説明

テープ印刷装置およびテープ印刷装置の制御方法

【課題】簡単な算出方法で正確な印刷完了までの時間を示す情報を生成することのできるテープ印刷装置およびテープ印刷装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】テープ状部材を搬送しながら印刷を実行するテープ印刷装置1であって、電源と、電源の電源電圧値を取得する電源電圧値取得部94と、取得した電源電圧値に応じたテープ状部材の搬送スピードを決定する搬送スピード決定部96と、搬送スピードおよびテープ状部材に印刷する印刷情報から、印刷完了までの時間を示す情報である印刷時間情報を生成する印刷時間情報生成部(印刷残り時間算出部97および表示データ生成部100)と、印刷時間情報を表示する表示部101と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷完了までの時間を示す情報を表示部に表示するテープ印刷装置およびテープ印刷装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンターとして、印刷実行中に、当該印刷に要する残り時間を表示部に表示するものが知られている(特許文献1参照)。このプリンターは、プリンターに接続されたPC(プリンタードライバー)から、印刷対象となる印刷データの識別子、識別コード、印刷枚数、画質、およびその他の印刷条件を示す印刷設定情報とこれに基づいた印刷データとを受信して印刷を行う。そして、プリンターのRAMのタスクリストに蓄積された印刷設定情報から、印刷時間を算出して表示する。これにより、ユーザーは印刷に要する残り時間を確認することができ、印刷作業終了の見通しを立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−118104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、テープ印刷装置において、電源として電池を使用した場合、電池の残量が減少すると、電源電圧の低下に伴ってテープ印刷装置の印刷スピードも低下することがある。印刷スピードの低下は、印刷時間の延長をもたらす。よって、テープ印刷装置に上記のプリンターの手法を適用して印刷時間を算出した場合、ユーザーに提示した印刷時間と、実際の印刷に要する時間と、の間に差が出てしまうという問題がある。また、上記のプリンターによれば、印刷設定情報から印刷時間を算出するため、印刷設定の項目が多数あるなど印刷設定が複雑な場合、印刷時間の算出処理が複雑になる。よって、容量の小さいCPUを搭載したテープ印刷装置では処理負荷が大きくなり、印刷時間の算出に時間がかかる虞がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、簡単な算出方法で正確な印刷完了までの時間を示す情報を生成することのできるテープ印刷装置およびテープ印刷装置の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープ印刷は、テープ状部材を搬送しながら印刷を実行するテープ印刷装置であって、電源と、電源の電源電圧値を取得する電源電圧値取得部と、取得した電源電圧値に応じたテープ状部材の搬送スピードを決定する搬送スピード決定部と、搬送スピードおよびテープ状部材に印刷する印刷情報から、印刷完了までの時間を示す情報である印刷時間情報を生成する印刷時間情報生成部と、印刷時間情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のテープ印刷装置の制御方法は、テープ状部材を搬送しながら印刷を実行するテープ印刷装置の制御方法であって、テープ印刷装置が、電源の電源電圧値を取得する電圧値取得ステップと、取得した電源電圧値に応じたテープ状部材の搬送スピードを決定する搬送スピード決定ステップと、搬送スピードおよびテープ状部材に印刷する印刷情報から、印刷完了までの時間を示す情報である印刷時間情報を生成する印刷時間情報生成ステップと、印刷時間情報を表示する表示ステップと、を実行することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、テープ状部材に印刷する印刷情報とテープ状部材の搬送スピードとに基づいて印刷完了までの時間を算出するため、簡単な算出方法で印刷時間情報を生成することができる。よって、容量の小さいCPUを搭載したテープ印刷装置であっても、時間を要することなく印刷時間情報を生成することができる。また、電源の電源電圧値に応じた搬送スピードに基づいて、印刷時間情報を生成するため、現在の電源の状態を反映した正確な印刷完了までの時間を示す印刷時間情報を生成することができる。
【0009】
この場合、印刷情報のうち、未印刷の印刷情報の印刷に要するテープ状部材のテープ長を算出するテープ長算出部をさらに備え、印刷時間情報生成部は、搬送スピードおよびテープ長から印刷時間情報を生成することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、算出した印刷に要するテープ長とテープ状部材の搬送スピードから印刷完了までの時間を算出するため、簡単な算出方法で印刷時間情報を生成することができる。また、未印刷の印刷情報に要するテープ長を算出するため、印刷の途中であっても、印刷が完了するまでの時間を正確に示す印印刷時間情報を生成することができる。
【0011】
この場合、所定の電源電圧値に応じた標準搬送スピードを記憶した標準搬送スピード記憶部をさらに備え、印刷時間情報性生成部は、さらに、標準搬送スピードおよび印刷情報から標準印刷時間情報を生成し、表示部は、さらに、標準印刷時間情報を表示することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、使用中の電源による印刷完了までの時間と、標準の印刷完了までの時間との差をユーザーに提示することができる。例えば、電源として電池を使用している場合、標準搬送スピードを未使用の電池の電源電圧値に応じたものとすれば、使用中の電池による印刷時間が、未使用の電池による印刷時間に比べてどれだけが余分にかかるかを提示することができる。
【0013】
