テレフタル酸の代謝に関与する新規遺伝子
【課題】テレフタル酸を原材料とする、生分解性高分子物質の製造方法を提供する。
【解決手段】テレフタル酸をプロトカテク酸及び/又は2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に変換する反応に関与する遺伝子を含む組換え体DNAが導入された形質転換体を、テレフタル酸が添加された培地中で培養する工程を含むプロトカテク酸及び/又は2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造方法。
【解決手段】テレフタル酸をプロトカテク酸及び/又は2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に変換する反応に関与する遺伝子を含む組換え体DNAが導入された形質転換体を、テレフタル酸が添加された培地中で培養する工程を含むプロトカテク酸及び/又は2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、テレフタル酸の代謝に関与する新規遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸は、石油成分から分離される代表的な芳香族化合物である。テレフタル酸は、比較的安価に入手できることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の様々な高分子物質の原材料として活用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−160650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、テレフタル酸を原材料として開発されてきた高分子物質は、例えばPETのように、難分解性のものが主であった。
【0004】
近年、地球環境保護の重要性の高まりを受け、環境に与える負荷が大きい難分解性高分子物質の代替物として、生分解性を有する高分子物質の開発が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、テレフタル酸を原材料として、生分解性高分子物質を製造できる手段、及び、生分解性高分子物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、テレフタル酸分解能を有する代表的な微生物であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)及びスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)に各々属する新規微生物から単離した新規遺伝子群が、テレフタル酸から生分解性高分子物質のモノマーを生成する反応経路に関与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、より具体的には、以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0009】
(2) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号4に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号4に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0010】
(3) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号9に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号8に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号8に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0011】
(4) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号7に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【0012】
(5) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号16に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号15に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号15に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0013】
(6) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号18に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号17に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号17に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0014】
(7) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号20に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号19に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号19に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【0015】
(8) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号12に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号11に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0016】
ここで、「テレフタル酸分解系遺伝子群」は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関わる遺伝子の一群を指し、具体的には、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ遺伝子(tphA2遺伝子、tphA3遺伝子及び、tphA1遺伝子)及び、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(tphB遺伝子)からなる。
【0017】
また、「ポジティブレギュレーター」は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関わる遺伝子の一群の転写量及びタンパク質合成量を増加させることにより、細胞内における、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ及び1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼの活性を高める作用を奏する。
【0018】
(9) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号14に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号13に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号13に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0019】
上述した(1)〜(9)における「ストリンジェントな条件でハイブリダイズできる塩基配列」とは、例えば、NCBIのBLASTsearchにより、各々に記載された塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を含むDNAを挙げることができる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常のハイブリダイゼーション緩衝液中、40〜70℃(好ましくは、60〜65℃)で反応を行い、塩濃度15〜300mM(好ましくは、15〜60mM)の洗浄液中で洗浄を行う条件を挙げることができる。
【0020】
(10) 少なくとも(1)〜(4)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0021】
(11) 少なくとも(1)〜(4)、(8)、及び(9)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0022】
(12) 少なくとも(5)〜(7)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0023】
(13) 少なくとも(1)〜(7)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0024】
(14) 少なくとも(1)〜(9)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0025】
(15) ターミネーターを含む(10)〜(14)のいずれか記載の組換え体DNA。
【0026】
(16) 前記ターミネーターは、ρ非依存性転写ターミネーターである(15)記載の組換え体DNA。
【0027】
(17) (10)〜(16)いずれか記載の組換え体DNAを含むベクター。
【0028】
(18) (17)記載のベクターが導入された形質転換体。
【0029】
(19) テレフタル酸が添加された培地中で、(18)記載の形質転換体を培養する工程を含む2−ピロン−4,6−ジカルボン酸及び/又はプロトカテク酸の製造方法。
【0030】
(20) 受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)に属する形質転換体。
【0031】
(21) 受領番号がFERM AP−20677であるスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)に属する形質転換体。
【発明の効果】
【0032】
本発明の新規遺伝子によれば、テレフタル酸を出発物質とする特定の反応経路が促進されるので、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成できる。そして、この2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を石油系高分子材料(例えば、前述したPET)と共重合等することにより、生分解性高分子物質を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明は、新規遺伝子等を利用することにより、テレフタル酸を原材料とし、プロトカテク酸を経由して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する製造方法である。
【0034】
図1は、テレフタル酸を原材料とし、プロトカテク酸を経由して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成される反応経路の概略を示す図である。
即ち、まず、テレフタル酸に対し、テレフタル酸ジオキシゲナーゼが作用することにより、不安定な中間生成物である1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンが生成される。次に、この1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンに対し、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼが作用することにより、プロトカテク酸が生成される。
そして、プロトカテク酸に対して、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼが作用することにより、不安定な中間生成物である4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドが生成される。次に、この4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドに対して、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼが作用することにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成される。
【0035】
<遺伝子>
[テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関与する遺伝子]
前述した(1)〜(4)記載の遺伝子は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関与する。
【0036】
即ち、(1)記載の遺伝子の産物であるtphA2タンパク質、(2)記載の遺伝子の産物であるtphA3タンパク質、(3)記載の遺伝子の産物であるtphA1タンパク質は、互いに会合することにより、テレフタル酸を分解して1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンを生成する、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての活性を示す。
また、(4)記載の遺伝子の産物であるtphBタンパク質は、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンを分解してプロトカテク酸を生成する、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼとしての活性を示す。
【0037】
また、前述した(8)〜(9)記載の遺伝子は、(1)〜(4)記載の遺伝子による、テレフタル酸からプロトカテク酸の生成をより促進することに関与する。
即ち、(8)記載の遺伝子の産物であるtphRタンパク質は、テレフタル酸の分解反応を促進するポジティブレギュレーター(tphRタンパク質)としての活性を示し、テレフタル酸の細胞内取り込み及び分解代謝に関与する遺伝子の発現を促す。
また、(9)記載の遺伝子の産物であるtphCタンパク質は、反応が行われる場となる細胞内にテレフタル酸を取り込む(換言すれば、テレフタル酸の膜透過機能を有する)テレフタル酸トランスポーターとしての活性を示す。
【0038】
配列番号3、5、9記載のアミノ酸配列を有する3種類のポリペプチド(tphA2タンパク質、tphA3タンパク質、tphA1タンパク質)は、互いに会合することにより、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を示す。このテレフタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性により、テレフタル酸は、不安定な中間生成物1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンに変換される。配列番号7記載のポリペプチド(tphBタンパク質)は、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼ活性を示す。この1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼ活性により、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンは、安定なプロトカテク酸に迅速に変換される。
【0039】
[プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関わる遺伝子]
前述した(5)〜(7)記載の遺伝子は、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する。
【0040】
即ち、(5)記載の遺伝子の産物であるligAタンパク質、(6)記載の遺伝子の産物であるligBタンパク質は、互いに会合することにより、プロトカテク酸を分解して4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドを生成する、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼとしての活性を示す。
また、(7)記載の遺伝子の産物であるligCタンパク質は、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドを分解して2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼとしての活性を示す。
【0041】
配列番号21記載の塩基配列(ρ非依存性の転写ターミネーター配列)をテレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸およびプロトカテク酸を生成する反応に関与する遺伝子の最下流に配置した組換え体DNA、即ち(16)記載の組換え体DNAは、テレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する遺伝子の転写量、及びタンパク質合成量を増加させることにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する酵素の一群の活性を高めることができる。
