説明

テラヘルツ放射の吸収を検知するための方法及び装置

本発明は、テラヘルツ放射を検知するための方法及び装置である。一実施形態において、コヒーレントな遠赤外電磁放射掃引源を用いて、周波数変調分光分析がターゲットに向けて行われる。放射ビームが、ターゲットが収容されているセルを通過し、ターゲット中の汚染物質により、或る周波数が吸収されたときにビームがエネルギーを損失する。放射線がどれだけのエネルギーを損失したか(どの周波数がセルを通過できなかったか)を決定するために検知器が配置されており、この決定により、ターゲット中の汚染物質の存在が示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2003年5月16日に出願された、「テラヘルツ源及びその用途」と題された米国特許仮出願60/471,381号、及び、2003年12月18日に出願された、「スミスパーセル・テラヘルツ分光測定法を用いた自律的で迅速な設備の化学剤モニタ」と題された米国特許仮出願60/530,508号の利益を主張し、これらの両特許出願の全てを援用して本文の記載の一部とする。
【発明の分野】
【0002】
[0002]本発明は、概して、化学的及び生物学的汚染物質に関連し、より詳細には、テラヘルツ放射の吸収の検知に関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003]化学的及び生物学的汚染物質(例えば、爆発性物質(例えばトリニトロトルエン(TNT)又はジニトロトルエン(DNT))を検知及び分析できるシステムの需要が、軍隊での用途、又は、私的若しくは個人的な用途のために増えている。このような汚染物質を検知する方法の1つは、回転マイクロ波分光法を用いる。分子(例えば、汚染物質の分子)の回転及び振動モードは、放射線のスペクトルにおける光子のエネルギーに必然的に対応するエネルギーを有する。放射源は、分析されるべき「ターゲット」中に存在する汚染物質の分子と相互作用する放射線を発生し、これにより、放射線の特定の周波数が分子により吸収される。ターゲットを透過できない周波数を識別するために検知器が配置され、特定の周波数が通過できないことが、特定の周波数を吸収する汚染物質の存在を示すことができる。
【0004】
[0004]遠赤外(又はテラヘルツ)放射のスペクトルは、先に記載したようなシステムでの使用に、特に好適である。なぜなら、スペクトルが、多くの化学物質(爆発性物質を含む)の振動及び回転モードに対応し、また、多くの特徴的な情報を含むからである。残念なことに、テラヘルツスペクトルを用いた作業は、広範囲のテラヘルツ波長のスペクトルにわたり連続的に機能し且つ同調できるコヒーレントな放射源がないことにより、非常に困難で不便になっている。
【0005】
[0005]従って、化学的及び生物学的汚染物質の存在を検知するために用いられることができるテラヘルツシステムが、当分野に必要である。
【発明の概要】
【0006】
[0006]一実施形態において、本発明は、テラヘルツ放射を検知するための方法及び装置である。一実施形態において、周波数変調分光分析が、コヒーレントなテラヘルツ放射掃引源を用いて行われ、テラヘルツ放射がターゲットに照射される。放射ビームが、ターゲットが収容されたセルを通過し、幾らかの周波数が、ターゲット中の汚染物質(例えば、ターゲット分子又は対象となる化合物)により吸収されるときにエネルギーを損失する。検知器が配置されており、どれだけ多くのエネルギーが放射により損失されるか(例えば、どの周波数がセルを通過できないか)を決定し、それによりターゲット中の汚染物質の存在が示される。
【0007】
[0007]別の実施形態において、放射線が集束されてマイクロ波キャビティ内に通される。放射線の幾らかの波長が、マイクロ波キャビティ中の電子にエネルギーを得させ、このエネルギーの増大が、電流計などの測定装置により観察される。
【0008】
[0008]本発明の上記の実施形態が達成され、且つ詳細に理解されるように、上記の短い要約よりも詳細な、本発明に関する説明が、添付図面に例示された本発明の実施形態を参照することにより提示され得る。しかし、添付図面は本発明の典型的な実施形態を例示しているだけであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきでないことに留意されたい。本発明は、他の同等の有効な実施形態も認め得る。
【好適な実施形態の説明】
【0009】
[0016]理解を促進するために、図面を通じて共通の同一要素には、可能であれば同一参照符号を用いている。
【0010】
[0017]汚染物質の存在を示すための、ターゲット(対象物)によるテラヘルツ放射の吸収を検知する方法及び装置を提供する。コヒーレントな遠赤外放射源を検知システムと共に用いて、周波数変調分光測定を遠赤外スペクトルにて行うための便利で有効な方法を可能にする。
【0011】
