説明

テント天頂部の空間拡張装置

【課題】テントの天頂部に雨水が溜まったり、雪の重さにより崩壊したりすることを防止するとともに、テント内部の空間を上方に拡張させることができる、テント天頂部の空間拡張装置を提供する。
【解決手段】内側生地102の天頂部103に縫着される伸縮生地部104と、伸縮生地部104の中央に縫着される支持環105と、伸縮生地部104の両側の内側生地102に一端が各々縫着される固定バンド121及び調節バンド131と、中央部が支持環105に挿入されて所定の角度に折り曲げられ弾性力を有してテントの天頂部103を押し上げ、両端部は固定バンド121及び調節バンド131に嵌合される支持棒111と、一端には固定バンド121の他端が固定され、他端には調節バンド131が、止め位置の調節が可能であって、かつ解けないように連結されるバックル141と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側生地と内側生地とからなるテントに使用されるテント天頂部の空間拡張装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、野外キャンプ生活に必須なテントは、防水及び防風などを目的として、外側生地及び内側生地の2重構造になるように製作する。このようなテントは天頂部分が殆ど平面状になっているため、雨天時には天頂部に雨水が溜まり、雪が降る時には天頂部に雪が積もる問題がある。即ち、雨天時にテントの天頂部に雨水が溜まると、テントの生地が水気を吸収しながらへこむ現象が発生する。そして、このへこんだ部位には益々水が溜まるようになる。また、冬季に雪が降ると天頂部に雪が積もり、積もった雪の重さによって天頂部がへこみ、テントが崩壊することも度々発生する。
【0003】
そのため従来は、テントの天頂部に水が溜まったり雪が積もったりするのを防止するために、長いポールを利用して天頂部を押し上げていた。即ち、テントの内部に長いポールを立て、天頂部を上方に突出させて高くすることによって、天頂部に水が溜まったり雪が積もったりするのを防止できるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のテントは、長いポールがテントの内部中央に立てられている状態であるため、テント内の生活に多くの制約を与えるようになり、活用できる空間が大きく減少する問題がある。また、長いポールをテントと共に常に携帯しなければならないため、テントの携帯時の重量及び体積が増加する問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、雨天時にテントの天頂部がへこんで水が溜まることを防止し、雪が降っても天頂部に雪が積もらず、雪の重さにより崩壊することがないようにするとともに、テント内部の空間を上方に拡張させて有効に活用できる、テント天頂部の空間拡張装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、外側生地と内側生地とからなるテントに使用されるテント天頂部の空間拡張装置において;所定のサイズに切り取られて分離された内側生地の天頂部位に縫着される伸縮生地部と、伸縮生地部の中央に縫着される支持環と、伸縮生地部を中心とした両側の内側生地に一端が各々縫着され、それぞれアイレットを有する固定バンド及び調節バンドと、中央部が所定の角度に折り曲げられて弾性力を有しており、テントの天頂部を押し上げることができるように中央部は支持環に挿入され、両端部は挿入管を介して固定バンド及び調節バンドのそれぞれのアイレットに嵌合される支持棒と、一端には固定バンドの内側生地に縫着されていない他端が固定され、他端には調節バンドが、止め位置の調節が可能なように、かつ解けないように連結されるバックルと、を備えることを特徴とする、テント天頂部の空間拡張装置が提供される。
【0007】
このように本願発明のテント天頂部の空間拡張装置においては、テントの天頂部の内側生地に伸縮生地部を設け、天頂部の空間だけに設置される支持棒で伸縮生地部を天頂方向に押し上げることができるので、従来のようにテント内部の中央に天頂部を突き上げるための長いポールを立てる必要がなく、天頂部に雨が溜まったり、雪が積もったりするのを防止するとともに、テント内部の空間を有効に使用することができる。また、テント内部の空間を天頂方向に拡張することによって、テント内で感じる圧迫感を減らして快適なテント内の生活ができ、さらに、テントの天頂部を新しく独特な形態に変形することによって他社製品と差別化し、製品の競争力を高めることもできる。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように本発明によれば、テントの天頂部の空間だけに空間拡張装置が設置されて天頂部を押し上げることができるので、雨天時にテントの天頂部に水が溜まることを防止したり、雪が積もってテントが崩壊したりすることがなく、安全なテント構造を提供することができるとともに、テント内部の空間を上方に拡張させることができるので、テント内で感じる圧迫感がなく、テント内の生活を快適なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置をテントに使用した状態の斜視図である。また、図2はテント天頂部の空間拡張装置をテント内部から見た説明図であり、図3はテント天頂部の空間拡張装置とテントとの結合状態を断面で示した説明図である。
【0011】
