説明

テーブルマット

【課題】べたつきの問題がなく、耐折り曲げ性に優れ、しかも透明性に優れたテーブルマットを提供する。
【解決手段】軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの片面又は両面に、平均粒径が1〜30μmの(メタ)アクリル系樹脂粒子を0.3〜10重量%含有する厚さ5〜30μmのアクリル系樹脂層を形成してなるテーブルマット。軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの表面に特定の平均粒径の粒子を含む特定厚さのアクリル系樹脂層が形成されているため、表面の摩擦係数が小さく、テーブルに対するべたつきの問題がない。アクリル系樹脂層に含有される粒子は、マトリックスであるアクリル系樹脂と可視光線の屈折率及び比重が同等の(メタ)アクリル系樹脂粒子であるため、マトリックス樹脂との屈折率差による透明性の低下、マトリックス樹脂との分離による透明性の低下の問題もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書斎机、作業机及び食卓などの上面に敷設されるテーブルマットであって、べたつきの問題がなく、耐折り曲げ性に優れ、しかも、透明性が良好なテーブルマットに関する。
【背景技術】
【0002】
書斎机、作業机及び食卓など(以下、これらを「テーブル」と称する。)には、傷つき防止、汚染防止、作業能率の向上を図るため、これらの上面に、透明性、柔軟性に優れる、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂のシート状テーブルマットが広く適用されている。
【0003】
しかし、従来のテーブルマットは、テーブルに対するべたつきが大きいため、使用時にテーブルとこれらテーブルマットとの間に空気だまりができ、テーブル表面のデザイン模様を歪ませて美観を損ねたり、空気だまりにより凹凸ができ、テーブル上での作業、例えば筆記作業などを阻害していた。テーブルマットのべたつきは、テーブル面に対してだけではなく、このテーブルマットの上に置いた物品や、人体に対しても影響があり、これらがテーブルマットに貼り付いて、容易に剥し取れないなどの問題を引き起こしていた。
【0004】
この問題を解決するものとして、実公平7−32044号公報には、軟質塩化ビニル系樹脂シートの少くとも片面に、無機質粒子を含む紫外線硬化型樹脂の硬化物からなる被膜を形成したものが提案されている。
【特許文献1】実公平7−32044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この実公平7−32044号公報においては、紫外線硬化型樹脂被膜に含まれる粒子が、ガラスビーズ、アルミナ、シリカなどの無機質粒子であり、これらは、紫外線硬化型樹脂と可視光線の屈折率が異なるために、このような無機質粒子を含む紫外線硬化型樹脂被膜を形成したテーブルマットは、透明性に劣るという欠点がある。また、これらの無機質粒子は、その比重が紫外線硬化型樹脂の比重と大きく異なり、紫外線硬化型樹脂よりも比重が大きいために、軟質塩化ビニル系樹脂シートに、このような無機質粒子を添加した紫外線硬化型樹脂組成物を塗工して塗膜を形成する際に、無機質粒子が紫外線硬化型樹脂と分離し、このために均一な外観の被膜を形成し得ず、このことによっても得られるテーブルマットの透明性が劣るものとなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の問題点を解決し、べたつきの問題がなく、耐折り曲げ性に優れ、しかも透明性に優れたテーブルマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のテーブルマットは、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの片面又は両面に、平均粒径が1〜30μmの(メタ)アクリル系樹脂粒子を0.3〜10重量%含有する厚さ5〜30μmのアクリル系樹脂層を形成してなることを特徴とする。
【0008】
請求項2のテーブルマットは、請求項1において、該アクリル系樹脂層がアクリル系紫外線硬化型樹脂層であることを特徴とする。
【0009】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のテーブルマットは、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの表面に、粒子を含む特定厚さのアクリル系樹脂層が形成されているため、折り曲げの力が加わったとき皺が生じて外観を損ねるということがなく、また表面の摩擦係数が小さく、テーブルに対するべたつきの問題がない。このため、使用時にテーブルとの間に空気だまりができることがなく、テーブルの美観と平滑性を良好に維持することができる。更に、テーブルマット上に置いた物品や人体に対するべたつきも解消される。
【0011】
しかも、本発明において、表面のアクリル系樹脂層に含有される粒子は、マトリックスであるアクリル系樹脂と可視光線の屈折率及び比重が同等の(メタ)アクリル系樹脂粒子であるため、マトリックス樹脂との屈折率差による透明性の低下の問題もなく、また、マトリックス樹脂との分離による透明性の低下の問題もない。
【0012】
従って、本発明によれば、透明性が良好で、かつ使用時にテーブルとの間に空気だまりができることのない、美観及び使用感に優れたテーブルマットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明のテーブルマットの実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明のテーブルマットの基材となる軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートについて説明する。
【0015】
本発明に係る軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、安定剤等の添加剤を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物をシート成形してなる。
【0016】
ポリ塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体の他、塩化ビニルを主成分とし、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体など、塩化ビニルを主な構成単位とする樹脂が挙げられる。塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどの1種又は2種以上が挙げられる。
