説明

テロメラーゼ阻害のための改変オリゴヌクレオチド

【課題】テロメラーゼ阻害のための改変オリゴヌクレオチドを提供すること。
【解決手段】脂質部分と共有結合するオリゴヌクレオチド部分を含む化合物が、開示される。上記オリゴヌクレオチド部分は、ヒトテロメラーゼのRNA成分に相補的な配列を含む。上記化合物は、細胞において高い効力でテロメラーゼ活性を阻害し、そして優れた細胞取り込み特性を有する。このことは、上記非改変形態と比較して、より少ない量の結合オリゴヌクレオチドの使用で、同等の生物学的効果を獲得し得ることを意味する。本発明の組成物および方法は、オリゴヌクレオチドおよび少なくとも1つの共有結合した脂質基を含む、テロメラーゼ阻害化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、テロメラーゼの阻害のために有用な化合物に関する。より具体的には、本発明は、改変オリゴヌクレオチドを提供し、それはテロメラーゼのRNA成分を標的とし、そして増強された細胞取り込み特性を有する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
(治療用適用のためのオリゴヌクレオチドの開発)
核酸の医療用の使用には、大きな関心がある。例えば、アンチセンス、リボザイム、アプタマー、およびRNA干渉(RNAi)技術はすべて、潜在的な治療用適用のために開発されてきた。インビボ送達のための核酸(特にオリゴヌクレオチド)の設計は、結合強度、標的特異性、血清安定性、ヌクレアーゼに対する耐性、および細胞取り込みを含む種々の因子の考慮を必要とする。インビボ使用に適切な特性を有するオリゴヌクレオチドを製造するために、多くのアプローチ(例えば、改変骨格化学、送達ビヒクルにおける調合、および多くの他の部分への結合)が提唱された。全身送達に適した特性を有する治療用オリゴヌクレオチドは、特に有益である。
【0003】
改変された化学的骨格を持つオリゴヌクレオチドは、Micklefield、Backbone modification of nucleic acids: synthesis,structure and therapeutic applications,Curr.Med.Chem.、8(10):1157−79、2001、およびLyerら、Modified oligonucleotides−−synthesis,properties and applications,Curr.Opin.Mol.Ther.、1(3):344−358、1999において概説される。
【0004】
改変骨格化学の例としては:
・ペプチド核酸(PNA)(Nielsen、Methods Mol.Biol.、208:3−26、2002を参照のこと)、
・ロックド(locked)核酸(LNA)(Peterson & Wengel、Trends Biotechnol.、21(2):74−81、2003を参照のこと)、
・ホスホロチオネート(Eckstein、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、10(2):117−21、2000を参照)、
・メチルホスホネート(Thiviyanathanら、Biochemistry、41(3):827−38、2002を参照のこと)、
・ホスホラミデート(Gryaznovら、Biochem.Biophys.Acta、1489(1):131−40、1999;Pruzanら、Nucleic Acids Res.、30(2):559−68、2002を参照のこと)および、
・チオホスホラミデート(Gryaznovら、Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids、20(4−7):401−10、2001;Herbertら、Oncogene、21(4):638−42、2002を参照のこと)
が挙げられる。
【0005】
オリゴヌクレオチドのこれらの型の各々について、利点および不都合な点が報告されている。例えば、ペプチド核酸(PNA)は、試験培養において、優れたヌクレアーゼ耐性および優れた結合強度を示すが、細胞取り込みを減少させ;ホスホロチオネートは、優れたヌクレアーゼ耐性および優れた溶解度を示すが、それらはP−キラル混合物として典型的に合成され、そしていくらかの配列非特異的な生物学的効果を表し;メチルホスホネートは、優れたヌクレアーゼ耐性および優れた細胞取り込みを示すが、それらもまたP−キラル混合物として典型的に合成され、そして二重鎖の安定性を減少させる。N3’→P5’ホスホラミデートのヌクレオシド間結合は、有利な結合特性、有利なヌクレアーゼ耐性、および有利な溶解度を示すと報告されている(GryaznovおよびLetsinger、Nucleic Acids Research、20:3403−3409、1992;Chenら、Nucleic Acids Research、23:2661−2668、1995;Gryaznovら、Proc.Natl.Acad.Sci.、92:5798−5802、1995;Skorskiら、Proc.Natl.Acad.Sci.、94:3966−3971、1997)。しかしながら、N3’→P5’ホスホラミデートのヌクレオシド間結合はまた天然のホスホジエステル対応物と比較し、増加した酸不安定性を示す(Gryaznovら、Nucleic Acids Research、24:1508−1514、1996)。オリゴヌクレオチドの酸安定性は、オリゴヌクレオチド剤を経口治療剤として使用する望みを考慮に入れると、重要な性質である。N3’→P5’チオホスホラミデートオリゴヌクレオチドにおける骨格への硫黄原子の付加は、増強された酸安定性を与える。
【0006】
多くの他の治療用化合物と同様に、オリゴヌクレオチドのポリアニオン性質は、化合物の脂質膜を通過する能力を低下させ、細胞取り込みの効率を制限する。治療剤の細胞取り込みを増加させるために、種々の解決策が提唱されている(リポソームでの処方(概説として、Pedroso de Limaら、Curr Med Chem、10(14):1221−1231、2003およびMiller、Curr Med Chem.、10(14):1195−211、2003を参照のこと)、および親油性部分との結合を含む)。上記親油性部分との結合の手法の例としては:米国特許第5,411,947号(Method of converting a drug to an orally available form by covalently bonding a lipid to the drug);米国特許第6,448,392号(Lipid derivatives of antiviral nucleosides:liposomal incorporation and method of use);米国特許第5,420,330号(Lipo−phosphoramidites);米国特許第5,763,208号(Oligonucleotides and their analogs capable of passive cell membrane permeation);Gryaznov & Lloyd、Nucleic Acids Research、21:5909−5915、1993(Cholesterol−conjugated oligonucleotides);米国特許第5,416,203号(Steroid modified oligonucleotides);WO 90/10448(Covalent conjugates of lipid and oligonucleotide);Gersterら、Analytical Biochemistry、262:177−184(1998)(Quantitative analysis of modified antisense oligonucleotides in biological fluids using cationic nanoparticles for solid−phase extraction);Bennetら、Mol.Pharmacol.、41:1023−1033(1992)(Cationic lipids enhance cellular uptake and activity of phosphorothioate antisense oligonucleotides);Manoharanら、Antisense and Nucleic Acid Drug Dev.、12:103−128(2002)(Oligonucleotide conjugates as potential antisense drugs with improved uptake,biodistribution,targeted delivery and mechanism of action);およびFiedlerら、Langenbeck’s Arch.Surg.、383:269−275(1998)(Growth inhibition of pancreatic tumor cells by modified antisense oligodeoxynucleotides)が、挙げられる。
【0007】
(治療標的としてのテロメラーゼ)
テロメラーゼは、染色体末端へのテロメア反復配列の付加を触媒するリボ核タンパク質である(Blackburn、1992、Ann.Rev.Biochem.、61:113−129を参照のこと)。テロメア、テロメラーゼ、細胞老化および癌の間の関連を記載する刊行物の広範な本文が存在する(一般的概説として、Oncogene、第21巻、2002年1月、(テロメラーゼに焦点を当てる学術誌の発行全体)を参照のこと)。したがって、テロメラーゼは、癌治療剤のための優れた標的として同定されている(Lichsteinerら、Annals New York Acad.Sci.、886:1−11、1999を参照のこと)。
【0008】
ヒトテロメラーゼのタンパク質およびヒトテロメラーゼのRNA成分の両方をコードする遺伝子は、クローニングおよび配列決定されており(それぞれ米国特許第6,261,836号および米国特許第5,583,016号のそれぞれを参照のこと)、そしてテロメラーゼインヒビターの探索において多大な努力が費やされた。今日までに同定されたテロメラーゼインヒビターとしては、低分子化合物およびオリゴヌクレオチドが挙げられる。種々の刊行物は、テロメラーゼタンパク質成分をコードするmRNA(そのヒトでの形態は、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素もしくはhTERTとして公知)、またはテロメラーゼホロ酵素のRNA成分(そのヒトでの形態は、ヒトテロメラーゼRNAもしくはhTRとして公知)のいずれかを標的とする、テロメラーゼを阻害するためのオリゴヌクレオチドの使用を記載する。上記hTERT mRNAを標的とするオリゴヌクレオチドは、一般に、それらが上記mRNAに結合し、そのmRNAの破壊を生じ、それゆえ、hTERTタンパク質の生成を妨げる、という点で従来のアンチセンス薬物として作用すると考えられている(例えば、米国特許第6,444,650号を参照のこと)。hTRを標的とするあるオリゴヌクレオチドは、テロメラーゼホロ酵素内に存在するhTR分子に結合するように設計され、それゆえ、酵素機能を崩壊させる(例えば、米国特許第6,548,298号を参照のこと)。テロメラーゼ活性を低減もしくは除去するように設計された、種々のオリゴヌクレオチドを記載する出版物の例としては、以下が挙げられる:
米国特許第6,444,650号(Antisense compositions for detecting and inhibiting telomerase reverse transcriptase);
米国特許第6,331,399号(Antisense inhibition of tert expression);
米国特許第6,548,298号(Mammalian teromerase);
Van Janta−Lipinskiら、Nucleosides Nucleotides、18(6−7):1719−20、1999(Protein and RNA of human telomerase as targets for modified oligonucleotides);
Gryaznovら、Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids、20:401−410、2001(Telomerase inhibitors−oligonucleotide phosphoramidates as potential therapeutic agents);
Herbertら、Oncogene、21(4):638−42、2002(Oligonucleotide N3’→P5’ phosphoramidates as efficient telomerase inhibitors);
Pruzanら、Nucleic Acids Research、30(2):559−568、2002(Allosteric inhibitors of telomerase: oligonucleotide N3’−P5’ phosphoramidates);
PCT公開 WO 01/18015(Oligonucleotide N3’−P5’ thiophosphoramidates: their synthesis and use);および
Asaiら、Cancer Research、63:3931−3939、2003(A novel telomerase template antagonist(GRN163)as a potential anticancer agent)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明の組成物および方法は、オリゴヌクレオチドおよび少なくとも1つの共有結合した脂質基を含む、テロメラーゼ阻害化合物に関する。本発明の化合物は、非改変オリゴヌクレオチドと比較して、優れた細胞取り込み特性を有する。これは、上記非改変形態と比較して、より少ない量の結合オリゴヌクレオチドの使用で、同等の生物学的効果を獲得し得ることを意味する。ヒトの治療用の設定に適用される場合、このことは毒性危険性の低減、および費用節約に言い換えられ得る。本発明の化合物は、細胞(癌細胞を含む)においてテロメラーゼを阻害し、それによる効果は、上記細胞の増殖を阻害することである。したがって、本発明の化合物の第一の適用は、癌治療としての適用であり、そして本発明は、このように利用し得る上記化合物の薬学的な処方を提供する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の構造:
O−(x−L)
を含む化合物であって、
Oは、ヒトテロメラーゼRNA配列(配列番号1)に対して相補的な、少なくとも5塩基を含む、オリゴヌクレオチドであり;
xは、任意のリンカーであり;
Lは、脂質部分であり;
そしてnは、1〜5の整数であり、n>1である場合、各々の(x−L)成分は独立して選択される、化合物。
(項目2)
項目1に記載の化合物であって、Oは、ヒトテロメラーゼRNA配列(配列番号1)に対して相補的な、少なくとも10塩基を含む、化合物。
(項目3)
項目2に記載の化合物であって、Lは、置換脂肪酸、非置換脂肪酸およびステロールからなる群より選択される脂質を含む、化合物。
(項目4)
項目3に記載の化合物であって、Lは、フッ素で置換された脂肪酸である、化合物。
(項目5)
項目2に記載の化合物であって、Lは、置換炭化水素もしくは非置換炭化水素である、化合物。
(項目6)
項目5に記載の化合物であって、Lは、フッ素で置換された炭化水素である、化合物。
(項目7)
項目1に記載の化合物であって、n=1であり、そして前記x−L成分は、前記オリゴヌクレオチドOの5’末端に対して共有結合する、化合物。
(項目8)
項目1に記載の化合物であって、n=1であり、そして前記(x−L)成分は、前記オリゴヌクレオチドOの3’末端に対して共有結合する、化合物。
(項目9)
項目1に記載の化合物であって、n=2であり、1つの独立して選択された(x−L)成分は前記5’末端に共有結合し、そして1つの独立して選択された(x−L)成分は前記3’末端に共有結合する、化合物。
(項目10)
項目1に記載の化合物であって、n=1であり、そして前記(x−L)成分は前記オリゴヌクレオチドOの核酸塩基に共有結合する、化合物。
(項目11)
項目1に記載の化合物であって、前記オリゴヌクレオチドOのヌクレオシド間の結合は、N3’→P5’ホスホラミデート結合である、化合物。
(項目12)
項目1に記載の化合物であって、前記オリゴヌクレオチドOのヌクレオシド間の結合は、N3’→P5’チオホスホラミデート結合である、化合物。
(項目13)
項目1に記載の化合物であって、オリゴヌクレオチドOは、ヒトテロメラーゼRNA配列(配列番号1)に対して相補的な、少なくとも10塩基を含む、化合物。
(項目14)
項目1に記載の化合物であって:
前記オリゴヌクレオチドOのヌクレオシド間の結合は、N3’→P5’チオホスホラミデート結合であり;
Oの配列は、ヒトテロメラーゼRNA配列(配列番号1)に対して相補的な、少なくとも12塩基を含み;
n=1であり;
(x−L)は、Oの5’末端もしくは3’末端に共有結合し;そして、
Lは、脂肪酸である、化合物。
(項目15)
項目14に記載の化合物であって、xは、グリセロールリンカーもしくはアミノグリセロールリンカーである、化合物。
(項目16)
項目15に記載の化合物であって、該化合物の構造は、以下:
【化1】

