説明

テンション付加装置及び金属テープ取り付け装置

【課題】 窓枠形状のフレームに生じている反りを矯正するように、金属テープにテンションを加えて取り付ける際に、フレームの反りを確認しながら金属テープのテンションを調整可能なテンション付加装置を提供する。
【解決手段】 フレーム13に取り付ける金属テープ17の一端をフレーム13に固定し、他端を、テンション付加用治具41に移動可能に設けたテープ把持部材44に把持させ、そのテープ把持部材に設けたテンション付加用ねじをねじ込み、その先端をフレーム側面に突き当てることで、フレームに反力を取って金属テープ17にテンションを付加する構成とし、フレームに金属テープのテンションを作用させた状態で、テンション調整を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機EL素子製造における蒸着工程で蒸着マスクとして用いるのに好適なマスクユニットの製造工程などにおいて、窓枠形状のフレームに、金属テープをテンションを付加して取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子製造において真空蒸着が行われており、その蒸着マスクとして、蒸着を許容する多数の細長い微少な開口部を備えたマスク部を有するメタルマスクが使用されている。そして蒸着に当たってはそのメタルマスクを、前記マスク部よりも大きい開口を備えた剛性の大きい窓枠形状のフレームに磁石等によって取り付けていた。しかしながら、近年、パターニングの微細化が進み、マスク部に形成している開口部が微細になり且つメタルマスクの板厚自体も薄くなってくると、メタルマスクを単に窓枠形状のフレームに磁石等を用いて固定しただけでは、マスク部にゆがみやたるみが生じ、開口部の精度が維持できなくなるという問題が生じた。
【0003】
そこで、本出願人はこの問題を解決すべく検討の結果、図11に示すように、極く薄い金属板で製作し且つ複数のマスク部2を形成した構造の多面付けのメタルマスク1でも、そのメタルマスク1の4辺のそれぞれを、複数のクランプで把持し、各クランプによってメタルマスク1に矢印で示すようにテンションを付加し、且つそのテンションを各クランプごとに調整することで、メタルマスク1をゆがみやたるみの無い平坦な状態とし且つ各マスク部2の開口部を一定ピッチに保持でき、しかも、その状態で、開口4を備えた窓枠形状のフレーム3にスポット溶接等によって取り付け、周縁の不要部分を除去することで、図12に示すように、メタルマスク1をテンションが付加され平坦となった状態に保持した構造のマスクユニット8を形成しうることを見出し、メタルマスクをゆがみやたるみの無い状態で窓枠形状のフレームに固定する方法及び装置を開発した(特開2004−311335号公報参照)。
【0004】
ところが、このように形成したマスクユニット8においても更に改良すべき点のあることが判明した。すなわち、マスクユニット8はフレーム3の片面にテンションを付加した状態のメタルマスク1を取り付けているため、図13に誇張して示すように、メタルマスク1側が凹面となるように反りが発生する。このような反りのあるマスクユニット8を蒸着マスクとして使用する場合、ガラス基板などの被蒸着基材とメタルマスクとの密着性が悪くなり、蒸着のパターン位置精度が低下してしまう。このため、反りの大きさ(図13における寸法e)を、適当な許容値(例えば、縦500mm×横500mmのマスクユニット8において0.1mm程度)以下に抑える必要がある。マスクユニット8に生じる反りを抑制するには、フレームの厚さを大きくして剛性を増せばよいが、そうすると重量が大きくなって取り扱いにくくなり、また、コストも高くなる。
【特許文献1】特開2004−311335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、窓枠形状のフレームにテンションを付加した状態のメタルマスクを固定した構造のマスクユニットにおいて、フレームの厚さを増大させて剛性を大きくしなくても、マスクユニットに生じる反りを抑制して平面度を高めることを可能とする構造を種々検討の結果、メタルマスクの裏面に長手方向にテンションを付加した金属テープを取り付けることで、メタルマスクのテンションによる反りを矯正でき、平面度の高いマスクユニットを形成できることを見出した。
【0006】
ところが、メタルマスクのテンションによってマスクユニットに生じている反りの大きさは、必ずしも一定ではなく、マスクユニット間にばらつきがあることから、金属テープに加えるテンションは必ずしも一定とは限らず、マスクユニット毎に適正に調整することが必要であるが、金属テープに付加したテンションによる反り矯正量は、金属テープをフレームに取り付けた後でなければ確認できないため、金属テープをフレームに取り付ける前に適正なテンションを見出すことが困難であるという問題が生じた。
