/mgより高い;ここでLOX細胞におけるMGMTの特異的活性は、6−9fmol/mgであり、DAOY細胞においては60−100fmol/mgであり、そしてA375細胞においては80−150fmol/mgである。
【0119】
MGMTのメチル化のレベルを、MGMTをコードする遺伝子のメチル化の定量的決定によって評価し得る。COBRA(Xiongら、Nuc.Acids Res.25:2532−2534(1997))と呼ばれる定量的技術を、この決定において使用し得る。Eadsら、Nuc.Acids Res.28(8):e32(2000);米国特許第6,331,393号の「methyl light」技術も使用し得る。患者の細胞におけるMGMTをコードする遺伝子のメチル化のレベルを、MGMTを発現することが公知の、同じ数の正常リンパ球細胞のものと比較する。当業者によって理解されるように、MGMTを発現する正常リンパ球は、MGMT遺伝子の低レベルのメチル化を有する;反対に、MGMT遺伝子の高レベルのメチル化を有する細胞は、低レベルのMGMTタンパク質を発現する(例えばCostelloら、J.Biol.Chem.269(25):17228−17237(1994);Qianら、Carcinogen、16(6):1385−1390(1995)を参照のこと)。患者のメチル化MGMT遺伝子レベルを、以下のように分類する:低=MGMT遺伝子のプロモーター領域において0−20%のCpGがメチル化されている;中程度=MGMT遺伝子のプロモーター領域において21−50%のCpGがメチル化されている;そして高=MGMT遺伝子のプロモーター領域において51−100%のCpGがメチル化されている。
【0120】
COBRAを、少量のゲノムDNAにおいて特異的な遺伝子座におけるDNAメチル化レベルを定量的に決定するために使用し得る。制限酵素消化を使用して、亜硫酸水素ナトリウム処理DNAのPCR産物におけるメチル化依存性の配列差異を明らかにする。(Tanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:686−690(1990)はヒトMGMT遺伝子の単離および配列を記載する)。もとのDNAサンプル中のメチル化レベルを、広い範囲のDNAメチル化レベルにわたって、直線的に定量的な様式で、消化および未消化PCR産物の相対的な量によって示す。この技術を、顕微切開したパラフィン包埋組織サンプルから得られたDNAに信頼性高く適用し得る。従ってCOBRAは使用の容易さ、定量的精度、およびパラフィン切片との類似性という強力な特徴を併せ持つ。
【0121】
MGMTmRNAのレベルを評価するために有用なRT−PCRアッセイの説明的な例は、Wattsら、Mol.Cell.Biol.17(9):5612−5619(1997)において記載される。簡単には、全細胞RNAを、グアニジンイソチオシアネート細胞溶解、続いて5.7MのCsCl勾配で、205,000×gで2.5時間遠心することによって単離する。RNAを、260nmにおける吸光度を測定することによって、Beckman TL−100分光光度計で定量する。200ngのRNA;1×PCR緩衝液(10mMのTris[pH8.3]、50mMのKCl、1.5mMのMgCl);1mMの各dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;200pmolのランダムヘキサマー、40UのRNasin、および24Uのトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(Boehringer Mannheim、Indianapolis、Ind)から成る、40μlの反応混合物を、42℃で60分間インキュベートすることによって、全細胞RNAを逆転写する。次いで99℃で10分間インキュベートすることによって反応を停止させる。20μlの逆転写反応混合物に、80μlの増幅反応緩衝液(1×PCR緩衝液、25pmolのMGMT特異的プライマーおよび/またはコントロール配列、および2UのTaqDNAポリメラーゼ)を加え、続いて94℃で5分間インキュベーション;94℃で1分間、60℃で15秒間、および72℃で1分間を30サイクル;72℃で5分間の最終伸長;および4℃への急速冷却によって、MGMT特異的PCRを行う。例えば、MGMT遺伝子のエキソン4(nt665−684)からの上流プライマー配列を使用し得る。ヌクレオチド位置を、cDNA配列から得ることができる(Tanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:686−690(1990))。コントロールプライマー配列を、同じcDNA反応において採用し得る(例えばヒストン3.3遺伝子のプライマー)。分析に関して、それぞれのPCR産物の10%を、3%アガロースゲルで分離し、そしてエチジウムブロミド染色によって可視化する。
【0122】
MGMT遺伝子のメチル化状態に基づいて、増殖性障害を有する患者を治療する方法
本発明は、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩の静脈内処方物を用いて、増殖性障害を有する患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施態様において、その静脈内処方物を、癌腫、肉腫、グリオーマ、脳癌、脳腫瘍、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸および/または結腸癌、または食道癌から選択される増殖性障害を有する患者を治療するために使用する。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は脳腫瘍である。いくつかの局面において、その脳腫瘍はグリオーマである。いくつかの局面において、そのグリオーマは未分化星状細胞腫または多形神経膠芽腫である。他の実施態様において、その増殖性障害は黒色腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は肺癌である。