説明

テロメラーゼ阻害剤

【課題】テロメスタチン類似の構造を有し、テロメラーゼ阻害活性を有する、新規化合物を提供する。
【解決手段】7つのオキサゾールからなる大環状構造を有し、且つ、例えば、−(CH2)4−NH2で表されるようなアミノ基のある側鎖を有する化合物。当該化合物は、公知であるテロメスタチンのテロメラーゼ阻害活性よりも数倍程度も強いテロメラーゼ阻害活性を有し、テロメラーゼを発現している腫瘍細胞に特異的に作用し、腫瘍の増殖を抑制する活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基を側鎖に有する大環状ヘプタオキサゾール構造を有する新規化合物に関する。また、本発明は該化合物を含むテロメラーゼ阻害剤及び抗腫瘍剤並びに該化合物の製造方法に関する。さらに、本発明は、DNAの高次構造であるG-quadruplex構造の存在を蛍光により簡便に検出するツールを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
テロメアとは、真核生物の染色体の末端に存在する構造である。ヒトの場合、(TTAGGG)nという6塩基の繰り返し配列でおよそ1万塩基対ほど存在しており、3´末端においてはおよそ100塩基ほど突出(オーバーハング)して一本鎖となっている。
テロメアのオーバーハングした一本鎖においては、カリウムやナトリウムイオンのような一価のカチオンが高濃度に存在する条件下において、G-quadruplexと呼ばれる、特有のらせん状の高次構造を形成している。このG-quadruplex構造は、テロメアだけではなく、c−kit、c−myc及びbcl−2のような遺伝子プロモーター領域にも存在し、固有の構造を有することが、最近明らかとなった。例えば、テロメアのG-quadruplexは逆平行な構造を有するのに対し、c−mycとc−kitのプロモーター領域は順平行な構造を有しており、bcl−2のプロモーター領域は、順平行と逆平行の様式が混在した構造を有している。
【0003】
これらのG-quadruplex構造は、重要な生物学的メカニズムに関与している。例えば、G-quadruplexの形成は、テロメアを大幅に短縮させ、続いて、テロメアの末端に結合しているTRF2及び/又はPot1が解離することにより、がん細胞のアポトーシスを引き起こすものである。また、c−kitとc−mycの転写活性が、プロモーター領域でのG-quadruplex構造の形成により抑制されることが、インビトロの実験で示されている。従って、強力で特異的にG-quadruplexに結合する物質は、生物学的ツールとなるだけでなく、抗がん剤の候補となりうるため、強力なG-quadruplexの結合剤の開発を目的とした研究が盛んに行われている。
【0004】
テロメスタチンは、5つのオキサゾールと2つのメチルオキサゾールと一つのチアゾールを有する大環状構造を有し、TRAP(telomeric repeat amplification protocol)アッセイを用いたスクリーニングにより放線菌(Streptomyces anulatus 3533-SV4)から単離された天然有機化合物である(特許文献1及び非特許文献1)。テロメスタチンは、IC50が5nMという非常に高いテロメアーゼ阻害活性を示し、その構造式は次のとおりである。
【0005】
【化1】

【0006】
テロメスタチンのオキサゾール及びチアゾールからなる大環状構造は、テロメアと相互作用し、G-quadruplex構造を強力に安定化させることが報告されている(非特許文献2)。それゆえ、テロメスタチンは、標準的なG-quadruplex結合剤として、様々な機能の研究に広く用いられている。また、テロメスタチンを抗腫瘍剤とする研究も行われている(非特許文献3)。しかしながら、テロメスタチンは、天然の有機化合物であり大量に得ることができないため、合成方法に関する研究が行われてきた(特許文献2及び非特許文献4)
また、テロメスタチンの誘導体・類縁体の合成及び活性評価に関する研究も数多く行われている(特許文献3及び4並びに非特許文献5〜12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO 00/24747号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO 02/48153号パンフレット
【特許文献3】特開2006−316008号公報
【特許文献4】国際公開WO 2007/127173号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shin-ya, K.ら他7名、2001年発行、Journal of the American Chemical Society、vol.123、pp.1262-1263
【非特許文献2】Kim, M. Y.ら他4名、2002年発行、Journal of the American Chemical Society、vol.124、pp.2098-2099
【非特許文献3】Tauchi, T.ら他6名、2006年発行、Oncogene、vol.25、pp.5719-5725
【非特許文献4】Doi, K.ら他3名、2006年発行、Organic Letters、vol.8、Issue 18、pp.4165-4167
【非特許文献5】石塚大倫ら他5名、2008年3月12日発行、「テロメスタチンをリードとした大環状ヘプタオキサゾール(7OTD)誘導体の合成と活性評価」、日本化学会講演予稿集、Vol.88、No.2、pp.1049
【非特許文献6】寺正行ら他3名、2008年3月12日発行、「テロメスタチンをリードとした大環状ヘキサオキサゾール(6OTD)誘導体の合成とG-quadruplex安定化の評価」、日本化学会講演予稿集、Vol.88、No.2、pp.1048
【非特許文献7】石塚大倫ら他4名、2007年12月1日発行、「テロメスタチンをリードとしたG-q ligandの合成研究と活性評価」、有機合成化学協会関東支部シンポジウム、Vol.54、pp.56
【非特許文献8】石塚大倫ら他3名、2007年3月12日発行、日本化学会講演予稿集、Vol.87、No.2、pp.1190
【非特許文献9】Suzanne G. Rzuczekら他3名、2008年発行、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、vol.18、pp.913-917
【非特許文献10】Gurpreet Singh Minhasら他4名、2006年発行、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、vol.16、pp.3891-3895
【非特許文献11】Masayuki Teraら他6名、2006年発行、Heterocycles、vol.69、pp.505-514
【非特許文献12】Nobuaki Endohら他4名、2003年発行、Heterocycles、vol.60、pp.1567-1572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の状況に鑑み、テロメラーゼ阻害活性の高いテロメスタチン類縁体を提供するとともに、当該テロメスタチン類縁体の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、オキサゾールを6つではなく7つ有する大環状構造として平面性を高め、さらに、アミノ基を有する側鎖を設けることにより、テロメラーゼ阻害活性の高いテロメスタチン類縁体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る新規化合物は、下記の(I)〜(VIII)の化合物を含むものである。
【0012】
(I)次の一般式(1)で示される化合物。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0015】
(II)Xが、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−又は−NHCONHC(NH)−であることを特徴とする、上記(I)に記載の化合物。
【0016】
(III)Xが、−CH−、−NHC(NH)−又は−CH(NH)−であることを特徴とする、上記(II)に記載の化合物。
【0017】
(IV)上記(III)に記載の化合物において、Xが−CH−であり、Rが炭素数1〜7の直鎖状のアルキレン基であって、次の一般式(2)で示される化合物。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、nは2〜8の整数を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0020】
(V)nが4であることを特徴とする、上記(IV)に記載の化合物。
【0021】
(VI)R、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基であることを特徴とする、上記(I)〜(V)のいずれかに記載の化合物。
【0022】
(VII)R、R、R、R、R及びRのいずれも、水素原子であることを特徴とする、上記(V)に記載の化合物。
【0023】
(VIII)上記(I)に記載の化合物において、Xが−CH−であり、Rが炭素数3のアルキレン基であり、R、R、R、R、R及びRが水素原子であり、次の構造式(3)で示される化合物。
【0024】
【化4】

【0025】
また、上述した本発明に係る新規化合物は、塩として提供することもできる。さらに、上述した本発明に係る新規化合物又はその塩は、例えばテロメラーゼ阻害剤としての用途を有する。さらに、上述した本発明に係る新規化合物又はその塩は、テロメーゼ阻害作用に基づく疾患の治療剤としての用途を有する。テロメーゼ阻害作用に基づく疾患としては、例えば癌を挙げることができる。すなわち、本発明に係る新規化合物又はその塩は、抗腫瘍剤としての用途を有する。
【0026】
一方、本発明は、上述した本発明に係る新規化合物の製造方法(IX)〜(X)提供する。
【0027】
(IX)上記(I)に記載の化合物を製造する方法であって、以下の(F)〜(H)の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(F)ジクロロメタン中、下記の一般式(8)に示される化合物とメタンスルホニルクロリド(MsCl)及びトリエチルアミン(EtN)とを反応させ、さらにジアザビシクロウンデセン(DBU)を加えることにより、分子内脱水して下記の一般式(9)に示される化合物を得る工程;
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−又は−CH(NH)−を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
(G)非プロトン性極性溶媒中において、次の一般式(9)に示される化合物に、N−ブロムスクシンイミド(NBS)と炭酸セシウム(CsCO)を作用させて、次の一般式(10)に示される化合物を得る工程;
【0030】
【化6】

