説明

テンションメンバ固定具

【課題】テンションメンバがほつれたりすることなく、確実に固定することができるテンションメンバ固定具を提供する。
【解決手段】基礎部材11の上方に押さえ部材12をスライド可能に取り付けており、基礎部材11上に載置されたテンションメンバ2を、基礎部材11と基礎部材11側へスライドさせた押さえ部材12とにより挟み込んで固定可能とした。そのため、テンションメンバ2を固定するに際して、従来の如くネジの回転方向への負荷がテンションメンバ2にかかったりすることがなく、テンションメンバ2がほつれたりしない。したがって、テンションメンバ2を固定した状態の外観がよい上、ほつれたことにより固定が緩んでしまう等といった事態の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば光成端箱内等において、光ケーブルのテンションメンバを固定するためのテンションメンバ固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テンションメンバ固定具としては種々のものが考案されており、たとえば特許文献1に開示されているようなものが知られている。これは、切り欠き孔内を挿通させたテンションメンバに対し、その上方からネジをねじ込み、該ネジの先端部によりテンションメンバを孔の下面に押し付ける、すなわちネジの先端面と切り欠き孔の内面とで挟み込むことによってテンションメンバを固定可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−15378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のテンションメンバ固定具によれば、固定時にテンションメンバにネジの回転方向で負荷がかかるため、テンションメンバがほつれてしまい、外観が悪くなったり、ほつれたことにより固定が緩んでしまう等といった問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、テンションメンバがほつれたりすることなく、確実に固定することができるテンションメンバ固定具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、光ケーブルのテンションメンバを固定するためのテンションメンバ固定具であって、下向きコ字状に折り曲げられ、前後方向で対向する一対の第1壁部と、前記第1壁部の上端同士を連結する天井部とを有する基礎部材と、上向きコ字状に折り曲げられ、前後方向で対向する一対の第2壁部と、前記第2壁部の下端同士を連結する底部とを有する押さえ部材とを備え、前記基礎部材の上方に前記押さえ部材を前記基礎部材側へスライド可能に取り付けるとともに、前記基礎部材の前記天井部又は前記押さえ部材の底部の何れか一方に、前後方向の全域にわたってスリットを開設し、前記スリット内に露出した前記壁部の端面に凹面を形成する一方、何れか他方を切り欠いて形成した舌片を前記一方側へ曲げ起こすことによって、先端が前記スリット内へ嵌入可能な一対の押さえ爪を突設しており、前記テンションメンバを前記基礎部材の前記第1壁部間に架け渡した状態において、前記押さえ部材を前記基礎部材側へスライドさせ、前記テンションメンバを、前記押さえ爪の先端面と前記凹面とで挟み込んで固定可能としたことを特徴とする
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記押さえ爪の先端面に、凹面状の押さえ面を形成し、前記テンションメンバを前記押さえ面と前記凹面とで挟み込んで固定可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基礎部材の上方に押さえ部材をスライド可能に取り付けており、基礎部材上に載置されたテンションメンバを、該基礎部材と基礎部材側へスライドさせた押さえ部材とで挟み込んで固定可能としている。そのため、テンションメンバを固定するに際して、従来の如くネジの回転方向への負荷がテンションメンバにかかったりすることがなく、テンションメンバがほつれたりしない。したがって、テンションメンバを固定した状態の外観がよい上、ほつれたことにより固定が緩んでしまう等といった事態の発生を防止することができる。