【0042】
[遺伝子の取得方法]
上述した遺伝子は、例えば、以下のような方法で取得することができる。
即ち、まず、所定の微生物のゲノムDNAを抽出し、抽出したゲノムDNAを制限酵素により切断することで、ゲノムDNA断片を得る。一方、ファージ、プラスミド等のベクターを、同じ制限酵素末端を得られる制限酵素により切断することで、制限酵素末端を得る。次いで、これらゲノムDNA断片及び制限酵素末端を、DNAリガーゼにより結合させることで、ゲノムDNA断片を含むベクターが得られる。
そして、これらのベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体群を作製する。この形質転換体群の中から、本発明の遺伝子であるゲノムDNA断片を含むベクターが導入された形質転換体を選択し、選択した形質転換体からベクターを分離することにより、本発明の遺伝子を取得できる。
【0043】
(所定の微生物)
(1)〜(4)、(8)〜(9)記載の遺伝子を取得する場合、所定の微生物は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する酵素である、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼを合成できる微生物であれば特に限定されず、例えば、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株を挙げることができる。なお、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株は、例えば、LB培地中、28℃で23時間培養することにより、充分量の菌体量にまで増殖させることができる。
【0044】
また、(5)〜(7)記載の遺伝子を取得する場合、所定の微生物は、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する酵素である、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼを合成できる微生物であれば特に限定されず、例えば、スフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)SYK−6株を挙げることができる。なお、スフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)SYK−6株は、例えば、LB培地中、28℃で23時間培養することにより、充分量の菌体量にまで増殖させることができる。
【0045】
更に、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸又はプロトカテク酸の分解酵素機能や、テレフタル酸および中間生成物に対する修飾・変換酵素機能を消失させた形質転換体を用いてもよい。
【0046】
例えば、(1)〜(4)、(8)〜(9)記載の遺伝子を取得する場合、上述したコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株の2−ピロン−4,6−ジカルボン酸分解酵素遺伝子を欠損させた形質転換体であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株(受領番号:FERM AP−20676)が挙げられる。
【0047】
(ゲノムDNAの抽出)
これらの微生物からのゲノムDNAの抽出は、例えば、以下のような方法で行うことができる。
即ち、まず、所定時間培養した微生物の菌体を集菌し、プロテアーゼKにより菌体を溶菌する。溶菌した後、アルコールを添加して塩析されたゲノムDNAを遠心分離により沈殿させることにより、ゲノムDNAを取得できる。ここで、除タンパク質処理(例えば、フェノール抽出法)、プロテアーゼ処理、リボヌクレアーゼ処理等を適宜組み合わせて行うのが、取得するゲノムDNAの純度を向上させる点で、好ましい。
【0048】
(ベクター)
取得したゲノムDNAの断片化は、例えば、このゲノムDNAの制限酵素の消化により行うことができる。
【0049】
また、ゲノムDNA断片を挿入するベクターとしては、導入された細胞内で自律的に増殖できるファージ、プラスミドであれば特に限定されないが、操作を容易化する点で、組換えベクターを目的として構築されたものを用いるのが好ましい。組換えベクターを目的として構築されたプラスミドとしては、例えば、大腸菌を宿主とする「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」、「pKT230MC」(後述する図2、3、5参照)等が挙げられる。
【0050】
これらのベクターは、例えば制限酵素を用いてDNA断片が挿入可能な制限酵素末端を作成し、必要に応じてこの制限酵素末端を脱リン酸化処理した後に用いられる。また、ゲノムDNA断片及び制限酵素末端の結合は、公知のDNAリガーゼ(例えば、T4DNAリガーゼ)を用いて行うことができる。
【0051】
(宿主細胞)
ベクターを導入する宿主細胞としては、このベクターが安定的かつ自律的に複製でき、更に、外来性遺伝子の形質を安定的に発現できるものであれば特に限定されず、例えば大腸菌やシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)を挙げることができる。
【0052】
また、宿主細胞にベクターを導入する方法としては、周知の方法、例えば、接合法、エレクトロポレーション法、コンピテントセル法を挙げることができる。そして、形質転換体群は、導入したベクターに含まれる選択マーカー(例えば、薬剤耐性)を指標に選抜できる。
【0053】
(選択)
これらの形質転換体群の中から本発明の遺伝子を含むベクターが導入された形質転換体を選択するのは、例えば、本発明の遺伝子のDNA断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法により行うことができる。なお、このプローブの標識は、例えば、放射性同位元素、ジゴキシゲニン、酵素処理により行うことができる。
【0054】
選択された形質転換体からのベクターの抽出は、宿主細胞として用いた微生物の種類に応じて、適宜選択すればよい。例えば、アルカリ溶菌法(Cold Spring Harbor Laboratory Press発行、「Molecular Cloning Second Edition」(1989年))が挙げられる。なお、抽出したベクターは、必要に応じて、周知のDNA組換え技術を利用して再度組換えることもできる。
そして、抽出したベクターから本発明の遺伝子を分離するのは、例えば、制限酵素処理により行うことができる。
【0055】
このようにして得られる本発明の遺伝子は、例えばダイデオキシ法により塩基配列を解読し、決定できる。配列番号2、4、6、8、11、13、15、17、19記載の塩基配列は、このようにして決定される、本発明の遺伝子の塩基配列の一例である。
【0056】
<組換え体DNA>
【0057】
取得した本発明の遺伝子は、所定の組み合わせで、組み換えることができる。
【0058】
例えば、上流から順に、配列番号3、5、9記載のアミノ酸配列を各々有する3種類のポリペプチド(tphA2タンパク質、tphA3タンパク質、tphA1タンパク質)を各々コードする遺伝子の塩基配列(tphA2遺伝子;配列番号2、tphA3遺伝子;配列番号4、tphA1遺伝子;配列番号8)を有し、さらに、tphA3遺伝子の塩基配列とtphA1遺伝子の塩基配列との間に、配列番号7記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(tphBタンパク質)をコードする遺伝子の塩基配列(tphB遺伝子;配列番号6)を備える組換え体DNA(配列番号1記載の塩基配列)は、前述した(10)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
この組換え体DNAによれば、tphB遺伝子をtphA3遺伝子とtphA1遺伝子との間に配置したので、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼが、テレフタル酸ジオキシゲナーゼと同調して合成されるから、テレフタル酸からプロトカテク酸への生成反応を効率的に行うことができる。
【0059】
さらに、その下流にターミネーターをコードする遺伝子の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。このターミネーターは、ρ非依存性の転写ターミネーターであることが好ましく、この一例として、配列番号21記載の塩基配列を備えるターミネーターが挙げられる(前述した(16)記載の組換え体DNAの一例)。
【0060】
また、この配列番号1記載の塩基配列の上流に、配列番号12および14記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(tphRタンパク質、tphCタンパク質)を各々コードする遺伝子の塩基配列(tphR遺伝子;配列番号11、tphC遺伝子;配列番号13)を含む配列番号10記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(11)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0061】
さらに、その下流にターミネーターをコードする遺伝子の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。このターミネーターは、ρ非依存性の転写ターミネーターであることが好ましく、この一例として、配列番号21記載の塩基配列を備えるターミネーターが挙げられる(前述した(16)記載の組換え体DNAの一例)。
【0062】
また、上流から順に、配列番号16、18、20記載のアミノ酸配列を各々有する3種類のポリペプチド(ligAタンパク質、ligBタンパク質、ligCタンパク質)を各々コードする遺伝子の塩基配列(ligA遺伝子;配列番号15、ligB遺伝子;配列番号17、ligC遺伝子;配列番号19)を備える組換え体DNAは、前述した(12)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0063】
さらに、その下流にターミネーターをコードする遺伝子の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。このターミネーターは、ρ非依存性の転写ターミネーターであることが好ましく、この一例として、配列番号21記載の塩基配列を備えるターミネーターが挙げられる(前述した(16)記載の組換え体DNAの一例)。
【0064】
配列番号1記載の塩基配列、かつ配列番号22記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(13)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0065】
配列番号10記載の塩基配列、配列番号1記載の塩基配列、かつ配列番号22記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(14)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0066】
配列番号10記載の塩基配列、配列番号1記載の塩基配列、かつ配列番号22記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)又は(16)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0067】
配列番号22記載の塩基配列は、その一部に配列番号16、18、20記載のアミノ酸配列を有する3種類のポリペプチドをコードする遺伝子(ligA遺伝子;配列番号15、ligB遺伝子;配列番号17、ligC遺伝子;配列番号19)を含み、更に、その下流に配列番号21記載の塩基配列を含むターミネーターを有する。このターミネーターにおいては、ligC遺伝子領域の終止コドン配列から24塩基下流に、逆向き相補配列(インバーティドリピート)が存在し、この逆向き相補配列の直後(位置2688〜2706)に6個のチミンが連続するρ非依存性の転写ターミネーターが配置されている。
【0068】
ligB遺伝子の下流の領域には、ligC遺伝子のプロモーター配列が重複して配置されている。このligCプロモーターの働きにより、ligC遺伝子の転写量が増加し、より多くのligCタンパク質が合成される。配列番号22記載の塩基配列を広宿主域性のベクター(例えば、後述する「pKT230MC」)が備えるプロモーターの下流に連結して作製されるベクターは、このプロモーターの作用により、多様な微生物で複製・増殖される。このため、このベクターが導入された形質転換体によれば、ligAタンパク質、ligBタンパク質、ligCタンパク質を同調的に合成して、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の生成反応を安定的に進めることができる。
【0069】
<ベクター>
[テレフタル酸を分解してプロトカテク酸を生成する反応に関与する遺伝子を含むベクター]
配列番号1記載の塩基配列を有するDNA断片の上流域に、配列番号10記載の塩基配列を有するDNA断片を結合させたDNA断片、あるいは、さらにこのDNA断片に配列番号21記載のターミネーターを結合したDNA断片を、「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
【0070】
配列番号1記載の塩基配列を有するDNA断片、あるいは、配列番号1記載の塩基配列を有するDNA断片に配列番号21記載のターミネーターを結合したDNA断片を、「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」などのベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
配列番号10記載の塩基配列を有するDNA断片、配列番号1記載のDNA断片および、配列番号21記載の塩基配列を有するDNA断片を「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
【0071】
これらのベクターによれば、大腸菌などの形質転換体において、テレフタル酸からプロトカテク酸を高効率で生成できる。
【0072】
[プロトカテク酸を分解して2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する遺伝子を含むベクター]
配列番号22記載の塩基配列を有するDNA断片を、「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
このベクターによれば、大腸菌などの形質転換体において、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高効率で生成できる。
【0073】
[テレフタル酸を分解して2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する遺伝子を含むベクター]
配列番号10記載の塩基配列を有するDNA断片、配列番号1記載のDNA断片および、配列番号22記載の塩基配列を有するDNA断片を「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
このベクターによれば、大腸菌などの形質転換体において、テレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高効率で生成できる。
【0074】
<形質転換体>
本発明に係る形質転換体は、前述したベクターを、常法に従って所定の宿主細胞に導入することにより作製できる。
【0075】
所定の宿主細胞としては、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に対する分解酵素機能を保持しない細胞、あるいは消失させた形質転換体であればよく、例えば、大腸菌、シュードモナス属細菌、テレフタル酸分解微生物コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株のpmdI(2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に対する分解酵素遺伝子)欠損株であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株が挙げられる。
【0076】
宿主細胞にベクターを導入する方法としては、例えば、接合法、エレクトロポレーション法、コンピテントセル法が挙げられる。そして、薬剤耐性等のマーカーにより、形質転換体を選抜する。
【0077】
<コマモナス スピーシーズに属する形質転換体>
受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株は、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株から、pmdI遺伝子(2−ピロン−4,6−ジカルボン酸分解酵素遺伝子)が欠損された形質転換体である。
この形質転換体によれば、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の分解が抑制されるから、生成された2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高効率で蓄積できる。
