説明

テープ処理装置およびテープカッターロック方法

【課題】開閉蓋の開放時にテープカッターを切断動作不能とすることができるテープ処理装置およびテープカッターロック方法を提供する。
【解決手段】印刷テープTが着脱自在に収容されるテープ収容部7と、テープ収容部7を開閉する開閉蓋5と、テープ収容部7に連なる印刷テープTの繰出し経路10に配設され、印刷テープTを切断するテープカッター41と、テープカッター41を切断動作させるカッターボタン43、およびカッターボタン43に加えた力をテープカッター41に伝達する作動ギヤ列44を有するカッター作動機構42と、カッター作動機構42の作動をロック・アンロックするロック部34と、開閉蓋5の開放に連動してロック部34をロック動作させ、閉塞に連動してロック部34をロック解除動作させる蓋連動機構35と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープに印刷処理、カッティング処理、点字打刻処理等を実施すると共に、テープの処理済み部分を切断するテープ処理装置およびテープカッターロック方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のテープ処理装置として、テープに所望の印刷を行う印字装置(テープライター)が知られている(特許文献1参照)。
この印字装置は、上面の後半部に本体カバーを有し、本体カバーの内側には、テープを収容したテープカートリッジが着脱自在に装着されるカートリッジ装着部が窪入形成されている。カートリッジ装着部とテープ排出口との間には、テープの送り経路となる溝が設けられており、この溝に臨んでテープカッターが内蔵されている。一方、本体カバーの切欠き凹部には、カッターボタンが配設されている。本体カバーを開放して、カートリッジ装着部にテープカートリッジを装着し、本体カバーを閉塞した後、印刷動作を指令すると、テープがテープカートリッジから繰り出されるようにテープ排出口に向かって送られ、印刷が実施される。印刷が完了した後、カッターボタンを押釦すると、テープの印刷済み部分が切断され、テープ排出口から落下するようにして排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−67150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の印字装置では、テープカートリッジを着脱するために、本体カバー(開閉蓋)を開放するが、この状態で、カッターボタンを介してテープカッターを切断動作させることが可能となっている。このため、本体カバーを開放したときに、例えばクリップ等の異物がテープの送り経路である溝に入り込み、この状態で、誤ってカッターボタンを押下操作してしまうことが考えられる。かかる場合に、異物をテープカッターで切断してしまうことになり、異物によっては、テープカッターを損傷してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、開閉蓋の開放時にテープカッターを切断動作不能とすることができるテープ処理装置およびテープカッターロック方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープ処理装置は、処理テープが着脱自在に収容されるテープ収容部と、テープ収容部を開閉する開閉蓋と、テープ収容部に連なる処理テープの繰出し経路に配設され、繰出された処理テープを切断するテープカッターと、開閉蓋の開放に連動してテープカッターの作動をロックさせ、閉塞に連動してテープカッターの作動をロック解除させる蓋連動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、蓋連動機構により、開閉蓋の開放に連動してテープカッターの作動をロックさせるようにしている。このため、開閉蓋の開放した状態では、テープカッターの切断動作は不能となる。これにより、例えば開閉蓋を開放したときに、処理テープの繰出し経路に異物等が入り込むことがあっても、テープカッターの切断動作は不能となるため、テープカッターを損傷する等に事態を回避することができる。なお、処理テープは、テープカートリッジに収容した状態でテープ収容部に着脱する構成であってもよいし、小巻のままテープ収容部に着脱する構成であってもよい。
