説明

テレビ視聴制限装置

【課題】デジタル放送におけるテレビ視聴を制限するテレビ視聴制限装置を提供する。
【解決手段】基地局10から送信されて、映像成分及び音声成分が含まれるシンボルと同シンボルに付加される冗長部分であるガードインターバルとからなるOFDM波を受信する受信アンテナ31と、同受信アンテナ31によって受信されたOFDM波に含まれるガードインターバルの時間長さであるガード区間よりも長くOFDM波を遅延させた遅延波を生成する遅延回路32と、遅延波を車室内に送信する送信アンテナ35とを備えるテレビ視聴制限装置30。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送におけるテレビ視聴を制限するテレビ視聴制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルテレビ放送が急速に普及してきている。このデジタルテレビ放送に関して、我が国では、基地局から配信される地上デジタルテレビ放送波に例えば特許文献1に示されるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexi)波を採用している。基地局は、瞬間的影像及びこれに伴う音声をOFDM波に変換して配信する。車両のナビゲーションシステムなどのテレビ端末は、このOFDM波を受信すると、これを復調して瞬間的映像をディスプレイに表示させるとともに、この映像に伴う音声をスピーカーから流す。しかし、車両の運転中におけるテレビ放送の視聴は、安全上の問題があるとして、ナビゲーションシステム等では、走行中のテレビ視聴を制限している。これに対して、近年では、テレビ視聴が可能とされた携帯電話等のテレビ端末も登場してきている。このような携帯電話では、車両などで移動している場合、例えば運転中でもテレビ視聴が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレビ視聴が可能とされた携帯電話等のテレビ端末では、運転中における地上デジタル放送の視聴が可能であるため、安全上の懸念がなされていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、デジタル放送におけるテレビ視聴を制限するテレビ視聴制限装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車室内のテレビ端末の視聴を制限するテレビ視聴制限装置において、基地局から送信されて、映像成分及び音声成分が含まれるシンボルと同シンボルに付加される冗長部分であるガードインターバルとからなるOFDM波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナによって受信されたOFDM波に含まれるガードインターバルの時間長さであるガード区間よりも長く前記OFDM波を遅延させた遅延波を生成する遅延回路と、前記遅延波を車室内に送信する送信アンテナとを備えることを要旨とする。
【0006】
同構成によれば、車室内にあるテレビ端末は、基地局から送信された直接波と、テレビ視聴制限装置によって生成された遅延波とを受信することになる。遅延波は、ガード区間よりも長い時間だけ遅延しているため、テレビ端末は、直接波を好適に復調することができない。従って、車室内におけるテレビ端末でのテレビ視聴を抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテレビ視聴制限装置において、車両の走行を検出する検出部と、前記検出部において、車両の走行が検出されないときは、前記遅延波の送信を停止し、走行が検出されるときは、前記遅延波を送信する制御部とを備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、テレビ視聴制限装置は、車両の走行が検出されたときのみ遅延波を送信する。これにより、車室内にあるテレビ端末は、車両の走行中、すなわち運転中におけるテレビ視聴が抑制される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のテレビ視聴制限装置において、運転席近傍に設けられ、テレビ端末を保持するクレードルを有し、前記送信アンテナは、前記クレードルに設けられ、同クレードルに保持されるテレビ端末に向けて前記遅延波を送信することを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、クレードルに保持されたテレビ端末は、車室内の他の場所にあるテレビ端末よりも遅延波を受信しやすい。従って、この端末は、より遅延波の影響を受けやすい。このため、テレビ視聴制限装置は、運転席におけるテレビ端末でのテレビ視聴を抑制しやすい。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のテレビ視聴制限装置において、前記遅延波が前記クレードルに保持されるテレビ端末にのみ受信されるようにその出力をする調整回路を有することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、遅延波は、クレードルに保持されるテレビ端末にのみ受信される。すなわち、車室内の他の場所にあるテレビ端末においては、遅延波は受信されない。これにより、運転席以外におけるテレビ視聴は可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、デジタル放送におけるテレビ視聴を制限するテレビ視聴制限装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】地上デジタル放送の概要及びテレビ視聴制限装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】基地局から送信されるOFDM波のイメージ図。