[0018]図1は、汚染物質、例えば爆発性物質を検知するために試料を濃縮及び分析するためのシステム100の一実施形態の斜視図を示す。システム100は、濃縮装置102及びテラヘルツ検知システム104を含む。濃縮装置102は、濃縮された試料を分析のために検知システム104に提供するために検知システム104に連結されている。試料を濃縮することは、検知システム104がより有効に作用することを可能にする。なぜなら、対象となる多くの汚染物質(例えば爆発性物質又は他の化学物質)の蒸気密度は約1兆分の1であるため、濃縮しなければ、希薄な試料中の物質を検知するのは困難であろうからである。
【0012】
[0019]濃縮装置102は、予備濃縮装置106、熱交換器110、及び、第2段階サンプリング(試料採取)ポンプ112を含む。予備濃縮装置106は、試料を気体又は液体として引き出すためのサンプリングファン(図示せず)を含み、試料を加熱して汚染物質の蒸気分子を蒸発させるようになっている。一実施形態において、試料は、試料中の不要な液体又は気体を実質的に全て蒸発させるように加熱され、従って、得られる吸収信号が不明瞭にされない。一実施形態において、これは、液体の分別蒸留により達成される。この方法において、残った粒子が、次いで、分光分析(測定)法(スペクトロスコピー)のために加熱される
【0013】
[0020]熱交換器110は、予備濃縮装置106及び第2段階サンプリングポンプ112の両方に連結されている。第2段階サンプリングポンプ112は、試料を予備濃縮装置106から熱交換器110に引き出すように適合されている。第2段階サンプリングポンプ112は、また、汚染物質の蒸気分子の濃縮を補助するために、少量の不活性ガスを、熱交換器110を通して引き出す。熱交換器110は、汚染物質蒸気分子を凝縮するように適合されており、凝縮された分子は、交換器110から引き出されて、分析のために検知システムに通される。
【0014】
[0021]熱交換器110は、予備濃縮装置106から受けた汚染物質蒸気分子が熱交換器110の内面で凝縮するように冷却されるようになっている。一実施形態において、熱交換器110は、或る量の蒸気分子が凝縮することを可能にするように予め決められた時間冷却されるようになっている。熱交換器100は、さらに、熱交換器110の内面に吸着された蒸気分子を蒸発させるためにシールされ且つ加熱されるようになっている。ついで、熱交換器110は、検知システム104に連結されたポンプ120の排出作用を受け、これにより汚染物質蒸気分子が引き出されて検知システム104に通される。一実施形態において、ソニックオリフィス116が、検知システム104内の圧力を制御するように熱交換器110を検知システム104に連結する。熱交換器110は、周囲圧力での蒸気流方向における圧力降下を最小にするように設計されている。
【0015】
[0022]一実施形態において、熱交換器110は、濃縮段階において熱電気クーラー114により冷却される。熱電気クーラー114の作用を逆向きにすることにより、熱交換器110は、蒸発段階のために加熱され得る。別の実施形態において、蒸発を促進するために電気抵抗ヒータが熱電気クーラー114と共に用いられる。さらに別の実施形態において、熱交換器110は衝突冷却により冷却される。
【0016】
[0023]図2は、試料208(例えば、低圧ガス)によるテラヘルツ放射の吸収を検知するための検知システム200の一実施形態の斜視図を示す。システム200は、真空に維持されるターンキー型スペクトロメータ(分光計)であり、放射源202、セル204、及び検知器206を含む。放射源202は、周波数が変調された出力(すなわち、テラヘルツ放射)f(t)をセル204にもたらす。出力f(t)は、セル204内に収容されている試料208を通過し、試料208中の分子が、放射源からの出力f(t)の周波数の幾らかを、試料208中に存在する化学剤及び/又は生物剤の性質及び量に依存して吸収する。この結果、セル204に入った放射線の強度は低減し、強度が変調された放射ビームI(t)が検知器206に入る。検知器206は電圧V(t)を記録し、この電圧は、セル204を通過した放射線の強度差異を計算するために用いられ得る。
【0017】
[0024]一実施形態において、放射源202は、遠赤外掃引源(farinfrared swept source)であり、例えば、本出願と同時にトロッツ(Trotz)らにより出願された、本件と共通に譲渡される、同時係属中の、「テラヘルツ放射を発生するための方法及び装置」と題する、出願番号 (代理人整理番号SAR14216)を有する米国特許出願において開示されている放射源のいずれかである。セル204は、周波数変調源からの出力f(t)及び強度変調ビームI(t)が通過することを可能にする遠赤外線透過壁を有する。一実施形態において、検知器206は、広帯域検知器である。
【0018】