【0008】
この場合、テープカッターを切断動作させるためのカッター操作子、およびカッター操作子に加えた力をテープカッターに伝達する切断力伝達部を有するカッター作動機構を、更に備え、蓋連動機構は、開閉蓋の開放に連動してカッター作動機構をロックさせ、閉塞に連動してカッター作動機構をロック解除させることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、蓋連動機構により、開閉蓋の開放に連動してカッター作動機構の作動をロックさせるようにしている。このため、開閉蓋を開放した状態では、カッター操作子によるテープカッターの切断動作は不能となる。
【0010】
この場合、蓋連動機構に連結され、カッター作動機構の作動をロックおよびロック解除するロック部を、更に備え、切断力伝達部は、ギヤ列を有し、ロック部は、ギヤ列における1のギヤの歯溝に対し、ロック位置とロック解除位置との間で係脱するロック爪を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ロック部のロック爪により、切断力伝達部のギヤをロック・アンロックするようにしているため、単純な構造で、カッター作動機構を確実にロック・アンロックすることができる。
【0012】
この場合、蓋連動機構は、ロック部を保持すると共に、支点を中心に回動してロック爪を歯溝に対し係脱させるロック部ホルダーを有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ロック部のロック爪が切断力伝達部のギヤ(の歯溝)に係合するロック状態でおいて、カッター操作子に加えられた力は、ロック部ホルダーの支点で受けることになる。これにより、単純な構造で、カッター操作子に加えられた力を適切に逃がすことができる。
【0014】
この場合、ロック部ホルダーの支点と1のギヤの支軸とを結ぶ仮想線を底辺とし、ロック位置におけるロック爪と歯溝との接触点を頂点とする三角形が、扁平な三角形となるように、ロック爪およびロック部ホルダーが配設されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、カッター操作子に加えられた力により回転しようとするギヤ(の歯溝)に対し、ロック爪が食い込むように作用する。このため、ギヤの歯溝に係合したロック爪が、加えられた力によりギヤから外れてしまうことがなく、カッター作動機構を確実にロックすることができる。
【0016】
一方、処理テープに印刷処理を行う印刷ヘッドと、開閉蓋の開閉に連動し、印刷ヘッドを処理テープに接触する印刷位置と処理テープから離間する非印刷位置との間で離接動作させるリリースレバーを有するヘッドリリース機構と、を備え、ヘッドリリース機構が蓋連動機構を兼ねると共に、リリースレバーがロック部ホルダーを兼ねていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、開閉蓋の開閉に連動して印刷ヘッドを離接動作させるヘッドリリース機構を活用して、カッター作動機構をロック・アンロックするようにしている。このため、構造の複雑化や部品点数の増加を抑制ししつつ、開閉蓋の開放時にテープカッターを切断動作不能とすることができる。
【0018】
本発明のテープカッターロック方法は、処理テープが着脱自在に収容されるテープ収容部と、テープ収容部を開閉する開閉蓋と、テープ収容部に連なる処理テープの繰出し経路に配設され、繰出された処理テープを切断するテープカッターと、テープカッターの作動をロック・アンロックするロック部と、を備えたテープ処理装置のテープカッターロック方法であって、開閉蓋の開放に連動してテープカッターの作動をロックし、閉塞に連動してテープカッターの作動をロック解除することを特徴とする。
【0019】
この方法によれば、開閉蓋の開放に連動してテープカッターの作動をロックするようにしている。このため、開閉蓋の開放した状態では、テープカッターの切断動作は不能となる。これにより、例えば開閉蓋を開放したときに、処理テープの繰出し経路に異物等が入り込むことがあっても、テープカッターの切断動作は不能となるため、テープカッターを損傷する等に事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係るテープ印刷装置の閉蓋状態の裏面側外観斜視図である。
