説明

テープ印字装置

【課題】 プラテンローラと印字ヘッドとを当接した状態でテープ印字装置を保管することに起因して、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に貼り付いてしまった場合においても、カバー部材の開放動作に連動してプラテンローラと印字ヘッドとを強制的に引き離す事が可能なテープ印字装置を提供する。
【解決手段】 カバー部材15の開放動作時に、ローラホルダ19を強制的にプラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に離間する退避位置Bまで移動させるカム押圧部材44とカム受け部45を備えることにより、カバー部材15を開くとそのカム押圧部材44とカム受け部45が強制的にローラホルダ19をプラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に当接している位置から退避位置Bに戻すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ印字装置に関し、特に、プラテンローラと印字ヘッドを当接した状態でテープ印字装置を保管することに起因して、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に貼り付いてしまった場合においても、カバー部材の開放動作に連動してプラテンローラと印字ヘッドとを強制的に引き離すことが可能なテープ印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キーボード等の入力手段から文字等を入力して作成された文字等をディスプレイ上に表示しつつ、長尺状の印字媒体である印字用テープに印字可能なテープ印字装置が各種提案されている。かかるテープ印字装置では、一般に、印字用テープやインクリボン等をスプールに巻回して所定形状のカセットに納めたテープカセットから、印字用テープの供給を受けるようになっている。
【0003】
そして、テープ印字装置のテープカセット収納部分には、印字用テープに文字等を印字する印字ヘッドと印字用テープを送り駆動するプラテンローラとが設けられ、印字の際はプラテンローラにより印字用テープを印字ヘッドに押圧しつつ文字等を印字し、印字済みテープとして排出する。ここで、テープカセットを交換のために脱着する場合には、印字ヘッドとプラテンローラとによる印字用テープの押圧を解除して、印字ヘッド又はプラテンローラを印字用テープの押圧位置から退避させなければならない。このため、プラテンローラと印字ヘッドの一方を移動させて、両者が当接する押圧位置と、両者が離間する退避位置とを切り換える切換部材が備えられていた。また、テープ印字装置には、テープカセットを収納するカセット収納部を開閉するカバー部材が設けられており、印字の際にはこれを閉じて外部からの異物の侵入等を防ぐようにしていた。
【0004】
上述の切換部材として特開平10−100494号公報には、カバー部材に設けられ、カバー部材を閉じたときにホルダ部材(プラテンローラ)を押圧位置にする係合部とカバー部材を開いたときにホルダ部材(プラテンローラ)を退避位置にする弾性部材が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−100494号公報(段落0003乃至段落0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記公開公報に記載されたテープ印字装置においては、プラテンローラと印字ヘッドとを当接した状態で長期間保管したとき、印字ヘッドとプラテンローラが貼り付いてしまい、弾性部材の弾性力では退避位置に戻らなくなる恐れがあるという問題がある。また、印字ヘッドとプラテンローラが貼り付いていることを知らずにテープカセットを装着すると、印字用テープやインクリボンにダメージを与えてしまうという問題もある。これを解決するために弾性部材の弾性力を大きくするとホルダ部材等の強度アップをしなければならないためにコストアップに繋がるという問題もある。
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、プラテンローラと印字ヘッドとを当接した状態でテープ印字装置を保管することに起因して、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に貼り付いてしまった場合においても、カバー部材の開放動作に連動してプラテンローラと印字ヘッドとを強制的に引き離す事が可能なテープ印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に係るテープ印字装置は、印字用テープを内蔵したテープカセットを着脱可能に保持するカセット保持部と、前記印字用テープに印字を施す印字ヘッドと、前記印字ヘッドに対向配置されたプラテンローラと、前記プラテンローラと前記印字ヘッドとのいずれか一方を保持し、