説明

テレビ電話システム、及びこれに用いる中継装置、端末装置

【課題】通話相手の映像や音声を、通話者がテレビ電話として用いるのに好適な位置にあるモニタに出力させることができるテレビ電話システムを提供する。
【解決手段】本発明のテレビ電話システムは、映像を表示可能なテレビセット3と、テレビセット3をIP網に接続するホームゲートウェイ1と、テレビ電話機能を有するとともにホームゲートウェイ1を介してIP網に接続可能な携帯端末4と、を備えている。ホームゲートウェイ1は、携帯端末4宛てに送信されるテレビ電話データを所定のテレビセット3にリダイレクト又は分配する送信制御部12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ電話システム、及びこれに用いる中継装置、端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報技術の発展に伴って、インターネット網を介して音声情報を送受信するIP電話や、音声情報とともに映像情報を送受信するテレビ電話システムが普及しつつある。
上記テレビ電話システムを家庭内に設置する場合、例えば、特許文献1に示されるように、インターネット網に接続されたセットトップボックスと、このセットトップボックスを介してインターネット網に接続するための専用の端末装置とを用いて構成される場合がある。端末装置には、カメラが内蔵されており、セットトップボックスに接続されたモニタに通話相手の映像を表示させつつ通話することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−267193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のテレビ電話システムでは、テレビ電話としての映像をセットトップボックスに接続されたテレビにしか出力することができず、例えば、他の部屋のテレビ等、任意のモニタに通話者の映像を出力させてテレビ電話を構成するといったことは困難であった。
従って、例えば、端末装置が無線通信可能であって、その移動範囲に比較的自由度があったとしても、テレビ電話で通話する際には、セットトップボックスが接続されたテレビの前にいる必要がある。
このため、より利便性を高めるために、通話者の映像を任意のモニタに出力させることができるテレビ電話システムが望まれていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、通話相手の映像や音声といったテレビ電話データを、通話者がテレビ電話として用いるのに好適な位置にあるモニタに出力させることができるテレビ電話システム、中継装置、端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、映像を表示可能なモニタと、前記モニタをIP網に接続する中継装置と、テレビ電話機能を有するとともに前記中継装置を介して前記IP網に接続可能な端末装置と、を備えたテレビ電話システムであって、前記端末装置宛てに送信されるテレビ電話データを構成する映像データ及び音声データの内、少なくとも前記映像データを前記モニタにリダイレクト又は分配する制御部を備えていることを特徴としている。
【0007】
上記のように構成された無線通信システムによれば、端末装置宛てに送信されるテレビ電話データの内、少なくとも映像データを前記モニタにリダイレクト又は分配する制御部を備えているので、通話相手の映像や音声を、端末装置以外の中継装置に接続されたモニタに出力することができる。
【0008】
(2)さらに、前記端末装置は、前記テレビ電話データを送信すべき前記モニタを示す送信先通知を前記制御部に送信し、前記制御部は、複数の前記モニタの内、前記送信先通知に応じた前記モニタに前記テレビ電話データをリダイレクト又は分配することが好ましい。
この場合、テレビ電話データを送信すべきモニタを、送信先通知によって選択することができるので、通話相手の映像や音声を、通話者がテレビ電話通話するのに好適な位置にあるモニタに出力させることができる。
【0009】
(3)ここで、前記端末装置宛ての前記テレビ電話データが、前記IP網を介して送信される場合、中継装置が端末装置宛てに送信される通話相手からのテレビ電話データを中継する。このため、前記制御部は、前記中継装置に設けられていることが好ましい。
この場合、テレビ電話データをリダイレクト又は分配するのが容易となる。
【0010】
(4)また、端末装置から送信されるテレビ電話データには、モニタから出力された音声が含まれている可能性がある一方、制御部は、通話相手から送信されるテレビ電話データをモニタに中継するので、この場合、前記中継装置は、前記制御部から得られる前記テレビ電話データに含まれる音声データを用いて、前記端末装置から送信されるテレビ電話データに含まれる音声データのエコーキャンセルを行うエコーキャンセル部を備えていてもよい。これによって、効率的にエコーキャンセルを行うことができる。