である、化合物。
(項目17)
項目14に記載の化合物であって、Lは、アミド結合を通じて前記オリゴヌクレオチドLの3’末端に直接的に結合する、化合物。
(項目18)
項目17に記載の化合物であって、該化合物の構造は、以下:
【化2】

である、化合物。
(項目19)
テロメラーゼ酵素の活性を阻害する方法であって、該方法は、該テロメラーゼ酵素と項目1に記載の化合物とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目20)
細胞内においてテロメラーゼ酵素の活性を阻害する方法であって、該方法は、該細胞と項目1に記載の化合物とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目21)
項目20に記載の方法であって、前記細胞は、癌細胞である、方法。
(項目22)
癌細胞の増殖を阻害する方法であって、該方法は、該細胞と項目1に記載の化合物とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目23)
薬学的に受容可能な賦形剤で処方される、項目1に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
(項目24)
医療における、項目1に記載の化合物の使用。
(項目25)
癌を処置するための、項目1に記載の化合物の使用。
【0010】
本発明の化合物は、以下の式:
O−(x−L)
により表され得、Oはオリゴヌクレオチドを表し、xは任意のリンカー基であり、Lは脂質部分を表し、そしてnは1〜5の整数である。代表的には、n=1もしくはn=2であるが、n>1である場合、それぞれの脂質部分Lは独立して選択される。上記脂質部分は、代表的には、3’末端および5’末端のうちの1つ(もしくはn=2の場合、それぞれ)においてオリゴヌクレオチドに共有結合するが、他の部位(1つもしくはそれ以上の塩基を含む)にも結合し得る。
【0011】
上記脂質基Lは、代表的には、脂肪族炭化水素もしくは脂肪酸(炭化水素および脂肪酸の誘導体を含む)であり、例えば、14個〜20個の炭素を有する飽和直鎖化合物(例えば、ミリスチン酸(C14、テトラデカン酸としても公知)、パルミチン酸(C16、ヘキサデカン酸として公知)、およびステアリン酸(C18、オクタデカン酸として公知))であり、およびそれらの脂肪族炭化水素形態の相当物、テトラデカン、ヘキサデカンおよびオクタデカンに加えて、誘導体(アミンおよびアミド誘導体)である。使用され得る他の適切な脂質基の例は、ステロール(例えば、コレステロール)、および置換脂肪酸および置換炭化水素であり、特に、これらの基のポリフッ化形態である。オリゴヌクレオチド成分Oは、リボ核酸またはデオキシリボ核酸、あるいはそれらの改変形態であり、そして核酸塩基を連結する結合は、任意の適合する化学的作用(例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ホスホジエステル結合;ホスホトリエステル結合;メチルホスホネート結合;P3’→N5’ホスホラミデート結合;N3’→P5’ホスホラミデート結合;N3’→P5’チオホスホラミデート結合;およびホスホロチオエート結合)によりなされ得る。N3’→P5’ホスホラミデート化学およびN3’→P5’チオホスホラミデート化学が、好ましい。上記オリゴヌクレオチド成分Oの配列は、テロメラーゼRNA成分の配列の選択された「標的」領域に対して相補的(好ましくは、正確に相補的)である、少なくとも1つの配列領域を含む。特定の実施形態において、上記オリゴヌクレオチド成分Oの配列は、ヒトテロメラーゼRNA成分の以下の領域:hTR(この配列は、配列番号1において提供される)46〜56、137〜196、290〜319、および350〜380の、1つの領域内の配列に相補的である、配列領域を含む。hTRのある領域に対して正確に相補的であるO成分内の配列の長さは、好ましくは少なくとも5塩基であり、より好ましくは少なくとも8塩基であり、さらにより好ましくは少なくとも10塩基である。さらなる配列領域が、hTRに対して必ずしも相補的ではないO成分に付加され得るが、これらはさらなる有利な機能を提供し得る。
【0012】
本発明の例示的な化合物としては、以下の構造で示される化合物が挙げられ、O成分はN3’→P5’チオホスホラミデートのヌクレオシド間結合を有し、そしてhTR(配列番号1)の第42塩基〜第54塩基と正確に相補的である。第1の例示的な構造:
【0013】
【化3】

において、脂質部分であるLは、パルミトイルアミド(パルミチン酸に由来する)であり、アミノグリセロールリンカーを通じて、オリゴヌクレオチドOの5’チオリン酸基に結合する。第2の例示的な構造:
【0014】
【化4】