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に当接する第1位置、及び、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に離間する第2位置との間で移動可能なホルダ部材と、前記カセット保持部を開閉可能なカバー部材と、を備えたテープ印字装置において、前記カバー部材の開閉動作に連動して移動可能に構成され、カバー部材の閉塞動作時に前記ホルダ部材を前記第1位置に向かって移動させる作動部材と、前記作動部材に設けられ、前記カバー部材の開放動作時に、ホルダ部材を強制的に第2位置まで移動させる強制移動手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、前記強制移動手段は、前記作動部材に形成されるとともに、前記カバー部材の開放動作時に前記ホルダ部材の一部を押圧してホルダ部材を前記第2位置に移動させるカム押圧部材を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、前記強制移動手段は、前記ホルダ部材に設けられた突起部材と、前記作動部材に形成されるとともに、前記突起部材に係合可能な係合溝とを有し、前記ホルダ部材は、前記カバー部材の開放動作時に前記係合溝が前記突起部材と係合することに基づき、前記第2位置に移動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るテープ印字装置では、カバー部材の開閉動作に連動して移動可能に構成され、カバー部材の閉塞動作時にホルダ部材をプラテンローラと印字ヘッドとが相互に当接する第1位置に向かって移動させる作動部材と、作動部材に設けられ、カバー部材の開放動作時に、ホルダ部材を強制的にプラテンローラと印字ヘッドとが相互に離間する第2位置まで移動させる強制移動手段とを備えることにより、カバー部材が開放された際に、強制移動手段が作動部材を介して、ホルダ部材を第2位置まで移動させるので、ホルダ部材を、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に当接する第1位置にしたままテープ印字装置を長期間保管することに起因して、相互に貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンローラとを確実に引き離すことができる。そのため、テープカセットをカセット保持部にセットできなくなるという問題や印字用テープやインクリボンにダメージを与える問題を解決できる。
【0012】
また、請求項2に係るテープ印字装置では、強制移動手段が、作動部材に形成されるとともに、カバー部材の開放動作時にホルダ部材の一部を押圧してホルダ部材を当接していたプラテンローラと印字ヘッドとが相互に離間する第2位置に移動させるカム押圧部材を有するので、ホルダ部材を、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に当接する第1位置にしたまま長期間保管することに起因して、相互に貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンローラを確実に引き離すことができる。そのため、テープカセットをカセット保持部にセットできなくなるという問題や印字用テープやインクリボンにダメージを与える問題を解決できる。更に、ホルダ部材を第2位置に移動させる弾性部材を使用することなしにホルダ部材を第2位置に移動させることができ、また、カム押圧部材は作動部材に一体に形成できるのでコストダウンを図ることができる。
【0013】
また、請求項3に係るテープ印字装置では、強制移動手段は、ホルダ部材に設けられた突起部材と、作動部材に形成されるとともに、突起部材に係合可能な係合溝とを有し、ホルダ部材は、カバー部材の開放動作時に係合溝が突起部材と係合することに基づき、当接していたプラテンローラと印字ヘッドとが相互に離間する第2位置に移動されるので、ホルダ部材を、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に当接する第1位置にしたまま長期間保管することに起因して、相互に貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンローラを確実に引き離すことができる。そのため、テープカセットをカセット保持部にセットできなくなるという問題や印字用テープやインクリボンにダメージを与える問題を解決できる。更に、ホルダ部材を第2位置に移動させる弾性部材を使用することなしにホルダ部材を第2位置に移動させることができ、また、突起部材はホルダ部材に一体に形成し、係合溝は作動部材に一体に形成できるのでコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るテープ印字装置について、本発明を具体化した第1実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るテープ印字装置の概略構成について図1乃至図4に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態におけるテープ印字装置の外観を示す斜視図、図2はテープ印字装置のカバー部材を開けた斜視図、図3はカバー部材と印字機構を拡大して示す斜視図、図4はテープカセットと印字機構との関係を模式的に示す説明図である。