いくつかの局面において、その肺癌は非小細胞肺癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は癌腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は肉腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は脳癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は甲状腺濾胞性癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は膵臓癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は膀胱癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は脊髄形成異常である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は前立腺癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は精巣癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害はリンパ腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は白血病である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は菌状息肉腫である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は頭頚部癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は乳癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は卵巣癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は結腸直腸および/または結腸癌である。いくつかの実施態様において、その増殖性障害は食道癌である。
【0123】
その静脈内処方物を、投与レジメによって投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、サンプル中のメチル化MGMT遺伝子の検出に基づく。増殖性障害を有する患者から得られたサンプルにおいて、MGMT遺伝子のメチル化が検出された場合、投与レジメは1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間である。メチル化が検出されない場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間である。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMT遺伝子を、MSPを用いて検出する。
【0124】
いくつかの実施態様において、その投与レジメはサンプル中で検出されるMGMT遺伝子のメチル化の程度またはレベルに基づく。メチル化の程度またはレベルが低い場合、その投与レジメは、(i)28日サイクルで21日あたり85mg/m;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり350mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(iv)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(v)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;(vi)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間;(vii)1日あたり150mg/mを28日サイクルで14日間;(viii)1日あたり75mg/mを毎日;(ix)増殖因子と組み合わせて、1日あたり450mg/mを28日サイクルで5日間;(x)1日あたり150mg/mを21日サイクルで14日間;(xi)1日あたり100mg/mを毎日;(xii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを14日サイクルで7日間;または(xiii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを14日サイクルで7日間である。いくつかの局面において、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間である。メチル化の程度またはレベルが中程度の場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間:(iii)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;または(iv)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。メチル化の程度またはレベルが高度である場合、その投与レジメは、(i)1日あたり150―200mg/mを28日サイクルで5日間;または(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間である。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMT遺伝子を、MSPを用いて検出する。
【0125】
他の実施態様において、その投与レジメは、MGMTタンパク質の存在または欠如に基づく。増殖性障害を有する患者から得られたサンプル中で、MGMTタンパク質が検出されない場合、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間である。MGMTタンパク質が検出される場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間から選択される。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMTタンパク質を、ウェスタンブロットイムノアッセイ、免疫組織化学的技術、またはMGMTタンパク質に関する酵素的アッセイを用いて検出する。
【0126】
さらに他の実施態様において、その投与レジメは、サンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは活性に基づく。患者から得られたサンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が、正常リンパ球のものと比較して低い場合、その投与レジメは、(i)1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間;または(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間である。MGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が中程度である場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;または(iv)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。患者から得られたサンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が高い場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間から選択される。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。
【0127】
MGMT遺伝子のメチル化状態に基づいて、グリオーマを有する患者を治療する方法