【0007】
本発明は係る状況に鑑みてなされたもので、窓枠形状のフレームに金属テープを、テンションを付加した状態で取り付けるに当たって、該金属テープにテンションを付加すると共に金属テープのテンションによるフレームの反り矯正状況を確認しながらテンション調整を行うことを可能としたテンション付加装置並びにそのテンション付加装置を用いた金属テープの取り付け装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべくなされた本願請求項1に係る発明は、窓枠形状のフレームに取り付ける金属テープに、テンションを付加するためのテンション付加装置であって、前記フレームを水平に支持するフレーム置台と、該フレーム置台に所定位置となるように支持させたフレームの一辺に向かい合う領域に配置されたガイド手段と、該ガイド手段に、前記フレームの一辺に平行に移動可能に保持された移動台と、該移動台に保持されたテンション付加用治具を備え、該テンション付加用治具が、支持台と、該支持台に水平に且つ前記フレームの一辺に直角方向に移動可能に保持されたテープ把持部材であって、金属テープをその長手方向が前記テープ把持部材の移動方向に平行となるように把持可能なテープ把持部材と、該テープ把持部材に取り付けられたテンション付加用ねじを備え、該テンション付加用ねじは、前記テープ把持部材に把持させた金属テープに近接した位置で該金属テープの長手方向に平行に且つ先端を前記フレームの側面に突き当てることの可能な形態で取り付けられていることを特徴とするテンション付加装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記した請求項1に係る発明において、前記テンション付加用治具を、前記移動台に対して上下方向の位置を調整可能な形態で保持させる構成としたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記した請求項1又は2に係る発明において、前記ガイド手段に、2組の移動台及びテンション付加用治具を移動可能に保持させる構成としたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記した請求項1から3のいずれか1項記載のテンション付加装置と、前記フレーム置台に支持された前記フレームの所定位置に金属テープをスポット溶接して固定するスポット溶接装置を有することを特徴とする金属テープ取り付け装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のテンション付加装置によれば、金属テープを取り付けるべきフレームをフレーム置台上の所定位置に支持させ、金属テープをフレーム上の所定位置にセットすると共に、その金属テープの、テンション付加用治具側とは反対側の端部をフレームに固定した状態で、金属テープの一端をテンション付加用治具に把持させ、テンション付加用ねじをねじ込んでゆくことで、そのテンション付加用ねじの先端をフレーム側面に突き当て、該フレームに反力を取った形態で金属テープにテンションを付加することができ、このため、金属テープのテンションが、該金属テープをフレームに固定した場合と同様にフレームに作用しており、その状態で前記フレームの反り量を測定し、反り量が所望の範囲内となるように、例えば、高精度の許容範囲内となるように、テンション付加用ねじのねじ込み量を調整することで、金属テープに付加するテンションを調整できる。かくして、簡単な操作で、金属テープをフレームに固定した後での反り量が所望の範囲内となるように、テンション調整を行うことができ、このテンション調整を行った状態でその金属テープをフレームに固定することで、フレームの高精度の平面度を達成できる。また、テンション付加用治具は、ガイド手段及び移動台によって、フレームの1辺に沿った位置を調整可能であるので、異なるサイズのフレームに容易に対応可能である。更に、金属テープに対してテンション付加する際には、テンション付加用ねじの先端をフレーム側面に突き当て、該フレームに反力を取るだけであるので、フレームには金属テープへのテンション付加のための加工を施す必要がないといった効果も有している。
【0013】
ここで、前記したテンション付加用治具を、移動台に対して上下方向の位置を調整可能な形態で保持させておくと、厚さの異なるフレームにも容易に対応できる。
【0014】
