説明

テープキャリア及び半導体装置の製造方法、半導体装置

【課題】外観上の不具合及び曲げる際の不具合の両方を改善できるようにしたテープキャリア及び半導体装置の製造方法、半導体装置を提供する。
【解決手段】製品領域を画定するカットライン51に沿って切断されることによって個々の製品に分割されるテープキャリア100であって、絶縁性のベースフィルム1と、IC素子を取り付けるための取付領域53からその外側へ延びるようにベースフィルム1上に設けられたリード3と、リード3を覆うようにベースフィルム1上に設けられたソルダーレジスト5と、を備え、ソルダーレジスト5は製品領域の内側から外側へはみ出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープキャリア及び半導体装置の製造方法、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルや携帯移動端末など小型・軽量化が著しく進展している電気製品において、その筐体内部に納められているIC素子は、例えば手などで簡単に折り曲げることが可能な絶縁性のフィルム基板に実装されていることが一般的である。このフィルム基板は例えばポリイミドなどからなり、テープキャリア又はフレキシブル基板などと呼ばれている。また、このようなテープキャリアにIC素子を実装した実装製品は、TCP、COF又はFPCなどと呼ばれている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図4(a)及び(b)は、従来例に係るテープキャリア200の構成例を示す平面図である。図4(a)は、長尺のテープキャリア200を(最終)製品領域の外形であるカットライン251に沿って打ち抜きする前の状態を示しており、絶縁性のベースフィルム201上にインナーリード及びアウターリード(以下、これらを合わせて「リード」ともいう。)203と、主にインナーリードを覆うソルダーレジスト205とが設けられている。
【特許文献1】特開2004−235322号公報
【特許文献2】特開2000−269249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リード203を覆っているソルダーレジストは、リード形成後のベースフィルム201上に樹脂をディスペンス若しくはスクリーン印刷で塗布し、その後、キュア(即ち、熱処理)することによって形成される。ここで、キュア前のソルダーレジスト205はある程度の粘性を有する液体であり、塗布からキュアの段階において表面張力による影響によりその端部が盛り上がってしまうという問題があった。即ち、図4(b)に示すように、ソルダーレジスト205の端部から0.5〜0.8mm程度内側に入った部分が(中心部に比べて)一段厚くなってしまい、膜厚の均一性に難があった。ソルダーレジスト205は外観が半透明の膜であるため、膜厚が均一でないと色ムラとなり易い(外観上の不具合)。
【0005】
また、図5に示すように、IC素子211の実装及び、カットライン251に沿った打ち抜き後に、テープキャリア200を折り曲げ線261を中心に折り曲げようとすると、ソルダーレジスト205の厚膜部分205aがあたかも芯のようにはたらいて折り曲げにくく、特に、上記の厚膜部分205aの厚さが不均一な場合は、厚膜部分205aのなかでも比較的膜厚が小さくて強度の弱い部分で折り曲がろうとするため、曲がり方にばらつきが生じやすいという問題があった(曲げる際の不具合)。
そこで、この発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、外観上の不具合及び曲げる際の不具合の両方を改善できるようにしたテープキャリア及び半導体装置の製造方法、半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1のテープキャリアは、製品領域を画定する切断線に沿って切断されることによって個々の製品に分割されるテープキャリアであって、絶縁性のベースフィルムと、前記ベースフィルム上であって、前記製品領域内に設けられた配線パターンと、前記配線パターンを覆うように前記ベースフィルム上に設けられたソルダーレジストと、を備え、前記ソルダーレジストは、前記製品領域の内側から外側へはみ出していることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成であれば、例えば、個々の製品に分割した後のテープキャリアを折り曲げて電気製品の筐体に収納する場合、その折り曲げの中心となる折り曲げ線をソルダーレジストの「製品領域の内側から外側へはみ出している部分」と平面視で重ね合わせることで、テープキャリアを抵抗少なく容易に曲げることができる。また、従来と比べて、ソルダーレジストの厚膜部分が少ないので、外観上の不具合も改善できる。