本発明はまた、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩の静脈内処方物を用いて、グリオーマを有する患者を治療する方法を提供する。その静脈内処方物を、投与レジメによって投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、サンプル中のメチル化MGMT遺伝子の検出に基づく。グリオーマを有する患者から得られたサンプルにおいて、MGMT遺伝子のメチル化が検出された場合、その投与レジメは1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間である。メチル化が検出されない場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間である。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMT遺伝子を、MSPを用いて検出する。
【0128】
いくつかの実施態様において、その投与レジメはサンプル中で検出されるMGMT遺伝子のメチル化の程度またはレベルに基づく。メチル化の程度またはレベルが低い場合、その投与レジメは、(i)28日サイクルで、21日間あたり85mg/m;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり350mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(iv)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(v)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;(vi)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間;(vii)1日あたり150mg/mを28日サイクルで14日間;(viii)1日あたり75mg/mを毎日;(ix)増殖因子と組み合わせて、1日あたり450mg/mを28日サイクルで5日間;(x)1日あたり150mg/mを21日サイクルで14日間;(xi)1日あたり100mg/mを毎日;(xii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを14日サイクルで7日間;または(xiii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを14日サイクルで7日間である。いくつかの局面において、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間である。メチル化の程度またはレベルが中程度の場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;または(iv)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。メチル化の程度またはレベルが高度である場合、その投与レジメは、(i)1日あたり150―200mg/mを28日サイクルで5日間;または(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間である。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMT遺伝子を、MSPを用いて検出する。
【0129】
他の実施態様において、その投与レジメは、MGMTタンパク質の存在または欠如に基づく。グリオーマを有する患者から得られたサンプル中で、MGMTタンパク質が検出されない場合、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間である。MGMTタンパク質が検出される場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間から選択される。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMTタンパク質を、ウェスタンブロットイムノアッセイ、免疫組織化学的技術、またはMGMTタンパク質に関する酵素的アッセイを用いて検出する。
【0130】
さらに他の実施態様において、その投与レジメは、サンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは活性に基づく。患者から得られたサンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が、正常リンパ球のものと比較して低い場合、その投与レジメは、(i)1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間;または(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間である。MGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が中程度である場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;または(iv)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。患者から得られたサンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が高い場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間から選択される。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。
【0131】
MGMT遺伝子のメチル化状態に基づいて、黒色腫を有する患者を治療する方法
本発明はまた、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩の静脈内処方物を用いて、黒色腫を有する患者を治療する方法を提供する。その静脈内処方物を、投与レジメによって投与する。いくつかの実施態様において、その投与レジメは、サンプル中のメチル化MGMT遺伝子の検出に基づく。黒色腫を有する患者から得られたサンプルにおいて、MGMT遺伝子のメチル化が検出された場合、その投与レジメは1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間である。メチル化が検出されない場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間である。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMT遺伝子を、MSPを用いて検出する。
【0132】