【0015】
本第1実施形態のテープ印字装置1おいて、図1に示すように本体2の上面には、種々の文字入力等を行うキーボード3が設けられている。このキーボード3の上側には、電源スイッチ、印字キーやテープ印字装置1の各種制御を行う機能キー群4と、入力した文字や記号等を表示するための液晶ディスプレイ(以後LCDと表示)5が設けられている。そして、左上角には印字用テープ6に印刷された印字済みテープ6aをカットするためのカッターレバー7が設けられている。
【0016】
本体2の後側において、図2に示すように、LCD5の後方に印字用テープ6を所定形状のカセットケースに収納したテープカセット8(図4参照)を装着するカセット保持部9が形成され、そのカセット保持部9には、テープカセット8内の使用済みのインクリボン10を巻取るためのリボン巻取カム11と、印字済みのテープを送り駆動するためのテープ送りローラカム12とが配置されている。カセット保持部9にはこの他、印字用テープ6に文字等を印字するサーマルヘッド13が、テープカセット8を装着した際にその開口部14に位置するように放熱を兼ねたサブフレーム30に取り付けられて配置されている。また、図3に示すように、サーマルヘッド13に対向して、ローラホルダ19がプラテンローラ18及び押圧ローラ23を保持すると共に、レバー16及び後述するリリースロッド17等を介し、ホルダ軸24を中心にして回動可能な状態でレバー16と共に配置されている。
【0017】
カセット保持部9は、図2、図3に示すように、開閉可能なカバー部材15で覆われるものである。そこで、カバー部材15の内側には、カバー部材15を閉状態にしたときにレバー16を押下するためのレバー押下部15aとカバー部材15を開状態にしたときにレバー16を引き上げるための下舌片15bが対向する位置に配置されている。また、カバー部材15の両側端部には係合片26、26が設けられている。係合片26、26は、テープ印字装置1の本体2側に設けられた係合部27、27と係合してカバー部材15を閉状態に保持するものである。更に、カバー部材15を開閉する際の開閉の支点となる支持突起25がカバー部材15の端部から延出されて設けられている。
【0018】
次に、テープカセット8の内部の構造を、所謂、ラミネートテープのカセットを例にとって図4に示す。図4には、説明上、テープカセット8の内部構造と共にテープ印字装置1の印字機構の一部でありカセット保持部9内に設けられるサーマルヘッド13やローラホルダ19等も示されている。
【0019】
テープカセット8には、透明なフィルムからなる所定幅の印字用テープ6と、印字用テープ6に転写されるインクを表面に塗布されたインクリボン10と、印字がなされた印字済みテープ6aの裏面に貼り合わされる印字用テープ6と同一幅の両面テープ20とが、それぞれ回転自在に設置された供給スプールにロール状に巻回されて配置されている。更に、使用済みのインクリボン10が巻き取られる使用済みリボン巻取スプール21を備えている。そして、テープカセット8の内部には、印字済みの印字済みテープ6aをテープカセット8の外部に排出すると共に、印字済みの印字済みテープ6aの裏面に両面テープ20を貼り合わせるためのテープ送りローラ22が内蔵されている。
【0020】
テープカセット8をテープ印字装置1のカセット保持部9に装着すると、カセット保持部9のリボン巻取カム11はテープカセット8の使用済みリボン巻取スプール21に、カセット保持部9のテープ送りローラカム12はテープカセット8のテープ送りローラ22に、それぞれ連結される。印字時には使用済みリボン巻取スプール21とテープカセット8のテープ送りローラ22とが回転駆動される。これにより、印字用テープ6とインクリボン10とがそれぞれの供給スプールから引き出され、重ね合わされてサーマルヘッド13に送られ、所定の印字がなされる。そして、使用済みのインクリボン10は印字がなされた印字済みテープ6aと離れて、使用済みリボン巻取スプール21に巻き取られる。一方、印字がなされた印字済みテープ6aには、供給された両面テープ20が貼り合わせられて、テープ送りローラ22により外部に排出される。
【0021】
次に、印字中に印字用テープ6をサーマルヘッド13に押圧する機構を説明する。前記のように、図2中カセット保持部9に配置されるサーマルヘッド13は、テープカセット8が装着された際にその開口部14に位置する。そして、印字用テープ6を挟んでサーマルヘッド13と対向する位置に、プラテンローラ18が配置されている。そして、テープカセット8のテープ送りローラ22と対向する位置に押圧ローラ23が配置されている。プラテンローラ18と押圧ローラ23とは、ローラホルダ19に回転可能に取り付けられており、そのローラホルダ19はホルダ軸24に回動可能に取り付けられている。ローラホルダ19の回動により、プラテンローラ18と押圧ローラ23とが、サーマルヘッド13及びテープ送りローラ22に圧着する押圧位置A(実線)、或は、サーマルヘッド13及びテープ送りローラ22に圧着しない退避位置B(2点鎖線)のいずれかの位置にセットされる。
