テンプレートヒストグラム生成方法およびパターン検査装置
【課題】半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成する。
【解決手段】パターン検査装置のテンプレートヒストグラム取得部52では、準備された複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムが生成される。続いて、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算が行われ、各画素値に対応するとともに複数の頻度の最小値以上最大値以下の1つの頻度が求められることにより、検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムが取得される。半導体基板のパターンの検査において、テンプレートヒストグラムは被検査画像中の検査領域における画素値のヒストグラムと比較され、これにより、半導体基板上のパターンの検査が精度よく行われる。
【解決手段】パターン検査装置のテンプレートヒストグラム取得部52では、準備された複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムが生成される。続いて、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算が行われ、各画素値に対応するとともに複数の頻度の最小値以上最大値以下の1つの頻度が求められることにより、検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムが取得される。半導体基板のパターンの検査において、テンプレートヒストグラムは被検査画像中の検査領域における画素値のヒストグラムと比較され、これにより、半導体基板上のパターンの検査が精度よく行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上のパターンを検査する技術に関し、特に、半導体基板上のパターンの検査において、被検査画像中の所定の検査領域における画素値のヒストグラムと比較されるテンプレートヒストグラムを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(以下、「基板」という。)の回路形成工程のダマシン工程等では、配線用の金属を基板上に付与した後に化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下、「CMP」と略す。)により、余分な金属が除去される。そして、基板上の画像を取得することにより、不要な金属の残り(以下、「メタル残膜」という。)が存在するか否かが検査される。
【0003】
例えば、特許文献1では、CMP後の基板を撮像した画像中の検査領域の画素値のヒストグラムと、メタル残膜のない理想的な基板の画像中の同じ領域の画素値のヒストグラム(テンプレートヒストグラム)とを、互いに重心を合わせつつ比較して、メタル残膜の有無を検査する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−174066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板の回路形成工程では各プロセス条件の変動等により、基板内や基板間でパターンの状態が変化することがある。この場合に、特許文献1の手法を利用してパターン検査を行う際に、1つの検査領域の画像のみからテンプレートヒストグラムを生成すると、検査対象の基板の検査領域におけるパターンの状態によっては欠陥を誤検出する可能性が高くなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成することを主たる目的とし、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、半導体基板上のパターンの検査において、被検査画像中の所定の検査領域における画素値のヒストグラムと比較されるテンプレートヒストグラムを生成するテンプレートヒストグラム生成方法であって、少なくとも1つの半導体基板を撮像して複数の参照画像を準備する工程と、前記複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成する工程と、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得工程とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の平均値である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、前記複数の参照画像のそれぞれが少なくとも前記検査領域に欠陥を含まず、前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の最大値または最小値である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、前記テンプレートヒストグラムを利用する前記検査が、研磨後の半導体基板上のメタル残膜の有無の検査である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、半導体基板上の検査領域のパターンを検査するパターン検査装置であって、半導体基板を撮像して画像を取得する撮像部と、少なくとも1つの半導体基板を前記撮像部が撮像することにより準備された複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成し、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得部と、前記撮像部が半導体基板を撮像することにより取得された被検査画像中の前記検査領域における画素値のヒストグラムと前記テンプレートヒストグラムとを比較する比較部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし4の発明では、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成することができる。
【0012】
また、請求項2の発明では、高精度なテンプレートヒストグラムを生成することができ、請求項3の発明では、パターンを検査する際に検査の種類に合わせた所望の検出感度とすることができる。
【0013】
請求項5の発明では、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一の実施の形態に係るパターン検査装置1の構成を示す図であり、パターン検査装置1では、ダマシン工程により形成された基板上の配線パターンの検査が行われる。パターン検査装置1は、基板9を撮像して多階調の画像を取得する撮像部2、基板9を支持するとともに撮像部2に対して基板9を相対的に移動するステージ部3、並びに、撮像部2およびステージ部3に接続されたコンピュータ4を備え、コンピュータ4はパターン検査装置1の各構成を制御する制御部としての役割を果たす。