【0011】
(5)また、上記テレビ電話システムにおいて、前記制御部は、前記端末装置宛てのテレビ電話データの送信元である他の端末装置に設けられていてもよい。
この場合、他の端末装置からテレビ電話データを送信する段階で、端末装置の通話者がテレビ電話として好適に用いることができるモニタに向けて、当該テレビ電話データを送信させることができる。
【0012】
(6)さらに上記の場合、前記端末装置、及び前記端末装置宛てのテレビ電話データの送信元である他の端末装置が、互いに前記IP網以外の他の通信網にて接続可能であれば、前記他の通信網を介して、前記端末装置と前記他の端末装置との間で前記テレビ電話データの送受信を行いつつ、前記他の端末装置に設けられた前記制御部は、前記端末装置宛てのテレビ電話データを前記IP網を介して前記モニタに送信するものであることが好ましい。
【0013】
(7)また、上記テレビ電話システムにおいて、前記制御部が、前記端末装置に設けられている場合には、当該端末装置が受信した自装置宛てのテレビ電話データを、複数の前記モニタの内、前記テレビ電話データを出力すべき前記モニタに送信するものであってもよく、この場合、簡易な構成でテレビ電話データをモニタに出力することができる。
【0014】
(8)他の観点から見た本発明は、映像を表示可能なモニタ、及びテレビ電話機能を有する端末装置をIP網に接続する中継装置であって、前記端末装置宛てに送信されるテレビ電話データを構成する映像データ及び音声データの内、少なくとも前記映像データを前記モニタにリダイレクト又は分配する制御部を備えていることを特徴としている。
【0015】
(9)上記中継装置において、前記制御部から得られる前記テレビ電話データに含まれる音声データを用いて、前記端末装置から送信されるテレビ電話データに含まれる音声データのエコーキャンセルを行うエコーキャンセル部をさらに備えていることが好ましい。
【0016】
(10)また、本発明は、テレビ電話機能を有する端末装置であって、映像を表示可能なモニタをIP網に接続する中継装置に対して接続可能な他の端末装置との間で通信を行うとともに、前記他の端末装置宛てのテレビ電話データを構成する映像データ及び音声データの内、少なくとも前記映像データを、前記他の端末装置及び前記モニタの双方に送信する制御部を備えていることを特徴としている。
【0017】
(11)上記端末装置において、前記制御部は、前記他の端末装置から送信される、前記テレビ電話データの出力先にすべき前記モニタを示す出力先通知に応じて、前記テレビ電話データの出力先を設定するものであってもよい。
【0018】
上記構成の中継装置及び端末装置によれば、上記テレビ電話システムと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通話相手の映像や音声といったテレビ電話データを、通話者がテレビ電話として用いるのに好適な位置にあるモニタに出力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のテレビ電話システムを含むホームネットワークの一例を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るテレビ電話システムの構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態のホームゲートウェイの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態のテレビ電話システムによってテレビ電話通話が行われる際の各機器の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るテレビ電話システムの構成を示す図である。
【図6】通話相手の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図7】第二の実施形態に係るテレビ電話システムの他の構成を示す図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係るテレビ電話システムの構成を示す図である。
【図9】本実施形態の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明のテレビ電話システムを含むホームネットワークHNの一例を示す図である。図1に示すように、ホームネットワークHNは、図示しない終端装置を介してIP網に接続されたホームゲートウェイ1を備えている。ホームゲートウェイ1(以下、HGW1ともいう)には、パソコン2や、テレビセット3等が有線LAN又は無線LANによって通信可能に接続されており、これらによって、ホームネットワークHNは構成されている。