において、Lは、オリゴヌクレオチドの3’アミノ基を通じて、パルミトイルアミドに結合する。
【0015】
本発明の化合物(これらの例示的な化合物を含む)は、対応する非改変オリゴヌクレオチドと比較して、優れた細胞取り込み特性を有し、それゆえ、細胞のテロメラーゼ活性のより効果的なインヒビターであることが示される。これらの特性の結果として、本発明の化合物は、癌細胞増殖の極めて効果的なインヒビターである。
【0016】
本発明の化合物は、テロメラーゼ酵素の活性を阻害するための方法において使用され得る。このような方法は、テロメラーゼ酵素と本発明の化合物とを接触させる工程を包含する。本発明の化合物は、テロメラーゼを発現する細胞においてテロメラーゼを阻害し、それにより、そのような細胞の増殖を阻害するためにも使用され得る。このような方法は、テロメラーゼ活性を有する細胞と本発明の化合物とを接触させる工程を包含する。このように処理された細胞は、インビトロでの細胞であってもインビボでの細胞であっても、一般にテロメラーゼ短縮を起こし、そして増殖を中止する。癌細胞は長期間の増殖のためにテロメラーゼ活性を必要とするので、本発明の化合物は、癌細胞の増殖を阻害するのに特に有用であり、そして癌を処置するための治療用適用で使用され得る。
【0017】
したがって、本発明の局面は、医療での使用のため(そして特に癌の処置における使用のため)に本明細書中に記載されるような化合物を含む。
【0018】
本明細書中ではまた、薬学的組成物を提供し、それは、薬学的に受容可能な賦形剤で処方される本発明によるオリゴヌクレオチド結合体を含む。
(配列表)
添付の配列表の配列番号1は、ヒトテロメラーゼRNA成分(hTR)(Fengら、Science 269(5228):1236−1241、1995、およびGenBank、登録番号U86046、もまた参照のこと)を提供する。種々のオリゴヌクレオチド(それらの配列は、配列番号1の中に含まれる領域に相補的である)は、それらが相補的である配列番号1の中の配列の位置を参照することにより、本開示全体にわたって参照される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1−1】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−2】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−3】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−4】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−5】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−6】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−7】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図1−8】図1は、本発明の化合物中のオリゴヌクレオチドに対する、種々の脂質L基の結合の例を示す。
【図2−1】図2は、本発明の化合物のための例示的な合成手順の図式を示す。図2A、図2Bおよび図2Cは、脂質部分がオリゴヌクレオチドの3’末端に結合する化合物の生成のために使用され得る、合成手順を示す。図2Cに示されるスキームは、脂質アルデヒドで開始する還元的アミノ化の開始を示し;これは脂質基とオリゴヌクレオチドとの間にアミン結合を生成し(上の図式Bを参照のこと)、出発物質が脂肪酸のカルボン酸、酸無水物または酸塩化物形態である図2Aに示されるスキームとは対照的に、結果アミド結合の形成を生じる(上の図式Aを参照のこと)。図2Bは、3’チオホスホラミデート結合を生成するのに適切なスキームを示す。この例において、アミノグリセロールリンカー配列(O−CH2CH2CH2−NHC(O))−が示されるが、この合成が、このようなリンカーを用いずに、または代替のリンカー配列を用いて、利用され得ることが、理解される。図2Dは、脂質部分がリン酸基(または、X=Sである場合はチオリン酸)を通じてオリゴヌクレオチドの5’末端に結合する化合物の生成のために使用され得る、合成手順を示す。これらの図式において、オリゴヌクレオチドの3’末端はアミノ基として示され、チオホスホラミデート(X=S)化学およびホスホラミデート(X=O)化学の好ましいオリゴヌクレオチド結合と一致する。図2Eは、脂質基で改変された例示的な保護塩基(この場合は、テトラデシルに結合することにより改変されたグアノシン)を示し、それは1つ以上の脂質基が1つ以上の核酸塩基に共有結合するオリゴヌクレオチドの調製のための、標準的なオリゴヌクレオチド合成手順において使用され得る。図2において、以下の略語を適用する: i=Cl−C(O)−R’’/(i−Pr)2NEt、またはHO−C(O)−R’’/C.A、または[C(O)−R’’]2O/(i−Pr)2NEt ii=DMTO−CH2CHO(CEO−P[N(i−Pr)2])−CH2−NHC(O)−R’’/Tetr iii=オリゴヌクレオチド鎖伸長 iv=R’’−HC=O+[H] R=5’−CPG−支持P,N−保護オリゴヌクレオチド R’=脱保護NP−またはNPS−オリゴヌクレオチド R’’=脂質部分L(望ましい場合、リンカーは結合され得る(結合アミノグリセロールリンカーの例としてR’’’を参照のこと)) R’’’=−O−CH2(CHOH)CH2−NHC(O)−R’’ X=O、S;Y=H、またはC(O)−R’’、Z=OまたはNH。
【図2−2】図2は、本発明の化合物のための例示的な合成手順の図式を示す。図2A、図2Bおよび図2Cは、脂質部分がオリゴヌクレオチドの3’末端に結合する化合物の生成のために使用され得る、合成手順を示す。図2Cに示されるスキームは、脂質アルデヒドで開始する還元的アミノ化の開始を示し;これは脂質基とオリゴヌクレオチドとの間にアミン結合を生成し(上の図式Bを参照のこと)、出発物質が脂肪酸のカルボン酸、酸無水物または酸塩化物形態である図2Aに示されるスキームとは対照的に、結果アミド結合の形成を生じる(上の図式Aを参照のこと)。図2Bは、3’チオホスホラミデート結合を生成するのに適切なスキームを示す。この例において、アミノグリセロールリンカー配列(O−CH2CH2CH2−NHC(O))−が示されるが、この合成が、このようなリンカーを用いずに、または代替のリンカー配列を用いて、利用され得ることが、理解される。図2Dは、脂質部分がリン酸基(または、X=Sである場合はチオリン酸)を通じてオリゴヌクレオチドの5’末端に結合する化合物の生成のために使用され得る、合成手順を示す。これらの図式において、オリゴヌクレオチドの3’末端はアミノ基として示され、チオホスホラミデート(X=S)化学およびホスホラミデート(X=O)化学の好ましいオリゴヌクレオチド結合と一致する。図2Eは、脂質基で改変された例示的な保護塩基(この場合は、テトラデシルに結合することにより改変されたグアノシン)を示し、それは1つ以上の脂質基が1つ以上の核酸塩基に共有結合するオリゴヌクレオチドの調製のための、標準的なオリゴヌクレオチド合成手順において使用され得る。図2において、以下の力後が適用する: i=Cl−C(O)−R’’/(i−Pr)2NEt、またはHO−C(O)−R’’/C.A、または[C(O)−R’’]2O/(i−Pr)2NEt ii=DMTO−CH2CHO(CEO−P[N(i−Pr)2])−CH2−NHC(O)−R’’/Tetr iii=オリゴヌクレオチド鎖伸長 iv=R’’−HC=O+[H] R=5’−CPG−支持P,N−保護オリゴヌクレオチド R’=脱保護NP−またはNPS−オリゴヌクレオチド R’’=脂質部分L(望ましい場合、リンカーは結合され得る(結合アミノグリセロールリンカーの例としてR’’’を参照のこと)) R’’’=−O−CH2(CHOH)CH2−NHC(O)−R’’ X=O、S;Y=H、またはC(O)−R’’、Z=OまたはNHの略語を適用する。
【図3】図3および図4は、それぞれ、U251細胞およびDU145細胞における、本発明の化合物のテロメラーゼ活性を阻害する能力を示すグラフである(実施例3の全記載を参照のこと)。これらおよび上記図A、BおよびCは、実施例3で記載され、そして図9に示される化合物である。
【図4】図3および図4は、それぞれU251細胞およびDU145細胞における、本発明の化合物のテロメラーゼ活性を阻害する能力を示したグラフ(実施例3の全記載を参照のこと)。これら図および以下の図A、BおよびCは、実施例3において記載され、そして図9に示される化合物である。
【図5】図5は、本発明の化合物を用いてかまたは用いずに処置した後、ヒト腫瘍異種移植されたマウスのモデルから切り取られるヒト腫瘍細胞で実施されるTRAPアッセイの結果を示すゲルのイメージである。
【図6】図6は、本発明の化合物を用いてかまたは用いずに処置した後、ヒト骨髄腫異種移植片を有するマウスにおける骨髄腫タンパク質の血漿レベルを示すグラフである(実施例5の全記載を参照のこと)。
【図7】図7および図8は、ヒト骨髄腫異種移植片を有するマウスにおける、腫瘍体積、テロメラーゼ活性およびテロメラーゼ長への効果を示すグラフである(実施例6の全記載を参照のこと)。
【図8】図7および図8は、ヒト腫瘍異種移植を有し本発明の化合物を投与または投与しなかったマウスにおける、腫瘍体積、テロメラーゼ活性およびテロメラーゼの長さに対する効果を示したグラフである(実施例6の全記載を参照のこと)。
【図9】図9は、実施例3〜実施例7で使用された、オリゴヌクレオチド成分がチオホスホラミデート結合を有する、化合物A、化合物Bおよび化合物Cの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
(A.定義)
「アルキル基」とは、1個〜20個の炭素原子を有するアルキル基もしくは置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)をいう。低級アルキルとは、代表的にはC〜Cをいう。中級アルキル(intermediate alkyl)は、代表的にはC〜C10をいう。「アシル基」とは、RCOの構造を有する基をいい、ここでRはアルキルである。低級アシルは、Rが低級アルキルである、アシルである。
【0021】
「アルキルアミン」基とは、窒素の結合したアルキル基(例えば、1−メチル1−ブチルアミン(CHCHNHCHCHCH))をいう。
【0022】
「アリール基」とは、5個〜20個の炭素原子を有する芳香族環基(例えば、フェニル、ナフチル、アンスリル(anthryl))をいう。または置換アリール基(例えば、トリル、エチルフェニル、ビフェニリル、などのようなアルキル置換体もしくはアリール置換体基)である。環の中に1個以上の窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子を有する複素環式芳香環基もまた、含まれる。
【0023】
「オリゴヌクレオチド」とは、約2個と約200個との間の連続したサブユニットを有する、リボースおよび/またはデオキシリボースヌクレオシドサブユニットポリマーをいう。上記ヌクレオシドサブユニットは、種々のサブユニット間結合(例えば、ホスホジエステル結合、ホスホトリエステル結合、メチルホスホネート結合、P3’→N5’ホスホラミデート結合、N3’→P5’ホスホラミデート結合、N3’→P5’チオホスホラミデート結合、およびホスホロチオエート結合が挙げられるが、これらに限定されない)によって結合され得る。さらに、「オリゴヌクレオチド」は、当業者に公知である、糖への改変(例えば、2’置換)、塩基への改変(以下の「ヌクレオシド」の定義を参照のこと)、ならびに3’末端および5’末端への改変を含む。オリゴヌクレオチド部分が複数のサブユニット間結合を含むオリゴヌクレオチド部分における実施形態では、各々の結合が同じ化学を用いて形成され得るか、または混合された結合化学が用いられ得る。本明細書中で用いられる場合、用語「ポリヌクレオチドは」は、「オリゴヌクレオチド」と同様の意味を有し、そして「オリゴヌクレオチド」と交換可能に使用される。
【0024】
オリゴヌクレオチドが文字の配列(例えば、「ATGUCCTG」)によって表される場合は常に、ヌクレオチドが左から右に5’→3’の順であると理解される。このようなオリゴヌクレオチドの塩基配列の表現は、オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオシド間サブユニットのいかなる特定の型の使用も示さない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」は、天然のヌクレオシド(2’−デオキシ形態および2’−ヒドロキシル形態(例えば、KombergおよびBaker、DNA Replication、第2版(Freeman、San Francisco、1992)に記載)が挙げられる)、および類似体を含む。ヌクレオシドに関して、「類似体」は、改変された核酸塩基部分(以下の「核酸塩基」の定義を参照のこと)を有する合成ヌクレオシド、および/または改変された糖部分を有するヌクレオシド(例えば、Scheit、Nucleotide Analogs(John Wiley、New York、1980)によりおおむね記載される)を含む。このような類似体は、結合特性(例えば、安定性、特異性、または同様のもの(例えば、UhlmannおよびPeyman(Chemical Reviews、90:543−584、1990)によって開示されるもの)を増強するように設計された合成ヌクレオシドを含む。
【0026】
用語「脂質」は、有機溶媒に可溶であるが、仮にそうであるとしても水にはわずかに溶ける物質を包含するように、本明細書中で広く使用される。用語脂質としては、炭化水素、油、脂肪(例えば、脂肪酸、グリセリド)、ステロール、ステロイド、およびこれらの化合物の誘導体の形態が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい脂質は、脂肪酸およびそれらの誘導体、炭化水素およびそれらの誘導体、ならびにステロール(例えば、コレステロール)である。本明細書中で使用される場合、用語脂質はまた、脂質部分および親水性部分の両方を持つ、両親媒性化合物を含む。
【0027】
脂肪酸は、通常、直鎖に偶数個の炭素原子を含み(一般に、12個〜24個の炭素)、そして飽和でも不飽和でもあり得、種々の置換基を含み得るか、または置換基を含むように改変される。単純にするために、用語「脂肪酸」はまた、脂肪酸の誘導体(例えば、図2A(例えば、図1A〜図1Eに示される化合物を参照のこと)で示される合成スキームにより生成される脂肪族アミド)を包含する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「炭化水素」は、共有結合で結びついた水素および炭素のみから成る化合物を包含する。用語「炭化水素」は、鎖式(脂肪族)炭化水素(直鎖炭化水素および分枝鎖炭化水素を含む)、および飽和炭化水素ならびにモノ不飽和炭化水素およびポリ不飽和炭化水素を包含する。この用語はまた、1個以上の芳香環を含む炭化水素も、包含する。
【0029】
用語「置換(置換された)」とは、1つの原子が別の原子と交換されることによって改変されている化合物をいう。特に、この用語「置換」は、とりわけ1個以上の水素原子がフッ素で置換されるハロゲン化炭化水素およびハロゲン化脂肪酸に関連して用いられる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「核酸塩基」は、(i)代表的なDNAおよびRNA核酸塩基(ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、およびシトシン)、(ii)改変された核酸塩基または核酸塩基類似体(例えば、5−メチル−シトシン、5−ブロモウラシル、またはイノシン)、および(iii)核酸塩基類似体を含む。核酸塩基類似体は化学物質であり、その分子構造は、代表的なDNA塩基またはRNA塩基の分子構造を模倣している。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「ピリミジン」は、天然のヌクレオシド中に存在するピリミジン(シトシン、チミン、およびウラシルを含む)、およびそれらの類似体(例えば、オキシ、メチル、プロピニル、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ハロ、および置換基を含むもの)を意味する。本明細書中で使用される場合、この用語は、保護基と結合したピリミジン(例えば、N−ベンゾイルシトシン)を、さらに含む。さらなるピリミジン保護基は、BeaucageおよびIyer(Tetrahedron 48:223−2311、1992)によって開示される。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「プリン」は、天然のヌクレオシド中に存在するプリン(アデニン、グアニン、およびヒポキサンチンが挙げられる)、およびそれらの類似体(例えば、オキシ、メチル、プロピニル、メトキシ、ヒドロキシル、アミノ、チオ、ハロ、および置換基を含むもの)を意味する。本明細書中で使用される場合、この用語は保護基と結合したプリン(例えば、N−ベンゾイルグアニン、N−イソブチリルグアニン、N−ベンゾイルアデニンなど)を、さらに含む。さらなるプリン保護基は、BeaucageおよびIyerによって開示されている(上で引用)。
【0033】
本明細書中で使用される場合、化学名の成分としての用語「保護」とは、化合物の特定の部分として技術的に認識(art−recognized)される保護基をいい、例えば、ヌクレオシドに関連して「5’−保護−ヒドロキシル」としては、トリフェニルメチル(すなわち、トリチル)、p−アニシルジフェニルメチル(すなわち、モノメトキシトリチルもしくはMMT)、ジ−p−アニシルフェニルメチル(すなわち、ジメトキシトリチルもしくはDMT)、などが挙げられる。技術的に認識される保護基としては、以下の参考文献において記載されるものが挙げられる:Gait編、Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach(IRL Press、Oxford、1984);AmarnathおよびBroom、Chemical Reviews、77:183−217、1977;Ponら、Biotechniques、6:768−775、1988;Ohtsukaら、Nucleic Acids Research、10:6553−6570、1982;Eckstein編、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach(IRL Press、Oxford、1991);GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、(John Wiley & Sons、New York、1991);Narang編、Synthesis and Applications of DNA and RNA(Academic Press、New York、1987);BeaucageおよびIyer(上で引用)、などの参考文献。
【0034】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、その慣用的な意味において、クロロ置換基、ブロモ置換基、フルオロ置換基、またはヨード置換基をいうように使用される。本明細書中で記載および特許請求される化合物において、ハロゲン置換基は、一般に、フルオロ、ブロモ、またはクロロであり、好ましくは、フルオロまたはクロロである。
【0035】
(B.発明化合物の設計)
本発明の化合物は、以下の式:
O−(x−L)
により表され得、Oはオリゴヌクレオチドを表し、xは任意のリンカー基であり、Lは脂質部分を表し、そしてnは1〜5の整数である。
【0036】
したがって、上記化合物の設計は、2つの実体、OおよびLの選択、そしてそれらの実体の間の構造的結合の決定を必要とし、それらは任意のリンカー基xに関わり得る。
【0037】
(Oの選択)
オリゴヌクレオチド成分Oは、テロメラーゼのRNA成分に結合することによりテロメラーゼ酵素の阻害に影響するものがこの成分である、という点で、化合物の「エフェクター」成分として考えられ得る。したがって、Oの配列は、テロメラーゼRNAの配列(これは、配列番号1に示される)に対して相補的である領域を含むように選択される。テロメラーゼRNA成分に対して相補的な領域は、理論上は上記テロメラーゼRNAの任意の部分を標的とし得るが、上記テロメラーゼRNAの特定の領域が、阻害性オリゴヌクレオチドのための好ましい標的である。1つの好ましい標的領域は、配列番号1のヌクレオチド30〜67にわたる領域であり、これは「テンプレート領域」(配列番号1のヌクレオチド46〜56にわたる配列5’−CUAACCCUAAC−3’の11ヌクレオチド領域)を含む。上記テンプレート領域は、テロメラーゼが染色体末端へ付加するテロメア反復配列を特定するように機能し、テロメラーゼ酵素の活性に不可欠である作用をする(Chenら、Cell、100:503−514、2000; Kimら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 98(14):7982−7987、2001を参照のこと)。したがって、上記テンプレート領域の全てまたは一部に対して相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド部分を含む本発明の化合物が、特に好ましい。別の好ましい標的領域は、hTR(Pruzanら、Nucl.Acids Research、30:559−568、2002を参照のこと)のヌクレオチド137〜179にわたる領域である。この領域内では、141〜153にわたる配列が、好ましい標的である。PCT公開 WO 98/28442において、テロメラーゼを阻害するための、長さが少なくとも7ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドの使用が記載されており、そのオリゴヌクレオチドは、テンプレート領域の外側のhTR配列のアクセス可能な部分(hTRのヌクレオチド137〜196、290〜319、および350〜380が挙げられる)に対して相補的であるように設計される。
【0038】
hTR配列を標的とするOの領域は、好ましくは対応するhTR配列に対して正確に相補的である。特定の事例ではミスマッチが許容され得るが、ミスマッチは結果として生じるオリゴヌクレオチド結合体の、特異性および活性を減少させると予期される。したがって、特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドOの塩基配列は、テロメラーゼRNAに対して正確に相補的である少なくとも5ヌクレオチドの配列を含むように選択され、そして、テロメラーゼRNAに対して正確に相補的な、少なくとも8ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも13ヌクレオチド、または少なくとも15ヌクレオチドのような、増加した長さの相補配列使用される場合、増強されたテロメラーゼ阻害が得られ得る。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドの配列は、テロメラーゼRNA配列に対して正確に相補的な、少なくとも5〜20ヌクレオチド、少なくとも8〜20ヌクレオチド、少なくとも10〜20ヌクレオチド、または少なくとも10〜15ヌクレオチドを含む。最適なテロメラーゼ阻害活性は、オリゴヌクレオチドOの全長がテロメラーゼRNAに対して相補的であるように選択された場合に、得られ得る。しかしながら、オリゴヌクレオチド成分の全長が標的領域に対して必ずしも正確である必要はなく、そしてオリゴヌクレオチド配列は標的領域に対して相補的でない配列を含み得る。このような領域は、例えば、化合物に他の特性を付与するために付加され得る;例えば、精製を容易にする配列である。オリゴヌクレオチド成分Oが標的領域に対して相補的でない配列を含む場合、このような領域は、代表的には、5’末端または3’末端の一方もしくは両方に位置づけられる。例えば、正確な相補性の領域がテンプレート領域を標的する事例では、テロメラーゼ様(Gに富む)配列がその5’末端に結合される、正確に相補的な短い(5〜8ヌクレオチド)領域で、効果的なテロメラーゼ阻害が達成され得る。
【0039】
ヒトテロメラーゼRNAに対して相補的であり、その配列がオリゴヌクレオチド成分Oの一部として含まれ得るか、またはオリゴヌクレオチド成分O全体として使用され得る例示的な配列は、以下が挙げられる:
【0040】
【表1】