【0078】
このコマモナス スピーシーズの形質転換体は、例えば、後述するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を導入することで作製でき、テレフタル酸を原材料とする2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造方法に使用できる。
【0079】
pmdABC(プロトカテク酸分解酵素遺伝子)が欠損された、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)に属する形質転換体は、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株から、公知の形質転換法により作成することができる(例えば、特開2003−61670号公報、段落番号0077〜段落番号0080参照)。
この形質転換体によれば、プロトカテク酸の分解が抑制されるから、生成されたプロトカテク酸を高効率で蓄積できる。
なお、このpmdABC遺伝子が欠損された形質転換体は、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6からのみではなく、受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株からでも作製できる。
【0080】
このコマモナス スピーシーズの形質転換体は、例えば、後述するベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を導入することで作製でき、テレフタル酸を原材料とするプロトカテク酸の製造方法に使用できる。
【0081】
<2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造方法>
2−ピロン−4,6−ジカルボン酸は、例えば、以下のような方法で生成できる。
即ち、まず、後述するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」が導入された形質転換体(例えば、シュードモナス属細菌、コマモナス属細菌)を、約5LのLB培地内で、27〜28℃で約16時間培養する。培地には、ベクターの脱落を防止するために、抗生物質(例えば、カナマイシン)を添加しておく。
菌体濃度がOD660において13〜14程度になるまで培養した形質転換細胞の懸濁液に、テレフタル酸約16gを溶解させたNaOH溶液(0.1mol/L、pH8〜9)約500mLを、5〜6時間かけて添加する。反応の進行に伴って生成される2−ピロン−4,6−ジカルボン酸による培地pHの低下を防ぐため、NaOH溶液(0.1mol/L)を少量ずつ添加する。この反応を、27〜28℃で行う。反応時間については、得たい2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の収量に応じて、適宜設定することができるが、たとえば、48時間以上反応させることが好ましい。
反応液に塩酸を加え、pHを2〜3とすることで、反応を停止させる。この反応液を遠心分離し、菌体成分を沈殿させて除去する。得られた上清に、更に塩酸を添加することにより、pHを約1に低下させる。この上清を低温(4〜5℃)で静置することにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が沈殿となり、この沈殿を分離することで2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が得られる。
なお、得られた2−ピロン−4,6−ジカルボン酸は、活性炭処理により、さらに純度を向上できる。
【0082】
この製造方法によれば、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高収率で得ることができる。
【0083】
<プロトカテク酸の製造方法>
プロトカテク酸は、例えば、以下のような方法で製造できる。
即ち、後述するベクター「pHE96R−T/pKT230MC」が導入された形質転換体(例えば、シュードモナス属細菌、コマモナス属細菌)を、約5LのLB培地内で、27〜28℃で約16時間培養する。培地には、ベクターの脱落を防止するために、抗生物質(例えば、カナマイシン)を添加しておく。
菌体濃度がOD660において13〜14程度になるまで培養した形質転換細胞の懸濁液に、テレフタル酸約16gを溶解させたNaOH溶液(0.1mol/L、pH8〜9)約500mLを、5〜6時間かけて添加する。反応の進行に伴って生成されるプロトカテク酸による培地pHの低下を防ぐため、NaOH溶液(0.1mol/L)を少量ずつ添加する。この反応を、27〜28℃で行う。反応時間については、得たいプロトカテク酸の収量に応じて、適宜設定することができるが、たとえば、48時間以上反応させることが好ましい。
この反応液から、酢酸エチルエステルで抽出分離することにより、プロトカテク酸が得られる。
【0084】
この製造方法によれば、プロトカテク酸を高収率で得ることができる。
【実施例】
【0085】
<実施例1> pHE96/pBluescript II SK(+)
図2は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96/pBluescript II SK(+)」は、(11)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、ベクター「pHE96/pBluescript II SK(+)」は、配列番号10記載の塩基配列を含むDNA断片が配列番号1記載の塩基配列を含むDNA断片の上流に結合された組換え体DNAを、公知の大腸菌プラスミド「pBluescript II SK(+)」内に挿入して構成したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pBluescript II SK(+)」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素EcoRI切断部位に挿入した。
【0086】
<実施例2> pHE96R−/pBluescript II SK(+)
図4は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」は、(11)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、ベクター「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」は、配列番号13記載の塩基配列を備え、tphC遺伝子をコードする遺伝子の塩基配列の上流に制限酵素BamHI切断部位を有するように設計されたDNA断片と、配列番号1に示される塩基配列を持つDNA断片とからなる組換え体DNAとを公知の大腸菌プラスミド「pBluescript II SK(+)」に挿入したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pBluescript II SK(+)」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素BamHI切断部位及び制限酵素EcoRI切断部位において挿入されている。
【0087】
これにより、配列番号13記載の塩基配列を含むDNA、および配列番号1記載の塩基配列を含むDNAは、「pBluescript II SK(+)」が備えるlacZプロモーターの下流に位置するように配置される。
【0088】
(pHE96R−/pBluescript II SK(+)の作製法)
「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」は、例えば、以下のような方法で作製した。
即ち、まず、ベクター「pHE96/pBluescript II SK(+)」内に挿入されているtphC遺伝子領域を、Uniプライマー(制限酵素BamHI認識配列を含む)およびRevプライマー(制限酵素EcoRI、XhoI認識配列を含む)を用いてPCR法により、選択的に増幅した。なお、Uniプライマー及びRevプライマーの塩基配列は、次の通りであった。
Uniプライマー配列:5’−AGTCGGTCCCATCCTCATACTGCAGTTC−3’
Revプライマー配列:5’−ATCGCTCGAGAATTCGATGAACTGAGCAGTCTTG−3’
【0089】
次に、この選択的に増幅した断片を制限酵素BamHIおよび制限酵素XhoIにより切断することにより得られるDNA断片を、「pBluescript II SK(+)」をマルチクローニングサイトに存在する制限酵素BamHIおよび制限酵素XhoIにより切断して得られる制限酵素末端と、T4DNAリガーゼにより結合することにより、ハイブリッドプラスミド「ptphC/pBluescript II SK(+)」を作製した(図3の中段)。
【0090】
そして、この「ptphC/pBluescript II SK(+)」を制限酵素HindIIIおよび制限酵素EcoRIにより切断し、「pBluescript II SK(+)」に由来する塩基配列を含むDNA断片を抽出した。この抽出したDNA断片を、「pHE96/pBluescript II SK(+)」をマルチクローニングサイトに存在する制限酵素HindIIIおよび制限酵素EcoRIにより切断して得られるDNA断片と、T4DNAリガーゼにより結合することにより、ベクター「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」を作製した。
【0091】
<実施例3> pLG200/pUC119
図4は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pLG200/pUC119」は、(12)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、ベクター「pLG200/pUC119」は、配列番号22記載の塩基配列を含む組換え体DNAを、公知の大腸菌プラスミド「pUC119」に挿入して構成したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pUC119」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素XbaI切断部位において挿入した。
【0092】
<実施例4> pKTLABCT
図5は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pKTLABCT」は、(12)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、広宿主域性を有するベクター「pKTLABCT」は、配列番号22記載の塩基配列を含む組換え体DNAを、公知の広宿主域プラスミド「pKT230MC」に挿入したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pKT230MC」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素XbaI切断部位において挿入した。
このpKTLABCTは、シュードモナス属細菌(例えば、Pseudomonas putida)やコマモナス属細菌(例えば、Comamonas sp.)等において複製できる。
【0093】
<実施例5> pHE96R−LABCT/pKT230MC
図6は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96R−LABCT/pKT230MC」は、(13)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、広宿主域性を有するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」は、lacZプロモーター、配列番号13で示される塩基配列、配列番号1で示される塩基配列を、ベクター「pKTLABCT」に挿入することにより構成したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pKTLABCT」内に存在する制限酵素XbaI切断部位のうち、配列番号22記載の塩基配列の上流に存在するXbaI切断部位において、挿入したものである。
【0094】
(pHE96R−LABCT/pKT230MCの作製法)
ベクター「pKTLABCT」を、このベクター内に存在する2つの制限酵素XbaI切断部位のうち、ligA遺伝子の塩基配列の上流に存在するXbaI切断部位のみにおいて、切断した。この制限酵素XbaIによる部分切断によって得られるDNA断片に、「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」を制限酵素VspI及びEcoRIにより切断して得られるDNA断片を、配列番号22記載の塩基配列がlacZプロモーターの下流に位置するように、T4DNAリガーゼで連結することにより、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を作製した。
【0095】
<実施例6> pHE96R−T/pKT230MC
図7は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96R−T/pKT230MC」は、(10)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、広宿主域性を有するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」は、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」から、配列番号15、配列番号17および、配列番号19記載の塩基配列を含むDNA断片が除去されて構成したものである。
【0096】
これにより、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」は、「pBluescript II SK(+)」に由来するlacZプロモーターを有し、このlacZプロモーターの下流に配列番号13記載の塩基配列および、配列番号1記載の塩基配列が配置されている。
【0097】
(pHE96R−T/pKT230MCの作製法)
前述したベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を、このベクター内に存在する制限酵素NdeIおよび制限酵素SalI切断部位において切断し、DNA断片を抽出した。このDNA断片に対して、平滑化酵素による末端平滑化処理を行った後、平滑化された末端同士をT4DNAリガーゼで連結することにより、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を作製した。
【0098】
<実施例7> シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の作製
前述したベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を大腸菌HB101株に導入し、25mg/Lのアンピシリンを含むLB培地(100mL)で、37℃で18時間振とう培養することで、このベクターが導入された大腸菌を選抜した。この大腸菌から、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を抽出した。
【0099】
一方、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸分解酵素機能を消失させた微生物であるシュードモナス属細菌(Pseudomonas putida PpY1100株)及びコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株を、LB液体培地500mLで28℃、23時間培養した後、氷中で30分間冷却した。冷却後、4℃、10分、10000rpmで遠心分離により集菌し、500mLの0℃蒸留水で温和に洗浄した後、再び遠心分離により集菌した。続いて、250mLの0℃蒸留水で温和に洗浄した後、再度、遠心分離により集菌した。さらに、125mLの0℃蒸留水で温和に洗浄した後、遠心分離により集菌した。この集菌した菌体を10%グリセロールを含む蒸留水に懸濁した後、0℃にて静置した。
【0100】
ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」のDNA約0.05μgが溶解された蒸留水4μLを0.2cmのキュベットに入れ、このキュベットに、10%グリセロールを含む蒸留水に懸濁した各々の細胞液40μLを加え、(25μF、2500V、12m秒)の条件で、エレクトロポレーション処理を行った。
【0101】
エレクトロポレーション処理を行った各細胞の全量を、各々、10mLのLB液体培地に接種し、28℃で6時間培養した。培養後、遠心分離によって各細胞の菌体を集菌し、25mg/Lのカナマイシンを含むLB平板培地上に展開した後、28℃で48時間培養することで、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」が導入された形質転換株を得た。
【0102】
なお、この形質転換体を、各々、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株と呼ぶ。
【0103】