【0022】
ホームゲートウェイ1は、IP網に接続するインターフェースを有する他、パソコン2やテレビセット3等が接続される有線LAN又は無線LANによるインターフェースを有しており、パソコン2やテレビセット3等の相互間通信を制御する機能を有するとともに、パソコン2やテレビセット3等がIP網を介して行う他の住宅H等に配置された機器間のデータ通信に関して、プロトコル変換を行って中継する中継装置としての機能を有している。また、ホームゲートウェイ1は、自装置に接続する各機器それぞれに対してアドレスを割り当てる機能も有している。
【0023】
従って、ホームネットワークHNに接続する各機器は、他のホームネットワークHNに接続する機器や、IP網に接続可能な携帯端末4との間で、IP網を介して通信可能である。
【0024】
〔第一の実施形態〕
図2は、本発明の第一の実施形態に係るテレビ電話システムの構成の一例を示す図である。なお、図2中、IP網を挟んで紙面左側に配置されている各機能部は、通話者A側に属しており、紙面右側に配置されている各機能部は、通話者A側のHGW1とは異なるHGW1に接続している通話相手B側に属している。
本実施形態のテレビ電話システムは、ホームネットワークHN(図1)に接続されたHGW1と、複数のテレビセット3と、HGW1に接続する携帯端末4とによって構成されており、テレビセット3に通話相手の映像や音声を出力しつつ、携帯端末4によって通話可能とすることで、テレビ電話通話を実現する。
【0025】
携帯端末4は、音声通話機能の他、通話者を撮影するためのカメラ4aと、通話相手から送信される映像を表示するためのモニタ4bとを備えており、テレビ電話機能を有している。携帯端末4は、例えば、Wi−Fi(登録商標)等の無線LANによってIP通信可能な端末(Wi−Fiフォン)の他、携帯電話事業者の電話通信網に接続する機能とともに、Wi−Fi等のIP通信機能を備えた端末が用いられる。本実施形態において、通話者Aの携帯端末4は、HGW1に接続することで、IP網を介して通話相手Bの携帯端末4との間でIP通信を確立し、通話可能である。
通話者Aの携帯端末4、及び通話相手Bの携帯端末4は、相互に、通話者A及び通話相手Bそれぞれについての映像データ及び音声データを含むテレビ電話データの送受信を行う。
なお、上記テレビ電話データとは、テレビ電話通話を行う際に送受信されるデータであり、映像データと、音声データとを含んで構成される。テレビ電話データは、映像データと、音声データとが互いに独立したデータとして送受信される態様の他、映像データと音声データとが、一体のデータを構成する態様の場合もある。
【0026】
通話者A側において、テレビセット3は、HGW1に対して複数接続されており、住宅H(図1)の例えば各部屋ごとに設置されている。テレビセット3は、テレビ5と、当該テレビ5とHGW1とを接続するセットトップボックス6とを備えている。テレビ5は、映像を表示するための画面部5aと音声を出力するための図示しないスピーカとを備えた可能な一般的なテレビ装置である。テレビ5は、セットトップボックス6(以下、STB6ともいう)から与えられる映像データや音声データ等を出力する。
【0027】
STB6は、HGW1と無線又は有線LAN通信等のIP通信のためのインターフェースを有しており、他の機器がIP網又はホームネットワークHNを介して与えられる映像データや、音声データ等をデコードし、デコードしたこれらデータをテレビ5に出力する機能を有している。
なお、テレビ5自身がIP通信のためのインターフェースを有し、映像データや、音声データのデコード機能を有している場合には、当該テレビ5は、直接HGW1に接続されSTB6は不要である。
【0028】
同一の住宅H内に配置されている複数のテレビセット3それぞれには、予め当該複数のテレビセット3を特定するためのIDが割り当てられる。このIDは、後述するように、携帯端末4を操作する通話者Aが、通話相手Bの映像を出力させたいテレビセット3を指定するために用いられる。
【0029】
図3は、本実施形態のHGW1の構成を示すブロック図である。図3に示すように、HGW1は、ホームネットワークHNの各機器や、IP網に接続するとともに、前記各機器やIP網からのIP通信によるデータを中継するための機能を有するIF部11を備えている。また、HGW1は、当該HGW1に接続する携帯端末4宛てに送信される映像データや音声データといったテレビ電話データを所定のテレビセット3にリダイレクト又は分配する送信制御部12を備えている。
【0030】
送信制御部12は、自装置1に接続している携帯端末4から送信される送信先通知に基づいて、当該携帯端末4宛てのテレビ電話データについて、リダイレクト又は分配を行うのに必要な送信先の設定といった処理を行う。