【0017】
ポリ塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0018】
可塑剤としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、トリクレジルフォスフェート、ポリエステル系可塑剤、トリオクチルトリメリテートなどが挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0019】
安定剤としては、バリウム−亜鉛系、カルシウム−亜鉛系、マグネシウム−亜鉛系安定剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが挙げられる。安定剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0020】
軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートを構成するポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して可塑剤20〜90重量部、安定剤1〜15重量部を含むものであることが好ましい。なお、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤、安定剤の他、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤等の通常の樹脂用添加剤を含んでいても良い。
【0021】
軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートは、ポリ塩化ビニル系樹脂、可塑剤、安定剤等をスーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどで混合して得られるポリ塩化ビニル系樹脂組成物を、カレンダーロール、押出機などで任意の厚さのシート状に成形加工することにより得ることができる。
【0022】
本発明において、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの厚さは過度に薄いとテーブルマットとして必要な強度を得ることができず、過度に厚いと重量が重く、取り扱い性も劣るものとなることから、通常1〜5mm程度の厚さに成形される。
【0023】
本発明のテーブルマットはこのような軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの片面又は両面に(メタ)アクリル系樹脂粒子を含むアクリル系樹脂層を形成したものである。
【0024】
アクリル系樹脂層に含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子の構成成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルの1種よりなるホモポリマー、或いはこれらの2種以上のコポリマーが挙げられ、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル系樹脂粒子の平均粒径は1〜30μm、特に4〜20μmであることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂粒子の平均粒径が1μm未満であると、アクリル系樹脂に添加した際、べたつきを改善できず、平均粒径が30μmを超えると、アクリル系樹脂に均一に分散させることができず、得られるテーブルマットの透明性が低下する。
【0026】
また、(メタ)アクリル系樹脂粒子のアクリル系樹脂への添加量は、アクリル系樹脂層中の含有量で0.3〜10重量%、特に0.5〜8重量%であることが好ましい。アクリル系樹脂層中の(メタ)アクリル系樹脂粒子の含有量が0.3重量%未満であると、べたつきを改善できず、10重量%を超えると、得られるテーブルマットの透明性が低下する。
【0027】
アクリル系樹脂成分としては、官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマー、又はこれを予め熱重合、ラジカル重合、光重合などにより、多量体化したプレポリマー、或いは、これらのモノマーやプレポリマーの2種以上の混合物を使用することができる。ここで、官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマーとは、一分子中に2個又はそれ以上のアクリル系カルボン酸エステル単位を有し、従って一分子中に2個又はそれ以上のアクリル系不飽和炭素−炭素結合を有する化合物であり、場合によっては他の不飽和炭素−炭素結合を含有していても差し支えない。
【0028】
官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマーとしては、好ましくはエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリン1,2−ジアクリレート、ジアリルジエチレングリコールジカーボネートなどが挙げられる。
【0029】
アクリル系樹脂層は、例えば、ブレンド槽等において、アクリル系樹脂成分の官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマー及び/又はそのプレポリマーに、上記の(メタ)アクリル系樹脂粒子の所定量、重合開始剤、その他必要に応じて粘度調整のための溶剤等を添加混合してアクリル系樹脂組成物を調製し、このアクリル系樹脂組成物を前述の軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートにグラビアコーター、リバースコーターなどで塗布し、例えば、高圧水銀ランプなどを用いて紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化や、電子線を照射して硬化させる電子線硬化等公知の硬化方法に従って硬化させることにより形成することができる。
【0030】
アクリル系樹脂組成物が、アクリル系紫外線硬化型樹脂組成物である場合、用いる重合開始剤としては、例えば水銀、塩化第2鉄、二塩化鉛などの無機塩、ベンゾフェノール、ベンジル、シクロヘキサノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ビアセチルなどのカルボニル化合物、過酸化水素、tert−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスプロパン、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾビス化合物、チオフェノール、チオクレゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、ジチオカルバミン酸メチル、ジフェニルスルフイド、テトラアルキルチウラムスルフイドなどの硫黄化合物、2−ブロムプロパン、1−クロロシクロヘキサンなどのハロゲン化合物等の光増感剤が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0031】