<実施例8> シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の作製
まず、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を大腸菌HB101株に導入し、25mg/Lのアンピシリンを含むLB培地(100mL)で、37℃で18時間振とう培養することで形質転換体を選抜した。選抜された形質転換体から、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を抽出した。
【0104】
このベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を導入した点が異なる他は、実施例7と同様の手順で、形質転換体の作製を行った。
なお、このようにして得られた形質転換体を、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株と呼ぶ。
【0105】
<実施例9> 2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造
シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株およびコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株を、各々、200mLのLB液体培地(25mg/Lのカナマイシンを含む)に接種した後、28℃で16時間培養することで前培養菌体懸濁液を得た。LB液体培地8Lおよび消泡剤(Antiform A)3mLを10L容量のジャーファーメンター(発酵槽)により混合することで培地を調製し、この調整した培地に前培養菌体懸濁液200mLを混合した後、28℃、500rpm/分の通気攪拌条件のもと、菌体濃度がOD660において13程度になるまで培養した(約11時間)。培養に伴う増殖曲線を図8に示す。図8に示されるように、時間経過とともに菌体濃度が順調に増加していたことから、上述の培養条件で、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株は順調に増殖していたことが分かった。
【0106】
また同様の手順で、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株を、菌体濃度がOD660において13程度になるまで培養した(約11時間)。培養に伴う増殖曲線を図9に示す。図9に示されるように、時間経過とともに菌体濃度が順調に増加していたことから、上述の培養条件で、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株は順調に増殖していたことが分かった。
【0107】
このシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)培養液(発酵槽内)に、基質であるテレフタル酸(16g)の0.1mol/LのNaOH溶液(pH8〜9)500mLを、ペリスタポンプを用いて5時間に亘り添加した。反応の進行に伴って生成する2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の生成による培地pHの低下を予防するために、pHセンサーに連結したペリスタポンプにより、0.1mol/LのNaOH溶液を添加することで、培地のpHを維持した。ここで、反応の進行状況を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって確認した結果を図10に示す。
【0108】
図10において、Aはテレフタル酸を、Bは2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、Cはシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中の基質を示す。図10に示されるように、反応開始後48時間において、テレフタル酸を添加したシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中、テレフタル酸が殆ど視認されないことから、培養液中、ほぼすべてのテレフタル酸が分解され、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成されたことが分かった。
【0109】
また、同様の手順で、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株についても反応を行い、反応の進行状況を確認した結果を図11に示す。
【0110】
図11において、Aはテレフタル酸を、Bは2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中の基質を示す。図11に示されるように、反応開始後48時間において、テレフタル酸を添加したコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中、テレフタル酸が殆ど視認されないことから、培養液中、ほぼすべてのテレフタル酸が2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に生成されたことが分かった。
【0111】
発酵槽内の培地をプラスチック容器(バケツ)に移した後、塩酸を添加して、反応液をpH3とすることで反応を停止させた。反応液を遠心分離(6000rpm、20℃)により菌体成分を沈殿させ、沈殿物を除去して得られた上清に塩酸を更に添加することにより、pH1.0に低下させた。このpHを低下させた上清を低温(4℃)で、24時間以上静置することにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を沈殿として分離した。
【0112】
このようにして回収された2−ピロン−4,6−ジカルボン酸は、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)培養液(発酵槽)では約12gであり、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)培養液(発酵槽)では約13gであった。
【0113】
図12左側に、回収した2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を活性炭処理等した後の精製物についての、ガス液体クロマトグラム(図12左側)を示す。
図12左側に示されるように、反応開始後8時間において、反応開始後0時間において視認されていたテレフタル酸を示すシグナルが消失し、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を示すシグナルが現れていたことから、反応液中のテレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成されていたことが分かった。
【0114】
また、上述した精製物について、カルボキシル基にトリメチルシリル基を結合させた誘導体として質量分析(GC−MS)を行った。この結果である質量分析スペクトルを図12右側に示す。
図12の右上側に示されるように、テレフタル酸の誘導体(分子量310)及びこの誘導体からメチル基(分子量15)が順次脱離した化合物に対応するピークが視認されたことから、図12左上のシグナルはテレフタル酸を示すものであることが確認された。
また、図12の右下側に示されるように、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の誘導体(分子量328)及びこの誘導体からメチル基(分子量15)が順次脱離した化合物に対応するピークが視認されたことから、図12左下のシグナルは2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を示すものであることが確認された。
【0115】
<実施例10> プロトカテク酸の製造
シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株を、200mLのLB液体培地(25mg/Lのカナマイシンを含む)に接種し28℃で16時間培養し前培養菌体懸濁液とした。8LのLB液体培地および消泡剤(Antiform A)3mLを10L容量のジャーファーメンター(発酵槽)を用いて調製し、そこに培養したシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の前培養菌体懸濁液200mLを混合し、28℃、500rpm/分の通気攪拌下、OD660が13程度になるまで培養した(約11時間)。
【0116】
OD660が13程度に達した発酵槽の培養液に、基質であるテレフタル酸(16g)の0.1mol/LのNaOH溶液(pH8〜9)500mLを、ペリスタポンプを用いて5時間に亘り添加した。反応の進行に伴って生成するプロトカテク酸の生成による培地pHの低下を予防するために、pHセンサーに連結したペリスタポンプにより、0.1mol/LのNaOH溶液を添加することで、培地のpHを維持した。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)によって確認した。この結果を図13に示す。
【0117】
図13において、Aはプロトカテク酸を、Bはテレフタル酸を、Cはシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の培養液中の基質を示す。図13に示されるように、反応開始後48時間において、テレフタル酸を添加したシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の培養液中、テレフタル酸が殆ど視認されないことから、培養液中、ほぼすべてのテレフタル酸がプロトカテク酸に生成されたことが分かった。
【0118】
そして、消失を確認した反応液からプロトカテク酸を酢酸エチルエステルで抽出分離することで、プロトカテク酸を得た。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】テレフタル酸を原材料とし、プロトカテク酸を経由して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成される反応経路の概略を示す図である。
【図2】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図3】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図4】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図5】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図6】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図7】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図8】本発明実施例に係る形質転換体の増殖曲線を示す図である。
【図9】本発明実施例に係る形質転換体の増殖曲線を示す図である。
【図10】本発明に係る形質転換体によるテレフタル酸の分解反応の経時的変化を示す図である。
【図11】本発明に係る形質転換体によるテレフタル酸の分解反応の経時的変化を示す図である。
【図12】本発明に係る製造方法によるテレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸への変換の状況を示す図である。
【図13】本発明に係る製造方法によるテレフタル酸からプロトカテク酸への変換の状況を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、テレフタル酸の代謝に関与する新規遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸は、石油成分から分離される代表的な芳香族化合物である。テレフタル酸は、比較的安価に入手できることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の様々な高分子物質の原材料として活用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−160650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、テレフタル酸を原材料として開発されてきた高分子物質は、例えばPETのように、難分解性のものが主であった。
【0004】
近年、地球環境保護の重要性の高まりを受け、環境に与える負荷が大きい難分解性高分子物質の代替物として、生分解性を有する高分子物質の開発が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、テレフタル酸を原材料として、生分解性高分子物質を製造できる手段、及び、生分解性高分子物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、テレフタル酸分解能を有する代表的な微生物であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)及びスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)に各々属する新規微生物から単離した新規遺伝子群が、テレフタル酸から生分解性高分子物質のモノマーを生成する反応経路に関与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、より具体的には、以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0009】
(2) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号4に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号4に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0010】
(3) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号9に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号8に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号8に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0011】
(4) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号7に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【0012】
(5) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号16に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号15に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号15に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0013】
(6) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号18に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号17に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号17に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0014】
(7) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号20に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号19に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号19に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【0015】
(8) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号12に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号11に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0016】
ここで、「テレフタル酸分解系遺伝子群」は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関わる遺伝子の一群を指し、具体的には、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ遺伝子(tphA2遺伝子、tphA3遺伝子及び、tphA1遺伝子)及び、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(tphB遺伝子)からなる。
【0017】
