説明

テンタクリップ及び溶液製膜方法

【課題】 異物の付着が抑制されるテンタクリップを用いて溶液製膜を行う。
【解決手段】 TACと溶媒などとからドープを調製する。ドープを流延ダイから流延バンド上に流延して流延膜を形成する。流延膜を支持体から湿潤フィルム74として剥ぎ取る。湿潤フィルム74をテンタ式乾燥機に搬送する。湿潤フィルム74の両縁をテンタクリップ100で把持する。湿潤フィルム74の乾量基準の溶媒含有量を100重量%とする。クリップ110(温度40℃)で湿潤フィルム74の縁を把持面100aに押える。把持面100aはその表面張力が3.1×10-2N/m,表面粗さRaが0.3μm,表面硬度700Hvであるので異物などの付着が抑制される。湿潤フィルム74をテンタ式乾燥機で幅方向に延伸させつつ乾燥させてTACフィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンタクリップ及びそのテンタクリップを備えるテンタ式乾燥機を用いる溶液製膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステル、特に58.0%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用支持体として利用されている。また、TACフィルムは光学等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の保護フィルムなどに用いられている。
【0003】
TACフィルムは、通常溶液製膜方法により製造されている。溶液製膜方法は、溶融製膜方法などの他の製造方法と比較して、光学的性質などの物性に優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜方法は、ポリマーをジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒に溶解した高分子溶液(以下、ドープと称する)を調製する。そのドープを流延ダイより流延ビードを形成させて支持体上に流延して流延膜を形成する。その流延膜が支持体上で自己支持性を有するものとなった後に、支持体から膜(以下、この膜を湿潤フィルムと称する)として剥ぎ取る。
【0004】
湿潤フィルムはテンタ式乾燥機に送り込まれる。湿潤フィルムは、テンタ式乾燥機内でその両縁をテンタクリップで把持されてテンタクリップの移動に伴い搬送される。この際に湿潤フィルムは乾燥されつつ、幅方向に延伸,緩和などの処理が行われる。なお、テンタクリップは通常チェーンに取り付けられており、チェーンを駆動させることによりテンタクリップは無端で走行する。テンタクリップは、湿潤フィルムから離脱した後はチェーンのリターン側を通り再度、噛込部で湿潤フィルムを噛み込み把持する。テンタ式乾燥機から送り出された湿潤フィルムはさらに乾燥されてフィルムとして巻き取られる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
また、近年ではTACフィルムは、液晶表示装置用の光学フィルムとして様々なものに用いられている。例えば、高い複屈折率を発現した位相差膜の需要が増加している。また、揮発分増加に伴う把持部近傍の発泡を防止するために噛込時のクリップの温度を低くする必要があり、これにより揮発した可塑剤がクリップ面に析出しやすくなる。これらの汚れが成長すると、噛込時にフィルムをはたいて噛みはずれが生じたり、フィルムの把持部に穴あきを生じ延伸時に破断してしまうといった搬送上の問題が発生している。そこで、汚れによる異物が乾燥風により製品範囲内に飛散し、フィルムの品質状の問題が発生している。そこで、クリップにヒータを内蔵させて、可塑剤の汚れを抑制したり、異物を噴射気体や液体およびブラシにより除去といった方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【非特許文献1】発明協会公開技報公技番号2001−1745号
【特許文献1】特開平11−077719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学フィルムの需要の増加に伴い、TACフィルムの生産性の向上が求められている。しかしながら、TACフィルムの製膜速度アップに伴い、延伸および乾燥を行うテンタ式乾燥機に導入される湿潤フィルム中に含まれている揮発性成分の含有量が多くなり、その揮発性成分がテンタ式乾燥機内で揮発するとテンタクリップのフィルム把持面に付着し、その付着物が湿潤フィルムに付着してしまい、得られるTACフィルム中にも残存してしまい光学特性の悪化を招くという問題も生じている。
【0007】
揮発性成分を多量に含む湿潤フィルムをテンタクリップで噛み込む際に、前記特許文献1に記載されているようにテンタクリップをヒータなどの加熱装置を設け、加熱装置によりテンタクリップを加熱すると湿潤フィルムに発泡が生じるおそれがある。前記特許文献1に記載されているように、チェーンのリターン側においてテンタクリップを洗浄するブラシなどによる洗浄装置を設けると、装置自体に可塑剤などの添加剤が析出して交換洗浄のために何度も製膜機を停止しなければいけないといった問題が生じてしまう。また、テンタクリップに加熱装置を取り付けたり、テンタクリップの洗浄装置を設けたりすると、テンタ式乾燥機の複雑化,大型化がなされメンテナンスなどのコスト高の原因ともなる。
【0008】
本発明の目的は、その表面に異物などの付着が抑制されるテンタ式乾燥機のテンタクリップを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、その表面に異物などの付着が抑制されるテンタ式乾燥機のテンタクリップを用いて連続して光学特性に優れるフィルムを製造できる溶液製膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、テンタクリップのフィルム把持面の表面エネルギーを下げたり、表面粗さを大きくして接触面積を小さくしたりすることでフィルムとの接着力を低下させてフィルムが付着することを防止できることを見出した。また、テンタクリップ近傍の可塑剤などの添加剤のガス濃度を下げることによりテンタクリップに可塑剤などの揮発性成分が析出することを防止できることを見出した。
【0011】
本発明のテンタクリップは、フィルムの両縁をテンタクリップで把持して前記フィルムの幅方向に前記フィルムを延伸するテンタ式乾燥機のテンタクリップにおいて、前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面張力が3.0×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下である。前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面硬度が400Hv以上800Hv以下であることが好ましい。前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面粗さRaが0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面が鍍金処理されていることが好ましい。
【0012】
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜を前記支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取り、前記湿潤フィルムの両縁をテンタ式乾燥機のテンタクリップで把持しながら乾燥した後に離脱してフィルムを製造する溶液製膜方法において、前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面張力が、30×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下である。
【0013】
前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面硬度が、400Hv以上800Hv以下であることが好ましい。前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面粗さRaが、0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面が、鍍金処理されていることが好ましい。
【0014】
前記湿潤フィルムを把持してから離脱までの間で前記テンタクリップ近傍に風を吹きつけることが好ましい。前記風の前記テンタクリップへの吹きつけ温度を30℃以上70℃以下とすることが好ましい。
【0015】
前記テンタクリップで前記湿潤フィルムの両縁を把持する際の、前記湿潤フィルムの乾量基準における溶媒含有量が80重量%以上200重量%以下であることが好ましい。前記テンタクリップで前記湿潤フィルムの両縁を把持する際の、前記テンタクリップの温度を0℃以上60℃以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のテンタクリップによれば、フィルムの両縁をテンタクリップで把持して前記フィルムの幅方向に前記フィルムを延伸するテンタ式乾燥機のテンタクリップにおいて、前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面張力が3.0×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下であるから、前記テンタクリップ表面に異物が付着することが抑制される。
【0017】
本発明のテンタクリップは、前記条件に更に、
(1)前記フィルムの把持面の表面硬度が400Hv以上800Hv以下とする。
(2)前記フィルムの把持面の表面粗さRaが0.05μm以上1μm以下とする。
(3)前記フィルムの把持面が鍍金処理されている。
