説明

テント装置

【課題】組み立て時に天幕の下り勾配の斜面の側縁部に窪みが生じることのないテント装置を提供することを目的とする。
【解決手段】支柱1と、支柱1の上部に配設される横梁2、縦梁3、頂上梁4、斜梁5から成る屋根部の骨組と、屋根部上に被せられる天幕6とから成るテント装置において、下梁である縦梁3よりもやや上方位置の斜面の裏面にひも状体11の上端部を取り付け、このひも状体11を縦梁3の上部側面に沿って周回させ、ひも状体11に設けられた係止部である面ファスナー12を縦梁3に設けられた被係止部である面ファスナー13に着脱自在に係止させる。そして係止状態におけるひも状体11の下端余剰部11aを縦梁3から下方へ垂下させて縦梁3からの天幕6の取りはずし用保持部とした。したがって組み立て時に天幕6の斜面の側縁部に雨水が貯留する窪みMが生じることはなく、また天幕6を容易に縦梁3から取りはずして回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校の運動会場や各種のイベント会場等に構築されるテント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、学校の運動会場や各種のイベント会場等に構築される従来のテント装置の断面斜視図、図7(a)、(b)は同天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図である。
【0003】
図6において、テント装置は、垂直な支柱1の上部に横梁2、縦梁3、頂上梁4、縦梁3と頂上梁4を連結する斜梁5(これらの梁は、いずれも一般に金属パイプ製)等で屋根部の骨組を構築し、この骨組上に天幕6を被せて組立てられている。
【0004】
図7(a)、(b)は、天幕6を縦梁3に固定する方法を示している。図7(a)において、天幕6の側縁部の縦梁3よりも上方位置の下り勾配の斜面の裏面には、2本のひも7、8の上端部がミシン糸15等により固着されている。縦梁3上に天幕6を固定するに際しては、図7(b)に示すように、ひも7、8を縦梁3のそれぞれ上面(外面)側と下面(内面)側に沿わせて巻きつけ、縦梁3から下方へ垂下する両ひも7、8の下端部を結び付けることにより、天幕6を縦梁3に固定していた。9はひも7、8の結び目である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のテント装置では、作業者はひも7、8を下方へ強く引いて両者を下梁である縦梁3に結び付けている。したがって結び付け時には、ひも7、8にはそれぞれ斜め下方および下方への引張力F1、F2が生じるが、この引張力F1、F2のために(特に、ひも8の下方への引張力F2のために)、頂上梁4から縦梁3へ向う下り勾配の天幕6の斜面は下側へわん曲し、図6に示すように斜梁5、5間の側縁部には下方への窪みMが生じていた。
【0006】
この窪みMは、単にテント装置の外観を悪くするだけでなく、降雨があると、天幕6上の雨水はこの窪みMへ流下(矢印a)して、図7(b)において鎖線で示すように窪みMに貯留し、貯留した雨水Wの重みで天幕固定用のひも7、8が切れ、雨水Wが一気に流れ落ちるおそれがあったものである。
【0007】
そこで本発明は、組み立て時に天幕の下り勾配の斜面の側縁部に上記のような窪みが生じることのないテント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のテント装置は、支柱と、支柱の上部に構築される下梁と頂上梁と斜梁とから成る屋根部の骨組と、この骨組上に被せられて下り勾配の斜面を有する天幕とから成るテント装置であって、前記下梁よりも上方位置の前記斜面の裏面にひも状体の上端部を取り付け、このひも状体を前記下梁の上部側面に沿って周回させ、このひも状体に設けられた係止部を前記下梁に設けられた被係止部に着脱自在に係止するものである。
【0009】
また望ましくは、前記係止部を前記被係止部に係止した状態における前記ひも状体の下端余剰部を前記下梁から下方へ垂下させて前記下梁からの天幕取りはずし用保持部としたものである。
【0010】
また望ましくは、前記係止部を前記ひも状体に設けられた面ファスナーとし、また前記被係止部を前記下梁の周面に設けられた面ファスナーとしたものである。
【発明の効果】
【0011】
