説明

テープフォーミング装置

【課題】線材外周に金属箔テープを縦添えして円筒成形するときに金属箔テープの摩擦を低減させて高速成形を可能とすると共に金属箔テープに皺が生ずることを防止するようにしたテープフォーミング装置を提供する。
【解決手段】線材12の外周に金属箔テープ13を縦添えして円筒状に成形するテープフォーミング装置であって、金属箔テープ13を線材12に縦添えして円筒状に成形するための複数のフォーミングダイス18,19を有し、これらのフォーミングダイスを線材の引取り方向に対して角度θ1,θ2を持たせて配置し、かつ最も押出クロスヘッド側に位置するフォーミングダイス19のダイス穴19aの穴径D2を線材の外径Dに対して+0.1mm〜+2.0mmに設定した構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープフォーミング装置に関し、例えばケーブルコア線の外周に金属箔テープを縦添えして円筒成形してシールド層を形成する際に使用するテープフォーミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド電線は、線材としてのケーブルコア線(以下単に「コア線」という)の外周を金属箔テープによりシールドした後ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシースで被覆して形成されている。コア線外周の金属箔テープによるシールドは、例えば図7に示すようなテープフォーミング装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このテープフォーミング装置は、コア線4をガイドするガイドローラ6、金属箔テープ3をガイドするガイドローラ7、金属箔テープ3の縦添え円筒成形用パイプ1、成形ダイス2(以下「フォーミングダイス」という)等を備えている。
【0003】
そして、コア線4がガイドローラ6で、金属箔テープ3がガイドローラ7でそれぞれ図中右方向から供給される。金属箔テープ3は、コア線4の外周上へ縦添えされるようにガイドローラ8,9でガイドされて、金属箔テープ3の縦添え円筒成形用パイプ1に上流側端部1aから導入される。そして、金属箔テープ3は、縦添え円筒成形用パイプ1中で図8(a)に示すように両側端部3a,3bが数mm程度重ね合わせられ円筒状に仮成形されてコア線4を包み、その後縦添え円筒成形用パイプ1の下流側端部1bから導出されてフォーミングダイス2で最終的に円筒形状に成形されシールド層とされる。
【特許文献1】特開2002−220159号公報(2ページ、図1、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したテープフォーミング装置には以下のような問題があった。即ち、縦添え円筒成形用パイプ1の中で金属箔テープ3を強く成形するとコア線4の高速引取り時に縦添え円筒成形用パイプ1の内周面に金属箔テープ3が擦れて縦添え円筒成形用パイプ1から出てきた金属箔テープ3に皺が生じたり、縦添え円筒成形用パイプ内1に金属箔テープ3に塗布されている熱融着接着剤が付着して大きな摩擦による金属箔テープ3の詰まりが発生する等の問題があった。また、縦添え円筒成形用パイプ1内の定期的な清掃が必要であった。
【0005】
また、これらを防ぐために金属箔テープ3の縦添え円筒成形用パイプ1内における成形を緩めると、縦添え円筒成形用パイプ1内で円筒状に仮成形された金属箔テープ3は、当該縦添え円筒成形用パイプ1から出てフォーミングダイス2に入るまでの間で自らの弾性により円筒形状が崩れて図8(a)に示す成形形状から同図(b)に示す形状となり、金属箔テープ3の両側端部3a,3bの重ね合わせ部分が開いてしまい、金属箔テープ3がフォーミングダイス2の入口で引っ掛かったり、捲れたり、折れる等の問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために図9に示すように縦添え円筒成形用パイプ1の下流側端部1bの後方(コア線4の引取り方向下流側)かつフォーミングダイス2の手前に縦添え円筒成形用パイプ1で成形された金属箔テープ3の円筒形状を保持する溝付きローラ5a,5bを設置したテープフォーミング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような溝付きローラ5a,5bを設けた場合でもコア線4の引取り速度を高速にした場合十分な効果を得ることができず、高速成形による生産性の向上やコストダウンを図ることが困難であった。