【図2】実施形態に係るテープ印刷装置の開蓋状態の裏面側外観斜視図である。
【図3】テープ印刷装置における開閉蓋および構成装置廻りを表側から見た斜視図であって、装置フレームを加えた状態の斜視図(a)および装置フレームを除いた状態の斜視図(b)である。
【図4】テープ印刷装置における構成装置廻りを表側から見た斜視図である。
【図5】テープ印刷装置における構成装置廻りを表側から見た平面図であって、カッター作動機構をロックした状態の平面図(a)およびアンロックした状態の平面図(b)ある。
【図6】テープ印刷装置におけるテープ切断部廻りを裏側から見た斜視図であって、カッター切込み動作を示す斜視図(a)およびカッター復帰動作を示す斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るテープ処理装置を適用したテープ印刷装置について説明する。このテープ印刷装置は、処理テープである小巻の印刷テープが着脱自在に装着され、装着した印刷テープを繰出しながらこれに印刷を行うものである。また、印刷テープの印刷済み部分が手動操作で切断されることにより、所望の印刷が為された、いわゆるラベルが作成される。
【0022】
図1および図2は、テープ印刷装置1を斜め下方からその裏面を見た斜視図であり、図1は閉蓋状態を、図2は開蓋状態を表している。両図に示すように、このテープ印刷装置1は、ハンディタイプのものであり、全体としてカメラボティを模した形態を有している。すなわち、テープ印刷装置1は、両側面を円弧状断面とし、上面の片側に後述するカッターボタン43を配し、上面の中央に後述するテープ排出口9を配して構成されている。また、図示しないが、テープ印刷装置1の前面(表側)には、広くキーボードが配設されると共に、キーボードの上方に横長のディスプレイが配設されている。
【0023】
ユーザーは、キーボードから情報を入力し、ディスプレイを使って編集を行った後、キーボードから印刷を指令し印刷テープTに印刷を実施する。印刷が終了したらカッターボタン43を押釦することで、印刷済みのテープ片(ラベル)を得るようになっている。また、キーボードから印刷テープTの所定量の繰出しを指令し、繰出しが終了したらカッターボタン43を押釦することで、手書き用のテープ片を得るようになっている。
【0024】
このような外観を有するテープ印刷装置1は、装置ケース3に構成装置4を内蔵した装置本体2と、装置本体2の裏面側に開閉自在に設けた裏蓋となる開閉蓋5と、を備えている。開閉蓋5を開放した装置本体2の裏面側には、左右一方の半部に小巻の印刷テープTを収容するテープ収容部7が窪入形成され、他方の半部に乾電池を収容する電池収容部8が窪入形成されている。また、テープ収容部7と上記のテープ排出口9との間には、小巻の印刷テープTを繰出しながら送るための繰出し経路10が、形成されている。繰出し経路10は、印刷テープTの幅に合わせて深い溝となっており、繰出し経路10のテープ収容部7側には、後述する印刷ヘッド32およびプラテン38が配設され、繰出し経路10のテープ排出口9側には、後述するテープカッター41が配設されている(図6参照)。
【0025】
図2に示すように、開閉蓋5は、装置本体2の裏面全域を覆うものであり、一方の側端部に、装置ケース3に設けた一対の掛止め部12との間でヒンジを構成する一対のヒンジ片13を有すると共に、他方の側端部に、装置ケース3に設けた爪片14との間で閉止機構を構成する閉止部15を有している。一対のヒンジ片13は係止爪の形態を有し、装置ケース3の一対の掛止め部12に対し回動自在に、且つ開閉蓋5を開放した状態で係脱可能に構成されている。また、装置ケース3の爪片14はばね性を有し、閉止部15に対しロック・アンロック可能に構成されている。開閉蓋5を閉塞する場合には、一対の掛止め部12に一対のヒンジ片13を掛け止めし、一対の掛止め部12を中心に開閉蓋5を閉塞方向に回動させて、爪片14に閉止部15をロックする。一方、開閉蓋5を開放する場合には、開閉蓋5を開放方向に回動させて閉止部15と爪片14とのロックを解除した後、一対の掛止め部12を中心に開閉蓋5を開放方向に回動させる。また、必要に応じて、開放状態の開閉蓋5を装置ケース3が取り外すようにする。