【0022】
続いて、プラテンローラ18とサーマルヘッド13、押圧ローラ23とテープ送りローラ22との押圧及びその解除がカセット保持部9を覆うカバー部材15の開閉で行われる構成について、図2、図3、図5乃至図8を参照して説明する。図5は印字機構を示す拡大斜視図、図6は印字機構の組立分解斜視図、図7はカバー部材の開状態におけるカバー部材、レバー、リリースロッド、ローラホルダの関係を示す説明図、図8はカバー部材の閉状態におけるカバー部材、レバー、リリースロッド、ローラホルダの関係を示す説明図である。図7及び図8において、図7(A)、図8(A)は上面図、図7(B)、図8(B)は正面図である。
【0023】
図2、図3に示すカバー部材15は、カセット保持部9を開閉可能に覆うものであって、支持突起25、25によりテープ印字装置1の本体2に取り付けられ、図3に示す支持突起25、25を中心に回動してカセット保持部9を開閉する。カバー部材15の両側端部には係合片26、26が設けられている。係合片26、26は、テープ印字装置1の本体2側に設けられた係合部27、27と係合してカバー部材15を閉状態に保持するものである。係合片26、26は弾力を有しているので、操作者が所定の操作をすれば係合が解除されカバー部材15は開状態となる。
【0024】
カバー部材15に覆われるカセット保持部9には、図5に示す印字機構28が配置されている。印字機構28は図6に示すように、先ず、メインフレーム29に取り付けられたホルダ軸24に、サーマルヘッド13が取り付けられた放熱板を兼ねるサブフレーム30を通しながら、メインフレーム29にネジ31、31によってネジ止めされる。次に、プラテンローラ18及び押圧ローラ23が装着されたローラホルダ19が、ローラホルダ19の背面に設けられた後述する嵌合溝32にリリースロッド17の一端に設けられた嵌合部33を当接しながらホルダ軸24に回動可能に取り付けられ、E型トメワ35によって止められる。このとき同時に、リリースロッド17の他端に設けられた摺動ピン36がサブフレーム30に設けられたピン摺動孔37に摺動可能に取り付けられる。次に、レバー16の端部38に設けられた軸摺動孔39とリリースロッド17の他端で摺動ピン36の反対側に設けられた摺動軸40を係合させながら、サブフレーム30に水平方向に設けられたレバー軸41にレバー16を回動可能に取り付ける。次に、レバー16のバネ取付軸42にレバー戻しバネ43を取り付けて所定の場所に止めた後に、レバー軸41にE型トメワ35を嵌めることによって印字機構28は組み付けられる構成になっている。
【0025】
かかる印字機構28を備えるテープ印字装置1を使用する場合について図7、図8に基づいて説明する。先ず、カセット保持部9にテープカセット8を装着する。そして、カバー部材15を押圧して係合片26をテープ印字装置1の本体2の係合部27に係合させて閉状態とする。このとき、印字機構28は以下のように作用する。即ち、カバー部材15が閉じられるのに伴い、カバー部材15の内側に設けられたレバー押下部15aとレバー押下部15aの下方でカバー部材15に設けられた下舌片15bとの間にレバー16の一端が係合され、レバー押下部15aによってレバー16の一端が押下されてレバー軸41を中心としてレバー16が矢印C方向に回転運動する。尚、カバー部材15が閉じられたとき、レバー16の一端がレバー押下部15aと下舌片15bの間に係合されるためにはレバー16がレバー戻しバネ43によって矢印Cとは逆向きの方向に常に付勢されている必要がある。
【0026】
次に、レバー16の他端の端部38には軸摺動孔39が設けられ、リリースロッド17の他端の摺動軸40が摺動可能に取り付けられているので、レバー16の回転運動が軸摺動孔39と摺動軸40によってリリースロッド17の水平な直線運動に変換される。この水平な直線運動に基づき、リリースロッド17の他端の摺動ピン36がサブフレーム30に設けられたピン摺動孔37内を摺動し、さらにリリースロッド17の一端に設けられた嵌合部33が、ローラホルダ19の背面に設けられた前述の嵌合溝32で摺動する。これによってレバー16の矢印C方向の回転運動がリリースロッド17の矢印D方向の水平な直線運動に変換される。
【0027】
次に、前述のリリースロッド17の矢印D方向の水平な直線運動が進むと、ローラホルダ19がリリースロッド17の嵌合部33に押圧されてホルダ軸24を中心として矢印E方向に回動し押圧位置A(図4参照)にセットされる。従って、カバー部材15を閉じると必ずローラホルダ19が押圧位置Aにセットされ、特段のセット操作をしないで印字可能な状態となるのである。
【0028】