【0041】
上記O成分の合成で使用されるヌクレオシド間結合の型の選択は、利用可能な化学(例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ホスホジエステル結合;ホスホトリエステル結合;メチルホスホネート結合;P3’→N5’ホスホラミデート結合;N3’→P5’ホスホラミデート結合;N3’→P5’チオホスホラミデート結合;およびホスホロチオエート結合)のうちのいずれかからなされる。
【0042】
好ましい実施形態では、上記オリゴヌクレオチド成分Oは、少なくとも1つのN3’→P5’ホスホラミデート結合またはN3’→P5’チオホスホラミデート結合を有し、これらの結合は、以下の構造:
3’−[−NH−P(=O)(−XR)−O−]−5’
およびそれらの薬学的に受容可能な塩により表され得、ここでXは、OまたはSであり、Rは、水素、アルキル、およびアリールからなる群より選択される。
【0043】
一般的に、しかし必然的ではなく、オリゴヌクレオチドO内のすべてのヌクレオシド間結合は同様の型となり得るが、オリゴヌクレオチド成分は、異なる結合の混合を使用して合成され得る。脂質部分が上記オリゴヌクレオチドの3’末端に結合される場合、その結合の合成は、オリゴヌクレオチド上の3’アミノ基により、大いに促進される。それゆえ、たとえ好ましい化学のうちの1つが選択されない場合でも、3’アミノ基の付加は有利である。
【0044】
(Lの選択)
本発明の化合物は、脂質成分と結合していない対応するオリゴヌクレオチドよりも、細胞内でテロメラーゼ阻害を生じるのに有効である。脂質成分Lは、とりわけ細胞膜を通じる通過を促進することにおいて、化合物の細胞取り込みを増強するように機能すると考えられる。このことが生じる機構は、完全には解明されていないが、1つの可能性は、脂質成分が、単分子形態もしくは凝集(ミセル)形態のいずれかとしてその後の内在化を使って、化合物が細胞膜に結合するのを容易にさせ得る。しかしながら、正確な機構の理解は、本発明が使用されるのには必要とされない。
【0045】
脂質成分は、非改変オリゴヌクレオチドと比較して、増強された細胞取り込みを提供する任意の脂質または脂質誘導体であり得る。好ましい脂質は、炭化水素、脂肪(例えば、グリセリド、脂肪酸、および脂肪酸誘導体(例えば、脂肪アミド))、ならびにステロールである。脂質成分が炭化水素である場合、L成分は、置換もしくは非置換の環状炭化水素または脂肪族直鎖もしくは分枝炭化水素であり、これらは飽和もしくは不飽和であり得る。好ましい例は、直鎖非分枝炭化水素であり、それは完全に飽和もしくはポリ不飽和である。炭化水素鎖の長さは、C〜C30で変わり得るが、炭素鎖がC〜C22で、最適なテロメラーゼ阻害が得られ得る。飽和炭化水素(アルカン)の好ましい例は、以下:
【0046】
【表2】

に列挙される。
【0047】
炭化水素のモノ不飽和形態およびポリ不飽和形態(アルケンおよびポリエン(例えば、アルカジエンおよびアルカトリエン))もまた選択され、1個〜3個の二重結合を有する化合物が好ましいが、より多くの二重結合を有する化合物も用いられ得る。アルキン(1個以上の三重結合を含むもの)およびアルケニン(三重結合および二重結合)もまた、利用され得る。利用され得る一般的なモノ不飽和炭化水素およびポリ不飽和炭化水素の例としては、図1M、図1Lおよび図1Oで示されるものが挙げられる。
【0048】
炭化水素の置換形態が、本発明の化合物で用いられ得、インビボおよびインビトロで不活性な置換基を伴うことが、好ましい。特に好ましい置換基は、フッ素である。ポリフッ素化炭化水素の例示的な一般構造としては、以下:
CF(CF−(CH−(ここで、mは少なくとも1、好ましくは少なくとも2であり、そしてn=1〜30((例えば、フロオロトリデカン:CF(CF(CH));および
CH(CH(CF(CH−(ここで、a、b、およびcは、独立して1〜30である)
が挙げられる。
【0049】
図1Wは、オリゴヌクレオチドの5’末端に結合した、ポリフッ素化炭化水素の例を示す。
【0050】
他の適切な脂質成分としては、脂肪酸および脂肪酸誘導体、グリセリドならびにステロール(例えば、コレステロール)のような、より複雑な脂質が挙げられる。脂肪酸およびそれらの誘導体は、完全に飽和しているか、もしくはモノ不飽和またはポリ不飽和であり得る。炭素鎖の長さは、C〜C30で変わり得るが、C〜C22の炭素鎖で、最適なテロメラーゼ阻害が得られ得る。飽和脂肪酸の好ましい例は、以下:
【0051】
【表3】

に、列挙される。
【0052】
脂肪酸のモノ不飽和形態もしくはポリ不飽和形態もまた用いられ得、1個〜3個の二重結合を有する化合物が好ましいが、より多くの二重結合を有する化合物も用いられ得る。利用され得る一般的なモノ不飽和脂肪酸およびポリ不飽和脂肪酸の例としては、以下:
【0053】
【表4】

が、挙げられる。
【0054】
炭素鎖内に1個以上の三重結合のある脂肪酸および(分枝した脂肪酸も同様)もまた、本発明の化合物において用いられ得る。脂肪酸の置換形態が、本発明の化合物で用いられ得る。炭化水素基と同様に、インビボおよびインビトロで不活性な置換基が好ましく、フッ素は特に好ましい。ポリフッ素化誘導体の例示的な一般構造は、以下:
CF(CF−(CHCO−;および
CH(CH(CF(CHCO−
が挙げられ、ここで、
mは少なくとも1、好ましくは少なくとも2であり、そしてn=1〜30であり、
a、b、およびcは、独立して、1〜30
である。
【0055】
脂肪酸のポリフッ素化誘導体を有する本発明の化合物の例は、図1Uおよび図1Vに示される。
【0056】
代表的に、1〜5の間のL成分(n=1〜5)は、必要に応じてリンカーを介してO成分に共有結合する。より一般的には、1つまたは2つのL成分が、利用される(n=1または2)。1つより多いL成分がO成分に結合する場合、各々のL成分は独立して選択される。
【0057】
L部分として特定の炭化水素を有すると記載される本発明の化合物と、特定の脂肪酸(特定の炭化水素と同じ数の炭素原子を含む)を有すると記載される化合物とは、密接に関係し、そして構造においてL部分がオリゴヌクレオチドに結合する結合の性質のみが異なる(これは、言い換えると、その化合物を生成するために使用する合成手順である)と理解される。例えば、以下により詳細に記載されるように、オリゴヌクレオチド(ホスホラミデートもしくはチオホスホラミデートのヌクレオシド間結合を有する)の3’アミノ末端に結合するL部分を有する化合物が合成される場合、出発物質としての脂肪酸のアルデヒド形態(脂肪アルデヒド)の使用は、脂質鎖とオリゴヌクレオチドの間でアミン結合の形成を生じ、その結果、脂質基は炭化水素として現れる。対照的に、同様の脂肪酸のカルボン酸形態、酸無水物形態もしくは酸塩化物形態の使用は、アミド結合の形成を生じ、その結果、脂質基は脂肪酸誘導体、特にこの例においては脂肪アミド(上述の定義の節に記載されるように、簡略化のために、用語「脂肪酸」は、結合したL基を記載する場合、脂肪アミドを含む脂肪酸誘導体を含むように、本明細書中で広く使用される)として現れる。これは、以下の図式(および図2Aならびに図2C):
【0058】
【化5】

で図示され、これはC14脂質成分に結合するホスホラミデートオリゴヌクレオチドの3’アミノ末端を示す。図式Aにおいて、Lはテトラデカン酸(ミリスチン酸)であり、L基とO基との間の結合は、アミドである。図式Bにおいて、Lはテトラデカンであり、そしてL基とO基との間の結合は、アミンである。
【0059】
(O成分とL成分との結合)
O成分とL成分との間の結合は、直接的な結合であるか、または任意のリンカー部分xを介した結合であり得る。リンカー基は、化合物の化学合成を容易にするのに役立ち得る(以下の合成の節で議論される)。リンカー基がO成分とL成分との結合を仲介しなくても、オリゴヌクレオチド成分O上に、L成分が共有結合し得る複数の部位がある。適切な結合点としては、5’末端および3’末端、1個以上の糖環(sugar ring)、ヌクレオシド骨格、およびオリゴヌクレオチドの核酸塩基が挙げられる。代表的には、L部分はオリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端に結合する。
【0060】
L成分が3’末端に結合する場合、その結合は、3’置換基に対して直接的であり得、この3’置換基は好ましいホスホラミデートおよびチオホスホラミデートオリゴヌクレオチドの場合では、3’アミノ基(例は、図1A〜図1Cに示される)であり、そして他の場合(例は、従来のホスホジエステルオリゴヌクレオチド)では、3−ヒドロキシ基である。あるいは、L部分は3’結合リン酸基を介して結合し得る(例は、図1Zに示され、その例では、ヘキサデカン炭化水素は、O−アルキルリンカーを通じて、チオホスホラミデートオリゴヌクレオチドの3’リン酸に結合する)。L部分が5’末端に結合する場合、L部分は、代表的には5’結合リン酸基を通じて結合する(図1F(アミノグリセロールリンカーの使用を示す)、および図1G(ビス−アミノグリセロールリンカーの使用を示す)を参照のこと)。O部分の塩基への結合は、任意の適切な原子(例えば、グアノシンのNアミノ基(図1Q〜図1Rを参照のこと))を通してであり得る。n>1のとき、複数の脂質部分がO成分に結合し、独立して選択されるL成分が、任意の適切な部位に結合し得る。例えば、1つのL基が各末端に結合しても、種々のL基が塩基に結合しても、2つ以上のL基が一方の末端で結合してもよい(図1E、図1J、図1Kを参照のこと)。
【0061】
任意のリンカー成分xは、化合物のO成分とL成分とを結合させるために、使用され得る。リンカーが用いられる場合、それは図2に対する説明文に記載されるように、合成手順に組み込まれる。適切なリンカー基の例としては、アミノグリセロール型リンカーおよびO−アルキルグリセロール型リンカーが挙げられ、これらは、それぞれ、以下の一般式:
【0062】
【化6】