【0008】
〔発明2〕 発明2のテープキャリアは、発明1のテープキャリアにおいて、前記製品領域には折り曲げ線を中心に折り曲げ可能な領域が存在し、前記ソルダーレジストは、前記折り曲げ線と平面視で重なるように前記製品領域の内側からその外側にはみ出して形成されていることを特徴とするものである。
このような構成であれば、切断後のテープキャリアを折り曲げる際に、折り曲げの抵抗となる芯の部分(即ち、ソルダーレジストの厚膜部分)が少ない、若しくは無いので、テープキャリアを容易に曲げることができる。また、製品領域におけるソルダーレジストの膜厚均一性を向上できるので、ソルダーレジストの曲げに対する応力分布の均一性を向上することができる。従って、テープキャリアの曲がり方のばらつきを低減することができる。
【0009】
〔発明3〕 発明3のテープキャリアは、発明2のテープキャリアにおいて、前記ソルダーレジストの前記折り曲げ線と平面視で重なる端部は、その厚膜部分が前記製品領域の外側にのみ存在し前記切断線上及び前記製品領域の内側には存在しないように、前記製品領域の外側に引き出されていることを特徴とするものである。ここで、ソルダーレジストの厚膜部分は、ソルダーレジストをキュア(即ち、熱処理)する過程で形成される。
このような構成であれば、分割後のテープキャリアを折り曲げる際に抵抗体となる芯の部分(即ち、ソルダーレジストの厚膜部分)はほぼ完全に無くなるので、テープキャリアは十分曲がり易く、また、曲がり方のばらつきも十分低減することができる。
【0010】
〔発明4〕 発明4の半導体装置の製造方法は、発明1から発明3の何れか一のテープキャリアにIC素子を取り付ける工程と、前記テープキャリアを前記切断線に沿って切断して個々の製品に分割する工程と、を含むことを特徴とするものである。
このような方法によれば、発明1から発明3のテープキャリアが応用されるので、例えば電気製品の筐体に収納する際に、曲げ易く、しかも曲がり方のばらつきの少ない半導体装置を提供することができる。
【0011】
〔発明5〕 発明5の半導体装置は、絶縁性のベースフィルムと、前記ベースフィルム上に設けられた配線パターンと、前記配線パターンを覆うように前記ベースフィルム上に設けられたソルダーレジストと、を備え、前記ベースフィルムには折り曲げ線を中心に折り曲げ可能な領域が存在し、前記折り曲げ可能な領域の前記ベースフィルム上には前記ソルダーレジストの厚膜部分が存在せず、前記折り曲げ可能な領域以外の領域には前記ソルダーレジストの厚膜部分が存在することを特徴とするものである。
このような構成であれば、ソルダーレジストの厚膜部分は曲げに対する抵抗体(即ち、芯)として機能するので、折り曲げ可能な領域以外の領域(即ち、折り曲げたくない領域)において、テープキャリアの強度を高めることができる。
【0012】
〔発明6〕 発明6の半導体装置は、発明5の半導体装置において、前記折り曲げ可能な領域以外の領域に存在する前記ソルダーレジストの厚膜部分は、前記折り曲げ線に対して平行となるように形成されていることを特徴とするものである。
このような構成であれば、テープキャリアの曲げに対する抵抗力を、折り曲げたい方向には弱く、折り曲げたくない方向には強くすることができる。
【0013】
〔発明7〕 発明7の半導体装置は、絶縁性のベースフィルムと、前記ベースフィルム上に設けられた配線パターンと、前記配線パターンを覆うように前記ベースフィルム上に設けられたソルダーレジストと、を備え、前記ベースフィルムには折り曲げ線を中心に折り曲げた折曲領域が存在し、前記ソルダーレジストは、前記ベースフィルムの折曲領域上に設けられた第1の部分と、前記折曲領域以外の前記ベースフィルム上に設けられた第2の部分と、を有し、前記ソルダーレジストの前記第1の部分の厚さは均一であり、前記ソルダーレジストの前記第2の部分には、前記第1の部分の厚さよりも厚い部分が存在することを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係るテープキャリア100の構成例を示す平面図である。詳しく説明すると、図1は、テープキャリア100を(製品領域を画定する)カットライン51に沿って打ち抜く前の状態を示している。図1の2点鎖線がカットライン51であり、このカットライン51に囲まれた領域が製品領域である。また、図2はテープキャリア100をカットライン51に沿って打ち抜いて個々の製品に分割した後の状態を示している。
【0015】