携帯端末4が送信する送信先通知は、リダイレクト又は分配されるテレビ電話データの送信先を示す送信先情報や、テレビ電話データをリダイレクト又は分配のいずれの処理を行うかを指示するための指示情報を含んでいる。送信先情報は、上述のテレビセット3を特定するためのIDによって示される。
通話者Aは、携帯端末4を操作して通話相手Bの映像や音声を出力させたいテレビセット3のIDを送信先情報として含む送信先通知を当該携帯端末4に送信させる。
【0031】
送信制御部12は、記憶部13を参照して送信先通知に含まれるIDに対応するテレビセット3のアドレスを取得する。
記憶部13には、テレビセット3を特定するためのIDと、自装置1がテレビセット3に割り当てたアドレスとを対応付けて登録しているデータベースが記憶されている。送信制御部12は、前記データベースを参照して、送信先通知に応じたテレビ電話データの送信先としてのテレビセット3のアドレスを特定する。
【0032】
送信制御部12は、通話相手Bが送信する、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを受信すると、リダイレクトする場合には、このテレビ電話データの宛先を送信先情報によって指定されたテレビセット3のアドレスに変更し送信する。また、分配する場合には、このテレビ電話データをコピーし、一方を指定されたテレビセット3のアドレスに変更して送信し、他方を通話者Aの携帯端末4宛てそのままで送信する。
これにより、通話相手Bの携帯端末4が送信するテレビ電話データの経路は、図2に示すように、IP網から、通話者A側のHGW1に到達し、このHGW1で通話者Aの携帯端末4及び所定のテレビセット3に分岐、又は切り替えられる。
【0033】
さらに、HGW1は、通話者Aの携帯端末4をテレビ電話として用いた場合に、通話相手Bに送信するための送話音声に対してエコーキャンセルを行うエコーキャンセル部14を備えている。
例えば、図2を参照して、テレビ5を用いて通話相手Bからの映像及び音声を出力しつつ、通話者Aの携帯端末4が通話状態である場合、通話者Aの携帯端末4が、通話相手Bの携帯端末4に送話する送話音声には、通話者Aが発する音声の他、テレビ5から出力される音声が含まれる。テレビ5から出力される音声には、通話相手B側の音声が含まれているので、これがエコーを生じさせる。
エコーキャンセル部14は、このように、携帯端末4の送話音声に、テレビ5からの音声が含まれることで生じるエコーを除去する機能を有している。
【0034】
HGW1は、携帯端末4が通話相手に向けて送信するテレビ電話データに含まれている、送話音声がデータ化された音声データを受け付けて、通話相手に向けてIP網に送信する。また、HGW1は、上述のように、通話相手Bから送信されたテレビ電話データも受け付けて通話者Aの携帯端末4等に向けて中継する。つまり、HGW1には、テレビ5又は携帯端末4から出力される音声データと、テレビ5から出力される音声を含んだ携帯端末4の送話音声に係る音声データとが入力される。
【0035】
そこで、エコーキャンセル部14は、テレビ5又は携帯端末4から出力される音声データと、携帯端末4の送話音声に係る音声データとを用いてエコーキャンセルを行う。
本実施形態では、両音声データが入力されるHGW1にエコーキャンセル部14を設けたので、効率的にエコーキャンセルを行うことができる。
【0036】
本実施形態のHGW1は、上記両音声データをデコードする音声デコーダ部15と、エコー除去後の音声をデータ化する音声エンコーダ部16とを備えている。
音声デコーダ部15は、テレビ5又は携帯端末4から出力される音声データと、テレビ5から出力される音声を含んだ携帯端末4の送話音声に係る音声データとを取得し、それぞれデコードして、エコーキャンセル部14に出力する。
【0037】
エコーキャンセル部14は、テレビ5から出力される音声を含んだ携帯端末4の送話音声に係る音声から、テレビ5又は携帯端末4から出力される音声を除くことでエコー除去を行い、エコー除去後の音声を音声エンコーダ部16に出力する。
音声エンコーダ部16は、エコーキャンセル後の音声を携帯端末4の送話音声としてデータ化し、IF部11を介してIP網へ出力する。
【0038】
以上によって、HGW1は、通話相手に送信されるテレビ電話データに含まれる音声データについて、エコーキャンセルを行うことができる。
次に、本実施形態のテレビ電話システムによってテレビ電話通話が行われる際のより具体的な処理手順について説明する。
【0039】
図4は、本実施形態のテレビ電話システムによってテレビ電話通話が行われる際の各機器の処理手順を説明するためのシーケンス図である。図4において、通話者A側は、図2で示したように、HGW1、及びこれに接続するテレビセット3、携帯端末4を備える構成である。また、通話相手Bは、通話者Aと同様の構成の場合もありうるし、携帯端末4が直接IP網に接続し携帯端末4の機能によってテレビ電話通話を行おうとしている場合もある。
