説明

テルビナフィンの精製法

遊離塩基形または酸付加塩形の、式I
【化1】


のアリルアミン医薬テルビナフィンの精製法であり、粗テルビナフィン塩基を、好ましくは短距離蒸留により、例えば100℃を超える温度で、かつ減圧下、例えば0.2mbarで蒸留し、精製された生成物を遊離塩基形または酸付加塩形で回収することを含む、方法。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、アリルアミン医薬の精製法に関する。それは、粗テルビナフィン塩基の生成法に関する。
【0002】
テルビナフィン、特に塩酸付加塩形は、例えばEP24587から既知である。それはアリルアミン抗真菌剤のクラスに属する。それは、商品名ラミシールとして市販されている。それは、局所および経口投与の両方で、広範囲の真菌感染に有効である。テルビナフィンは、皮膚、または解質層、爪および髪のような付属器の死滅組織に侵入する伝染性真菌である、皮膚糸状菌に特に有用である。
【0003】
テルビナフィンは、インビトロでのその強力な殺菌作用、かつ経口ならびに局所で投与したときの種々の皮膚糸状菌感染における急速な臨床効果に基づき、抗真菌治療において著しい利点を示す。それはエルゴステロール生合成の強力な阻害剤であり(Ann. NY Acad. Sci. 544 [1988] 46 62)、スクアレンエポキシダーゼの作用を遮断し、故にスクアレンからスクアレンエポキシドへの変換を阻害する。エルゴステロール合成は部分的にしか阻害されないが、細胞増殖は完全に停止する。これは、テルビナフィンの殺菌効果が、高濃度では真菌に毒性であり得るスクアレンの蓄積に関連し得ることを示唆する。インビトロでのテルビナフィンの活性スペクトルは、トリコフィトン属、エピデルモフィトン属および小胞子菌の属の全ての皮膚糸状菌を包含する。これらの皮膚糸状菌に対する平均最小阻害濃度は0.001μg/mlから0.01μg/mlの範囲である(Science 224 [1984] 1239-1241)。テルビナフィンはまたインビトロで糸状菌および二形性真菌に対して、およびピチロスポルム属、カンジダ属およびロドトルラ属の多くの病原性酵母に対しても活性である。
【0004】
テルビナフィンの構造式は式I
【化1】

に示す通りであり、その化学名はとりわけ
(E)−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−1−ナフタレン−メタンアミンである。
【0005】
それは遊離塩基または酸付加塩形であり得る。酸付加塩形は、遊離塩基形から慣用法で製造され、また逆もそうである。適当な酸付加塩形の例は、塩酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩およびリンゴ酸塩、例えばL−(−)−リンゴ酸水素塩である。遊離塩基および塩酸塩およびリンゴ酸塩が好ましい。
【0006】
上記の式Iから明らかなように、テルビナフィンは、側鎖に二重結合と結合した三重結合を有するアリルアミン化合物である。テルビナフィンは昔に発明され(例えばEP24587、実施例16参照)、このような結合したエニン構造はその当時も現在も医薬分野では非常に稀であり、医薬品化学において新規な構造特性を構成している。
【0007】
二重結合および三重結合の両方とも通常非常に反応性である。科学文献は、このような構造を有する化合物が安定である可能性を除外していないが、あるものは不安定であり、あるものは貯蔵または、例えば、高温での蒸留におけるような加熱したときのような処理で分解し得る。
【0008】
故に、純粋なペンタ−1,2−ジエン−4−インの、その通常の沸点である57°での単純な蒸留で、既に分解をすることを提供する、例えばE.R.H. Jones et al., J. Chem. Soc. (1960) 341-346からも明らかである。同様に、(結合していない)1−アルケン−4−イン二量体[CH=CH−CH−C=C−C(CH)(OH)−]、すなわち6,7−ジメチル−ドデカ−1,11−ジエン−4,8−ジイン−6,7−ジオール(H. DisselnkoetterおよびP. Kurtz, Ann. Chem. [1964] 26-34の化合物V)は、低下させた温度(85−90℃)および圧力(0.05mmHg)下での蒸留で、および、81−85℃および0.03mmHgでの更新された(renewed)蒸留でかなり分解する。さらに、エンジイン(Z,Z)−3,7−デカジエン−1,5,9−トリインは、そのままのとき容易に重合化し、その溶液は170−190℃で熱分解してナフタレンとなり、一方対応する(E,Z)および(E,E)異性体は他の生成物またはポリマーとなる(J.Am.Chem.Soc. 114 [1992] 3120-3121)。
【0009】
さらに、結合したエニン化合物、例えばエーテルCHCH=CH−C=C−CHOCの対応する1,3,5−トリエン化合物への異性体化が、附随するエタノールの1,6−脱離に由来して、蒸留後にかなりポリマー残渣が残って起こり得るが、一方OC基のアミノ基への置換は、芳香族化をもたらす(Van Dongen, J. et al., Recueil Trav. Chim. Pays-Bas 86 [1967] 1077-1081)。