【0026】
一方、開閉蓋5には、収容した印刷テープTに対応する部分に透光性の小窓17が形成されており、この小窓17を介して、印刷テープTの残量やテープ色等を視認できるようになっている。さらに、開閉蓋5の内側には、後述する回転円板23が回転自在に取り付けられ、また後述する作動突起71が一体に形成されている。
【0027】
図2に示すように、小巻の印刷テープTは、軸心にコア部材がなく、中心部が円形開口となるように、長尺の印刷テープTを単純に巻き締めて構成されている。また、印刷テープTは、裏面に粘着剤を塗着した記録テープTaと、記録テープTaの裏面に貼着した剥離テープTbとで構成されている。記録テープTaは、いわゆる感熱の装飾テープで構成されており、その使い勝手として、これに感熱の印刷を行って印刷済みのテープ片(ラベル)として用いる場合の他、手書きのテープ片として用いる場合を想定している。
【0028】
このように構成された小巻の印刷テープTは、テープ収容部7において、テープ収容部7とこれを閉塞する開閉蓋5とに設けたテープホルダー21に、着脱可能に且つ繰出し可能に保持される。テープホルダー21は、テープ収容部7に固定的に突設したガイド突起22と、開閉蓋5に回転自在に設けた軸突起24付きの回転円板23と、を有している。印刷テープTは、その繰出し端部を上記の繰出し経路10に挿入すると共に、円形開口をガイド突起22に遊嵌するようにして、テープ収容部7に投入される。この状態で開閉蓋5を閉塞すると、円形開口に軸突起24が嵌合すると共に端面が回転円板23に当接し、印刷テープTがセットされる。
【0029】
実施形態のテープ印刷装置1は、図1や図2の状態から表裏反転して用いられるため、セットされた印刷テープTは、実質上、開閉蓋5に回転自在に設けられた回転円板23に保持される。これにより、印刷テープTは、印刷動作等において円滑に繰出されてゆく。なお、回転円板23は、透光性の部材で構成されており、上記の小窓17からの視認性を損なうことはない。また、繰出し経路10において、印刷テープTの繰出し端部は屈曲状態を維持し、外力による繰出し端部の装置内への引き込みが防止されるようになっている(図2参照)。
【0030】
次に、図3ないし図6を参照して、装置ケース3に内蔵されている構成装置4について詳細に説明する。なお、図3ないし図5は、構成装置4をテープ印刷装置1の表側から見た図であり、図6は、構成装置4をテープ印刷装置1の裏側から見た図である。また、図3では、開閉蓋5も併せて表しているが、構成装置4はあくまでも装置ケース3側に内蔵されている。
【0031】
これらの図に示すように、構成装置4は、印刷ヘッド32を有し、印刷テープTに所望の印刷を行う印刷部31と、印刷テープTの印刷済み部分を切断するテープ切断部33、テープ切断部33(後述するカッター作動機構42)の作動をロックおよびロック解除するロック部34と、開閉蓋5の開閉に連動してロック部34および印刷ヘッド32を回動させる蓋連動機構部35(蓋連動機構)と、を備えている。そして、これら印刷部31、テープ切断部33、ロック部34および蓋連動機構部35の主要部分は、装置ケース3に設けた装置フレーム36に支持されている(図3(a)および図6参照)。
【0032】
印刷部31は、サーマルヘッドで構成された印刷ヘッド32と、印刷テープTを挟んで印刷ヘッド32に対峙するプラテン38(プラテンローラー)と、を有している。印刷ヘッド32は、複数の発熱素子を列設したヘッド本体32a(サーマルヘッド)と、ヘッド本体32aを保持するヘットホルダー32bとから成り、ヘットホルダー32bは、後述する回動支軸75に回動自在に支持されている。これにより、印刷ヘッド32は、印刷位置と非印刷位置との間で回動自在に構成されている(詳細は後述する)。プラテン38は、印刷に際し、印刷テープTを挟んで印刷ヘッド32を受けると共に、図外の動力部からの回転動力により回転し、印刷テープTを繰出しながら送る。一方、印刷ヘッド32は、プラテン38による印刷テープTの送りに同期して発熱駆動する。これにより、テープ排出口9から送り出されるようにして送られてゆく印刷テープTに所望の印刷が行われる。なお、手書き用のテープ片を得る場合には、印刷ヘッド32の発熱駆動は行われない。
【0033】