さらに、標準搬送スピード記憶部は、電源の種類ごとに所定の電源電圧値に応じた標準搬送スピードを記憶し、電源の種類を判別する電源判別部をさらに備え、表示部は、電源判別部の判別結果と異なる電源の種類の標準搬送スピードおよび印刷情報から生成された標準印刷時間情報を表示することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、使用中の電源による印刷完了までの時間と、使用中のものと異なる種類の電源による印刷完了までの時間と、の差をユーザーに提示することができる。例えば、電源に電池を使用している場合、標準搬送スピードを電源電圧値が一定である商用電源に応じたものとすれば、使用中の電池による印刷時間が、商用電源による印刷時間に比べてどれだけが余分にかかるかを提示することができる。
【0015】
これらの場合、印刷時間情報が示す印刷完了までの時間と、標準印刷時間情報が示す印刷完了までの時間と、の時間差が所定時間を越えるか否かを判定する時間差判定部をさらに備え、表示部は、時間差が所定時間を超えると判定された場合に、電源の交換を促すメッセージを表示することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、直接的に使用中の電源の交換を訴えるため、より効率的な印刷作業を促すことができる。
【0017】
上記のテープ印刷装置において、印刷時間情報は、印刷完了までの時間を絶対時間で表した情報であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、正確な印刷完了までの時間をユーザーに提示することができる。なお、印刷完了までの絶対時間を表す情報として、当該絶対時間を分単位および秒単位の両方、またはいずれかで表示することが望ましい。
【0019】
上記のテープ印刷装置において、印刷時間情報は、印刷の全所要時間に対する印刷完了までの時間の割合を示す情報であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ユーザーは、印刷完了までの時間を直感的に把握することができる。なお、印刷の全所要時間に対する経過時間の割合を示す情報として、プログレスバーや数値によるパーセンテージを表示することが望ましい。
【0021】
上記のテープ印刷装置において、印刷済みの前記テープ状部材をカットするテープカッターをさらに備え、印刷完了までの時間には、テープ状部材のカット時間を含むことが好ましい。
【0022】
この構成によれば、印刷済みのテープ状部材がカットされてラベルが作成されるまでの時間を印刷完了までの時間とするため、実際にユーザーがラベルを手にできるまでの時間を提示することができる。
【0023】
上記のテープ印刷装置において、印刷情報が、複数枚のラベルを印刷する連続印刷を行うための情報である場合、印刷時間情報は、複数枚のラベル全ての印刷が完了するまでの時間を示す情報であることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、単一のラベルを印刷する通常の印刷に対して印刷枚数が多く、一般的に印刷に時間のかかる連続印刷において、当該連続印刷が完了するまでの時間をユーザーに提示することができるため、利便性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかるテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】テープの搬送スピードを示した図である。
【図3】テープ印刷装置の制御構成を示したブロック図である。
【図4】テープ印刷装置の機能構成を示したブロック図である。
【図5】印刷済みのテープを示した図である。
【図6】電源として商用電源を使用した場合の印刷残り時間を示す表示画面の表示例である。
【図7】電源として電池を使用した場合の印刷残り時間を示す表示画面の表示例である。
【図8】表示ボタンの押下による表示処理を示すフローチャートである。
【図9】電源として商用電源を使用している場合の印刷中の表示処理を示すフローチャートである。
【図10】電源として電池を使用している場合の印刷中の表示処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。本発明のテープ印刷装置は、使用中の電源の電源電圧値に基づいて印刷が完了するまでの時間(以下、「印刷残り時間」と称する)を算出し、算出した印刷残り時間を表示画面に表示する。さらに、使用中もの以外の電源を使用した場合の印刷が完了するまでの時間(以下、「標準印刷残り時間」と称する)をあわせて表示画面に表示する。
【0027】
図1は、本実施形態に係るテープ印刷装置1の開閉蓋21を開いた状態の外観斜視図である。図示のようにテープ印刷装置1は、装置ケース2により外郭が形成され、装置ケース2の前部上面には各種入力キーを備えたキーボード3が配置されると共に、後部上面には、その左部に開閉蓋21が取り付けられ、その右部には表示画面41が配設されている。また、テープ印刷装置1は、装置の裏面に、電源として使用する電池を複数収容する電池収容部42が、装置の左側部に、商用電源から電源を供給するためのACアダプターを差し込む差込口43と、を備えている。すなわち、本テープ印刷装置1は、電源として電池および商用電源のいずれかを使用することができる。
【0028】
開閉蓋21の内側にはテープカートリッジCを装着するためのカートリッジ装着部6が窪入形成されており、テープカートリッジCは、開閉蓋21を開放した状態でカートリッジ装着部6に着脱可能に装着される。また、開閉蓋21にはこれを閉じた状態でテープカートリッジCの装着/非装着を視認するための覗き窓21aが形成されている。
【0029】
キーボード3には、文字キー群3a、および各種動作モード等を指定するための機能キー群3bが配列されている。文字キー群3aは、JIS配列に基づいたフルキー構成であり、操作するキー数の増加を抑えるためのシフトキーを備えるなど、一般のワードプロセッサー等と同様である。また、機能キー群3bには、[カーソル]キー、[選択]キー、[削除]キー、[印刷]キー71、[連続]キー、[書式設定]キー、および[環境設定]キーなどが含まれる。また、本実施形態では、表示画面41の前方に、印刷残り時間を表示画面41に表示させるための[時間表示]キー72が配設されている。
【0030】