【0007】
近年、コア線の軽量化、細径化の要求が高まってきている。しかしながら、コア線4を細径化すると金属箔テープ3の弾性力が強まるため円筒形状に丸まり難く、高速成形時には縦添え円筒成形用パイプ1内で引っ掛かったり、フォーミングダイス2で詰まる等の問題が発生する。また、後加工性を考慮すると、コア線4とケーブルシースとの密着力も2〜30〔N〕が望ましく、コア線径が細いと十分な密着力を確保することが困難である。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、線材外周に金属箔テープを縦添えして円筒成形するときに金属箔テープの摩擦を低減させて高速成形を可能とすると共に金属箔テープに皺が生ずることを防止するようにしたテープフォーミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係わるテープフォーミング装置は、線材外周に金属箔テープを縦添えして円筒状に成形するテープフォーミング装置であって、前記金属箔テープを前記線材に縦添えして円筒状に成形するためのフォーミングダイスを複数有し、これらのフォーミングダイスを前記線材の引取り方向に対して角度を持たせて配置し、かつ最も押出クロスヘッド側に位置するフォーミングダイスの穴径を前記線材の外径に対して+0.1mm〜+2.0mmに設定したことを特徴としている。
【0010】
コア線と金属箔テープが夫々供給され、金属箔テープがコア線の外周上へ縦添えされるようにガイドローラでガイドされて複数のフォーミングダイスのダイス穴に順次挿通されて引取られる。金属箔テープは、フォーミングダイスのダイス穴において両側端部が僅かに重ね合わせられて円筒状に仮成形されてコア線を包む。
【0011】
フォーミングダイスをコア線の引取り方向(移動方向)に対して角度を持たせることによりダイス穴がコア線の引取り方向から見て楕円形状となり、金属箔テープのコア線外周への密着力が高くなる。そして、最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスのダイス穴径を線材の外径に対して+0.1mm〜+2.0mmに設定したことで、コア線に金属箔テープをより密着させて円筒形に成形する(巻く)ことができ、高速成形時においても金属箔テープの皺の発生やフォーミングダイスのダイス穴内における詰まり等を有効に防止することができる。そして、最後のフォーミングダイスから導出されたコア線は、押出クロスヘッドにおいてケーブルシースにより被覆成形されてシールド電線とされる。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載のテープフォーミング装置は、請求項1に記載のテープフォーミング装置おいて、前記複数のフォーミングダイスの穴径は前記最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスから前記線材の引取り方向の上流側に位置するに伴い前記最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスの穴径よりも順次大きく形成されていることを特徴としている。
【0013】
コア線の外周上へ縦添えされるようにガイドローラでガイドされた金属箔テープは、複数のフォーミングダイスのダイス穴に順次挿通されて引取られる。そして、コア線の引取り方向に対して下流側に配置されているフォーミングダイスから順次ダイス穴径を大きくする、即ち上流側のフォーミングダイスからダイス穴を順次小さくして最も下流側、即ち押出クロスヘッド側のフォーミングダイスのダイス穴へと導く。これにより、金属箔テープが徐々に円筒形状に成形されてコア線外周に巻きつけられ、良好な成形性が確保される。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載のテープフォーミング装置は、請求項1又は請求項2に記載のテープフォーミング装置において、前記フォーミングダイスの角度は前記線材の引取り方向に対して60°〜120°の範囲であることを特徴としている。
【0015】
複数のフォーミングダイスをコア線の引取り方向(移動方向)に対して60°〜120°の範囲で傾けることによりダイス穴がコア線の引取り方向から見て楕円形状となり、金属箔テープのコア線外周への密着力が高くなる。これにより、コア線に金属箔テープをより密着させて円筒形に成形する(巻く)ことができる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載のテープフォーミング装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のテープフォーミング装置において、前記複数のフォーミングダイスは同じ方向に傾斜していることを特徴としている。