また、前記したガイド手段に、2組の移動台及びテンション付加用治具を移動可能に保持させておくと、フレームの両側に取り付ける金属テープに同時にテンション付加及び調整を行うことができ、作業性が向上すると共に金属テープを取り付けた後のフレームの平面度を一層高精度とすることができる。
【0015】
本発明の金属テープ取り付け装置は、上記したテンション付加装置を用いて金属テープへのテンション付加及び調整を行い、その後、その金属テープをフレームにスポット溶接することができる構成としたので、フレームの反りが所望の範囲内、例えば、高精度での許容範囲内となるように、金属テープのテンションを調整してフレームに取り付けることができ、簡単な操作によってフレームの高精度の平面度を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、有機EL素子製造における多面付けの蒸着マスクとして使用するマスクユニットの製造を例にとって本発明の好適な実施の形態を説明する。図1(a)は本発明の実施の形態に係るテンション付加装置を用いて製造するマスクユニットの1例を、表面側から見た概略斜視図、図1(b)はそのマスクユニットを裏面側から見た概略斜視図、図2はそのマスクユニットを構成する部品を組立前の状態で示す概略斜視図である。図1、図2において、全体を参照符号10で示すマスクユニットは、窓枠形状のフレーム13と、その表面にテンションを付加された状態でスポット溶接部30によって取り付けられたメタルマスク11と、フレーム13の裏面にテンションを付加された状態でスポット溶接部56によって取り付けられた金属テープ17、18を備えている。
【0017】
メタルマスク11は、金属薄板製のもので、複数のマスク部12を縦横に並べて形成している。各マスク部12は、エッチング等によって形成した多数の微少な開口部を備えたものである。各マスク部12における開口部は、蒸着時に蒸気の通過を許容するためのものであり、その開口部の形状、配列は任意であり、例えば、細長いスリット状の開口部を平行に並べたもの、スロット状の開口部を縦方向に並べると共に平行にも並べたもの等を挙げることができる。フレーム13に取り付ける前のメタルマスク11は、フレーム13よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作られており、フレーム13の外周縁にほぼ対応する位置に、折り曲げることで容易に切断可能な易切断線15をハーフエッチングなどによって形成している。なお、易切断線15は、メタルマスク11に加えるテンションには耐え得る強度を備えたものである。メタルマスク11の厚さ、マスク部12の寸法、それに形成した多数の微少な開口部の寸法等は特に限定するものではないが、代表的なものとして、メタルマスク11の厚さは30〜200μm、マスク部12の寸法は長さが50〜70mm、幅が30〜50mm、開口部の幅が40〜100μm、平行に配列された開口部間の無孔部分の幅が80〜200μm等を例示できる。
【0018】
フレーム13は、メタルマスク11の多数のマスク部12を形成した領域を包含する大きさの開口14を備えた窓枠形状のものである。このフレーム13は、テンションを付加した状態のメタルマスク11を取り付けた後においても、そのメタルマスク11のテンションによってたわんでメタルマスクにゆがみやたるみが生じることがないよう、また、保管時、蒸着機への取付時、蒸着操作時などの取り扱い時においても、メタルマスク11を平坦な状態に保持しうる剛性を備えたものである。なお、テンションを付加したメタルマスク11を取り付けた時点(金属テープを取り付ける前の時点)において多少の反り(例えば、縦500mm×横500mmのフレーム13において0.2〜0.5mm程度の反り)が生じても、後で金属テープ17、18を取り付けて矯正しうるので、そのような小さい反りまで生じさせないような大きい剛性を持たせる必要はない。フレーム13の厚さとしては、2mm〜30mm程度を例示でき、幅(開口14の内周面とフレーム外周面との距離)としては、5mm〜50mm程度を例示できる。フレーム13の裏面には、金属テープ17、18を取り付けるエリアに溝状の掘り込み20を入れている。
【0019】
金属テープ17、18は、それに長手方向のテンションを付加した状態でフレーム13に取り付けることでマスクユニット10の反りを許容範囲内に抑えるためのものである。金属テープ17、18の幅及び厚さは、弾性領域内で必要な大きさのテンションを加えることができるように選定されるものであり、例えば、幅は5〜50mm、厚さは50〜200μm程度に選定される。フレーム13に取り付ける前の金属テープ17、18の長さは、フレーム13よりも長くしておく。この金属テープ17、18にも、フレーム13の外周縁にほぼ対応する位置に、折り曲げることで容易に切断可能な易切断線19をハーフエッチングなどによって形成している。