【0031】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−又は−CH(NH)−を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
(H)次の一般式(10)に示される化合物が有する保護基Y及びR´、R´、R´、R´、R´及びR´に含まれる保護基を脱離させて、次の一般式(1)に示される化合物を得る工程。
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−又は−CH(NH)−を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0034】
(X)保護基Yが、tert−ブトキシカルボニル基(Boc基)であり、酸性溶媒中で、保護基Y(Boc基)を脱離させることを特徴とする、上記(IX)に記載の製造方法。
【0035】
さらに、本発明は、本発明に係る新規化合物を利用することで、G-quadruplex構造を可視化するプローブ(XI)及びその製造方法(XII)提供することができる。
【0036】
(XI)上記(I)〜(VIII)いずれかに記載の化合物と、当該化合物におけるアミノ基に反応しうる蛍光化合物とを反応させたG-quadruplex構造を可視化するプローブ。
【0037】
一例として具体的に本発明に係るプローブとしては、上記蛍光化合物として一般式(16)に示される化合物を使用し、一般式(17)で示される化合物を挙げることができる。
【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Qは、蛍光色素を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
10は単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。)
【0041】
(XII)上記(I)〜(VIII)いずれかに記載の化合物と、当該化合物におけるアミノ基に反応しうる蛍光化合物とを反応させるG-quadruplex構造を可視化するプローブの製造方法。
【0042】
一例として具体的に本発明に係る製造方法は、上記(I)に記載の化合物(1)と、次の一般式(16)に示される蛍光化合物とを下記式のように反応させるものを挙げることができる。
【0043】
【化10】

【0044】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Qは、蛍光色素を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
10は単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。)
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る化合物は、平面性の高い7つのオキサゾールを有する大環状構造を有し、また、アミノ基を有する側鎖を持つため、高いテロメラーゼ阻害活性を有している。
【0046】
また、本発明に係る化合物の製造方法は、6つのオキサゾールを有する化合物の一部を閉環することにより、7つのオキサゾールを有する大環状構造にするという、非常に難しい反応を可能にし、テロメラーゼ活性の高い本発明に係る化合物を製造できるものである。
【0047】
さらに、本発明のプローブは、G-quadruplex構造に結合する活性を有し、また、蛍光により検出することができるため、生体細胞若しくは生体組織又は核酸中におけるG-quadruplex構造の存在を簡便に検出するツールとして利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のG-quadruplex構造を可視化するプローブの機能性評価を行った結果を示す図である。図中、「+」は、DNAに対して化合物を1等量添加していることを示し、「++」は、DNAに対して化合物を10等量添加していることを示す。また、「L1BOD-7OTD」は、BODIPYの蛍光波長で励起したときのゲルの発光を撮影した写真であり、「Stains-all」は、BODIPYの蛍光波長で励起したときのゲルの発光を撮影した写真であり、「Merged」は、これらの二つを重ねた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008-166494号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【0050】
1.本発明の化合物
1−1.本発明の化合物の構造
本発明の化合物は、下記の一般式(1)に示される化合物である。尚、本発明の一般式及び構造式においては、光学異性体が存在する場合には、その全ての光学異性体を含むものである。
【0051】
【化11】

【0052】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0053】
1−2.本発明の化合物の特徴構造及びそれによる効果
本発明の化合物は、7つのオキサゾールからなる大環状構造を有するため、6つのオキサゾールを有する化合物と比べて平面性が高まっている。本発明の化合物のテロメラーゼ阻害活性が高い理由は明らかではないが、この高い平面性によりG-quadruplexと強力に相互作用していることが考えられる。
また、本発明の化合物は、−R−X−NHからなる側鎖を有している。本発明の化合物のテロメラーゼ阻害活性が高い理由は明らかではないが、この側鎖のアミノ基が、G-quadruplexを形成するヌクレオチドのリン酸と相互作用することが考えられる。
【0054】
尚、アミノ基のある側鎖を有するが、大環状構造を構成するオキサゾールが6つである化合物(比較例1)と、アミノ基のある側鎖を有し7つのオキサゾールを有する本発明の化合物について、テロメラーゼ阻害活性を比較したところ、本発明の化合物のほうが高いテロメラーゼ阻害活性を呈した(比較例1及び表1参照)。
また、7つのオキサゾールを有するが、アミノ基のある側鎖を有しない化合物(比較例2)と、アミノ基のある側鎖を有し7つのオキサゾールを有する本発明の化合物について、テロメラーゼ阻害活性を比較したところ、本発明の化合物のほうが高いテロメラーゼ阻害活性を呈した(比較例2及び表1参照)。
【0055】
また、本発明の化合物は、テロメラーゼを発現している腫瘍細胞に特異的に作用し、腫瘍の増殖を抑制する活性を呈した(実施例3参照)。
【0056】
1−3.本発明の化合物の側鎖の構造
本発明の一般式(1)で示される化合物は、−R−X−NHからなる側鎖を有しているが、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基のいずれかである。
尚、上記の2価の基を構造式で表すと、以下のとおりである。
【0057】
【化12】

【0058】
Xが−CH−、−NHCO−、−CO−、シクロヘキサジエニレン基又は3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基の場合には、側鎖はアミノ基を1つ有する側鎖となる。また、Xが−NHC(NH)−又は−NHCONHC(NH)−の場合には、側鎖はグアニジノ基を有する側鎖となる。尚、グアニジノ基とは、−NHC(NH)NHで示される置換基である。そして、Xが−CH(NH)−の場合には、側鎖はアミノ基を2つ有する側鎖となる。
Xは、−CH−又は−NHC(NH)−とすることが好ましく、特に、−CH−とすることが好ましい。
【0059】
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
ここで、単結合とは、何も基がないことを意味し、例えば、Rが単結合でXが−CH−の場合には、側鎖はアミノメチル基となる。
炭素数1〜12のアルキレン基は、直鎖状のもののみならず、分岐鎖を有するアルキレン基も含まれる。炭素数1〜12のアルキレン基としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、1−メチルトリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン、2−メチルテトラメチレン、2、3−ジメチルテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン基が挙げられる。
【0060】
炭素数1〜12のアルケニレン基も、直鎖状のもののみならず、分岐鎖を有するアルケニレン基も含まれる。また、二重結合が2つ以上であってもよい。炭素数1〜12のアルケニレン基としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ビニレン、プロペニレン、1−メチル−1−プロペニレン、2−メチル−1−プロペニレン、3−メチル−1−プロペニレン、2,3−ジメチル−1−プロペニレン、1−ブテニレン、2−ブテニレン、1,3−ブタジエニレン、2−ペンテニレン、2,3−ペンタジエニレン、2−ヘキセニレン、1,3,5−ヘキサトリニレン、3−ヘプテニレン、4−オクテニレン、4−ノネニレン、5−デセニレン、6−ウンデセニレン、6−ドデセニレン基等が挙げられる。
【0061】
炭素数1〜12のアルキニレン基も同様に、直鎖状のもののみならず、分岐鎖を有するアルキニレン基も含まれる。また、三重結合が2つ以上あってもよい。炭素数1〜12のアルキニレン基としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、エチニレン、プロピニレン、3−メチル−1−プロピニレン、ブチニレン、1、3−ブタジイニレン、2−ペンチニレン、2−ペンチニレン、2,4−ペンタジイニレン、2−ヘキシニレン、1,3,5−ヘキサトリイニレン、3−ヘプチニレン、4−オクチニレン、4−ノニニレン、5−デシニレン、6−ウンデシニレン、6−ドデシニレン基等が挙げられる。
【0062】
は、炭素数1〜12のアルキレン基とすることが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜7の直鎖状のアルキレン基とすることが好ましい。
そして、Xが−CH−で、Rが炭素数1〜7の直鎖状のアルキレン基である場合には、本発明の化合物は、次の一般式(2)で示される。
【0063】
【化13】