図1に示すように、この打ち抜き前のテープキャリア100は、長尺のベースフィルム1と、ベースフィルム1の長手方向に沿ってその側端に設けられたスプロケットホール2と、IC取付領域53からその外側にかけてテープキャリア100上に設けられた信号入出力用のインナーリード及びアウターリード(以下、リード)と、これらリード3を覆うようにテープキャリア100上に塗布されたソルダーレジスト5と、を含んだ構成となっている。ベースフィルム1は例えばポリイミド等の絶縁性素材からなるものであり、リード3は例えば銅箔等の金属薄膜からなるものである。また、図1に示すように、製品領域の内側にはIC素子が取り付けられる領域(即ち、IC取付領域53)と、IC素子を封止するための樹脂が塗布される領域(即ち、樹脂領域55)とが用意されている。
【0016】
このテープキャリア100を用いて半導体装置を製造する場合は、IC取付領域53にIC素子11(図2参照。)を取り付け、次に、樹脂領域55にエポキシ樹脂12(図2参照。)を塗布してIC素子11を樹脂封止する。その後、例えば金型を用いて、テープキャリア100をカットライン51に沿って打ち抜いて個々の製品に分割する。
ところで、図2に示すように、このテープキャリア100にも、従来例と同様に、分割後のテープキャリアを電気製品等の筐体に収納するための折り曲げ可能な領域(即ち、折曲領域)が存在するが、本実施の形態では、この折曲領域に対応する工夫がなされている。その工夫とは、ソルダーレジスト5が上記の折り曲げ線61に沿って製品領域の内側から外側へはみ出している点である。
【0017】
即ち、折曲領域と重なるソルダーレジスト5は、製品領域の両端から外側にはみ出して形成されている。そして、その製品領域両端からのはみ出し距離Lは、ソルダーレジスト5端の(キュアによって形成される)厚膜部分5aが、折り曲げ領域と重なる製品領域内側には形成されず、その外側にのみ形成される程度の距離となっている。一例を挙げると、本発明者が行った実験では距離Lを0.8mm以上とすることで、分割後の折曲領域から厚膜部分5aを完全に排除することができた。なお、この距離Lの最適値はソルダーレジスト5の種類やキュアの条件に変動するのである。従って、本発明を実施する場合には、ソルダーレジストの種類毎及びキュアの条件毎に実験を行ってその最適値を求めることが好ましい。
【0018】
このように、本発明の実施の形態によれば、分割後のテープキャリア100を折り曲げる際に、折り曲げの抵抗となる芯の部分(即ち、ソルダーレジスト5の厚膜部分5a)が折曲領域に無いので、テープキャリア100を容易に曲げることができる。また、製品領域におけるソルダーレジスト5の膜厚均一性を向上できるので膜ムラを減らすことができ、さらに、ソルダーレジストの曲げに対する応力分布の均一性を向上することができるので、テープキャリア100の曲がり方のばらつきを低減することができる。
【0019】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、折曲領域から外れた製品領域にもキュアによってソルダーレジスト5の厚膜部分5aが形成され、この折曲領域から外れた厚膜部分5aは、図2に示すようにテープキャリア100の分割後もそのままベースフィルム1上に残されている。ここで、この折曲領域から外れた厚膜部分5aは折り曲げ線61に対して平行となっている。それゆえ、分割後のテープキャリア100を折り曲げ線61と直交する方向に曲げようとしても、この厚膜部分5aが曲げに対する抵抗体(即ち、芯)として機能する。
【0020】
このように、折り曲げ領域から外れた位置において、厚膜部分5aが折り曲げ線に対して平行に残っていることで、テープキャリア100の曲げに対する抵抗力を、折り曲げたい方向には弱く、折り曲げたくない方向には強くすることができる。
この実施の形態では、カットライン51が本発明の「切断線」に対応し、リード3が本発明の「配線パターン」に対応している。
【0021】
なお、上記の実施の形態では、図1に示したように、打ち抜き前のベースフィルム1において、隣接する2つの製品領域間を空けるようにソルダーレジスト5を形成する場合について説明したが、ソルダーレジスト5の平面視での形状はこれに限られることはない。例えば、図3に示すように、製品領域間を空けないように、ベースフィルム1の長手方向に沿ってソルダーレジスト5を連続して形成しても良い。このような構成であっても、ソルダーレジスト5の厚膜部分5aは折曲領域に形成されないので、図1及び図2に示したテープキャリア100と同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、上記の実施の形態では、図1に示したように、IC取付領域53がベースフィルム1の長手方向に沿うように伸び、リード3がベースフィルム1の長手方向に対して直角方向に沿って伸びている場合(言い換えると、製品領域がベースフィルム1の長手方向に対して直角の方向に伸びている場合)について説明したが、IC取付領域53がベースフィルム1の長手方向に対して直角方向に伸び、リード3がベースフィルム1の長手方向に沿って伸びて(言い換えると、製品領域がベースフィルム1の長手方向に沿うように伸びて)いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るテープキャリア100の構成例を示す図。