いくつかの実施態様において、その投与レジメはサンプル中で検出されるMGMT遺伝子のメチル化の程度またはレベルに基づく。メチル化の程度またはレベルが低い場合、その投与レジメは、(i)28日サイクルで21日間あたり85mg/m;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり350mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(iv)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(v)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;(vi)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間;(vii)1日あたり150mg/mを28日サイクルで14日間;(viii)1日あたり75mg/mを毎日;(ix)増殖因子と組み合わせて、1日あたり450mg/mを28日サイクルで5日間;(x)1日あたり150mg/mを21日サイクルで14日間;(xi)1日あたり100mg/mを毎日;(xii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを14日サイクルで7日間;または(xiii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを14日サイクルで7日間である。いくつかの局面において、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間である。メチル化の程度またはレベルが中程度の場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;または(iv)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。メチル化の程度またはレベルが高度である場合、その投与レジメは、(i)1日あたり150―200mg/mを28日サイクルで5日間;または(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間である。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMT遺伝子を、MSPを用いて検出する。
【0133】
他の実施態様において、その投与レジメは、MGMTタンパク質の存在または欠如に基づく。黒色腫を有する患者から得られたサンプル中で、MGMTタンパク質が検出されない場合、その投与レジメは、1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間である。MGMTタンパク質が検出される場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間から選択される。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。いくつかの実施態様において、そのMGMTタンパク質を、ウェスタンブロットイムノアッセイ、免疫組織化学的技術、またはMGMTタンパク質に関する酵素的アッセイを用いて検出する。
【0134】
さらに他の実施態様において、その投与レジメは、サンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは活性に基づく。患者から得られたサンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が、正常リンパ球のものと比較して低い場合、その投与レジメは、(i)1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間;または(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間である。MGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が中程度である場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(ii)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間;(iii)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;または(iv)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である。患者から得られたサンプル中で検出されるMGMTタンパク質のレベルまたは酵素活性が高い場合、その投与レジメは、(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(ii)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;または(iii)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間から選択される。いくつかの実施態様において、そのサンプルは腫瘍生検サンプルである。
【0135】
さらに他の実施態様において、本明細書中の発明で記載されたテモゾロミド静脈内処方物のいずれも、増殖性障害を治療するための製造された製剤を含み得る。その製剤はまた、製品情報も含み、それは約0.6時間〜約2.9時間の時間をかけて静脈内注入によって、または(a)1日あたり150−200mg/mを28日サイクルで5日間;(b)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを28日サイクルで5日間;(c)1日あたり100mg/mを28日サイクルで14日間;(d)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを28日サイクルで5日間;(e)1日あたり75mg/mを28日サイクルで21日間;(f)56日サイクルにおいて、42日間あたり75mg/m2である;(g)28日サイクルで21日間あたり85mg/m;(h)増殖因子と組み合わせて、1日あたり350mg/mを28日サイクルで5日間;(i)1日あたり100mg/mを21日サイクルで14日間;(j)増殖因子と組み合わせて、1日あたり400mg/mを28日サイクルで5日間;(k)1日あたり150mg/mを14日サイクルで7日間;(l)1日あたり100mg/mを28日サイクルで21日間;(m)1日あたり150mg/mを28日サイクルで14日間;(n)1日あたり75mg/mを毎日;(o)増殖因子と組み合わせて、1日あたり450mg/mを28日サイクルで5日間;(p)1日あたり150mg/mを21日サイクルで14日間;(q)1日あたり100mg/mを毎日;(r)増殖因子と組み合わせて、1日あたり250mg/mを14日サイクルで7日間;および(s)増殖因子と組み合わせて、1日あたり300mg/mを14日サイクルで7日間を含むがこれに限らない、本明細書中で記載された投与レジメのいずれかによって処方物を投与するための指示を含む。
【0136】
本発明の製剤を、パッケージに望ましいテモゾロミド静脈内処方物、および約0.6〜約2.9時間の時間をかけて、または本明細書中で記載された投与レジメのいずれかによって、静脈内注入によって処方物を投与するための指示を含む、製品情報を合わせることによって製造し得る。
【0137】
