説明

テープカートリッジ

【課題】カートリッジの組み立て作業の際にメモリー基板が適正な姿勢から外れていても、手間をかけずに姿勢を修正できるテープカートリッジを得る。
【解決手段】上下ケース1a・1bを接合してなる本体ケース1と、本体ケース1内に設けた装着部21と、傾斜姿勢で装着部21に保持される非接触式のメモリー基板20とを有する。装着部21は、メモリー基板20を上下から挟んで保持する押え板23と支持板25とを有し、またメモリー基板20の右側への移動を規制する第1ガイド板26を有する。押え板23は、上ケース1aの上壁内面から下方へ延びて、下端面23aがメモリー基板20の上面に当接する。支持板25は、下ケース1bの底壁内面から上方へ延びて、上端面25aがメモリー基板20の下面に当接する。第1ガイド板26の左側面26aはメモリー基板20の右端を受け止める。各押え板23の下端面23aの右端部23bは、第1ガイド板26の左側面26aよりも右側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケース内に非接触式のメモリー基板を備えたテープカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4には、上下ケースを蓋合わせ状に接合してなる箱型形状の本体ケースと、本体ケースの内部の前側に設けた装着部と、非接触式のメモリー基板とを有しており、メモリー基板が、本体ケースの内方へ向けて下る傾斜姿勢で装着部に保持されているテープカートリッジが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−185431号公報(段落番号0017、図3−4)
【特許文献2】特開平11−238334号公報(段落番号0035、図1−3)
【特許文献3】特開平11−306720号公報(段落番号0022、図3)
【特許文献4】特開2001−23342号公報(段落番号0007、図2−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリー基板を装着部に装着し損ねたりした場合などでは、メモリー基板が適正な姿勢から外れるためにメモリー基板の姿勢を修正することになるが、この分だけカートリッジの組み立て作業に手間が掛かることになる。しかも、上下ケースの接合に伴ってメモリー基板が上下ケースで押し潰されるおそれがあり、テープカートリッジの製造の歩留まりが悪くなる。
【0005】
そこで本発明の目的は、カートリッジの組み立て作業の際にメモリー基板が適正な姿勢から外れていても、手間をかけずに姿勢を修正できるテープカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が対象とするテープカートリッジは、図2に示すごとく、四角形の上下ケース1a・1bを蓋合わせ状に接合してなる箱型形状の本体ケース1と、本体ケース1の内部における前部左隅に設けた装着部21と、非接触式のメモリー基板20とを有しており、メモリー基板20が、本体ケース1の右側へ向けて下る傾斜姿勢で装着部21に保持されている。
【0007】
本発明は、図1および図3に示すごとく、装着部21が、メモリー基板20を上下から挟んで保持する押え体23と支持体25とをそれぞれ前後一対ずつ有するとともに、メモリー基板20の右側への移動を規制する四角柱形状の内方規制体26を有している。各押え体23は、上ケース1aの上壁内面から下方へ延びており、各押え体23の下端面23aが、それぞれ傾斜状に形成されてメモリー基板20の上面に当接している。
【0008】
各支持体25は、下ケース1bの底壁内面から上方へ延びており、各支持体25の上端面25aは、それぞれ傾斜状に形成されてメモリー基板20の下面に当接している。内方規制体26は、下ケース1bの底壁内面から上方へ延びており、その左側面26aでメモリー基板20の右端を受け止めている。内方規制体26は、上下ケース1a・1bを接合した状態で一対の押え体23・23の間に位置しており、各押え体23の下端面23aの右端部が、内方規制体26の左側面26aよりも右側に位置する。
【0009】
更に、下ケース1bの底壁内面から上方に延びる前後一対の前後規制体27・27を含んでおり、各前後規制体27は、メモリー基板20の前後端にそれぞれ当接する位置に配されており、前後規制体27・27によってメモリー基板20の前後方向の移動を規制するようになっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作用効果を図1と図4とに基づいて説明すると、メモリー基板20を支持体25の上端面25a上に載置すると、メモリー基板20の右端が内方規制体26の左側面26aで受け止められて、メモリー基板20が支持体25の上端面25a上から滑り落ちることが防止される。この状態で、上下ケース1a・1bを蓋合わせ状に接合すると、メモリー基板20が、押え体23と支持体25とによって上下から挟まれて、図1に示すごとく本体ケース1の右側へ向けて下る傾斜姿勢で装着部21に保持される。