事により、前記把持面に傷が生じるなどの不良が抑制されて、より異物の付着を防止できる。
【0018】
本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜を前記支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取り、前記湿潤フィルムの両縁をテンタ式乾燥機のテンタクリップで把持しながら乾燥した後に離脱してフィルムを製造する溶液製膜方法において、前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面張力が、30×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下とするから、前記テンタクリップに異物などが付着することが抑制され、製造されるフィルムの面状故障を防止できる。
【0019】
前記溶液製膜方法を行う際に、
(1)前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面硬度が、400Hv以上800Hv以下である。
(2)前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面粗さRaが、0.05μm以上1μm以下である。
(3)前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面が、鍍金処理されている。
の少なくともいずれか1つを満たすことにより、前記テンタクリップの汚れをより防止でき、製造されるフィルムの面状故障を極めて防止できる。
【0020】
前記溶液製膜方法を行う際に、前記湿潤フィルムを把持してから離脱までの間で前記テンタクリップ近傍に風を吹きつけることで、前記テンタクリップの汚れが生じることをより防止できる。この場合に、前記風の前記テンタクリップへの吹きつけ温度を30℃以上70℃以下とすることで、前記テンタクリップ表面に液化した有機溶媒が付着することが抑制されると共に前記湿潤フィルムの乾燥に影響を及ぼさない。
【0021】
前記溶液製膜方法を行う際に、前記テンタクリップで前記湿潤フィルムの両縁を把持する際の、前記湿潤フィルムの乾量基準における溶媒含有量が80重量%以上200重量%以下であるから、生産速度の向上を図ることができる。また、前記テンタクリップの温度を0℃以上60℃以下とするから、前記テンタクリップによる前記湿潤フィルム中の有機溶媒の急激な揮発が抑制され、発泡などを防止できる。それにより、フィルム面状に極めて優れているフィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
【0023】
[原料]
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90質量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではない。
【0024】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0025】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは
0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0026】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0027】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター綿,パルプ綿のどちらから得られたものでも良いが、リンター綿から得られたものが好ましい。
【0028】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0029】
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0030】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2質量%〜25質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0031】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
【0032】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特願2004−264464号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特願2004−264464号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【0033】
[ドープ製造方法]
上記原料を用いて、まずドープを製造する。まず始めに、溶媒が溶媒タンクから溶解タンクに送られる。次にホッパに入れられているTACが、計量されながら溶解タンクに送り込まれる。また、添加剤溶液は、必要量が添加剤タンクから溶解タンクに送り込まれる。なお、添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体の場合には、その液体の状態で溶解タンクに送り込むことが可能である。また、添加剤が固体の場合には、ホッパなどを用いて溶解タンクに送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンクの中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、多数の添加剤タンクを用いてそれぞれに添加剤が溶解している溶液を入れて、それぞれ独立した配管により溶解タンクに送り込むこともできる。
【0034】
前述した説明においては、溶解タンクに入れる順番が、溶媒(混合溶媒の場合も含めた意味で用いる)、TAC、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。例えば、TACを計量しながら溶解タンクに送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも溶解タンクに予め入れる必要はなく、後の工程でTACと溶媒との混合物(以下、これらの混合物もドープと称する場合がある)に混合させることもできる。
【0035】
溶解タンクには、その外面を包み込むジャケットと、モータにより回転する第1攪拌機とが備えられている。さらに、溶解タンクには、モータにより回転する第2攪拌機が取り付けられていることが好ましい。なお、第1攪拌機は、アンカー翼が備えられたものであることが好ましく、第2攪拌機は、ディゾルバータイプの偏芯型撹拌機であることが好ましい。そして、溶解タンクとジャケットとの間に伝熱媒体を流すことにより溶解タンクは温度調整されており、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機,第2攪拌機のタイプを適宜選択して使用することにより、TACが溶媒中で膨潤した膨潤液を得る。
【0036】
膨潤液は、ポンプにより加熱装置に送られる。加熱装置は、ジャケット付き配管であることが好ましく、さらに、膨潤液を加圧することができる構成のものが好ましい。このような加熱装置を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で膨潤液中の固形分を溶解させてドープを得る。以下、この方法を加熱溶解法と称する。なお、この場合に膨潤液の温度は、50℃〜120℃であることが好ましい。また、膨潤液を−100℃〜−30℃の温度に冷却する冷却溶解法を行うこともできる。加熱溶解法及び冷却溶解法を適宜選択して行うことでTACを溶媒に充分溶解させることが可能となる。ドープを温調機により略室温とした後に、濾過装置により濾過してドープ中に含まれる不純物を取り除く。濾過装置に使用される濾過フィルタは、その平均孔径が100μm以下であることが好ましい。また、濾過流量は、50L/hr以上であることが好ましい。濾過後のドープ22は、図1のフィルム製造ライン20中のストックタンク21に送られここに貯留される。
【0037】
ところで、上記のように、一旦膨潤液を調製し、その後にこの膨潤液をドープとする方法は、TACの濃度を上昇させるほど要する時間が長くなり、製造コストの点で問題となる場合がある。その場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを調製し、その後に目的の濃度とするための濃縮工程を行うことが好ましい。このような方法を用いる際には、濾過装置で濾過されたドープをフラッシュ装置に送り、フラッシュ装置内でドープ中の溶媒の一部を蒸発させる。蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示しない)により凝縮されて液体となり回収装置により回収される。回収された溶媒は再生装置によりドープ調製用の溶媒として再生されて再利用される。この再利用はコストの点で効果がある。
【0038】
また、濃縮されたドープは、ポンプによりフラッシュ装置から抜き出される。さらに、ドープに発生した気泡を抜くために泡抜き処理が行われることが好ましい。この泡抜き方法としては、公知の種々の方法が適用され、例えば超音波照射法が挙げられる。ドープは続いて濾過装置に送られて、異物が除去される。なお、濾過する際のドープの温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。そしてドープ22はストックタンク21に送られ、貯蔵される。
【0039】
