説明

テラゾの製造方法

【課題】骨材の剥離を防止できるテラゾの製造方法を提供する。
【解決手段】金網20の上に貝殻砕片12を可撓性接着剤14で接着し、貝殻砕片集積体22を作製する。貝殻砕片集積体は、工場テラゾおよび現場テラゾの製造に、用いることができる。貝殻砕片集積体をセメントペーストに埋め込んで、硬化した後に、研磨し、貝殻砕片を研ぎ出す。貝殻砕片同士は、接着剤で互いに接着しているので、表面に研ぎ出された薄い貝殻砕片が、剥離することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラゾの製造方法、特に骨材の剥離を防止することのできるテラゾの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テラゾは、大理石,花崗岩等の砕石よりなる骨材を、セメントペーストであるセメントペーストと練り混ぜて硬化させ、表面を研磨し骨材を研ぎ出して作られる人工石の一種である。表面が美しいため、建築物の壁や床などに広く利用されている。
【0003】
テラゾには、施工現場で左官が塗り込み、研ぎ出しをする現場テラゾと、工場で製作される工場テラゾ(いわゆるテラゾタイル)とがある。
【0004】
現場テラゾは、砕石とセメントペーストとを練り混ぜたものを床や壁などの施工箇所に打ち込み、硬化させた後に、表面を研磨し骨材を研ぎ出して製造する。
【0005】
工場テラゾの場合、砕石とセメントペーストとを練り混ぜたものを、型枠に入れて、硬化させた後、型枠から取り出して、裏面を研磨し砕石を研ぎ出して製造する。
【0006】
本発明者は、このようなテラゾの骨材として、砕石の代わりに貝殻,ガラス,またはプラスチック等の砕片を骨材として用いて、さらに装飾性を高めるために、種々工夫してきた。
【0007】
本発明者は、セメントペーストと、貝殻,ガラス,またはプラスチックの砕片とを練り混ぜたものを用いて現場テラゾおよび工場テラゾ(以下、区別する必要のない場合には、単にテラゾというものとする)の製造を試みた結果、次のような問題点があることに気付いた。
【0008】
研磨後のテラゾは、表面に貝殻,ガラス,またはプラスチックの砕片が研ぎ出されて美しい模様を形成するが、表面に研ぎ出されている薄い砕片が剥離しやすい。
【0009】
図1に、表面に研ぎ出された表面に露出している薄い砕片が剥離する様子を示す。図1(a)は、硬化したセメントペースト10に埋め込まれた砕片12を研磨する様子を示している。図1(b)に示すように、表面に研ぎ出された薄い砕片13が剥離する。
【0010】
特に、床をテラゾで作った場合には、靴などで砕片に力が加えられる結果、特に剥離が激しく、商品価値がなくなってしまう。このことは、セメントペーストと、貝殻,ガラス,またはプラスチックの砕片との間の付着強度が弱いことを意味している。
【0011】
一方、テラゾの従来技術として、デザイン要素を有するテラゾ床の製造方法が、特許文献1に開示のものがある。また、雨の日等においても滑りにくいテラゾタイルが、特許文献2に開示されている。
【0012】
しかし、これらの従来技術は、完成したテラゾからの骨材の剥離の問題を解決したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2003−502533号公報
【特許文献2】特開2005−139822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、骨材の剥離を防止できるテラゾの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意工夫を重ねた結果、貝殻,ガラス,プラスチックなどの砕片(骨材)同士を接着剤で予め接着して骨材の集積体を形成し、この骨材集積体を結合剤に埋め込んで、研磨しテラゾを製造することを考案した。
【0016】
砕片同士が接着剤で接着されているので、研磨で研ぎ出された表面に露出している薄い砕片は、隣接する砕片に接着している。したがって、剥離することはない。