【0011】
一方、メモリー基板20の載置後であって上下ケース1a・1bの接合前に下ケース1bが大きく振動したなどの場合には、図4に示すごとく、メモリー基板20が、内方規制体26の左側面26aに寄り掛かった起立姿勢になることがある。この状態のまま上下ケース1a・1bを接合すると、押え体23の傾斜状の下端面23aが起立姿勢のメモリー基板20の上端に当たり(図4の状態)、押え体23の下端面23aによってメモリー基板20の上端が本体ケース1の左方向へ押され、メモリー基板20が、支持体25の上端面25a上に倒れ込んで載置される。これにより、メモリー基板20が、押え体23と支持体25とで適正に挟まれて装着部21に保持される。
【0012】
このように、メモリー基板20が起立姿勢になっていても、その状態のまま上下ケース1a・1bを接合するだけで、メモリー基板20が倒れて支持体25の上端面25a上に適正に載置される。つまり、メモリー基板20が起立姿勢になっていても手間をかけずにメモリー基板20の姿勢を修正できて、カートリッジの組み立て作業の効率化を図ることができる。しかも、メモリー基板20が、起立姿勢のままで上下ケース1a・1bが接合されて、押え体23と支持体25とで押し潰されることがなく、テープカートリッジの製造の際の歩留まりを向上させることができる。
【0013】
そして、押え体23の下端面23aの右端部が、内方規制体26の左側面26aよりも右側に位置することで、押え体23の下端面23aの右端が起立状態のメモリー基板20よりも確実に右側に位置して、押え体23の下端面23aを起立姿勢のメモリー基板20の上端に確実に当てることができる。
【0014】
前後規制体27・27によってメモリー基板20の前後方向の移動を規制すると、メモリー基板20を本体ケース1内の適正位置により確実に保持できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1ないし図4は、本発明が対象とするテープカートリッジを示しており、図1および図2に示すごとく、テープカートリッジは、四角形の上下ケース1a・1bを蓋合わせ状に接合してなる箱型形状の本体ケース1を有している。本体ケース1の内部には、磁気テープ3が巻回された1個のリール2が配されている。
【0016】
磁気テープ3の繰り出し端には、磁気テープ3を引き出し操作するローディングピン5が連結してある。ローディングピン5は、本体ケース1の前部右隅に開口したテープ引出口6よりもカートリッジの内方に位置決め収容されており、その上下両端が上下ケース1a・1bの内面に設けたホルダー部で係合保持されている。テープ引出口6は、左右スライド自在な蓋7で開閉され、蓋7は、図外のばねで閉じ勝手に移動付勢されている。
【0017】
テープカートリッジには、不使用時のリール2の遊動回転を阻止するリールロック機構が設けられている。リールロック機構は、上ケース1aの内面に設けた十文字状のガイド突起9と、上向きに開口する丸皿状のリール押え10と、リール押え10と上ケース1aとの間に配されてリール押え10を押し下げ付勢する圧縮コイルばね11と、リール押え10の底壁上面の中央に突設した4個のL字状のリブ12と、リール押え10をリール2にロックするための図外のロック歯とを含んでいる。
【0018】
前記ガイド突起9が、前記4個のリブ12で囲まれた十文字状のスライド溝に嵌合することで、リール押え10が、本体ケース1に対して回転不能に、しかし上下スライドは自在に案内支持されている。前記ロック歯は、リール押え10の底壁下面とリール2の底壁上面とにそれぞれ環状に設けられており、前記圧縮コイルばね11の押し下げ付勢力でリール押え10とリール2とのロック歯どうしが噛合する。この状態で、リール2がリール押え10を介して本体ケース1に回転不能に連結される。
【0019】
前記リールロック機構は、ロック解除具13で解除されるようになっている。ロック解除具13は、リール押え10とリール2の底壁との間に配されて、円形の主面壁15の周縁から等間隔置きに3本の腕16を放射状に連出してあり、各腕16の先端に下向きに折れ曲がる脚片17を一体に形成してある。主面壁15の中央は、図外のボールを介してリール押え10の底壁に接しており、常態においてロック解除具13は、圧縮コイルばね11の押し下げ付勢力を受けてリール2の底壁で受け止め支持される。
【0020】