【0020】
次に、金属テープ17、18をフレーム13に取り付ける際に用いるテンション付加装置並びにそのテンション付加装置を備えた金属テープ取り付け装置を説明する。図3、図4は本発明の実施の形態に係るテープ取り付け装置を異なる作動状態で示す概略斜視図、図5は、図3、図4に示すテープ取り付け装置に設けているテンション付加装置の主要部分の概略斜視図、図6は図5に示す領域の一部の概略断面図、図7は図6のA−A矢視概略断面図である。全体を参照符号31で示すテープ取り付け装置は、高精度の平面度の支持面を備えた支持盤、例えば石定盤32と、その石定盤32に保持されたテンション付加装置33と、スポット溶接装置34を有している。
【0021】
テンション付加装置33は、フレーム13を水平に支持するフレーム置台35と、該フレーム置台35に所定位置となるように支持させたフレーム13の一辺に向かい合う領域に配置されたガイド手段36と、該ガイド手段36に、前記フレーム13の一辺に平行に移動可能に保持された移動台37と、該移動台37に昇降ガイド機構38を介して昇降可能に保持されたテンション付加用治具41を備えている。ガイド手段36及び移動台37の構造は、移動台37をガイド手段36に沿って直線状に移動させることができ且つ所望位置に固定できる構造のものであれば任意であり、例えば、ガイド溝を用いたもの、ガイドレールを用いたもの、直動案内を用いたもの等を挙げることができる。昇降ガイド機構38の構造も、テンション付加用治具41を移動台37に対して昇降させることができ且つ所望位置に固定できる構造のものであれば任意である。
【0022】
テンション付加用治具41は、支持台42と、その支持台42に直動案内43を介して水平に且つフレーム13の一辺に直角方向に(ガイド手段36による移動台37の移動方向に直交する方向に)移動可能に保持されたテープ把持部材44であって、金属テープ17をその長手方向がテープ把持部材44の移動方向に平行となるように把持可能なテープ把持部材44と、そのテープ把持部材44に取り付けられたテープ付加用ねじ46等を備えている。テープ把持部材44は、テープ把持本体48とテープ押え49を備えており、テープ把持本体48の上面には、金属テープ17をその長手方向がテープ把持部材44の移動方向に平行となるように装着可能な溝48aが形成されている。この溝48aは、テンション付加用治具41をフレーム13に対する所定位置に配置した状態において、フレーム13の掘り込み20の延長上に位置するように形成されており、掘り込み20内にセットした金属テープ17を曲げることなく溝48a内に受け入れることが可能である。テープ押え49は、ボルト50によってテープ把持本体48に固定することで、溝48a内にセットした金属テープ17をテープ把持本体48に押し付けて把持するためのものである。なお、金属テープ17をテープ把持本体48とテープ押え49で確実に把持することができるようにするため、テープ押え49の下面には、かしめ用の凸条49aが形成されている。この凸条49aはテープ把持本体48側に設けてもよい。
【0023】
テンション付加用ねじ46は、テープ把持部材44に把持させた金属テープ17に近接した位置で該金属テープの長手方向に平行に且つ先端をテープ把持部材44から突出させ、フレーム13の側面に突き当てることの可能な形態で取り付けられている。この構造としたことにより、テンション付加用ねじ46をねじ込んで、その先端をフレーム13に突き当て、更にねじ込むことで、フレーム13の金属テープ取り付け位置の近傍に反力を取って金属テープ17にテンションを付加することができる。ここで、テンション付加用ねじ46のテープ把持部材44に対する取り付け位置は、テープ把持部材44に把持させた金属テープ17に近接した位置であれば、金属テープ17の側方でもよいが、図示した実施の形態では金属テープ17の中央の直ぐ下としている。この位置とすることで、金属テープ17の全幅にテンションを安定して付加することができる。
【0024】