によって、示され得る:
ここで、R’=H、OH、NHまたはSHであり;Y=O、SまたはNRであり;R=Hまたはアルキルであり;そしてnおよびmは1〜18の間の独立した整数である。
【0063】
適切なリンカーの具体的な例は、アミノグリセロールリンカー、ビス−アミノグリセロールリンカー、およびO−アルキルグリセロールリンカーであり、アミノグリセロールリンカーについては、R’=OHであり、Y=Oであり、そしてmおよびnは、それぞれ1であり:
【0064】
【化7】

ビス−アミノグリセロールリンカーについては、R’=OHであり、Y=NHであり、そしてmおよびnはそれぞれ1であり:
【0065】
【化8】

O−アルキルグリセロールリンカーについては、R=Hである:
【0066】
【化9】

【0067】
(C.本発明の化合物の例)
本発明の化合物の例は、図1に示される。簡単にするために、オリゴヌクレオチドOの1塩基のみ示され、それとともに一般的な塩基Bで示され、そしてRはオリゴヌクレオチドの残りの部分に対する結合点を示す。3’末端に結合する化合物は、3’窒素とともに示され、この3’窒素は、好ましいチオホスホラミデートおよびホスホラミデート化学と一致する。図1A〜図1Lは、5’末端もしくは3’末端に結合した飽和脂質基を有する化合物を示す。図1M〜図1Pは、モノ不飽和脂質基またはポリ不飽和脂質基を有する化合物を示す。図1Q〜図1Rは、塩基を通じてオリゴヌクレオチド(この場合、グアノシン)と結合した脂質基を有する化合物を示す。図1Sおよび図1CCは、それぞれ、3’結合コレステロール脂質部分および5’結合コレステロール脂質部分を示す。図1Uおよび図1Vは、5’結合ポリフッ素化置換脂肪酸誘導体を示し、そして図1Wは、5’結合ポリフッ素化炭化水素を示す。図1X〜図1Zは、酸素を含む、5’脂質部分を示す。示される脂質基の各々について、本明細書で使用される命名法は、以下:
図1A: 3’−ミリストイルアミド
図1B: 3’−パルミトイルアミド
図1C: 3’−ステアロイルアミド
図1D: 3’−パルミトイルアミド−プロピル−チオホスフェート
図1E: 3’−リシル−ビス−ステアロイルアミド
図1F: 5’−パルミトイルアミド−アミノグリセロール−チオホスフェート
図1G: 5’−パルミトイルアミド−ビス−アミノグリセロール−チオホスフェート
図1H: 5’−ステアロイルアミド−アミノグリセロール−チオホスフェート
図1I: 3’−ドデシル
図1J: 3’−ビス−ドデシル
図1K: 3’−ビス−デシル
図1L: 3’−エイコサノイルアミド
図1M: 3’−オレイニルアミド
図1N: 3’−リノレニルアミド
図1O: 3’−リノレイルアミド
図1P: 3’−トリチル
図1Q: N−テトラデシルグアノシン
図1R: N−オクタデシルグアノシン
図1S: 3’−コレステリルアミド−アミノグリセロール−チオホスフェート
図1T: 5’−(12−OH)−ステアロイル−チオホスフェート
図1U: 5’−C11−テフロン(登録商標)−チオホスフェート
図1V: 5’−C13−テフロン(登録商標)−チオホスフェート
図1W: 5’−OH−C10−テフロン(登録商標)−チオホスフェート
図1X: 5’−OH−パルミチル−チオホスフェート
図1Y: 5’−バチル−チオホスフェート
図1Z: 3’−バチル−チオホスフェート
図1AA: 3’−パルミトイルアミド−アミノグリセロール−チオホスフェート
図1BB: 3’−チオクチルアミド
図1CC: 5’−コレステリルアミド−アミノグリセロール−チオホスフェート
図1DD: 5’−(2−OH)−ヘキサデカノール−チオホスフェート
である。
【0068】
(D.本発明の化合物の合成)
本発明の化合物のオリゴヌクレオチド成分は、選択される化学の型についての標準的なプロトコルを使用して、合成され得る。好ましいN3’→P5’ホスホラミデート化学およびN3’→P5’チオホスホラミデート化学を有するオリゴヌクレオチドの合成法は、それぞれ、McCurdyら、(1997)Tetrahedron Letters、38:207−210、およびPongracz & Gryaznov、(1999)Tetrahedron Letters、49:7661−7664に記載される。
【0069】
種々の合成アプローチが、選択される結合の性質に依存して脂質部分Lをオリゴヌクレオチドに結合させるように使用され得る。そのアプローチとしては、Mishraら、(1995)Biochemica et Biophysica Acta、1264:229−237、Sheaら、(1990)Nucleic Acids Res.18:3777−3783、およびRumpら、(1998)Bioconj.Chem.9:341−349に記載されるアプローチが挙げられる。本発明の化合物の合成(脂質部分がオリゴヌクレオチドの5’末端もしくは3’末端に結合する)は、適切な末端(もっとも代表的にはアミノ基)において適切な官能基の使用を通じて達成され得、その官能基はカルボン酸、酸塩化物、酸無水物、および活性エステルと反応され得る。チオール基もまた、官能基として適切である(Kupiharら、(2001)Bioorganic and Medicinal Chemistry 9:1241−1247を参照のこと)。異なる鎖長のアミノ改変物質およびチオール改変物質の両方が、オリゴヌクレオチドの合成のために市販されている。N3’→P5’ホスホラミデート結合およびN3’→P5’チオホスホラミデート結合を有するオリゴヌクレオチドは、(もっとも慣用的なオリゴヌクレオチド化学で見出される3’ヒドロキシ基ではなく)3’アミン基を含み、そしてそれゆえ、これらのオリゴヌクレオチドは、上記オリゴヌクレオチドの3’末端へ脂質基を結合するための、独特の機会を提供する。
【0070】
脂質基を、好ましいN3’→P5’ホスホラミデート化学およびN3’→P5’チオホスホラミデート化学を用いてオリゴヌクレオチドの末端に結合させるために、種々のアプローチが使用され得る。本発明の結合化合物を生成するための合成スキームの例は、図2に示される。3’末端への結合のために、結合化合物は、完全に保護された固体支持体に結合されたオリゴヌクレオチドの遊離の3’アミノ基と、対応する酸無水物とを反応させ、その後アンモニアで脱保護し、精製することによって合成され得る。あるいは、支持体固定されたオリゴヌクレオチドの遊離の3’アミノ基への、カップリング剤(例えば、カルボジイミド、HBTUまたはヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム)を使用した脂質のカルボン酸のカップリングが、脂質基を結合させるために、使用され得る。これらの2つの方法により、脂質とオリゴヌクレオチドとの間にアミド結合が形成される。脂質はまた、鎖伸長の間にオリゴヌクレオチドに結合した脂質のホスホラミダイト誘導体を使用して、オリゴヌクレオチド鎖へ結合され得る。このアプローチは、脂質とオリゴヌクレオチドとを接続する、ホスホラミデート結合もしくはチオホスホラミデート結合を生じる(プロピル−パルミトイル化合物および2−ヒドロキシ−プロピル−パルミトイル化合物により例証される)。さらに別のアプローチは、完全に保護された支持体に結合されたオリゴヌクレオチドの遊離の3’アミノ基と、適切な脂質アルデヒドとの反応に、続いてアミン結合を生成する水酸化シアノホウ素ナトリウムによる還元を含む。
【0071】
5’末端への結合のために、オリゴヌクレオチドは改変された脂質を含む固体支持体を使用して合成され得、続いて5から3’方向でオリゴヌクレオチドが合成される(Pongracz & Gryaznov(1999)に記載される)。上記改変された支持体の例は、以下の図式C:
【0072】
【化10】