本発明をより完全に理解するために、以下の実施例を述べる。これらの実施例は、説明のためだけの目的であり、そしていかなる方法においても本発明の範囲を制限すると解釈されない。
【実施例】
【0138】
実施例1
PO投与後のTMZおよびMTIC両方の性質を特徴付けるために、集団薬物動態学的モデルを開発した。試験から得られた経口データ(Middleton、Journal of Clinical Oncology、15(1):158−166(2000)を参照のこと)を、TMZおよびMTICの吸収、分布、代謝、および排泄を説明する薬物動態学的パラメーターを推定するために使用した。1次吸収、TMZの1コンパートメント分布、TMZの1次排泄、MTICの1コンパートメント分布、およびMTICの1次排泄によるPKモデルを使用した。Drugs and Pharmaceutical Sciences、第15巻:Pharmacokinetics、GibaldiおよびPerrier、第2版、1982。モデルを説明する数学的式を図1に示す。
【0139】
上記で示した式において、kは吸収速度定数、Fは経口薬剤投与後のTMZの生物学的利用能、kはTMZからMTICへの変換を説明する速度定数、Vはヒト体内におけるTMZの分布容積、Vはヒト体内におけるMTICの分布容積、kはMTICの排泄速度定数、MWtratioはTMZのMTICに対する分子量の比、Aは胃腸管(GIT)中のTMZの量、Cは血漿である。
【0140】
経口PKモデルを、後のチェック技術によって確認した。この技術を、2番目の研究を用いてデータをシミュレートし[Bealeら、Cancer Cehmother.Pharmacol.44:389−394(1999)を参照のこと]、そしてシミュレートした結果を実際の結果と比較することによって行った。表2は、この比較の結果を示す。
【0141】
【表2】

図2は、予測された、およびTMZの経口投与後に観察された、TMZ(図2A)およびMITC(図2B)の血漿中濃度のプロットを示す。
【0142】
この比較は、使用した経口PKモデルは、2番目の試験から得られた実際の経口PKデータをよく説明することを示した。
【0143】
一旦経口PKモデルが立証されたら、それを修飾してIV PKモデルを作成した。特に、TMZの吸収要素を説明する経口PKモデルからの式を、TMZの注入速度を説明する式と置換した。具体的には、図1で説明した最初の式を除き、そして2番目の式を以下の式で置換した:
【0144】
【化1】

ここでKはIV注入速度である。IV PKモデルの作成において、2つの仮定を行った。最初に、そのモデルは、初回通過効果が存在しないと仮定する。すなわち、一旦TMZが吸収されたら、それは全身循環で利用可能となる。2番目に、そのモデルは、TMZが全身循環に直接注入されるので、生物が利用可能な割合Fは1と等しいと仮定する。しかし、TMZに対する経口生物学的利用能(F)は未知である。
【0145】
IV PKモデルを検証するために、初回通過効果および経口生物学的利用能を、二方向クロスオーバーパイロット生物学的利用能試験において決定した。これは、組織学的に確認された原発性CNS悪性疾患を有する成人患者における、IVおよびPOテモゾロミドの相対的生物学的利用能を比較するためにデザインされた、第1相、無作為化、非盲検パイロット試験であった。その試験を、Good Clinical Practiceに適合して行った。18人までの患者(12人の評価可能な患者を得るため)を、1つまたは2つのセンターで登録するように計画した。13人の患者が2つのセンターで登録された(センター1で7人、センター2で6人)。13人の患者全てを、薬物動態学的分析および安全性分析に含めた。安全性評価のために治療が終了した後23日間患者をフォローした。
【0146】
試験適格性の必要条件全てを満たした後、患者は4週間の治療サイクルの間に、テモゾロミドを5日間(1日目から5日目)投与された。1、2、および5日目に、患者はPO投与としてテモゾロミド(200mg/m/日)を投与された。3および4日目には、患者は、1日はPO投与として、そして他の日はIV投与として、テモゾロミド(150mg/m/日)を投与された。IV投与を、無作為なコードによって、3日目または4日目のいずれかに、1時間の注入(注入ポンプを用いた)によって投与した。血漿中のテモゾロミドおよびMTICの濃度を決定するために、薬物動態学的評価を、3日目および4日目に行った。薬物動態学的データおよび対数変換したCmaxおよびAUCの統計的解析を、表3にまとめる。
【0147】
【表3】

a:PKサンプリング日に投与されたTMZの投与量は(POおよびIV両方とも)150mg/m/日であった。
b:モデルに基づく(最小二乗)平均
c:PO投与に対するIVの平均値の比
d:試験場所における不適切なサンプル獲得のために、経口およびIV治療に関する被検者007番のMTICのPKデータは解析から除外した
e:AUC=r≧0.9を有する被検者プロファイルに関してはAUC(I)、およびr<0.9を有する被検者プロファイルに関してはAUC(tf)に等しい。
【0148】
このパイロット試験は、TMZの経口生物学的利用能は、ヒトにおいて96%(範囲:89−100%、n=13)であることを示した。
【0149】
実施例2
IV PKモデルおよびPharsight’s Trial Simulatorを用いて、臨床試験シミュレーションを行った。異なる経口生物学的利用能および経口投与後に得られるCmaxおよびAUCに匹敵するようにTMZが全身血液循環に注入される必要のある全時間を評価するために、複数のシミュレーションシナリオを行った。各シミュレーションを100回繰り返し、そして成功の確率を、試験が4つの生物学的同等性基準、Cmax TMZ、Cmax MTIC、AUC TMZ、およびAUC MTICに合格した回数として規定した。IV投与のCmaxおよびAUCの信頼区間は、経口投与のものの80−125%以内であった。表4はこれらのシミュレーションの結果を示す。
【0150】
【表4】

*4つの基準は、Cmax TMZ、Cmax MTIC、AUC TMZ、およびAUC MTICである。
【0151】
IV PKモデルを用いたシミュレーション結果は、もし全経口TMZ生物学的利用能(F)が90%より高い、または90%と等しいなら(すなわちF=0.9−1.0)、IV投与量を調整する必要はないことを示した。そのシミュレーションはまた、TMZおよびMTICの経口PKプロファイルに匹敵する、最適なIV注入時間は1.5時間であることも示す。
【0152】
実施例3
本発明による静脈内処方物を、表5において提供する。その処方物を、米国特許第6,987,108号の方法によって調製し、そして約4のpHを有していた。
【0153】
【表5】

実施例4
原発性CNS悪性疾患を有する22人の患者を、臨床生物学的同等性試験に登録し、そして本発明の方法によって治療した。19人の患者が、薬物動態学的に評価可能である(evaluablee)と判断された。この試験は、経口およびIV TMZのPKの、無作為化、非盲検、2方向クロスオーバー試験であった。実施例3のIV処方物を、約1.5時間の時間をかけて、静脈内注入によって150−200mg/mの投与量で投与した。