【0015】
撮像部2は、基板9に照明光を導くとともに基板9からの光が入射する光学系21、光学系21により結像された基板9の像を電気的信号に変換する撮像デバイス22、および、複数種類の照明光のうちいずれかを選択して光学系21へと出射することにより基板9に照明光を照射する光源ユニット23を有する。光源ユニット23は、照明光の種類に応じた複数の光源231を有し、光源移動部232が複数の光源231を移動させることにより、照明光の切り替えが行われる。光源231としては、基板9の表面の特性に応じた照明光を出射するものが複数準備されるが、多層膜の視認性を向上するために少なくとも単色光を出射するものが含まれる。もちろん、複数の光源231には白色光や電球色の光を出射するものが含まれてよい。
【0016】
ステージ部3は基板9を支持するステージ31、および、ステージ31を水平面内で移動させるステージ駆動部32を有する。なお、ステージ駆動部32にステージ31を水平面内で回転させる機構が追加されてもよい。
【0017】
図2は、コンピュータ4の構成を示す図である。コンピュータ4は、図2に示すように、各種演算処理を行うCPU41、基本プログラムを記憶するROM42および各種情報を記憶するRAM43をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク44、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ45、操作者からの入力を受け付けるキーボード46aおよびマウス46b(以下、「入力部46」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置47、並びに、パターン検査装置1の他の構成との間で信号を送受信する通信部48が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0018】
コンピュータ4には、事前に読取装置47を介して記録媒体8からプログラム80が読み出され、固定ディスク44に記憶される。そして、プログラム80がRAM43にコピーされるとともにCPU41がRAM43内のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ4がパターン検査装置1における演算部としての役割を果たす。
【0019】
図3は、CPU41がプログラム80に従って動作することにより、CPU41、ROM42、RAM43、固定ディスク44等が実現する機能構成を他の構成とともに示す図であり、図3において、演算部50のヒストグラム取得部51、テンプレートヒストグラム取得部52および比較部53がCPU41等により実現される機能を示す。なお、演算部50の機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に電気的回路が用いられてもよい。
【0020】
パターン検査装置1では、パターン検査の事前準備として、検査に利用される各種データの集合であるレシピを登録する処理が行われ、登録されたレシピに基づいて検査対象の基板9上のパターン検査が行われる。以下、先に基板9上のパターンを検査する処理について説明し、その後、レシピを登録する処理について説明する。
【0021】
パターンを検査する際には、CMP後の検査対象の基板9がステージ31上に載置され、基板9の検査の種類に合わせたレシピがロードされる。すなわち、レシピ登録処理により予め登録されたレシピ6が図3の固定ディスク44から読み出されてRAM43に記憶され、CPU41によるレシピ6の参照が可能とされる。レシピ6には、光源231の種類を示す照明データ61、基板9上の検査すべき位置を示す位置データ62、テンプレートヒストグラムを示すテンプレートヒストグラムデータ63、および、検査時の判断に利用されるしきい値64が含まれる。
【0022】
図1の撮像部2では、照明データ61に基づいて1つの光源231が選択される。そして、取得される画像に基づいてコンピュータ4によりステージ駆動部32が制御され、レシピ6の位置データ62が示す基板9上の位置が撮像部2による撮像位置に合わせられて被検査画像が取得される。
【0023】
図4は基板9上の複数のダイ(すなわち、1つのチップに相当する領域)91のうち検査対象となるもの(平行斜線を付すもの)の位置を例示する図であり、図5は1つのダイ91において検査箇所911を例示する図である。レシピ6の位置データ62には、検査対象となる複数のダイ91の位置を示す情報、および、検査箇所911のダイ91中における相対的な位置情報が含まれており、一の検査対象のダイ91が特定され、撮像部2によりそのダイ91の検査箇所911を示す被検査画像が取得される。なお、以下の説明では1つのダイ91に対して1つの被検査画像のみが取得されるものとするが、1つのダイ91に対して複数の検査箇所911をそれぞれ示す複数の被検査画像が取得されてもよい。
【0024】
また、レシピ6の位置データ62には、下層の状態や配線パターンの状態に基づいてメタル残膜が存在する可能性が高い場所として経験的に把握される検査領域の検査箇所中における相対的な位置情報がさらに含まれており、比較部53では位置データ62に基づいて図6に例示する被検査画像中の1つの検査領域912が特定される(図6では、2つの検査領域912を図示している。)。そして、この検査領域912における画素値のヒストグラム(以下、「対象ヒストグラム」という。)が図3に示すヒストグラム取得部51により生成され、その面積が1となるように対象ヒストグラムが正規化される。なお、対象ヒストグラムの正規化は、各画素値における頻度を全ての画素値の頻度の和で除算することにより行われる。
【0025】
続いて、比較部53では特定された検査領域912の対象ヒストグラムが、テンプレートヒストグラムデータ63に含まれる同じ検査領域に対するテンプレートヒストグラムと比較される。なお、テンプレートヒストグラムは検査領域ごとに準備されている。比較時には、テンプレートヒストグラムも同様に正規化され(予め正規化されていてもよい。)、対象ヒストグラムおよびテンプレートヒストグラムのそれぞれの中心が一致するように対象ヒストグラムの移動が行われる。ヒストグラムの中心はおよその中心を示すものであればどのようなものであってもよく、例えば、ヒストグラムの重心や中間値が中心とされる。もちろん、テンプレートヒストグラムが移動されてもよく、テンプレートヒストグラムと対象ヒストグラムとの相対的位置関係の変更であればよい。
【0026】
比較部53では、テンプレートヒストグラムと移動後の対象ヒストグラムとの重なり合う部分の面積が類似度として求められ、類似度とレシピ6のしきい値64とが比較される。そして、類似度がしきい値未満の場合にはメタル残膜が存在すると判定され、類似度がしきい値以上の場合にはメタル残膜が存在しないと判定される。一の検査領域912のパターン検査が終了すると、被検査画像中の他の検査領域912の対象ヒストグラムが生成され、対応するテンプレートヒストグラムと比較されることによりメタル残膜の有無が検査される。被検査画像中の全ての検査領域912に対する検査が終了すると、次の検査対象のダイ91の被検査画像が取得され、検査領域912のメタル残膜の有無が検査される。