【0017】
接着剤は、骨材集積体に可撓性をもたせる場合には、可撓性接着剤を用いる。
【0018】
骨材の集積体は、支持部材の上に砕片が集積された構造にするのが好適である。支持部材は、網状部材またはシート状部材を用いる。
【0019】
このような支持部材の上に、骨材を板状あるいは塊状に集積する。ここに、板状に集積するとは、一枚の平らな状態にして集積することを意味し、塊状に集積するとは、砕片の塊を複数分散して集積することを意味している。
【0020】
接着剤が可撓性接着剤である場合には、板状の骨材集積体自体が可撓性を有するようになるので、例えば現場テラゾの場合に、曲面状の場所に施工することができる。また、工場テラゾの場合に、曲面状のテラゾタイルを容易に製作することができる。
【0021】
支持部材上に塊状集積された骨材の集積体の場合、骨材を塊に接着するための接着剤は、可撓性接着剤でなくともよい。骨材の塊の間は、接着していないので、骨材の塊が支持部材から脱離することなしに、支持部材を湾曲させることができる。上記と同様に、現場テラゾの場合に、曲面状の場所に施工することができる。また、工場テラゾの場合に、曲面状のテラゾタイルを容易に製作することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のテラゾの製造方法によれば、予め骨材同士を接着剤で互いに接着しておくので、研ぎ出されて表面に現れている薄片の骨材は、隣接する骨材に接着しているので剥離されない。したがって、セメントペーストと接着力が弱い骨材を利用できるようになった。
【0023】
支持部材と骨材とが一体となった骨材集積体は、取り扱いが容易となり、特に、現場テラゾの場合、骨材集積体を壁や柱などに塗り込めるので、作業が簡単になる。また、施工箇所が曲面を有するような複雑な場合にも、可撓性のある骨材集積体を湾曲させて施工箇所に取り付けることにより、製造することができる。したがって、熟練の職人でも難しい壁面や複雑な対象物であっても、非熟練者が容易に施工できる。
【0024】
また、従来は、現場テラゾの場合、骨材が混ぜ合わされたセメントペーストを施工箇所に塗り込める場合、一気に塗り込めないと、乾いた部分との継ぎ目が弱くなり、ひび割れ等が入り、そこから骨材が剥離する。これを防止するために、施工箇所を目地(真鍮,ステンレス,木など)で区切って、区切られた領域を一気に塗り込めている。しかし、本発明によれば、骨材が剥離しないので、このような目地を設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】砕片の剥離の様子を示す図である。
【図2】貝殻砕片集積体の断面図である。
【図3】テラゾタイルの製造を示す断面図である。
【図4】研磨する前のテラゾタイルの断面図である。
【図5】表面に研ぎ出された薄い砕片が、隣接する砕片に接着している様子を示す図である。
【図6】金網の上に形成された貝殻砕片集積体を示す断面図である。
【図7】金網の上に形成された渦巻き状の貝殻砕片集積体を示す平面図である。
【図8】テラゾタイルの製造を示す断面図である。
【図9】テラゾタイルの平面図である。
【図10】金網上に形成された貝殻砕片集積体を作成する工程を示す図である。
【図11】貝殻砕片集積体を丸柱に取り付ける工程を示す図である。
【図12】セメントペーストを上塗りする工程を示す図である。
【図13】研磨後に貝殻砕片が浮き出された様子を示す図である。
【図14】金網上に形成された貝殻砕片集積体を丸柱に取り付ける工程を示す図である。
【図15】金網上に分散配置された貝殻砕片塊を示す図である。
【図16】貝殻砕片の塊を、セメントペーストに混ぜ合わせた様子を示す図である。
【図17】PBVシート上に形成された貝殻砕片集積体を示す断面図である。
【図18】PBVシート上に形成された貝殻砕片集積体を丸柱に取り付ける工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