以上の方法により、TAC濃度が5質量%〜40質量%であるドープを製造することができる。より好ましくはTAC濃度が15質量%以上30質量%以下であり、最も好ましくは17質量%以上25質量%以下の範囲とすることである。また、添加剤(主には可塑剤である)の濃度は、ドープ中の固形分全体を100質量%とした場合に1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、TACフィルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法及び添加方法、濾過方法、脱泡などのドープの製造方法については、特願2004−264464号の[0517]段落から[0616]段落が詳しい。これらの記載も本発明に適用できる。
【0040】
[溶液製膜方法]
次に、上記で得られたドープ22を用いてフィルムを製造する方法を説明する。図1はフィルム製造ライン20を示す概略図である。ただし、本発明は、図1に示すようなフィルム製造ラインに限定されるものではない。フィルム製造ライン20には、ストックタンク21、濾過装置30、流延ダイ31、回転ローラ32,33に掛け渡された流延バンド34及びテンタ式乾燥機35などが備えられている。さらに耳切装置40、乾燥室41、冷却室42及び巻取室43などが配されている。
【0041】
ストックタンク21には、モータ60で回転する攪拌機61が取り付けられている。そして、ストックタンク41は、ポンプ62及び濾過装置30を介して流延ダイ31と接続している。
【0042】
流延ダイ31の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有するものも、この流延ダイ31の材質として用いることができ、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有するものを用いられる。さらに、鋳造後1ヶ月以上経過したものを研削加工して流延ダイ31を作製することが好ましい。これにより流延ダイ31内をドープ22が一様に流れ、後述する流延膜にスジなどが生じることが防止される。流延ダイ31の接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ31のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ31のリップ先端の接液部の角部分について、そのRは全巾にわたり50μm以下とされている。また、流延ダイ31内部における剪断速度が1(1/sec)〜5000(1/sec)となるように調整されていることが好ましい。
【0043】
流延ダイ31の幅は、特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルムの幅の1.1倍〜2.0倍であることが好ましい。また、製膜中の温度が所定温度に保持されるように、この流延ダイ31に温調機(図示しない)を取り付けることが好ましい。また、流延ダイ31にはコートハンガー型のものを用いることが好ましい。さらに、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を流延ダイ31の幅方向において所定の間隔で設け、ヒートボルトによる自動厚み調整機構が流延ダイ31に備えられていることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)62の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。また、フィルム製造ライン20中に図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づく調整プログラムによってフィードバック制御を行っても良い。流延エッジ部を除いて製品フィルムの幅方向の任意の2点の厚み差は1μm以内に調整し、幅方向厚みの最小値と最大値との差が3μm以下となるように調整することが好ましく、2μm以下に調整することがより好ましい。また、厚み精度は±1.5μm以下に調整されているものを用いることが好ましい。
【0044】
流延ダイ31のリップ先端には、硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削でき気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつ流延ダイ31と密着性が良く、ドープ22との密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC),Al23 ,TiN,Cr23などが挙げられるが、なかでも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
【0045】
流延ダイ31のスリット端に流出するドープが、局所的に乾燥固化することを防止するために溶媒供給装置(図示しない)をスリット端に取り付けることが好ましい。この場合には、ドープを可溶化する溶媒(例えば、ジクロロメタン86.5質量部,アセトン13質量部,n−ブタノール0.5質量部の混合溶媒)を流延ビードの両端部、ダイスリット端部及び外気が形成する三相接触線の周辺部付近に供給することが好ましい。端部の片側それぞれに0.1mL/min〜1.0mL/minで供給することが、流延膜中への異物混合を防止するために好ましい。なお、この液を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
【0046】
流延ダイ31の下方には、回転ローラ32,33に掛け渡された流延バンド34が設けられている。回転ローラ32,33は図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い流延バンド34は無端で走行する。流延バンド34は、その移動速度、すなわち流延速度が10m/分〜200m/分で移動できるものであることが好ましい。また、流延バンド46の表面温度を所定の値にするために、回転ローラ32,33に伝熱媒体循環装置63が取り付けられていることが好ましい。流延バンド34は、その表面温度が−20℃〜40℃に調整可能なものであることが好ましい。本実施形態において用いられている回転ローラ32,33内には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ32,33の温度を所定の値に保持されるものとなっている。
【0047】
流延バンド34の幅は特に限定されるものではないが、ドープ22の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。流延バンド34は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、流延バンド34の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
【0048】
なお、回転ローラ32,33を直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。この場合には、回転ローラ32,33の表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、回転ローラの表面にクロムメッキ処理などを行い、十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(流延バンド34や回転ローラ32,33)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であることが好ましい。
【0049】
流延ダイ31、流延バンド34などは流延室64に収められている。流延室64には、その内部温度を所定の値に保つための温調設備65と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)66とが設けられている。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置67が流延室64の外部に設けられている。また、流延ダイ31から流延バンド34にかけて形成される流延ビードの背面部を圧力制御するための減圧チャンバ68が配されていることが好ましく、本実施形態においてもこれを使用している。
【0050】
流延膜69中の溶媒を蒸発させるため送風口70,71,72が流延バンド34の周面近くに設けられている。また、流延直後の流延膜69に乾燥風が吹き付けられることによる流延膜69の面状変動を抑制するため流延ダイ31近傍の送風口70には遮風板73が設けられていることが好ましい。
【0051】
渡り部80には、送風機81が備えられ、テンタ式乾燥機35の下流の耳切装置40には、切り取られたフィルム82の側端部(耳と称される)の屑を細かく切断処理するためのクラッシャ90が接続されている。なお、テンタ式乾燥機35については後に詳細に説明する。
【0052】
乾燥室41には、多数のローラ91が備えられており、蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置92が取り付けられている。そして、図1においては、乾燥室41の下流に冷却室42が設けられているが、乾燥室41と冷却室42との間に調湿室(図示しない)を設けても良い。冷却室42の下流には、フィルム82の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように調整するための強制除電装置(除電バー)93が設けられている。図1においては、強制除電装置93は、冷却室42の下流側とされている例を図示しているが、この設置位置に限定されるものではない。さらに、本実施形態においては、フィルム82の両縁にエンボス加工でナーリングを付与するためのナーリング付与ローラ94が強制除電装置93の下流に適宜設けられる。また、巻取室43の内部には、フィルム82を巻き取るための巻取ローラ95と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ96とが備えられている。