【図3】クレードルに保持される携帯電話を示す斜視図。
【図4】直接波と遅延波との関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
<地上デジタル放送の概要>
まず、地上デジタル放送の概要について説明する。図1に示されるように、地上デジタル放送では、基地局10から地上デジタル放送波、すなわちOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexi)波(直接波)が送信される。図2に示されるように、基地局10から送信されるOFDM波は、映像成分及び音声成分を含むシンボルと、このシンボルの前後に挿入されるガードインターバルとによって構成されている。
【0016】
図1に示されるように、テレビ端末である携帯電話20は、OFDM波を受信するための携帯側受信アンテナ21、OFDM波のシンボルを復調して映像成分及び音声成分を取り出すための受信装置22、映像を表示させるディスプレイ23、及び音声を流すためのスピーカー24を備える。携帯電話20は、携帯側受信アンテナ21を通じてOFDM波を受信すると、これを受信装置22にて復調し、映像成分及び音声成分を取り出す。そして、携帯電話20は、この取り出した映像成分をディスプレイ23に表示させるとともに、この映像に対応する音声をスピーカー24から流す。携帯電話20のユーザは、ディスプレイ23及びスピーカー24を視聴することにより地上デジタル放送を楽しむことができる。なお、携帯電話20が受信するOFDM波には、基地局10から配信されたものを直接受信する直接波と、建物や山などの傷害物に反射したものを受信する遅延波とがある。基本的に遅延波は、直接波と同じ構造の信号であるが、傷害物に反射する分、直接波に比べテレビ端末で受信される時間が遅れることになる。テレビ端末は、この直接波と遅延波とを同時に受信する場合に、好適に復調できないことがあることが分かっている。
【0017】
<テレビ視聴制限装置の構成>
図1に示されるように、テレビ視聴制限装置30は、OFDM波を受信するための受信アンテナ31、OFDM波を時間的に遅延させた遅延波を生成する遅延回路32、遅延波の出力(信号強度)を調整する調整回路33、遅延波を送信するか否かを選択する制御部34、及び遅延波を送信するための送信アンテナ35を備える。また、テレビ視聴制限装置30は、車両1の車速信号を受信して、この信号から当該車両1が走行しているか否かを判定する走行判定回路36を備える。これらテレビ視聴制限装置30を構成する各部材は、図3に示される携帯電話20を保持するクレードル37に収容されている。このクレードル37は、車両1の運転席近傍、ここでは、ダッシュボードに設けられる。
【0018】
図1に示されるように、テレビ視聴制限装置30は、受信アンテナ31を通じてOFDM波(直接波)を受信すると、これを遅延回路32にて遅延させて遅延波を生成する。本例の遅延回路32は、まずガードインターバルの長さ、すなわちガード区間T1を計測する。次に、このガード区間T1よりも長い遅延時間T2を設定する。そして、遅延回路32は、遅延時間T2分だけ直接波から遅延している遅延波を生成する。
【0019】
次に、調整回路33によって遅延波の出力が調整される。ここでは、クレードル37に保持されている携帯電話20のみ遅延波を受信できる程度の出力に調整する。調整回路33にて出力が調整された遅延波は制御部34に入力される。制御部34は、遅延波を送信するか否かを判定する。制御部34には、走行判定回路36から、車両の走行を示す走行信号か、車両の停車を示す停車信号かのいずれかが入力される。走行判定回路36から停車信号が入力されている場合には、制御部34は、遅延波を送信する必要はない旨判定し、入力された遅延波を吸収する。一方、走行判定回路36から走行信号が入力されている場合には、制御部34は、遅延波を送信する必要がある旨判定し、送信アンテナ35を通じて入力された遅延波を送信する。送信アンテナ35から送信された遅延波は、クレードル37に保持された携帯電話20にのみ受信される。
【0020】
<制限装置の作用>
車両1の走行中、クレードル37に保持された携帯電話20は、基地局からの直接波の他に、テレビ視聴制限装置30から送信される遅延波を受信する。受信装置22は、直接波に合わせてシンボルの切り出し区間Kを設定する。このとき、図4に示されるように、この遅延波は、直接波に対し遅延時間T2だけ遅れているため、遅延波のシンボルは、切り出し区間Kに収まりきらない。また、この切り出し区間Kには、復調したいシンボルの一つ前のシンボルのガードインターバルが含まれる。受信装置22は、この復調したいシンボルの前のガードインターバルを、復調したいシンボルとは異なるシンボルとして認識する。このため、遅延波が直接波を乱すことになり、受信装置22は、シンボルの復調が困難になる。すなわち、シンボルから映像成分及び音声成分を取り出すことが困難になる。従って、映像をディスプレイ23に表示したり、音声をスピーカー24から流したりすることが困難となるため、車両1の走行中における地上デジタル放送の視聴が抑制される。
【0021】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)車両1の走行中において、基地局10から送信されるOFDM波(直接波)の遅延波を生成し、この遅延波を車室内に送信するテレビ視聴制限装置30を設けた。このテレビ視聴制限装置30が生成する遅延波の遅延時間T2は、直接波のガード区間T1よりも長くなるように設定した。これにより、車両1の走行中において、車室内にある携帯電話20は、直接波の他に遅延波を受信することになる。携帯電話20の受信装置22は、直接波に合わせてシンボルの切り出し区間Kを設定するが、遅延波のシンボルは、切り出し区間Kに収まりきらない。また、この切り出し区間Kには、復調したいシンボルの一つ前のシンボルのガードインターバル(ここでは、復調したいシンボルとは異なるシンボルとして認識される)が含まれる。このため、遅延波が直接波を乱すことになり、受信装置22はシンボルの復調が困難になる。すなわち、シンボルから映像成分及び音声成分を取り出すことが困難になる。従って、映像をディスプレイ23に表示したり、音声をスピーカー24から流したりすることが困難となるため、車両1の走行中における地上デジタル放送の視聴が抑制される。