【0064】
(式中、nは2〜8の整数を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0065】
上記一般式(2)において、nは2〜8の整数であり、側鎖は炭素数2〜8のアミノアルキル基となる。
より好ましくは、nを3〜5の整数とし、側鎖を炭素数3〜5のアミノアルキル基とするのがよい。最も好ましくは、nを4とし、側鎖をアミノブチル基とするのがよい。
【0066】
1−4.本発明の化合物の大環状構造における周縁部
本発明の化合物の大環状構造における周縁部、すわなち、本発明の一般式(1)又は(2)で示される化合物において、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
【0067】
ここで、アミノ基とは−NHであり、グアニジノ基とは−NHC(NH)−NHである。
また、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基には、直鎖状のもののみならず、分岐鎖を有するアルキレン基も含まれ、また、アミノ基及び/又はグアニジノ基を合計で2つ以上有していてもよい。
アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、3−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、2,3−ジアミノプロピル基、2−アミノ−3−グアニジノプロピル基、ブチル基、4−アミノブチル基、3,4−ジアミノブチル基、2−グアニジノ−4−アミノブチル基、4−アミノ−3−(2−アミノエチル)ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、5−アミノペンチル基、5−グアニジノペンチル基、ヘキシル基、6−アミノヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0068】
アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基とは、単環式又は縮合環式のアリール基により置換された総炭素数7〜12のアルキル基であり、アミノ基若しくはグアニジノ基を1つのみならず、2つ以上有していてもよい。また、アミノ基又はグアニジノ基を有していないアラルキル基でもよいことは、もちろんのことである。
アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、ベンジル基、4−アミノベンジル基、3−グアニジノ−4−アミノベンジル基、フェネチル基、4−アミノフェネチル基、フェニルプロピル基、3,4−ジアミノフェネチル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0069】
アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基には、アミノ基及び/又はグアニジノ基を合計で2つ以上有しているフェニル基も含まれ、これらに限定されるわけではないが、例えば、フェニル基、4−アミノフェニル基、4−グアニジノフェニル基、3−グアニジノ−4−アミノフェニル基等が挙げられる。
【0070】
炭素数2〜6の複素環基としては、これらに限定されるわけではないが、チエニル基、フリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等が挙げられる。
また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0071】
本発明の好ましい一つの実施態様として、本発明の一般式(1)又は(2)で示される化合物において、R、R、R、R、R及びRを、それぞれ独立に、水素原子又はアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基とすることができる。
ここで、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基は、直鎖状のもののみならず、分岐鎖を有するアルキレン基も含まれ、また、アミノ基及び/又はグアニジノ基を合計で2つ以上有していてもよい。
アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、3−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、2,3−ジアミノプロピル基、2−アミノ−3−グアニジノプロピル基、ブチル基、4−アミノブチル基、3,4−ジアミノブチル基、2−グアニジノ−4−アミノブチル基、4−アミノ−3−(2−アミノエチル)ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、5−アミノペンチル基、ヘキシル基、6−アミノヘキシル基、6−グアニジノヘキシル基、ヘプチル基、7−アミノヘプチル基等が挙げられる。
【0072】
本発明の好ましい一つの実施態様として、本発明の一般式(1)又は(2)で示される化合物において、R、R、R、R、R及びRを、それぞれ独立に、水素原子又はアミノ基を末端に有する炭素数1〜7の直鎖状のアルキル基とすることができる。
アミノ基を末端に有する炭素数1〜7の直鎖状のアルキル基としては、アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、5−アミノペンチル基、6−アミノヘキシル基、7−アミノヘプチル基が挙げられる。
【0073】
本発明の好ましい一つの実施態様として、本発明の一般式(1)又は(2)で示される化合物において、R、R、R及びRを、水素原子とし、R及びRの少なくとも一方を、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基とすることができる。
本発明の好ましい一つの実施態様として、一般式(2)で示される化合物において、R、R、R及びRを、水素原子とし、R及びRの両方を、末端にアミノ基を有する炭素数1〜7の直鎖状のアルキル基とすることができる。
この場合、本発明の化合物は、次の一般式(12)で示される。
【0074】
【化14】

【0075】
(式中、nは2〜8の整数を表し、mは1〜7の整数を表し、lは1〜7の整数を表す。)
【0076】
本発明の好ましい一つの実施態様として、本発明の一般式(1)又は(2)で示される化合物において、R及びRをメチル基とし、R、R、R及びRを水素原子とすることにより、天然のテロメスタチンと同様に、2つのメチルオキサゾールと5つのオキサゾールからなる大環状構造の化合物とすることができる。
【0077】
本発明の好ましい一つの実施態様として、本発明の一般式(1)又は(2)で示される化合物において、R、R、R、R、R及びRを水素原子とすることができる。
【0078】
1−5.構造式(3)で示される化合物
本発明の好ましい一つの実施態様として、一般式(2)で示される化合物において、R、R、R、R、R及びRを水素原子とし、nを4とすることができる。
この場合には、本発明の化合物は、次の構造式(3)で示される。
【0079】
【化15】

【0080】
上記の構造式(3)に示される化合物は、下記の実施例2に記載の方法によりテロメラーゼ阻害活性を測定したところ、IC50が0.8nMという極めて高いテロメラーゼ阻害活性を持つものであり、天然有機化合物であるテロメスタチンのテロメラーゼ阻害活性(IC50=約5nM)よりも数倍程度もの強い活性を奏するものである。
【0081】
2.本発明の化合物を含む塩、テロメラーゼ阻害剤及び抗腫瘍剤
本発明の化合物は、塩とすることができる。例えば、本発明の化合物に酸を付加することにより塩とすることができる。酸としてはこれらに限定されるわけではないが、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0082】
本発明の化合物は、強いテロメラーゼ阻害活性を有するため、テロメラーゼ阻害剤とすることができる。本発明のテロメラーゼ阻害剤は、例えば、本発明の化合物を安定に保存することができるジメチルスルホキシド、メタノール、水、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等の溶媒に希釈することにより製造することができる。
本発明のテロメラーゼ阻害剤は、ガンのメカニズムや、動物や植物の発生のメカニズムの研究等、テロメラーゼの酵素活性を抑制する実験系に幅広く利用することができる。
【0083】
一方、本発明の化合物は、強いテロメラーゼ阻害活性を有するため、テロメラーゼの活性亢進に起因する疾患の治療剤及び/又は予防剤として使用することができる。
【0084】
テロメラーゼの活性亢進に起因する疾患としては癌を挙げることができる。
なお、公知のテロメーゼ阻害剤であるテロメスタチンは、抗腫瘍活性を有することが知られている(非特許文献3: Tauchi, T.ら他6名、2006年発行、Oncogene、vol.25、pp.5719-5725)。したがって、本発明の化合物を有効成分として含む抗腫瘍剤は、テロメスタチンと同様にテロメラーゼ阻害活性を有する抗腫瘍剤の有効成分とすることができる。
なお、後述する実施例に示すように、本発明の化合物は、テロメスタチンと比較して著しく優れたテロメラーゼ阻害作用を有するため、本発明に係る抗腫瘍剤は、より優れた抗腫瘍活性を示す蓋然性が高く、癌治療や癌予防に優れた効果を期待することができる。また、後述する実施例に示すように、本発明に係る抗腫瘍剤は、テロメラーゼを高度に発現している腫瘍細胞に特異的に作用するため、正常細胞には作用せず副作用の少ない抗腫瘍剤を開発することを可能にするものである。
【0085】
ここで、腫瘍とは、生体が有する制御機構に反して細胞が過剰に増殖する組織塊を意味する。本発明において、癌とは、腫瘍を伴う疾患であれば特に限定されず、例えば、胃癌、白血病、大腸癌、肺癌、肝臓癌、食道癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨肉腫、悪性リンパ種、子宮頸癌、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤は、目的に応じて各種の薬学的投与形態にすることができ、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、乳剤等にすることにより、経口剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、注射剤、エアゾール剤とすることができる。
【0086】
3.本発明の化合物の製造方法
3−1.本発明の化合物の合成スキーム
本発明の化合物は、例えば、反応(C−1)〜(H)からなる、次の本発明の合成スキームに従って合成することができる。
【0087】
【化16】

【0088】
(反応式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
Zは、Yとは異なるアミノ基の保護基を表す。
Wはヒドロキシ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
上記スキームにおけるXは、この明細書で上述したものと同じものを表す。
【0089】
上記スキームにおけるYは、アミノ基の保護基を表す。Yとしては、例えば、これらに限定されるわけではないが、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。
Yとしては、これらの中でも特に、tert−ブトキシカルボニル基を用いることが好ましい。
【0090】
上記スキームにおけるZは、アミノ基の保護基を表す。ただし、ZはYとは異なる保護基とする。反応(C−2)において、一方の保護基のみを脱離させるためである。
Zとしては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。
Zとしては、これらの中でも特に、ベンジルオキシカルボニル基を用いることが好ましい。
【0091】
上記スキームにおけるWは、ヒドロキシル基の保護基を表す。Wとしては、これらに限定されるわけではないが、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基、p−メトキシベンジル基、tert−ブチル基、アセチル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
Wとしては、これらの中でも特に、tert−ブチルジメチルシリル基を用いることが好ましい。
【0092】
上記スキームにおけるR、R、R、R、R、R及びRは、この明細書で前に説明したものと同じものを表す。
上記スキームにおけるR及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。
上記スキームにおけるR´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ、R、R、R、R、R及びRの有するアミノ基が保護基Y若しくは他の保護基で保護されているものを表す。すなわち、Rx(X=1〜7)がアミノ基又はグアニジノ基を有するときに、そのアミノ基又はグアニジノ基が有するアミノ基を保護基Y若しくは他の保護基で保護したものが、Rx´(X=1〜7)となる。
【0093】
3−2.直鎖状ヘキサオキサゾールの合成
本発明の合成スキームでは、反応(C−1)〜(C−3)により、直鎖状ヘキサオキサゾールを合成する。
まず、本発明の合成スキームにおける反応(C−1)は、以下の反応を行うものである。
【0094】
【化17】

【0095】
(反応式中、Zはアミノ基の保護基を表す。
Wはヒドロキシ基の保護基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、Y(アミノ基の保護基)若しくは他の保護基で保護されたアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0096】
上記の反応(C−1)は、Zを脱保護する反応であり、Zの種類により反応条件が異なる。
例えば、Zがベンジルオキシカルボニル基の場合には、プロトン性極性有機溶媒中で、パラジウム触媒の存在下に、ベンジルオキシカルボニル基を脱保護することができる。
ここで、プロトン性極性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、メタノール・THF(テトラヒドロフラン)混合溶媒、エタノール・THF混合溶媒等を用いることができる。
パラジウム触媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、パラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素等を用いることができる。
【0097】
また、Zが9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基の場合には、二級アミンによって脱保護することができる。
Zが2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基の場合には、亜鉛粉末−酢酸などを作用させることで脱保護することができる。
Zがアリルオキシカルボニル基の場合には、パラジウム触媒の存在下、アミンを加えることにより脱保護することができる。
【0098】
次に、本発明の合成スキームにおける反応(C−2)は、以下の反応を行うものである。
【0099】
【化18】