において提供される。この例において、n=14の場合、脂肪酸はパルミチン酸である:3−アミノ−1,2−プロパンジオールと塩化パルミトイルとの反応に続いて、ジメトキシトリチル化およびスクシニル化により、固体支持体に結合するために使用される中間体が提供される。Rは、長鎖アルキルアミン微細孔性ガラスである。
【0073】
(E.テロメラーゼ阻害アッセイ)
本発明の結合体は、テロメラーゼ酵素活性および/またはテロメラーゼ活性を有する細胞の増殖を、阻害もしくは低下せるために使用され得る。これらに関連して、酵素活性もしくは細胞増殖の阻害または低下とは、酵素または細胞が結合体で処理されていない対照実験と比較して、測定された活性がより低いレベルであることをいう。特定の実施形態において、測定された活性の阻害もしくは低下は、少なくとも10%の低下もしくは阻害である。当業者は、少なくとも20%、50%、75%、90%または100%の測定された活性の低下または阻害が、特定の適用に対して好ましくあり得ることを理解する。本発明の化合物のテロメラーゼを阻害する能力は、無細胞アッセイ(生化学的アッセイとして言及される)および細胞中で決定し得る。
【0074】
テロメラーゼ活性を測定するための方法、および化合物のテロメラーゼを阻害する活性を決定するためのこのような方法の使用は、周知である。例えば、TRAPアッセイは、細胞抽出物系においてテロメラーゼ活性を測定するための標準的なアッセイ方法であり、そしてそれは、テロメラーゼを阻害する化合物の探索において広く用いられている(Kimら、Science 266:2011、1997;Weinrichら、Nature Genetics 17:498、1977)。TRAPアッセイは、テロメラーゼ基質またはプライマーへのヌクレオチド付加によって形成される伸長産物(ポリヌクレオチド)へ取り込まれた、放射活性ヌクレオチドの量を測定する。取り込まれた放射能は、放射活性産物が分離されるゲルに曝した検出スクリーン(例えば、ホスホリマガー(Phosphorimager)スクリーン)におけるバンドの強度として、測定され得る。TRAPアッセイは、米国特許第5,629,154号、同第5,837,453号、および同第5,863,726号においても詳細に記載されており、そしてテロメラーゼ阻害化合物の活性の試験における使用は、WO 01/18015を含む種々の刊行物に記載されている。加えて、以下のキットは、テロメラーゼ活性を測定するための研究目的用に市販されている:TRAPeze(登録商標)XK Telomerase Detection Kit(カタログ s7707;Intergen Co.、Purchase NY);およびTelo TAGGG Telomerase PCR ELISA plus(カタログ 2,013,89;Roche Diagnostics、Indianapolis IN)。
【0075】
生化学的アッセイにおいて、化合物がテロメラーゼを阻害する能力を測定するために好ましいプロトコルは、「フラッシュプレートアッセイ(Flashplate assay)」と称される、直接的な(非PCRベースの)無細胞テロメラーゼアッセイであり、Asaiら、Cancer Research、63:3931−3939(2003)に記載される。
【0076】
本発明の化合物が細胞中でテロメラーゼを阻害する能力は、限定された時間の間、上記化合物をテロメラーゼを発現する細胞とともにインキュベートし、次いで細胞質抽出物におけるテロメラーゼ活性を決定することにより決定され得る。細胞ベースのアッセイのために好ましいプロトコルは、Asaiら(2003)において記載される、細胞ベースのテロメラーゼアッセイである。このようなアッセイに適切な、テロメラーゼを発現する腫瘍細胞株としては、HME50−5E ヒト乳房上皮細胞(Dr.Jerry Shay(University of Texas Southwestern Medical Center)により提供される)、卵巣腫瘍細胞株 OVCAR−5(MIISB、Milan)ならびにSK−OV−3(American Type Culture Collection、ATCC)、ヒト腎臓癌 Caki−1細胞(Japanese Collection of Research Biosources、JCRB)、ヒト肺癌 1549細胞(ATCC)、ヒト類表皮癌 A431細胞(JCRB)、およびヒト前立腺癌 DU145細胞(ATCC)が挙げられる。
【0077】
(F.細胞増殖アッセイ)
本発明の化合物の重要な治療用適用は、テロメラーゼを発現する細胞、特に腫瘍細胞の増殖の阻害である。細胞内でテロメラーゼ活性を阻害する本発明の化合物は、他の公知のテロメラーゼ阻害化合物のように(テロメラーゼ陽性細胞株の危機を誘発し)、細胞増殖の中止および死をもたらす。しかしながら、重要であるのは、テロメラーゼを発現しない正常なヒト細胞(例えば、繊維芽細胞起源のBJ細胞)において、本発明の化合物で処理することにより、危機も他の毒性も誘発されないことである。化合物が腫瘍細胞の増殖を特異的に阻害する能力は、インビトロで腫瘍細胞株を使用してか、またはインビボでの異種移植動物モデルにおいて、アッセイされ得る。
【0078】
このような増殖曲線アッセイのために好ましいプロトコルは、Asaiら(2003)に記載される、短期間の細胞生存性アッセイ(cell viability assay)である。治療用適用のために本発明の化合物を選択することにおいて、化合物がテロメラーゼを発現しない正常な細胞において、約10μM未満の濃度で有意な細胞毒性効果を生じないことが好ましい。
【0079】
本発明の化合物がインビボで腫瘍細胞の増殖を阻害する能力は、確立されたヒト腫瘍の異種移植モデルを使用して確認され得、このモデルでは、その試験化合物が腫瘍部位へ直接投与されるかまたは全身投与され、そしてその後、腫瘍の増殖が、続いて物理的に測定される。本発明の化合物で処置した動物は、平均して、腫瘍塊が最初の投薬後の一定期間の間増大し得るが、処置を続けるとともに、塊が縮小し始めることが予期される。対照的に、処置されない対照マウスは、腫瘍塊が増殖し続けることが予期される。適切なインビボ腫瘍異種移植アッセイの好ましい例は、Asaiら(2003)に記載される。他の例は、Scorskiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:3966−3971(1997)およびDammら、EMBO J.、20:6958−6968(2001)に記載される。
【0080】
(G.本発明の化合物の処方)
本発明は、テロメラーゼ活性を特異的および強力に阻害する化合物を提供し、それゆえ、それはテロメラーゼ陽性細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖を阻害するために使用され得る。極めて多種多様な癌細胞(皮膚、結合組織、脂肪、乳房、肺、胃、膵臓、卵巣、子宮頚部、子宮、腎臓、膀胱、結腸、前立腺、中枢神経系(CNS)、網膜および血液原生腫瘍(例えば、骨髄腫、白血病およびリンパ腫)の癌由来の細胞が挙げられる)が、テロメラーゼ陽性であることが示されている。
【0081】
したがって、本明細書で提供される化合物は、広範囲の悪性腫瘍を処置するのに広く有用である。さらに重要なことに、本発明の化合物は、悪性腫瘍と正常な細胞とを高度に区別し、分裂細胞を無差別に殺す薬剤に頼るもっとも最近の化学療法レジメンに伴って存在する、多くの有害な副作用を回避する、処置提供するのに有効であり得る。さらに、本発明の化合物は、同等のしていないオリゴヌクレオチドよりもより強力であり、それは本発明の化合物がより低い用量で投与され得、高められた安全性および処置の費用における有意な減少を提供することを意味する。したがって、本発明の1つの局面は、患者における癌の処置方法であり、上記患者に治療有効量の本発明の化合物を投与する工程を包含する。テロメラーゼインヒビター(本発明の化合物を含む)は、他の癌の処置のアプローチ(原発腫瘍の外科的切除、化学療法剤および放射線処置を含む)と併用して用いられ得る。
【0082】
治療用適用のために、本発明の化合物は、薬学的に受容可能なキャリアを用いて治療有効量で処方される。1つ以上の本発明の化合物(例えば、異なるL成分もしくはO成分を有する)が、任意の所定の処方物に含まれ得る。薬学的なキャリアは、固形もしくは液状であり得る。液状キャリアは、液剤、乳剤、懸濁剤および加圧組成物の調製物において使用され得る。上記化合物は、薬学的に受容可能な液状の賦形剤中に、溶解もしくは懸濁される。オリゴヌクレオチド調製物の非経口投与のための液状キャリアの適切な例としては、水(これは添加物(例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルナトリウムセルロース溶液)を含み得る)、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール(例えば、グリコール))ならびにそれらの誘導体、および油状物(例えば、分画したヤシ油およびラッカセイ油)が挙げられる。上記液状キャリアは、以下に挙げられる他の適切な薬学的添加物を含み得るが、これらに限定されない:可溶化剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、増粘剤、顔料、粘性調節因子、防腐剤、安定剤、および浸透圧調節因子。
【0083】
化合物の非経口投与のために、上記キャリアはまた、油状のエステル(例えば、オレイン酸エチルおよびイソプロピルミリステート)であり得る。滅菌したキャリアは、非経口投与用の滅菌した液状形態組成物において有用である。
【0084】
滅菌した液状の薬学的な組成物、溶液もしくは懸濁液は、例えば、腹腔内注射、皮下注射、静脈内注射、もしくは局所注射によって利用され得る。オリゴヌクレオチドもまた、脈管内に、もしくは脈管ステントを介して、投与され得る。
【0085】
加圧組成物のための液状キャリアは、ハロゲン化炭化水素もしくは他の薬学的に受容可能な噴霧剤であり得る。このような加圧組成物は、吸入による送達のために脂質被包性であり得る。鼻腔内もしくは気管支内への吸入またはガス注入による投与のために、オリゴヌクレオチドは、水溶液もしくは部分的に水溶性の溶液に配合され、それは結果としてエーロゾルの形態で利用され得る。
【0086】
化合物は、活性化合物を含む薬学的に受容可能なビヒクルを用いて配合することにより、液剤、クリーム、またはローション剤として局所投与され得る。
【0087】
本発明の薬学的組成物は、任意の受容可能な用量(カプセル剤、錠剤、粉剤、もしくは顆粒剤中の処方物、および水または非水性媒体中の懸濁剤もしくは液剤が挙げられるが、これらに限定されない)で経口投与され得る。本発明のオリゴヌクレオチドを含む、薬学的組成物および/または処方物は、キャリア、潤滑剤、希釈剤、増粘剤、香料添加剤、乳化剤、分散剤または結合剤を含み得る。経口使用のための錠剤の場合は、一般に使用されるキャリアはラクトースおよびコーンスターチを含む。潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、一般に添加される。カプセル形態での経口投与について、有用な賦形剤としては、ラクトースおよび乾燥させたコーンスターチが挙げられる。経口の使用のために水性懸濁液が必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。望ましい場合、特定の甘味剤、香料添加剤、または着色剤もまた、添加され得る。
【0088】
本発明の化合物は細胞浸透および組織浸透について優れた特性を有するが、それらはさらに大きな利益を提供するように(例えば、リポソームキャリアにおいて)処方され得る。細胞取り込みを促進させるためのリポソームの使用は、例えば、米国特許第4,897,355号および同第4,394,448号に記載される。多数の刊行物において、リポソームの処方物および調製物が記載されている。化合物はまた、付加的な浸透エンハンサー(例えば、上述の脂質部分の非結合形態、脂肪酸およびそれらの誘導体を含む)と混合されることにより、処方され得る。例としては、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、ジカプリン酸塩、トリカプリン酸塩、レチノール酸塩(recinleate)、モノオレイン(別称 1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アリキドン酸(arichidonic acid)、グリセリル 1−モノカプリン酸塩、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、モノグリセリド、ジグリセリドおよびそれらの生理学的に受容可能な塩(例えば、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、リノレン酸塩、など)が挙げられる。
【0089】
1つ以上の浸透増強剤を含む複合処方物が、使用され得る。例えば、胆汁酸塩は、複合処方物をなすために脂肪酸と組み合わせて使用され得る。例示的な組み合わせとしては、ケノデオキシコール酸(CDCA)(一般的には、約0.5%〜2%の濃度で使用される)と、カプリン酸ナトリウムもしくはラウリル酸ナトリウム、(一般的に、約0.5%〜5%の濃度で使用される)との組み合わせが挙げられる。
【0090】
本発明のオリゴヌクレオチドを含む薬学的組成物および/または処方物はまた、キレート剤、界面活性剤および非界面活性剤を含み得る。キレート剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸塩およびホモバニリン酸塩)、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9(laureth−9)およびβ−ジケトンのN−アミノアシル誘導体(エナミン)。界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−20−セチルエーテル;および過フルオロ化合物の乳剤(例えば、FC−43)が挙げられる。非界面活性剤としては、例えば、不飽和環状尿素、1−アルキルアザシクロ−アルカノン誘導体、1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体、および非ステロイド系抗炎症剤(例えば、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾン)が挙げられる。
【0091】
したがって、本発明の別の局面において、薬学的組成物を処方する方法が提供され、その方法は、本明細書中に記載されるような化合物を提供する工程、およびその化合物と薬学的に受容可能な賦形剤とを組み合わせる工程を包含する。好ましくは、化合物は、以下に定義されるように、薬学的純度で提供される。上記方法は、さらに、上記化合物に(賦形剤の添加前もしくは添加後のいずれかに)、浸透増強剤を添加する工程を包含する。
【0092】
上記薬学的組成物は、一般的に薬学的純度の基準に従う。薬学的調製物における活性成分として使用するために、本発明の化合物は、一般的に、それらが調製される混合物中に存在する他の反応性または潜在性の免疫原性成分と分けて精製される。代表的に、核酸ベースの化合物が活性成分である場合に薬学的純度を達成するために、その活性成分は、機能アッセイ、クロマトグラフィ、またはゲル電気泳動により決定されるように、少なくとも約50%の同質性で提供され、そしてより好ましくは、60%、70%、80%または90%の同質性で提供される。次いで、上記活性成分は薬学的調製物の調製のために一般に認められた手順に従ってで、医薬中に配合される。したがって、本発明において、化合物を薬学的純度で提供する工程は、その化合物が少なくとも約50%の同質性、より好ましくは少なくとも80%もしくは90%の同質性で提供されることを必要とする。
【0093】
上記薬学的組成物はまた、代表的には一定量に分けられ、そして単回用量もしくは複数回用量のいずれかで包装される。オリゴヌクレオチド化合物で処置するための投薬用件は、使用される特定の組成物、投与の経路、示される症状の重篤度、化合物の形態および処置される特定の被験体によって変化する。
【0094】
本発明の薬学的組成物は、処方物で、臨床的に望ましい結果を達成するのに有効な量で、被験体に投与され得る。癌の処置について、望ましい結果としては、腫瘍塊の縮小(触診法または画像化法;例えば、X線撮影法、放射性ヌクレオチドスキャン、CATスキャン、またはMRIにより決定されるもの)、腫瘍増殖の速度の低下、転移形成の速度の低下(例えば、生検標本の組織学的解析によって決定される)、生化学的マーカーの減少(一般的なマーカー(例えば、ESRを含む)、および腫瘍特異的マーカー(例えば、血清PSA)を含む)、ならびに生活の質の改善(臨床的評価(例えば、Kamofskyスコア)によって決定される)、進行に要する時間の増加、疾患のない生存、および全体的な生存が挙げられる。
【0095】
このような効果を達成するために必要とされる、一用量あたりの化合物の量および投与回数は、多くの因子(疾患の適応、処置されている患者の特徴、および投与の様式が挙げられる)に依存して変化する。代表的には、処方物および投与の経路は、疾患部位において、1μMと1nMとの間の化合物の局所濃度を提供する。
【0096】
通常、化合物は、任意の有害な(harmful)または有害な(deleterious)副作用を引き起こさずに、有効な結果を与える濃度で投与される。このような濃度は、単一用量での投与か、または1日を通じて適切な間隔において都合よいサブユニットに分割した用量の投与のいずれかによって、達成され得る。
【実施例】
【0097】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の化合物の合成および活性を示し、オリゴヌクレオチド成分Oが好ましいチオホスホラミデート化学もしくはホスホラミデート化学を使用して合成される。特定の実施例において、脂質部分は、リンカーとともにかまたはリンカーを伴わないかのいずれかで、3’末端もしくは5’末端または両方に結合する。これらの化合物の一般構造は、以下:
【0098】
【化11】