図3、図4において、スポット溶接装置34は、金属テープ17の所望位置をフレーム13に溶接、固定するためのものであり、この実施の形態では抵抗溶接方式のものが用いられている。なお、スポット溶接装置34は抵抗溶接方式のものに限らず、他の方式のもの、例えばレーザー方式のものを用いても良い。スポット溶接装置34は、ガイド装置53によって移動可能に設けられており、フレーム13上の所定位置にセットした金属テープ17の所望の位置をスポット溶接することができる構成となっている。なお、図面ではフレーム13の手前側のみにスポット溶接装置34を描いているが、フレーム13の奥側にもスポット溶接装置(図示せず)が設けられ、奥側の金属テープ17をフレーム13に溶接、固定可能となっている。なお、スポット溶接装置34をフレーム13をはさんで両側に設ける代わりに、単一のスポット溶接装置を水平面内で二次元方向に移動させることの可能なX−Y移動機構に保持させ、そのスポット溶接装置をX−Y方向の所望位置に移動させてスポット溶接する構成としてもよい。
【0025】
次に、上記構成の金属テープ取り付け装置31を用いて金属テープにテンションを付加してフレーム13に取り付ける方法、並びに、この金属テープ取り付け装置31を用いたマスクユニット10の製造方法を説明する。あらかじめ、図2に示すメタルマスク11、フレーム13、金属テープ17、18を用意しておく。まず、図8、図9に示すように、フレーム13にメタルマスク11をテンションを付加した状態で取り付けるためのマスク貼り装置において、フレーム13を所定位置にセットし、その上にメタルマスク11を乗せ、そのメタルマスク11の4辺のそれぞれを、複数のクランプ23で把持させ、各クランプ23に連結しているエアシリンダ等の駆動手段24を作動させて、各クランプ23を矢印で示すように縦横方向に引っ張り、メタルマスク11にテンションを付加する。
【0026】
ここで、メタルマスク11の4辺にそれぞれ設けている複数のクランプ23は、マスク部12の列と、マスク部の無い領域とに合わせて配置しており、従って、メタルマスク11のマスク部12を形成した領域と、マスク部の無い領域とをそれぞれ別個のクランプ23で引っ張ってテンションを付加することが可能であり、これによって、メタルマスク11の剛性の異なる領域をそれぞれ別個のクランプ23でテンション付加することができる。そして、メタルマスク11の各辺を複数のクランプ23で把持して引っ張った状態で、メタルマスク11の表面状態を目視検査し、ゆがみやたるみがあれば、その領域を引っ張っているクランプ23に加える引張力を調整し、メタルマスク11をゆがみやたるみのない平坦な状態で且つマスク部12の開口部が平行に引き揃えられた状態に調整する。また、メタルマスク11に形成している各マスク部12の位置を検査し、各マスク部が所定の寸法精度内の位置に入るように、各クランプ23の引張力を調整する。以上により、メタルマスク11をゆがみやたるみの無い状態で且つ各マスク部12が所定の寸法精度範囲内に位置する状態とすることができる。その後、この状態で、メタルマスク11の周縁部分をフレーム13に、レーザ光を用いてスポット溶接し(スポット溶接部30参照)、固定する。その後、クランプ23を外し、メタルマスク11の周縁の不要部分を易切断線15を利用して除去する。
【0027】
次に、メタルマスク11を取り付けたフレーム13を、図3及び図10(a)に示すように、フレーム置台35の上に、メタルマスク11側を下にして、且つ一辺がガイド手段36に平行になるように位置決めして支持させる。次いで、そのフレーム13に生じている反りを、支持スタンド等の適当な支持手段(図示せず)で保持したダイアルゲージ55によって測定する。次いで、そのフレーム13に形成している溝状の掘り込み20のうち、ガイド手段36に直交する方向に延びている掘り込み20に金属テープ17をセットし、テンション付加用治具41とは反対側の端部近傍を、スポット溶接装置34によってフレーム13にスポット溶接(符号56参照)して固定し、固定した側の不要部分を易切断線19(図2参照)を利用して切断、除去する。
【0028】
次に、移動台37をガイド手段36に沿って移動させ、保持しているテンション付加用治具41の溝48a(図5参照)が、フレーム13にセットしている金属テープ17に重なる位置に位置決めして、移動台37をその位置に固定し、次いで、昇降ガイド機構38を利用してテンション付加用治具41の高さを、溝48aがフレーム13の掘り込み20と同じ高さとなる位置に位置決めし、その位置に固定する。次いで、金属テープ17の端部をテープ把持部材44に把持させる。この操作は、両側のテンション付加用治具41について行う。その後、テンション付加用ねじ46(図6参照)をねじ込んで、その先端をフレーム13の側面に押し付け、更にねじ込むことで、フレーム13に反力を取って金属テープ17にテンションを付加する。この状態で図4及び図10(b)に示すようにフレーム13の反り量をダイアルゲージ55で測定する。そして、測定して得た反り量が所望の許容範囲内(例えば、縦500mm×横500mmのフレーム13において0.1mm以下の反り)となるように、テンション付加用ねじ46のねじ込みを調整して金属テープ17に付加するテンションを調整する。その後、図10(c)に示すように、フレーム13の反り量が所望の許容範囲内に入り、フレーム13に要求される平面度が確保されると、図4に示すように、金属テープ17の端部近傍をレーザ溶接装置34を用いてフレーム13にスポット溶接して固定する。その後、テープ付加用治具41から金属テープ17を外し、端部の不要部分を易切断線19を利用して切断、除去する。