骨材は、セメントペーストと接着力の弱いものであれば、いかなる種類のものであってもよい。例えば、貝殻,ガラス,またはプラスチックである。
【0027】
骨材を接着する接着剤は、骨材を接着できるものであれば、いかなる種類のものであってもよい。無機系接着剤,有機系接着剤,合成系接着剤のいずれをも用いることができる。骨材集積体に可撓性が求められる場合には、可撓性接着剤を用いる。可撓性接着剤には、ブチラール系接着剤,シリコーン系接着剤,ゴム系接着剤などがある。ブチラール系接着剤としては、ポリビニルブチラール樹脂接着剤が好適である。
【0028】
支持部材として用いる網状部材としては、ステンレス等の金属線または金属繊維,炭素繊維,グラスファイバ繊維など、いかなる種類のものであってもよい。
【0029】
以下の各実施例では、代表的に、骨材として破砕された貝殻を用いるものとする。貝殻としては、光沢のあせないアコヤ貝またはアワビ貝が最適である。また、可撓性接着剤には、代表的に、ポリビニルブチラール樹脂接着剤を用いるものとする。
【0030】
支持部材としては、代表的に、金網またはポリビニルブチラール樹脂シートを用いるものとする。ポリビニルブチラール樹脂シートは、自動車の合わせガラスの中間膜として用いられているものである。したがって、廃棄された合わせガラスから回収されたシートを利用することができる。
【0031】
まず、工場テラゾ(テラゾタイル)を、続いて現場テラゾの製造方法の実施例を説明する。
【実施例1】
【0032】
テラゾタイルの製造方法(支持部材を用いない場合)
まず、貝殻、例えばアコヤ貝を、3〜7mm程度の大きさに砕いて、貝殻砕片を準備する。
【0033】
貝殻砕片を、接着剤との馴染みをよくするために、弱アルカリ洗浄液によって洗浄する。
【0034】
ポリビニルブチラール樹脂をメタノール等の溶剤で溶かし(例えば、樹脂:溶媒の容積比で1:4)、可撓性接着剤を作る。
【0035】
図2に示すように、アコヤ貝の砕片12を、容器に入った可撓性接着剤14に漬けて、可撓性接着剤で互いに接着して、10mm程度の厚さの板状の貝殻砕片集積体16を作製する。なお、貝殻砕片集積体を、後述する成形型内で作ることもできる。
【0036】
一方、白色セメントおよび色粉を水と練り混ぜたセメントペースト10を準備しておく。
【0037】
図3に示すように、作製された貝殻砕片集積体16を、箱状の成形型18内に置く。続いて、セメントペースト10を成形型18内に注入する。このとき、貝殻砕片集積体16はセメントペースト10の底に沈んだ状態にある。セメントペーストの注入量は、貝殻砕片集積体の全体が浸される程度にする。
【0038】
このとき、貝殻砕片集積体16の隙間に、セメントペーストが入り込むようにするために、成形型18に振動機などで振動を加える。あるいは、貝殻砕片集積体16に直接に振動機などで振動を加えてもよい。あるいは、振動機などで振動を加えた後に、さらに貝殻砕片集積体16に直接に振動機などで振動を加えるようにしてもよい。
【0039】
貝殻砕片集積体16の隙間にセメントペースト10が入り込んだのを確認した後、放置し、セメントペーストが完全に硬化したら、タイルを成形型から取り出す。図4に示すように、タイルを上下反転して、上面(貝殻砕片集積体のある側)を研磨して、貝殻砕片14を研ぎ出し、貝殻砕片が表面に現れ、美しい模様が浮き出したテラゾタイルが製造される。
【0040】
なお、セメントペーストが完全に硬化しなくても、研磨可能な高度まで硬化したら、研磨を開始してもよい。
【0041】
以下、単に「硬化」という場合には、完全硬化および研磨可能な高度までの硬化の両方の意味で用いるものとする。
【0042】
このようにして製造されたテラゾタイルは、図5に示すように、タイル表面に研ぎ出された薄い貝殻砕片13は、隣接する貝殻砕片に接着しているので、剥離することがない。
【実施例2】
【0043】
テラゾタイルの製造方法(支持部材として金網を用いる場合)