上記構成において、テント装置を組み立てるときは、天幕を屋根部の骨組上に被せ、ひも状体を下梁の上部側面に沿わせて下梁に周回させ、ひも状体の下端部を手に保持して下梁に巻き付け、あるいは当てがうようにするなどして、係止部を被係止部に係止する。この場合、天幕はひも状体により斜下方へ引張されるが、この引張方向は天幕の下り勾配の斜面の斜設方向と一致しており、前記従来のテント装置の下側のひも状体8に相当するものは無いので、天幕の斜面の側縁部には従来のような窪みMは生じず、天幕はその全体がストレートな外観の良い斜面となる。したがって降雨は天幕の斜面上をストレートに流下して排水され、前述のような窪みMに貯留することはない。また下梁から垂下するひも状体の下端余剰部を手に保持して下方へ引くなどして操作すれば、天幕を下梁から容易に取りはずして分解回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1は本願発明の実施の形態1におけるテント装置の斜視図、図2は図1のA−A断面斜視図、図3(a)、(b)は同天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図である。以下の各実施の形態において、図6、図7に示す従来のテント装置の要素と同一要素には同一符号を付している。また屋根部の骨組などの骨組構造は簡略に示している。
【0013】
図1、図2において、テント装置は、垂直な支柱1の上部に横梁2、縦梁3、頂上梁4、縦梁3と頂上梁4を連結する斜梁5等で屋根部の骨組を構築し、この骨組上に天幕6を被せて組立てられている。天幕6は、頂上梁4から縦梁3へ向って下り勾配の斜面となっている。横梁2と縦梁3を、屋根部の下梁という。
【0014】
図3(a)において、天幕6の斜面の側端部(縦梁3のやや上方)の裏面には、ミシン糸15などの固着手段によりひも状体11の上端部が固着されている。ひも状体11としてはベルトなどが望ましい。またひも状体11は、リュックサックの肩掛け用ベルトやハンドバックの保持用ベルト等で多用されている長さ調整自在な方式のベルトを採用してもよい。ひも状体11は下梁である縦梁3の上部側面(外面)に沿って周回して下方へ垂下している。
【0015】
縦梁3から垂下するひも状体11の内面には係止部としての面ファスナー12が貼着するなどして設けられている。また縦梁3の周面には被係止部としての面ファスナー13が貼着するなどして設けられている。したがって作業者は縦梁3から垂下するひも状体11の下端部を手に保持し、図3(a)の矢印bに示すようにひも状体11を引っ張りながら縦梁3に部分的に巻き付け、あるいは当てがうなどすることにより、面ファスナー12を面ファスナー13に押し付けて着脱自在に係止することにより、図3(b)に示すように天幕6は屋根部骨組上にしっかり装着される。この場合、ひも状体11の引張力Fの方向は、天幕6の下り勾配の斜面の斜設方向と同一であるから、従来のテント装置のような窪みMは生じず、天幕6はストレートな斜面を有する外観のよい屋根として構築される。したがって天幕6上に降った雨は、この斜面上をストレートに流下して排水される(矢印c)。なお、天幕6の側面の妻部6a(図1を参照)の裏面にもひも状体11を取り付け、このひも状体11を下梁である横梁2に上述した縦梁3の場合と同様に巻き付けて、天幕6をよりしっかり屋根部の骨組上に装着するようにしてもよい。
【0016】
また図3(b)に示す組み立て完成状態において、ひも状体11の下端部は縦梁3から下方へ垂下している。ひも状体11の下端余剰部11aは、作業者の縦梁3からの天幕取りはずし用保持部になっている。したがってテント装置を分解回収するときには、作業者はこの下端余剰部11aを下方に引けば、面ファスナー12は面ファスナー13から簡単に分離する。したがって天幕6は縦梁3から容易に取りはずされ、テント装置の分解回収作業を容易・迅速に行うことができる。
【0017】
(実施の形態2)
図4(a)、(b)は、本発明の実施の形態2における天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図である。
【0018】
図4(a)において、天幕6の斜面の側端部(縦梁3のやや上方)の裏面には、ミシン糸15などの固着手段によりひも状体21の上端部が固着されている。ひも状体21には係止部としての孔部22が任意個数(本例では1個)形成されている。また縦梁3には被係止部としてのピン若しくはビス23が突設されている。したがって作業者は縦梁3から垂下するひも状体21の下端部を手に保持し、図4(a)の矢印bに示すようにひも状体21を引っ張りながら孔部22をビス23に着脱自在に係止することにより、図4(b)に示すように天幕6は屋根部の骨組上にしっかり装着される。この場合も、実施の形態1と同様に、分解回収作業のための下端余剰部21aが縦梁3から下方へ垂下している。したがって実施の形態2も、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0019】
(実施の形態3)
図5(a)、(b)は、本発明の実施の形態3における天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図である。
【0020】