【0100】
(反応式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
Zは、Yとは異なるアミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0101】
上記の反応(C−2)は、アルコキシカルボニル基COORをカルボニル基COOHとする反応であり、含水極性溶媒中において、強塩基性無機塩と反応させることにより行われる。
ここで、含水極性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、THFと水の混合溶媒、メタノールと水の混合溶媒等を用いることができる。
また、強塩基性無機塩としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。
【0102】
直鎖状ヘキサオキサゾールを合成する最後の工程である反応(C−3)は、以下の反応を行うものである。
【0103】
【化19】

【0104】
(反応式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
Zは、Yとは異なるアミノ基の保護基を表す。
Wはヒドロキシ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0105】
上記の反応(C−3)は、一般式(4´)に示される化合物のアミノ基と、一般式(5´)に示される化合物のカルボキシル基とを、縮合させる反応である。
この反応は、溶媒中において、縮合剤である4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホルニウム(DMT−MM)又はその塩を加えることにより行うことができる。ここで、溶媒としては、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等、あるいは、これらの混合溶媒を用いることができる。
あるいは、非プロトン性極性溶媒中において、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)を加えることにより、縮合させることができる。
ここで、非プロトン性極性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等を用いることができる。
【0106】
3−3.直鎖状ヘキサオキサゾールの大環状化
次に、反応(D−1)〜(D−3)により、直鎖状ヘキサオキサゾールの大環状化を行う。
ここで、反応(D−1)、(D−2)及び(D−3)を行う順序だが、(D−1)を最初に行ってもよく、(D−2)を最初に行ってもよい。また、反応(D−1)及び(D−2)を同時に行っても良い。
すなわち、(D−1)が、化合物の末端の−NHZ基の保護基Zを脱保護する反応であり、(D−2)が、化合物の末端のアルコキシカルボニル基COORをカルボニル基COOHとする反応であり、(D−3)が、(D−1)により生じたアミノ基と(D−2)により生じたカルボキシル基を縮合させる反応であるため、(D−1)と(D−2)の反応はいずれを先に行ってもよいことになる。
【0107】
本発明の合成スキームにおける反応(D−1)は、以下の反応を行うものである。
【0108】
【化20】

【0109】
(反応式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
Zは、Yとは異なるアミノ基の保護基を表す。
Wはヒドロキシ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0110】
上記反応式において、一般式(6´−1−1)で示される化合物は、末端にCO基とNHZ基を有する化合物であり、一般式(6´−1−2)で示される化合物は、末端にCOOH基とNHZ基を有する化合物である。
また、一般式(6´−2−1)で示される化合物は、末端にCO基とアミノ基を有する化合物であり、一般式(6´−2−2)で示される化合物は、末端にカルボキシル基とアミノ基を有する化合物である。
【0111】
上記の反応(D−1)は、Zを脱保護する反応であり、Zの種類により反応条件が異なる。
例えば、Zがベンジルオキシカルボニル基の場合には、プロトン性極性有機溶媒中で、パラジウム触媒の存在下に、ベンジルオキシカルボニル基を脱保護することができる。
ここで、プロトン性極性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、メタノール・THF(テトラヒドロフラン)混合溶媒、エタノール・THF混合溶媒等を用いることができる。
パラジウム触媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、パラジウム/炭素、水酸化パラジウム/炭素等を用いることができる。
【0112】
また、Zが9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基の場合には、二級アミンによって脱保護することができる。
Zが2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基の場合には、亜鉛粉末−酢酸などを作用させることで脱保護することができる。
Zがアリルオキシカルボニル基の場合には、パラジウム触媒の存在下、アミンを加えることにより脱保護することができる。
【0113】
本発明の合成スキームにおける反応(D−2)は、以下の反応を行うものである。
【0114】
【化21】

【0115】
(反応式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
Zは、Yとは異なるアミノ基の保護基を表す。
Wはヒドロキシ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0116】
上記反応式において、一般式(6´−1−1)で示される化合物は、末端にCO基とNHZ基を有する化合物であり、一般式(6´−1−2)で示される化合物は、末端にCOOH基とNHZ基を有する化合物である。
また、一般式(6´−2−1)で示される化合物は、末端にCO基とアミノ基を有する化合物であり、一般式(6´−2−2)で示される化合物は、末端にカルボキシル基とアミノ基を有する化合物である。
【0117】
上記の反応(D−2)は、アルコキシカルボニル基COORをカルボニル基COOHとする反応であり、含水極性溶媒中において、強塩基性無機塩と反応させることにより行われる。
ここで、含水極性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、THFと水の混合溶媒、メタノールと水の混合溶媒等を用いることができる。
また、強塩基性無機塩としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。
【0118】
本発明の合成スキームにおける反応(D−3)は、以下の反応を行うものである。
【0119】
【化22】

【0120】
(反応式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
Wはヒドロキシ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0121】
上記の反応(D−3)は、一般式(6´−2−2)で示される化合物の末端のアミノ基とカルボキシル基を縮合させる反応であり、非プロトン性溶媒中において、リン化合物の存在下に、反応させることができる。
ここで、非プロトン性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等や、これらの混合溶媒を用いることができる。
また、リン化合物としては、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、ビス−(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物(BOPCl)、ビス−(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸(BOP)等を用いることができる。
【0122】
3−4.大環状ヘキサオキサゾールの一部環化による大環状ヘプタオキサゾールの合成
次に、反応(E)〜(G)により、大環状ヘキサオキサゾールの一部を環化することによって、大環状ヘプタオキサゾールを合成する。
まず、本発明の合成スキームにおける反応(E)は、以下の反応を行うものである。
【0123】
【化23】

【0124】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0125】
上記の反応(E)は、一般式(7)に示される化合物が有するヒドロキシル基の保護基Wを脱離させる反応であり、Wの種類により反応条件が異なる。
例えば、Wがtert−ブチルジメチルシリル基の場合には、非プロトン性溶媒中において、フッ化水素を加えることにより、tert−ブチルジメチルシリル基を脱離させることができる。
また、Wがp−メトキシベンジル基の場合には、パラジウムを触媒とした水素添加反応、バーチ還元などで脱離できる。
Wがtert−ブチル基の場合には、トリフルオロ酢酸や、塩酸-酢酸エチル溶液などの強酸性条件下脱保護することができる。
Wがアセチル基の場合には、メタノール中炭酸カリウムによって脱保護することができる。
【0126】
Wがベンゾイル基の場合には、強塩基条件または強いヒドリド還元条件で脱保護することができる。
Wがトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基又はtert−ブチルジフェニルシリル基の場合には、酸性条件またはフッ化物イオンを作用させることで脱保護できる
【0127】
本発明の合成スキームにおける反応(F)は、以下の反応を行うものである。
【0128】
【化24】

【0129】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜6のアシル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0130】
上記の反応(F)は、ジクロロメタン中、上記一般式(8)に示される化合物と、メタンスルホニルクロリド(MsCl)及びトリエチルアミン(EtN)とを反応させ、さらにジアザビシクロウンデセン(DBU)を加えることにより、分子内脱水することにより、上記一般式(9)に示される化合物を得ることができる。
【0131】
本発明の合成スキームにおける反応(G)は、以下の反応を行うものである。
【0132】
【化25】

【0133】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜6のアシル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0134】
上記の反応(G)は、非プロトン性極性溶媒中において、N−ブロムスクシンイミド(NBS)と炭酸セシウム(CsCO)を作用させることにより行うことができる。
ここで、非プロトン性極性溶媒としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を用いることができる。
【0135】
尚、上記の反応(G)は、以下の中間体(11)を経る反応であると考えられる。
【0136】
【化26】

【0137】
最後に、アミノ基の保護基Y及びR´、R´、R´、R´、R´及びR´に含まれる保護基を脱離させることにより、本発明の化合物が得られる。すなわち、最後の工程である反応(H)は、以下の反応を行うものである。
【0138】
【化27】