【0027】
次に、パターン検査の事前準備として行われるレシピを登録する処理について説明する。図7および図8はレシピを登録する処理の流れを示す図である。
【0028】
レシピを登録する際には、まず、検査対象の基板9と同一のパターンが形成された他の基板(すなわち、CMPが施されたテンプレートヒストグラム生成用の基板であり、以下、「基準基板9a」という。)がステージ部3に載置されてパターン検査装置1にロードされる(ステップS11)。基準基板9aは必ずしもメタル残膜のない理想的な基板である必要はない。
【0029】
続いて、操作者がコンピュータ4の入力部46を操作することにより、検査領域の膜種に応じた照明光の選択が受け付けられる(ステップS12)。そして、光源ユニット23の光源移動部232により選択された照明光を出射する光源231が点灯される。選択された光源231の種類は照明データ61として記憶される。照明光は、欠陥として検出したい金属や薄膜等の特性に基づいてコントラストの高い画像が得られるものが選択される。
【0030】
光源231が点灯されると、操作者による基準基板9a上の所望のダイの選択が受け付けられる(ステップS13)。パターン検査装置1では予めダイの配列が記憶されており、選択されたダイのおよそ中央に撮像部2による撮像位置が相対的に移動する。そして、操作者の操作に基づいてダイ内の所望の検査箇所が撮像部2の真下へと移動し(ステップS14)、検査箇所を示す参照画像が取得される(ステップS15)。このとき、検査箇所のダイ中における相対的な位置(図5参照)の情報が位置データ62として記憶される。なお、ステップS13で選択されるダイは、パターン検査において検査対象とされるダイと同じ位置である必要はない。
【0031】
続いて、操作者がディスプレイ45に表示された参照画像において、入力部46を介して領域(例えば、矩形領域)を指定することにより検査領域の設定が受け付けられる(ステップS16,S17)。すなわち、図6の被検査画像の1つの検査領域912に対応する領域が検査に先立って操作者により検査領域として特定され、その領域の検査箇所中における相対的な位置情報が位置データ62の一部として記憶される。一の検査領域が設定されると、他の検査領域の設定が同様に受け付けられる(ステップS18,S17)。ここでは、2つの検査領域が設定されたものとするが、3以上の検査領域が1つの参照画像から設定されてもよい。全ての検査領域の設定が完了すると(ステップS18)、ヒストグラム取得部51により参照画像中の2つの検査領域のそれぞれに対して画素値のヒストグラム(以下、「参照ヒストグラム」という。)が生成され(ステップS19)、一時的に記憶される。
【0032】
続いて、操作者による基準基板9a上の他のダイの選択が受け付けられ(ステップS20,S13)、選択されたダイ中の検査箇所が撮像部2の真下へと移動して参照画像が取得される(ステップS14,S15)。そして、設定済の検査領域の位置情報に基づいて2つの検査領域のそれぞれが特定され、2つの参照ヒストグラムが取得される(ステップS16,S19)。
【0033】
上記ステップS13〜S16,S19の処理は、基準基板9a上の所望の他のダイに対して繰り返される(ステップS20)。また、レシピ登録処理では複数の基準基板9aから参照ヒストグラムが取得されてもよく、この場合にはステップS13〜S16,S20の処理が他の基準基板9aに対して繰り返される。このように、パターン検査装置1では少なくとも1つの基準基板9aを撮像することにより複数の参照画像が準備され、複数の参照画像のそれぞれから各検査領域の画素値の参照ヒストグラムが生成される。
【0034】
テンプレートヒストグラム取得部52では、各検査領域の複数の参照ヒストグラムから、その検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムが取得される(ステップS21)。例えば、0番から(n−1)番までのn個の参照画像が取得された場合に、k番目の参照画像の一の検査領域から生成された参照ヒストグラムの画素値i(例えば、0から255までの画素値)の頻度をHk[i]とすると、この検査領域に対するテンプレートヒストグラムの頻度Mave[i]は数1に示す演算により求められる。
【0035】
【数1】
【0036】
すなわち、各画素値におけるn個の参照ヒストグラムのn個の頻度の平均値が対応する画素値の頻度となるテンプレートヒストグラムが取得される。これにより、準備された複数の参照画像に検査領域に欠陥が存在する画像が含まれていた場合であっても、高精度なテンプレートヒストグラムが生成される。テンプレートヒストグラムは、テンプレートヒストグラムデータ63として固定ディスク44に記憶される。
【0037】
各検査領域に対して1つのテンプレートヒストグラムが取得されると、操作者によるしきい値の設定が受け付けられて固定ディスク44にしきい値64が記憶される(ステップS22)。続いて、検査対象の基板9において検査すべきダイの選択が受け付けられ(ステップS23)、その位置情報が位置データ62に追加される。これにより、位置データ62には検査対象のダイの位置、検査箇所のダイ中における相対的な位置、および、検査領域の検査箇所中における相対的な位置の情報が含められる。そして、照明データ61、位置データ62、テンプレートヒストグラムデータ63およびしきい値64の集合が1つのレシピ6とされて登録される(ステップS24)。基準基板9aはステージ部3から取り出されてパターン検査装置1からアンロードされ(ステップS25)、レシピを登録する処理が終了する。なお、レシピ6は基板の種類に合わせた様々なものが作成されて登録される。また、必要に応じて参照画像のデータがレシピ6の一部として記憶されてもよい。
【0038】
以上のように、パターン検査装置1では、様々な状態のパターンを示す複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成し、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度から平均値が求められ、平均的なテンプレートヒストグラムが取得される。これにより、基板9の処理条件に多少の変動があっても検査時の誤検出を低減することができ、基板9上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成することができる。
【0039】
ところで、パターン検査装置1では、他の演算によりテンプレートヒストグラムが取得されてもよい。例えば、複数の参照画像のそれぞれが、検査領域に欠陥を含まない場合には、複数の参照ヒストグラムにおける各画素値の複数の頻度の最大値または最小値が、テンプレートヒストグラムの対応する画素値の頻度とされてもよい。すなわち、k番目の参照画像の一の検査領域に対する参照ヒストグラムの画素値iの頻度をHk[i]とすると、複数の頻度の最大値から導かれるテンプレートヒストグラムおよび最小値から導かれるテンプレートヒストグラムの対応する頻度Mmax[i]、Mmin[i]は、それぞれ数2および数3に示す演算により求められる。