[カーソル]キーは、上下左右キー([↑],[↓],[←],[→])から成り、カーソル移動やスクロール操作を行うためのキーである。当該、[カーソル]キーの他、[選択]キーや[削除]キーは、情報入力時および各種設定時に用いられるキーである。[印刷]キー71は、印刷の実行を指示するためのキーである。
【0031】
[連続]キーは、同一のラベルを、複数枚印刷する連続印刷を行うためのキーである。本実施形態では、当該[連続]キーの押下により、連続印刷の設定を行い得るようになっている。なお、[連続]キーの押下により、数字等の部分だけが異なる複数のラベルを連続して印刷する連番印刷の設定を行う構成としてもよい。
【0032】
[書式設定]キーは、印刷データ(印刷情報)の編集に関する各種設定を行うためのキーである。本実施形態では、当該[書式設定]キーの押下により、余白設定を行い得るようになっている。余白設定とは、作成する単一のラベルの両端に設ける余白の長さを決めるものである。すなわち、作成されるラベルは、ユーザーの入力に基づく印刷データと、当該印刷データのテープ長方向両端に設けられる余白と、を合わせた長さとなる(図5参照)。
【0033】
[環境設定]キーは、各種環境設定を行うためのキーである。本実施形態では、当該[環境設定]キーの押下により、カット設定を行い得るようになっている。このカット設定では、ラベルの後端を自動カットする「自動カットあり」と、ラベルの後端を自動カットしない「自動カットなし」のいずれかを選択できるようになっている。
【0034】
なお、[連続]キーによる連続印刷の設定、[書式設定]キーによる余白設定、および[環境設定]キーによるカット設定を、以下の説明において「印刷設定」と総称する。また、請求項における「印刷情報」とは、ユーザーがキーボード3を用いて入力する所望のテキスト(文字、数字、記号、簡易図形等のキャラクター)や画像を印刷するための印刷データの他、上記の印刷設定の設定値を指す。
【0035】
[時間表示]キー72は、印刷データの印刷に要する印刷残り時間を表示画面41に表示させるためのキーである。本実施形態では、印刷データの印刷を開始する前に、ユーザーが当該印刷データの印刷に要する印刷残り時間を確認するために用いられる。
【0036】
表示画面41は、液晶ディスプレーであり、ユーザーが入力した入力情報に基づく編集結果、および当該編集結果に基づいて生成された印刷データ等を確認する際に用いられる。また、本実施形態では、印刷開始前には[時間表示]キー72の押下によって印刷残り時間を表示し、印刷中には自動的に印刷残り時間を表示する(図6参照)。また、使用中の電源の電源電圧値に基づく印刷残り時間と、その他の電源の電源電圧値に基づく標準印刷残り時間との差が、所定時間を越えると、電源の交換を促すメッセージMを表示する(図7参照)。いずれも、詳しくは後述する。
【0037】
装置ケース2の左側部には、カートリッジ装着部6と外部とを連通するテープ排出口22が形成され、このテープ排出口22には、不図示のテープ搬送機構により送り出したテープTを切断するためのテープカッター23が臨んでいる。そして、テープ排出口22から印刷済みのテープT(テープ状部材)が所定長さだけ送り出され、送りを一旦停止させた状態で、この印刷済みのテープTがテープカッター23により切断されて、短冊状のラベルを作成する。
【0038】
一方、カートリッジ装着部6には、ヘッドカバー61a内にサーマルタイプの印刷ヘッド7が内蔵されたヘッドユニット61と、印刷ヘッド7に対峙するプラテン駆動軸62と、後述のインクリボンRを巻き取る巻き取り駆動軸63と、後述のテープリール17の位置決め突起64とを備えている。また、カートリッジ装着部6の下側には、テープ搬送機構となるプラテン駆動軸62および巻き取り駆動軸63を回転させるテープ送りモーター26(図3参照)が内蔵されている。
【0039】
テープ送りモーター26は、印刷に供するテープTのテープ幅と、使用中の電源の電源電圧値とに応じて、搬送スピードVを可変する。図2は、テープ送りモーター26の搬送スピードを示している。図2に示すように、電源として商用電源を使用した場合、供給される電力が一定であるために電源電圧値も一定であり、搬送スピードは、テープ幅によってのみ可変される。一方、電源として電池を使用した場合、電池残量の減少に伴って供給される電力も低下するため、電源電圧値も低下する。よって、搬送スピードも、電源電圧値に応じて低下する。本実施形態のテープ印刷装置1は、テープ幅が24mm以下の場合、電源電圧値が6.0V以下に低下すると搬送スピードが10〜15mm/secから6mm/secに低下する。
【0040】
また、テープ送りモーター26は、印刷データに基づいて決定されるテープTの印刷を伴う印刷領域A1と、余白等に対応する印刷を伴わないカラ送り領域A2とでテープTを送る搬送スピードVを可変する。本実施形態では、初めの印刷ドットを有する行〜最後の印刷ドットを有する行までの領域を印刷領域A1とし、印刷領域A1のテープ長方向前後に設けられた余白部分をカラ送り領域A2とする(図5参照)。なお、キャラクター間(図5では「A」および「B」の間のドット無し行をカラ送り領域A2と定義してもよい。
【0041】
テープ送りモーター26の印刷領域A1における搬送スピードV1とカラ送り領域A2における搬送スピードV2の関係は、V1<V2とする。つまり、印刷を伴わない場合は印刷時よりも搬送スピードを早くするため、印刷残り時間を短縮することができる。なお、図2に記載の搬送スピードは、それぞれのテープ幅および電源電圧値における搬送スピードV1を示している。
【0042】
テープカートリッジCは、カートリッジケース51内部の上部中央部に、一定の幅(4mm〜48mm程度)のテープTを巻回したテープリール17と、右下部にインクリボンRを巻回したリボンリール19とを収容して構成されており、テープTとインクリボンRは同じ幅で構成されている。また、テープリール17の左下部には前記ヘッドユニット61を覆うヘッドカバー61aが差し込まれるための貫通孔55が形成されている。さらに、貫通孔55に差し込まれたヘッドユニット61と、プラテン駆動軸62に嵌合されて回転駆動するプラテンローラー53とは、テープTとインクリボンRとが重なる部分に対応して配置されている。一方、リボンリール19に近接してリボン巻き取りリール54が配置され、リボンリール19から繰り出されたインクリボンRは、ヘッドカバー61aを周回するように、リボン巻き取りリール54に巻き取られるようになっている。つまり、貫通孔55の周壁のリボン走行路を経由して、リボン巻き取りリール54に巻き取られるようになっている。