図5(a)において、天幕6の斜面の側端部(縦梁3のやや上方)の裏面には、ミシン糸15などの固着手段によりひも状体31の上端部が固着されている。ひも状体31には、係止部としてのカギ形のフック32がピッチをおいて任意個数(本例では複数3個)設けられている。また縦梁3には被係止部としての孔部33が形成されている。したがって作業者は縦梁3から垂下するひも状体31の下端部を手に保持し、図5(a)の矢印bに示すようにひも状体31を引っ張りながらフック32を孔部33に着脱自在に係止することにより、図5(b)に示すように天幕6は屋根部の骨組上にしっかり装着される。この場合も、実施の形態1と同様に、分解回収作業のための下端余剰部31aが縦梁3から下方へ垂下している。したがって実施の形態3も、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、テント装置を組み立てるときは、天幕を屋根部の骨組上に被せ、ひも状体を下梁の上部側面に沿わせて下梁に周回させ、ひも状体を手に保持して下梁に巻き付け、あるいは当てがうようにするなどして、係止部を被係止部に係止する。この場合、天幕は、ひも状体により斜下方へ引張されるが、この引張方向は天幕の下り勾配の斜面の斜設方向と一致しており、従来のテント装置の下側のひも状体8に相当するものは無いので、天幕の斜面の側縁部には従来のような窪みMは生じず、天幕はその全体がストレートな外観の良い斜面となる。したがって降雨は天幕の斜面上をストレートに流下して排水され、前述のような窪みMに貯留することはない。また天幕を張る場合、ひも状体により天幕を斜下方へ引張するが、下梁を支点として、斜下方への引張力を鉛直な下方向へ変えることにより力が入りやすく、女性のような非力な作業者も容易にテントを構築することができる。また下梁から垂下するひも状体の下端余剰部を手に保持して下方へ引くなどして操作すれば、天幕を下梁から容易に取りはずして分解回収することができる。したがって、学校の運動会場や各種のイベント会場等に構築されるテント装置としてきわめて使用勝手がよく、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の実施の形態1におけるテント装置の斜視図
【図2】本願発明の実施の形態1におけるテント装置の斜視図のA−A断面斜視図
【図3】(a)(b)本発明の実施の形態1における天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図
【図4】(a)(b)本発明の実施の形態2における天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図
【図5】(a)(b)本発明の実施の形態3における天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図
【図6】従来のテント装置の断面斜視図
【図7】(a)(b)従来のテント装置の天幕の固定方法を示す縦梁付近の部分断面図
【符号の説明】
【0023】
1 支柱
2 横梁(下梁)
3 縦梁(下梁)
4 頂上梁
5 斜梁
6 天幕
11、21、31 ひも状体
11a、21a、31a 下端余剰部
12 面ファスナー(係止部)
13 面ファスナー(被係止部)
22 孔部(係止部)
23 ビス(被係止部)
32 フック(係止部)
33 孔部(被係止部)
M 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、支柱の上部に構築される下梁と頂上梁と斜梁とから成る屋根部の骨組と、この骨組上に被せられて下り勾配の斜面を有する天幕とから成るテント装置であって、前記下梁よりも上方位置の前記斜面の裏面にひも状体の上端部を取り付け、このひも状体を前記下梁の上部側面に沿って周回させ、このひも状体に設けられた係止部を前記下梁に設けられた被係止部に着脱自在に係止することを特徴とするテント装置。
【請求項2】
前記係止部を前記被係止部に係止した状態における前記ひも状体の下端余剰部を前記下梁から下方へ垂下させて前記下梁からの天幕取りはずし用保持部としたことを特徴とする請求項1記載のテント装置。
【請求項3】
前記係止部が前記ひも状体に設けられた面ファスナーであり、また前記被係止部が前記下梁の周面に設けられた面ファスナーであることを特徴とする請求項1または2記載のテント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−263915(P2009−263915A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112335(P2008−112335)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【特許番号】特許第4180648号(P4180648)
【特許公報発行日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(303037932)
【Fターム(参考)】