ロック解除具13の各脚片17は、リール2の底壁にあけた3個の開口19にそれぞれ嵌合した状態で下面外側に突出しており、テープドライブ側の駆動軸に設けた駆動歯がリール2の底壁下面に設けた駆動歯と係合することで、圧縮コイルばね11の付勢力に抗して押し上げ操作される。これにより、ロック解除具13がリール押え10を押し上げ、リール押え10のロック歯がリール2のロック歯から外れ、リール2が回転可能になる。本体ケース1の後部には、誤消去防止用の切り換え部材が設けてある。
【0021】
本体ケース1の内部の前部左隅には、非接触式のメモリー基板20が装着される装着部21が設けられており、メモリー基板20は、装着部21において図1に示すごとく本体ケース1の右側へ向けてほぼ45度の傾斜で下る傾斜姿勢で保持されている。メモリー基板20は、図3に示すごとく、硬質の基板にアンテナやICチップ22などを実装してあり、ICチップ22には、磁気テープ3に記録されたデータファイルのディレクトリーや使用履歴データなどの管理情報や、テープカートリッジのロット番号および磁気テープ3の仕様や特性などのメーカー情報などが記憶されている。ICチップ22は、テープドライブなどと前記アンテナを介して無線でデータ通信などを行う。
【0022】
装着部21は、図1ないし図3に示すごとく、上ケース1aの上壁内面から下方に延びる前後一対の押え板(押え体)23・23と、下ケース1bの底壁内面から上方に延びる前後一対の支持板(支持体)25・25と、支持板25・25よりも右側となる本体ケース1の左右中央側において下ケース1bの底壁内面から上方に延びる第1ガイド板(内方規制体)26と、支持板25・25の前後において下ケース1bの底壁内面から上方に延びる前後一対の第2ガイド板(前後規制体)27・27とを含んでいる。なお、前側の第2ガイド板27は、下ケース1bの前側壁と一体化している。
【0023】
各押え板23は、左右幅に比べて前後幅が短い平板形状になっており、上ケース1aの左側壁から離れた位置に形成されている。各押え板23の下端面23aは、図1に示すごとく、本体ケース1の右側へ向けて下るほぼ45度の傾斜状になっている。各支持板25は、左右幅に比べて前後幅が短い平板形状になっており、下ケース1bの左側壁と一体化している。各支持板25の上端面25aは、本体ケース1の右側へ向けて下るほぼ45度の傾斜状になっている。
【0024】
メモリー基板20は、各押え板23の下端面23aと各支持板25の上端面25aとで上下から挟まれることで保持される。各ガイド板26・27は、それぞれ四角柱形状になっており、第1ガイド板26は、各支持板25の上端面25a上にあるメモリー基板20の右端を左側面26aで受け止めて、メモリー基板20が本体ケース1の内方、すなわち右側へ移動することを規制する。第2ガイド板27・27は、メモリー基板20の前後端をそれぞれ受け止めて、メモリー基板20が前後方向へ移動することを規制する。
【0025】
各押え板23と第1ガイド板26とは、上下ケース1a・1bを接合した状態で互いに干渉しない位置に配されている。すなわち第1ガイド板26は、上下ケース1a・1bを接合した状態で前記押え体23・23の間に位置する。各押え板23の下端面23aは、図1に示すごとく、最も本体ケース1の内方となる右端部23bが第1ガイド板26の左側面26aよりも本体ケース1の左右中央側(内方側)に位置している。これにより、上下ケース1a・1bを接合する際に、図4に示すごとくメモリー基板20が起立状態であっても、各押え板23の下端面23aが前記起立状態のメモリー基板20の上端に確実に突き当たることになる。なお、ガイド板26・27におけるメモリー基板20側の上端部は角が切り取られている。
【0026】
本体ケース1の組み立ての際には、メモリー基板20を上方から前後の第2ガイド板27・27間に嵌め入れ、ガイド板26・27に沿って落とし込んで支持板25・25の上端面25a・25a上に載置する。このとき、メモリー基板20の右端は、第1ガイド板26の左側面26aで受け止められる。次いで、上下ケース1a・1bを接合することで、各押え板23の下端面23aがメモリー基板20の上面に当接し、メモリー基板20が各押え板23の下端面23aと、各支持板25の上端面25aとで上下から挟まれて保持される。
【0027】
一方、メモリー基板20を各支持板25の上端面25a上に載置し損ねたり、メモリー基板20の載置後に下ケース1bが大きく振動した場合などでは、メモリー基板20が、第1ガイド板26の左側面26aに寄り掛かった起立姿勢(図4)になることがある。この場合でも、上下ケース1a・1bを接合することで、各押え板23の下端面23aが起立姿勢のメモリー基板20の上端に当たり、各押え板23の下端面23aでメモリー基板20の上端を本体ケース1の左方向へ押して、メモリー基板20が、各支持板25の上端面25a上に倒れ込む。この状態で、メモリー基板20が、各押え板23の下端面23aと、各支持板25の上端面25aとの間に挟まれて保持される。
【0028】