【0154】
患者を2つの群、治療Aを受ける患者および治療Bを受ける患者に分ける。治療Aの患者は、28日サイクルの、1、2、および5日目に経口TMZ(200mg/m)、3日目にIV TMZ150mg/m、および4日目に経口TMZ(150mg/m)を投与される。治療Bの患者は、28日サイクルの、1、2、および5日目に経口TMZ(200mg/m)、3日目に経口TMZ(150mg/m)、および4日目にIV TMZ(150mg/m)を投与される。TMZおよびMTICのCmaxおよびAUCを、3および4日目に、当業者に公知の方法によって決定する。
【0155】
テモゾロミドおよびその代謝物MTICのIVおよび経口投与後の、平均血漿中濃度−時間データを、表6および7にそれぞれ示す。
【0156】
【表6】

【0157】
【表7】

テモゾロミドのIVおよび経口投与後の、テモゾロミドおよびMTICの平均血漿薬物動態学的パラメーターを、表8にまとめる。
【0158】
【表8】

テモゾロミドおよびその代謝物MTICの、治療推定比(treatment ration estimate)(IV/PO)およびCmax、AUC(tf)およびAUC(I)パラメーターの90%CIを、表9に示す。薬物動態学的に評価可能な被検者(n=19)に関する、テモゾロミドのIV(1.5時間注入)および経口投与後の、テモゾロミドおよびMTICのCmax、AUC(tf)およびAUC(I)の値の統計的比較に基づいて、2つの処方物は生物学的に同等である。Cmax、AUC(tf)およびAUC(I)に関するテモゾロミドおよびMTICの90%CIは、80−125%の許容された生物学的同等性ガイドライン内である。
【0159】
【表9】

TMZ=テモゾロミド;MTIC=モノエチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド;AUC(I)=0時間から無限大までの濃度−時間曲線下面積;Cmax=観察された最高の血漿中濃度;PO=経口投与;IV=静脈内投与
PE:薬物動態学的に評価可能な被検者。被検者107、121、および122は除外した。
a:薬物動態学的サンプリング日に投与されたTMZの投与量は(POおよびIV両方とも)150mg/m/日であった。
b:モデルに基づく(最小二乗)平均
c:PO投与に対するIVの平均値の比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖性障害を有する患者を治療する方法であって、該方法は、該患者にテモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を投与する工程を含み、該処方物は、約1時間〜約2時間の期間の間、静脈内注入により投与される、方法。
【請求項2】
増殖性障害を有する患者を治療する方法であって、該方法は、約1時間〜約2時間の期間の間、静脈内注入によって、該患者にテモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を投与する工程を含み、ここで該処方物の150mg/mの単回用量の投与は、約5.5〜約10.6μg/mLの範囲のテモゾロミドの算術的最高血漿中濃度(Cmax)および約137〜約916ng/mLの範囲のMTICの算術的最高血漿中濃度(Cmax)を達成する、方法。
【請求項3】
前記テモゾロミドの算術的平均最高血漿中濃度(Cmax)は約7.4μg/mLであり、そして前記MTICの平均最高血漿中濃度(Cmax)は約320ng/mLである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
増殖性障害を有する患者を治療する方法であって、該方法は、約1時間〜約2時間の期間の間、静脈内注入によって、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を、それを必要とする該患者に投与する工程を含み、ここで150mg/mの該処方物の単回用量の投与後の、時間に対するテモゾロミドの血漿中濃度のプロットは、約17.6〜約37.0(μg.hr)/mLの範囲のテモゾロミドの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じ、そして時間に対するMTICの血漿中濃度のプロットは、約481〜約2639(ng.hr)/mLの範囲のMTICの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じる、方法。
【請求項5】
前記テモゾロミドの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約25(μg.hr)/mLであり、そして前記MTICの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約1004(ng.hr)/mLである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
増殖性障害を有する患者を治療する方法であって、該方法は、約1時間〜約2時間の期間の間、静脈内注入によって、テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む処方物を、それを必要とする該患者に投与する工程を含み、ここで150mg/mの該処方物の単回用量の投与は、
約5.5〜約10.6μg/mLの範囲のテモゾロミドの算術的最高血漿中濃度(Cmax)および約137〜約916ng/mLの範囲のMTICの算術的最高血漿中濃度(Cmax)を達成し;そして
時間に対するテモゾロミドの血漿中濃度のプロットは、約17.6〜約37.0(μg.hr)/mLの範囲のテモゾロミドの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じ、そして時間に対するMTICの血漿中濃度のプロットは、約481〜約2639(ng.hr)/mLの範囲のMTICの算術的AUC(0時間から無限大まで)を生じる、方法。
【請求項7】
前記テモゾロミドの算術的平均最高血漿中濃度(Cmax)は約7.4μg/mLであり、かつ前記MTICの平均最高血漿中濃度(Cmax)は約320ng/mLであり;そして前記テモゾロミドの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約25(μg.hr)/mLであり、かつ前記MTICの算術的平均AUC(0時間から無限大まで)は約1004(ng.hr)/mLである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記増殖性障害は、癌腫、肉腫、グリオーマ、黒色腫、肺癌、甲状腺濾胞性癌、膵臓癌、未分化星状細胞腫、膵臓癌、膀胱癌、脊髄形成異常、前立腺癌、精巣癌、リンパ腫、白血病、菌状息肉腫、頭頚部癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌および/または結腸癌、ならびに食道癌からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記増殖性障害がグリオーマである