【0010】
さらに、総括して、明白に、加熱により、分解または重合化、または、爆発さえ起こりやすい非常に反応性の化合物で予測されるように、蒸留を仮にもエニン誘導体で行うとき、これは、通常100℃より低いかわずかに高い、とりわけ約125℃より低い温度で行うことは、例えば上記刊行物から明らかである。これはまた例えばRecueil Trav.Chim.Pays-Bas 85 (1966) 952-965およびZh.Org.Khim 3 (1967) 1792-3 (CA 68 [1968] 12370)に記載されているように、ほとんどのアルケンイン誘導体でも明白であるが、Czech Author's Certificate No. 232843 (CA 106 [1984] 213632b)に記載されているフェロモンのための2種の中間体は、それぞれ、減圧下102−115℃および118−125℃で蒸留することにより、精製される。
【0011】
さらに、遊離塩基形のテルビナフィンは140℃で、0.3mbar圧下沸騰し、その温度でその熱安定性は制限される:故に下記分解を見ることができる(ガスクロマトグラフィーでの観察による;全ピークの合計に対する一つの化合物のピーク下面積を領域%と名付ける;Z異性体のとき、領域%は重量%とほぼ同じでなければならない):
【表1】

他方、生成物は、43℃以下で既に固化する。
【0012】
したがって、特に、医薬の工業生産のような大規模操作において、このような稀な構造を有する化学化合物を、特にその構造が限定された熱安定性を有するとき、後処理するときの加熱の実質的な適用をとする操作を行うことを、通常止める。例えば、テルビナフィンの製造法を記載する万有のEP0421302A2の実施例13は、反応後得た粗混合物(遊離塩基)を、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製に付す。
【0013】
しかしながら、本発明により、驚くべきことにそして直感とは逆に、テルビナフィン塩基を、特に望ましくない影響なく、蒸留に付し得ることが判明した。さらに、このような蒸留を、高温で、例えば100℃よりも著しく高い温度で、例えば約110℃から約170℃で、好ましくは約125℃から約165℃、とりわけ約160℃で、そして、相応する減圧下、例えば0.2mbarで、160℃(ジャケット温度)で行い得ることが、判明した。
それより達成される収率は、粗生成物から出発して、通常約95%である。
【0014】
さらに、このような蒸留を、大量の粗テルビナフィン塩基を使用して、すなわち工業用装置で、例えば精製テルビナフィン塩基および酸付加塩の大規模な製造において、例えば蒸留バッチまたはランあたり少なくとも約5kg、好ましくは少なくとも約50kg、とりわけ少なくとも約200kg、例えば約500kgから約2トン、より好ましくは約600kgから約900kg、最も好ましくは約800kgから約900kg、とりわけ約850kgの遊離塩基形の精製生成物にさえ行い得ることが判明した。
【0015】
本発明は、したがって、遊離塩基形の粗テルビナフィンを蒸留に付し、得られた生成物を遊離塩基形または酸付加塩形で回収することを含む、テルビナフィンの新規製造法に関する(以後、簡単に“本発明の方法”と呼ぶ)。
【0016】
本発明の方法は、特にテルビナフィンを汚染物質、例えばその合成に起因する金属汚染物質、例えば触媒、例えば銅および/または、特に、パラジウム汚染物質から分離するために有用であり、特に、例えば万有のEP421302および/またはDipharmaのEP1,236,709に記載の方法でまたはそれに準じた方法による合成に起因する、例えばテルビナフィン塩基を得るための、(E)−N−(3−ハロ−2−プロペニル)−N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミン(EP421302の式IVの化合物であって、式中、R11はメチルであり、R21は1−ナフチルメチルであり、そしてWはハロゲン、例えばブロモ、好ましくはクロロである)と、3,3−ジメチル−1−ブチン(それの中の式Vの化合物であって、式中、Rはtert−ブチルである)のパラジウムおよび/または銅触媒の存在下での反応による汚染物質の減少または除去のために、有用である。触媒は、例えばヨウ化銅(I)、またはヨウ化銅(I)とビス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)ジクロライドまたはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、またはさらに、EP421302A2、例えば7頁、54行から8頁、18行に記載されているものから選択される、パラジウム、銅またはパラジウム/銅含有触媒である。
【0017】
本発明の方法は、慣用の手段で行い得る。好ましくはいわゆる“穏やかな”蒸留法として行う。それは、例えばバッチ蒸留として、または好ましくは連続または半連続法で、そして、とりわけ、加熱マントルとコンデンサーの間の通路が短く、例えば10cm程度であり、故にテルビナフィンが高温にある、例えば100℃を超える時間を最短にする“短距離”(short pass)蒸留で行う。