このように、上下ケース1a・1bを接合する際にメモリー基板20が起立姿勢になっていても、そのまま上下ケース1a・1bを接合するだけで、メモリー基板20が倒れて各支持板25の上端面25a上に載置される。
【0029】
前記実施例では、各押え板23の下端面23aと、各支持板25の上端面25aとがずれた位置になっているが、各押え板23の下端面23aと、各支持板25の上端面25aとが向かい合わせになるように配してもよい。前側の第2ガイド板27は、下ケース1bの前側壁から離れていてもよく、各支持板25は、下ケース1bの左側壁から離れていてもよい。各押え板23は、上ケース1aの左側壁と一体になっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図2のA−A線断面図
【図2】テープカートリッジの横断平面図
【図3】装填部の分解斜視図
【図4】装填部の組み立て途中の状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0031】
1 本体ケース
1a 上ケース
1b 下ケース
20 メモリー基板
21 装着部
23 押え板
23a 押え板の下端面
23b 押え板の右端部
25 支持板
25a 支持板の上端面
26 第1ガイド板
26a 第1ガイド板の左側面
27 第2ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下ケースを蓋合わせ状に接合してなる箱型形状の本体ケースと、前記本体ケースの内部に設けた装着部と、非接触式のメモリー基板とを有しており、
前記メモリー基板が、前記本体ケースの内方へ向けて下る傾斜姿勢で前記装着部に保持されるテープカートリッジにおいて、
前記装着部は、前記メモリー基板を上下から挟んで保持する押え体および支持体と、前記メモリー基板の前記本体ケースの内方への移動を規制する内方規制体とを含んでおり、
前記押え体は、前記上ケースの上壁内面から下方へ突出していて、前記押え体の下端面が傾斜状に形成されて前記メモリー基板の上面に当接しており、
前記支持体は、前記下ケースの底壁内面から上方へ突出していて、前記支持体の上端面が傾斜状に形成されて前記メモリー基板の下面に当接しており、
前記内方規制体は、前記下ケースの底壁内面から上方へ突出していて、その側面が前記メモリー基板に当接することで前記本体ケースの内方への移動を規制しており、
前記押え体と前記内方規制体とは、前記上下ケースを接合した状態で互いに干渉しない位置に配されており、
前記押え体の前記下端面において最も前記本体ケースの内方となる端部が、前記内方規制体の前記側面よりも前記本体ケースの内方側に位置することを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項2】
四角形の上下ケースを蓋合わせ状に接合してなる角箱形状の本体ケースと、前記本体ケースの内部における前部左隅に設けた装着部と、非接触式のメモリー基板とを有しており、
前記メモリー基板が、前記本体ケースの右側へ向けて下る傾斜姿勢で前記装着部に保持されているテープカートリッジにおいて、
前記装着部が、前記メモリー基板を上下から挟んで保持する押え体と支持体とをそれぞれ前後一対ずつ有するとともに、前記メモリー基板の右側への移動を規制する四角柱形状の内方規制体を有しており、
前各記押え体は、前記上ケースの上壁内面から下方へ延びており、前記各押え体の下端面が、それぞれ傾斜状に形成されて前記メモリー基板の上面に当接しており、
前記各支持体は、前記下ケースの底壁内面から上方へ延びており、前記各支持体の上端面が、それぞれ傾斜状に形成されて前記メモリー基板の下面に当接しており、
前記内方規制体は、前記下ケースの底壁内面から上方へ延びており、その左側面で前記メモリー基板の右端を受け止めており、
前記内方規制体は、前記上下ケースを接合した状態で前記一対の前記押え体の間に位置しており、
前記各押え体の前記下端面の右端部が、前記内方規制体の前記左側面よりも右側に位置することを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項3】
前記下ケースの底壁内面から上方に延びる前後一対の前後規制体を含んでおり、
前記各前後規制体は、前記メモリー基板の前後端にそれぞれ当接する位置に配されており、前記前後規制体によって前記メモリー基板の前後方向の移動を規制する請求項2記載のテープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−65924(P2006−65924A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245003(P2004−245003)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)