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
図9は一の検査領域に対する2つの参照ヒストグラム71a,71bを例示する図であり、図10は図9の2つの参照ヒストグラム71a,71bに対して数2の演算を行うことにより生成されたテンプレートヒストグラム721を示す図であり、図11は数3の演算を行うことにより生成されたテンプレートヒストグラム722である。図10および図11では、2つの参照ヒストグラム71a,71bに重ねてテンプレートヒストグラム721,722を図示している。もちろん、テンプレートヒストグラム721,722は3以上の参照ヒストグラムから生成されてもよい。
【0043】
図10の最大値から導かれるテンプレートヒストグラム721は、複数の参照ヒストグラム71a,71bのいわゆる包絡線をとることにより生成され、各参照ヒストグラム71a,71bにおいて他の参照ヒストグラムよりも頻度が大きい画素値の部分であるヒストグラムの特徴を全て備えるものとされる。実際のパターン検査の際には、テンプレートヒストグラム721は必要に応じて正規化される。対象ヒストグラムは正規化後のテンプレートヒストグラム721と同様の特徴を備えていなければ類似度は低くなるため、欠陥と判定され易くなる。したがって、単にしきい値を上げるよりも、複数の参照ヒストグラムの特徴に合わせて欠陥の検出感度が適切に高くなるといえる。
【0044】
図11に示す最小値から導かれるテンプレートヒストグラム722は、各参照ヒストグラム71a,71bの特徴を備えず、ノイズ等の影響をほとんど受けないものとなる。テンプレートヒストグラム722も必要に応じて正規化されてパターン検査に利用されるが、対象ヒストグラムは参照ヒストグラム71a,71bの互いに重なる部分を備えておれば類似度が高くなるため、非欠陥と判定され易くなる。したがって、単にしきい値を下げるよりも、複数の参照ヒストグラムの特徴をなくして欠陥の検出感度が適切に低くなるといえる。このように、最大値または最小値から導かれるテンプレートヒストグラム721,722を生成することにより、パターンを検査する際に検査の種類に合わせた所望の検出感度とすることができる。
【0045】
また、テンプレートヒストグラム取得部52における演算は、中央値を求めたり、加重平均を求める等、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを、各画素値に対応する1つの頻度として求めるものであれば、他の統計的な演算が利用されてもよく、テンプレートヒストグラムを求める演算を一般的に表現すると、k番目の参照画像の参照ヒストグラムの画素値iの頻度をHk[i]として、関数fを用いて数4のように示すことができる。
【0046】
【数4】
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0048】
比較部53では、必ずしも対象ヒストグラムとテンプレートヒストグラムとが重なり合う部分の面積に基づいて欠陥の有無が判定される必要はなく、例えば、対象ヒストグラムの形状とテンプレートヒストグラムの形状とが比較されて判定結果が出力されてもよい。すなわち、比較部53では対象ヒストグラムとテンプレートヒストグラムとが比較されるのであれば、いかなる手法が用いられてもよい。
【0049】
上記レシピ登録処理におけるテンプレートヒストグラムを生成する処理では、特に、CMP等の研磨後の半導体基板上のメタル残膜の検査に利用されるテンプレートヒストグラムを適切に生成することができるが、もちろん、他の処理が施された半導体基板用のテンプレートヒストグラムが生成されてもよい。また、パターン検査装置1における検査対象も様々な処理が施された半導体基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】パターン検査装置の構成を示す図である。
【図2】コンピュータの構成を示す図である。
【図3】コンピュータが実現する機能構成を示す図である。
【図4】基板上の検査対象となるダイの位置を示す図である。
【図5】ダイ内の検査箇所を示す図である。
【図6】被検査画像中の検査領域を示す図である。
【図7】レシピを登録する処理の流れを示す図である。
【図8】レシピを登録する処理の流れを示す図である。
【図9】参照ヒストグラムを示す図である。
【図10】頻度の最大値から導かれるテンプレートヒストグラムを示す図である。
【図11】頻度の最小値から導かれるテンプレートヒストグラムを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 パターン検査装置
2 撮像部
9 半導体基板
52 テンプレートヒストグラム取得部
53 比較部
71a,71b 参照ヒストグラム
721,722 テンプレートヒストグラム
912 検査領域
S15,S19,S21 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上のパターンを検査する技術に関し、特に、半導体基板上のパターンの検査において、被検査画像中の所定の検査領域における画素値のヒストグラムと比較されるテンプレートヒストグラムを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(以下、「基板」という。)の回路形成工程のダマシン工程等では、配線用の金属を基板上に付与した後に化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下、「CMP」と略す。)により、余分な金属が除去される。そして、基板上の画像を取得することにより、不要な金属の残り(以下、「メタル残膜」という。)が存在するか否かが検査される。
【0003】