【0139】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0140】
上記の反応(H)は、保護基Y及びR´、R´、R´、R´、R´及びR´に含まれる保護基を脱離させる反応であり、保護基Yの種類により反応条件が異なる。
例えば、Yがtert−ブトキシカルボニル基の場合には、メタノール、エタノール、ジクロロメタン、クロロホルム等に、塩酸、酢酸等の酸を加えた酸性溶媒中において、tert−ブトキシカルボニル基を脱離することができる。
Yが9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基の場合には、二級アミンによって脱保護することができる。
Yが2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基の場合には、亜鉛粉末−酢酸などを作用させることで脱保護することができる。
Yがアリルオキシカルボニル基の場合には、パラジウム触媒の存在下、アミンを加えることにより脱保護することができる。
【0141】
なお、R´、R´、R´、R´、R´及びR´における保護基が、アミノ基に対する保護基Yと同じ官能基である場合、上記の反応(H)は単一の反応により処理を終えることができる。一方、アミノ基に対する保護基Y、R´、R´、R´、R´、R´及びR´における保護基が、2種類以上の官能基である場合には、上記の反応(H)は、使用した保護基の種類に応じて複数の反応により処理を終えることができる。
【0142】
3−5.トリオキサゾールの合成方法
上記の本発明の合成スキームにおいて、一般式(4)及び(5)に示される化合物は、特許文献2(WO 02/48153)、非特許文献9(Suzanne G. Rzuczek et al.、2008、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、vol.18、pp.913-917)、非特許文献10(Gurpreet Singh Minhas et al.、2006、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、vol.16、pp.3891-3895)、非特許文献11(Masayuki Tera et al.、2006、Heterocycles、vol.69、pp.505-514)、非特許文献12(Nobuaki Endoh et al,、2003、Heterocycles、vol.60、pp.1567-1572)、Sang-Ku Yoo et al.、1992、Tetrahedron letters、vol.33、No.16、pp.2159-2162等の公知の方法により、あるいはこれらの改良方法により合成することができる。
【0143】
例えば、一般式(4)に示される化合物は、アミノ酸の誘導体を原料に、次のスキームに従って合成することができる。
【0144】
【化28】

【0145】
(上記式中、Zはアミノ基の保護基を表す。
Wは、ヒドロキシ基の保護基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、Y(Zと異なるアミノ基の保護基)で保護されたアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0146】
上記反応(A−1)は、アミノ酸とアミノ酸の誘導体間にペプチド結合を形成してジペプチドを得る反応であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びトリエチルアミン(EtN)を反応試薬とすることができる。
上記反応(A−2)は、反応(A−1)により得られたジペプチドを閉環してオキサゾール環を形成する反応である。この反応は、例えば、3フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)を試薬として用いる反応に次いで、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びブロモトリクロロメタン(BrCCl)を試薬として用いる反応の2ステップで行うことができる。
上記反応(A−3)は、反応(A−2)で得られた化合物のメチル基を脱離させる反応である。この反応は、例えば、テトラヒドロフランと水の混合溶媒中、水酸化リチウムを加えることにより行うことができる。
このようにして、一般式(12)に示される化合物を得ることができる。
【0147】
上記反応(A−4)は、2種類のアミノ酸誘導体間にペプチド結合を形成してジペプチドを得る反応であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びトリエチルアミン(EtN)を反応試薬とすることができる。
上記反応(A−5)は、反応(A−4)により得られたジペプチドを閉環してオキサゾール環を形成する反応である。この反応は、例えば、3フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)を試薬として用いる反応に次いで、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びブロモトリクロロメタン(BrCCl)を試薬として用いる反応の2ステップで行うことができる。
上記反応(A−6)は、アミノ基の保護基Zを脱保護する反応であり、本明細書において既に述べた方法により行うことができる。
このようにして一般式(13)に示される化合物を得ることができる。
【0148】
上記反応(A−7)は、一般式(12)に示される化合物と一般式(13)に示される化合物の間にペプチド結合を形成して、テトラペプチド得る反応であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を試薬として反応させることができる。
上記反応(A−8)は、反応(A−7)により得られたテトラペプチドを閉環してオキサゾール環を形成する反応である。この反応は、例えば、3フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)を試薬として用いる反応に次いで、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びブロモトリクロロメタン(BrCCl)を試薬として用いる反応の2ステップで行うことができる。
このようにして、一般式(4)で示される化合物を得ることができる。
【0149】
また、一般式(5)に示される化合物は、アミノ酸誘導体を原料に、次のスキームに従って合成することができる。
【0150】
【化29】

【0151】
(上記式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
ZはYとは異なるアミノ基の保護基を表す。
Wは、ヒドロキシ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
は、メチル基又はエチル基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【0152】
上記反応(B−1)は、2種類のアミノ酸誘導体間にペプチド結合を形成してジペプチドを得る反応であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びトリエチルアミン(EtN)を反応試薬とすることができる。
上記反応(B−2)は、反応(B−1)により得られたジペプチドを閉環してオキサゾール環を形成する反応である。この反応は、例えば、3フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)を試薬として用いる反応に次いで、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びブロモトリクロロメタン(BrCCl)を試薬として用いる反応の2ステップで行うことができる。
上記反応(B−3)は、反応(B−2)で得られた化合物のメチル基を脱離させる反応である。この反応は、例えば、テトラヒドロフランと水の混合溶媒中、水酸化リチウムを加えることにより行うことができる。
このようにして、一般式(14)に示される化合物を得ることができる。
【0153】
上記反応(B−4)は、2種類のアミノ酸誘導体間にペプチド結合を形成してジペプチドを得る反応であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)及びトリエチルアミン(EtN)を反応試薬とすることができる。
上記反応(B−5)は、反応(B−4)により得られたジペプチドを閉環してオキサゾール環を形成する反応である。この反応は、例えば、3フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)を試薬として用いる反応に次いで、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びブロモトリクロロメタン(BrCCl)を試薬として用いる反応の2ステップで行うことができる。
上記反応(B−6)は、アミノ基の保護基Zを脱保護する反応であり、本明細書において既に述べた方法により行うことができる。
このようにして一般式(15)に示される化合物を得ることができる。
【0154】
上記反応(B−7)は、一般式(14)に示される化合物と一般式(15)に示される化合物の間にペプチド結合を形成して、テトラペプチド得る反応であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を試薬として反応させることができる。
上記反応(B−8)は、反応(B−7)により得られたテトラペプチドを閉環してオキサゾール環を形成する反応である。この反応は、例えば、3フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)を試薬として用いる反応に次いで、ジアザビシクロウンデセン(DBU)及びブロモトリクロロメタン(BrCCl)を試薬として用いる反応の2ステップで行うことができる。
このようにして、一般式(5)で示される化合物を得ることができる。
【0155】
3−6.原料とするアミノ酸誘導体
本発明の化合物を製造するための原料、すなわち、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体としては、公知のアミノ酸を原料として得られた誘導体を用いることができ、また、新たに合成した新規なアミノ酸を原料として得られた誘導体を用いることもできる。
【0156】
ここで、公知のアミノ酸としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、オルニチン、2,5−ジアミノペンタン酸、リシン、2,6−ジアミノカプロン酸、アルギニン、2−アミノ−5−グアニジノペンタン酸、ホモアルギニン(N−(アミノイミノメチル)−L−リシン)、2,7−ジアミノ−7−イミノヘプタン酸、アルビジイン(3−(アミノカルボニルアミノ)−L−アラニン)、シトルリン、ホモシトルリン(N−(アミノカルボニル)−L−リシン)、アスパラギン、2−アミノ−3−カルバモイルプロパン酸、グルタミン、2−アミノ−4−カルバモイル酪酸、ギガルチニン(N−[[(アミノイミノメチル)アミノ]カルボニル]−L−オルニチン)、アミノクレマイシン(2−アミノ−4−(4−アミノ−2,5−シクロヘキサジエニル)酪酸)、テトラヒドロラチリン(α,2−ジアミノ−1,4,5,6−テトラヒドロ−4−ピリミジンプロパン酸)、セリン、トレオニン、アロトレオニン、β−ヒドロキシノルバリン(3−ヒドロキシ−L−ノルバリン)、2−アミノ−3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシロイシン、2−アミノ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸、3−ヒドロキシオルニチン、3−ヒドロキシリシン、3−フェニルセリン、2−アミノ−3―ヒドロキシ−3−フェニルプロパン酸、3−(2−チエニル)セリン、α−アミノ−β−ヒドロキシ−2−チオフェンプロピオン酸、α−アミノ−β−ヒドロキシ−2−フランプロピオン酸等を用いることができる。
【0157】
アミノ酸の誘導体は、例えば、上記公知のアミノ酸をアルキルエステルとすることにより、又は、保護基を付加することにより得ることができる。ここでアルキルエステルとは、メチルエステル又はエチルエステルである。アルキルエステルは、例えば、アミノ酸とアルコールを反応させることによって得ることもできるが、他の方法により得た誘導体であってもよい。また、保護基とは、前述したY、Z又はWと同じ保護基を用いることができ、また、これ以外の保護基を用いることもできる。
【0158】
ここで、アミノ基の保護基であるtert−ブトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基等でアミノ酸を保護する場合には、例えば、これらに限定されるわけではないが、塩基の存在下に、ジ−tert−ブトキシカルボニル基又はクロロギ酸ベンジルを反応させることにより、保護することができる。
また、ヒドロキシル基の保護基であるtert−ブチルジメチルシリル基、p−メトキシベンジル基等でヒドロキシル基を保護する場合には、例えば、これらに限定されるわけではないが、塩基の存在下に、tert−ブチルジメチルシリルクロリド又はp−メトキシベンジルクロリドを反応させることにより、保護することができる。
【0159】
本発明の化合物は、原料であるアミノ酸を適宜選択することにより、所望の構造を有する化合物を得ることができる。例えば、一般式(1)におけるXが−CH−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、オルニチン、2,5−ジアミノペンタン酸、リシン又は2,6−ジアミノカプロン酸等の誘導体(保護基を付加したもの)を用いればよい。
また、一般式(1)におけるXが−NHC(NH)−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、アルギニン、2−アミノ−5−グアニジノペンタン酸、ホモアルギニン(N−(アミノイミノメチル)−L−リシン)等の誘導体を用いればよい。
次に、一般式(1)におけるXが−CH(NH)−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、2,5,5−トリアミノペンタン酸等の誘導体を用いればよい。
【0160】
一般式(1)におけるXが−C(NH)−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、2,7−ジアミノ−7−イミノヘプタン酸の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるXが−NHCO−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、アルビジイン(3−(アミノカルボニルアミノ)−L−アラニン)、シトルリン又はホモシトルリン(N−(アミノカルボニル)−L−リシン)の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるXが−CO−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、アスパラギン、2−アミノ−3−カルバモイルプロパン酸、グルタミン又は2−アミノ−4−カルバモイル酪酸の誘導体を用いればよい。
【0161】
一般式(1)におけるXが−NHCONHC(NH)−である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、ギガルチニン(N−[[(アミノイミノメチル)アミノ]カルボニル]−L−オルニチン)等の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるXがシクロヘキサジエニレン基である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、アミノクレマイシン(2−アミノ−4−(4−アミノ−2,5−シクロヘキサジエニル)酪酸等の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるXが3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基である化合物を製造するためには、上記反応式(B−1)で用いるアミノ酸として、これらに限定されるわけではないが、例えば、テトラヒドロラチリン(α,2−ジアミノ−1,4,5,6−テトラヒドロ−4−ピリミジンプロパン酸)等の誘導体を用いればよい。
【0162】
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRは、原料であるアミノ酸を適宜選択することにより、所望の構造にすることができる。
例えば、R、R、R、R、R及びRを、水素原子とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、セリンの誘導体(アルキルエステル又は保護基を付加したもの)を用いればよい。
また、一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、トレオニン、アロトレオニン、β−ヒドロキシノルバリン(3−ヒドロキシ−L−ノルバリン)、2−アミノ−3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシロイシン、2−アミノ−3−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸、3−ヒドロキシオルニチン又は3−ヒドロキシリシン等の誘導体を用いればよい。
【0163】
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、アミノ基とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、例えば、2,3−ジアミノ−3−ヒドロキシプロピオン酸等の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、グアニジノ基とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、例えば、2−アミノ−3−グアニジノ−3−ヒドロキシプロピオン酸等の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、2−アミノ−3−ヒドロキシ−3−ベンジルプロパン酸等の誘導体を用いればよい。
【0164】
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、3−フェニルセリン又は2−アミノ−3―ヒドロキシ−3−フェニルプロパン酸等の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、炭素数2〜6の複素環基とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、3−(2−チエニル)セリン、α−アミノ−β−ヒドロキシ−2−チオフェンプロピオン酸、α−アミノ−β−ヒドロキシ−2−フランプロピオン酸等の誘導体を用いればよい。
一般式(1)におけるR、R、R、R、R及びRを、ハロゲン原子とするためには、上記反応(A−1)、(A−4)、(B−1)及び(B−4)で用いるアミノ酸誘導体として、これらに限定されるわけではないが、例えば、2−アミノ−3−クロロ−3−ヒドロキシプロピオン酸等の誘導体を用いればよい。
【0165】
3−7.置換基の変換
本発明の化合物は、上記のように原料として用いるアミノ酸を適宜選択することにより、所望の構造のものを得ることができる。しかし、一度合成した化合物の置換基を別の置換基に変換することによっても、所望の構造の化合物を得ることが可能である。
例えば、本発明の化合物の側鎖がアミノアルキル基である場合に、次の反応で示されるように、ウレイドアルキル基に変換することができる。
【0166】
【化30】