そして、印字が行われテープカセット8を取り出す場合には、特段のリリース操作をすることなく、直接カバー部材15の係合片26部分に指を掛けて引き上げ、カバー部材15を開けばよい。即ち、カバー部材15が開けられるのに伴い、カバー部材15の内側に設けられているレバー押下部15aとカバー部材15に一体に設けられている下舌片15bの間に係合されているレバー16の一端が、下舌片15bによって引き上げられ、レバー軸41を中心としてレバー16が矢印Cとは逆向きの方向に回転運動する。
【0029】
次に、このレバー16の矢印Cとは逆向き方向の回転運動が、レバー16の軸摺動孔39とリリースロッド17の摺動軸40との係合によって、リリースロッド17の動作が矢印Dとは逆向き方向の水平な直線運動に変換される。
【0030】
次に、前述のリリースロッド17の矢印Dとは逆向き方向の水平な直線運動が進むと、ローラホルダ19がリリースロッド17の嵌合部33の押圧から開放され、更に、ローラホルダ19は、リリースロッド17のカム押圧部材44のカム面46と頭頂部47によってローラホルダ19のカム受け部45が押圧されるので、ホルダ軸24を中心として矢印Eとは逆向き方向に回動して退避位置B(図4参照)にセットされる。従って、カバー部材15を開けば直ちに、テープカセット8を取り出せたり装着できる状態となる。即ち、テープカセット8の装着時、取出時ともに、一動作で目的を達成できるものである。
【0031】
続いて、テープカセット8を装着せずに押圧位置Aにセットして長期間保管した後でも、相互に貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離す方法について、図9、図10に基づいて詳細に説明する。図9は相互に貼り付いてしまったサーマルヘッドとプラテンローラを引き離す方法を示す説明図である。図9(A)はカバー部材の完全閉状態を示す説明図、図9(B)はサーマルヘッドとプラテンローラが相互に貼り付いている状態を示す説明図、図9(C)は引き離し動作によりサーマルヘッドとプラテンローラが離れた状態を示す説明図である。また、図10(A)はカバー部材の完全開状態を示す説明図、図10(B)は使用されているリリースロッドを示す斜視図である。
【0032】
図9(A)は、カバー部材15が閉状態でリリースロッド17(図10(B)参照)の嵌合部33がローラホルダ19に設けられた嵌合溝32を移動してローラホルダ19を押圧し、テープカセット8の無い状態でサーマルヘッド13とプラテンローラ18とが当接して完全に密着した押圧位置A(図4参照)にセットされている状態を示している。
【0033】
図9(B)は、図9(A)の状態で長期間保管した後にカバー部材15を開きながらリリースロッド17を矢印Fの方向に移動し始めた状態を示しているが、サーマルヘッド13とプラテンローラ18とが貼り付いて離れないという状態が発生している。
【0034】
図9(C)は、さらにカバー部材15を開きながらリリースロッド17を矢印Fの方向に移動し、リリースロッド17に一体に設けられたカム面46と頭頂部47を備えるカム押圧部材44のカム面46とローラホルダ19に一体に設けられたカム受け部45が当接し始めた状態を示している。このカム押圧部材44のカム面46とカム受け部45の当接によりカム押圧部材44のカム面46がカム受け部45を押圧することになり、ローラホルダ19がホルダ軸24を中心として矢印E(図7(A)参照)とは逆向きの方向に回動する。この回動は、リリースロッド17を矢印Fの方向に移動することによって強制的に行なわれる動作であるので、貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離すことができる。
【0035】
図10(A)は、カバー部材15が完全開状態となり、リリースロッド17のカム押圧部材44のカム面46が、ローラホルダ19のカム受け部45を押すことによって、貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を強制的に引き離すことができ、加えてリリースロッド17のカム押圧部材44の頭頂部47によってローラホルダ19が退避位置B(図4参照)にセットされている状態を示している。このように、リリースロッド17のカム押圧部材44のカム面46とローラホルダ19のカム受け部45が当接することによって、貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を強制的に引き離すことができ、更に、従来、ローラホルダ19を退避位置Bにセットするために使用していた弾性部材を使用することなしに、リリースロッド17のカム押圧部材44の頭頂部47によってローラホルダ19を退避位置Bにセットすることができるので、部品数の低減とコストの低減に寄与する。
【0036】