例えば、特許文献1では、CMP後の基板を撮像した画像中の検査領域の画素値のヒストグラムと、メタル残膜のない理想的な基板の画像中の同じ領域の画素値のヒストグラム(テンプレートヒストグラム)とを、互いに重心を合わせつつ比較して、メタル残膜の有無を検査する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−174066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板の回路形成工程では各プロセス条件の変動等により、基板内や基板間でパターンの状態が変化することがある。この場合に、特許文献1の手法を利用してパターン検査を行う際に、1つの検査領域の画像のみからテンプレートヒストグラムを生成すると、検査対象の基板の検査領域におけるパターンの状態によっては欠陥を誤検出する可能性が高くなる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成することを主たる目的とし、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、半導体基板上のパターンの検査において、被検査画像中の所定の検査領域における画素値のヒストグラムと比較されるテンプレートヒストグラムを生成するテンプレートヒストグラム生成方法であって、少なくとも1つの半導体基板を撮像して複数の参照画像を準備する工程と、前記複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成する工程と、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得工程とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の平均値である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、前記複数の参照画像のそれぞれが少なくとも前記検査領域に欠陥を含まず、前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の最大値または最小値である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、前記テンプレートヒストグラムを利用する前記検査が、研磨後の半導体基板上のメタル残膜の有無の検査である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、半導体基板上の検査領域のパターンを検査するパターン検査装置であって、半導体基板を撮像して画像を取得する撮像部と、少なくとも1つの半導体基板を前記撮像部が撮像することにより準備された複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成し、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得部と、前記撮像部が半導体基板を撮像することにより取得された被検査画像中の前記検査領域における画素値のヒストグラムと前記テンプレートヒストグラムとを比較する比較部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし4の発明では、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成することができる。
【0012】
また、請求項2の発明では、高精度なテンプレートヒストグラムを生成することができ、請求項3の発明では、パターンを検査する際に検査の種類に合わせた所望の検出感度とすることができる。
【0013】
請求項5の発明では、半導体基板上のパターンの検査を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一の実施の形態に係るパターン検査装置1の構成を示す図であり、パターン検査装置1では、ダマシン工程により形成された基板上の配線パターンの検査が行われる。パターン検査装置1は、基板9を撮像して多階調の画像を取得する撮像部2、基板9を支持するとともに撮像部2に対して基板9を相対的に移動するステージ部3、並びに、撮像部2およびステージ部3に接続されたコンピュータ4を備え、コンピュータ4はパターン検査装置1の各構成を制御する制御部としての役割を果たす。
【0015】
撮像部2は、基板9に照明光を導くとともに基板9からの光が入射する光学系21、光学系21により結像された基板9の像を電気的信号に変換する撮像デバイス22、および、複数種類の照明光のうちいずれかを選択して光学系21へと出射することにより基板9に照明光を照射する光源ユニット23を有する。光源ユニット23は、照明光の種類に応じた複数の光源231を有し、光源移動部232が複数の光源231を移動させることにより、照明光の切り替えが行われる。光源231としては、基板9の表面の特性に応じた照明光を出射するものが複数準備されるが、多層膜の視認性を向上するために少なくとも単色光を出射するものが含まれる。もちろん、複数の光源231には白色光や電球色の光を出射するものが含まれてよい。
【0016】
ステージ部3は基板9を支持するステージ31、および、ステージ31を水平面内で移動させるステージ駆動部32を有する。なお、ステージ駆動部32にステージ31を水平面内で回転させる機構が追加されてもよい。
【0017】
図2は、コンピュータ4の構成を示す図である。コンピュータ4は、図2に示すように、各種演算処理を行うCPU41、基本プログラムを記憶するROM42および各種情報を記憶するRAM43をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク44、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ45、操作者からの入力を受け付けるキーボード46aおよびマウス46b(以下、「入力部46」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置47、並びに、パターン検査装置1の他の構成との間で信号を送受信する通信部48が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0018】
コンピュータ4には、事前に読取装置47を介して記録媒体8からプログラム80が読み出され、固定ディスク44に記憶される。そして、プログラム80がRAM43にコピーされるとともにCPU41がRAM43内のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ4がパターン検査装置1における演算部としての役割を果たす。
【0019】
図3は、CPU41がプログラム80に従って動作することにより、CPU41、ROM42、RAM43、固定ディスク44等が実現する機能構成を他の構成とともに示す図であり、図3において、演算部50のヒストグラム取得部51、テンプレートヒストグラム取得部52および比較部53がCPU41等により実現される機能を示す。なお、演算部50の機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に電気的回路が用いられてもよい。
【0020】
パターン検査装置1では、パターン検査の事前準備として、検査に利用される各種データの集合であるレシピを登録する処理が行われ、登録されたレシピに基づいて検査対象の基板9上のパターン検査が行われる。以下、先に基板9上のパターンを検査する処理について説明し、その後、レシピを登録する処理について説明する。
【0021】
パターンを検査する際には、CMP後の検査対象の基板9がステージ31上に載置され、基板9の検査の種類に合わせたレシピがロードされる。すなわち、レシピ登録処理により予め登録されたレシピ6が図3の固定ディスク44から読み出されてRAM43に記憶され、CPU41によるレシピ6の参照が可能とされる。レシピ6には、光源231の種類を示す照明データ61、基板9上の検査すべき位置を示す位置データ62、テンプレートヒストグラムを示すテンプレートヒストグラムデータ63、および、検査時の判断に利用されるしきい値64が含まれる。