実施例1で説明した貝殻砕片12を、図6に示すように、可撓性のある金網20の上に積層し、実施例1で説明した可撓性接着剤14が入った容器(図示せず)に漬けて、接着剤が十分に付着したら、容器より引き上げ、形を整えて乾燥させ、貝殻砕片12同士、貝殻砕片12と金網20とが接着した貝殻砕片集積体22を作製する。
【0044】
このとき、研ぎ出されたときの模様を考慮する場合には、模様を予測して金網20の上に貝殻砕片12を積層配置する。本実施例では、図7に示すように、渦巻き状に貝殻砕片12を積層配置する。
【0045】
このようにして作製された貝殻砕片集積体22を、図8に示すように、金網を上にして、貝殻砕片集積体を箱状の成形型18内に置く。続いて、セメントペースト10を成形型18内に注入する。
【0046】
このとき、実施例1と同様に、貝殻砕片集積体22の隙間にセメントペースト10が入るようにするために、振動機(図示せず)などで成形型18に振動を加える。あるいは、貝殻砕片集積体22に直接に振動機などで振動を加えてもよい。あるいは、成形型18に振動機などで振動を加えた後に、さらに貝殻砕片集積体22に直接に振動機などで振動を加えるようにしてもよい。
【0047】
セメントペースト10が硬化した後、成形型18より取り出し、貝殻砕片のある面を研磨し、貝殻砕片12を研ぎ出し、テラゾタイル24を製造する。図9に、研ぎ出されて、タイルの表面に浮き出た貝殻砕片12で形成された模様を示す。
【0048】
本実施例では、金網を用いる場合について説明したが、他の繊維網やポリビニルブチラール樹脂シートを用いてもよい。
【0049】
なお、実施例1および2では、平板状のテラゾタイルを製造する場合について説明したが、貝殻砕片集積体は可撓性があるので、湾曲したテラゾタイルの製造も可能である。
【0050】
可撓性接着剤ではなく、通常の接着剤でもよい。この場合には、貝殻砕片集積体は、可撓性がないので、平板テラゾタイルのみの製造となる。
【実施例3】
【0051】
現場テラゾの製造方法(支持部材として可撓性のある金網を用いる場合)
丸柱の外周面に、テラゾを製造する例を、図10を参照して説明する。
【0052】
図10に示すように、貝殻、例えばアコヤ貝を、3〜7mm程度の大きさに砕いて、弱アルカリ洗浄液によって洗浄した貝殻砕片12を準備する。
【0053】
一方、ポリビニルブチラール樹脂をメタノール等の溶剤で溶かし(例えば、樹脂:溶媒の容積比で1:4)、可撓性接着剤14を作る。
【0054】
貝殻砕片12を、実施例2で説明したように、可撓性のある金網20の上に10mm程度の厚さに積層し、貝殻砕片同士、貝殻砕片と金網とを、可撓性接着剤14で接着し、貝殻砕片集積体26を作製する。貝殻砕片集積体26は、金網20および可撓性接着剤14が可撓性であるので、容易に湾曲する。
【0055】
次に、白色セメントおよび色粉に水を練り混ぜて、セメントペースト10を準備し、図10に示すように、セメントペースト10の入った容器28に貝殻砕片集積体26を漬けて、容器28に振動機などにより振動を加えたりして、貝殻砕片集積体26の隙間にセメントペースト10が入り込むようにする。あるいは、貝殻砕片集積体26に直接に振動機などで振動を加えてもよい。あるいは、容器28に振動機などで振動を加えた後に、さらに貝殻砕片集積体26に直接に振動機などで振動を加えるようにしてもよい。
【0056】
同時に、白色セメントおよび色粉に水を練り混ぜて、セメントペースト30を準備する。このセメントペーストを、図11に示すように、丸柱32の表面に下塗りする。
【0057】
セメントペースト10が貝殻砕片12の隙間に入り込んだ貝殻砕片集積体26を、セメントペーストが硬化しないうちに、金網20が下地のセメントペースト30に接するようにして、湾曲させながら、下塗りされた丸柱32に巻き付け、貝殻砕片集積体26の端部同士を例えばピン(図示せず)などで固定し、取り付ける。
【0058】