【0040】
図4においてまず、携帯端末4は、通話者Aがダイアリング等の操作を行うことで、通話相手B側に対して発呼を行う(ステップS1)。携帯端末4は、発呼に関する発呼通知を通話相手B側に送信することで発呼を行う。
携帯端末4が送信する発呼通知は、HGW1によって中継され(ステップS2)、IP網を介して通話相手B側に送信される。
【0041】
発呼通知を受信した通話相手B側の携帯端末4は(ステップS3)、呼び出し音等を鳴らして通話相手Bにオフフックを促す。通話相手Bの携帯端末4は、オフフックとされると、通話者Aの携帯端末4に対して着呼通知を送信する(ステップS4)。
【0042】
着呼通知は、HGW1を介して(ステップS5)、通話者Aの携帯端末4に受信され(ステップS6)、これによって、通話者Aの携帯端末4は、通話相手Bとの間で通話が可能となる。この状態では、通話者Aは、携帯端末4を用いて通話相手Bとテレビ電話通話が可能となる(ステップS7)。
【0043】
ここで、通話者Aの操作によって、通話者Aの携帯端末4がHGW1に送信先通知を送信し(ステップS8)、HGW1がこの送信先通知を受信すると(ステップS9)、HGW1は、送信先通知に含まれている、送信先情報及び指示情報に基づいて、通話者Aの携帯端末4宛てに送信される映像データや音声データといったテレビ電話データに関する処理を実行する。
【0044】
なお図4では、指示情報が、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを分配することを指示するとともに、送信先情報が、複数のテレビセット3の内、通話者Aの携帯端末4の近傍に位置する所定のテレビセット3を示すものとする。
【0045】
送信先通知を受信したHGW1は、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データの分配先(送信先)のテレビセット3を認識する(ステップS10)。
その後、通話相手B側が通話者Aの携帯端末4宛てにテレビ電話データを送信し(ステップS11)、HGW1が受信すると(ステップS12)、HGW1は、当該データをコピーするとともに、一方のデータの宛先を送信先情報により指示されたテレビセット3のアドレスに変更して送信先の設定を行い(ステップS13)、送信する(ステップS14)。
一方、他方のデータについては、HGW1は、携帯端末4宛てそのままで送信する(ステップS15)。
【0046】
HGW1から送信されたテレビ電話データを受信したテレビセット3は(ステップS16)、テレビ電話データに含まれる映像データ及び音声データをデコードし、テレビ5の画面部5aに通話相手Bからの映像を表示するとともに、スピーカから音声を出力する。
通話者Aの携帯端末4は、テレビ電話データを受信すると(ステップS17)、このテレビ電話データに基づき、自装置の機能によって通話相手Bの映像及び音声を出力する。
【0047】
また、通話者Aの携帯端末4は、当該通話者Aの映像データ及び音声データを含むテレビ電話データを通話相手B側に宛てて送信する(ステップS18)。HGW1は、このデータを中継して、IP網を介して通話相手B側に送信する(ステップS19)。
通話者Aから送信されたテレビ電話データを受信した通話相手B側の機器は(ステップS20)、通話相手Bに対して、通話者Aの映像や音声を出力する。
【0048】
テレビ電話システムが上記ステップS11〜S20を繰り返すことで、通話者Aは、テレビセット3及び携帯端末4によって出力される映像及び音声によって、通話相手Bとの間でテレビ電話通話することができる。
なお、通話者Aの携帯端末4が、リダイレクトを行うことを指示した場合、図4中、ステップS15,S17は行われない。この場合、通話者Aは、テレビセット3からの出力によって通話相手Bの映像や音声等を認識し、通話相手Bに対して応答することができる。
【0049】
通話を終了する場合、通話者Aの携帯端末4、又は通話相手B側のいずれか一方が切断通知を他方に送信する(ステップS30)。他方は、この切断通知を受信すると(ステップS31)、一方側が通話を切断したことを認識し、自己も通話を切断する。
【0050】
〔効果について〕
上記構成のテレビ電話システムによれば、HGW1が、通話者Aの携帯端末4宛てに送信されるテレビ電話データをテレビセット3等にリダイレクト又は分配する送信制御部12(制御部)を備えているので、通話相手Bの映像や音声を、携帯端末4以外のHGW1に接続されたテレビセット3に出力することができる。
【0051】