【0043】
テープカートリッジCがカートリッジ装着部6に装着されると、ヘッドカバー61aに貫通孔55が、位置決め突起64にテープリール17の中心孔が、巻き取り駆動軸63にリボン巻き取りリール54の中心孔がそれぞれ差し込まれ、テープTおよびインクリボンRを挟み込んで印刷ヘッド7がプラテンローラー53に当接して印刷が可能になる。その後、ユーザーが表示画面41の編集結果を確認しながらキーボード3により所望のテキスト(文字、数字、記号、簡易図形等のキャラクター)や画像を入力し、[印刷]キー71の押下によって印刷が指示されると、テープ印刷装置1は、テープ送りモーター26によりテープカートリッジCからテープTを印刷開始位置まで搬送スピードV2で繰り出し、その後搬送スピードV1でテープTを繰り出しながら印刷ヘッド7の発熱素子を選択的に発熱させる印字動作によりテープTに所望の印刷を行う。テープTの印刷済み部分はテープ排出口22から随時外部に送り出され、印刷を完了すると、テープ送りモーター26により、余白分を含むテープ長さの位置まで搬送スピードV2でテープTの送りを行い停止する。その後、カット設定が「自動カットあり」に設定されている場合、カッターモーター25(図3参照)により、テープカッター23を駆動し、テープTをその幅方向に切断する。一方、「自動カットなし」に設定されている場合は、テープTの送り停止後の切断処理が省略される。
【0044】
一方、テープTは、裏面に粘着剤層が形成された記録テープTaと、この粘着剤層により記録テープTaに貼り付けられた剥離テープTbとから構成されている。そして、テープTは、記録テープTaを外側にし、且つ剥離テープTbを内側にしてロール状に巻回されてカートリッジケース51内に収容されている。また、テープTは、テープ種別(テープ幅、テープの地色、地模様、材質など)が異なる複数種のものが用意されており、各カートリッジケース51には、このうち1種類のテープT(およびインクリボンR)が収容されている。また、カートリッジケース51の裏面にはテープカートリッジCの種別を特定する複数の孔(図示省略)が設けられている。また、複数の孔に対応してカートリッジ装着部6には、これらを検出するテープ識別センサー(マイクロスイッチ等)27(図3参照)が、複数設けられており、このテープ識別センサー27により複数の孔の状態を検出することで、テープ種別を判別できるようになっている。
【0045】
次に、図3の制御ブロック図を参照し、テープ印刷装置1の制御構成について説明する。テープ印刷装置1は、CPU(Central Processing Unit)81、RAM(Random Access Memory)82、ROM(Read Only Memory)83、表示画面41、キーボード3、カッターモーター25、テープカッター23、テープ送りモーター26、印刷ヘッド7およびテープ識別センサー27、および電源部28を備え、各構成要素は、バス85を介して接続されている。
【0046】
CPU81は、中央処理装置である。RAM82は、CPU81と直接接続されており、CPU81が各種制御を行う際のワークエリアとして用いられる。ROM83は、CPU81が各種制御を行うための制御プログラムおよび制御情報を記憶している。制御プログラムとしては、具体的に、印刷残り時間を算出する制御プログラム、表示画面41の表示制御を行うための表示制御プログラム、および印刷処理を行うための印刷処理プログラム等を記憶している(図示省略)。また、制御情報としては、テープTを送る複数の搬送スピードV等を記憶している。
【0047】
表示画面41は、編集結果や印刷レイアウトを表示する。キーボード3は、ユーザーが情報を入力するため、編集処理を行うため、各種設定を行うため、などに用いられる。
【0048】
電源部28は、電池および外部の商用電源(AC(Alternating Current)電源)から、テープ印刷装置1を構成する各部(各部を構成するデバイス)に電力を供給する。なお、電源部28は、商用電源から電力を供給する場合、ACアダプターを介して電力を供給する。
【0049】
カッターモーター25は、テープカッター23と接続され印刷済みのテープTを切断する。テープ送りモーター26および印刷ヘッド7は、テープTを搬送しながら当該テープT上に印刷を行う。また、上記のとおり、印刷ヘッド7およびテープ識別センサー27は、カートリッジ装着部6に設けられ、テープ識別センサー27は、テープカートリッジCに収容されたテープTの種別を検出する。CPU81は、このテープ識別センサー27の検出結果に基づいて(テープ材質やテープ幅等に基づいて)、テキストとして入力可能な行数および文字数の制限、切断可能か否かの判別、などを行う。そして、印刷指示に応じて、印刷ヘッド7、カッターモーター25、テープ送りモーター26の駆動制御(印刷/切断制御)を行う。
【0050】
次に、図4の機能ブロック図を参照し、テープ印刷装置1の機能構成について説明する。図示のようにテープ印刷装置1は、テープ幅取得部91、印刷データ生成部92、テープ長算出部93、電源部28、電源電圧値取得部94、搬送スピード記憶部95(標準搬送スピード記憶部)、搬送スピード決定部96、印刷残り時間算出部97、電源判別部98、時間差判定部99、表示データ生成部100、表示部101、およびラベル作成部102を備えている。
【0051】
テープ幅取得部91は、テープ識別センサー27により構成され、印刷に供するテープTの幅を取得する。印刷データ生成部92は、キーボード3やCPU81により主に構成され、ユーザーの操作に基づいてテープTに印刷する印刷データを生成する。テープ長算出部93は、CPU81によって主に構成され、取得したテープTのテープ幅と生成した印刷データに基づいて、当該印刷データの印刷に要するテープ長を算出する。なお、テープ長は、所定のプログラムに基づいて、フォント、文字サイズ等の書式設定を考慮して算出される。
【0052】