テープ切断部33は、印刷テープTを切断するテープカッター41と、手動操作でテープカッター41を切断動作させるカッター作動機構42と、を備えている。カッター作動機構42は、カッターボタン43(カッター操作子)と、カッターボタン43の押釦動作をテープカッター41のスライド動作(切断動作)に動力変換する作動ギヤ列44(切断力伝達部)と、を有している。
【0034】
カッターボタン43は、装置ケース3から露出する円柱状のボタン本体46と、ボタン本体46を支持する角筒状の支持ガイド部47と、支持ガイド部47の外面に突設したボタン側ラック部48と、で一体に形成されている。支持ガイド部47は、軸方向において装置ケース3にスライド自在に係合し、またカッターボタン43と、装置ケース3に設けたばね受け49との間には、戻しばね50が介設されている(図5参照)。ボタン本体46を押すと、戻しばね50に抗して支持ガイド部47と共にボタン側ラック部48が下動(前進)する。一方、戻しばね49にしたがってボタン本体46の押圧力を弱めると、支持ガイド部47と共にボタン側ラック部48が上動(後退)する。その後、ボタン本体46から指を離すと、支持ガイド部47の上面の一部が装置ケース3に当接し、ボタン本体46が元の位置に復帰する(図5(a)および(b)参照)。
【0035】
作動ギヤ列44は、カッターボタン43に設けた上記のボタン側ラック部48と、ボタン側ラック部48に噛み合うボタン側ピニオン52(ギヤ)と、同軸上においてボタン側ピニオン52に固定された中間ギヤ53と、中間ギヤ53に噛み合うカッター側ピニオン54(ギヤ)と、カッター側ピニオン54に噛み合うと共に後述するカッターホルダー62に設けたカッター側ラック部55と、を有している。ボタン側ピニオン52および中間ギヤ53は、いわゆる欠歯歯車で構成されており、カッターボタン43の押釦動作に伴うボタン側ラック部48の進退動(上下動)を正逆の回転に変換する。中間ギヤ53が正逆の回転すると、カッター側ピニオン54が正逆回転し、カッター側ラック部55を介して、カッターホルダー62を、カッターボタン43の押釦方向に直交する方向にスライド(切断動作)させる(図5(a)および(b)参照)。
【0036】
図5および図6に示すように、テープカッター41は、斜刃で構成されたカッター刃61と、カッター刃61を保持すると共に装置フレーム36および装置ケース3にスライド自在に取り付けられたカッターホルダー62と、カッターホルダー62にスライド自在に取り付けられたテープ押え部材63と、カッターホルダー62とテープ押え部材63との間に介設された押圧ばね64と、カッターホルダー62を切断待機位置に復帰させる復帰ばね65と、を備えている。そして、カッターホルダー62の背面側には、その長手方向に沿って、上記のカッター側ピニオン54に噛み合うカッター側ラック部55が一体に形成されている。
【0037】
カッターボタン43を押釦すると、上記の作動ギヤ列44を介して、カッター刃61がカッターホルダー62と共にスライドする。すなわち、カッターボタン43を押釦すると、カッターホルダー62(カッター刃61)は復帰ばね65に抗して、切断待機位置から切断位置に移動する(切込み動作:図5(b)および図6(a)参照)。一方、カッターボタン43を戻すと、上記の作動ギヤ列44を介して、カッター刃61がカッターホルダー62と共に逆方向にスライドする。すなわち、カッターボタン43を戻すと、カッターホルダー62(カッター刃61)は復帰ばね65により、切断位置から切断待機位置に復帰する(復帰動作:図5(a)および図6(b)参照)。なお、復帰ばね65の一方の掛止め端は、カッターホルダー62に設けてもよいし、テープ押え部材63に設けてもよい。
【0038】
また、切込み動作において、カッターホルダー62に設けたテープ押え部材63は、カッター刃61に先行して前進し、装置ケース3に設けたテープ受け部66との間に印刷テープTを挟み込む(図5参照)。ここで、押圧ばね64を圧縮するようにして、カッターホルダー62が切込み動作を続行し、やがてカッター刃61が印刷テープTを切断する。一方、復帰動作では、復帰ばね65により、カッター刃61(カッターホルダー62)がテープ押え部材63に先行して後退を開始し(押圧ばね64は伸びる)、やがてテープ押え部材63が切断された印刷テープTから離間する。このようにして、印刷テープTの切断動作が実施される。
