説明

テント・幌用防水シート用基布、およびテント・幌用防水シート

【課題】コストと高モジュラスの両方を実現できるテント・幌用防水シート用基布およびこれをテント・幌用防水シートを提供すること。
【解決手段】基布の少なくとも一部がポリエチレンナフタレート繊維より構成されているテント・幌用防水シート用基布、この基布を用いたテント・幌用防水シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テント・幌用防水シート用基布およびこれを用いたテント・幌用防水シートに関するものであり、さらに詳しくは、高強力、高モジュラスである基布、およびこれを用いたテント・幌用防水シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
テント・幌用防水シートは、一般に、塩化ビニル樹脂などの樹脂層内部に、強度を確保するために補強用基布が埋設されて構成されている。この補強用基布としては、テント・幌用防水シートの用途に応じ、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、そして全芳香族ポリアミド繊維、ガラス繊維などの糸を、平織、綾織、朱子織などに製織した織物が使用されている。
特許文献1(特開平5−321132号公報)には、ポリエステルマルチフィラメントからなる産業資材用織物の製造方法が提案されており、この織物を補強用基布としたテント・幌用防水シートは、取り付け・設置の際の高いテンションによりシートが伸びてしまい、たるんでしまうなどの問題があった。
それを解決できる基布としては、モジュラスが高い繊維を用いることが必須である。特許文献2(特開平5−8337号公報)には、高強度、高モジュラスの全芳香族アラミド繊維やガラス繊維を利用することが提案されている。しかしながら、全芳香族アラミド繊維はコストが高く、また、ガラス繊維は耐屈曲性に問題があり、コストと高モジュラスを両立できる繊維は見当たらなかった。
【特許文献1】特開平5−321132号公報
【特許文献2】特開平5−8337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、コストと高モジュラスの両方を実現できるテント・幌用防水シート用基布、およびこれをテント・幌用防水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基布の少なくとも一部がポリエチレンナフタレート繊維より構成されていることを特徴とするテント・幌用防水シート用基布に関する。
また、本発明は、織物を基布として用いてなるテント・幌用防水シートにおいて、基布が本発明のテント・幌用防水シート用基布であることを特徴とするテント・幌用防水シートに関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、基布としてポリエチレンナフタレート織物を使用したテント・幌用防水用基布であり、これにより、コストと高モジュラスの両方を実現できるテント・幌用防水シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では、織物を基布として用いてなるテント・幌用防水シートにおいて、基布の少なくとも一部がポリエチレンナフタレート繊維より構成されていることが必須である。
基布を構成する繊維にポリエチレンナフタレート繊維が使用されてあれば良く、その他の糸については、必ずしもポリエチレンナフタレート繊維である必要は無い。その混率も特に限定はしないが、好ましくは50重量%以上が望まれる。
【0007】
ここで、ポリエチレンナフタレート繊維とは、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)に代表されるポリエチレンナフタレートポリマーを通常の紡糸延伸法に供することにより得られた繊維であり、該ポリエチレンナフタレートは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含んでいればよく、10モル%以下の割合で適当な第3成分を含む重合体であっても差し支えない。
【0008】
一般に、ポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を触媒の存在下適当な反応条件のもとにエチレングリコールと縮重合せしめることにより合成することができる。この際、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に、1種または2種以上の第3成分を添加すれば、共重合体が合成される。
【0009】
適当な第3成分としては、2個のエステル形成性官能基を有する化合物;例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのジカルボン酸;グリコール酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸;トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、p,p’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(p−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0010】
上記ポリエチレンナフタレート中には、二酸化チタンなどの艶消剤やリン酸、亜リン酸およびそれらのエステルなどの安定剤が含まれていてよいことはいうまでもない。
【0011】
また、ポリエチレンナフタレートの固有粘度は、0.65dL/g以上、特に0.7〜1.0dL/gの範囲であることが好ましい。ここでいう固有粘度は、ポリマーあるいは延伸前の未延伸糸をフェノールとオルトジクロロベンゼンとの混合溶媒に(容量比6:4)に溶解し、35℃で測定した粘度から求めた値である。固有粘度が0.65dL/g未満では、本発明の基布用繊維として要求される高強度、高タフネスな糸質の繊維を得難くなる。一方、1.0dL/gを超える場合には、紡糸工程が不良となりやすく、実用上望ましくない。
【0012】
ポリエチレンナフタレート繊維の形態については、マルチフィラメント、短繊維いずれでもよく、また該短繊維を含んだ紡績糸であってもよい。好ましい形態は、強度が比較的に高いマルチフィラメントで、その中でも、樹脂層との接着強度が向上することから、タスラン加工のような嵩高加工が施されたマルチフィラメントが好ましい。