また、「ポジティブレギュレーター」は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関わる遺伝子の一群の転写量及びタンパク質合成量を増加させることにより、細胞内における、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ及び1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼの活性を高める作用を奏する。
【0018】
(9) 以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号14に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号13に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号13に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【0019】
上述した(1)〜(9)における「ストリンジェントな条件でハイブリダイズできる塩基配列」とは、例えば、NCBIのBLASTsearchにより、各々に記載された塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を含むDNAを挙げることができる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常のハイブリダイゼーション緩衝液中、40〜70℃(好ましくは、60〜65℃)で反応を行い、塩濃度15〜300mM(好ましくは、15〜60mM)の洗浄液中で洗浄を行う条件を挙げることができる。
【0020】
(10) 少なくとも(1)〜(4)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0021】
(11) 少なくとも(1)〜(4)、(8)、及び(9)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0022】
(12) 少なくとも(5)〜(7)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0023】
(13) 少なくとも(1)〜(7)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0024】
(14) 少なくとも(1)〜(9)記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【0025】
(15) ターミネーターを含む(10)〜(14)のいずれか記載の組換え体DNA。
【0026】
(16) 前記ターミネーターは、ρ非依存性転写ターミネーターである(15)記載の組換え体DNA。
【0027】
(17) (10)〜(16)いずれか記載の組換え体DNAを含むベクター。
【0028】
(18) (17)記載のベクターが導入された形質転換体。
【0029】
(19) テレフタル酸が添加された培地中で、(18)記載の形質転換体を培養する工程を含む2−ピロン−4,6−ジカルボン酸及び/又はプロトカテク酸の製造方法。
【0030】
(20) 受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)に属する形質転換体。
【0031】
(21) 受領番号がFERM AP−20677であるスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)に属する形質転換体。
【発明の効果】
【0032】
本発明の新規遺伝子によれば、テレフタル酸を出発物質とする特定の反応経路が促進されるので、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成できる。そして、この2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を石油系高分子材料(例えば、前述したPET)と共重合等することにより、生分解性高分子物質を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明は、新規遺伝子等を利用することにより、テレフタル酸を原材料とし、プロトカテク酸を経由して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する製造方法である。
【0034】
図1は、テレフタル酸を原材料とし、プロトカテク酸を経由して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成される反応経路の概略を示す図である。
即ち、まず、テレフタル酸に対し、テレフタル酸ジオキシゲナーゼが作用することにより、不安定な中間生成物である1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンが生成される。次に、この1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンに対し、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼが作用することにより、プロトカテク酸が生成される。
そして、プロトカテク酸に対して、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼが作用することにより、不安定な中間生成物である4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドが生成される。次に、この4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドに対して、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼが作用することにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成される。
【0035】
<遺伝子>
[テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関与する遺伝子]
前述した(1)〜(4)記載の遺伝子は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する反応に関与する。
【0036】
即ち、(1)記載の遺伝子の産物であるtphA2タンパク質、(2)記載の遺伝子の産物であるtphA3タンパク質、(3)記載の遺伝子の産物であるtphA1タンパク質は、互いに会合することにより、テレフタル酸を分解して1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンを生成する、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての活性を示す。
また、(4)記載の遺伝子の産物であるtphBタンパク質は、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンを分解してプロトカテク酸を生成する、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼとしての活性を示す。
【0037】
また、前述した(8)〜(9)記載の遺伝子は、(1)〜(4)記載の遺伝子による、テレフタル酸からプロトカテク酸の生成をより促進することに関与する。
即ち、(8)記載の遺伝子の産物であるtphRタンパク質は、テレフタル酸の分解反応を促進するポジティブレギュレーター(tphRタンパク質)としての活性を示し、テレフタル酸の細胞内取り込み及び分解代謝に関与する遺伝子の発現を促す。
また、(9)記載の遺伝子の産物であるtphCタンパク質は、反応が行われる場となる細胞内にテレフタル酸を取り込む(換言すれば、テレフタル酸の膜透過機能を有する)テレフタル酸トランスポーターとしての活性を示す。
【0038】
配列番号3、5、9記載のアミノ酸配列を有する3種類のポリペプチド(tphA2タンパク質、tphA3タンパク質、tphA1タンパク質)は、互いに会合することにより、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性を示す。このテレフタル酸ジオキシゲナーゼ酵素活性により、テレフタル酸は、不安定な中間生成物1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンに変換される。配列番号7記載のポリペプチド(tphBタンパク質)は、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼ活性を示す。この1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼ活性により、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンは、安定なプロトカテク酸に迅速に変換される。
【0039】
[プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関わる遺伝子]
前述した(5)〜(7)記載の遺伝子は、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する。
【0040】
即ち、(5)記載の遺伝子の産物であるligAタンパク質、(6)記載の遺伝子の産物であるligBタンパク質は、互いに会合することにより、プロトカテク酸を分解して4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドを生成する、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼとしての活性を示す。
また、(7)記載の遺伝子の産物であるligCタンパク質は、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドを分解して2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼとしての活性を示す。
【0041】
配列番号21記載の塩基配列(ρ非依存性の転写ターミネーター配列)をテレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸およびプロトカテク酸を生成する反応に関与する遺伝子の最下流に配置した組換え体DNA、即ち(16)記載の組換え体DNAは、テレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する遺伝子の転写量、及びタンパク質合成量を増加させることにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する酵素の一群の活性を高めることができる。
【0042】
[遺伝子の取得方法]
上述した遺伝子は、例えば、以下のような方法で取得することができる。
即ち、まず、所定の微生物のゲノムDNAを抽出し、抽出したゲノムDNAを制限酵素により切断することで、ゲノムDNA断片を得る。一方、ファージ、プラスミド等のベクターを、同じ制限酵素末端を得られる制限酵素により切断することで、制限酵素末端を得る。次いで、これらゲノムDNA断片及び制限酵素末端を、DNAリガーゼにより結合させることで、ゲノムDNA断片を含むベクターが得られる。
そして、これらのベクターを宿主細胞に導入し、形質転換体群を作製する。この形質転換体群の中から、本発明の遺伝子であるゲノムDNA断片を含むベクターが導入された形質転換体を選択し、選択した形質転換体からベクターを分離することにより、本発明の遺伝子を取得できる。
【0043】
(所定の微生物)
(1)〜(4)、(8)〜(9)記載の遺伝子を取得する場合、所定の微生物は、テレフタル酸からプロトカテク酸を生成する酵素である、テレフタル酸ジオキシゲナーゼ、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼを合成できる微生物であれば特に限定されず、例えば、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株を挙げることができる。なお、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株は、例えば、LB培地中、28℃で23時間培養することにより、充分量の菌体量にまで増殖させることができる。
【0044】
また、(5)〜(7)記載の遺伝子を取得する場合、所定の微生物は、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する酵素である、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼを合成できる微生物であれば特に限定されず、例えば、スフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)SYK−6株を挙げることができる。なお、スフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)SYK−6株は、例えば、LB培地中、28℃で23時間培養することにより、充分量の菌体量にまで増殖させることができる。
【0045】
更に、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸又はプロトカテク酸の分解酵素機能や、テレフタル酸および中間生成物に対する修飾・変換酵素機能を消失させた形質転換体を用いてもよい。
【0046】
例えば、(1)〜(4)、(8)〜(9)記載の遺伝子を取得する場合、上述したコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株の2−ピロン−4,6−ジカルボン酸分解酵素遺伝子を欠損させた形質転換体であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株(受領番号:FERM AP−20676)が挙げられる。
【0047】
(ゲノムDNAの抽出)
これらの微生物からのゲノムDNAの抽出は、例えば、以下のような方法で行うことができる。
即ち、まず、所定時間培養した微生物の菌体を集菌し、プロテアーゼKにより菌体を溶菌する。溶菌した後、アルコールを添加して塩析されたゲノムDNAを遠心分離により沈殿させることにより、ゲノムDNAを取得できる。ここで、除タンパク質処理(例えば、フェノール抽出法)、プロテアーゼ処理、リボヌクレアーゼ処理等を適宜組み合わせて行うのが、取得するゲノムDNAの純度を向上させる点で、好ましい。
【0048】
(ベクター)
取得したゲノムDNAの断片化は、例えば、このゲノムDNAの制限酵素の消化により行うことができる。
【0049】
また、ゲノムDNA断片を挿入するベクターとしては、導入された細胞内で自律的に増殖できるファージ、プラスミドであれば特に限定されないが、操作を容易化する点で、組換えベクターを目的として構築されたものを用いるのが好ましい。組換えベクターを目的として構築されたプラスミドとしては、例えば、大腸菌を宿主とする「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」、「pKT230MC」(後述する図2、3、5参照)等が挙げられる。
【0050】
これらのベクターは、例えば制限酵素を用いてDNA断片が挿入可能な制限酵素末端を作成し、必要に応じてこの制限酵素末端を脱リン酸化処理した後に用いられる。また、ゲノムDNA断片及び制限酵素末端の結合は、公知のDNAリガーゼ(例えば、T4DNAリガーゼ)を用いて行うことができる。
【0051】
(宿主細胞)
ベクターを導入する宿主細胞としては、このベクターが安定的かつ自律的に複製でき、更に、外来性遺伝子の形質を安定的に発現できるものであれば特に限定されず、例えば大腸菌やシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)を挙げることができる。
【0052】
また、宿主細胞にベクターを導入する方法としては、周知の方法、例えば、接合法、エレクトロポレーション法、コンピテントセル法を挙げることができる。そして、形質転換体群は、導入したベクターに含まれる選択マーカー(例えば、薬剤耐性)を指標に選抜できる。
【0053】
(選択)
これらの形質転換体群の中から本発明の遺伝子を含むベクターが導入された形質転換体を選択するのは、例えば、本発明の遺伝子のDNA断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法により行うことができる。なお、このプローブの標識は、例えば、放射性同位元素、ジゴキシゲニン、酵素処理により行うことができる。
【0054】
選択された形質転換体からのベクターの抽出は、宿主細胞として用いた微生物の種類に応じて、適宜選択すればよい。例えば、アルカリ溶菌法(Cold Spring Harbor Laboratory Press発行、「Molecular Cloning Second Edition」(1989年))が挙げられる。なお、抽出したベクターは、必要に応じて、周知のDNA組換え技術を利用して再度組換えることもできる。
そして、抽出したベクターから本発明の遺伝子を分離するのは、例えば、制限酵素処理により行うことができる。
【0055】
このようにして得られる本発明の遺伝子は、例えばダイデオキシ法により塩基配列を解読し、決定できる。配列番号2、4、6、8、11、13、15、17、19記載の塩基配列は、このようにして決定される、本発明の遺伝子の塩基配列の一例である。