なお、丸柱32の施工面積が大きい場合には、複数個の貝殻砕片集積体を湾曲させながら、下塗りされた丸柱上に、ピンなどで固定しながら、取り付けていく。
【0059】
次に、図12に示すように、貝殻砕片集積体26を埋め込んでしまう程度に表面にセメントペースト34を上塗りする。
【0060】
上塗りセメントペースト34が完全硬化した後、セメントペーストの外面を研磨し、貝殻砕片を研ぎ出す。
【0061】
研磨は、ダイアモンド砥粒を樹脂で固めたダイアパッドを取り付けたポリッシャーを用い、粒度の荒いものから小さいものへ順次パッドを取り換えながら、研磨する。一部、サンダーや砥石を用いることもできる。
【0062】
なお、セメントペースト34が完全に硬化しなくても、研磨可能な高度まで硬化したら、研磨を開始してもよい。硬化を意図的に遅らせる必要がある場合には、硬化遅延剤をセメントペースト34に混入させ、養生を施して硬化を遅らせてもよい。
【0063】
研磨の結果、図13に示すように、貝殻砕片12が表面に現れ、美しい模様が形成される。
【実施例4】
【0064】
現場テラゾの製造方法(支持部材として可撓性のある金網を用いる場合)
実施例3では、貝殻砕片集積体26の隙間にセメントペースト10が充填されるようにするために、セメントペースト10の入った容器28に貝殻砕片集積体26を漬けて、容器28に振動機などにより振動を加えた。あるいは、貝殻砕片集積体26に直接に振動機などで振動を加えてもよい。あるいは、容器28に振動機などで振動を加えた後に、さらに貝殻砕片集積体26に直接に振動機などで振動を加えるようにしてもよい。
本実施例では、この工程を行うことなく、図14に示すように、下地のセメントペースト30が塗られた丸柱32に、貝殻砕片集積体26の一方の片端をピン等(図示せず)で固定し、巻き付ける。下地のセメントペースト30が金網20を通して貝殻砕片集積体26の隙間に入り込むように、ゴムハンマーや、振動機などで(図では、ゴムハンマー36を用いる例を示す)、振動を貝殻砕片集積体26に加える。セメントペースト30が、貝殻砕片の隙間に入り込み、貝殻砕片集積体の表面に出てくるようになると、貝殻砕片集積体26を丸柱32に締め付けるようにして、貝殻砕片集積体26の他方の片端をピン等(図示せず)で丸柱32に固定する。
【0065】
その後の工程は、実施例3と同じである。
【実施例5】
【0066】
現場テラゾの製造方法(支持部材として可撓性のある金網を用いる場合)
実施例3,4は、板状の貝殻砕片集積体を用いる場合である。本実施例では、塊状の貝殻砕片集積体を用いる場合について、説明する。
【0067】
図15(a)は、可撓性のある金網20の上に塊状の貝殻砕片40(以下、貝殻砕片塊という)を分散配置した状態を示す。貝殻砕片塊40は、貝殻砕片を接着剤で接着したものである。この場合、接着剤は、可撓性接着剤である必要はない。
【0068】
貝殻砕片塊40の間は空いているので、図15(b)に示すように、金網20を湾曲させることができる。
【0069】
本実施例の貝殻砕片集積体は、実施例3,4と同様に、曲面のある場所にテラゾを製造施工する場合に、利用できる。
【0070】
この方法は、工場テラゾの製造にも、適用できることは、明らかである。この場合、曲面状のテラゾタイルを、製造できる。
【実施例6】
【0071】
現場テラゾの製造方法(貝殻砕片塊を用いるもの)
実施例5は、金網の上に貝殻砕片塊を分散配置したが、本実施例では、金網を用いずに、図16に示すように、貝殻砕片塊40を、セメントペースト42に混ぜ合わせて、これを施工箇所に塗り込めて、硬化、研磨する。
【0072】
この方法は、工場テラゾの製造にも、適用できることは、明らかである。
【実施例7】
【0073】
現場テラゾの製造方法(可撓性のある接着性シートを用いる場合)
貝殻砕片および可撓性接着剤の準備は、実施例3と同じである。
【0074】
可撓性のある接着性シート、例えばポリビニルブチラール樹脂シートを準備する。図17に示すように、貝殻砕片12を集積して、貝殻砕片12同士、および貝殻砕片12とシート44とを、可撓性接着剤14で接着して、貝殻砕片集積体46を作製する。