【0022】
図1の撮像部2では、照明データ61に基づいて1つの光源231が選択される。そして、取得される画像に基づいてコンピュータ4によりステージ駆動部32が制御され、レシピ6の位置データ62が示す基板9上の位置が撮像部2による撮像位置に合わせられて被検査画像が取得される。
【0023】
図4は基板9上の複数のダイ(すなわち、1つのチップに相当する領域)91のうち検査対象となるもの(平行斜線を付すもの)の位置を例示する図であり、図5は1つのダイ91において検査箇所911を例示する図である。レシピ6の位置データ62には、検査対象となる複数のダイ91の位置を示す情報、および、検査箇所911のダイ91中における相対的な位置情報が含まれており、一の検査対象のダイ91が特定され、撮像部2によりそのダイ91の検査箇所911を示す被検査画像が取得される。なお、以下の説明では1つのダイ91に対して1つの被検査画像のみが取得されるものとするが、1つのダイ91に対して複数の検査箇所911をそれぞれ示す複数の被検査画像が取得されてもよい。
【0024】
また、レシピ6の位置データ62には、下層の状態や配線パターンの状態に基づいてメタル残膜が存在する可能性が高い場所として経験的に把握される検査領域の検査箇所中における相対的な位置情報がさらに含まれており、比較部53では位置データ62に基づいて図6に例示する被検査画像中の1つの検査領域912が特定される(図6では、2つの検査領域912を図示している。)。そして、この検査領域912における画素値のヒストグラム(以下、「対象ヒストグラム」という。)が図3に示すヒストグラム取得部51により生成され、その面積が1となるように対象ヒストグラムが正規化される。なお、対象ヒストグラムの正規化は、各画素値における頻度を全ての画素値の頻度の和で除算することにより行われる。
【0025】
続いて、比較部53では特定された検査領域912の対象ヒストグラムが、テンプレートヒストグラムデータ63に含まれる同じ検査領域に対するテンプレートヒストグラムと比較される。なお、テンプレートヒストグラムは検査領域ごとに準備されている。比較時には、テンプレートヒストグラムも同様に正規化され(予め正規化されていてもよい。)、対象ヒストグラムおよびテンプレートヒストグラムのそれぞれの中心が一致するように対象ヒストグラムの移動が行われる。ヒストグラムの中心はおよその中心を示すものであればどのようなものであってもよく、例えば、ヒストグラムの重心や中間値が中心とされる。もちろん、テンプレートヒストグラムが移動されてもよく、テンプレートヒストグラムと対象ヒストグラムとの相対的位置関係の変更であればよい。
【0026】
比較部53では、テンプレートヒストグラムと移動後の対象ヒストグラムとの重なり合う部分の面積が類似度として求められ、類似度とレシピ6のしきい値64とが比較される。そして、類似度がしきい値未満の場合にはメタル残膜が存在すると判定され、類似度がしきい値以上の場合にはメタル残膜が存在しないと判定される。一の検査領域912のパターン検査が終了すると、被検査画像中の他の検査領域912の対象ヒストグラムが生成され、対応するテンプレートヒストグラムと比較されることによりメタル残膜の有無が検査される。被検査画像中の全ての検査領域912に対する検査が終了すると、次の検査対象のダイ91の被検査画像が取得され、検査領域912のメタル残膜の有無が検査される。
【0027】
次に、パターン検査の事前準備として行われるレシピを登録する処理について説明する。図7および図8はレシピを登録する処理の流れを示す図である。
【0028】
レシピを登録する際には、まず、検査対象の基板9と同一のパターンが形成された他の基板(すなわち、CMPが施されたテンプレートヒストグラム生成用の基板であり、以下、「基準基板9a」という。)がステージ部3に載置されてパターン検査装置1にロードされる(ステップS11)。基準基板9aは必ずしもメタル残膜のない理想的な基板である必要はない。
【0029】
続いて、操作者がコンピュータ4の入力部46を操作することにより、検査領域の膜種に応じた照明光の選択が受け付けられる(ステップS12)。そして、光源ユニット23の光源移動部232により選択された照明光を出射する光源231が点灯される。選択された光源231の種類は照明データ61として記憶される。照明光は、欠陥として検出したい金属や薄膜等の特性に基づいてコントラストの高い画像が得られるものが選択される。
【0030】
光源231が点灯されると、操作者による基準基板9a上の所望のダイの選択が受け付けられる(ステップS13)。パターン検査装置1では予めダイの配列が記憶されており、選択されたダイのおよそ中央に撮像部2による撮像位置が相対的に移動する。そして、操作者の操作に基づいてダイ内の所望の検査箇所が撮像部2の真下へと移動し(ステップS14)、検査箇所を示す参照画像が取得される(ステップS15)。このとき、検査箇所のダイ中における相対的な位置(図5参照)の情報が位置データ62として記憶される。なお、ステップS13で選択されるダイは、パターン検査において検査対象とされるダイと同じ位置である必要はない。
【0031】
続いて、操作者がディスプレイ45に表示された参照画像において、入力部46を介して領域(例えば、矩形領域)を指定することにより検査領域の設定が受け付けられる(ステップS16,S17)。すなわち、図6の被検査画像の1つの検査領域912に対応する領域が検査に先立って操作者により検査領域として特定され、その領域の検査箇所中における相対的な位置情報が位置データ62の一部として記憶される。一の検査領域が設定されると、他の検査領域の設定が同様に受け付けられる(ステップS18,S17)。ここでは、2つの検査領域が設定されたものとするが、3以上の検査領域が1つの参照画像から設定されてもよい。全ての検査領域の設定が完了すると(ステップS18)、ヒストグラム取得部51により参照画像中の2つの検査領域のそれぞれに対して画素値のヒストグラム(以下、「参照ヒストグラム」という。)が生成され(ステップS19)、一時的に記憶される。
【0032】
続いて、操作者による基準基板9a上の他のダイの選択が受け付けられ(ステップS20,S13)、選択されたダイ中の検査箇所が撮像部2の真下へと移動して参照画像が取得される(ステップS14,S15)。そして、設定済の検査領域の位置情報に基づいて2つの検査領域のそれぞれが特定され、2つの参照ヒストグラムが取得される(ステップS16,S19)。
【0033】
上記ステップS13〜S16,S19の処理は、基準基板9a上の所望の他のダイに対して繰り返される(ステップS20)。また、レシピ登録処理では複数の基準基板9aから参照ヒストグラムが取得されてもよく、この場合にはステップS13〜S16,S20の処理が他の基準基板9aに対して繰り返される。このように、パターン検査装置1では少なくとも1つの基準基板9aを撮像することにより複数の参照画像が準備され、複数の参照画像のそれぞれから各検査領域の画素値の参照ヒストグラムが生成される。