電源電圧値取得部94は、電源部28から供給される電源の電源電圧値を取得する。搬送スピード記憶部95は、ROM83により構成され、テープ幅および電源の電源電圧値に応じた搬送スピードVを記憶している(図2参照)。搬送スピード決定部96は、テープ幅および電源電圧値に応じて搬送スピードVを決定する。印刷残り時間算出部97は、算出したテープ長および決定した搬送スピードVから印刷残り時間を算出する(算出方法については、後述する)。なお、商用電源および未使用の電池(電源電圧値が8.0〜11.0V)に応じた搬送スピードVが本願の標準搬送スピードに相当する。後述の電源判別部98により、使用中の電源が電池であると判別された場合には、商用電源および未使用の電池(電源電圧値が8.0〜11.0V)に応じた搬送スピードV(標準搬送スピード)および算出したテープ長から標準印刷残り時間を算出する。なお、電源電圧値取得部94、搬送スピード決定部96、および印刷残り時間算出部97は、いずれも主にCPU81により構成される。
【0053】
電源判別部98は、現在使用中の電源が電池であるか商用電源であるのかを判別する。時間差判定部99は、電源判別部98により現在使用中の電源が電池であると判別された場合に、算出した印刷残り時間と標準印刷残り時間との時間差が所定時間を越えるか否かを判定する。本実施形態では、当該所定時間を15秒とする(図8および図10参照)。なお、電源判別部98、および時間差判定部99は、いずれも主にCPU81により構成される。
【0054】
表示データ生成部100は、主にCPU81により構成され、算出した印刷残り時間、標準印刷残り時間、および時間差判定部99の判定結果に基づいて表示画面41に表示する表示データを生成する。なお、請求項における「印刷時間情報」とは、この表示データを指す。表示部101は、表示画面41により構成され、生成された表示データを表示する。ラベル作成部102は、テープ送りモーター26、印刷ヘッド7、カッターモーター25、およびテープカッター23により構成され、生成された印刷情報および決定された搬送スピードVに基づいて印刷を実行し、ラベルを発行する。なお、請求項における「印刷時間情報生成部」とは、印刷残り時間算出部97および表示データ生成部100を指す。
【0055】
次に、図5を参照し、印刷残り時間の算出方法について説明する。同図は、ユーザーにより編集された印刷データおよび設定された印刷設定に基づいて印刷されるテープTの印刷イメージを示している。同図(a)に示すように、ユーザーにより編集された印刷データが「ABC」であり、印刷設定が「連続印刷なし」,「余白Xmm」,および「自動カットあり」である場合、テープTには、印刷データが印刷される印刷領域A1と、印刷領域A1のテープ長方向前後に余白のカラ送り領域A2が設定される。なお、印刷中の印刷残り時間の算出においては、未印刷部分の印刷データに基づいた印刷領域A1、未印刷部分の余白に対応するカラ送り領域A2が設定される。なお、未印刷部分の余白に対応するカラ送り領域A2とは、印刷前に設定されたカラ送り領域A2のうち、印刷ヘッド7を通過していない部分を指す。
【0056】
先ず、CPU81は、印刷されるテープTのテープ長Lを算出する。具体的には、印刷データ「ABC」に基づいて印刷領域A1におけるテープ長L1を算出し、カラ送り領域A2のテープ長L2である余白分のXmmを加えてテープ長Lを算出する。すなわち、テープ長Lは、L1+2×L2となる。
【0057】
続いて、テープ長LとテープTの搬送スピードVから印刷残り時間を算出する。具体的には、印刷領域A1における印刷残り時間の算出とカラ送り領域A2における印刷残り時間の算出とを別々に行う。すなわち、印刷領域A1における印刷残り時間は、L1/V1となり、カラ送り領域A2における印刷残り時間は、L2/V2となる。そして、全領域における印刷残り時間はこれらの和であり、(L1/V1)+2(L2/V2)となる。さらに、テープカッター23を駆動によってテープTをカットするカット時間tを加えて、全印刷動作に要する印刷残り時間は、(L1/V1)+2(L2/V2)+tとなる。なお、「自動カットなし」と設定されていた場合は、カット時間tを加える必要はない。
【0058】
図5(b)に示すように、例えば、印刷設定において「連続印刷3枚」と設定されていた場合、全印刷動作に要する印刷残り時間は、{(L1/V1)+2(L2/V2)+t}×3となる。すなわち、単一のラベルに対して上記の算出方法で印刷残り時間を算出し、当該印刷残り時間に枚数を掛けることによって連続印刷の印刷残り時間を算出する。なお、標準印刷残り時間についても、上記の方法で算出するものとする。
【0059】
次に、図6および図7を参照し、表示画面41に算出した印刷残り時間を表示する表示例について説明する。図6は、電源として商用電源を使用した場合の表示例を示している。本印刷では、印刷に供するテープTのテープ幅は4mmであり、テープ長60mmのラベルを5枚作成(連続印刷)するものとする。よって、テープTの搬送スピードVは、25mm/secとなる(図2参照)。また、カット設定は、「自動カットあり」となっており、1回のカット動作に要するカット時間は0.6秒とする。
【0060】
図6(a)は、印刷開始前に[時間表示]キー72の押下によって表示された表示画面41の表示例である。本表示画面41には、これらから実行される印刷の全所要時間が表示される。本印刷では、25mm/secの搬送スピードVで、テープ長60mmのラベルを5枚作成するため、カット時間を含め、印刷残り時間は、T1=5(60/25+0.6)から算出することができ、15秒となる。図中では、現在入力されている印刷データおよび印刷設定に基づいて算出された印刷残り時間を、秒単位の絶対時間(15秒)で表示している。
【0061】
図6(b)は、印刷の実行中に表示された表示画面41の3つの表示例である。本表示画面41には、実行中の印刷における印刷残り時間を示す画面が表示される。本表示例は、5枚中3枚のラベルの印刷が完了した時点でのものである。よって、この時点での印刷残り時間は、T1=2(60/25+0.6)から算出することができ、6秒となる。図中の[例1]は、算出された残りの印刷残り時間を、秒単位の絶対時間(6秒)で表示している。図中の[例2]は、印刷の全所要時間に対する印刷残り時間の割合をプログレスバーで表現している。図中の[例3]は、印刷の全所要時間に対する印刷完了時間の割合を数値(60%)で表示している。なお、印刷完了時間は、印刷の全所要時間から印刷残り時間を除いて算出することができる。このように、本表示画面41には、実行中の印刷における印刷残り時間が、全所要時間に対して絶対的または相対的に表示され、ユーザーは、この画面により実行中の印刷の進行状況を確認することが出来る。なお、印刷経過により変化する印刷残り時間に伴って、表示画面41の表示は変化する。