【0056】
<組換え体DNA>
【0057】
取得した本発明の遺伝子は、所定の組み合わせで、組み換えることができる。
【0058】
例えば、上流から順に、配列番号3、5、9記載のアミノ酸配列を各々有する3種類のポリペプチド(tphA2タンパク質、tphA3タンパク質、tphA1タンパク質)を各々コードする遺伝子の塩基配列(tphA2遺伝子;配列番号2、tphA3遺伝子;配列番号4、tphA1遺伝子;配列番号8)を有し、さらに、tphA3遺伝子の塩基配列とtphA1遺伝子の塩基配列との間に、配列番号7記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(tphBタンパク質)をコードする遺伝子の塩基配列(tphB遺伝子;配列番号6)を備える組換え体DNA(配列番号1記載の塩基配列)は、前述した(10)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
この組換え体DNAによれば、tphB遺伝子をtphA3遺伝子とtphA1遺伝子との間に配置したので、1,2−ジヒドロキシ−1,4−ジカルボキシ−3,5−シクロヘキサジエンデヒドロゲナーゼが、テレフタル酸ジオキシゲナーゼと同調して合成されるから、テレフタル酸からプロトカテク酸への生成反応を効率的に行うことができる。
【0059】
さらに、その下流にターミネーターをコードする遺伝子の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。このターミネーターは、ρ非依存性の転写ターミネーターであることが好ましく、この一例として、配列番号21記載の塩基配列を備えるターミネーターが挙げられる(前述した(16)記載の組換え体DNAの一例)。
【0060】
また、この配列番号1記載の塩基配列の上流に、配列番号12および14記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド(tphRタンパク質、tphCタンパク質)を各々コードする遺伝子の塩基配列(tphR遺伝子;配列番号11、tphC遺伝子;配列番号13)を含む配列番号10記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(11)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0061】
さらに、その下流にターミネーターをコードする遺伝子の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。このターミネーターは、ρ非依存性の転写ターミネーターであることが好ましく、この一例として、配列番号21記載の塩基配列を備えるターミネーターが挙げられる(前述した(16)記載の組換え体DNAの一例)。
【0062】
また、上流から順に、配列番号16、18、20記載のアミノ酸配列を各々有する3種類のポリペプチド(ligAタンパク質、ligBタンパク質、ligCタンパク質)を各々コードする遺伝子の塩基配列(ligA遺伝子;配列番号15、ligB遺伝子;配列番号17、ligC遺伝子;配列番号19)を備える組換え体DNAは、前述した(12)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0063】
さらに、その下流にターミネーターをコードする遺伝子の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。このターミネーターは、ρ非依存性の転写ターミネーターであることが好ましく、この一例として、配列番号21記載の塩基配列を備えるターミネーターが挙げられる(前述した(16)記載の組換え体DNAの一例)。
【0064】
配列番号1記載の塩基配列、かつ配列番号22記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(13)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0065】
配列番号10記載の塩基配列、配列番号1記載の塩基配列、かつ配列番号22記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(14)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0066】
配列番号10記載の塩基配列、配列番号1記載の塩基配列、かつ配列番号22記載の塩基配列を備える組換え体DNAは、前述した(15)又は(16)記載の組換え体DNAの一例として、適用できる。
【0067】
配列番号22記載の塩基配列は、その一部に配列番号16、18、20記載のアミノ酸配列を有する3種類のポリペプチドをコードする遺伝子(ligA遺伝子;配列番号15、ligB遺伝子;配列番号17、ligC遺伝子;配列番号19)を含み、更に、その下流に配列番号21記載の塩基配列を含むターミネーターを有する。このターミネーターにおいては、ligC遺伝子領域の終止コドン配列から24塩基下流に、逆向き相補配列(インバーティドリピート)が存在し、この逆向き相補配列の直後(位置2688〜2706)に6個のチミンが連続するρ非依存性の転写ターミネーターが配置されている。
【0068】
ligB遺伝子の下流の領域には、ligC遺伝子のプロモーター配列が重複して配置されている。このligCプロモーターの働きにより、ligC遺伝子の転写量が増加し、より多くのligCタンパク質が合成される。配列番号22記載の塩基配列を広宿主域性のベクター(例えば、後述する「pKT230MC」)が備えるプロモーターの下流に連結して作製されるベクターは、このプロモーターの作用により、多様な微生物で複製・増殖される。このため、このベクターが導入された形質転換体によれば、ligAタンパク質、ligBタンパク質、ligCタンパク質を同調的に合成して、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の生成反応を安定的に進めることができる。
【0069】
<ベクター>
[テレフタル酸を分解してプロトカテク酸を生成する反応に関与する遺伝子を含むベクター]
配列番号1記載の塩基配列を有するDNA断片の上流域に、配列番号10記載の塩基配列を有するDNA断片を結合させたDNA断片、あるいは、さらにこのDNA断片に配列番号21記載のターミネーターを結合したDNA断片を、「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
【0070】
配列番号1記載の塩基配列を有するDNA断片、あるいは、配列番号1記載の塩基配列を有するDNA断片に配列番号21記載のターミネーターを結合したDNA断片を、「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」などのベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
配列番号10記載の塩基配列を有するDNA断片、配列番号1記載のDNA断片および、配列番号21記載の塩基配列を有するDNA断片を「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
【0071】
これらのベクターによれば、大腸菌などの形質転換体において、テレフタル酸からプロトカテク酸を高効率で生成できる。
【0072】
[プロトカテク酸を分解して2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する遺伝子を含むベクター]
配列番号22記載の塩基配列を有するDNA断片を、「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
このベクターによれば、大腸菌などの形質転換体において、プロトカテク酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高効率で生成できる。
【0073】
[テレフタル酸を分解して2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を生成する反応に関与する遺伝子を含むベクター]
配列番号10記載の塩基配列を有するDNA断片、配列番号1記載のDNA断片および、配列番号22記載の塩基配列を有するDNA断片を「pBluescript」、「pUC119」、「pUC118」および、「pKT230MC」等のベクターに、そのマルチクローニングサイトにおいて結合させたベクターは、(17)記載のベクターの一例として適用できる。
このベクターによれば、大腸菌などの形質転換体において、テレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高効率で生成できる。
【0074】
<形質転換体>
本発明に係る形質転換体は、前述したベクターを、常法に従って所定の宿主細胞に導入することにより作製できる。
【0075】
所定の宿主細胞としては、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に対する分解酵素機能を保持しない細胞、あるいは消失させた形質転換体であればよく、例えば、大腸菌、シュードモナス属細菌、テレフタル酸分解微生物コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株のpmdI(2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に対する分解酵素遺伝子)欠損株であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株が挙げられる。
【0076】
宿主細胞にベクターを導入する方法としては、例えば、接合法、エレクトロポレーション法、コンピテントセル法が挙げられる。そして、薬剤耐性等のマーカーにより、形質転換体を選抜する。
【0077】
<コマモナス スピーシーズに属する形質転換体>
受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株は、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株から、pmdI遺伝子(2−ピロン−4,6−ジカルボン酸分解酵素遺伝子)が欠損された形質転換体である。
この形質転換体によれば、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の分解が抑制されるから、生成された2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高効率で蓄積できる。
【0078】
このコマモナス スピーシーズの形質転換体は、例えば、後述するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を導入することで作製でき、テレフタル酸を原材料とする2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造方法に使用できる。
【0079】
pmdABC(プロトカテク酸分解酵素遺伝子)が欠損された、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)に属する形質転換体は、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6株から、公知の形質転換法により作成することができる(例えば、特開2003−61670号公報、段落番号0077〜段落番号0080参照)。
この形質転換体によれば、プロトカテク酸の分解が抑制されるから、生成されたプロトカテク酸を高効率で蓄積できる。
なお、このpmdABC遺伝子が欠損された形質転換体は、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)E6からのみではなく、受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株からでも作製できる。
【0080】
このコマモナス スピーシーズの形質転換体は、例えば、後述するベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を導入することで作製でき、テレフタル酸を原材料とするプロトカテク酸の製造方法に使用できる。
【0081】
<2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造方法>
2−ピロン−4,6−ジカルボン酸は、例えば、以下のような方法で生成できる。
即ち、まず、後述するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」が導入された形質転換体(例えば、シュードモナス属細菌、コマモナス属細菌)を、約5LのLB培地内で、27〜28℃で約16時間培養する。培地には、ベクターの脱落を防止するために、抗生物質(例えば、カナマイシン)を添加しておく。
菌体濃度がOD660において13〜14程度になるまで培養した形質転換細胞の懸濁液に、テレフタル酸約16gを溶解させたNaOH溶液(0.1mol/L、pH8〜9)約500mLを、5〜6時間かけて添加する。反応の進行に伴って生成される2−ピロン−4,6−ジカルボン酸による培地pHの低下を防ぐため、NaOH溶液(0.1mol/L)を少量ずつ添加する。この反応を、27〜28℃で行う。反応時間については、得たい2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の収量に応じて、適宜設定することができるが、たとえば、48時間以上反応させることが好ましい。
反応液に塩酸を加え、pHを2〜3とすることで、反応を停止させる。この反応液を遠心分離し、菌体成分を沈殿させて除去する。得られた上清に、更に塩酸を添加することにより、pHを約1に低下させる。この上清を低温(4〜5℃)で静置することにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が沈殿となり、この沈殿を分離することで2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が得られる。
なお、得られた2−ピロン−4,6−ジカルボン酸は、活性炭処理により、さらに純度を向上できる。
【0082】
この製造方法によれば、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を高収率で得ることができる。
【0083】
<プロトカテク酸の製造方法>
プロトカテク酸は、例えば、以下のような方法で製造できる。
即ち、後述するベクター「pHE96R−T/pKT230MC」が導入された形質転換体(例えば、シュードモナス属細菌、コマモナス属細菌)を、約5LのLB培地内で、27〜28℃で約16時間培養する。培地には、ベクターの脱落を防止するために、抗生物質(例えば、カナマイシン)を添加しておく。
菌体濃度がOD660において13〜14程度になるまで培養した形質転換細胞の懸濁液に、テレフタル酸約16gを溶解させたNaOH溶液(0.1mol/L、pH8〜9)約500mLを、5〜6時間かけて添加する。反応の進行に伴って生成されるプロトカテク酸による培地pHの低下を防ぐため、NaOH溶液(0.1mol/L)を少量ずつ添加する。この反応を、27〜28℃で行う。反応時間については、得たいプロトカテク酸の収量に応じて、適宜設定することができるが、たとえば、48時間以上反応させることが好ましい。
この反応液から、酢酸エチルエステルで抽出分離することにより、プロトカテク酸が得られる。
【0084】
この製造方法によれば、プロトカテク酸を高収率で得ることができる。
【実施例】
【0085】
<実施例1> pHE96/pBluescript II SK(+)
図2は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96/pBluescript II SK(+)」は、(11)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、ベクター「pHE96/pBluescript II SK(+)」は、配列番号10記載の塩基配列を含むDNA断片が配列番号1記載の塩基配列を含むDNA断片の上流に結合された組換え体DNAを、公知の大腸菌プラスミド「pBluescript II SK(+)」内に挿入して構成したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pBluescript II SK(+)」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素EcoRI切断部位に挿入した。
【0086】
<実施例2> pHE96R−/pBluescript II SK(+)
図4は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」は、(11)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、ベクター「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」は、配列番号13記載の塩基配列を備え、tphC遺伝子をコードする遺伝子の塩基配列の上流に制限酵素BamHI切断部位を有するように設計されたDNA断片と、配列番号1に示される塩基配列を持つDNA断片とからなる組換え体DNAとを公知の大腸菌プラスミド「pBluescript II SK(+)」に挿入したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pBluescript II SK(+)」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素BamHI切断部位及び制限酵素EcoRI切断部位において挿入されている。