さらに、上記システムでは、携帯端末4が、テレビ電話データを送信すべきテレビセット3を示す送信先通知をHGW1の送信制御部12に送信し、送信制御部12は、複数のテレビセット3の内、送信先通知に応じたテレビセット3にテレビ電話データをリダイレクト又は分配するので、テレビ電話データを送信すべきテレビセット3を、送信先通知によって選択することができるので、通話相手Bの映像や音声を、通話者Aがテレビ電話通話するのに好適な位置にあるテレビセット3に出力させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、HGW1が、携帯端末4宛てに送信される通話相手Bからのテレビ電話データを中継するため、送信制御部12をHGW1に設けることで、テレビ電話データをリダイレクト又は分配するのが容易となる。
【0053】
なお、本実施形態では、テレビ電話データに含まれる、映像データ及び音声データを共にリダイレクト又は分配する場合を示したが、音声データは携帯端末4から出力されるので、テレビ電話データの内、少なくとも映像データを所定のテレビセット3にリダイレクト又は分配するように構成することもできる。この場合においても、音声は携帯端末4から、映像はテレビセット3から出力されるので、通話相手Bとの間でテレビ電話通話することができる。
【0054】
〔第二の実施形態〕
図5は、本発明の第二の実施形態に係るテレビ電話システムの構成を示す図である。本実施形態と第一の実施形態との相違点は、携帯端末4が互いにIP網以外の携帯電話通信網を用いて通話しつつ、テレビセット3に通話相手の映像や音声を出力する点である。
【0055】
図5では、通話者Aの携帯端末4と、通話相手Bの携帯端末4とが携帯電話通信網を用いてテレビ電話通話を行っている。
ここで、通話者Aの携帯端末4は、送信先通知を携帯電話通信網を介して送信することができる。通話者Aの携帯端末4は、送信先通知に含まれる送信先情報として、自装置が接続するHGW1及びテレビセット3のアドレスを含めて送信する。
携帯電話通信網を介して送信先通知を受信する送信相手Bの携帯端末4は、送信先通知に含まれる送信先情報を取得することで、通話者Aの携帯端末4が接続しているHGW1等のアドレスを認識することができる。
【0056】
図6は、通話相手Bの携帯端末4の構成を示すブロック図である。なお、通話者Aの携帯端末4も基本的に同様の構成である。図6に示すように、通話相手Bの携帯端末4は、携帯電話通信網及びIP網の双方と接続可能なIF部41と、IF部41を介して受信した各種データを処理する受信処理部42と、受信した映像データや音声データをデコードするとともに送信すべき映像や音声をエンコードする変換部43と、音声の入出力を行うためのマイクやスピーカからなる送受話部44とを備えている。また変換部43には、カメラ4aと、モニタ4bも接続されている。
変換部43は、通話者Aの携帯端末4からのテレビ電話データに含まれる映像データ及び音声データをデコードして、送受話部44及びモニタ4bに出力するとともに、カメラ4aや送受話部44から得られる映像や音声をデータ化することで通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを出力する。
【0057】
本実施形態の携帯端末4は、自装置と通話する携帯端末4から送信される送信先通知に基づいて、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを通話者Aの携帯端末4、及び送信先通知によって指定されるテレビセット3の双方に送信する送信制御部45をさらに備えている。
受信処理部42は、通話者Aの携帯端末4から送信されるデータに含まれる送信先通知を取得し、送信制御部45に出力する。
送信制御部45は、受信処理部42から与えられる送信先通知によって、通話者Aの携帯端末4に送信するテレビ電話データを送信すべき通話者Aの携帯端末4が接続しているHGW1やテレビセット3のアドレスを認識する。
【0058】
送信制御部45は、変換部43から通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データが与えられると、このテレビ電話データの出力先を、通話者Aの携帯端末4、及び送信先通知によって指定されたテレビセット3の双方に設定し送信する。
【0059】
通話相手Bの携帯端末4が送信するテレビ電話データは、図5に示すように、IP網を介して通話者A側のHGW1によって中継され、指定のテレビセット3に、IP通信によって送信される。通話者Aの携帯端末4宛てそのままで送信されるテレビ電話データは、携帯電話通信網を介して通話者Aの携帯端末4に送信される。
以上により、通話者Aは、近隣のテレビセット3に通話相手Bの映像等を出力させつつ、携帯端末4によってテレビ電話通話することができる。
【0060】