【0034】
テンプレートヒストグラム取得部52では、各検査領域の複数の参照ヒストグラムから、その検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムが取得される(ステップS21)。例えば、0番から(n−1)番までのn個の参照画像が取得された場合に、k番目の参照画像の一の検査領域から生成された参照ヒストグラムの画素値i(例えば、0から255までの画素値)の頻度をHk[i]とすると、この検査領域に対するテンプレートヒストグラムの頻度Mave[i]は数1に示す演算により求められる。
【0035】
【数1】
【0036】
すなわち、各画素値におけるn個の参照ヒストグラムのn個の頻度の平均値が対応する画素値の頻度となるテンプレートヒストグラムが取得される。これにより、準備された複数の参照画像に検査領域に欠陥が存在する画像が含まれていた場合であっても、高精度なテンプレートヒストグラムが生成される。テンプレートヒストグラムは、テンプレートヒストグラムデータ63として固定ディスク44に記憶される。
【0037】
各検査領域に対して1つのテンプレートヒストグラムが取得されると、操作者によるしきい値の設定が受け付けられて固定ディスク44にしきい値64が記憶される(ステップS22)。続いて、検査対象の基板9において検査すべきダイの選択が受け付けられ(ステップS23)、その位置情報が位置データ62に追加される。これにより、位置データ62には検査対象のダイの位置、検査箇所のダイ中における相対的な位置、および、検査領域の検査箇所中における相対的な位置の情報が含められる。そして、照明データ61、位置データ62、テンプレートヒストグラムデータ63およびしきい値64の集合が1つのレシピ6とされて登録される(ステップS24)。基準基板9aはステージ部3から取り出されてパターン検査装置1からアンロードされ(ステップS25)、レシピを登録する処理が終了する。なお、レシピ6は基板の種類に合わせた様々なものが作成されて登録される。また、必要に応じて参照画像のデータがレシピ6の一部として記憶されてもよい。
【0038】
以上のように、パターン検査装置1では、様々な状態のパターンを示す複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成し、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度から平均値が求められ、平均的なテンプレートヒストグラムが取得される。これにより、基板9の処理条件に多少の変動があっても検査時の誤検出を低減することができ、基板9上のパターンの検査を精度よく行うことができるテンプレートヒストグラムを生成することができる。
【0039】
ところで、パターン検査装置1では、他の演算によりテンプレートヒストグラムが取得されてもよい。例えば、複数の参照画像のそれぞれが、検査領域に欠陥を含まない場合には、複数の参照ヒストグラムにおける各画素値の複数の頻度の最大値または最小値が、テンプレートヒストグラムの対応する画素値の頻度とされてもよい。すなわち、k番目の参照画像の一の検査領域に対する参照ヒストグラムの画素値iの頻度をHk[i]とすると、複数の頻度の最大値から導かれるテンプレートヒストグラムおよび最小値から導かれるテンプレートヒストグラムの対応する頻度Mmax[i]、Mmin[i]は、それぞれ数2および数3に示す演算により求められる。
【0040】
【数2】
【0041】
【数3】
【0042】
図9は一の検査領域に対する2つの参照ヒストグラム71a,71bを例示する図であり、図10は図9の2つの参照ヒストグラム71a,71bに対して数2の演算を行うことにより生成されたテンプレートヒストグラム721を示す図であり、図11は数3の演算を行うことにより生成されたテンプレートヒストグラム722である。図10および図11では、2つの参照ヒストグラム71a,71bに重ねてテンプレートヒストグラム721,722を図示している。もちろん、テンプレートヒストグラム721,722は3以上の参照ヒストグラムから生成されてもよい。
【0043】
図10の最大値から導かれるテンプレートヒストグラム721は、複数の参照ヒストグラム71a,71bのいわゆる包絡線をとることにより生成され、各参照ヒストグラム71a,71bにおいて他の参照ヒストグラムよりも頻度が大きい画素値の部分であるヒストグラムの特徴を全て備えるものとされる。実際のパターン検査の際には、テンプレートヒストグラム721は必要に応じて正規化される。対象ヒストグラムは正規化後のテンプレートヒストグラム721と同様の特徴を備えていなければ類似度は低くなるため、欠陥と判定され易くなる。したがって、単にしきい値を上げるよりも、複数の参照ヒストグラムの特徴に合わせて欠陥の検出感度が適切に高くなるといえる。
【0044】
図11に示す最小値から導かれるテンプレートヒストグラム722は、各参照ヒストグラム71a,71bの特徴を備えず、ノイズ等の影響をほとんど受けないものとなる。テンプレートヒストグラム722も必要に応じて正規化されてパターン検査に利用されるが、対象ヒストグラムは参照ヒストグラム71a,71bの互いに重なる部分を備えておれば類似度が高くなるため、非欠陥と判定され易くなる。したがって、単にしきい値を下げるよりも、複数の参照ヒストグラムの特徴をなくして欠陥の検出感度が適切に低くなるといえる。このように、最大値または最小値から導かれるテンプレートヒストグラム721,722を生成することにより、パターンを検査する際に検査の種類に合わせた所望の検出感度とすることができる。
【0045】
また、テンプレートヒストグラム取得部52における演算は、中央値を求めたり、加重平均を求める等、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを、各画素値に対応する1つの頻度として求めるものであれば、他の統計的な演算が利用されてもよく、テンプレートヒストグラムを求める演算を一般的に表現すると、k番目の参照画像の参照ヒストグラムの画素値iの頻度をHk[i]として、関数fを用いて数4のように示すことができる。
【0046】
【数4】
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0048】
比較部53では、必ずしも対象ヒストグラムとテンプレートヒストグラムとが重なり合う部分の面積に基づいて欠陥の有無が判定される必要はなく、例えば、対象ヒストグラムの形状とテンプレートヒストグラムの形状とが比較されて判定結果が出力されてもよい。すなわち、比較部53では対象ヒストグラムとテンプレートヒストグラムとが比較されるのであれば、いかなる手法が用いられてもよい。
【0049】