[0025]図3は、試料(例えば低圧ガス)によるテラヘルツ放射の吸収を検知するための固体検知システム300の一実施形態の概略図を示す。システム300は真空内に収容されており、図2に示したスペクトロメータ200と類似である。しかし、システム300は、特にTNT又はDNTなどの爆発性物質の存在を検知することにおいて特に有利であり得る。システム300は、同調可能なマイクロ波源302、低圧蒸気セル304、及びマイクロ波検知器306を含む。マイクロ波源302は、蒸気セル304に、放射線を遠赤外スペクトルで蒸気セル304に通過させるように接続されている。蒸気セル304は検知器306にも接続されており、検知器306は、蒸気セル304から出る放射線の周波数(すなわち、試料中の分子により吸収されない周波数)を検知するために配置されている。ガス入口308が、試料をシステム300に供給するために蒸気セル304に連結されている。一実施形態において、ガス入口は、図1に示したソニックオリフィス116と類似である。ポンプ310も、低圧力差を維持するために蒸気セル304に連結されている。一実施形態において、ポンプ310は、図1に示したポンプ120と類似である。
【0019】
[0026]一実施形態において、マイクロ波源302は、インパット(衝突アバランシェ走行時間)(IMPATT)倍増器であり、マイクロ波源302の入力は、固体発振器により生成される低周波マイクロ波である。マイクロ波源302が動作する低い範囲の周波数により、マイクロ波は、低テラヘルツ範囲にてピーク回転吸収を有する爆発性物質(TNT又はDNTなど)の検知に理想的に適合されている。別の実施形態において、マイクロ波源302は、遠赤外掃引源であり、例えば、本出願と同時にトロッツ(Trotz)らにより出願された、本件と共通に譲渡される、同時係属中の、「テラヘルツ放射を発生するための方法及び装置」と題する、出願番号 (代理人整理番号SAR14216)を有する米国特許出願において開示されている放射源のいずれかである。さらに、マイクロ波源302による或る範囲の周波数の生成は、試料が吸収する周波数の変化を検知器306が観察することを可能にし、これは、爆発性物質をより正確に同定することを可能にする。一実施形態において、検知器306は、蒸気セル304中の試料を通過する放射線の信号の減少を検知するために低温冷却される。
【0020】
[0027]図4は、試料によるテラヘルツ放射の吸収を検知するための検知システム400の一実施形態斜視図を示す。システム400は、マイクロ波キャビティ402、格子(回折格子・グレーティング)404及びコレクタ406を含む。マイクロ波キャビティ402は、さらに、蓋430、及び、マイクロ波キャビティ402を2つの領域(試料チャンバ408と真空チャンバ410)に分割するテラヘルツ透過窓412を含む。蓋430は、透過窓412に面するように配置された反射面432を有する。格子404は、真空チャンバ410の、窓412に面した平坦な面414に配置されている。コレクタ406は格子404の第2の端部416に配置されている。
【0021】
[0028]濃縮された試料ガスが、試料チャンバ408内に、例えばソニックオリフィス116(図1)を介して、分析のために供給される。試料分析は、スミス・パーセル放射として知られている現象を利用することにより容易にされる。電子ビーム418が格子404の付近を第1の端部416から第2の端部422まで通過するとき、ビーム418は格子404により「束にされ」(“bunched”)、電子ビーム418に対して実質的に垂直の角度で伝搬する放射波420が発生される。放射波420は、窓412を通過して試料チャンバ408内に入り、チャンバ408にて放射波は蓋430の反射面432に衝突する。反射面432は、放射波を帯に離散(discretize)する。電子ビーム418に対して実質的に平行なラインを有する磁界がビーム418に作用し、ビーム418が格子404の第2端部422にほぼ達するときにビーム418の経路を曲げる。
【0022】
[0029]先に論じたように、放射線420の周波数の幾らかは、試料チャンバ408内に収容された試料ガス中の分子により吸収され得る。周波数の吸収が、電子ビーム418にエネルギーを損失させる。電子ビーム418が損失するエネルギーが大きいほど、ビーム418がより多く曲がることになる。コレクタ406は、電子ビームを捕捉し、コレクタ406に接続された測定装置がコレクタから情報を受け取り、電子ビームによるエネルギー損失の量を決定する。詳細には、コレクタ406により捕らえられたこの情報は、電子ビーム418が曲がる程度(すなわち、ビーム418がコレクタ406に衝突する位置)及び、ビーム418が格子404を通過した後の、放射された特定の周波数に関するビーム418のエネルギー(すなわち、どれだけ多くの流れがコレクタ406に衝突するか)を示す。こうして、電子ビーム418を用いてエネルギー分光法(スペクトロスコピー)を行うことにより(すなわち、電子ビーム418が損失したエネルギーの量を決定することにより)、特定の周波数の放射波420の吸収を間接的に測定することができる。一実施形態において、ビームが損失するエネルギーは、磁界によりビームが受けるローレンツ力を計算することにより概算されることができ、ビームの速度(電圧に対応)が知られる。エネルギー損失は、吸収されている放射線の波長に対応する光子の放出による。別の実施形態において、電子ビームのエネルギーは、ビームを、例えば電界を用いて静電的に減速させ、ビームの電圧を決定することにより測定され得る。