【0017】
複数のフォーミングダイスをコア線の引取り方向に対して同じ方向に傾けることにより各フォーミングダイスのダイス穴がコア線の引取り方向から見て同じ方向の楕円形状となり、金属箔テープが良好に円筒形状に成形されてコア線外周に巻きつけられる。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載のテープフォーミング装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のテープフォーミング装置において、前記複数のフォーミングダイスの中の最も押出クロスヘッド側に位置するフォーミングダイスを30℃〜150℃に加熱する加熱手段を備えていることを特徴としている。
【0019】
複数のフォーミングダイスの中の最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスを30℃〜150℃の範囲で直接加熱することにより、金属箔テープに塗布されている熱融着接着剤の溶融による金属箔テープの重ね合わせ効果(コア線に金属箔テープを密着させて巻く)を有効に働かせることができる。また、フォーミングダイスを直接加熱することにより、金属箔テープに直接熱が加わるため安定性が良く、また円筒形状に丸まり易く金属箔テープの円筒形状が崩れることを抑える効果も併せ持つ。これにより、金属箔テープの弾性による形状崩れを防止し、高速成形時においても金属箔テープの皺の発生やフォーミングダイスのダイス穴内における詰まり等を有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、金属箔テープの縦添え円筒成形に複数のフォーミングダイスを使用することにより、フォーミング時の金属箔テープの摩擦(摺動抵抗)を低減することができ、高速成形にも対応可能となり、シールド電線等のケーブルの生産性向上及びコストダウンが図られる。
【0021】
また、最も押出クロスヘッド側(下流側)のフォーミングダイスのダイス穴径をこれよりも上流側のフォーミングダイスのダイス穴径よりも小さくし、かつ線材の外径よりも僅かに大きい+0.1mm〜+2.0mmの範囲に設定し、当該フォーミングダイスよりも上流側のフォーミングダイスのダイス穴径を順次大きく形成することにより、良好な成形性が確保される。
【0022】
さらに、複数のフォーミングダイスに線材の引取り方向(移動方向)に対して60°〜120°の範囲で角度を設けることにより、線材に金属箔テープをより密着させて円筒形に成形する(巻く)ことができ、かつ金属箔テープに皺が生ずることを防止することができる。
【0023】
さらに、線材に金属箔テープをより密着させて成形することによりケーブルシースとの密着力が向上し、後工程においてもストリップし易い適度な密着力を有するケーブルを形成することが可能となる。
【0024】
さらに、最も押出クロスヘッド側(下流側)のフォーミングダイスを30℃〜150℃の範囲で直接加熱することにより、金属箔テープの熱融着接着剤の溶融による金属箔テープの重ね合わせ効果(線材に金属箔テープを密着させて巻く)を有効に働かせることができる。そして、フォーミングダイスを直接加熱することにより、金属箔テープに直接熱が加わるため熱融着の安定性が良くなり、また円筒形状に丸まり易く金属箔テープの円筒形状が崩れることを抑える効果も併せ持つことにより、金属箔テープの弾性による形状崩れを防止し、高速成形時においても金属箔テープの皺の発生、フォーミングダイスの詰まり等を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係わるテープフォーミング装置の概略構成を示し、テープフォーミング装置11は、シールド電線等の線材としてのコア線12をガイドするガイドローラ14、金属箔テープ13をガイドするガイドローラ15、金属箔テープ13をコア線12の外周上へ縦添えさせるようにガイドするガイドローラ16,17、及び金属箔テープ13を円筒状に成形してコア線12の外周に巻き付ける複数例えば第1、第2の2つの成形ダイス(以下「フォーミングダイス」という)18,19等を備えている。
【0026】