上記レシピ登録処理におけるテンプレートヒストグラムを生成する処理では、特に、CMP等の研磨後の半導体基板上のメタル残膜の検査に利用されるテンプレートヒストグラムを適切に生成することができるが、もちろん、他の処理が施された半導体基板用のテンプレートヒストグラムが生成されてもよい。また、パターン検査装置1における検査対象も様々な処理が施された半導体基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】パターン検査装置の構成を示す図である。
【図2】コンピュータの構成を示す図である。
【図3】コンピュータが実現する機能構成を示す図である。
【図4】基板上の検査対象となるダイの位置を示す図である。
【図5】ダイ内の検査箇所を示す図である。
【図6】被検査画像中の検査領域を示す図である。
【図7】レシピを登録する処理の流れを示す図である。
【図8】レシピを登録する処理の流れを示す図である。
【図9】参照ヒストグラムを示す図である。
【図10】頻度の最大値から導かれるテンプレートヒストグラムを示す図である。
【図11】頻度の最小値から導かれるテンプレートヒストグラムを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 パターン検査装置
2 撮像部
9 半導体基板
52 テンプレートヒストグラム取得部
53 比較部
71a,71b 参照ヒストグラム
721,722 テンプレートヒストグラム
912 検査領域
S15,S19,S21 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上のパターンの検査において、被検査画像中の所定の検査領域における画素値のヒストグラムと比較されるテンプレートヒストグラムを生成するテンプレートヒストグラム生成方法であって、
少なくとも1つの半導体基板を撮像して複数の参照画像を準備する工程と、
前記複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成する工程と、
各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得工程と、
を備えることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、
前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の平均値であることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項3】
請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、
前記複数の参照画像のそれぞれが少なくとも前記検査領域に欠陥を含まず、
前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の最大値または最小値であることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、
前記テンプレートヒストグラムを利用する前記検査が、研磨後の半導体基板上のメタル残膜の有無の検査であることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項5】
半導体基板上の検査領域のパターンを検査するパターン検査装置であって、
半導体基板を撮像して画像を取得する撮像部と、
少なくとも1つの半導体基板を前記撮像部が撮像することにより準備された複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成し、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得部と、
前記撮像部が半導体基板を撮像することにより取得された被検査画像中の前記検査領域における画素値のヒストグラムと前記テンプレートヒストグラムとを比較する比較部と、
を備えることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項1】
半導体基板上のパターンの検査において、被検査画像中の所定の検査領域における画素値のヒストグラムと比較されるテンプレートヒストグラムを生成するテンプレートヒストグラム生成方法であって、
少なくとも1つの半導体基板を撮像して複数の参照画像を準備する工程と、
前記複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成する工程と、
各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得工程と、
を備えることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、
前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の平均値であることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項3】
請求項1に記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、
前記複数の参照画像のそれぞれが少なくとも前記検査領域に欠陥を含まず、
前記テンプレートヒストグラム取得工程において、前記各画素値に対応する前記1つの頻度が、前記複数の頻度の最大値または最小値であることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のテンプレートヒストグラム生成方法であって、
前記テンプレートヒストグラムを利用する前記検査が、研磨後の半導体基板上のメタル残膜の有無の検査であることを特徴とするテンプレートヒストグラム生成方法。
【請求項5】
半導体基板上の検査領域のパターンを検査するパターン検査装置であって、
半導体基板を撮像して画像を取得する撮像部と、
少なくとも1つの半導体基板を前記撮像部が撮像することにより準備された複数の参照画像のそれぞれから検査領域の画素値の参照ヒストグラムを生成し、各画素値における複数の参照ヒストグラムの複数の頻度に対して所定の演算を行い、前記各画素値に対応する1つの頻度であって前記複数の頻度の最小値以上最大値以下のものを求めることにより、前記検査領域に対する1つのテンプレートヒストグラムを取得するテンプレートヒストグラム取得部と、
前記撮像部が半導体基板を撮像することにより取得された被検査画像中の前記検査領域における画素値のヒストグラムと前記テンプレートヒストグラムとを比較する比較部と、
を備えることを特徴とするパターン検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−38543(P2006−38543A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216712(P2004−216712)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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