【0087】
これにより、配列番号13記載の塩基配列を含むDNA、および配列番号1記載の塩基配列を含むDNAは、「pBluescript II SK(+)」が備えるlacZプロモーターの下流に位置するように配置される。
【0088】
(pHE96R−/pBluescript II SK(+)の作製法)
「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」は、例えば、以下のような方法で作製した。
即ち、まず、ベクター「pHE96/pBluescript II SK(+)」内に挿入されているtphC遺伝子領域を、Uniプライマー(制限酵素BamHI認識配列を含む)およびRevプライマー(制限酵素EcoRI、XhoI認識配列を含む)を用いてPCR法により、選択的に増幅した。なお、Uniプライマー及びRevプライマーの塩基配列は、次の通りであった。
Uniプライマー配列:5’−AGTCGGTCCCATCCTCATACTGCAGTTC−3’
Revプライマー配列:5’−ATCGCTCGAGAATTCGATGAACTGAGCAGTCTTG−3’
【0089】
次に、この選択的に増幅した断片を制限酵素BamHIおよび制限酵素XhoIにより切断することにより得られるDNA断片を、「pBluescript II SK(+)」をマルチクローニングサイトに存在する制限酵素BamHIおよび制限酵素XhoIにより切断して得られる制限酵素末端と、T4DNAリガーゼにより結合することにより、ハイブリッドプラスミド「ptphC/pBluescript II SK(+)」を作製した(図3の中段)。
【0090】
そして、この「ptphC/pBluescript II SK(+)」を制限酵素HindIIIおよび制限酵素EcoRIにより切断し、「pBluescript II SK(+)」に由来する塩基配列を含むDNA断片を抽出した。この抽出したDNA断片を、「pHE96/pBluescript II SK(+)」をマルチクローニングサイトに存在する制限酵素HindIIIおよび制限酵素EcoRIにより切断して得られるDNA断片と、T4DNAリガーゼにより結合することにより、ベクター「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」を作製した。
【0091】
<実施例3> pLG200/pUC119
図4は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pLG200/pUC119」は、(12)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、ベクター「pLG200/pUC119」は、配列番号22記載の塩基配列を含む組換え体DNAを、公知の大腸菌プラスミド「pUC119」に挿入して構成したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pUC119」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素XbaI切断部位において挿入した。
【0092】
<実施例4> pKTLABCT
図5は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pKTLABCT」は、(12)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、広宿主域性を有するベクター「pKTLABCT」は、配列番号22記載の塩基配列を含む組換え体DNAを、公知の広宿主域プラスミド「pKT230MC」に挿入したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pKT230MC」が備えるマルチクローニングサイト内に存在する制限酵素XbaI切断部位において挿入した。
このpKTLABCTは、シュードモナス属細菌(例えば、Pseudomonas putida)やコマモナス属細菌(例えば、Comamonas sp.)等において複製できる。
【0093】
<実施例5> pHE96R−LABCT/pKT230MC
図6は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96R−LABCT/pKT230MC」は、(13)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、広宿主域性を有するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」は、lacZプロモーター、配列番号13で示される塩基配列、配列番号1で示される塩基配列を、ベクター「pKTLABCT」に挿入することにより構成したものである。なお、この組換え体DNAは、この「pKTLABCT」内に存在する制限酵素XbaI切断部位のうち、配列番号22記載の塩基配列の上流に存在するXbaI切断部位において、挿入したものである。
【0094】
(pHE96R−LABCT/pKT230MCの作製法)
ベクター「pKTLABCT」を、このベクター内に存在する2つの制限酵素XbaI切断部位のうち、ligA遺伝子の塩基配列の上流に存在するXbaI切断部位のみにおいて、切断した。この制限酵素XbaIによる部分切断によって得られるDNA断片に、「pHE96R−/pBluescript II SK(+)」を制限酵素VspI及びEcoRIにより切断して得られるDNA断片を、配列番号22記載の塩基配列がlacZプロモーターの下流に位置するように、T4DNAリガーゼで連結することにより、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を作製した。
【0095】
<実施例6> pHE96R−T/pKT230MC
図7は、本発明に係る組換え体DNAを含むベクターの製法及び構造を示す概略図である。そして、「pHE96R−T/pKT230MC」は、(10)記載の組換え体DNAを含むベクター、換言すれば、(17)記載のベクターの一例である。
即ち、広宿主域性を有するベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」は、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」から、配列番号15、配列番号17および、配列番号19記載の塩基配列を含むDNA断片が除去されて構成したものである。
【0096】
これにより、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」は、「pBluescript II SK(+)」に由来するlacZプロモーターを有し、このlacZプロモーターの下流に配列番号13記載の塩基配列および、配列番号1記載の塩基配列が配置されている。
【0097】
(pHE96R−T/pKT230MCの作製法)
前述したベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を、このベクター内に存在する制限酵素NdeIおよび制限酵素SalI切断部位において切断し、DNA断片を抽出した。このDNA断片に対して、平滑化酵素による末端平滑化処理を行った後、平滑化された末端同士をT4DNAリガーゼで連結することにより、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を作製した。
【0098】
<実施例7> シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の作製
前述したベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を大腸菌HB101株に導入し、25mg/Lのアンピシリンを含むLB培地(100mL)で、37℃で18時間振とう培養することで、このベクターが導入された大腸菌を選抜した。この大腸菌から、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」を抽出した。
【0099】
一方、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸分解酵素機能を消失させた微生物であるシュードモナス属細菌(Pseudomonas putida PpY1100株)及びコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI株を、LB液体培地500mLで28℃、23時間培養した後、氷中で30分間冷却した。冷却後、4℃、10分、10000rpmで遠心分離により集菌し、500mLの0℃蒸留水で温和に洗浄した後、再び遠心分離により集菌した。続いて、250mLの0℃蒸留水で温和に洗浄した後、再度、遠心分離により集菌した。さらに、125mLの0℃蒸留水で温和に洗浄した後、遠心分離により集菌した。この集菌した菌体を10%グリセロールを含む蒸留水に懸濁した後、0℃にて静置した。
【0100】
ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」のDNA約0.05μgが溶解された蒸留水4μLを0.2cmのキュベットに入れ、このキュベットに、10%グリセロールを含む蒸留水に懸濁した各々の細胞液40μLを加え、(25μF、2500V、12m秒)の条件で、エレクトロポレーション処理を行った。
【0101】
エレクトロポレーション処理を行った各細胞の全量を、各々、10mLのLB液体培地に接種し、28℃で6時間培養した。培養後、遠心分離によって各細胞の菌体を集菌し、25mg/Lのカナマイシンを含むLB平板培地上に展開した後、28℃で48時間培養することで、ベクター「pHE96R−LABCT/pKT230MC」が導入された形質転換株を得た。
【0102】
なお、この形質転換体を、各々、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株と呼ぶ。
【0103】
<実施例8> シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の作製
まず、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を大腸菌HB101株に導入し、25mg/Lのアンピシリンを含むLB培地(100mL)で、37℃で18時間振とう培養することで形質転換体を選抜した。選抜された形質転換体から、ベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を抽出した。
【0104】
このベクター「pHE96R−T/pKT230MC」を導入した点が異なる他は、実施例7と同様の手順で、形質転換体の作製を行った。
なお、このようにして得られた形質転換体を、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株と呼ぶ。
【0105】
<実施例9> 2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の製造
シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株およびコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株を、各々、200mLのLB液体培地(25mg/Lのカナマイシンを含む)に接種した後、28℃で16時間培養することで前培養菌体懸濁液を得た。LB液体培地8Lおよび消泡剤(Antiform A)3mLを10L容量のジャーファーメンター(発酵槽)により混合することで培地を調製し、この調整した培地に前培養菌体懸濁液200mLを混合した後、28℃、500rpm/分の通気攪拌条件のもと、菌体濃度がOD660において13程度になるまで培養した(約11時間)。培養に伴う増殖曲線を図8に示す。図8に示されるように、時間経過とともに菌体濃度が順調に増加していたことから、上述の培養条件で、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株は順調に増殖していたことが分かった。
【0106】
また同様の手順で、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株を、菌体濃度がOD660において13程度になるまで培養した(約11時間)。培養に伴う増殖曲線を図9に示す。図9に示されるように、時間経過とともに菌体濃度が順調に増加していたことから、上述の培養条件で、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株は順調に増殖していたことが分かった。
【0107】
このシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)培養液(発酵槽内)に、基質であるテレフタル酸(16g)の0.1mol/LのNaOH溶液(pH8〜9)500mLを、ペリスタポンプを用いて5時間に亘り添加した。反応の進行に伴って生成する2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の生成による培地pHの低下を予防するために、pHセンサーに連結したペリスタポンプにより、0.1mol/LのNaOH溶液を添加することで、培地のpHを維持した。ここで、反応の進行状況を薄層クロマトグラフィー(TLC)によって確認した結果を図10に示す。
【0108】
図10において、Aはテレフタル酸を、Bは2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、Cはシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中の基質を示す。図10に示されるように、反応開始後48時間において、テレフタル酸を添加したシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中、テレフタル酸が殆ど視認されないことから、培養液中、ほぼすべてのテレフタル酸が分解され、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成されたことが分かった。
【0109】
また、同様の手順で、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株についても反応を行い、反応の進行状況を確認した結果を図11に示す。
【0110】
図11において、Aはテレフタル酸を、Bは2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中の基質を示す。図11に示されるように、反応開始後48時間において、テレフタル酸を添加したコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)株の培養液中、テレフタル酸が殆ど視認されないことから、培養液中、ほぼすべてのテレフタル酸が2−ピロン−4,6−ジカルボン酸に生成されたことが分かった。
【0111】
発酵槽内の培地をプラスチック容器(バケツ)に移した後、塩酸を添加して、反応液をpH3とすることで反応を停止させた。反応液を遠心分離(6000rpm、20℃)により菌体成分を沈殿させ、沈殿物を除去して得られた上清に塩酸を更に添加することにより、pH1.0に低下させた。このpHを低下させた上清を低温(4℃)で、24時間以上静置することにより、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を沈殿として分離した。
【0112】
このようにして回収された2−ピロン−4,6−ジカルボン酸は、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−LABCT/pKT230MC)培養液(発酵槽)では約12gであり、コマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)DPI(pHE96R−LABCT/pKT230MC)培養液(発酵槽)では約13gであった。
【0113】
図12左側に、回収した2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を活性炭処理等した後の精製物についての、ガス液体クロマトグラム(図12左側)を示す。
図12左側に示されるように、反応開始後8時間において、反応開始後0時間において視認されていたテレフタル酸を示すシグナルが消失し、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を示すシグナルが現れていたことから、反応液中のテレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成されていたことが分かった。
【0114】
また、上述した精製物について、カルボキシル基にトリメチルシリル基を結合させた誘導体として質量分析(GC−MS)を行った。この結果である質量分析スペクトルを図12右側に示す。
図12の右上側に示されるように、テレフタル酸の誘導体(分子量310)及びこの誘導体からメチル基(分子量15)が順次脱離した化合物に対応するピークが視認されたことから、図12左上のシグナルはテレフタル酸を示すものであることが確認された。