【0053】
図2に示すようにテンタ式乾燥機35には湿潤フィルム74の両縁を把持するテンタクリップ100が多数接続しているテンタチェーン101,102が設けられている。テンタチェーン101,102は図示しないスプロケットに巻き掛けられている。スプロケットが回転することでテンタチェーン101,102は無端で走行する。湿潤フィルム74はテンタ式乾燥機35の噛込部35aでテンタクリップ100に噛み込まれて把持される。湿潤フィルム74はテンタクリップ100でその両縁が把持されて搬送されつつ乾燥してフィルム82となる。そして、離脱部35bでテンタクリップ100がフィルム82を離脱してフィルム82はテンタ式乾燥機35から送り出される。テンタクリップ100はリターン部101a,102aを通り、再度噛込部35aで湿潤フイルム74を噛み込む。
【0054】
次に、以上のようなフィルム製造ライン20を使用してフィルム82を製造する方法の一例を以下に説明する。ドープ22は、攪拌機61の回転により常に均一化されている。ドープ22には、この攪拌の際にも可塑剤,紫外線吸収剤などの添加剤を混合させることもできる。
【0055】
ドープ22は、ポンプ62により濾過装置30に送られてここで濾過された後に、流延ダイ31から流延バンド34上に流延される。回転ローラ32,33の駆動は、流延バンド34に生じるテンションが104N/m〜105N/mとなるように調整されることが好ましい。また、流延バンド34と回転ローラ32,33との相対速度差は、0.01m/min以下となるように調整する。流延バンド34の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド34が一回転する際に生じる幅方向の蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を制御するために流延バンド34の両端の位置を検出する検出器(図示しない)を設け、その測定値に基づき流延バンド34の位置制御機(図示しない)にフィードバック制御を行い、流延バンド34の位置の調整を行うことがより好ましい。さらに、流延ダイ31直下における流延バンド34について、回転ローラ33の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以下となるように調整することが好ましい。また、流延室64の温度は、温調設備65により−10℃〜57℃とされていることが好ましい。なお、流延室64の内部で蒸発した溶媒は回収装置67により回収された後に、再生させてドープ調製用溶媒として再利用される。
【0056】
流延ダイ31から流延バンド34にかけては流延ビードが形成され、流延バンド34上には流延膜69が形成される。流延時のドープ22の温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。また、流延ビードを安定させるために、この流延ビードの背面が減圧チャンバ68により所望の圧力値に制御されることが好ましい。ビード背面は、前面よりも−2000Pa〜−10Paの範囲で減圧することが好ましい。さらに、減圧チャンバ68にはジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つように温度制御されることが好ましい。減圧チャンバ68の温度は特に限定されるものではないが、用いられている有機溶媒の凝縮点以上にすることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために流延ダイ31のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けることが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/min〜100L/minの範囲であることが好ましい。
【0057】
流延膜69は、流延バンド34の走行とともに移動し、このときに送風口70,71,72により流延膜69に乾燥風があてられて溶媒の蒸発が促進される。そして、この乾燥風の吹き付けにより流延膜69の面状が変動することがあるが、遮風板73がこの変動を抑制している。なお、流延バンド34の表面温度は、−20℃〜40℃であることが好ましい。
【0058】
流延膜69は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フィルム74として剥取ローラ75で支持されながら流延バンド34から剥ぎ取られる。剥ぎ取り時の残留溶媒量は、固形分基準で20質量%〜250質量%であることが好ましい。その後に多数のローラが設けられている渡り部80を搬送させて、テンタ式乾燥機35に湿潤フィルム74を送り込む。渡り部80では、送風機81から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フィルム74の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。なお、渡り部80では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フィルム74にドローテンションを付与させることも可能である。
【0059】
テンタ式乾燥機35に送られている湿潤フィルム74は、その両端部がクリップで把持されて搬送されながら乾燥される。また、テンタ式乾燥機35の内部を温度ゾーンに区画分割して、その区画毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。テンタ式乾燥機35を用いて湿潤フィルム74を幅方向に延伸させることも可能である。このように、渡り部80及び/またはテンタ式乾燥機35で湿潤フィルム74の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を0.5%〜300%延伸することが好ましい。
【0060】
図2に示すように湿潤フィルム74はテンタクリップ100で噛込部35aで噛み込まれ把持される。このときの湿潤フィルム74の乾量基準における溶媒含有量が80重量%以上200重量%以下であることが好ましく、80重量%以上150重量%以下であることがより好ましく、最も好ましくは80重量%以上130重量%以下である。溶媒含有量が80重量%未満であると、フィルム82の生産性が劣る場合が生じる。また、200重量%を超えると、湿潤フィルム74が軟らか過ぎてチギレなどの不良を引き起こす場合がある。また、湿潤フィルム74中の溶媒の急激な揮発により発泡が生じるおそれがある。
【0061】
噛込部34aにおけるテンタクリップ100の温度は0℃以上60℃以下であることが好ましく、10℃以上50℃以下であることがより好ましく、最も好ましくは20℃以上40℃以下である。テンタクリップ100の温度が0℃未満であるとテンタクリップ100表面に結露が生じるおそれがある。また、テンタクリップ100の温度が60℃を超えると湿潤フィルム74の両縁の温度が上がり、湿潤フィルム74に含まれている溶媒が急激に揮発して発泡するおそれが生じる。
【0062】
図3に示すように湿潤フィルム74は、クリップ110によりテンタクリップ100に噛み込められている。テンタクリップ100において湿潤フィルム74が接触している面を把持面100aと称する。本発明において把持面の表面張力は3.0×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下であることが好ましく、より好ましくは3.1×10-2N/m以上3.2×10-2N/m以下である。表面張力が3.0×10-2N/m未満であると湿潤フィルム74の把持が不安定になる。また、3.3×10-2N/mを超えると、把持面100aに異物が付着しやすくなる。そして、その異物が湿潤フィルム74に付着することでフィルム82に面状故障を引き起こす場合がある。
【0063】
把持面100aの表面硬度Hv(ビッカース硬さ)は、400Hv以上であることが好ましく、より好ましくは500Hv以上であり、最も好ましくは700Hv以上である。把持面100aの硬さが硬くなるほど、把持面100aに傷が付きにくくなる。そのため、傷つきによる把持力の低下を抑制できる。また、傷つき箇所への湿潤フィルム74などの付着を抑制でき、フィルム82の面状故障を抑制できる。なお、硬さの上限値は特に限定されるものではないが、実用上800Hv以下である。
【0064】
把持面100aの表面粗さRa(算術平均粗さ)は、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上0.8μm以下であり、最も好ましくは0.2μm以上0.5μm以下である。表面粗さが0.05μm未満であると、テンタクリップ100の加工が困難となり製造コストが高いものとなる。また、表面粗さが1μmを超えると、把持面100aの表面の均一性が損なわれるおそれがある。
【0065】
把持面100aに鍍金処理を施すことで、湿潤フィルム74と把持面100aとの接着を防止できる。把持面100aの鍍金処理方法としては、電気めっき,気相めっき(例えば、蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,気相成長法など)などが挙げられる。具体的には、テンタクリップ100をSUS材から製造した場合に、無電解ニッケルめっき法のめっきにより約20μmの薄膜を形成する例が挙げられる。
【0066】
テンタクリップ100が湿潤フィルム74を把持してから離脱するまでの間に送風機111から風112を吹き付けることが好ましい。風112をテンタクリップ100に吹き付けることにより、テンタクリップ100近傍の揮発性成分を低濃度化することが可能となりテンタクリップ100に可塑剤などの成分が析出することを抑制できる。風112は新鮮風であることが好ましいが、ガス濃度が10%以下の風112を吹き付けても良い。より好ましくはガス濃度が5%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