これらの重合開始剤の配合割合は、前記官能性アクリル系カルボン酸エステルモノマー及び/又はプレポリマー100重量部に対して通常0.001〜20重量部の範囲であるが、好ましくは0.005〜10重量部の範囲である。
【0032】
なお、アクリル系樹脂組成物には更に、塗工性、得られるアクリル系樹脂層のブロッキング性、密着性等の向上のために、各種の添加剤、例えば、変性シリコーンオイル、シリコーン系界面活性剤、フッ素樹脂や、難燃剤、着色剤等を添加しても良い。
【0033】
このようにして形成されるアクリル系樹脂層の厚さは5〜30μm、特に10〜20μmであることが好ましい。アクリル系樹脂層の厚さが5μm未満であると、べたつきを改善できず、30μmを超えると、折り曲げの力が加わったとき、アクリル系樹脂層に皺が生じて外観を損なってしまう。
【0034】
本発明のテーブルマットは、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの片面又は両面にこのようなアクリル系樹脂層を形成してなるものであるが、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの一方の面にのみアクリル系樹脂層を形成した場合、他方の面には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、若しくはフッ素系樹脂、又はこれら樹脂とこれら樹脂に相溶する他の樹脂との混合樹脂からなる、印刷インキ非転写性の被膜を形成してもよい。また、(メタ)アクリル系樹脂粒子を含まない上記アクリル系樹脂層を形成しても良い。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
なお、以下の実施例及び比較例において、製造されたテーブルマットの評価試験方法は次の通りである。
<評価試験方法>
1)透明性 目視により下記基準で評価した。
○:透明性優れる
△:透明性わずかに劣る
×:透明性劣る
××:透明性非常に劣る
2)べたつき性 JIS K7125「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試
験方法」により、アクリル系樹脂層面の摩擦係数を評価した。摩擦係
数が、0.4以下はべたつき性が少なく、使用上問題なく、0.4を
超えるとべたつき性が大きくなり、使用上支障を来たす。
3)折り曲げ性 テーブルマットを、アクリル系樹脂層を内側にして180°折り曲げ
、その後元の状態に戻して、皺の発生の有無を目視にて評価した。
【0037】
<実施例1,2及び比較例1〜6>
ポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニルの単独重合体:重合度1000)100重量部、可塑剤(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)50重量部、安定剤としてエポキシ化大豆油2重量部及びバリウム−亜鉛系安定剤2重量部をスーパーミキサーで混合し、Tダイ押出機で180℃の温度で、厚さ2mmにシート成形して軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートを製造した。
【0038】
得られた軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートに、下記配合のアクリル系紫外線硬化型樹脂組成物をリバースコーターで塗布し、紫外線照射ランプで120W/cmの紫外線を10秒間照射することにより硬化させて、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの片面に表1に示す厚さのアクリル系樹脂層を形成した。
【0039】
<アクリル系紫外線硬化型樹脂組成物配合>
アクリル系紫外線硬化型樹脂塗料(大日精化工業株式会社製「セイカビーム DM−02」):50重量部
メタアクリル系樹脂粒子(ガンツ化成株式会社製「ガンツパール」):アクリル系樹脂層中の含有量が表1に示す量となる添加量
溶剤(イソプロピルアルコール):50重量部
得られたテーブルマットの評価結果を表1に示した。
【0040】
<比較例7>
実施例1において、メタアクリル系樹脂粒子の代りに、平均粒径10μmのガラスビーズを用いたこと以外は同様にしてテーブルマットを製造し、その評価結果を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より、本発明によれば、特定の平均粒径の(メタ)アクリル系粒子を特定量添加した特定厚さのアクリル系樹脂層を、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの表面に形成することにより、べたつきが無く、透明性に優れたテーブルマットを得ることができることが分かる。
【0043】
比較例1〜6は、(メタ)アクリル系樹脂粒子の平均粒径、アクリル系樹脂層中の含有量、アクリル系樹脂層の厚さが本発明の範囲を外れるものであり、透明性、べたつき性、折り曲げ性等のいずれかが劣るものとなる。
【0044】
比較例7は、(メタ)アクリル系樹脂粒子の代りにガラスビーズを用いたものであり、透明性が著しく劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ポリ塩化ビニル系樹脂シートの片面又は両面に、平均粒径が1〜30μmの(メタ)アクリル系樹脂粒子を0.3〜10重量%含有する厚さ5〜30μmのアクリル系樹脂層を形成してなることを特徴とするテーブルマット。
【請求項2】
請求項1において、該アクリル系樹脂層がアクリル系紫外線硬化型樹脂層であることを特徴とするテーブルマット。

【公開番号】特開2006−14831(P2006−14831A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193979(P2004−193979)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【出願人】(503048338)菱興プラスチック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】