また、図12の右下側に示されるように、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸の誘導体(分子量328)及びこの誘導体からメチル基(分子量15)が順次脱離した化合物に対応するピークが視認されたことから、図12左下のシグナルは2−ピロン−4,6−ジカルボン酸を示すものであることが確認された。
【0115】
<実施例10> プロトカテク酸の製造
シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株を、200mLのLB液体培地(25mg/Lのカナマイシンを含む)に接種し28℃で16時間培養し前培養菌体懸濁液とした。8LのLB液体培地および消泡剤(Antiform A)3mLを10L容量のジャーファーメンター(発酵槽)を用いて調製し、そこに培養したシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の前培養菌体懸濁液200mLを混合し、28℃、500rpm/分の通気攪拌下、OD660が13程度になるまで培養した(約11時間)。
【0116】
OD660が13程度に達した発酵槽の培養液に、基質であるテレフタル酸(16g)の0.1mol/LのNaOH溶液(pH8〜9)500mLを、ペリスタポンプを用いて5時間に亘り添加した。反応の進行に伴って生成するプロトカテク酸の生成による培地pHの低下を予防するために、pHセンサーに連結したペリスタポンプにより、0.1mol/LのNaOH溶液を添加することで、培地のpHを維持した。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)によって確認した。この結果を図13に示す。
【0117】
図13において、Aはプロトカテク酸を、Bはテレフタル酸を、Cはシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の培養液中の基質を示す。図13に示されるように、反応開始後48時間において、テレフタル酸を添加したシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)PpY1100(pHE96R−T/pKT230MC)株の培養液中、テレフタル酸が殆ど視認されないことから、培養液中、ほぼすべてのテレフタル酸がプロトカテク酸に生成されたことが分かった。
【0118】
そして、消失を確認した反応液からプロトカテク酸を酢酸エチルエステルで抽出分離することで、プロトカテク酸を得た。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】テレフタル酸を原材料とし、プロトカテク酸を経由して、2−ピロン−4,6−ジカルボン酸が生成される反応経路の概略を示す図である。
【図2】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図3】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図4】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図5】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図6】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図7】本発明に係るベクターの作製方法及び構造の概略を示す図である。
【図8】本発明実施例に係る形質転換体の増殖曲線を示す図である。
【図9】本発明実施例に係る形質転換体の増殖曲線を示す図である。
【図10】本発明に係る形質転換体によるテレフタル酸の分解反応の経時的変化を示す図である。
【図11】本発明に係る形質転換体によるテレフタル酸の分解反応の経時的変化を示す図である。
【図12】本発明に係る製造方法によるテレフタル酸から2−ピロン−4,6−ジカルボン酸への変換の状況を示す図である。
【図13】本発明に係る製造方法によるテレフタル酸からプロトカテク酸への変換の状況を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項2】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号4に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号4に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項3】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号9に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号8に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号8に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項4】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号7に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、1,2―ジヒドロキシ―3,5―シクロヘキサジエン―1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項5】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号16に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号15に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号15に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項6】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号18に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号17に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号17に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項7】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号20に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号19に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号19に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項8】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号12に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号11に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項9】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号14に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号13に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号13に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項10】
少なくとも請求項1〜4記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項11】
少なくとも請求項1〜4、8、及び9記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項12】
少なくとも請求項5〜7記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項13】
少なくとも請求項1〜7記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項14】
少なくとも請求項1〜9記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項15】
ターミネーターを含む請求項10〜14のいずれか記載の組換え体DNA。
【請求項16】
前記ターミネーターは、ρ非依存性転写ターミネーターである請求項15記載の組換え体DNA。
【請求項17】
請求項10〜16いずれか記載の組換え体DNAを含むベクター。
【請求項18】
請求項17記載のベクターが導入された形質転換体。
【請求項19】
テレフタル酸が添加された培地中で、請求項18記載の形質転換体を培養する工程を含む2−ピロン−4,6−ジカルボン酸及び/又はプロトカテク酸の製造方法。
【請求項20】
受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)に属する形質転換体。
【請求項21】
受領番号がFERM AP−20677であるスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)に属する形質転換体。
【請求項1】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号3に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号2に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項2】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号5に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号4に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号4に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項3】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号9に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号8に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号8に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸ジオキシゲナーゼの電子伝達成分としての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項4】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号7に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、1,2−ジヒドロキシ−3,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号6に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、1,2―ジヒドロキシ―3,5―シクロヘキサジエン―1,4−ジカルボン酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項5】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号16に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号15に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号15に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項6】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号18に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号17に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号17に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロトカテク酸4,5−ジオキシゲナーゼのサブユニットとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項7】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号20に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号20に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号19に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号19に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、4−カルボキシ−2−ヒドロキシムコン酸−6−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項8】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号12に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号11に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸分解系遺伝子群のポジティブレギュレーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項9】
以下の(a)、(b)、(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号14に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加された配列を含み、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号13に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号13に示される塩基配列の全部若しくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、テレフタル酸トランスポーターとしての機能を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項10】
少なくとも請求項1〜4記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項11】
少なくとも請求項1〜4、8、及び9記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項12】
少なくとも請求項5〜7記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項13】
少なくとも請求項1〜7記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項14】
少なくとも請求項1〜9記載の全ての遺伝子を含む組換え体DNA。
【請求項15】
ターミネーターを含む請求項10〜14のいずれか記載の組換え体DNA。
【請求項16】
前記ターミネーターは、ρ非依存性転写ターミネーターである請求項15記載の組換え体DNA。
【請求項17】
請求項10〜16いずれか記載の組換え体DNAを含むベクター。
【請求項18】
請求項17記載のベクターが導入された形質転換体。
【請求項19】
テレフタル酸が添加された培地中で、請求項18記載の形質転換体を培養する工程を含む2−ピロン−4,6−ジカルボン酸及び/又はプロトカテク酸の製造方法。
【請求項20】
受領番号がFERM AP−20676であるコマモナス スピーシーズ(Comamonas sp.)に属する形質転換体。
【請求項21】
受領番号がFERM AP−20677であるスフィンゴモナス パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)に属する形質転換体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図13】
【公開番号】特開2007−104942(P2007−104942A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298242(P2005−298242)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
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