【0167】
上記反応は、アミノアルキル基を有する大環状ヘプタオキサゾールをトリエチルアミン中で、塩化水銀及び1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチル−2−チオプソイドウレア(1,3-Bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudorea)を加え、次にトリフルオロ酢酸を加えた溶媒中で反応させることにより、ウレイドアルキル基を有する大環状ヘプタオキサゾールを製造することができる。
【0168】
3−8.中間化合物
以上で説明したように、本発明の化合物を合成するスキームにおいては、一般式(4)及び一般式(5)を出発化合物とし、一般式(6)〜(10)を中間化合物として最終的に一般式(1)の化合物を合成する。ここで、一般式(6)〜(10)を中間化合物は、全て一般式(1)の化合物を合成するための化合物として有用である。特に、一般式(10)に示される化合物は、アミノ基に対する保護基Y、R´、R´、R´、R´、R´及びR´に含まれる保護基を有している以外は、一般式(1)と同じ化学構造を有している。したがって、一般式(10)に示される化合物は、本発明の化合物を製造する上で特に有用な化合物である。
【0169】
4.G-quadruplex構造を可視化する低分子プローブ
本発明の化合物は、G-quadruplex構造に強く結合する活性を奏するものである。従って、本発明の化合物と蛍光化合物を連結すれば、G-quadruplex構造の存在を可視化する低分子のプローブとすることができる。ここで、蛍光化合物としては、本発明の化合物における側鎖のアミノ基と反応しうる蛍光化合物を用いることにより、本発明の化合物と連結することができる。
【0170】
ここで、アミノ基と反応し得る蛍光化合物としては、蛍光色素分子に、アミノ基と反応する官能基を付加した化合物を用いることができる。ここで、蛍光色素分子としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、BODIPY(商標名、モレキュラー・プローブ社)、フルオレセイン、TAMRA、5−FAM、6−FAM、Alexa Fluor(商標名、モレキュラー・プローブ社)及びCascade Blue(商標、モレキュラー・プローブ社)等を用いることができる。そして、これらの蛍光色素分子に、必要に応じてリンカーを介して、スクシンイミジルエステル(スクシンイミジルオキシカルボニル基)、酸ハロゲン化物(ハロゲンオキシカルボニル基)、イソチオシアネート基、カルボキシル基等のアミノ基と反応し得る官能基を付加することにより、目的の蛍光化合物を得ることができる。
尚、このようなアミノ基と反応し得る官能基の付加された蛍光色素分子は、市販のものを用いてもよく、例えば、FITC(株式会社同仁化学)、BODIPY−TRX SE(モレキュラー・プローブ社)、5(6)−TAMRA−X SE(ANA SPEC社)等を利用することができる。
【0171】
一例として、蛍光化合物として、スクシンイミジルエステル(スクシンイミジルオキシカルボニル基)を付加した蛍光色素分子を用いた場合には、下記反応式のように、一般式(1)で示される化合物と、一般式(16)で示されるスクシンイミジルエステルを付加した蛍光色素分子とを反応させることによって、本発明のプローブを得ることができる。
【0172】
【化31】

【0173】
(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、及び、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Qは、蛍光色素を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
10は、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。)
【0174】
上記反応は、塩基性溶媒中で行うことができるが、特に、トリエチルアミン中で行うことが好ましい。また、反応温度は通常、20〜80℃程度である。
一般式(16)において、Qは蛍光色素を表すが、蛍光色素としては特に限定されず、例えば、BODIPY(商標名、モレキュラー・プローブ社)、フルオレセイン、TAMRA、5−FAM、6−FAM、Alexa Fluor(商標名、モレキュラー・プローブ社)及びCascade Blue(商標、モレキュラー・プローブ社)等を用いることができる。
また、一般式(16)において、R10は、炭素数1〜12のアルキレン基を表すが、直鎖状のもののみならず、分岐鎖を有するアルキレン基も含むものである。
【0175】
本発明のプローブは、G-quadruplex構造に強く結合するため、蛍光化合物に由来する蛍光を検出することで、G-quadruplex構造を測定することができる。例えば、測定対象の核酸と本発明のプローブとを接触(例えば、溶液中にて混合する)させた後、未反応のプローブを除去した後に核酸における蛍光化合物に由来する蛍光を検出することで、当該核酸にG-quadruplex構造が含まれているか否かを判断することができる。また、この場合、蛍光強度に基づいて測定対象の核酸に含まれるG-quadruplex構造の存在を定量的に判定することができる。
また、本発明のプローブは、単離した生体細胞や生体組織に取り込ませ、蛍光化合物に由来する蛍光を検出することで、当該生体細胞や生体組織におけるG-quadruplex構造の存在位置を測定することができる。この場合においても、蛍光強度に基づいて測定対象の生体細胞や生体組織に含まれるG-quadruplex構造の存在位置とともに存在量を定量的に判定することができる。
【実施例】
【0176】
次に、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0177】
実施例1: 本発明の化合物の合成
7つのオキサゾールからなる大環状構造を有し、側鎖としてアミノブチル基を有するL1H1−7OTDを、次のスキーム1に従って合成した。
【0178】
【化32】