【0018】
“短距離蒸留”なる用語は、ここでは、過度の構造変化または分解なしには長時間の加熱に耐えないであろう、有機(またはシリコン)化合物の混合物を分離するための高真空蒸留として理解すべきである。それは、凝縮熱を、蒸発器表面膜への放射熱放出のための主体として利用する。蒸発器と凝縮器の間の通路は遮られていない。短い滞留時間および低蒸留温度により、有機物質に対する熱害は大幅に減少する。
【0019】
短距離蒸留を使用する本発明の方法は、例えば、UIC GmbH, D 63755 Alzenau Hoerstein, Germanyから市販されているような、市販の装置を使用して行い得る。簡便な設定は、例えば図に記載する通りである。
【0020】
短距離蒸留が好ましい。それは、精製使用とする混合物の加熱時間短縮ならびに循環加工を可能にし、相応して精製生成物の収率を改善する。さらに、蒸発器壁上の物質の厚さを減少でき、低い蒸発温度および短い滞在時間を可能にする。汚染物質からの非常に効率的な分離が、それにより、クロマトグラフィーまたは再結晶のような、または大量の炭を使用したさらなる精製工程の必要なしに、達成される。
【0021】
それゆえに、例えば約10ppmから約200ppm、例えば約50ppmのパラジウム、および/または約10ppmから約100ppm、例えば約30ppmの銅を含む粗テルビナフィン塩基生成物から出発して、一段階短距離蒸留が、原子吸光分析法のような慣用の分析法を使用して測定して、1ppm未満の銅、および/または2ppm未満のパラジウムを含む生成物をもたらす。
【0022】
他の汚染物質は、存在するとき、特に有機化合物、例えば(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン(副産物1);2,2,7,7−テトラメチルオクタ−3,5−ジイン(副産物2);およびテルビナフィンのZ−異性体は、部分的のみに除去されるか、または全く除去されない可能性がある(例えば副産物1およびテルビナフィンのZ−異性体)。
【0023】
本発明は、それゆえにとりわけ下記を含む:
−遊離塩基形の粗テルビナフィンを蒸留に付し、得られた生成物を遊離塩基形または酸付加塩形で回収することを含む、テルビナフィンを精製する方法;
−短距離蒸留を含む、本発明の方法;
−蒸留を100℃を超える温度で、かつ減圧下に行う、上記で定義の方法;
−粗テルビナフィンを、パラジウム接触触媒および/または銅接触触媒を使用して製造する、上記で定義の方法;
−精製生成物が2ppm未満のパラジウムおよび/または1ppm未満の銅を含む、上記で定義の方法;
−粗テルビナフィンが2ppmを超えるパラジウムおよび/または1ppmを超える銅を含み、かつ得られた精製生成物が2ppm未満のパラジウムおよび/または1ppm未満の銅を含む、上記で定義の方法;
−少なくとも5kg、好ましくは少なくとも50kg、とりわけ少なくとも200kgの遊離塩基形の精製生成物を、蒸留バッチまたはランあたりに製造する、上記で定義の方法;
−遊離塩基形の粗テルビナフィンを(E)−N−(3−ハロ−2−プロペニル)−N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミンと3,3−ジメチル−1−ブチンの、パラジウムおよび/または銅触媒存在下の反応より製造する、上記で定義の方法;
−上記で定義の方法により製造した、精製した遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン;および
−2ppmを超えるパラジウムおよび/または1ppmを超える銅を含む遊離塩基形の粗生成物から得た、2ppm未満のパラジウムおよび/または1ppm未満の銅を含む遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン。
【0024】
図面の説明
1. 蒸留物の流出口
2. 真空ポンプ接続口
3. 熱流入口
4. 凝縮器
5. 減圧空間
6. 回転ワイパー(粗生成物を均質に分配し、フィルムを形成する)
7. 加熱ジャケット
8. 密封液、投入口
9. 運動伝達フランジ
10. 粗生成物導入口
11. 熱媒体排出口
12. 残留液排出口
13. 冷却水導入口
14. 冷却水排出口
【0025】
下記実施例は本発明を説明する。全ての温度は摂氏である。1000mbar=750.06mmHg;ppm=100万分の1。
【0026】
実施例1バッチ蒸留(研究室規模)
0.3領域%の(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン(副産物1)を含む100gの粗テルビナフィン塩基を、20g ピーナッツ油と混合し、混合物を142°に0.3mbar圧(ジャケット温度190°)で加熱する。2時間後、96.4gの精製されたテルビナフィン塩基を黄色がかった留出物として、および21.4gの濃褐色残渣を得る。バッチ蒸留中(2時間、142°)の熱の影響のために、留出物は約1面積%の(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン(副産物1)を、ガスクロマトグラフィーで測定して含む(実験条件:実施例2の通り)。