【0075】
次に、図18に示すように、シート44の可撓性および接着性を利用して、丸柱32の表面に圧着して貼り付ける。このとき、貝殻砕片集積体46を500〜600℃に温風で加熱しながら行うと、シート44の表面が溶けるのでシートの接着力が増し、丸柱32の表面への貼り付けが容易になる。また、丸柱自体を温風で加熱しておいて、貼り付けてもシートの接着力が増す。
【0076】
次に、貝殻砕片集積体46の上にセメントペーストを上塗りする。このとき、貝殻砕片集積体46の隙間にセメントペーストを充填させるために、刷毛でセメントペーストを塗るとかの工夫が必要になる。刷毛を利用する場合において、刷毛に機械的な振動を加えながら塗れば、セメントペーストがさらに貝殻砕片集積体46の隙間に充填される。
【0077】
その後の工程は、金網を用いた場合と同じである。
【0078】
本実施例においても、美しい模様が形成された、テラゾが円柱表面に製造できる。
【0079】
本実施例では、可撓性および接着性を有するポリビニルブチラール樹脂シートを用いたが、可撓性を有するが接着性を有さないシートを用いる場合には、丸柱の表面へ圧着して貼り付ける際に、シートの裏面に接着剤を塗布すればよい。
【符号の説明】
【0080】
10,30,34,42 セメントペースト
12 貝殻砕片
14 可撓性接着剤
16,22,26,46 貝殻砕片集積体
18 成形型
20 金網
24 テラゾタイル
28 容器
32 丸柱
36 ゴムハンマー
40 貝殻砕片塊
44 ポリビニルブチラール樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤で互いに接着された骨材を含む骨材集積体を準備する工程と、
前記骨材集積体をセメントペーストに埋め込む工程と、
前記セメントペーストを硬化させる工程と、
硬化した前記セメントペーストの表面を研磨して、前記骨材集積体を研ぎ出す工程と、
を含むテラゾの製造方法。
【請求項2】
前記骨材集積体を準備する工程は、骨材を集積し接着剤で互いに接着して、一体化された板状に作成する工程を含む、請求項1に記載のテラゾの製造方法。
【請求項3】
前記骨材集積体を準備する工程は、骨材を接着剤で互いに接着した骨材塊を、複数個作成する工程を含む、請求項1に記載のテラゾの製造方法。
【請求項4】
前記骨材集積体は、支持部材の上に接着されている、請求項2または3に記載のテラゾの製造方法。
【請求項5】
前記支持部材は、網状部材またはシート状部材である、請求項4に記載のテラゾの製造方法。
【請求項6】
前記網状部材は金網であり、前記シート状部材はポリビニルブチラール樹脂シートである、請求項5に記載のテラゾの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、可撓性接着剤である請求項1〜6のいずれかに記載のテラゾの製造方法。
【請求項8】
前記可撓性接着剤は、ポリビニルブチラール樹脂を溶剤に溶かしたものである、請求項7に記載のテラゾの製造方法。
【請求項9】
前記骨材集積体をセメントペーストに埋め込む工程は、テラゾを施工する箇所において実施する、請求項8に記載のテラゾの製造方法。
【請求項10】
前記骨材集積体をセメントペーストに埋め込む工程は、成形型内において実施する、請求項8に記載のテラゾの製造方法。
【請求項11】
前記骨材は、貝殻,ガラス,またはプラスチックである、請求項1〜10に記載のテラゾの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−1403(P2012−1403A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139222(P2010−139222)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(591004814)
【Fターム(参考)】