【0179】
(1)反応a
トリオキサゾール4を、水素をエアレーションしたテトラヒドロフラン(THF)とメタノールの混合溶媒に溶解し、水酸化パラジウム/炭素の存在下に、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)を脱離した。
(2)反応b
トリオキサゾール5を、THFと水の混合溶媒に溶かし、一水和水酸化リチウムを加えることにより、カルボン酸を生成させた。
(3)反応c
トリオキサゾール4から合成したアミンと、トリアゾール5から合成したカルボン酸とを、THFと水の混合溶媒に溶かし、N−メチルモルホリン4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホルニウムクロライド(DMT−MM)とN−メチルモルホリン(NMM)を加えることにより、アミンとカルボン酸を縮合させた。トリオキサゾール4及びトリオキサゾール5から91%の収率で直鎖状のヘキサオキサゾール6を得た。
(4)ヘキサオキサゾールの大環状化
反応aと同じ条件で、ヘキサオキサゾール6のCbz基を脱離させ、反応bと同じ条件で、ヘキサオキサゾール6のメチルエステルを脱保護した。その後、生じたアミノ酸を
、ジイソプロピルエチルアミン(EtPrN)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)及びジフェニルリン酸アジド(DPPA)を加えたN‘N−ジメチルホルムアミドとジクロロメタンの混合溶媒中に、3mMとなるよう高希釈して環化し、ヘキサオキサゾール6から57%の収率で大環状ビスアミドを得た。
【0180】
(5)反応e
ビスアミド7をTHF溶媒に溶かし、HF・ピリジンにより、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)基を脱保護し、アルコール8を得た。
(6)反応f
アルコール8をジクロロメタンに溶かし、メタンスルホニルクロリド(MsCl)とトリエチルアミン(EtN)を加えて、メシレーションによりオレフィン9に変換し、ジアザビシクロウンデセン(DBU)で処理した。
【0181】
(7)反応g
アセトニトリル溶媒中において、オレフィン9をN−ブロムスクシンイミド(NBS)と反応させ、生じた臭化物をトリエチルアミン(EtN)で処理し、さらに炭酸セシウムにより環化して、ヘプタオキサゾール11を生じさせた。
(8)反応h
最後に、ヘプタオキサゾール11をクロロホルムに溶解し、トリフルオロ酢酸(TFA)によりtert−ブトキシカルボニル(Boc)基を脱保護し、オレフィン9から30%の収率でL1H1−7OTDを得た。
【0182】
(9)NMRスペクトルの測定
上記スキームにより合成されたL1H1−7OTDについて、重水素置換溶媒中において核磁気共鳴装置で測定を行い、NMRスペクトルを測定した。その結果は以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, ref 2.5 ppm for DMSO d-6)
δ8.97 (s, 1H), 8.93 (s, 1H), 8.86 (s, 1H), 8.83 (s, 2H), 8.71 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 8.06 (br, 2H), 7.62 (br, 1H), 5.33 (br, 1H), 2.06 (m, 1H), 1.70 (br, 3H), 1.24 (br, 1H), 0.908 (br, 1H).
13C NMR (100 MHz, ref 49.0 ppm for DMSO d-6)
δ172.6, 168.1, 165.2, 164.7, 164.6, 163.7, 152.3, 152.1, 150.4, 150.3, 150.1, 149.9, 149.4, 149.2, 148.6, 148.5, 148.2, 148.0, 145.2, 139.0, 138.3, 138.2, 138.1, 137.4, 57.27, 57.10, 43.46, 41.96, 36.00, 28.98.
(10)質量分析
上記スキームにより合成されたL1H1−7OTDについて、ESI−MS装置にて測定を行い、分子量を測定したところ、分子量は598.1467であった。また、得られた分子量値から元素組成を推定したところC2719Naであった。これらの結果から目的の化合物が合成できたことを確認した。
(11)旋光度の測定
上記スキームにより合成されたL1H1−7OTDを、クロロホルムとメタノールの混合溶媒に溶解し、旋光光度計を用いて測定を行った。得られた値は、[α]=77.1であり、光学純度の高い化合物が得られたことを確認した。
【0183】
実施例2: テロメラーゼ阻害活性の測定
合成された本発明の化合物L1H1−7OTDついて、TRAPアッセイを用いてテロメアーゼ阻害活性を試験した。TRAPアッセイは、G-quadruplex結合剤のテロメアーゼ阻害活性を簡便に評価するために広く用いられている。このアッセイにより、IC50が0.8nMという、極めて強力なテロメラーゼ阻害活性が示された。この化合物は、現在までに報告されている中で最も強力なテロメラーゼ阻害剤である。
TRAPアッセイは、Tabata, Y. et al., J.Antibiot., 1999, vol.52, pp.412に記載されたプロトコールに従い、ヒトBリンパ腫Namalwa細胞の細胞溶解物から粗精製されたテロメラーゼに対する阻害活性を測定した。
【0184】
(実施例3: L1H1−7OTDのテロメアとの相互作用の測定)
telo24とその変異配列であるtelo24-mutを用いたPCRストップアッセイにより、テロメアのDNA配列と本発明の化合物L1H1−7OTDとの選択的な相互作用を試験した。PCRのプロトコールに従い、telo24とtelo24-mutの鎖伸張反応に対するL1H1−7OTDの阻害活性を評価した。この試験により、L1H1−7OTDは、telo24のPCRを、IC50が0.67±0.01μMの値で強く阻害した。一方、telo24-mutに対するL1H1−7OTDの阻害活性は弱く、そのIC50値は5.2±0.8μMであった。これらの結果から、L1H1−7OTDは、telo24の変異配列よりも7.7倍以上も強くtelo24と選択的に相互作用することが示された。
【0185】
比較例1: 大環状構造中のオキサゾールが6つの化合物
(1)L2H2−6OTDの合成
比較例として、アミノ基又はグアニジノ基を持つ側鎖を有するが、大環状構造を構成するオキサゾールが6つである化合物(L2H2−6OTD)を以下のスキームにより合成した。
【0186】
【化33】

【0187】
(1−1)反応a
トリオキサゾール3を、THFと水の混合溶媒に溶解し、水酸化リチウムを加えることによりカルボン酸を生成させた。
(1−2)反応b
トリオキサゾール3を、水素をエアレーションしたテトラヒドロフラン(THF)とメタノールの混合溶媒に溶解し、水酸化パラジウム/炭素の存在下に、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基を脱保護して、アミンを生成させた。
(1−3)反応c
反応aにより生成させたカルボン酸4と、反応bにより生成させたアミン5とを、N−メチルモルホリン4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホルニウムクロライド(DMT−MM)とN−メチルモルホリン(NMM)を加えることにより縮合させ、直鎖状のヘキサオキサゾール6を得た。
(1−4)反応d
ヘキサオキサゾール6を、THFと水の混合溶媒に溶解し、水酸化リチウムを加えることにより末端のメトキシカルボニル基をカルボキシル基とした。
(1−5)反応e
ヘキサオキサゾール6を、THFとメタノールの混合溶媒中で、水酸化パラジウム/炭素の存在下に、末端のベンジルオキシカルボニル(Cbz)基を脱保護して末端をアミノ基とした。
【0188】
(1−6)反応f
N,N−ジメチルホルムアミドとジクロロメタンの混合溶媒中で、ジイソプロピルエチルアミン(EtPrN)と4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)とビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィニッククロリド(BOPCl)を加え、反応dにより生じたヘキサゾール6のカルボキシル基と、反応eにより生じたヘキサオキサゾール6のアミノ基を縮合して、大環状ヘキサオキサゾールを生成させた。
(1−7)反応g
ジクロロメタン中、トリフルオロ酢酸を加えて酸性とすることにより、大環状ヘキサオキサゾールの2つの側鎖Rの保護基であるtert−ブトキシカルボニル(Boc)基を脱保護し、ジアミノブチル大環状ヘキサオキサゾール2bを得た。
(1−8)反応h及びi
トリエチルアミン、塩化水銀及び1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチル−2−チオシュードウレア(1,3-Bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudorea)を加え、次にトリフルオロ酢酸を加えたジクロロメタン中で、ジアミノブチル大環状ヘキサオキサゾール2bのアミノ基をグアニジノ基に変換し、ジグアニジノブチル大環状ヘキサオキサゾール2cを得た。
(1−9)反応i
ジクロロメタン溶媒中で、無水酢酸と反応させることにより、ジグアニジノブチル大環状ヘキサオキサゾール2cの側鎖のグアニジノ基にアセチルアミンとした。
【0189】
(2)テロメラーゼ阻害活性の測定
上記のスキームにより合成したL2H2−6OTDのテロメラーゼ阻害活性を、実施例2に記載のTRAPアッセイにより測定した。
その結果、L2H2−6OTDのテロメラーゼ阻害活性は、側鎖の末端がアミノ基である大環状ヘキサオキサゾール(2b)についてはIC50が20nMであり、側鎖の末端がグアニジノ基である大環状ヘキサオキサゾール(2c)についてはIC50が20nMであった。これは、実施例1で合成した本発明に化合物のテロメラーゼ阻害活性(IC50=0.8nM)よりもかなり低いものであった。
【0190】
比較例2: アミノ基のある側鎖を有しない化合物
(1)S1T1−7OTDの合成
次の比較例として、7つのオキサゾールからなる大環状構造を有するが、アミノ基のある側鎖を有しない次の化合物(S1T1−7OTD)を、非特許文献5(石塚大倫ら他5名、2008年3月12日発行、日本化学会講演予稿集、Vol.88、No.2、pp.1049)に記載のスキームにより合成した。
【0191】
【化34】