【0029】
ここで、金属テープ17にテンション付加用治具41を用いてテンションを付加した際、フレーム13に対する金属テープ17の取り付け位置近傍に反力を取ってテンションを付加していたため、金属テープ17をフレーム13にスポット溶接で固定し、テンション付加用治具41を取り外した状態においても、金属テープ17がフレーム13に作用させていたテンションの状態はほとんど変化せず、このため、フレーム13は先に調整した平面度に保たれたままである。かくして、単にテンション付加用ねじ46を調整してフレーム13を所望の平面度とし、その状態で金属テープ17をフレーム13に固定することで、フレーム13に生じていた反りを矯正して所望の平面度とすることができる。
【0030】
以上の操作を、フレーム13の裏面に横方向に形成している溝状の掘り込み20についても実施し、その掘り込み20に金属テープ18を取り付ける。これによって、横方向における反りを矯正して所望の平面度とすることができる。以上により、図1に示すマスクユニット10が製造される。
【0031】
以上のようにして製造されたマスクユニット10では、メタルマスク11がゆがみやたるみの無い状態で且つマスク部12の開口部が正確に平行に揃った状態に保たれており、且つ各マスク部12の位置も所定の寸法精度内に保たれている。また、マスクユニット10の反りも微少な許容範囲内に保たれている。その後、このマスクユニット10を用いて、所定の蒸着操作を行う。すなわち、このマスクユニットにガラス基板等の被蒸着基材を取り付け、蒸着機にセットし、有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着を行う。これにより、微細なパターンの蒸着を位置精度良く行うことができ、高品質の有機層又はカソード電極を形成できる。
【0032】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれに限らず、特許請求の範囲の記載内で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、金属テープ17、18を、メタルマスク11を固定した後のフレーム13に取り付けており、メタルマスク11の取り付けによってフレーム13に生じた反りを矯正しているが、本発明の金属テープ取り付け装置は、メタルマスクを取り付ける前のフレームに金属テープを取り付ける場合にも使用可能である。この場合には、後工程でメタルマスク11を取り付ける際に生じる反りを見越して、フレーム13に反対方向の所望の反りが生じるように金属テープのテンションを調整して金属テープを取り付ければよい。また、金属テープ17、18の固定位置も、両端のみに限らず、中間の適当な位置の固定を併用してもよい。
【0033】
更に、上記した実施の形態では、メタルマスク11をフレーム13に固定する際に、メタルマスク11の4辺をそれぞれ、マスク部12に対応する領域とマスク部のない領域に対応して設けた複数のクランプ23で把持してテンションを付加しているが、メタルマスク11にテンションを付加する手段はこの構成に限らず、メタルマスク11をゆがみやたわみの無い平坦な状態に引っ張り、且つマスク部の開口部を平行に引き揃えることができれば、適宜変更可能である。例えば、メタルマスク11の各辺に設ける複数のクランプの個数やクランプの幅を変更する等の変更を加えても良い。
【0034】
更に、上記の実施の形態では、メタルマスク11に縦横両方向にテンションを加えて平坦な状態としているが、メタルマスクによっては縦方向のみ或いは横方向のみにテンションを加えることで、メタルマスクをゆがみやたるみの無い状態に引き揃えることができる場合がある。その場合には、金属テープはフレームの4辺に設ける必要はなく、メタルマスクに付加したテンションの方向に平行な辺のみに、金属テープを取り付ければ良い。また、フレーム13が縦方向に長い長方形の場合であって横方向にはあまり反りが生じない場合には、縦方向のみに金属テープを取り付ける構成としてもよい。更に、上記の実施の形態では、金属テープ17、18を、その全面がフレーム13の開口14を取り囲む枠の部分に重なるように取り付けているが、金属テープの取り付け位置はこれに限らず、フレーム13に固定したメタルマスク11のマスク部12に干渉しない範囲で開口14を横切るように金属テープを取り付ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係るテンション付加装置を用いて製造するマスクユニットの1例を、表面側から見た概略斜視図、(b)はそのマスクユニットを裏面側から見た概略斜視図