また、基礎部材の天井部又は押さえ部材の底部に、前後方向の全域にわたってスリットを開設し、スリット内に露出した壁部の端面に凹面を形成しており、テンションメンバをスリット内の凹面で固定するように構成している。したがって、スリットや凹面によって、押さえ爪により押さえ付けられたことで変形したテンションメンバが押さえ爪の先端面から左右へ大きくはみ出してしまう事態を防止することができ、固定時における外観の向上やはみ出したことによる緩み防止等の効果を一層顕著に発揮することができる。
さらに、折り曲げ加工により基礎部材や押さえ部材を成形しているとともに、上述の如くして凹面を形成したり、基礎部材の天井部又は押さえ部材の底部の何れか他方を切り欠いて形成した舌片を曲げ起こすことによって押さえ爪を成形しているため、基礎部材や押さえ部材を容易且つ安価に製造することができる。
加えて、請求項2に記載の発明によれば、押さえ爪の先端面に、凹面状の押さえ面を形成し、テンションメンバを押さえ面と凹面とで挟み込んで固定可能としているため、一般的に周面が円周曲面であるテンションメンバを4点で挟み込んで固定することができ、従来よりも固定を安定且つ確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】テンションメンバ固定具を上方から示した説明図である。
【図2】テンションメンバ固定具を側方から示した説明図である。
【図3】テンションメンバ固定具によりテンションメンバを固定した状態を正面側から示した説明図である。
【図4】(a)は、基礎部材を上方から示した説明図であり、(b)は、押さえ部材を下方から示した説明図である。
【図5】テンションメンバ固定具の変更例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となるテンションメンバ固定具について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、テンションメンバ固定具1を上方から示した説明図であり、図2は、テンションメンバ固定具1を側方から示した説明図である。図3は、テンションメンバ固定具1によりテンションメンバ2を固定した状態を正面側から示した説明図である。図4の(a)は、基礎部材11を上方から示した説明図であり、(b)は、押さえ部材12を下方から示した説明図である。尚、図1や図4の左右方向をテンションメンバ固定具1や各部材の前後方向、上下方向を左右方向、表裏方向を上下方向とする。
テンションメンバ固定具1は、図示しない光成端箱内において光ケーブルの終端から引き出されたテンションメンバ2を固定するための部材であって、光成端箱内の内面に固定される基礎部材11と、基礎部材11に該基礎部材11側へスライド可能に取り付けられ、テンションメンバ2を基礎部材11上で固定するための押さえ部材12とからなる。
【0011】
基礎部材11は、前後方向に長い帯状の金属板を折り曲げてなるものであって、下方に開口する略コ字状に折り曲げられた固定部13と、固定部13の前後両端を夫々前後で外方に折り曲げてなるフランジ部14、14とを有しており、各フランジ部14には、基礎部材11を光成端箱内の内面にネジ止めするための固定孔15が穿設されている。また、固定部13は、対向状に上方へ曲げ起こされた一対の壁部13a、13aと、壁部13a、13a同士の上端間をつなぐ天井部13bとからなり、天井部13bの左右方向で略中央となる位置には、天井部13bの前後方向で全域にわたってスリット16が開設されている。そして、スリット16内に露出する壁部13a、13aの頂面(壁部の端面)は、下方へ正面視逆三角形状に凹む凹面17、17として形成されている。また、天井部13bのスリット16を挟んだ左右両側には、基礎部材11に押さえ部材12を取り付けるためのネジ孔18、18が設けられている。
【0012】
一方、押さえ部材12は、前後方向に長い帯状の金属板を上方に開口する略コ字状に折り曲げてなるものであって、対向状に上方へ曲げ起こされた一対の壁部19、19と壁部19、19同士の下端間をつなぐ底部20とを有している。そして、各壁部19の下端縁における左右方向での略中央位置からは、押さえ爪21が下方へ突設されている。各押さえ爪21は、底部20をコ字状に切り欠いて形成された舌片を下方へ曲げ起こすことによって成形されており、押さえ爪21の先端面(下面)は、上方へ正面視三角形状に凹む凹面状の押さえ面22とされている。また、底部20の左右両側部で、押さえ爪21、21を成形したことにより形成されたスリット23を挟んだ位置には、押さえ部材12を基礎部材11に取り付けるための取付孔24、24が設けられている。尚、押さえ爪21の左右方向での幅は、スリット16の左右幅以下となっており、基礎部材11に取り付けられた押さえ部材12を基礎部材11側へ近づけた際、押さえ爪21の先端部は、スリット16内へ嵌入して凹面17に近接可能となっている。