また、該繊維の長手方向における断面の形状は、中実、中空断面いずれであってもよく、また円形、異形のいずれであってもよい。なかでも、中空部を有する繊維、特に中空率が20〜50%の中空繊維は、該基布構成繊維の50重量%以上を占めるとき、得られる防水シートは優れた軽量性を示すだけでなく、皺が発生し難いので、皺に応力が集中することによる樹脂層の疲労劣化・亀裂発生が抑制され、使用耐久性が向上するので好ましい。
【0013】
さらに、ポリエチレンナフタレート繊維の繊度は、テント・幌用防水シートとした際の強力や基布を製造する過程における取扱性などの観点から、単繊維繊度は、1〜22dtexデニールの範囲が好ましく、特に2〜11dtexの範囲が好ましい。また、該単繊維繊度と同様な理由から、ポリエチレンナフタレート繊維がマルチフィラメントまたは紡績糸の場合における総繊度は、33〜2,200dtex、特に55〜1,320dtexの範囲が好ましい。
【0014】
次に基布の形態は、ポリエチレンナフタレート繊維からなるものであれば、織物、編物、不織布など任意のものが採用できるが、経方向、緯方向のバランスがよい基布は平織物である。
また、基布の目付けは、基布の強力を維持する面からは50g/m以上が好ましく、一方基布の柔軟性を維持する面からは500g/m以下が好ましい。基布の目付は、さらに好ましくは、70〜200g/mである。
【0015】
次に、基布を被覆させる樹脂としては塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂など公知の樹脂を任意に使用することができる。
次に、前述した基布に樹脂を被覆する方法について説明する。本発明のテント・幌用防水シートは、前述のポリエチレンナフタレート繊維からなる基布に、上述の樹脂を積層、含浸等して被覆することにより得ることができる。この積層や含浸の方法については、斯界で周知の手段を採用すればよく、例えば、基布の表面に溶融した塩化ビニル樹脂などの被覆樹脂を押し出し、これを基布に押圧しつつ基布中に該被覆樹脂の少なくとも一部を押し込んで接着させる方法(いわゆる溶融ラミネート法)、T−ダイまたはカレンダー法によってシート状に成形された被覆樹脂シートを適切なアンカー剤を用いて接合する方法(いわゆるドライラミネート法)、基布を被覆樹脂中に浸漬させる方法(いわゆるディップ法)や、基布の片側面にウレタン樹脂などの被覆樹脂溶液を塗布する方法(いわゆるナイフコーター法)などが挙げられる。この中でも、製造工程が比較的に簡易な溶融ラミネート法およびドライラミネート法が好ましい。
【0016】
基布に対する樹脂の付与量は、付与手段が積層か含浸かによって若干変ってくる。例えば、積層の態様にあっては、樹脂の膜厚が重要な因子となる。つまり、樹脂層の厚みは、得られるシートの柔軟性の面から250μm以下が好ましく、また防水性の面から10μm以上が好ましい。さらに好ましくは、30〜100μmである。
なお、ここでいう樹脂層の厚みは、シートの片側面における、基布表面から樹脂層の外表面までの直線距離であり、両側面の場合は、それぞれの片側面がこの範囲内にあればよい。
一方、含浸の態様にあっては、基布に対する樹脂の重量比が重要な因子となる。前述の厚みと同様な理由から、好ましい両者の重量比は1:0.2〜3.0、特に1:0.3〜2.0の範囲が好ましい。
【実施例】
【0017】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中における各特性値は下記測定方法にしたがった。
<耐屈曲性>
基布と樹脂を一体化した防水シートの一方を図1のような試験装置に固定し、他方に荷重600gをかけ、3mmΦの金属棒を屈曲部に押し当て、屈曲角度180度、屈曲回数1000回繰り返す前後の強度を測定し、強度保持率を計算した。
<クリープ>
防水シート強力の1/30荷重を負荷し、50日後の伸び率を測定した。
【0018】
実施例1
帝人テクノプロダクツ(株)製のポリエチレンナフタレート繊維「テオネックス」1,100デシテックス、250フィラメントを経緯共に使用した平織布(密度25本/インチ、目付100g/m)を作成した。この基布の表面に溶融した塩化ビニル樹脂組成物(平均重合度1,000のポリ塩化ビニル100重量部、ジ−2−エチルヘキシルフタレートを50重量部、Cd−Zn系安定剤を3重量部、炭酸カルシウムを10重量部、酸化チタンを7重量部からなるコンパウンド)を180℃で溶融押し出し、これを基布に押圧しつつ基布中に該塩化ビニル樹脂組成物の少なくとも一部を押し込んで接着させる方法、いわゆる溶融ラミネート法にて基布と樹脂を一体化し、テント・幌用防水シートを得た。被覆樹脂の厚みは40μmであった。
【0019】
比較例1
実施例1の繊維をポリエステル繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製)とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0020】
比較例2
実施例1の繊維をトワロン繊維(テイジンテワロン(株)製)とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0021】
比較例3
実施例1の繊維をガラス繊維(ユニチカガラスファイバー(株)製)とした以外は、実施例1と同様に行った。
以上の結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
PEN :ポリエチレンナフタレート繊維
PET :ポリエチレンテレフタレート繊維
PPTA:ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のテント・幌用防水シート用基布により得られるテント・幌用防水シートは、コストと高モジュラスの両方を実現することができ、中大型テント、軒出し用テント、バックリット、ターポリン、遮水シート、幌用防水シートなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】耐屈曲性試験装置の構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の少なくとも一部がポリエチレンナフタレート繊維より構成されていることを特徴とするテント・幌用防水シート用基布。
【請求項2】
織物を基布として用いてなるテント・幌用防水シートにおいて、基布が請求項1記載のテント・幌用防水シート用基布であることを特徴とするテント・幌用防水シート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−63482(P2006−63482A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247630(P2004−247630)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】