【0062】
図7は、電源として電池(電源電圧値:6.0V以下)を使用した場合の表示例を示している。本印刷も、図6に示した印刷と同様に、印刷に供するテープTのテープ幅は4mmであり、テープ長60mmのラベルを5枚作成(連続印刷)するものとする。よって、本印刷のテープTの搬送スピードVは、6mm/secとなる(図2参照)。また、カット設定も、同様に「自動カットあり」となっており、1回のカット動作に要するカット時間は0.6秒とする。
【0063】
図7(a)は、印刷開始前に[時間表示]キー72の押下によって表示された表示画面41の表示例である。本印刷では、6mm/secの搬送スピードVで、テープ長60mmのラベルを5枚作成するため、カット時間を含め、印刷残り時間は、T1=5(60/6+0.6)から算出することができ、53秒となる。図中では、算出された印刷残り時間を、秒単位の絶対時間(53秒)で表示している。そして、電源として電池を使用している場合、未使用の電池(電源電圧値:8.0〜11.0V)および商用電源による標準印刷残り時間が、さらに表示画面41に表示される。本印刷では、未使用の電池(電源電圧値が8.0〜11.0V)を使用した場合、テープTの搬送スピードV(標準搬送スピード)は15mm/secとなり、標準印刷残り時間は、T2=5(60/15+0.6)から算出することができ、23秒となる。一方、商用電源を使用した場合、テープTの搬送スピードV(標準搬送スピード)は25mm/secとなり、標準印刷残り時間は、T3=5(60/25+0.6)から算出することができ、15秒となる。また、本実施形態では、現在使用中の電源による印刷残り時間T1と、その他の電源による標準印刷残り時間T2,T3のいずれか少なくとも一方と、の時間差が15秒以上になると、電源の交換を促すメッセージMを表示する。図中では、印刷残り時間T1と標準印刷残り時間T2,T3との時間差がいずれも15秒以上であるため、メッセージMが表示されている。
【0064】
図7(b)は、印刷の実行中に表示された表示画面41の表示例である。本表示例は、5枚中3枚のラベルの印刷が完了した時点でのものであり、この時点での印刷残り時間は、T1=2(60/6+0.6)から算出することができ、21.2秒となる。図中では、算出された印刷残り時間を、絶対時間(21.2秒)で表示している。そして、この時点で、未使用の電池(電源電圧値が8.0〜11.0V)を使用した場合、標準印刷残り時間は、T2=2(60/15+0.6)から算出することができ、9.2秒となる。一方、商用電源を使用した場合、テープTの搬送スピードV(標準搬送スピード)は25mm/secとなり、標準印刷残り時間は、T3=2(60/25+0.6)から算出することができ、6秒となる。図中では、あわせて標準印刷残り時間T2,T3が表示され、使用中の電池による印刷残り時間T1と標準印刷残り時間T3との時間差が15秒以上であるため、電源の交換を促すメッセージMが表示されている。
【0065】
次に、図8を参照し、[時間表示]キー72の押下による表示画面41の表示に関するテープ印刷装置1の制御方法について説明する。テープ印刷装置1は、[時間表示]キー72の押下信号を受信すると(S01)、印刷に供するテープTのテープ幅を取得して(S02)、取得したテープ幅、印刷データおよび印刷設定から上記した算出方法でテープ長Lを算出する(S03)。また、使用中の電源の電源電圧値を取得し(S04)、取得した電源電圧値に応じたテープTの搬送スピードVを決定する(S05)。そして、決定した搬送スピードVおよび算出したテープ長Lから上記した算出方法で単位印刷残り時間を算出する(S06)。当該印刷が連続印刷であった場合(S07:Yes)、算出した印刷残り時間に枚数を掛けて印刷残り時間T1を算出する(S08)。一方、当該印刷が単一のラベルを作成する通常の印刷であった場合(S07:No)、算出した単位印刷残り時間を印刷残り時間T1とする。
【0066】
続いて、使用している電源の種類を判別する(S09)。使用中の電源が商用電源であった場合(S09:商用電源)、算出した印刷残り時間T1に基づいて表示画面41に表示するための表示データを生成し(S10)、生成した表示データを表示画面41に表示する(S11)。
【0067】
一方、使用中の電源が電池であった場合(S09:電池)、さらに、商用電源および未使用の電池(電源電圧値が8.0〜11.0V)に応じた標準印刷残り時間T2,T3を算出する(S12)。そして、算出した印刷残り時間T1および標準印刷残り時間T2,T3に基づいて表示データを生成する(S13)。そして、T2−T1およびT3−T1のうちの少なくとも一方が所定時間(15秒)を超えた場合(S14:Yes)、生成した表示データに電源の交換を促すメッセージMを付加して(S15)、表示データを表示する(S16)。一方、T2−T1およびT3−T1のいずれも所定時間を超えなかった場合(S14:No)、生成した表示データをそのまま表示する。
【0068】
次に、図9を参照し、印刷実行中の表示画面41の表示に関するテープ印刷装置1の制御方法について説明する。なお、本処理では、図8におけるS02〜S16の処理と同じ過程を経る処理を「初回印刷残り時間表示処理」として記載する。図示のように、テープ印刷装置1は、[印刷]キー71の押下信号を受信すると(S21)、初回印刷残り時間表示処理を実行する(S22)。そして、使用中の電源が商用電源であった場合(S23:商用電源)、S24以降の処理工程に進む。一方、使用中の電源が電池であった場合(S23:電池)、図10に記載の処理工程に進む。
【0069】
以下、電源が商用電源であった場合について説明する。当該印刷が通常の印刷であった場合であって(S24:No)、表示データの表示から所定時間が経過した場合(S25:Yes)、未印刷の印刷データおよび印刷設定から残りのテープ長Lを算出する(S26)。実際には、印刷完了をドット単位で検出し、検出結果から印刷が完了していない印刷データおよび余白を未印刷の印刷データとして残りのテープ長Lを算出する。なお、所定時間の経過の判断も、印刷完了したドット数で判断する。そして、算出した残りのテープ長Lと搬送スピードVから上記した算出方法で残りの印刷残り時間T1を算出する(S27)。そして、算出した印刷残り時間T1に基づいて表示画面41に表示するための表示データを生成し(S28)、生成した表示データを表示画面41に表示する(S29)。そして、全印刷が終了した場合(S30:Yes)、処理を終了する。一方、印刷が終了していない場合(S30:No)、S25〜S29の処理を繰り返す。