【0013】
ここで、上記基礎部材11と押さえ部材12とからなるテンションメンバ固定具1を用いて、テンションメンバ2を固定する方法について説明する。
まず、基礎部材11の天井部13bに対し、押さえ用ネジ32、32を取付孔24、24を介してネジ孔18、18へと螺入させることにより、基礎部材11の上方から押さえ部材12を基礎部材11に対してスライド可能に取り付けて、テンションメンバ固定具1を組み立てる。このとき、基礎部材11と押さえ部材12との間には十分な間隔を空けておく。次に、固定孔15、15へ固定ネジ31、31を挿通させて、テンションメンバ固定具1を光成端箱内の所定の位置に固定する。
【0014】
そして、上述したように固定された状態にあるテンションメンバ固定具1に対し、光ケーブルの終端においてケーブル本体から引き出したテンションメンバ2を、前後方向において基礎部材11と押さえ部材12との間に挿通させ、壁部13a、13aに架け渡してスリット16内の凹面17、17上に載置する。それから、押さえ用ネジ32、32を更に螺入させることにより、押さえ部材12を基礎部材11側へスライドさせ、各押さえ爪21の押さえ面22と凹面17とでテンションメンバ2を挟み込めば、テンションメンバ2はテンションメンバ固定具1に固定される。
【0015】
以上のような構成を有するテンションメンバ固定具1によれば、基礎部材11の上方に押さえ部材12をスライド可能に取り付けており、基礎部材11上に載置されたテンションメンバ2を、基礎部材11と基礎部材11側へスライドさせた押さえ部材12とにより挟み込んで固定可能としている。そのため、テンションメンバ2を固定するに際して、従来の如くネジの回転方向への負荷がテンションメンバ2にかかったりすることがなく、テンションメンバ2がほつれたりしない。したがって、テンションメンバ2を固定した状態の外観がよい上、ほつれたことにより固定が緩んでしまう等といった事態の発生を防止することができる。
【0016】
また、基礎部材11の天井部13bに、前後方向で天井部13bの全域にわたりスリット16を設けるとともに、スリット16内に露出する壁部13a、13aの頂面を、下方へ正面視逆三角形状に凹む凹面17、17としており、スリット16内へ嵌入させて凹面17、17上へ載置した状態にあるテンションメンバ2を押さえ爪21の先端面と凹面17、17とで挟み込んで固定するように構成している。したがって、スリット16や凹面17によって、押さえ爪21により押さえ付けられたことで変形したテンションメンバ2が押さえ爪21の先端面から左右へ大きくはみ出してしまう事態を防止することができ、固定時における外観の向上やはみ出したことによる緩み防止等の効果を一層顕著に発揮することができる。
さらに、折り曲げ加工により基礎部材11や押さえ部材12を成形するとともに、上述の如くして凹面17を設けたり、底部20をコ字状に切り欠いて形成された舌片を下方へ曲げ起こすことによって押さえ爪21を成形しているため、基礎部材11や押さえ部材12を容易且つ安価に製造することができる。
加えて、押さえ爪21の先端面を上方へ正面視三角形状に凹む押さえ面22としているため、一般的に周面が円周曲面であるテンションメンバ2を4点で挟み込んで固定することができ、従来よりも固定を安定且つ確実なものとすることができる。
【0017】
なお、本発明に係るテンションメンバ固定具は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、基礎部材や押さえ部材の構成について、必要に応じて適宜変更することができる。
【0018】
たとえば、小径のテンションメンバ32を固定するために、図5に示すようなテンションメンバ固定具31としてもよい。すなわち、テンションメンバ固定具31では、スリット16内に露出した壁部13a、13aの頂面全面を凹面17とするかわりに、頂面の中央部にテンションメンバ32の周面の一部が嵌入可能な凹溝33を形成している。また、押さえ爪21の先端面全面を押さえ面22とするかわりに、先端面の中央部にテンションメンバ32の周面の一部が嵌入可能な押さえ溝34を形成している。該構成を採用することにより、小径なテンションメンバ32であっても、ほつれさせたりすることなく確実に固定することができる。尚、図5において、上記実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。