【図2】打ち抜き後(分割後)のテープキャリア100を示す図。
【図3】テープキャリア100の他の構成例を示す図。
【図4】従来例に係るテープキャリア200の構成例を示す図。
【図5】打ち抜き後(分割後)のテープキャリア200を示す図。
【符号の説明】
【0024】
1 ベースフィルム、2 スプロケットホール、3 リード、5 ソルダーレジスト、5a 厚膜部分、11 IC素子、12 エポキシ樹脂、51 カットライン、53 IC取付領域、55 樹脂領域、61 折り曲げ線、100 テープキャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品領域を画定する切断線に沿って切断されることによって個々の製品に分割されるテープキャリアであって、
絶縁性のベースフィルムと、
前記ベースフィルム上であって、前記製品領域内に設けられた配線パターンと、
前記配線パターンを覆うように前記ベースフィルム上に設けられたソルダーレジストと、を備え、
前記ソルダーレジストは、前記製品領域の内側から外側へはみ出していることを特徴とするテープキャリア。
【請求項2】
前記製品領域には折り曲げ線を中心に折り曲げ可能な領域が存在し、
前記ソルダーレジストは、前記折り曲げ線と平面視で重なるように前記製品領域の内側からその外側にはみ出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のテープキャリア。
【請求項3】
前記ソルダーレジストの前記折り曲げ線と平面視で重なる端部は、その厚膜部分が前記製品領域の外側にのみ存在し前記切断線上及び前記製品領域の内側には存在しないように、前記製品領域の外側に引き出されていることを特徴とする請求項2に記載のテープキャリア。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の前記テープキャリアにIC素子を取り付ける工程と、
前記テープキャリアを前記切断線に沿って切断して個々の製品に分割する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
絶縁性のベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に設けられた配線パターンと、
前記配線パターンを覆うように前記ベースフィルム上に設けられたソルダーレジストと、を備え、
前記ベースフィルムには折り曲げ線を中心に折り曲げ可能な領域が存在し、
前記折り曲げ可能な領域の前記ベースフィルム上には前記ソルダーレジストの厚膜部分が存在せず、前記折り曲げ可能な領域以外の領域には前記ソルダーレジストの厚膜部分が存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記折り曲げ可能な領域以外の領域に存在する前記ソルダーレジストの厚膜部分は、前記折り曲げ線に対して平行となるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
絶縁性のベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に設けられた配線パターンと、
前記配線パターンを覆うように前記ベースフィルム上に設けられたソルダーレジストと、を備え、
前記ベースフィルムには折り曲げ線を中心に折り曲げた折曲領域が存在し、
前記ソルダーレジストは、前記ベースフィルムの折曲領域上に設けられた第1の部分と、前記折曲領域以外の前記ベースフィルム上に設けられた第2の部分と、を有し、
前記ソルダーレジストの前記第1の部分の厚さは均一であり、
前記ソルダーレジストの前記第2の部分には、前記第1の部分の厚さよりも厚い部分が存在することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−251645(P2008−251645A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88237(P2007−88237)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】