本実施形態のテレビ電話システムによれば、送信制御部45(制御部)が、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データの送信元である通話相手Bの携帯端末4に設けられているので、通話相手Bの携帯端末4からテレビ電話データを送信する段階で、通話者Aがテレビ電話として好適に用いることができるテレビセット3に向けて、当該テレビ電話データを送信させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、通話者Aの携帯端末4、及び通話相手Bの携帯端末4が、互いにIP網以外の通信網である携帯電話通信網にて接続可能であるので、この携帯電話通信網を介して、両携帯端末4同士でテレビ電話データの送受信を行いつつ、通話相手Bの携帯端末4の送信制御部45は、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを、IP網を介して、指定のテレビセット3に送信することができる。
【0062】
上記実施形態では、図5に示すように、携帯電話通信網を介して、両携帯端末4同士でテレビ電話データの送受信を行いつつ、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを、IP通信によって、送信先通知により指定されたテレビセット3に送信する場合を示したが、例えば、図7に示すように、両携帯端末4が互いにIP通信によって、テレビ電話通話しつつ、通話相手Bの携帯端末4の送信制御部45が、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データを、IP通信によって指定のテレビセット3に送信してもよい。
【0063】
また、図7の場合、第一の実施形態と同様、HGW1がエコーキャンセル部を備える構成とすることができる。図7の場合、通話者Aの携帯端末4宛てのテレビ電話データの経路と、テレビセット3宛てのテレビ電話データの経路とがHGW1まで重複しており、通話者Aの携帯端末4が送信する送話音声に係る音声データと、通話相手Bからの音声データとが、HGW1で中継されるため、効率的にエコーキャンセルを行うことができるからである。
【0064】
〔第三の実施形態〕
図8は、本発明の第三の実施形態に係るテレビ電話システムの構成を示す図である。本実施形態では、通話者Aの携帯端末4が、受信した自装置宛てのテレビ電話データを、所定のテレビセット3に送信することで、通話相手Bの映像や音声をテレビセット3から出力するように構成されている。つまり、通話者Aの携帯端末4は、自装置宛てのテレビ電話データを、HGW1に送信し、ホームネットワークHN(図1)を介して、所定のテレビセット3に送信する。すなわち、通話者Aの携帯端末4のサブディスプレイとしてテレビ5を用いることができる。
なお、図8では、通話者Aの携帯端末4と、通話相手Bの携帯端末4とが携帯電話通信網を用いてテレビ電話通話を行っている。通話相手Bの音声は通話者Aの携帯端末4に携帯電話網を通じて届いているため、テレビ5のスピーカから通話者Aの携帯端末4のマイクに通話相手Bの音声が回りこんでも、通話者Aの携帯端末4上でそのエコーをキャンセルすることができる。
【0065】
図9は、本実施形態の携帯端末4の構成を示すブロック図である。本実施形態の携帯端末4の送信制御部45は、IF部41を介して受信した自装置宛てのテレビ電話データをリダイレクト又は分配する点で、図6で示した携帯端末4と異なる。
本実施形態の送信制御部45は、受信した自装置宛てのテレビ電話データが与えられると、リダイレクトする場合には、このテレビ電話データの宛先を予め指定されたテレビセット3のアドレスに変更し送信し、変換部43にテレビ電話データを与えない。また、分配する場合には、このテレビ電話データをコピーし、一方を指定されたアドレスに変更して送信し、他方を変換部43に与えて送受話部44やモニタ4bに出力させる。
【0066】
なお、リダイレクト又は分配を行う際の送信先については、通話者Aの携帯端末4が、テレビ電話データを送信すべきテレビセット3を特定するためのIDを、テレビセット3に割り当てられたアドレスと対応付けて記憶しておく。そして、通話者Aが携帯端末4に映像の出力を希望するテレビセット3のIDを入力すると、通話者Aの携帯端末4の送信制御部45は、そのIDに基づいて、リダイレクト又は分配を行う際の送信先となるテレビセット3のアドレスを認識する。
【0067】
通話者Aの携帯端末4がリダイレクト又は分配することにより送信するテレビ電話データは、図8に示すように、HGW1によって中継され、ホームネットワークHNを介して指定のテレビセット3に送信される。
以上により、通話者Aは、近隣のテレビセット3に通話相手Bの映像等を出力させつつ、携帯端末4によってテレビ電話通話することができる。
【0068】