【0023】
[0030]システム400は、電子ビーム418の電圧を変えることにより同調可能である。すなわち、電子ビーム418を格子404上で通過させることにより放射される放射波420の周波数は、格子周期(すなわち、格子404の間隔)及び電子ビーム418の電圧の関数である。従って、システム400は、試料中の汚染物質の正確な検知を促進するために、テラヘルツ周波数のスペクトルにわたり同調可能である。別の実施形態において、蓋430は、反射面432の位置を変えるためのアクチュエータに連結されることができ、このようにして、反射面432により反射される、放射波が離散した帯が制御されることができる。
【0024】
[0031]図5は、試料によるテラヘルツ放射の吸収を検知するための検知システム500の一実施形態の斜視図を示す。システム500は、図4に示したシステム400とほぼ類似であり、マイクロ波キャビティ502、格子504及びコレクタ506を含む。マイクロ波キャビティ502は、さらに、蓋530、及び、マイクロ波キャビティ502を2つの領域(試料チャンバ508と真空チャンバ510)に分割するテラヘルツ透過窓512を含む。格子504は、真空チャンバ510の、窓512に面した平坦な面514に配置されている。コレクタ506は格子504の、電子ビームのための入口点に対向する一端516に配置されている。蓋530は、透過窓512に面するように配置された反射面532を有する。
【0025】
[0032]試料管520が試料チャンバ508内に延在し、格子504に対して実質的に平行に配置されている。分析されるための試料が、試料管520内に収容された液体中に濃縮されている。電子ビームが、格子504の近傍を第1端部514から第2端部516に通過するとき、ビームが格子504により「束にされ」(“bunched”)、電子ビームに対して実質的に垂直の角度で伝搬する放射波518が発生される。放射波518は、窓512を通過して試料チャンバ508内に入り、チャンバ508にて放射波は、蓋530の反射面532により帯に離散される。電子ビームに対して実質的に平行なラインを有する磁界がビームに作用し、ビームが格子504の第2端部516にほぼ達するときにビームの経路を曲げる。
【0026】
[0033]先に論じたように、放射線の周波数の幾らかは、試料管520内に収容された試料中の分子により吸収され得る。波長の吸収が、電子ビームにエネルギーを損失させ、電子ビームにより損失されるエネルギーが大きいほど、ビームがより多く曲がることになる。コレクタ506は電子ビームを捕捉し、コレクタ506に接続された測定装置がコレクタから情報を受け取り、電子ビームによるエネルギー損失の量を決定する。詳細には、コレクタ506により捉えられた情報は、電子ビームが曲がる程度(すなわち、ビームがコレクタ506に衝突する位置)、及び、ビームが格子504を通過した後の、放射された特定の周波数に関するビームのエネルギー(すなわち、どれだけの流れがコレクタ506に衝突するか)を示す。こうして、電子ビームを用いてエネルギー分光分析を行うことにより(すなわち、ビームが損失したエネルギーの量を決定することにより)、特定の周波数の放射波の吸収を間接的に測定することができる。
【0027】
[0034]システム500は幾つかの方法で同調可能である。例えば、電子ビームの電圧は変更され得る。或いは、動的(すなわち、周期が可変の)格子504をシステムに組み込むこともできる。最後に、反射面532の位置を変えるためにアクチュエータが蓋530に接続され得る。こうして、システム500は、試料中の汚染物質の検知を容易にするために、テラヘルツ周波数のスペクトルにわたり同調可能である。
【0028】
[0035]システム500は、試料が分析のためにガスでなく液体を介して導入され、化学剤及び汚染物質、例えば薬物又は麻薬の検知のために特に好適であり得る。これは、このような物質中の分子が、互いに、又は、タンパク質若しくは他の面と結合する傾向を有するからである。このように分子が結合する傾向は、分子の回転モードを変え、運動の範囲を制限し、これが分子の回転スペクトルを変える。
【0029】