【0027】
大規模製造については、蒸留時間および熱衝撃はかなり高いであろう。その結果、明白に高濃度の副産物1が、蒸留時間を、例えば“短距離”蒸留によるように、短くしない限り、予測され得る。
【0028】
出発物質として使用する粗テルビナフィン塩基を、n−ブチルアミンおよび水中の(E)−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−N−メチル−1−ナフタレンメタンアミンと3,3−ジメチル−1−ブチンの、触媒量のヨウ化銅(I)およびビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド存在下での、EP421302A2の実施例13に記載の方法に沿うが、得られた生成物をシリカゲルクロマトグラフィーに付さずに、製造する。
【0029】
実施例2短距離蒸留(研究室規模)
市販の薄層エバポレーター(Leybold Heraeus GmbH, Hanau, Germanyから:加熱ドラムの直径7cm;長さ25cm;50°のクーリング・フィンガー(cooling finger);圧0.2mbar;450rpmのテフロンローター)に、179g粗テルビナフィン塩基(上記実施例1の通りに製造)を、8.9gピーナッツ油と混合し、混合物を50°に加熱する。システム全体を0.2mbarに排気させた後、ゆっくり混合物を高温帯(ジャケット温度160°)に滴下することにより蒸留を開始させ、その場所でテルビナフィン塩基は、沸点温度に数秒間だけ加熱される。2時間後、黄色がかった留出物として171g(95%)の精製されたテルビナフィン塩基を得て、それは1ppmのパラジウムおよび1ppm未満の銅を含む。留出物の化学純度はガスクロマトグラフィー(HP−1カラム;架橋メチルシロキサン;長さ30m;フィルム厚2.65μm;カラム内径0.53mm;炎イオン化検出器(FID)温度300°;注入器温度250°;温度勾配50°から270°;加熱速度20°/分)で測定して、98.6%テルビナフィン塩基(すなわちE異性体)である。加えて、10.5gの蒸留残渣および0.4gの油状昇華物を得た。昇華物は、主に2,2,7,7−テトラメチルオクタ−3,5−ジイン(副産物2)を含んだ。
【0030】
ガスクロマトグラフィーにより測定したテルビナフィン塩基の全体的純度は下記の通りである:
【表2】

【0031】
実施例3短距離蒸留(工業規模)
粗テルビナフィン塩基の蒸留を、優れた(fine)真空蒸留装置(UIC GmbH KD 150)で、2連の蒸発器と共に短距離蒸留を利用して行う。これにより、物質が、垂直に配置された蒸発器の内表面に一定に供給され、分配される。液体流が下向きのため、軸に沿った回転ワイパーシステムがこの液体を、絶えず攪拌して薄層フィルムとして分配する(図参照)。この穏やかな蒸留法は、したがって、最高蒸発温度および高温中への滞留時間の両方を減少させる。
【0032】
出発温度値は、典型的に下記の通りに設定する:
−供給タンクの内部限界:70°;
−生成物容器の内部限界:80°;残渣タンクのジャケット限界:80°;
−蒸発器1および2の内部の上限および加減:100°;
−蒸発器1および2のジャケット限界:160°。
【0033】
全装置が空であり清潔であることを検査した後、拡散ポンプにより到達され得る両方の蒸発器の最大真空を確認する:
−蒸発器1の前および後:1.6×10−1mbar;
−蒸発器2の前:2.6×10−2mbar;
−蒸発器2の後:4.7×10−3mbar。
【0034】
872.5kg粗テルビナフィン塩基(上記実施例1の記載に準じて製造)および120kgピーナッツ油の混合物を、次いでタンクに移す。ピーナッツ油は、蒸発器内に液殻が蓄積しないことを確実にする。冷却トラップに20から30kgのドライアイスおよび約30lのエタノール(94%)の混合物を満たし、温度値を下記の通り調節する:
−残渣容器のジャケット:40°;
−蒸発器1のジャケット:120°;
−蒸発器1のコンデンサー:50°;
−蒸発器2のジャケット:155°;
−蒸発器2のコンデンサー:45°。
【0035】
主容器の内部温度を、生成物の融点が42°付近であるため、50°に設定する。
【0036】
全ての温度が達成されたとき、粗生成物を蒸発器1に約1.5l/分の流速で供給する。蒸発器1の留出物(残留溶媒)を、その容量が少量であるため、ガーゼ上に回収できる。蒸発器1の残留物を蒸発器2に移して粗塩基を蒸留し、それを加熱している主容器(1.4l/分)に黄色液体として回収する。
【0037】
全ての粗混合物を蒸留したとき(約11時間)、蒸発器2の残留物を供給タンクに移し、再び蒸留する。それにより、蒸発器1のジャケット温度は110°に下がり、蒸発器2のジャケット温度は140°に下がる。
【0038】