【図2】図1に示すマスクユニットを構成する部品を組立前の状態で示す概略斜視図
【図3】本発明の実施の形態に係る金属テープ取り付け装置を示す概略斜視図
【図4】図3に示す金属テープ取り付け装置を、図3とは異なる作動状態で示す概略斜視図
【図5】図3に示すテープ取り付け装置に設けているテンション付加装置の主要部分の概略斜視図
【図6】図5に示す領域の一部の概略断面図
【図7】図6のA−A矢視概略断面図
【図8】メタルマスクにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略平面図
【図9】メタルマスクにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略斜視図
【図10】(a)はメタルマスクを取り付けたフレームの反りを測定する状態を示す概略側面図、(b)、(c)は金属テープにテンションを付加してフレームの反りを矯正する状態を示す概略側面図
【図11】従来技術においてメタルマスクにテンションを付加してフレームに取り付ける状態を示す概略平面図
【図12】従来のマスクユニットの概略斜視図
【図13】従来のマスクユニットを、それに生じている反りを誇張して示す概略側面図
【符号の説明】
【0036】
10 マスクユニット
11 メタルマスク
12 マスク部
13 フレーム
14 開口
15 易切断線
17、18 金属テープ
19 易切断線
20 掘り込み
23 クランプ
24 駆動手段(エアシリンダ)
30、56 スポット溶接部
31 金属テープ取り付け装置
32 石定盤
33 テンション付加装置
34 スポット溶接装置
35 フレーム置台
36 ガイド手段
37 移動台
38 昇降ガイド機構
41 テンション付加用治具
42 支持台
43 直動案内
44 テープ把持部材
46 テンション付加用ねじ
48 テープ把持本体
49 テープ押え
50 ボルト
53 ガイド装置
55 ダイアルゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠形状のフレームに取り付ける金属テープに、テンションを付加するためのテンション付加装置であって、前記フレームを水平に支持するフレーム置台と、該フレーム置台に所定位置となるように支持させたフレームの一辺に向かい合う領域に配置されたガイド手段と、該ガイド手段に、前記フレームの一辺に平行に移動可能に保持された移動台と、該移動台に保持されたテンション付加用治具を備え、該テンション付加用治具が、支持台と、該支持台に水平に且つ前記フレームの一辺に直角方向に移動可能に保持されたテープ把持部材であって、金属テープをその長手方向が前記テープ把持部材の移動方向に平行となるように把持可能なテープ把持部材と、該テープ把持部材に取り付けられたテンション付加用ねじを備え、該テンション付加用ねじは、前記テープ把持部材に把持させた金属テープに近接した位置で該金属テープの長手方向に平行に且つ先端を前記フレームの側面に突き当てることの可能な形態で取り付けられていることを特徴とするテンション付加装置。
【請求項2】
前記テンション付加用治具が、前記移動台に対して上下方向の位置を調整可能な形態で保持されていることを特徴とする請求項1記載のテンション付加装置。
【請求項3】
前記ガイド手段に、2組の移動台及びテンション付加用治具が移動可能に保持されていることを特徴とする請求項1又は2記載のテンション付加装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のテンション付加装置と、前記フレーム置台に支持された前記フレームの所定位置に金属テープをスポット溶接して固定するスポット溶接装置を有することを特徴とする金属テープ取り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−257839(P2007−257839A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290577(P2005−290577)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】