以上、詳細に説明した通り、第1実施形態に係るテープ印字装置1では、カム押圧部材44が、リリースロッド17に形成されるとともに、カバー部材15の開放動作時にローラホルダ19のカム受け部45を押圧してローラホルダ19を当接していたプラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に離間する退避位置Bに移動させるカム押圧部材44を有するので、ローラホルダ19を、プラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に当接する押圧位置Aにしたまま長期間保管することに起因して、相互に貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離すことができる。そのため、テープカセット8をカセット保持部9にセットできなくなるという問題や印字用テープ6やインクリボン10にダメージを与える問題を解決できる。更に、ローラホルダ19を退避位置Bに移動させる弾性部材を使用することなしにローラホルダ19を退避位置Bに移動させることができ、また、カム押圧部材44はリリースロッド17に一体に形成できるのでコストダウンを図ることができる。
【0037】
次に、本発明に係る第2実施形態を図11、図12に基づいて説明する。第2実施形態に係るテープ印字装置は、第1実施形態に係るテープ印字装置1と構成は同様であるが、ローラホルダ19を退避位置Bに強制移動するときに、強制移動手段によってローラホルダ19に加えられる力の方向が第2実施形態と第1実施形態では全く逆の方向になっている。図11は貼り付いてしまったサーマルヘッドとプラテンローラを引き離す方法を示す説明図である。図11(A)はカバー部材の完全閉状態を示す説明図、図11(B)は引き離し動作によりサーマルヘッドとプラテンローラが離れた状態を示す説明図、図12(A)はカバー部材の完全開状態を示す説明図、図12(B)は使用されているリリースロッドを示す斜視図である。符号は同一機能のものは同一の符号を使用する。
【0038】
先ず、図11(A)に基づいて、印字機構28の構成を説明する。図11(A)に示すように、対向して配置されるサブレーム30の一方(図11(A)では上側)には、サーマルヘッド13が取り付けられており、他方(図11(A)では下側)には、レバー軸41を取り付け、そのレバー軸41にレバー16が回動可能に取り付けられている。そして、レバー16の端部38に設けられた軸摺動孔39には、一端に嵌合部33を有するリリースロッド17(図12(B)参照)の他端に設けられた摺動軸40が摺動可能に取り付けられている。そして、リリースロッド17は、レバー16の回動方向によって、矢印Fの方向または逆の方向に移動可能な状態になっている。更に、リリースロッド17の一端に一体に設けられた嵌合部33の内側には、リリースロッド17の他端側に開放した係合溝48が設けられている。そして、リリースロッド17が矢印Fの方向に移動したときに、ローラホルダ19に一体に設けられた突起部材50がこの係合溝48に係合される。また、係合溝48の開放側の先端には、ローラホルダ19に設けられた突起部材50を係合溝48に係合するために最適な係合カム面が備えられている。そして、対向するサブフレーム30の間には、プラテンローラ18と押圧ローラ23が取り付けられたローラホルダ19が、ホルダ軸24に回動可能に取り付けられている。そのために、ローラホルダ19は、リリースロッド17の一端に設けられた嵌合部33と係合溝48のレバー16の回動による移動によって、サブレーム30の一方と他方の間でホルダ軸24を中心にして回動する構成になっている。
【0039】
次に、図11、図12に基づいて強制移動の方法を説明する。
図11(A)は、カバー部材15が閉状態でリリースロッド17の嵌合部33が嵌合溝32を移動してローラホルダ19を押圧し、テープカセット8の無い状態でのサーマルヘッド13とプラテンローラ18とが当接して完全に密着した押圧位置A(図4参照)にセットされている状態を示している。この状態で長期間保管した後に、リリースロッド17を矢印Fの方向に移動し、リリースロッド17の嵌合部33がローラホルダ19の嵌合溝32から外れても、サーマルヘッド13とプラテンローラ18とが貼り付いて離れないという状態が発生する。
【0040】
図11(B)は、さらにカバー部材15を開き、リリースロッド17を矢印Fの方向に移動させることによって、リリースロッド17に一体に設けられている嵌合部33の内部に設けられた係合溝48の先端の係合カム面49とローラホルダ19に一体に設けられた突起部材50が当接し始めた状態を示している。この係合溝48の先端の係合カム面49と突起部材50の当接により係合カム面49がローラホルダ19を引戻すように突起部材50を押圧することになり、ローラホルダ19がホルダ軸24を中心として矢印E(図7(A)参照)とは逆向きの方向に回動する。この回動は、リリースロッド17を矢印Fの方向に移動することによって強制的に行なわれる動作であるので、当接して貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18の当接を解除するすことができ、サーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離すことができる。