[0036]図6は、液体試料によるテラヘルツ放射の吸収を、図5に示したシステム500を用いて検知するための方法600の一実施形態のフローチャートを示す。この方法において、1以上の汚染物質の分子を含有する可能性のある試料が、ステップ602にて第1の液体溶液に導入され、この第1溶液が、ステップ604にて、分析のために試料管520に挿入される。ステップ606にて、溶液中の分子の回転スペクトルが、システム500により、図5を参照して先に記載した方法により分析される。第1溶液の分析後、ステップ608にて、或る量の同じ試料材料を、少なくとも1つの結合剤(例えばタンパク質)を含む第2の液体溶液に導入する。結合剤は、試料材料中の分子の幾らかを結合し得る。一実施形態において、結合剤は、第2液体溶液中に存在する汚染物質(例えば、試料材料を介して導入される)の分子と結合する。ステップ610において、第2溶液が試料管520内に挿入され、ステップ612において、システム500により分析され、第2液体試料分子の変更された回転スペクトルが決定される。ステップ614にて、第1液体試料と第2液体試料に関して回転スペクトルを比較することにより(すなわち、第1液体試料及び第2液体試料の分析におけるエネルギー損失を決定することにより)、タンパク質−分子結合物の形状寸法を導き出すことができる。こうして、第1液体試料分子及び第2液体試料分子の回転スペクトルが変えられる程度を用いて、試料材料中の汚染物質に存在する分子を間接的に検知及び同定することができる。
【0030】
[0037]図7は、長波長(すなわち、低エネルギー)テラヘルツ放射を検知するための検知システム700の一実施形態の斜視図である。検知器700は、図4及び図5に示したシステム400及びシステム500と構造が類似であり、マイクロ波キャビティ702、格子704、コレクタ706及び入力パイプ708、テラヘルツ透過窓710及び蓋730を含む。格子704は、内部が真空に維持されたマイクロ波キャビティ702の底面714に配置されている。コレクタ706は、格子704の、電子ビームのための入口点712に対向する一端716に配置されている。入口パイプは708は、入力(例えば、放射線)をマイクロ波キャビティ702に、格子704に対してほぼ垂直の角度で供給するように配置されている。蓋730は、反射窓710に面するように配置された反射面732を有する。
【0031】
[0038]検知システム700は、「逆」スミスパーセル原理で作用する。電子ビームが格子704の近傍を通過する。入力パイプ708がマイクロ波キャビティ702の外側の環境から放射線を集め、放射線を集束させてマイクロ波キャビティ702に入れる。テラヘルツ帯の放射線がテラヘルツ透過層710を通過し、格子704に対して実質的に垂直な角度で格子704に衝突する。格子704に衝突して捕捉された放射が特定の波長を有するならば、放射は電子ビーム中の電子のエネルギーを増大する。エネルギーの増大は、スペクトロメータ中での電子の動作を変化させる。次いで、電子ビームは、エネルギーの増大を観察する測定装置に接続されているコレクタ706により捕捉される。一実施形態において、測定装置は簡単な電流計回路である。検知器700中に特定の波長の放射線が存在することが、電子ビームのエネルギーの増大を観察することにより検知される(先に記載した、システム400及び500により測定されるようなエネルギーの低減の観察とは異なる)。
【0032】
[0039]一実施形態において、検知システム700は、外部環境中の爆発性物質を検知するために固体放射源と共に用いられる。検知器700は、選択的されたスミスパーセル放射吸収帯を検知するために同調可能であり、これは、一実施形態において、格子704の周期又は電子ビームの電圧を変えることにより達成される。別の実施形態において、蓋730がアクチュエータに、離散される放射帯を制御するために反射面732の位置が可変であるように連結される。
【0033】
[0040]従って、本発明は、テラヘルツ源技術の分野にかなりの進歩をもたらす。化学的及び/又は生物学的汚染物質の正確で効率的な検知を可能にするシステムが提供される。さらに、幾つかの実施形態において、本発明は、検知システムの正確性及び効率を増大するように同調又は構成され得る。本発明は、さらに、作像、コミュニケーション及び分光法の分野において有利であり得る。
【0034】
[0041]上記の説明は、本発明の好ましい実施形態に向けられているが、本発明の、他の、又はさらなる実施形態が、本発明の基本的な範囲から逸脱せずに考案されることができ、本発明の範囲は特許請求の範囲により決定される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】汚染物質の検知のための試料を濃縮及び分析するためのシステムの一実施形態の斜視図である。
【図2】周波数変調分光測定をテラヘルツスペクトルにて行うための検知システムの一実施形態の斜視図である。
【図3】試料により吸収されるテラヘルツ放射を検知するための、固体検知システムの一実施形態の概略図である。
【図4】スミスパーセル放射の発生を用いた、気体試料によるテラヘルツ放射の吸収を検知するための検知システムの一実施形態の斜視図である。
【図5】液体試料によるテラヘルツ放射の吸収を検知するための検知システムの一実施形態の斜視図である。