テントは外側生地101と内側生地102とからなっている。このようなテントにおいて、本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置は、所定のサイズに切り取られて分離された内側生地102の天頂部103に縫着される伸縮生地部104と、伸縮生地部104の中央に縫着される支持環105と、伸縮生地部104を中心とした両側の内側生地102に一端が各々縫着され、それぞれアイレット122、132を有する固定バンド121及び調節バンド131と、中央部が所定の角度に折り曲げられて弾性力を有しており、テントの天頂部103を押し上げることができるように中央部は支持環105に挿入され、両端部は挿入管112を介して固定バンド121及び調節バンド131のそれぞれのアイレット122、132に嵌合される支持棒111と、一端には固定バンド121の内側生地102に縫着されていない他端が固定され、他端には調節バンド131が、止め位置の調節が可能であって、かつ解けないように連結されるバックル141と、を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置が使用されたテントは、中央の天頂部103が他の天頂部より高く押し上げられているので、雨水や雪がテントの側面に沿って全て下方に流れ、天頂部に雨水が溜まったり雪が積もったりすることはない。また、テントは外側生地101に縫着された複数の環に挿入される支持棒によって所定の形態を維持することができる。
【0013】
本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置は、図2及び図3に示すように、テントの天頂部を上方に押し上げるために、内側生地102の天頂部103を所定のサイズに切り取って分離した後、切り取った部位に伸縮生地部104が縫着される。伸縮生地部104は、後述する支持棒111の弾力によって伸ばされて上方に拡張されなければならないので、伸縮性素材の生地で作ることが好ましい。一方、伸縮生地部104の形状は特に制限されるものではなく、例えば、円形、楕円形、長方形など、テントのサイズや形状によって適切な形態を有することが好ましい。本発明の実施の形態では、長方形の形状を有する伸縮生地部104を例示している。
【0014】
そして、伸縮生地部104には支持環105が縫着されている。支持環105には支持棒111が挿入され、支持棒111の中央部に支持環105が位置するようにする。また、伸縮生地部104が拡張される時に、支持棒111によってテントの天頂部が押し上げられるようにするために、支持環105は伸縮生地部104の略中央に縫着されることが好ましい。
【0015】
さらに、内側生地102の天頂部103には、伸縮生地部104を中心とした両側に、固定バンド121及び調節バンド131が縫着されている。天頂部103の拡張範囲を広めるために、支持棒111は長方形状の伸縮生地部104の長手方向に沿って配置することが好ましい。したがって、固定バンド121及び調節バンド131は、伸縮生地部104の両端から所定の間隔をおいて離間した地点の内側生地102に縫着されることが好ましい。また、支持棒111による伸縮生地部104の拡張が円滑になされるように、固定バンド121及び調節バンド131の内側生地102に縫着された端部は、支持環105と同一直線上に位置するように、縫着されることが好ましい。
【0016】
固定バンド121の上部(天頂方向端部)は、伸縮生地部104の一端(図2の左側の短手側端)から所定の間隔をおいてテントの内側生地102に縫着される一方、自由端である下部(他端)は、内側生地102には固定されずに自由に垂れ下がっており、後述するバックル141の一端に固定される。固定バンド121の中間部には、支持棒111の一端を嵌合するためのアイレット122が形成されている。
【0017】
同様に、調節バンド131の上部(天頂方向端部)は、伸縮生地部104の一端(図2の右側の短手側端)から所定の間隔をおいてテントの内側生地102に縫着される一方、自由端である下部は内側生地102に固定されずに垂れ下がっており、後述するバックル141の他端に連結される。調節バンド121にも支持棒111の他端を嵌合するためのアイレット132が形成されている。
【0018】
支持棒111の両端は、各々挿入管112を介して固定バンド121及び調節バンド131の、アイレット122、132にそれぞれ嵌合される。即ち、支持棒111の両端は、挿入管112によってアイレット122、132内に嵌合された状態で維持できる。
【0019】
次に、バックル141について説明する。バックル141の一端には固定バンド121の内側生地102に縫着されていない他端が固定され、他端には調節バンド131が、止め位置の調節が可能なように、かつ解けないように連結される。つまり、バックル141とアイレット132との間の調節バンド131の長さの調節が可能となるように連結される。この時、調節バンド131は、解けないように、解け防止式(長さを調節した後、調節バンド131はその位置で止まって維持できる方式)でバックル141に連結されている。
【0020】
したがって、調節バンド131の先端を握って図3の右側方向に引くと、調節バンド131のバックル141とアイレット132との間の長さが縮みながら、支持棒111の両端間の間隔が減少する。それと同時に支持棒111の中央部が上方(天頂方向)に突出して、テントの天頂部が押し上げられるようになる。一方、調節バンド131から手を離すと、解け防止式の調節バンド131によって、バックル141から調節バンド131の一端がすべらず解けないで連結された状態を維持する。したがって、支持棒111の突出状態をそのまま維持できるようになる。
【0021】