ガイドローラ14,16,17、及びフォーミングダイス18,19は、一直線上に配置されている。ガイドローラ16,17は、コア線12と金属箔テープ13の位置を固定して引取り方向(長手方向)のずれを防止するために非回転とされている。そして、第2のフォーミングダイス19の直ぐ下流側にポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシース部材で被覆するための図示しない押出クロスヘッドが配置されている。また、コア線12は、複数本の線材が撚られた撚り線とされており、その外径(コア撚り外径)がDmmとされている。
【0027】
第1のフォーミングダイス18は、図2及び図3に示すように円盤状をなし、中心にダイス穴18aが穿設されており、ダイス穴18aの入口側開口端18b、出口側開口端18cが半径Rb,Rcで面取されて滑らかな曲面とされており、金属箔テープ13との摺動抵抗を小さくして円滑な導入・導出を可能としている。ダイス穴18aの入口側開口端18bの面取り半径Rbは、出口側開口端の面取り半径Rcよりも大きく(Rb>Rc)、例えば、Rb=1mm(=R1)、Rc=4mm(=R4)程度とされている。第2のフォーミングダイス19も第1のフォーミングダイス18と同様に円盤状をなし中心にダイス穴19aが形成され、入口側開口端及び出口側開口端が夫々前記半径Rb及びRcで面取されている。
【0028】
これら第1、第2のフォーミングダイス18,19のダイス穴18a,19aの穴径D1,D2は、D1>D2の関係とされ、第2のフォーミングダイス19の穴径D2は、コア線12のコア撚り外径Dmmよりも僅かに大きい+0.1mm〜+2.0mmの範囲に設定されている。そして、第1のフォーミングダイス18の穴径D1は、第2のフォーミングダイス19の穴径D2よりも僅かに大きく(+1.5mm程度)設定されている。
【0029】
第1、第2のフォーミングダイス18,19は、図1に示すように所定の間隔でコア線12の引取り方向(移動方向)に対して角度θ1,θ2をなし、かつ同じ方向に傾斜して配置されている。そして、これらの角度θ1,θ2は、図4に示すようにコア線12の引取り方向に対して60°〜120°の範囲α内の角度に設定される(60°≦(θ1,θ2)≦120°)。尚、第1のフォーミングダイス18の角度θ1と第2のフォーミングダイス19の角度θ2は、同じ角度(θ1=θ2)でも良く、異なる角度(θ1≠θ2)でも良い。
【0030】
また、テープフォーミング装置11は、複数のフォーミングダイスの中の最も押出クロスヘッド側(コア線12の引取り方向の下流側)に位置するフォーミングダイス、即ち第2のフォーミングダイス19を所定の温度に直接加熱する図示しない加熱手段を備えており、第2のフォーミングダイス19の温度を30℃〜150℃の範囲内の所定温度に加熱可能とされている。尚、加熱手段としては例えばフォーミングダイス19の外周部にヒータ線を巻き付けて加熱するようにしても良い。
【0031】
そして、フォーミングダイス19のダイス穴19aとコア線12とのクリアランスは、コア線12の外径(コア撚り外径)Dに応じて前記範囲内の最適な値に設定される。また、フォーミングダイス18,19の傾斜角度θ1,θ2は、コア線12の引取り速度(移動速度)に応じて最適な角度に設定される。また、第2のフォーミングダイス19の温度は、金属箔テープ13に塗布されている熱融着接着剤20(図6参照)、外気温度等に応じて最適な温度に設定される。
【0032】
金属箔テープ13は、アルミニウム、銅又はその合金、ステンレス鋼、鉛等の金属部材により厚さ約0.05mm程度に形成されており、その片面又は両面にシース(被覆)用プラスチック(例えば、ポリエチレン)との接着性の良い熱融着接着剤20が塗布されている。
【0033】
以下に上記テープフォーミング装置の作用を説明する。コア線12がガイドローラ14で、金属箔テープ13がガイドローラ15でそれぞれ図1中右方向から供給される。金属箔テープ13は、コア線12の外周上へ縦添えされるようにガイドローラ16,17でガイドされて、フォーミングダイス18のダイス穴18aに挿通される。金属箔テープ13は、フォーミングダイス18のダイス穴18a内において図5に示すように両側端部13a,13bが数mm程度重ね合わせられて円筒状に仮成形されてコア線12を包む。
【0034】