【0039】
次に、図3ないし図5を参照して、ロック部34および蓋連動機構部35について説明する。蓋連動機構部35は、開閉蓋5の開閉に連動して、印刷ヘッド32を、印刷位置と非印刷位置との間で回動させると同時に、上記のロック部34を、ロック位置とロック解除位置との間で回動させるものである。印刷位置における印刷ヘッド32は、プラテン38との間に印刷テープTを挟み込んで印刷可能状態とし、ロック位置におけるロック部34は、上記のカッター側ピニオン54に係合してカッター作動機構42の作動をロックする。
【0040】
蓋連動機構部35は、開閉蓋5に設けた上記の作動突起71と、開閉蓋5に開閉に伴う作動突起71の係脱により回動する係合ブロック72と、係合ブロック72の回動により連結ばね73を介して回動するリリースレバー74と、リリースレバー74を回動自在に支持する回動支軸75と、リリースレバー74を回動付勢するリリースばね76と、を備えている。係合ブロック72は、三角形の外観を有するブロック本体81と、ブロック本体81の下面(図示では上側となる)に突設したばね掛け部82とで一体に形成されている。ブロック本体81は、ばね掛け部82に対角する隅部で装置ケース3に回動自在に支持されている(図2および図5参照)。また、作動突起71に対峙するブロック本体81の1の辺には、作動突起71が係脱する係合斜面83が形成されている。
【0041】
開閉蓋5の閉塞動作の終期において、作動突起71は係合斜面83に当接し、係合斜面83をスライドしながらこれを押圧する。これにより、係合ブロック72は回動し、ばね掛け部82を介して連結ばね73を伸張方向に引く。一方、開閉蓋5の開放動作の初期において、作動突起71は、係合斜面83をスライドしながら押圧を解くと同時に、連結ばね73が収縮してばね掛け部82を引く(実際には、リリースばね76により、リリースレバー74を介して連結ばね73が引かれる)。これにより、係合ブロック72は逆方向に回動し、元の位置に復帰する。すなわち、開閉蓋5の開閉に連動して、係合ブロック72が確動的に回動する。なお、開閉蓋5が完全に閉塞された状態では、作動突起71と係合ブロック72との接触点が、開閉蓋5のヒンジ(回動中心)と係合ブロック72の回動中心を結ぶ線に対し死点越しており、連結ばね73(リリースばね76)のばね力は、開閉蓋5を引き込む方向に作用している。また、開閉蓋5の開放に伴って、逆方向に死点越えすると、開閉蓋5は、連結ばね73(リリースばね76)により跳ね上げられる。
【0042】
リリースレバー74は、係合ブロック72の位置から印刷ヘッド32に向ってクランク状に延びる金属の板材(板金製)で構成されている。リリースレバー74の先端部85は、印刷ヘッド32を上下に抱くように「コ」字状に折り曲げられており、この部分に印刷ヘッド32が連結されている。また、リリースレバー74は、この先端部85近傍において装置フレーム36に立設した(図示では、垂設された状態)回動支軸75に、印刷ヘッド32と共に回動自在に支持されている。一方、リリースレバー74の基部には、連結ばね73を掛け止めする掛止め孔86が形成されており、連結ばね73は、この掛止め孔86と係合ブロック72のばね掛け部82との間に掛け渡されている。
【0043】
また、リリースレバー74の基部側には、「L」字状の舌片87が突設されており、この舌片87にリリースばね76が掛け止めされている。リリースばね76は、一端を舌片87に掛け止めされ、他端を装置ケース3のばね受け突起88に掛け止めされ(図5参照)、リリースレバー74を図示の時計回りに回動付勢している。なお、連結ばね73とリリースばね76とは、いずれも引張りばねとしてばね力を拮抗させた状態で配設されている。
【0044】
一方、「コ」字状に折り曲げられリリースレバー74の先端部85には、その一部を更に延長するように、上記のロック部34が一体に形成されている。ロック部34は、リリースレバー74から延びるロック部本体91と、ロック部本体91からカッター側ピニオン54に向って直角に延びるロック爪92と、を有している。この場合、回動支軸75に回動自在に支持されたリリースレバー74は、ロック部34を保持するロック部ホルダーを兼ねており、ロック爪92がカッター側ピニオン54の任意の1の歯溝54aに係止(かみ込む)するロック位置と、ロック爪92がカッター側ピニオン54から離脱するロック解除位置との間で、ロック部34を回動自在(実際には、回動支軸75を中心に正逆円運動)に支持している。