【0192】
(2)テロメラーゼ阻害活性の測定
上記のスキームにより合成したS1T1−7OTDのテロメラーゼ阻害活性を、実施例2に記載のTRAPアッセイにより測定した。
その結果、S1T1−7OTDのテロメラーゼ阻害活性は、IC50=10nMであった。これは、実施例1で合成した本発明に化合物のテロメラーゼ阻害活性(IC50=0.8nM)よりもかなり低いものであった。
本発明の化合物及び比較例で合成した化合物並びにテロメスタチンのテロメラーゼ阻害活性を測定した結果を次の表に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
実施例3: 抗腫瘍活性の測定
抗腫瘍活性の測定には、テロメラーゼを過剰に発現しているガン細胞であるHeLa細胞(子宮頸癌の細胞株)と、テロメラーゼを発現していないガン細胞であるSaos-2細胞(骨肉芽腫の細胞株)を用いた。また、抗腫瘍剤としては、実施例1で合成した本発明の化合物L1H1−7OTDを用い、比較として代表的な抗腫瘍剤であるドキソルビシン(doxorubicin)を用いた。ドキソルビシンは、DNAの塩基対間に挿入されてDNA増幅を阻害することにより腫瘍の増殖を抑制する抗腫瘍剤であり、テロメラーゼを阻害することにより腫瘍の増殖を抑制するものではない。
2つのガン細胞の培養には、10%のウシ胎児血清、50μg/mlのストレプトマイシン及び5U/mlペニシリンを含む改良したダルベッコイーグル培地(Dulbecco's Eagle's medium)を用いた。1つのウェルあたり2×10個のガン細胞を、96穴のウェルプレートに播種し、いろいろな濃度の抗腫瘍剤(L1H1−7OTD及びドキソルビシン)で6日間処理した。ガン細胞の生存能力を、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム ブロミド)アッセイで測定した。6日間の培養で、ガン細胞の生存率が50%となる抗腫瘍剤の濃度をIC50とした。
【0195】
その結果、L1H1−7OTDは、テロメラーゼを過剰に発現しているガン細胞であるHeLa細胞に対してIC50が2.2±0.5μMの細胞毒性を示したが、テロメラーゼを発現していないガン細胞であるSaos-2細胞に対しては細胞毒性を示さなかった。一方、テロメラーゼに依存せず抗腫瘍活性を示すドキソルビシンは、HeLa細胞に対してIC50が0.03±0.001μMの細胞毒性を示し、Saos-2細胞に対してIC50が0.07±0.005μMの細胞毒性を示した。
これらの結果から、本発明の化合物は、テロメラーゼを過剰に発現しているガン細胞に特異的に作用して抗腫瘍活性を奏するものであり、テロメラーゼを発現していない細胞には作用しないことが明らかとなった。
【0196】
実施例4: ウレイドブチル基を有する大環状ヘプタオキサゾールの合成
実施例1で合成したL1H1−7OTDを、トリエチルアミン中で、塩化水銀及び1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチル−2−チオシュードウレア(1,3-Bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudorea)を加え、次にトリフルオロ酢酸を加えた溶媒中で反応させることにより、アミノブチル基をウレイドブチル基に変換した。反応式を次に示す。
【0197】
【化35】

【0198】
実施例5: G-quadruplex構造を可視化する低分子プローブの合成
実施例1で合成したL1H1−7OTDを、トリエチルアミン中で、蛍光色素であるBODIPYと連結したプロピオン酸スクシンイミドと反応させた。反応は、60℃で行い、80%の収率で生成物(L1BOD-7OTD)が得られた。反応式を次に示す。
【0199】
【化36】

【0200】
実施例6: プローブの機能評価
G-quadruplex構造を形成する一本鎖DNAであるtelo24(5-TTA GGG TTA GGG TTA GGG TTAGGG-3:配列番号1)と、G-quadruplex構造を形成しない一本鎖DNAであるtelo24-mut(5- TTA GAG TTA GAG TTA GAG TTA GGG-3:配列番号2)を調整した。次に、これらと実施例1で合成したL1H1-7OTD及び実施例5で合成したプローブとを、図1中の表に示される8通りの組み合わせで混合し、12%のポリアクリルアミドゲルの8つのレーンで、TBEバッファーを用いて電気泳動を行った。図1中、「+」は、DNAに対して化合物を1等量添加していることを示し、「++」は、DNAに対して化合物を10等量添加していることを示す。泳動後の一本鎖DNAをStains-all(シグマ−アルドリッチ社製)で染色し、Stains-allの蛍光波長と、BODIPYの蛍光波長とで検出を行った。図1中、「L1BOD-7OTD」は、BODIPYの蛍光波長で励起したときのゲルの発光を撮影した写真であり、「Stains-all」は、BODIPYの蛍光波長で励起したときのゲルの発光を撮影した写真であり、「Merged」は、これらの二つを重ねたものである。これらの結果から、本発明のプローブは、G-quadruplex構造を形成するtelo24のみを検出できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明の化合物は、高いテロメラーゼ阻害活性を有するため、癌のメカニズムや動植物の発生メカニズムの研究に用いる生化学的試薬として有用であり、また、副作用の少ない抗腫瘍剤としても有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0202】
SEQUENCE LISTING

<110> National University Corporation Tokyo University of Agriculture and Technology
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology

<120> A telomerase inhibitor

<130> 090077

<150> JP 2008-166494
<151> 2008-06-25

<160> 2

<170> PatentIn version 3.4

<210> 1
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial

<220>
<223> Synthetic DNA

<400> 1
ttagggttag ggttagggtt aggg 24


<210> 2
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial

<220>
<223> Synthetic DNA

<400> 2
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)で示される化合物。
【化1】

(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
Xが、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、又は、−NHCONHC(NH)−であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、−CH−、−NHC(NH)−又は−CH(NH)−であることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物において、Xが−CH−であり、Rが炭素数1〜7の直鎖状のアルキレン基であって、次の一般式(2)で示される化合物。
【化2】

(式中、nは2〜8の整数を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項5】
nが4であることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子又はアミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜7のアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
、R、R、R、R及びRのいずれも、水素原子であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物において、Xが−CH−であり、Rが炭素数3のアルキレン基であり、R、R、R、R、R及びRが水素原子であり、次の構造式(3)で示される化合物。
【化3】

【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の塩。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその塩を含んでなる、テロメラーゼ阻害剤。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、抗腫瘍剤。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、以下の(F)〜(H)の工程を含むことを特徴とする製造方法:
(F)ジクロロメタン中、下記の一般式(8)に示される化合物とメタンスルホニルクロリド(MsCl)及びトリエチルアミン(EtN)とを反応させ、さらにジアザビシクロウンデセン(DBU)を加えることにより、分子内脱水して下記の一般式(9)に示される化合物を得る工程;
【化4】

(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
(G)非プロトン性極性溶媒中において、次の一般式(9)に示される化合物に、N−ブロムスクシンイミド(NBS)と炭酸セシウム(CsCO)を作用させて、次の一般式(10)に示される化合物を得る工程;
【化5】

(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
(H)次の一般式(10)に示される化合物が有する保護基Y及びR´、R´、R´、R´、R´及びR´に含まれる保護基を脱離させて、次の一般式(1)に示される化合物を得る工程。
【化6】

(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Yは、アミノ基の保護基を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
´、R´、R´、R´、R´及びR´は、それぞれ独立に、水素原子、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、保護基を有するアミノ基、保護基を有するグアニジノ基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、保護基を有するアミノ基若しくは保護基を有するグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数2〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項13】
保護基Yが、tert−ブトキシカルボニル基(Boc基)であり、酸性溶媒中で、保護基Y(Boc基)を脱離させることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜8いずれかに記載の化合物と、当該化合物におけるアミノ基に反応しうる蛍光化合物とを反応させたG-quadruplex構造を可視化するプローブ。
【請求項15】
上記蛍光化合物は、一般式(16)に示される化合物であって、一般式(17)で示される化合物である請求項14記載のプローブ。
【化7】

【化8】

(式中、Xは、−CH−、−NHC(NH)−、−CH(NH)−、−C(NH)−、−NHCO−、−CO−、−NHCONHC(NH)−、シクロヘキサジエニレン基、又は、3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2,6−イル基を表す。
Qは、蛍光色素を表す。
は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アミノ基、グアニジノ基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基、アミノ基若しくはグアニジノ基を有していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の複素環基又はハロゲン原子を表す。
10は単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数1〜12のアルケニレン基又は炭素数1〜12のアルキニレン基を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2010−30999(P2010−30999A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151031(P2009−151031)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年1月12日 インターネットアドレス「http://www3.interscience.wiley.com/cgi−bin/fulltext/121636283/abstract」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月13日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第89春季年会 講演予稿集2」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発」委託研究産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(500535301)社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム (22)
【Fターム(参考)】