【0070】
一方、当該印刷が連続印刷であった場合であって(S24:Yes)、新たに1枚のラベルについて印刷が終了した場合(S31:Yes)、全印刷残り時間から印刷済みのラベル枚数分の単位印刷残り時間を引いて実際の印刷残り時間T1を算出する(S32)。そして、算出した印刷残り時間T1に基づいて表示画面41に表示するための表示データを生成し(S33)、生成した表示データを表示画面41に表示する(S34)。そして、ラベルの全枚数について印刷が終了した場合(S35:Yes)、処理を終了する。一方、ラベルの全枚数について印刷が終了していない場合(S35:No)、S31〜S35の処理を繰り返す。
【0071】
以下、図10を参照し、電源が電池であった場合について説明する。表示データの表示から所定時間が経過した場合(S41:Yes)、再度、電源電圧値を取得する(S42)。取得した電源電圧値が搬送スピードVの切り替える値にまで低下していた場合(S43:Yes)、搬送スピードVを取得した電源電圧値に応じたものに切り替える(S44)。一方、取得した電源電圧値が搬送スピードVの切り替える値にまで低下していなかった場合(S43:No)、搬送スピードVを切り替えずに次の工程に進む。続いて、未印刷の印刷データから残りのテープ長Lを算出する(S45)。そして、算出したテープ長と搬送スピードVから、印刷残り時間T1および標準印刷残り時間T2,T3を算出し(S46,S47)、算出した印刷残り時間T1および標準印刷残り時間T2,T3に基づいて表示データを生成する(S48)。そして、T2−T1およびT3−T1のうちの少なくとも一方が所定時間を超えた場合(S49:Yes)、生成した表示データに電源の交換を促すメッセージMを付加して(S50)、表示データを表示する(S51)。一方、T2−T1およびT3−T1のいずれも所定時間(15秒)を超えなかった場合(S49:No)、生成した表示データをそのまま表示する。そして、全印刷が終了した場合(S52:Yes)、処理を終了する。一方、印刷が終了していない場合(S52:No)、S41〜S52の処理を繰り返す。
【0072】
これまで説明してきたテープ印刷装置1によれば、使用している電源の電源電圧値に応じて印刷残り時間を算出するため、電源電圧値の変化による搬送スピードVの変化を考慮して正確に印刷残り時間を算出・提示することができる。また、電源として電池を使用している場合、使用中の電池に応じた印刷残り時間と共に、未使用の電池および商用電源を使用した場合の標準印刷残り時間を表示するため、電池残量がわずかである場合、ユーザーに電源の交換を促すことができる。なお、本実施形態では、印刷残り時間と標準印刷残り時間との時間差が所定時間を超えた場合に、電源の交換を促すメッセージMを表示するため、よりユーザーに対して効率的なラベル作成作業を促すことができる。
【0073】
また、印刷に要するテープ長Lを用いて印刷残り時間を算出するため、複雑な処理を必要とすることなく簡単に印刷残り時間を算出することができる。そして算出した印刷残り時間を表示画面41に表示することにより、ユーザーは印刷残り時間を確認することができるため利便性がよい。
【0074】
また、本実施形態は、[時間表示]キー72の押下による印刷開始前の印刷残り時間の表示と、印刷実行中の自動的な印刷残り時間の表示とを行う。このため、ユーザーは、印刷データが膨大である場合や連続印刷の場合など印刷残り時間の予測が困難な場合に、印刷開始前の印刷残り時間を確認することで印刷作業の見通しを立てることができる。また、印刷終了まで待機するユーザーにとって印刷実行中に印刷残り時間を確認できるため利便性がよい。
【0075】
また、印刷領域A1における搬送スピードV1とカラ送り領域A2の搬送スピードV2とを加味して印刷残り時間の算出を行うため、正確な印刷残り時間を算出することができる。なお、搬送スピードV1および搬送スピードV2が同じである場合、印刷領域A1における印刷残り時間とカラ送り領域A2における時間とをまとめて算出してもよい。また、連続印刷において、余白の長さがテープカッター23と印刷ヘッド7との距離よりも短い場合に実施される前カット処理におけるテープ送り動作を考慮して印刷残り時間を算出してもよい。
【0076】
なお、電源として電池を使用する場合、前回終了時の電源電圧値を記憶しておき、次回の初回印刷残り時間表示処理において、電源電圧値を取得せずに記憶した電源電圧値を用いて、印刷残り時間を算出してもよい。
【0077】
なお、上記の実施形態では、現在使用中の電源による印刷残り時間T1と、他の電源による標準印刷残り時間T2,T3との時間差が所定時間以上になった場合に、電源の交換を促すメッセージMを表示画面41に表示する構成としたが、使用中の電源の電源電圧値と、その他の電源(商用電源や未使用の電池)の電源電圧値との差が所定値以上になった場合に、電源の交換を促すメッセージMを表示画面41に表示する構成としてもよい。これによれば、電池の残量が十分に残っているにもかかわらず、実行する印刷の所要時間の長さに起因する時間差のために誤って電源の交換を促してしまうことがない。
【0078】
なお、本実施形態では、印刷開始前に[時間表示]キー72の押下によって印刷残り時間を表示する構成としたが、印刷データが生成された時点で現在入力されている印刷データおよび印刷設定に基づいて印刷残り時間を表示する構成としてもよい。一方、印刷実行中の印刷残り時間の表示を自動表示とせず、[時間表示]キー72の押下によって表示させる構成としてもよい。
【0079】
また、印刷実行中の印刷残り時間の算出は、連続印刷においても未印刷の印刷データに基づいて残りのテープ長Lを算出し、このテープ長Lを用いて残りの印刷残り時間を算出する構成としてもよい。これによれば、1枚のラベルの印刷に時間がかかる場合に、ラベルの印刷途中においても正確に残りの印刷残り時間を表示することができる。
【0080】
なお、本実施形態では、印刷データから当該印刷データの印刷に要するテープ長を算出して印刷残り時間を算出する構成としたが、印刷データのデータ量とテープTの搬送スピードVから印刷残り時間を算出する構成としてもよい。