【0045】
ロック爪92の先端部は、カッター側ピニオン54の歯溝54aの形状と相補的形状に形成されており、ロック部34を回動によるロック爪92の先端部の移動軌跡は、カッター側ピニオン54の軸心に向っている。この場合、ロック部34とリリースレバー74の先端部85(回動支軸75)との位置関係は、回動支軸75の中心、すなわちロック部34の回動支点とカッター側ピニオン54の軸心とを結ぶ仮想線を底辺とし、ロック位置におけるロック爪92の先端部と歯溝54aとの接触点を頂点とする、扁平な三角形が構成されるものとなっている。これにより、カッターボタン43の押釦により、図示の反時計回りに回転しようとするカッター側ピニオン54に対し、ロック爪92の先端部が歯溝54aに食い込むように作用し、ロック爪92がカッター側ピニオン54により弾かれてしまうのを、有効に防止している。
【0046】
ここで、図3および図5を参照して、開閉蓋5の開閉に伴うロック部34および蓋連動機構部35の動作について説明する。
開閉蓋5が閉塞されている状態では、作動突起71により、係合ブロック72および連結ばね73を介して、リリースレバー74は図示反時計周りの回動端位置に移動している(図3および図5(b)参照)。この状態で、印刷ヘッド32は印刷位置に移動しており、ロック部34は、ロック解除位置に移動している。したがって、印刷部31による印刷が可能であって、テープ切断部33による印刷テープTの切断も可能となっている。
【0047】
この状態から、開閉蓋5を開放すると、係合ブロック72から作動突起71が外れ、リリースばね76により、リリースレバー74は図示時計周りに回動する。このリリースレバー74の回動に伴って、印刷ヘッド32は印刷位置から非印刷位置に移動し、同時にロック部34はロック解除位置からロック位置に移動する(図3および図5(a)参照)。印刷ヘッド32が非印刷位置に移動することにより、印刷テープTの挟持状態が解かれ、印刷テープTの着脱が可能となる。また、ロック部34がロック位置に移動することにより、ロック爪92がカッター側ピニオン54に係合し、カッター作動機構42の作動がロックされる。これにより、カッターボタン43が押釦不能となり、テープカッター41が切断動作不能となる。
【0048】
また、開閉蓋5を閉塞してゆくと、作動突起71が係合ブロック72に係合し、リリースレバー74が図示反時計周り回動する。このリリースレバー74の回動に伴って、印刷ヘッド32は非印刷位置から印刷位置に移動し、同時にロック部34はロック位置からロック解除位置に移動する(図3および図5(b)参照)。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、蓋連動機構部35により、開閉蓋5の開放に連動してロック部34により、カッター作動機構42の作動をロックするようにしているため、開閉蓋5の開放した状態で、テープカッター41を切断動作不能とすることができる。すなわち、開閉蓋5の開放時にテープカッター41を切断動作不能とすることができる。これにより、例えば開閉蓋5を開放したときに、印刷テープTの繰出し経路10に異物等が入り込むことがあっても、テープカッター41の切断動作は不能となるため、テープカッター41(カッター刃61)を損傷する等に事態を回避することができる。また、蓋連動機構部35により、開閉蓋5の開放に連動して印刷ヘッド32を非印刷位置に回動させるようにしているため、蓋連動機構部35がヘッドリリース機構を兼ねる構成とすることができる。これにより、単一の蓋連動機構部35に2つの機能を持たせることができる。
【0050】