【図6】液体試料によるテラヘルツ放射の吸収を、図5に示したシステムを用いて検知するための方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図7】長波長テラヘルツ放射を検知するための検知システムの一実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の汚染物質を検知するためのシステムであって、
前記試料中の汚染物質の分子を濃縮するための濃縮装置(102)と、
濃縮された分子を分析するために受け入れるための、前記濃縮装置(102)に接続されたテラヘルツ放射検知システム(104)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記濃縮装置(102)が、
汚染物質の分子を試料から最初に分離するための予備濃縮装置(106)と、
分離された汚染物質分子を凝縮及び蒸発させるための熱交換器(110)とを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
周波数変調された遠赤外線を発生するための放射源(202)と、
放射源(202)に接続された、前記試料を受け入れるための低圧キャビティ(204)と、
低圧キャビティ(204)に接続された放射線検知器(206)とを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
低圧キャビティが、
前記試料を受け入れるための試料チャンバ(408)と、
真空チャンバ(410)と、
試料チャンバ(408)と真空チャンバ(410)との間に配置されたテラヘルツ透過性窓(412)と、
真空チャンバ(410)内に配置された導電性格子(404)とを有する請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
試料中の汚染物質を検知するための検知器であって、
周波数変調されたテラヘルツ波を発生するための放射源(202)と、
放射源(202)に接続された、前記試料を収容するための低圧キャビティ(204)と、
低圧キャビティ(204)に接続された放射線検知器(206)であって、前記汚染物質が前記試料中に存在するかどうかを決定するために、放射線の、前記試料による吸収を測定するための放射線検知器(206)と
を備える検知器。
【請求項6】
低圧キャビティ(204)が、
前記試料を受け入れるための試料チャンバ(408)と、
真空チャンバ(410)と、
試料チャンバ(408)と真空チャンバ(410)との間に配置されたテラヘルツ透過性窓(412)と、
真空チャンバ(410)内に配置された導電性格子(404)とを有する請求項5に記載の検知器。
【請求項7】
試料中の汚染物質分子を検知するための方法であって、
試料を低圧キャビティの第1の部分に導入することと、
テラヘルツ放射を試料に照射することと、
汚染物質分子の存在を検知するために、テラヘルツ放射と試料との相互作用を観察することと
を含む方法。
【請求項8】
試料が低圧キャビティの第1の部分に気体の状態で導入される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
テラヘルツ放射を試料に照射するステップが、テラヘルツ放射の周波数を変調することを含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
テラヘルツ放射と試料中の分子との相互作用を観察するステップが、
低圧キャビティの、テラヘルツ透過性窓により第1部分から物理的に絶縁されている第2の部分に導電性格子を設けることと、
電子ビームを導電性格子上で、導電性格子に近接して通過させることと、
電子ビームにより損失されたエネルギー量を決定することとを含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
気体又は液体の試料中の汚染物質分子を濃縮するための方法であって、
分子を試料から分離するために試料を予備濃縮装置に供給することと、
分離された分子を熱交換器内で冷却して分子を凝縮することと、
凝縮された分子を熱交換器内で加熱して分子を蒸発させることと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−526153(P2006−526153A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514888(P2006−514888)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015502
【国際公開番号】WO2005/022112
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(599134012)サーノフ・コーポレーション (59)
【Fターム(参考)】