のように表され得、ここで、RおよびRは独立してHまたは脂質部分(L)のいずれかであり、YはO(ホスホラミデートオリゴヌクレオチド)またはS(チオホスホラミデートオリゴヌクレオチド)であり、nは代表的には4と49との間の整数であり、そしてBは塩基(それぞれのヌクレオシドサブユニットに対して独立して選択される)を表す。任意のリンカーは、本構造においては示されない。
【0099】
(実施例1 化合物の合成)
(A.一般的な方法)
オリゴヌクレオチドN3’→P5’ホスホラミデート(NP)およびチオホスホラミデート(NPS)を、ABI394合成機でアミダイト転移反応(amidite transfer reaction)を使用し、それぞれ、McCurdyら、(1997)Tetrahedron Letters、38:207−210およびPongracz & Gryaznov、(1999)Tetrahedron Letters 49:7661−7664に記載される手順に従って、1μモルのスケールで合成した。完全に保護された単量体構成単位は、3’−アミノトリチル−ヌクレオシド−5’−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルアミノ)ヌクレオシドホスホラミダイト、具体的には、3’−デオキシ−チミジン、2’,3’−ジデオキシ−N−イソブチリル−グアノシン、2’,3’−ジデオキシ−N−ベンゾイル−アデノシン、および2’,3’−ジデオキシ−N−ベンゾイル−シチジンであり、Transgenomic,Inc.(Omaha、Nebraska)より購入した。3’−アミノトリチル−5’−スクシニル−ヌクレオシドを、長鎖微細孔性ガラス(LCAA−CPG)を含むアミノ基と結合させ、そして固体支持体として使用した。合成は、5’から3’の方向で実施した。NP骨格を有するオリゴヌクレオチドを、ヨウ素/HO酸化段階を含む、標準的な1μM(ABI Perkin Elmer)手順を使用して合成し、NPS骨格を有するオリゴヌクレオチドを、アセトニトリル:2,6−ルチジンの1:1混合物中の二硫化フェニルアセチル(PADS)の0.1M溶液を硫化剤として使用する、硫黄プロトコルを使用して調製した。結合時間は、両方の型の骨格の調製に対して25秒であった。THF:イソ酪酸無水物:2,6−ルチジンの18:1:1の混合物を、キャップ形成剤として使用した。3つの方法を使用して、脂質部分をオリゴヌクレオチドに結合させた:方法(i)3’末端に脂質部分を導入するために、合成機でホスホラミダイト試薬を使用する結合;方法(ii)5’結合の生成のための伸長合成の開始前に脂質基を結合させる、改変された固体支持体(前述の図式Cにおいて例示される)の使用;および方法(iii)固体支持体上にある状態での遊離の3’アミノ基の反応、その後の脱保護。これらの方法のさらなる詳細を、以下に提供する。オリゴヌクレオチドを、3’末端または核酸塩基に結合した脂質基に対しては濃アンモニアで、または5’末端に結合した脂質基に対しては、エタノール:濃アンモニアの1:1の混合物で、55℃にて6時間〜8時間脱保護した。この粗生成物を、Pharmasia NAP−25ゲル濾過カラムで脱塩するか、またはエタノールで1M塩化ナトリウムから沈殿させ、次いで真空中で凍結乾燥した。
【0100】
上記オリゴヌクレオチド生成物を、引き続いてBeckman Ultrasphere C18(5μ)250×10mmカラムを使用して逆相HPLCによって精製した。その生成物を、2ml/分の流速で50mMの酢酸トリエチルアンモニウム中のアセトニトリルの線形勾配で溶出し、1M塩化ナトリウムからニート(neat)な冷エタノールでの沈殿状態でナトリウム塩へ変換した。その化合物の純度を、前述の溶媒系を使用する分析用RP HPLCおよびPAGEにより評価した。Hおよび31P NMRスペクトルを、VARIAN Unity Plus 400 MHz装置で記録し、そしてエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI MS)を、WATERS Micromass ZMD質量分析計を使用して得た。
【0101】
(B.脂質基のオリゴヌクレオチドへの結合)
上で述べたように、脂質基をオリゴヌクレオチドへ結合させるために、種々の方法が用いられ得る。特定の方法の詳細は、以下のとおりである:
(方法(i))この方法では、結合した脂質基を含むホスホラミダイト試薬を、オリゴヌクレオチド合成プロセスの間に3’ヌクレオシドとして付加し、結果として脂質基がそのオリゴヌクレオチドの3’末端に結合させる。2つの脂肪酸を含むホスホラミダイトの合成およびそれに続く結合は、このアプローチを例示する。
【0102】
(i/a)3−パルミトイルアミノ−プロパン−1−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホラミダイト)の合成および結合
アセトニトリル−塩化メチレンの1:4混合物(400ml)に溶解させた1.0g(13.3ミリモル)の3−アミノ−プロパノールに、10mlのジイソプロピルエチルアミンおよび4.06ml(13.3ミリモル)の塩化パルミトイルを加えた。その反応物を一晩攪拌した後、追加の塩化メチレンを加え、そして反応物を次に、飽和炭酸水素ナトリウム、ブライン、および水で順に洗浄した。その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、そしてエバポレートして乾燥させた。得られた500mg(1.6ミリモル)の白色固体を、乾燥アセトニトリルで共蒸発(coevaporation)させることにより共沸させ、50mlの塩化メチレンに溶解させた。1.1mlのジイソプロピルエチルアミン(4当量)を加えた後、390μl(1.7ミリモル)の2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホラミダイトを滴下した。その反応混合物を1時間攪拌して、透明な溶液を得た。その反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウムおよびブラインで順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そしてエバポレートして乾燥させた。その生成物を、酢酸エチル:塩化メチレン:トリエチルアミンの45:45:10 v/v溶媒系を使用して、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。0.7g(90%)のワックス様の固形物を、DNA合成機で使用する前に、Pでデシケーター中で乾燥させた。31P NMR(CDCl)148.45ppm、ES MS(MH)514。DNA合成機において結合させるために、無水アセトニトリル−塩化メチレンの9:1混合物中で、0.1M溶液を調製した。この合成により、図1Dに示される結合オリゴヌクレオチドの生成のために使用した試薬が得られる。
【0103】
(i/b)3−パルミトイルアミノ−1−ヒドロキシ−プロパン−2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホラミダイト)の合成および結合
1g(10.97ミリモル)の3−アミノ−プロパンジオールを10mlのピリジン中に懸濁し、2mlのDMF中の3.017g(10.97ミリモル)の塩化パルミトイルを、激しく攪拌しながら滴下した。15分間の攪拌の後、そのゲルを濾過し、風乾させた。その固体を温エタノールおよび温2−プロパノールで、白色粉末物として再結晶させた。その白色固形物をピリジンで共蒸発させ、次いで30mlの乾燥ピリジンに溶解した。2.89g(8.55ミリモル)の塩化DMTを加え、そしてその反応混合物を、反応をTLCで追跡しながら30分間攪拌した。メタノールでクエンチした後、ピリジンはエバポレートし、そしてその反応を炭酸水素ナトリウムで飽和した塩化メチレンからワークアップした。得られた油状物を、溶解液として4:1のヘキサン/酢酸エチルを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた2.4g(3.64ミリモル)の黄色油状物をピリジンで共沸し、100mlの塩化メチレンおよび4当量のジイソプロピルエチルアミン(2.5ml)に溶解した。攪拌したその溶液に、920μl(4ミリモル)の2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホラミダイトを滴下した。その反応をTLCで追跡し、そして2時間後に完了したことを見出し、上記のようにワークアップした。その生成物を、酢酸エチル:塩化メチレン:トリエチルアミンの45:45:10溶媒系を使用して、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。得られた固体を、DNA合成機で使用する(アセトニトリル中の0.1M溶液)前に、デシケーターの中で乾燥させた。31P NMR(CDCl)149.9、150.2ppm、ES MS(MNa)854.57。この合成物により、図1AAに示される結合オリゴヌクレオチドの生成のために使用した試薬が得られる。
【0104】
(方法(ii))この方法では、脂質部分に結合した改変された固体支持体をオリゴヌクレオチドの5’から3’への合成のための開始点として使用し、5’結合を得る。2つの改変された固体支持体の合成および使用は、このアプローチを例示する。
【0105】
(ii/a)3−パルミトイルアミノ−1−ジメトキシトリチルオキシ−2−スクシニルオキシ−プロパンの合成
1g(10.97ミリモル)の3−アミノ−1,2−プロパンジオールを10mlのピリジンに懸濁した。2mlのDMF中の3.017g(10.97ミリモル)の塩化パルミトイルを、激しく攪拌しながら滴下した。15分間の攪拌の後、そのゲルを濾過し、風乾させた。その固体を温エタノールおよび温2−プロパノールで、白色粉末物として再結晶させた。その白色固形物をピリジンで共蒸発させ、次いで30mlの乾燥ピリジンに溶解した。3.2g(9.46ミリモル)の塩化DMTを加え、そしてその反応混合物を、反応をTLCで追跡しながら30分間攪拌した。メタノールでクエンチした後、ピリジンをエバポレートし、そしてその反応を炭酸水素ナトリウムで飽和した塩化メチレンからワークアップした。得られた油状物を、4:1のヘキサン/酢酸エチルを使用したシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。得られた2.5g(3.95ミリモル)の黄色油状物を30mlの塩化メチレンに溶解し、そして次いで475mgの無水コハク酸および483mgのジメチルアミノピリジンを加え、そしてその反応混合物を1時間攪拌した。その反応をTCLによりモニタリングし、そして必要な場合にはさらに無水コハク酸を加えた。その塩化メチレン溶液を冷クエン酸ナトリウム緩衝液(pH=4)で洗浄し、そしてその有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いでエバポレートして乾燥させた。得られた最終生成物は、2.0g(24.9%)であった。
【0106】
(ii/b)3−ステアロイルアミノ−1−ジメトキシトリチルオキシ−2−スクシニルオキシ−プロパンの合成
1g(10.97ミリモル)の3−アミノ−プロパンジオールを、10mlのピリジンに懸濁した。10mlのDMF中の3.32g(10.97ミリモル)の塩化ステアロイルを、激しく懸濁しながら滴下した。15分間の攪拌の後、そのゲルを濾過し、風乾させた。その固形物を温エタノールおよび温2−プロパノールで、白色粉末として再結晶させた。その白色固体をピリジンで共蒸発させ、次いで30mlの乾燥ピリジンに溶解した。2.89g(8.55ミリモル)の塩化DMTを加え、そしてその反応混合物を、反応をTLCで追跡しながら30分間攪拌した。メタノールでクエンチした後、ピリジンをエバポレートさせ、そしてその反応を炭酸水素ナトリウムで飽和した塩化メチレンでワークアップした。得られた油状物を、溶解液として4:1のヘキサン/酢酸エチルを使用してシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。得られた2.4g(3.64ミリモル)の黄色油状物を30mlの塩化メチレンに溶解し、そして次いで437mgの無水コハク酸および444mgのジメチルアミノピリジンを加え、そしてその反応混合物を1時間攪拌した。その反応物をTLCによりモニタリングし、そして必要な場合にはさらに無水コハク酸を加えた。その塩化メチレン溶液を冷クエン酸ナトリウム緩衝液(pH=4)で洗浄し、そしてその有機相を硫酸ナトリウム乾燥させで、次いでエバポレートさせ乾燥させた。得られた最終生成物は、1.2g(14.4%)であった。
【0107】
(ii/a)および(ii/b)において合成された生成物を、次いで、以下のように、長鎖アミノ微細孔ガラス(LCAA−CPG)に結合させて、改変された固体支持体を生成した:
100mlのペプチド合成容器において、20gのLCAA−CPG(Transgenomic,Inc.、約200ミリモル/g −NHローディング)を乾燥ジメチルホルムアミドで洗浄した。別々のフラスコ中で、5.55ミリモルの前述の上記(ii/a)または(ii/b)で記載した生成物を、40mlのクロロホルムに溶解し、3mlのジイソプロピルエチルアミンおよび2.13g(8.3ミリモル)のヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウムを加えた。この懸濁液をペプチド合成容器(栓を開いた状態)の中の乾燥CPGへ、その溶液がそのCPGを通って約半分浸漬するまで注いだ。次いで、栓と上蓋を閉じ、そして上記溶液が上記CPGを完全に覆うまで、振盪した。(必要な場合は、さらにクロロホルムが加えられ得るが、その体積は最小限にとどめるようにすべきである。)この容器を次いで、振盪器に配置し、そして反応を室温で一晩進行させた。CPGを濾過し、そして次いで塩化メチレン、メタノール、およびアセトニトリルで洗浄した。未反応のアミノ基を、THF−2,6−ルチジン−イソ酪酸無水物の18:1:1およびCap B(N−メチルイミダゾール/THF)の1:1の溶液を使用して振盪器で室温にて1時間、キャップした。さらなる濾過の後、そのビーズをメタノール、塩化メチレンおよびアセトニトリルで洗浄した。そのローディングを、メタノール過塩素酸を使用して非ブロック化したサンプルの、498nmでのジメトキシトリチルカチオンの吸光度を、標準的な方法によって決定し、そしてそれが50〜60μモル/gであると見出した。
【0108】
一旦改変された固体支持体が生成されると、前述したようなオリゴヌクレオチド合成において、それらが使用される。このように生成されたオリゴヌクレオチド結合の例は、図1F、図1Gおよび図1Hに示される。
【0109】
(方法(iii))この方法では、オリゴヌクレオチドの合成が完了し、そしてそれが完全に保護され、かつ固体支持体に結合したままで、その3’末端を、以下のように、脂質基の無水物(iii/a)、無水物(iii/b)、酸(iii/c)またはアルデヒド(iii/d)形態と反応させる。
【0110】
(iii/a)遊離の3’アミノ基(4μモル)を含む完全に保護されたオリゴヌクレオチドに結合した固体支持体を真空中で乾燥させ、そして3mlの無水クロロホルムに懸濁した。140μl(0.8ミリモル)のジイソプロピルエチルアミンおよび0.4ミリモルの適切な酸塩化物(例えば、122μlの塩化パルミトイル)を加えた後、その混合物を2分間振盪し、そして素早く濾過し、次いでクロロホルム、メタノールおよびアセトニトリルで洗浄した。その乾燥ビーズを1ml〜2mlの濃水酸化アンモニウムに懸濁し、55℃で5時間加熱した。冷却した水酸化アンモニウム溶液濾過し、そしてエバポレートした。脂質結合生成物を、HPLCによって単離した。前述の条件を使用して、生成物をおよそ40分間溶出した。エバポレート後、この生成物を、1Mの塩化ナトリウムおよびエタノールから沈殿させて、ナトリウム塩を得た。
【0111】
(iii/b)完全に保護されたオリゴヌクレオチド(1μモル)に結合した乾燥固体支持体に、0.1ミリモルの適切な無水物および2mlのクロロホルム中に溶解した170μlのジイソプロピルエチルアミンを加え、その混合物を含むバイアルを一晩振盪器に置いた。濾過後、そのビーズをクロロホルム、メタノールおよびアセトニトリルで洗浄し、そして前述のように結合オリゴヌクレオチドを非ブロック化および精製した。
【0112】
(iii/c)1μモルの完全に保護されたオリゴヌクレオチドに結合した固体支持体を、2mlのクロロホルム中の、0.1ミリモルの適切な酸、25mgのヨウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウム(0.1ミリモル)、および170μlのジイソプロピルエチルアミン(disopropylethylamine)の溶液とともに振盪器で一晩反応させた。上記のように、洗浄、非ブロック化および精製を実施した。
【0113】
(iii/d)2mlのテトラヒドロフラン中の、0.3ミリモルの望ましいアルデヒド溶液、31.5mgのシアノホウ化水素ナトリウム、および100μlの0.5M酢酸ナトリウムを、1μモルの完全に保護されたオリゴヌクレオチドに結合した固体支持体に加え、30分間振盪器に置いた。上記のように、洗浄、非ブロック化および精製を実施した。
【0114】
(方法(iv))この方法では、脂質基を、オリゴヌクレオチドの末端ではなく、鎖上の核酸塩基(例えば、グアノシン)に結合させる。これらの化合物は、上記のように、従来のオリゴヌクレオチド鎖伸長プロトコルを使用して合成されるが、共有結合した脂質基で改変された塩基(例えば、図2Eに示される)の組み込みも使用した。このような脂質基が核酸塩基に結合した化合物の例は、図1Qおよび図1Rに示される。
【0115】
(実施例2 生化学アッセイおよび細胞ベースアッセイにおける化合物の活性)
本明細書中で記載されるように結合オリゴヌクレオチドを、上記およびAsaiら(2003)に記載されるように、生化学的Flashplateアッセイおよび細胞ベースアッセイにおいて、それらのテロメラーゼを阻害する能力について試験した。その結果を、以下の表に示す。この表において、以下の略語を使用する:
オリゴヌクレオチド配列:
1=TAGGGTTAGACAA、hTR(配列番号1)の42〜54塩基に対して相補的
2=CAGTTAGGGTTAG、hTR(配列番号1)の38〜50塩基に対して相補的
化学:
NPは、オリゴヌクレオチドがホスホラミデートのヌクレオシド間結合を有することを示す
NPSは、オリゴヌクレオチドがチオホスホラミデートのヌクレオシド間結合を有することを示す
結合:
5’は、脂質部分がオリゴヌクレオチドの5’末端に結合することを示す
3’は、脂質部分がオリゴヌクレオチドの3’末端に結合することを示す
ヒト癌細胞型(すべてATCCより入手可能):
HT−3およびA431:子宮頚部癌
U−251:多形性グリア芽腫
DU145およびLNCaP:前立腺癌
Caki:腎臓明細胞癌
NCIH522:肺腺癌
Ovcar−5:卵巣癌
Hep3B:肝細胞癌