【0067】
前記風112のテンタクリップ100への吹き付け温度は、30℃以上70℃以下であることが好ましく、35℃以上65℃以下であることがより好ましく、最も好ましくは40℃以上60℃以下である。吹き付け温度が30℃未満であると、湿潤フィルム74がテンタクリップ100で把持されて部分の乾燥が遅れて乾燥時にさけるおそれが生じる場合がある。また、吹き付け温度が70℃を超えると、湿潤フィルム74の両縁から溶媒の発泡が生じるおそれがあり、フィルム82の面状故障の原因となるおそれがある。
【0068】
湿潤フィルム74は、テンタ式乾燥機35で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、フィルム82として下流側に送り出される。フィルム82の両側端部は、耳切装置40によりその両縁が切断される。切断された側端部は、図示しないカッターブロワによりクラッシャ90に送られる。クラッシャ90により、フィルム側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。なお、このフィルム両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
【0069】
両側端部を切断除去されたフィルム82は、乾燥室41に送られ、さらに乾燥される。乾燥室41内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃〜160℃の範囲であることが好ましい。乾燥室41においては、フィルム82は、ローラ91に巻き掛けられながら搬送されており、ここで蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置92により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室41の内部に乾燥風として再度送風される。なお、乾燥室41は、乾燥温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置40と乾燥室41との間に予備乾燥室(図示しない)を設けてフィルム82を予備乾燥すると、乾燥室41においてフィルム温度が急激に上昇することが防止されるので、これによりフィルム82の形状変化をより抑制することができる。
【0070】
フィルム82は、冷却室42で略室温まで冷却される。なお、乾燥室41と冷却室42との間に調湿室(図示しない)を設けても良く、この調湿室でフィルム82に対して、所望の湿度及び温度に調整された空気を吹き付けられることが好ましい。これにより、フィルム82のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良の発生を抑制することができる。
【0071】
また、強制除電装置(除電バー)93により、フィルム82が搬送されている間の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)とされる。図1では冷却室42の下流側に設けられている例を図示しているがその位置に限定されるものではない。さらに、ナーリング付与ローラ94を設けて、フィルム82の両縁にエンボス加工でナーリングを付与することが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸が、1μm〜200μmであることが好ましい。
【0072】
最後に、フィルム82を巻取室43内の巻取ローラ95で巻き取る。この際には、プレスローラ96で所望のテンションを付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましい。巻き取られるフィルム82は、長手方向(流延方向)に少なくとも100m以上とすることが好ましい。また、フィルム82の幅が600mm以上であることが好ましく、1400mm以上1800mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、1800mmより大きい場合にも効果がある。フィルム82の厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
【0073】
本発明の溶液製膜方法において、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時積層共流延又は逐次積層共流延させることもできる。さらに両共流延を組み合わせても良い。同時積層共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5%〜30%であることが好ましい。さらに、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましい。また、同時積層共流延を行なう場合には、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
【0074】
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、共流延、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特願2004−264464号の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載も本発明に適用できる。
【0075】
[性能・測定法]
(カール度・厚み)
巻き取られたセルロースアシレートフィルムの性能及びそれらの測定法は、特願2004−264464号の[0112]段落から[0139]段落に記載されている。これらも本発明にも適用できる。
【0076】
[表面処理]
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が表面処理されていることが好ましい。前記表面処理が真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理の少なくとも一種であることが好ましい。
【0077】
[機能層]
(帯電防止・硬化層・反射防止・易接着・防眩)
前記セルロースアシレートフィルムの少なくとも一方の面が下塗りされていても良い。
【0078】
さらに前記セルロースアシレートフィルムをベースフィルムとして、他の機能性層を付与した機能性材料として用いることが好ましい。前記機能性層が帯電防止層、硬化樹脂層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選択される少なくとも1層を設けることが好ましい。
【0079】
前記機能性層が、少なくとも一種の界面活性剤を0.1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。また、前記機能性層が、少なくとも一種の滑り剤を0.1mg/m2 〜1000mg/m2含有することが好ましい。さらに、前記機能性層が、少なくとも一種のマット剤を0.1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。さらには、前記機能性層が、少なくとも一種の帯電防止剤を1mg/m2〜1000mg/m2含有することが好ましい。セルロースアシレートフィルムに、種々様々な機能、特性を実現するための表面処理機能性層の付与方法は、上記以外にも、特願2004−264464号の[0890]段落から[1087]段落に詳細な条件、方法も含めて記載されている。これらも本発明に適用できる。
【0080】
(用途)
前記セルロースアシレートフィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。セルロースアシレートフィルムを偏光子に貼り合わせた偏光板を、液晶層に通常は2枚貼って液晶表示装置を作製する。ただし、液晶層と偏光板との配置は限定されるものではなく、公知の各種配置とすることができる。特願2004−264464号には、液晶表示装置として、TN型,STN型,VA型,OCB型,反射型、その他の例が詳しく記載されている。この方法は、本発明にも適用できる。また、同出願には光学的異方性層を付与した、セルロースアシレートフィルムや、反射防止、防眩機能を付与したセルロースアシレートフィルムについての記載もある。更には適度な光学性能を付与し二軸性セルロースアシレートフィルムとして光学補償フィルムとしての用途も記載されている。これは、偏光板保護フィルムと兼用して使用することもできる。これらの記載は、本発明にも適用できる。特願2004−264464号の[1088]段落から[1265]段落に詳細が記載されている。
【0081】
また、本発明の製造方法により光学特性に優れるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を得ることができる。前記TACフィルムは、偏光板保護フィルムや写真感光材料のベースフィルムとして用いることができる。さらにテレビ用途の液晶表示装置の視野角依存性を改良するための光学補償フィルムとしても使用可能である。特に偏光板の保護膜を兼ねる用途に効果的である。そのため、従来のTNモードだけでなくIPSモード、OCBモード、VAモードなどに用いられる。また、前記偏光板保護膜用フィルムを用いて偏光板を構成しても良い。
【0082】
以下、本発明について実施例1を挙げて説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。説明は本発明に係る実験1で詳細に行い、本発明に係る実験2ないし実験5及び比較例である実験6については、後に実験条件と結果とをまとめて表1に示す。
【実施例1】
【0083】
[実験1]
フィルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
【0084】
[組成]
セルローストリアセテート(置換度2.84、 粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
ジクロロメタン(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ジフェニルフォスフェート) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−
クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチ
ルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05質量部
【0085】
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
【0086】
(1−1)ドープ仕込み
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス製溶解タンクで前記複数の溶媒を混合してよく攪拌し、混合溶媒とした。なお、溶媒の各原料としては、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。次に、TACのフレーク状粉体をホッパから徐々に添加した。TAC粉末は、溶解タンクに投入されて、最初は5m/secの周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌機及び中心軸にアンカー翼を有する攪拌機を周速1m/secで攪拌する条件下で30分間分散した。分散開始時の温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。さらに、予め調製された添加剤溶液を添加剤タンク送液量を調整して、全体が2000kgとなるように送液した。添加剤溶液の分散を終了した後に、高速攪拌は停止した。そして、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、TACフレークを膨潤させて膨潤液を得た。膨潤終了までは窒素ガスにより溶解タンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際の溶解タンクの内部は、酸素濃度が2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。また膨潤液中の水分量は0.3質量%であった。
【0087】
(1−2)溶解・濾過
膨潤液を溶解タンクジャケット付配管に送液した。ジャケット付き配管で膨潤液を50℃まで加熱して、更に2MPaの加圧下で90℃まで加熱し、完全溶解した。このときの加熱時間は15分であった。次に溶解された液を温調機で36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を有する濾過装置を通過させドープ(以下、濃縮前ドープと称する)を得た。この際、濾過装置における1次側圧力は1.5MPa、2次側圧力を1.2MPaとした。高温にさらされるフィルタ、ハウジング及び配管はハステロイ(商品名)合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の伝熱媒体を流通させるジャケットを備えたものを使用した。
【0088】
(1−3)濃縮・濾過・脱泡・添加剤
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧とされたフラッシュ装置内でフラッシュ蒸発させて、蒸発した溶媒を凝縮器で回収した。フラッシュ後のドープ22の固形分濃度は、21.8質量%となった。なお、凝縮された溶媒はドープ調製用溶媒として再利用すべく回収装置で回収した。再生装置で再生した後に溶媒タンクに送液した。回収装置,再生装置では、蒸留や脱水を行った。フラッシュ装置のフラッシュタンクには攪拌軸にアンカー翼を備えた攪拌機(図示しない)を設け、その攪拌機により周速0.5m/secでフラッシュされたドープ22を攪拌して脱泡を行った。このフラッシュタンク内のドープ22の温度は25℃であり、タンク内におけるドープ22の平均滞留時間は50分であった。このドープ22を採取して25℃で測定した剪断粘度は、剪断速度10(sec-1)で450Pa・sであった。
【0089】
次に、このドープ22に弱い超音波を照射することにより泡抜きを実施した。その後にポンプを用いて1.5MPaに加圧した状態で、濾過装置を通過させた。濾過装置では、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルタを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フィルタを通過させた。それぞれの1次側圧力は1.5MPa,1.2MPaであり、2次側圧力は1.0MPa,0.8MPaであった。濾過後のドープ温度を36℃に調整して2000Lのステンレス製ストックタンク21内にドープ22を送液して貯蔵した。ストックタンク21は中心軸にアンカー翼を備えた攪拌機61を有しており、周速0.3m/secで常時攪拌を行った。なお、濃縮前ドープからドープを調製する際に、ドープ接液部には、腐食などの問題は全く生じなかった。
【0090】
また、ジクロロメタンが86.5質量部、アセトンが13質量部、1−ブタノールが0.5質量部の混合溶媒Aを作製した。
【0091】
(1−4)吐出・直前添加・流延・ビード減圧
図1に示すフィルム製造ライン20を用いてフィルム82を製造した。ストックタンク21内のドープ22を高精度のギアポンプ62で濾過装置30へ送った。このギアポンプ62は、ポンプ62の1次側を増圧する機能を有しており、1次側の圧力が0.8MPaになるようにインバーターモータによりギアポンプ62の上流側に対するフィードバック制御を行い送液した。ギアポンプ62は容積効率99.2%、吐出量の変動率0.5%以下の性能であるものを用いた。また、吐出圧力は1.5MPaであった。そして、濾過装置30を通ったドープ22を流延ダイ31に送液した。
【0092】
流延ダイ31は、幅が1.8mであり乾燥されたフィルム82の膜厚が80μmとなるように、流延ダイ31の吐出口でドープ22の流量を調整して流延を行った。また流延ダイ31の吐出口からのドープ22の流延幅を1700mmとした。なお、流延速度は、60m/minとした。ドープ22の温度を36℃に調整するために、流延ダイ31にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の入口温度を36℃とした。
【0093】
流延ダイ31と配管とはすべて、製膜中には36℃に保温した。流延ダイ31は、コートハンガータイプのダイを用いた。流延ダイ31には、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは、予め設定したプログラムによりギアポンプ62の送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、フィルム製造ライン20に設置した赤外線厚み計(図示しない)のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものを用いた。端部20mmを除いたフィルムにおいては、50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向における厚みのばらつきが3μm/m以下となるように調整した。また、全体厚みは±1.5%以下に調整した。
【0094】
また、流延ダイ31の1次側には、この部分を減圧するための減圧チャンバ68を設置した。この減圧チャンバ68の減圧度は、流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差が生じるように調整され、この調整は流延速度に応じてなされる。その際に、流延ビードの長さが20mm〜50mmとなるように流延ビードの両面側の圧力差を設定した。また、減圧チャンバ68は、流延部周囲のガスの凝縮温度よりも高い温度に設定できる機構を具備したものを用いた。ダイ吐出口におけるビードの前面部、背面部にはラビリンスパッキン(図示しない)を設けた。また、流延ダイのダイ吐出口の両端には開口部を設けた。さらに、流延ダイ31には、流延ビードの両縁の乱れを調整するためのエッジ吸引装置(図示しない)を取り付けた。
【0095】
(1−5)流延ダイ
流延ダイ31の材質は、熱膨張率が2×10-5(℃-1)以下の析出硬化型のステンレス鋼を用いた。これは、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316製と略同等の耐腐食性を有するものであった。また、ジクロロメタン,メタノール,水の混合液に3ヶ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じない耐腐食性を有していた。流延ダイ31の接液面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは1.5mmに調整した。流延ダイ31のリップ先端の接液部の角部分については、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工されているものを用いた。流延ダイ31内部でのドープ22の剪断速度は1(1/sec)〜5000(1/sec)の範囲であった。また、流延ダイ31のリップ先端には、溶射法によりWC(タングステンカーバイト)コーティングをおこない硬化膜を設けた。
【0096】