テントの使用時に調節バンド131の一端を図3の右側方向に引くと、調節バンド131のバックル141とアイレット132との間の長さが縮みながら支持棒111の両端間の間隔が減少すると同時に、支持棒111の中央部が上方に押し上げられながら伸縮生地部104を外側に押圧する。支持棒111の押圧により伸縮生地部104が外側に膨脹しながら上方に伸ばされて、伸縮生地部104と接触している外側生地101も図3に示すように上方に押し上げられるようになる。調節バンド131の先端をさらに引いて支持棒111の中央部を図3よりも上方に突出させた状態を示した説明図が図4である。
【0022】
この時、テントが設置された地域の天気及び地形により、バックル141に止める調節バンド131の位置を変えて支持棒111の押圧程度を調節することによって、伸縮生地部104の突出高さを適切に調節できる。即ち、調節バンド131をより一層図3の右側に引くと、支持棒111はより一層弾性変形して中央部が上方に突出しながら、より一層、伸縮生地部104を上方に押し上げる。その結果、テントの天頂部の高さは図3に示す状態から図4に示す状態になってより一層高くなる。こうして、調節バンド131による支持棒111の弾力的な変形によって、テントの天頂部103の突出高さを適切に調節することが可能となる。
【0023】
また、例えば、雪や雨が少ししか降らない地域でテントを使用する場合は、天頂部103の高さを少しだけ高くし、雪や雨が多く降る地域では、支持棒111の高さを最大限に高くして、天頂部103に雪が積もったり雨水が溜まったりするのを防止することができる。
【0024】
一方、支持棒111の中間部を支持している支持環105は、常に定位置を維持するように伸縮生地部104に縫着されている。したがって、支持棒111は支持環105によって定位置での弾力的な変形が可能であるので、伸縮生地部104及びテントの天頂部103の突出形態を常に一定に維持することができる。
【0025】
次に、図5は本実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置を側面方向(図3のテント天頂部の空間拡張装置を水平に90度回転させた方向)から見た断面図である。支持棒111の両端は挿入管112を介して固定バンド121及び調節バンド131のアイレット122、132に嵌合されており、支持棒111は中央部が支持環105に挿入されている。この時、伸縮生地部104は、支持棒111の上側(天頂部側)の外周面によって上方に突出した状態を維持できる。したがって、支持棒111は固定バンド121及び調節バンド131のアイレット122、132と、支持環105とによって、伸縮生地部104の突出した状態を安定して維持しながら確実に支持することができる。
【0026】
このように、本実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置の支持棒111は、従来のテントの内部に立てる長いポールに比べて、長さが非常に短くて重さも軽量であるので、容易に携帯できる長所がある。また、テント内の天頂部103に隣接して箇所に本実施の形態による空間拡張装置が設けられるので、テント内の生活に何らの制約なく平常時と同一の生活をすることができる。また、拡張した天頂部103により圧迫感が減少し、広い空間により円滑な空気循環が可能であるので、テント内で快適に生活できる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、外側生地と内側生地とからなるテントに使用されるテント天頂部の空間拡張装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置により天頂部が拡張された状態を示すテントの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置の構成をテント内部から見た説明図である。
【図3】本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置の結合状態を断面で示した説明図である。
【図4】本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置において、調節バンドを引いた時の使用状態を断面で示した説明図である。
【図5】本発明の実施の形態によるテント天頂部の空間拡張装置を側面方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0030】
101 外側生地
102 内側生地
103 天頂部
104 伸縮生地部
105 支持環
111 支持棒
112 挿入管
121 固定バンド
122 アイレット
131 調節バンド
132 アイレット
141 バックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側生地と内側生地とからなるテントに使用されるテント天頂部の空間拡張装置において;
所定のサイズに切り取られて分離された前記内側生地の天頂部位に縫着される伸縮生地部と、
前記伸縮生地部の中央に縫着される支持環と、
前記伸縮生地部の両側の前記内側生地に一端が各々縫着され、それぞれアイレットを有する固定バンド及び調節バンドと、
中央部が所定の角度に折り曲げられて弾性力を有しており、テントの天頂部を押し上げることができるように前記中央部は前記支持環に挿入され、両端部は挿入管を介して前記固定バンド及び調節バンドのそれぞれのアイレットに嵌合される支持棒と、
一端には前記固定バンドの前記内側生地に縫着されていない他端が固定され、他端には前記調節バンドが、止め位置の調節が可能なように、かつ解けないように連結されるバックルと、
を備えることを特徴とする、テント天頂部の空間拡張装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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