【0081】
なお、本実施形態のテープ印刷装置1は、装置に備えられたキーボード3により印刷データを生成するための入力情報を入力する構成としたが、テープ印刷装置1をPCなどの外部装置に接続し、当該外部装置から印刷データを受信する構成としてもよい。この場合、テープ印刷装置は印刷残り時間を外部装置に通知して表示させてもよい。

【0082】
また、上記した、テープ印刷装置1の各構成要素をプログラムとして提供することも可能である。また、そのプログラムを記憶媒体(図示省略)に格納して提供することも可能である。記録媒体としては、CD−ROM、フラッシュROM、メモリカード(コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、メモリースティック等)、コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルバーサタイルディスクおよびフレキシブルディスク等を利用することができる。
【0083】
また、上述した実施例によらず、テープ印刷装置1の装置構成や処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:テープ印刷装置 23:テープカッター 26:テープ送りモーター 27:テープ識別センサー 28:電源部 41:表示画面 42:電池収容部 43:差込口 71:[印刷]キー 72:[時間表示]キー 81:CPU 83:ROM 91:テープ幅取得部 92:印刷データ生成部 93:テープ長算出部 94:電源電圧値取得部 95:搬送スピード記憶部 96:搬送スピード決定部 97:時間算出部 98:電源判別部 99:時間差判定部 100:表示データ生成部 101:表示部 102:ラベル作成部 L:テープ長 M:メッセージ T:テープ T1:印刷残り時間 T2,T3:標準印刷残り時間 V:搬送スピード t:カット時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状部材を搬送しながら印刷を実行するテープ印刷装置であって、
電源と、
前記電源の電源電圧値を取得する電源電圧値取得部と、
取得した前記電源電圧値に応じた前記テープ状部材の搬送スピードを決定する搬送スピード決定部と、
前記搬送スピードおよび前記テープ状部材に印刷する印刷情報から、印刷完了までの時間を示す情報である印刷時間情報を生成する印刷時間情報生成部と、
前記印刷時間情報を表示する表示部と、を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】
前記印刷情報のうち、未印刷の印刷情報の印刷に要する前記テープ状部材のテープ長を算出するテープ長算出部をさらに備え、
前記印刷時間情報生成部は、前記搬送スピードおよび前記テープ長から前記印刷時間情報を生成することを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】
所定の電源電圧値に応じた標準搬送スピードを記憶した標準搬送スピード記憶部をさらに備え、
前記印刷時間情報生成部は、さらに、前記標準搬送スピードおよび前記印刷情報から標準印刷時間情報を生成し、
前記表示部は、さらに、前記標準印刷時間情報を表示することを特徴とする請求項1または2に記載のテープ印刷装置。
【請求項4】
前記標準搬送スピード記憶部は、前記電源の種類ごとに前記所定の電源電圧値に応じた前記標準搬送スピードを記憶し、
前記電源の種類を判別する電源判別部をさらに備え、
前記表示部は、前記電源判別部の判別結果と異なる電源の種類の前記標準搬送スピードおよび前記印刷情報から生成された前記標準印刷時間情報を表示することを特徴とする請求項3に記載のテープ印刷装置。
【請求項5】
前記印刷時間情報が示す印刷完了までの時間と、前記標準印刷時間情報が示す印刷完了までの時間と、の時間差が所定時間を越えるか否かを判定する時間差判定部をさらに備え、
前記表示部は、前記時間差が前記所定時間を超えると判定された場合に、前記電源の交換を促すメッセージを表示することを特徴とする請求項3または4に記載のテープ印刷装置。
【請求項6】
前記印刷時間情報は、前記印刷完了までの時間を絶対時間で表した情報であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のテープ印刷装置。
【請求項7】
前記印刷時間情報は、前記印刷の全所要時間に対する前記印刷完了までの時間の割合を示す情報であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のテープ印刷装置。
【請求項8】
印刷済みの前記テープ状部材をカットするテープカッターをさらに備え、
前記印刷完了までの時間には、前記テープ状部材のカット時間を含むことを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項9】
前記印刷情報が、複数枚のラベルを印刷する連続印刷を行うための情報である場合、
前記印刷時間情報は、前記複数枚のラベル全ての印刷が完了するまでの時間を示す情報であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のテープ印刷装置。
【請求項10】
テープ状部材を搬送しながら印刷を実行するテープ印刷装置の制御方法であって、
前記テープ印刷装置が、
電源の電源電圧値を取得する電圧値取得ステップと、
取得した前記電源電圧値に応じた前記テープ状部材の搬送スピードを決定する搬送スピード決定ステップと、
前記搬送スピードおよび前記テープ状部材に印刷する印刷情報から、印刷完了までの時間を示す情報である印刷時間情報を生成する印刷時間情報生成ステップと、
前記印刷時間情報を表示する表示ステップと、を実行することを特徴とするテープ印刷装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−179726(P2012−179726A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42203(P2011−42203)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】