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
【表7】


【0119】
(実施例3 比較効力およびバイオアベイラビリティー研究)
非結合オリゴヌクレオチドとともに本発明の2系統の化合物を、個々の詳細な研究のために選択した。選択した化合物(図9に示される)は、以下のとおりであった:
化合物A(非結合):配列TAGGGTTAGACAA(この配列は、hTR(配列番号1)の42〜54塩基に対して相補的である)のチオホスホラミデートオリゴヌクレオチド(図9A)
化合物B:3’パルミトイルアミドに結合した化合物Aのオリゴヌクレオチド(図9B)
化合物C:5’−パルミトイルアミド−グリセロール−チオホスフェートに結合した化合物Aのオリゴヌクレオチド(図9C)。
これらの化合物の研究を、本実施例および以下の実施例で報告する。
【0120】
以下の表は、マッチするRNAと結合した場合の、これら3つの化合物それぞれの融解温度(標準的な方法を使用して決定した)、生化学的アッセイを使用して決定したテロメラーゼ阻害のIC50値、そして前述の(HT−3細胞を用いる)細胞ベースアッセイを使用して決定したテロメラーゼ阻害のIC50値を示す。
【0121】
【表8】

上記表で示されるように、上記非結合オリゴヌクレオチドAは、その標的に対して、70℃の融解温度、および生化学アッセイにおける0.15nMのテロメラーゼ阻害のIC50値(ここでは、細胞取り込みは問題ではない)を伴って、非常に高い親和性結合を示した。化合物Aは、複数の異なる腫瘍細胞株においてテロメラーゼ阻害に対する低いマイクロモルのIC50を伴って(本実験では、HT−3細胞において1.6μM)、無傷細胞への良好な取り込み性を有するが、これは生化学的な効力と比較して、無傷細胞において約10,000倍の効力の損失を示す。オリゴヌクレオチド(それぞれ、化合物Cおよび化合物B)の5’末端または3’末端のいずれかへの脂質基の付加は、Tmを緩やかに低下させ(依然として、65.5℃〜66.5℃で、非常に高いままである)、そして上記非結合化合物Aと比較して生化学的効力を6分の1〜11分の1低下させた。しかしながら、非常に重要なことは、無傷細胞における脂質結合化合物Bおよび脂質結合化合物Cの効力は、これら化合物の生化学的効力と比較して、わずか約100分の1しか低下していないことである。より多くの細胞取り込みの結果として、化合物Bおよび化合物Cは、HT−3細胞において、上記非結合オリゴヌクレオチド(化合物A)と比較して、少なくとも10倍高い効力を示した。
【0122】
同様の結果が、ヒト癌細胞の他の型を用いて観察された。図3および図4は、それぞれ、無傷のU251(ヒト多形性グリア芽腫)細胞およびDU145(ヒト前立腺癌)細胞における化合物A、化合物Bおよび化合物Cで得られたデータを示した。化合物C(5’脂質化(lipidated)形態)のIC50値は、U251細胞における化合物AのIC50値よりも約10分の1低く、DU145細胞においては約38分の1低く、化合物Cでの処置の増大した効力が確認された。
【0123】
(実施例4 動物モデルにおけるヒト腫瘍中のテロメラーゼ活性の阻害)
非結合オリゴヌクレオチド化合物Aおよび脂質結合オリゴヌクレオチド化合物Cの、動物中において増殖する腫瘍中のテロメラーゼを阻害する能力を、以下の実験において比較した。DU−145腫瘍細胞を、胸腺欠損(nu/nu)マウスの両方の側腹部に接種した。その腫瘍(2腫瘍/マウス)が50mm〜100mmの大きさに達したとき、このマウスにPBS、FITC標識した化合物A、またはFITC標識した化合物C(両方の化合物を、40mg/kgで投与した)の単回尾静脈注射した。静脈注射の24時間後、マウスを屠殺し;一方の腫瘍を蛍光画像化用に収集し、他方の腫瘍をTRAPアッセイによるテロメラーゼ活性用に分析した。
【0124】
蛍光のレベルを、両方の処理群において比較した。しかしながら、図5に示されるように、化合物Cは、化合物Aで行ったものより、結果としてより大きなテロメラーゼ活性の阻害を生じた。0.75gの腫瘍溶解産物に相当するレーン中の垂直の矢印は、これらのサンプルが比較可能なレベルの内部標準(水平の矢印により示される)を含むことを示す。血液は、ゲルの左のレーンにおいて内部標準の損失により示されるように、ヘモグロビンおよび他の非特異的taqポリメラーゼインヒビター(テロメラーゼ生成物のPCR増幅において使用される)を含む。しかしながら、これらの非特異的なインヒビターは、連続希釈により完全に希釈された(反応混合物中の腫瘍溶解物の量が減少する)。もっとも低い濃度の腫瘍溶解物(右側の3レーン)において、内部標準は全ての3つの処置条件で比較でき、化合物Cg、比較可能な用量の化合物Aで処置したものよりもテロメラーゼ活性をより大きく阻害することが明らかである。。
【0125】
(実施例5 動物モデルにおける骨髄腫タンパク質レベルの減少)
骨髄腫を有する患者の血漿は、癌細胞によって産生される、特徴的な高いレベル(「骨髄腫スパイク」またはMタンパク質として検出される)の抗体を含む。Mタンパク質レベルの減少は、疾患の寛解と相関する。本実験では、非結合オリゴヌクレオチド化合物Aおよび脂質結合オリゴヌクレオチド化合物Cの、骨髄腫細胞を注入した動物におけるMタンパク質のレベルを減少させる能力を比較した。照射NOD/SCIDマウスに10個のCAG骨髄腫細胞を注入し、そして次いで、PBS、PBS中の化合物A、またはPBS中の化合物Cの腹腔内(IP)注射で処置した。化合物Aを、25mg/kg/日(175mg/kg/週×5週間)で投与し;化合物Cを、最初の2週間は25mg/kg/日で投与し、3週目はそのままでおき、そして次いで最後の2週間は1週間に3日間25mg/kg/日で投与した(5週間にわたって100mg/kg/週の平均投与量)。処置の終了時(接種の35日後)、そのマウスを屠殺し、そして骨髄腫タンパク質の決定のため、各々の群(4〜5匹のマウス/群)内で血漿をプールした。図6に示されるように、化合物Cの40%低い投与量にもかかわらず、化合物C群は低いレベルの骨髄腫タンパク質を示した(マウス1匹あたりに正規化した値)。
【0126】
(実施例6 動物モデルにおけるヒト腫瘍増殖の阻害)
以下の実験では、非結合オリゴヌクレオチド化合物Aおよび脂質結合オリゴヌクレオチド化合物Cの、動物におけるヒト腫瘍の増殖を阻害する能力を比較した。NOD/SCIDマウスにCAG骨髄腫細胞を皮下接種し、そして腫瘍増殖の14日後、PBS、化合物A(25mg/kg/日 M−F、または125mg/kg/週)、または化合物C(25mg/kg MWF、または75mg/kg/週)のIP注射で処置した。図7に示されるように、40%低い投与量にもかかわらず、化合物Cは化合物Aよりもより大きな抗腫瘍効力を示した。(この研究において、化合物Aを、このモデルにおいて抗腫瘍効力に関連する以前の投与量(175mg/kg/週)よりも30%低い投与量で投与した)。
【0127】
本研究の一部として、側腹部のCAG骨髄腫腫瘍を屠殺後に切除し、そしてテロメラーゼ活性(TRAPアッセイによる)およびサザンブロットによるTRFの長さを分析した。図8に示されるように、40%低い用量で投与したにもかかわらず、化合物Cは、実質的により大きなテロメラーゼ活性の阻害(83%の減少)、および腫瘍細胞におけるテロメラーゼ短縮の誘導(平均値TRF 2.85Kb)を示した。より高い用量の化合物Aは、より小さなテロメラーゼ阻害(41%)を生じ、そして本研究の時間経過にわたり、有意なテロメラーゼ短縮を生じなかった。
【0128】
本開示で提供される内容は、本発明の精神、または添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、日常的な最適化の問題として改変され得る。
[配列表]
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−85648(P2012−85648A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274595(P2011−274595)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2010−286755(P2010−286755)の分割
【原出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(595161223)ジェロン・コーポレーション (32)
【氏名又は名称原語表記】GERON CORPORATION
【Fターム(参考)】