【0019】
また、上記実施形態では、テンションメンバ固定具1を光成端箱内に固定するにあたってネジ止めするように構成している(すなわち、フランジ部14や固定孔15を設けている)が、テンションメンバ固定具1の固定に係る構成は適宜変更可能であって、基礎部材にテンションメンバ固定具1を固定するための係止爪を設ける等の構成を採用しても何ら問題はない。
さらに、テンションメンバ2を固定するに際して、上記実施形態ではテンションメンバ固定具1を組み立てて、光成端箱内へ固定した後に、テンションメンバ2を基礎部材11上に載置するという方法を採用しているが、まず基礎部材11のみを光成端箱内へ固定し、該基礎部材11上にテンションメンバ2を載置した後に、押さえ部材12を基礎部材11に取り付ける(テンションメンバ固定具1を組み立てながらテンションメンバ2を固定する)ようにしてもよい。
【0020】
さらにまた、上記実施形態では、基礎部材11にスリット16及び凹面17を、押さえ部材12側に押さえ爪21を夫々設けているが、該形態とは逆に、基礎部材11の天井部13bに上方へ突出する押さえ爪を、押さえ部材12の底部20にスリット及び上方へ凹む凹面を夫々形成し、押さえ爪の先端と凹面とでテンションメンバを挟み込んで固定するように構成することも可能である。
またさらに、上記実施形態では押さえ用ネジ32、32を螺入させることによりスライドさせる構成を採用しているものの、該スライドに係る構成についてもそのような構成に何ら限定されることはなく、柱状のガイド突起を基礎部材又は押さえ部材の何れか一方に突設し、他方にガイド突起を挿通可能なガイド孔を穿設するとともに、バネ等の付勢手段により押さえ部材を基礎部材側へ付勢するような他の構成を採用することも可能である。
加えて、本発明に係るテンションメンバ固定具を利用して、光ケーブルのケーブル本体を固定することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1、31・・テンションメンバ固定具、2、32・・テンションメンバ、11・・基礎部材、12・・押さえ部材、13・・固定部、13a・・壁部(第1壁部)、13b・・天井部、14・・フランジ部、15・・固定孔、16・・スリット、17・・凹面、18・・ネジ孔、19・・壁部(第2壁部)、20・・底部、21・・押さえ爪、22・・押さえ面、23・・スリット、24・・取付孔、33・・凹溝(凹面)、34・・押さえ溝(押さえ面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルのテンションメンバを固定するためのテンションメンバ固定具であって、
下向きコ字状に折り曲げられ、前後方向で対向する一対の第1壁部と、前記第1壁部の上端同士を連結する天井部とを有する基礎部材と、上向きコ字状に折り曲げられ、前後方向で対向する一対の第2壁部と、前記第2壁部の下端同士を連結する底部とを有する押さえ部材とを備え、前記基礎部材の上方に前記押さえ部材を前記基礎部材側へスライド可能に取り付けるとともに、
前記基礎部材の前記天井部又は前記押さえ部材の底部の何れか一方に、前後方向の全域にわたってスリットを開設し、前記スリット内に露出した前記壁部の端面に凹面を形成する一方、
何れか他方を切り欠いて形成した舌片を前記一方側へ曲げ起こすことによって、先端が前記スリット内へ嵌入可能な一対の押さえ爪を突設しており、
前記テンションメンバを前記基礎部材の前記第1壁部間に架け渡した状態において、前記押さえ部材を前記基礎部材側へスライドさせ、前記テンションメンバを、前記押さえ爪の先端面と前記凹面とで挟み込んで固定可能としたことを特徴とするテンションメンバ固定具。
【請求項2】
前記押さえ爪の先端面に、凹面状の押さえ面を形成し、前記テンションメンバを前記押さえ面と前記凹面とで挟み込んで固定可能としたことを特徴とする請求項1に記載のテンションメンバ固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237863(P2012−237863A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106511(P2011−106511)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】