残留物の蒸留が完了した後(約2時間)、新しい残留物は、生成物の流速が約0.2l/時間に到達するまで、蒸発器を通って循環するであろう。循環が開始され得る前に、蒸発器1のジャケット温度を100°に下げ蒸発器2のコンデンサー温度を60°に上げる。循環中に、収容された留出物は濃色になっていく。
【0039】
蒸留の最後に(全体で約22.5時間)、装置を窒素で開封する。主容器からの生成物は、約50°でドラムに入れる。サンプルを取り、ドラムを秤量する。遊離塩基の化学純度は、ガスクロマトグラフィーで測定して、97%またはそれより高い(ここでは、98.4%であった)。収量は856.1kgであった。残った銅および/またはパラジウムの量は非常に少ないか、検出不可能であった(1ppm未満)。
【0040】
残りの残留物(約120kgピーナッツ油;ここでは128kgであった)、蒸発器1の留出物および冷却トラップの凝縮物を合わせて灰化する。5から6バッチの後、装置の洗浄を行う。
【0041】
比較例炭末処理(研究室規模)
404gの粗テルビナフィン塩基のシクロヘキサン溶液(100gの(E)−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−N−メチル−1−ナフタレン−メタンアミンから上記実施例1の記載に準じて製造)に、10g活性炭(Norit Supra)を添加する。混合物を17時間、20−25°で撹拌し、次いで濾過する。溶媒の、減圧下での蒸発後、110.5g(89%)テルビナフィン塩基を得て、それは14ppmのパラジウムで汚染されている。油状残渣の化学純度は、ガスクロマトグラフィーで測定して、95%である(実験条件:実施例2の通り)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】1.蒸留物の流出口;2.真空ポンプ接続口;3.熱流入口;4.凝縮器;5.減圧空間;6.回転ワイパー(粗生成物を均質に分配し、フィルムを形成する);7.加熱ジャケット;8.密封液、投入口;9.運動伝達フランジ;10.粗生成物導入口;11.熱媒体排出口;12.残留液排出口;13.冷却水導入口;14.冷却水排出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基形の粗テルビナフィンを蒸留に付し、得られた生成物を遊離塩基形または酸付加塩形で回収することを含む、テルビナフィンを精製する方法。
【請求項2】
短距離蒸留を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
蒸留を100℃を超える温度で、かつ減圧下に行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粗テルビナフィンを、パラジウム接触触媒および/または銅接触触媒を使用して製造する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
精製生成物が2ppm未満のパラジウムおよび/または1ppm未満の銅を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
粗テルビナフィンが2ppmを超えるパラジウムおよび/または1ppmを超える銅を含み、かつ得られた精製生成物が2ppm未満のパラジウムおよび/または1ppm未満の銅を含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
少なくとも5kg、好ましくは少なくとも50kg、とりわけ少なくとも200kgの遊離塩基形の精製生成物を、蒸留バッチまたはランあたりに製造する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
遊離塩基形の粗テルビナフィンを、(E)−N−(3−ハロ−2−プロペニル)−N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミンと3,3−ジメチル−1−ブチンの、パラジウムおよび/または銅触媒存在下での反応により製造する、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの方法により製造した、精製した遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン。
【請求項10】
2ppmを超えるパラジウムおよび/または1ppmを超える銅を含む遊離塩基形の粗生成物から得た、2ppm未満のパラジウムおよび/または1ppm未満の銅を含む遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン。


【公表番号】特表2007−504110(P2007−504110A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524338(P2006−524338)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009587
【国際公開番号】WO2005/021483
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】