【0022】
(2)テレビ視聴制限装置30に遅延波の出力を調整する調整回路33をもうけた。そして、この調整回路33は、遅延波をクレードル37に保持される携帯電話20にのみに受信される出力に調整した。これにより、遅延波は、クレードル37に保持される携帯電話20にのみ受信されて、車室内にある他の携帯電話、例えば後部座席にあるものには受信されない。従って、これら他の携帯電話の地上デジタル放送の視聴を妨げない。
【0023】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、地上デジタル放送を視聴するテレビ端末として携帯電話20について説明したが、地上デジタル放送を視聴できるテレビ端末であれば、携帯電話に限らない。例えば、ノートパソコン、ゲーム機、ポータブルナビゲーションなど、テレビ端末の機能を備えているものであれば、本発明を適用することができる。
【0024】
・上記実施形態では、遅延波の出力を調整する調整回路33は、設けなくともよい。このようにすれば、車室内の他の携帯電話に対しても地上デジタル放送の視聴を制限することができる。
【0025】
・上記実施形態において、遅延回路32が設定する遅延波の遅延時間T2は、ガード区間T1よりも長ければ任意に設定してよい。このような設定であれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0026】
・上記実施形態において、遅延回路32、調整回路33、及び走行判定回路36は、制御部34の一部であってもよい。このように構成した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
・上記実施形態において、受信アンテナ31,送信アンテナ35は一体であってもよい。すなわち、1つのアンテナで直接波の受信と遅延波の送信とを行う送受信アンテナであってもよい。このように構成した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
・上記実施形態において、クレードル37は、必ずしもダッシュボードに設けられなくともよい。例えば、センターコンソールなどに設けられてもよい。このようにしても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、クレードル37に設ける必要があるのは、遅延波を送信する送信アンテナ35のみである。他の構成は、クレードル37と別の場所に設けてもよい。
【0029】
・上記実施形態において、テレビ視聴制限装置30は、車両1に設けられるものとしたが、車両1とは別体としてもよい。この場合、走行判定回路36に代わって、車両の走行を検出することができるもの、例えばGセンサを設ける。このように構成した場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
K…切り出し区間、T1…ガード区間、T2…遅延時間、1…車両、10…基地局、20…携帯電話、21…携帯側受信アンテナ、22…受信装置、23…ディスプレイ、24…スピーカー、30…テレビ視聴制限装置、31…受信アンテナ、32…遅延回路、33…調整回路、34…制御部、35…送信アンテナ、36…検出部としての走行判定回路、37…クレードル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のテレビ端末の視聴を制限するテレビ視聴制限装置において、
基地局から送信されて、映像成分及び音声成分が含まれるシンボルと同シンボルに付加される冗長部分であるガードインターバルとからなるOFDM波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナによって受信されたOFDM波に含まれるガードインターバルの時間長さであるガード区間よりも長く前記OFDM波を遅延させた遅延波を生成する遅延回路と、
前記遅延波を車室内に送信する送信アンテナとを備えるテレビ視聴制限装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテレビ視聴制限装置において、
車両の走行を検出する検出部と、
前記検出部において、車両の走行が検出されないときは、前記遅延波の送信を停止し、走行が検出されるときは、前記遅延波を送信する制御部とを備えるテレビ視聴制限装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のテレビ視聴制限装置において、
運転席近傍に設けられ、テレビ端末を保持するクレードルを有し、
前記送信アンテナは、前記クレードルに設けられ、同クレードルに保持されるテレビ端末に向けて前記遅延波を送信するテレビ視聴制限装置。
【請求項4】
請求項3に記載のテレビ視聴制限装置において、
前記遅延波が前記クレードルに保持されるテレビ端末にのみ受信されるようにその出力をする調整回路を有するテレビ視聴制限装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−238957(P2012−238957A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105325(P2011−105325)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】