本実施形態によれば、送信制御部45が携帯端末4の設けられているとともに、当該携帯端末4が受信した自装置宛てのテレビ電話データを、複数のテレビセット3の中から所定のテレビセット3に送信することができるので、通話者Aがテレビ電話通話するのに好適な位置にあるテレビセット3に、簡易な構成で出力させることができる。
【0069】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 ホームゲートウェイ(中継装置)
3 テレビセット
4 携帯端末(端末装置)
5 テレビ
6 セットトップボックス
12 送信制御部
14 エコーキャンセル部
45 送信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示可能なモニタと、前記モニタをIP網に接続する中継装置と、テレビ電話機能を有するとともに前記中継装置を介して前記IP網に接続可能な端末装置と、を備えたテレビ電話システムであって、
前記端末装置宛てに送信されるテレビ電話データを構成する映像データ及び音声データの内、少なくとも前記映像データを前記モニタにリダイレクト又は分配する制御部を備えていることを特徴とするテレビ電話システム。
【請求項2】
前記端末装置は、前記テレビ電話データを送信すべき前記モニタを示す送信先通知を前記制御部に送信し、
前記制御部は、複数の前記モニタの内、前記送信先通知に応じた前記モニタに前記テレビ電話データをリダイレクト又は分配する請求項1に記載のテレビ電話システム。
【請求項3】
前記端末装置宛ての前記テレビ電話データは、前記IP網を介して送信されるものであり、
前記制御部は、前記中継装置に設けられている請求項1又は2に記載のテレビ電話システム。
【請求項4】
前記中継装置は、前記制御部から得られる前記テレビ電話データに含まれる音声データを用いて、前記端末装置から送信されるテレビ電話データに含まれる音声データのエコーキャンセルを行うエコーキャンセル部を備えている請求項3に記載のテレビ電話システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記端末装置宛てのテレビ電話データの送信元である他の端末装置に設けられている請求項1又は2に記載のテレビ電話システム。
【請求項6】
前記端末装置、及び前記端末装置宛てのテレビ電話データの送信元である他の端末装置が、互いに前記IP網以外の他の通信網にて接続可能であり、
前記他の通信網を介して、前記端末装置と前記他の端末装置との間で前記テレビ電話データの送受信を行いつつ、前記他の端末装置に設けられた前記制御部は、前記端末装置宛てのテレビ電話データを前記IP網を介して前記モニタに送信する請求項5に記載のテレビ電話システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記端末装置に設けられており、当該端末装置が受信した自装置宛てのテレビ電話データを、複数の前記モニタの内、前記テレビ電話データを出力すべき前記モニタに送信する請求項1に記載のテレビ電話システム。
【請求項8】
映像を表示可能なモニタ、及びテレビ電話機能を有する端末装置をIP網に接続する中継装置であって、
前記端末装置宛てに送信されるテレビ電話データを構成する映像データ及び音声データの内、少なくとも前記映像データを前記モニタにリダイレクト又は分配する制御部を備えていることを特徴とする中継装置。
【請求項9】
前記制御部から得られる前記テレビ電話データに含まれる音声データを用いて、前記端末装置から送信されるテレビ電話データに含まれる音声データのエコーキャンセルを行うエコーキャンセル部をさらに備えている請求項8に記載の中継装置。
【請求項10】
テレビ電話機能を有する端末装置であって、
映像を表示可能なモニタをIP網に接続する中継装置に対して接続可能な他の端末装置との間で通信を行うとともに、
前記他の端末装置宛てのテレビ電話データを構成する映像データ及び音声データの内、少なくとも前記映像データを、前記他の端末装置及び前記モニタの双方に送信する制御部を備えていることを特徴とする端末装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記他の端末装置から送信される、前記テレビ電話データの出力先にすべき前記モニタを示す出力先通知に応じて、前記テレビ電話データの出力先を設定する請求項10に記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−90193(P2013−90193A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229782(P2011−229782)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(502312498)住友電工ネットワークス株式会社 (212)
【Fターム(参考)】