次いで、前述した30℃〜150℃の範囲内の所定温度に加熱されたフォーミングダイス19のダイス穴19aに挿通され、このダイス穴19aにおいて図6に示すようにコア線12の外周に密着されて円筒形状に成形されかつ重ね合わせた両側端部13aと13bとが熱融着接着剤20により熱融着される。これにより、コア線12の外周に金属箔テープ13によるシールド層が形成される。そして、フォーミングダイス19から導出されたコア線12は、前述した押出クロスヘッドにおいて図6に2点鎖線で示すケーブルシース21により被覆成形されてシールド電線とされる。
【0035】
金属箔テープ13のコア線12への縦添え円筒成形に第1、第2の2つのフォーミングダイス18,19を使用することにより、フォーミング時の金属箔テープ13の摩擦(摺動抵抗)を低減することができ、高速成形にも対応可能となる。これにより、シールド電線等のケーブルの生産性向上及びコストダウンが図られる。
【0036】
また、フォーミングダイス18,19のダイス穴18a,19aの穴径D1,D2を、D1>D2とし、かつ穴径D1を穴径D2よりも+0.5mm大きく形成し、フォーミングダイス19の穴径D2をコア線12のコア撚り外径Dよりも僅かに大きい+0.1mm〜+2.0mmの範囲に設定することにより、良好な成形性が確保される。
【0037】
さらに、フォーミングダイス18,19にコア線12の引取り方向(移動方向)に対して60°〜120°の範囲で傾けることによりダイス穴18a、19aがコア線12の引取り方向から見て楕円形状となり、金属箔テープ13のコア線12外周への密着力が高くなる。これにより、コア線12に金属箔テープ13をより密着させて円筒形に成形する(巻く)ことができ、かつ金属箔テープ13に皺が生ずることを防止することが可能となる。そして、金属箔テープ13をコア線12により密着させて成形することにより、コア線12とケーブルシース21との密着力が向上するため、後工程においてもストリップし易い適度な密着力を有するケーブルを形成することが可能となる。
【0038】
さらに、第2のフォーミングダイス19を前記30℃〜150℃の範囲で直接加熱することにより、金属箔テープ13の熱融着接着剤20の溶融による金属箔テープ13の重ね合わせ効果(コア線12に金属箔テープ13を密着させて巻く)を有効に働かせることができる。このように、フォーミングダイス19を直接加熱することにより、金属箔テープ13に直接熱が加わるため安定性が良く、また円筒形状に丸まり易く金属箔テープ13の円筒形状が崩れることを抑える効果も併せ持つ。これにより、金属箔テープ13の弾性による形状崩れを防止し、高速成形時においても金属箔テープ13の皺の発生、フォーミングダイス19のダイス穴19a内における詰まり等を有効に防止することができる。
【0039】
次に、上記テープフォーミング装置11のフォーミングダイス18,19によりコア線12外周に金属箔テープ13を円筒成形した場合の実施例について説明する。
【実施例】
【0040】
(1)コア線12のコア撚り外径D〔mm〕と、フォーミングダイス19のダイス穴19aの穴径D2及びコア線12の引取り方向に対する角度θ〔°〕、金属箔テープ13のコア線12の外周への密着力〔N〕及びダイス穴19aへの金属箔テープ13の詰まり〔回/3000m〕の関係について評価した結果を表1、表2、表3に示す。
【0041】
【表1】

【表2】

【表3】

【0042】
上記検証結果より、フォーミングダイス19の角度がコア線12の引取り方向に対して60°以下及び120°以上の範囲では金属箔テープ13の詰まりの確率が増えることが分かった。また、フォーミングダイス19のダイス穴19aの穴径D2とコア撚り外径Dとのクリアランスが+0.1mm以下の場合では金属箔テープ13の詰まりの確率が増え、+2.0mm以上である場合には十分な密着力が得られなかった。これは、十分なフォーミング効果を得ることができず金属箔テープ13の詰まりを発生する要因となることが分かった。
【0043】
従って、フォーミングダイス19のダイス穴19aの穴径D2をコア線12のコア撚り外径Dに対して+0.1mm〜+2.0mmの範囲に設定しかつコア線12の引取り方向に対して60°〜120°の範囲内で角度を持たせることが有効であることが明かとなった。
【0044】
なお、上記実施形態においては金属箔テープ13の縦添え円筒成形に2つのフォーミングダイスを設けた場合について記述したが、これに限るものではなく2つ以上設けても良い。この場合、最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスのダイス穴径を前記+0.1mm〜+2.0mmの範囲内に設定し、これよりも上流側のフォーミングダイスのダイス穴径を前記ダイス穴径よりも順次略+0.5mm程度大きく形成するのが良い。また、各フォーミングダイスのダイス穴は、両側開口端を曲面で面取りし、かつ入口側開口端の曲面(面取り半径)を出口側開口端の曲面(面取り半径)よりも大きくするのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係わるテープフォーミング装置の概略構成図である。