さらに流延ダイ31の吐出口には、流出するドープ22が局所的に乾燥固化することを防止するために、ドープ22を可溶化するための混合溶媒Aを流延ビードの両側端部と吐出口との界面部に対し、それぞれ0.5ml/minずつ供給した。混合溶媒を供給するポンプの脈動率は5%以下であった。また、減圧チャンバ68により流延ビード背面側の圧力を前面部よりも150Pa低くした。減圧チャンバ68の内部温度を所定の温度で一定にするためにジャケット(図示しない)を取り付けた。そのジャケット内には35℃に調整された伝熱媒体を供給した。前記エッジ吸引装置は、1L/min〜100L/minの範囲となるようにエッジ吸引風量を調整することができるものであり、本実施例ではこれを30L/min〜40L/minの範囲となるように適宜調整した。
【0097】
(1−6)金属支持体
支持体として幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを流延バンド34として利用した。流延バンド34は、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。その材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものを用いた。流延バンド34の全体の厚みムラは0.5%以下であった。流延バンド34は、2個の回転ローラ32,33により駆動させた。その際の流延バンド34の搬送方向における張力は1.5×105 N/m2 なるように調整した。また、流延バンド34と回転ローラ32,33との相対速度差が0.01m/min以下になるように調整した。このときに、流延バンド34の速度変動を0.5%以下とした。また1回転の幅方向の蛇行が、1.5mm以下に制限されるように流延バンド34の両端位置を検出して制御した。流延ダイ31の直下におけるダイリップ先端と流延バンド34との上下方向の位置変動は200μm以下にした。流延バンド34は、風圧変動抑制手段(図示しない)を有した流延室64内に設置した。この流延バンド34上に流延ダイ31からドープ22を流延した。
【0098】
回転ローラ32,33は、流延バンド34の温度調整を行うことができるように、内部に伝熱媒体を送液できるものを用いた。流延ダイ34側の回転ローラ33には5℃の伝熱媒体を流し、他方の回転ローラ32には乾燥のために40℃の伝熱媒体を流した。流延直前の流延バンド34中央部の表面温度は15℃であり、その両側端の温度差は6℃以下であった。なお、流延バンド34には、表面欠陥がないものが好ましく、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であるものを用いた。
【0099】
(1−7)流延乾燥
流延室64の温度は、温調設備65を用いて35℃に保った。流延バンド34上に流延されたドープ22から形成された流延膜69には、最初に流延膜69に対して平行に流れる乾燥風を送り、流延膜69を乾燥した。この乾燥風からの流延膜69への総括伝熱係数は24kcal/(m2・hr・℃)であった。乾燥風の温度は、流延バンド34上部の上流側の送風口70からは135℃の乾燥風を送風した。また下流側の送風口71からは140℃の乾燥風を送風し、流延バンド34下部の送風口72からは65℃の乾燥風を送風した。それぞれの乾燥風の飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。流延バンド34上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、この酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。また、流延室64内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)66を設け、その出口温度を−10℃に設定した。
【0100】
流延後5秒間は乾燥風が、直接に流延ビード及び流延膜69に当たらないように遮風板73を設置して、流延ダイ31近傍の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。流延膜69中の溶媒比率が乾量基準で50質量%になった時点で流延バンド34から剥取ローラ75で支持しながらフィルム(以下、湿潤フィルムと称する)74として剥ぎ取った。なお、この乾量基準による溶媒含有率は、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。また剥取テンションは1×102N/m2あり、剥取不良を抑制するために流延バンド34の速度に対して剥取速度(剥取ローラドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。剥ぎ取った湿潤フィルム74の表面温度は15℃であった。流延バンド34上での乾燥速度は、乾量基準で平均60質量%/minであった。乾燥により発生した溶媒ガスは−10℃の凝縮器66で凝縮液化して回収装置67で回収した。回収された溶媒は、水分量が0.5%以下となるように調整した。また、溶媒が除去された乾燥風は、再度加熱して乾燥風として再利用した。湿潤フィルム74を渡り部80のローラを介して搬送し、テンタ式乾燥機35に送った。テンタ式乾燥機35の噛込部35aにおける湿潤フィルム74の乾量基準における溶媒含有量は100重量%であった。この渡り部80では送風機81から40℃の乾燥風を湿潤フィルム74に送風した。なお、渡り部80のローラで搬送している際に、湿潤フィルム74に約30Nのテンションを付与した。
【0101】
テンタクリップ100はSUS材を素材として形成した。湿潤フィルム74を把持したテンタクリップ100の温度は40℃に調整した。テンタクリップ100の把持面100aの表面張力が3.1×10-2N/m,表面粗さRaが0.3μm、表面硬度が700Hvとなるように鍍金処理を行った。鍍金処理は、無電解ニッケルめっき法で行い、表面の素材は、無電解ニッケル皮膜中にテフロン(登録商標)粒子が一様に分布した薄層(層厚み約20μm)を形成して、熱処理した。
【0102】
(1−8)テンタ搬送・乾燥・耳切
テンタ式乾燥機35に送られた湿潤フィルム74は、クリップでその両端を固定されながらテンタ式乾燥機35の乾燥ゾーン内を搬送され、この間に乾燥風により乾燥された。クリップは、40℃の伝熱媒体の供給により温度調整を行った。また、送風機111により風112をテンタクリップ100に当てた。なお、風112はガス濃度が5%であり、温度を35℃に調整した。その風112を風速2m/sでテンタクリップ100に当てた。クリップの搬送は、チェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンタ式乾燥機35内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,110℃,120℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃における飽和ガス濃度とした。テンタ式乾燥機35内での平均乾燥速度は乾量基準で120質量%/minであった。テンタ式乾燥機35の出口ではフィルム82内の残留溶媒量が7質量%となるように、乾燥ゾーンの条件を調整した。テンタ式乾燥機35内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、この延伸前の湿潤フィルム74の幅を100%としたとき、延伸後の幅が103%となるように延伸した。剥取ローラ75からテンタ式乾燥機35の入口に至るまでの延伸率(テンタ駆動ドロー)は102%とした。
【0103】
テンタ式乾燥機35内での延伸率は、クリップによる噛み込み開始位置から10mm以上離れた位置の任意の2点における各実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率の差は5%以下であった。また、テンタ式乾燥機35の入口から出口までの長さに対する、クリップ挟持開始位置から挟持解除位置までの長さの割合は90%とした。テンタ式乾燥機35内で蒸発した溶媒は−10℃の温度で凝縮させ液化して回収した。凝縮回収用に凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は−8℃に設定した。そして凝縮溶媒は、含まれる水分量が0.5質量%以下に調整されて再使用された。そして、テンタ式乾燥機35からフィルム82として送り出した。
【0104】
テンタ式乾燥機35の出口から30秒以内にフィルム82の両端の耳切を耳切装置40で行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットし、カットした耳はカッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ90に風送して平均80mm2 程度のチップに粉砕した。このチップは、再度ドープ調製用原料としてTACフレークと共にドープ製造の際の原料として利用した。テンタ式乾燥機35の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述する乾燥室41で高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥室(図示しない)でフィルム82を予備加熱した。
【0105】
(1−9)後乾燥・除電
フィルム82を乾燥室41で高温乾燥した。乾燥室41を4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を送風機(図示しない)から給気した。フィルム82のローラ91による搬送テンションを100N/mとして、最終的に残留溶媒量が0.3質量%になるまで約10分間乾燥した。ローラ91のラップ角度(フィルムの巻き掛け中心角)は、90度および180度とした。ローラ91の材質はアルミ製もしくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラ91の表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラ91の回転によるフィルム位置の振れは、全て50μm以下であった。また、テンション100N/mでのローラ撓みは0.5mm以下となるように選定した。