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記増殖性障害が黒色腫である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記増殖性障害が肺癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記増殖性障害が非小細胞肺癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記増殖性障害がリンパ腫である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記増殖性障害が頭頚部癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記増殖性障害が卵巣癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記増殖性障害が結腸直腸癌および/または結腸癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記増殖性障害が食道癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記処方物が、約1.25時間〜約1.75時間の期間の間、静脈内注入によって投与される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記処方物が、約1.35時間〜約1.65時間の期間の間、静脈内注入によって投与される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記処方物が、約1.45時間〜約1.55時間の期間の間、静脈内注入によって投与される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記処方物が、約1.5時間(90分)の期間の間、静脈内注入によって投与される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩が、ポンプを用いて静脈内注入される、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記処方物が、(a)少なくとも1つの水性希釈剤;および(b)前記テモゾロミドを実質的に溶解するために十分な、少なくとも1つの溶解促進剤をさらに含み、ここでその溶解促進剤は、尿素、L−ヒスチジン、L−スレオニン、L−アスパラギン、L−セリン、およびL−グルタミンからなる群から選択される、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記処方物が、マンニトール、L−スレオニン、ポリソルベート−80、クエン酸ナトリウム無水物、および塩酸をさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記処方物が、凍結乾燥粉末である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記凍結乾燥粉末が、滅菌水中で再構成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記滅菌水中で再構成された処方物は、2.5mg/mLのテモゾロミドを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記凍結乾燥粉末が、100mgのテモゾロミドを含むバイアルに含まれ、そして該凍結乾燥粉末は、41mLの滅菌水中で再構成される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記処方物が、1日あたり75mg/mの用量で、42日間連続で投与される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記患者は、併用局所放射線治療をさらに受ける、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記併用局所放射線治療は、30に分割して施行される60Gyからなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記処方物が、1日あたり150〜200mg/mの投与量で、28日のサイクルで5日間連続して投与される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記処方物が、1日あたり150〜200mg/mの投与量で、14日のサイクルで7日間連続して投与される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1つまたは複数のさらなる治療薬を投与する工程を含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたは複数のさらなる治療薬は、静脈内投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
増殖性障害を治療するための、製造された製剤であって、該製剤は、
(a)テモゾロミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的処方物であって、ここで該処方物は凍結乾燥粉末形態である、薬学的処方物;および
(b)約1.5時間(90分)の期間の間、静脈内注入によって該薬学的処方物を投与するための説明書を含む製品情報、
を含む、製剤。
【請求項37】
前記製品情報は、1日あたり75mg/mの投与量で、42日間連続して静脈内注入によって前記処方物を投与するための説明書をさらに含む、請求項34に記載の製剤。
【請求項38】
前記製品情報は、併用局所放射線治療を施行するための説明書をさらに含む、請求項35に記載の製剤。
【請求項39】
前記併用局所放射線治療は、30に分割して施行される60Gyからなる、請求項36に記載の製剤。
【請求項40】
前記製品情報は、1日あたり150〜200mg/mの投与量で、28日サイクルで5日間連続して静脈内注入によって前記処方物を投与するための説明書をさらに含む、請求項34に記載の製剤。
【請求項41】
前記製品情報は、1日あたり150〜200mg/mの投与量で、14日サイクルで7日間連続して静脈内注入によって前記処方物を投与するための説明書をさらに含む、請求項34に記載の製剤。
【請求項42】
前記テモゾロミドを含む処方物の経口投与をさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2010−526809(P2010−526809A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507451(P2010−507451)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/005875
【国際公開番号】WO2008/140724
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】