【図2】図1に示したフォーミングダイスの正面図である。
【図3】図2に示したフォーミングダイスの矢線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図1に示したフォーミングダイスのコア線の引取り方向に対する傾き角度の範囲の説明図である。
【図5】図1に示した第1のフォーミングダイスによりコア線の外周に金属箔テープが円筒形に成形されて両側端部が重ね合わされた状態を示す断面図である。
【図6】図5に示した金属箔テープの重ね合わされた両側端部が熱融着接着剤により熱融着された状態の説明図である。
【図7】従来のテープフォーミング装置の概略構成図である。
【図8】図7に示したテープフォーミング装置によりコア線外周に金属箔テープを円筒形に成形した場合の説明図である。
【図9】図7に示したテープフォーミング装置の円筒成形用パイプとフォーミングダイスとの間に溝付きローラを設けたテープフォーミング装置の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 縦添え円筒成形用パイプ
1a 上流側端部
1b 下流側端部
2 成形ダイス(フォーミングダイス)
3 金属箔テープ
3a,3b 側端部
4 コア線(線材)
5a,5b 溝付きローラ
6,7,8,9 ガイドローラ
11 テープフォーミング装置
12 コア線(線材、撚り線)
13 金属箔テープ
13a,13b 側端部
14,15,16,17 ガイドローラ
18,19 フォーミングダイス
18a,19a ダイス穴
18b,18c 開口端
20 熱融着接着剤
21 ケーブルシース
D コア撚り外径
θ1,θ2 フォーミングダイスのコア線の引取り方向に対する傾き角度
α フォーミングダイスのコア線の引取り方向に対する傾き角度の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材外周に金属箔テープを縦添えして円筒状に成形するテープフォーミング装置であって、
前記金属箔テープを前記線材に縦添えして円筒状に成形するためのフォーミングダイスを複数有し、これらのフォーミングダイスを前記線材の引取り方向に対して角度を持たせて配置し、かつ最も押出クロスヘッド側に位置するフォーミングダイスの穴径を前記線材の外径に対して+0.1mm〜+2.0mmに設定したことを特徴とするテープフォーミング装置。
【請求項2】
前記複数のフォーミングダイスの穴径は前記最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスから前記線材の引取り方向の上流側に位置するに伴い前記最も押出クロスヘッド側のフォーミングダイスの穴径よりも順次大きく形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のテープフォーミング装置。
【請求項3】
前記フォーミングダイスの角度は前記線材の引取り方向に対して60°〜120°の範囲であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のテープフォーミング装置。
【請求項4】
前記複数のフォーミングダイスは同じ方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のテープフォーミング装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のテープフォーミング装置において、
前記複数のフォーミングダイスの中の最も押出クロスヘッド側に位置するフォーミングダイスを30℃〜150℃に加熱する加熱手段を備えていることを特徴とするテープフォーミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−204204(P2007−204204A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24178(P2006−24178)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)