【0106】
乾燥風に含まれる溶媒ガスは、吸着回収装置92を用いて吸着回収除去した。ここに使用した吸着剤は活性炭であり、脱着は乾燥窒素を用いて行った。回収した溶媒は、水分量を0.3質量%以下に調整してドープ調製用溶媒として再利用した。乾燥風には、溶媒ガスの他、可塑剤,UV吸収剤,その他の高沸点物が含まれるので冷却除去する冷却器およびプレアドソーバでこれらを除去して再生循環使用した。そして、最終的に屋外排出ガス中のVOC(揮発性有機化合物)は10ppm以下となるよう、吸脱着条件を設定した。また、全蒸発溶媒のうち、凝縮法で回収する溶媒量は90質量%であり、残りのものの大部分は吸着回収により回収した。
【0107】
乾燥されたフィルム82を第1調湿室(図示しない)に搬送した。乾燥室41と第1調湿室との間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃、露点が20℃の空気を給気した。さらに、フィルム82のカールの発生を抑制する第2調湿室(図示しない)にフィルム82を搬送した。第2調湿室では、フィルム82に直接90℃,湿度70%の空気をあてた。
【0108】
(1−10)ナーリング、巻取条件
調湿後のフィルム82は、冷却室42で30℃以下に冷却した後に耳切装置(図示しない)で再度両端の耳切りを行った。搬送中のフィルム82の帯電圧は、常時−3kV〜+3kVの範囲となるように強制除電装置(除電バー)93を設置した。さらにフィルム82の両端にナーリング付与ローラ94でナーリングの付与を行った。ナーリングはフィルム82の片側からエンボス加工を行うことで付与し、ナーリングを付与する幅は10mmであり、凹凸の高さがフィルム82の平均厚みよりも平均12μm高くなるようにナーリング付与ローラ94による押し圧を設定した。
【0109】
そして、フィルム82を巻取室43に搬送した。巻取室43は、室内温度28℃,湿度70%に保持した。巻取室43の内部には、フィルム82の帯電圧が−1.5kV〜+1.5kVとなるようにイオン風除電装置(図示しない)も設置した。このようにして得られたフィルム(厚さ80μm)82の製品幅は、1475mmとなった。巻取ローラ95の径は169mmのものを用いた。巻き始めテンションは300N/mであり、巻き終わりが200N/mになるようなテンションパターンとした。巻き取り全長は3940mであった。巻き取りの際の巻きズレの変動幅(オシレート幅と称することもある)を±5mmとした、巻取ローラ95に対する巻きズレ周期を400mとした。また、巻取ローラ95に対するプレスローラ96の押し圧は、50N/mに設定した。巻き取り時のフィルム82の温度は25℃、含水量は1.4質量%、残留溶媒量は0.3質量%であった。フィルム82の製造は連続して8760時間行った。全工程を通して乾量基準で平均乾燥速度は20質量%/minであった。また巻き緩み、シワもなく、10Gでの衝撃テストにおいても巻きずれが生じなかった。また、ロール外観も良好であった。
【0110】
フィルム82のフィルムロールを25℃、55%RHの貯蔵ラックに1ヶ月保管して、さらに上記と同様に検査した結果、いずれも有意な変化は認められなかった。さらにロール内においても接着も認められなかった。また、フィルム82を製膜した後に、流延バンド34上にはドープから形成された流延膜69の剥げ残りは全く見られなかった。
【0111】
テンタクリップ100の汚れは目視で観察して下記の4段階評価で行った。全く汚れが見られない(◎)、極めてわずかに汚れが見えるが製膜に影響を及ぼさない(○)、わずかに汚れが見えるが製膜に影響を及ぼさない(△)、汚れが汚れが明らかに見られ製膜に影響を及ぼす(×)。実験1では、全く汚れが見られない(◎)レベルであった。
【0112】
【表1】

【0113】
表1のから本発明に係るテンタクリップ把持面の表面張力が3.1×10-2N/mであった実験5では、テンタクリップ100の汚れはわずかに見られる程度であった(△)。さらに、テンタクリップ把持面の表面硬度を700Hvとした実験2、テンタクリップへの送風を行った実験3、テンタクリップ把持面の表面粗さRaを0.3とした実験4では、テンタクリップ100の汚れは極めてわずかであった(○)。さらに、表面張力を3.1×10-2N/m、テンタクリップ把持面の表面粗さRaを0.3μmとし、表面硬度を700Hvとし、テンタクリップ100への送風を行った実験1ではテンタクリップ100の汚れは全く見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係るテンタクリップを有するテンタ式乾燥機は、溶融製膜方法の際に用いられることに限定されず、例えば溶融製膜方法などの他のフィルムの製造の際に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る溶液製膜方法を実施するためのフィルム製造ラインの概略図である。
【図2】本発明に係るテンタクリップを有するテンタ式乾燥機の概略図である。
【図3】本発明に係るテンタクリップの概略図である。
【符号の説明】
【0116】
20 フィルム製造ライン
35 テンタ式乾燥機
35a 噛込部
74 湿潤フィルム
82 フィルム
100 テンタクリップ
100a 把持面
110 クリップ
111 送風機
112 風


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの両縁をテンタクリップで把持して前記フィルムの幅方向に前記フィルムを延伸するテンタ式乾燥機のテンタクリップにおいて、
前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面張力が3.0×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下であることを特徴とするテンタクリップ。
【請求項2】
前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面硬度が400Hv以上800Hv以下であることを特徴とする請求項1記載のテンタクリップ。
【請求項3】
前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面の表面粗さRaが0.05μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のテンタクリップ。
【請求項4】
前記テンタクリップは、前記フィルムの把持面が鍍金処理されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載のテンタクリップ。
【請求項5】
ポリマーと溶媒とを含むドープを支持体上に流延して流延膜を形成し、前記流延膜を前記支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取り、前記湿潤フィルムの両縁をテンタ式乾燥機のテンタクリップで把持しながら乾燥した後に離脱してフィルムを製造する溶液製膜方法において、
前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面張力が、30×10-2N/m以上3.3×10-2N/m以下であることを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項6】
前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面硬度が、400Hv以上800Hv以下であることを特徴とする請求項5記載の溶液製膜方法。
【請求項7】
前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面の表面粗さRaが、0.05μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項5または6記載の溶液製膜方法。
【請求項8】
前記テンタクリップの前記湿潤フィルムの把持面が、鍍金処理されていることを特徴とする請求項5ないし7いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
【請求項9】
前記湿潤フィルムを把持してから離脱までの間で前記テンタクリップ近傍に風を吹きつけることを特徴とする請求項5ないし8いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
【請求項10】
前記風の前記テンタクリップへの吹きつけ温度を30℃以上70℃以下とすることを特徴とする請求項9記載の溶液製膜方法。
【請求項11】
前記テンタクリップで前記湿潤フィルムの両縁を把持する際の、
前記湿潤フィルムの乾量基準における溶媒含有量が80重量%以上200重量%以下であることを特徴とする請求項5ないし10いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
【請求項12】
前記テンタクリップで前記湿潤フィルムの両縁を把持する際の、
前記テンタクリップの温度を0℃以上60℃以下とすることを特徴とする請求項5ないし11いずれか1つ記載の溶液製膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−240171(P2006−240171A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61238(P2005−61238)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】