なお、本発明は、テープにカッティング処理を行うカッティング装置や、点字打刻処理を行う点字打刻装置等にも適用可能である。一方、印刷テープTは、テープカートリッジに収容した状態でテープ収容部7に着脱する構成であってもよい。また、カッター作動機構42をロック・アンロックする機構と、印刷ヘッド32を回動させる機構とを別々に設けてもよい。さらに、ロック部34をカッター作動機構42のカッター側ピニオン54以外のギヤに係脱させる構成であってもよいし、ロック部34がカッターボタン43をロックさせる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 テープ印刷装置、2 装置本体、3 装置ケース、5 開閉蓋、7 テープ収容部、9 テープ排出部、10 繰出し経路、31 印刷部、32 印刷ヘッド、33 テープ切断部、34 ロック部、35 蓋連動機構部、36 装置フレーム、38 プラテン、41 テープカッター、42 カッター作動機構、43 カッターボタン、44 作動ギヤ列、54 カッター側ピニオン、54a 歯溝、61 カッター刃、62 カッターホルダー、71 作動突起、72 カムブロック、73 連結ばね、74 リリースレバー、75 回転支軸、76 リリースばね、85 先端部、91 ロック部本体、92 ロック爪、T 印刷テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理テープが着脱自在に収容されるテープ収容部と、
前記テープ収容部を開閉する開閉蓋と、
前記テープ収容部に連なる前記処理テープの繰出し経路に配設され、繰出された前記処理テープを切断するテープカッターと、
前記開閉蓋の開放に連動して前記テープカッターの作動をロックさせ、閉塞に連動して前記テープカッターの作動をロック解除させる蓋連動機構と、を備えたことを特徴とするテープ処理装置。
【請求項2】
前記テープカッターを切断動作させるためのカッター操作子、および前記カッター操作子に加えた力を前記テープカッターに伝達する切断力伝達部を有するカッター作動機構を、更に備え、
前記蓋連動機構は、前記開閉蓋の開放に連動して前記カッター作動機構をロックさせ、閉塞に連動して前記カッター作動機構をロック解除させることを特徴とする請求項1に記載のテープ処理装置。
【請求項3】
前記蓋連動機構に連結され、前記カッター作動機構の作動をロックおよびロック解除するロック部を、更に備え、
前記切断力伝達部は、ギヤ列を有し、
前記ロック部は、前記ギヤ列における1のギヤの歯溝に対し、ロック位置とロック解除位置との間で係脱するロック爪を有していることを特徴とする請求項2に記載のテープ処理装置。
【請求項4】
前記蓋連動機構は、前記ロック部を保持すると共に、支点を中心に回動して前記ロック爪を前記歯溝に対し係脱させるロック部ホルダーを有していることを特徴とする請求項3に記載のテープ処理装置。
【請求項5】
前記ロック部ホルダーの支点と前記1のギヤの支軸とを結ぶ仮想線を底辺とし、前記ロック位置における前記ロック爪と前記歯溝との接触点を頂点とする三角形が、扁平な三角形となるように、前記ロック爪および前記ロック部ホルダーが配設されていることを特徴とする請求項4に記載のテープ処理装置。
【請求項6】
前記処理テープに印刷処理を行う印刷ヘッドと、
前記開閉蓋の開閉に連動し、前記印刷ヘッドを前記処理テープに接触する印刷位置と前記処理テープから離間する非印刷位置との間で離接動作させるリリースレバーを有するヘッドリリース機構と、を備え、
前記ヘッドリリース機構が前記蓋連動機構を兼ねると共に、前記リリースレバーが前記ロック部ホルダーを兼ねていることを特徴とする請求項4または5に記載のテープ処理装置。
【請求項7】
処理テープが着脱自在に収容されるテープ収容部と、前記テープ収容部を開閉する開閉蓋と、前記テープ収容部に連なる前記処理テープの繰出し経路に配設され、繰出された前記処理テープを切断するテープカッターと、前記テープカッターの作動をロック・アンロックするロック部と、を備えたテープ処理装置のテープカッターロック方法であって、
前記開閉蓋の開放に連動して前記テープカッターの作動をロックし、閉塞に連動して前記テープカッターの作動をロック解除することを特徴とするテープカッターロック方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111715(P2013−111715A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261221(P2011−261221)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】