【0041】
図12(A)は、カバー部材15が完全開状態となり、リリースロッド17の係合溝48の係合カム面49とローラホルダ19の突起部材50の当接により、係合カム面49がローラホルダ19を引戻すように突起部材50を押圧しながら貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離し、その後、さらにリリースロッド17を矢印Fの方向に移動することによって、係合溝48が突起部材50を摺動させてローラホルダ19を退避位置B(図4参照)にセットしている状態を示している。これは、従来使用していたローラホルダ19を退避位置Bにセットする弾性部材を無くすことができることを意味し、部品数の低減とコストの低減に寄与する。
【0042】
以上、詳細に説明した通り、第2実施形態に係るテープ印字装置1では、強制移動手段は、ローラホルダ19に設けられた突起部材50と、リリースロッド17に形成されるとともに、突起部材50に係合可能な係合溝48とを有し、ローラホルダ19は、カバー部材15の開放動作時に係合溝48が突起部材50と係合することに基づき、当接していたプラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に離間する退避位置Bに移動されるので、ローラホルダ19を、プラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に当接する押圧位置Aにしたまま長期間保管することに起因して、相互に貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離すことができる。そのため、テープカセット8をカセット保持部9にセットできなくなるという問題や印字用テープ6やインクリボン10にダメージを与える問題を解決できる。更に、ローラホルダ19を退避位置Bに移動させる弾性部材を使用することなしにローラホルダ19を退避位置Bに移動させることができ、また、突起部材50はローラホルダ19に一体に形成し、係合溝48はリリースロッド17に一体に形成できるのでコストダウンを図ることができる。
【0043】
尚、本発明は前記第1実施形態及び第2実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【0044】
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態において、サーマルヘッド13を固定し、プラテンローラ18を含むローラホルダ19が移動する実施形態を説明したが、サーマルヘッド13を移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態におけるテープ印字装置の外観を示す斜視図である。
【図2】テープ印字装置のカバー部材を開けた斜視図である。
【図3】カバー部材と印字機構を拡大して示す斜視図である。
【図4】テープカセットと印字機構との関係を模式的に示す説明図である。
【図5】印字機構を示す拡大斜視図である。
【図6】印字機構の組立分解斜視図である。
【図7】カバー部材の開状態におけるカバー部材、レバー、リリースロッド、ローラホルダの関係を示す説明図である。(A)は上面図、(B)は正面図である。
【図8】カバー部材の閉状態におけるカバー部材、レバー、リリースロッド、ローラホルダの関係を示す説明図である。(A)は上面図、(B)は正面図である。
【図9】相互に貼り付いてしまったサーマルヘッドとプラテンローラを引き離す方法を示す説明図である。(A)はカバー部材の完全閉状態を示す説明図、(B)はサーマルヘッドとプラテンローラが相互に貼り付いている状態を示す説明図、(C)は引き離し動作によりサーマルヘッドとプラテンローラが離れた状態を示す説明図である。
【図10】(A)はカバー部材の完全開状態を示す説明図、(B)は使用されているリリースロッドを示す斜視図である。
【図11】貼り付いてしまったサーマルヘッドとプラテンローラを引き離す方法を示す説明図である。(A)はカバー部材の完全閉状態を示す説明図、(B)は引き離し動作によりサーマルヘッドとプラテンローラが離れた状態を示す説明図である。
【図12】(A)はカバー部材の完全開状態を示す説明図、(B)は使用されているリリースロッドを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1.テープ印字装置
6.印字用テープ
6a.印字済みテープ
8.テープカセット
9.カセット保持部
13.サーマルヘッド
15.カバー部材
17.リリースロッド
18.プラテンローラ
19.ローラホルダ
44.カム押圧部材
45.カム受け部
48.係合溝
50.突起部材
A.押圧位置
B.退避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字用テープを内蔵したテープカセットを着脱可能に保持するカセット保持部と、前記印字用テープに印字を施す印字ヘッドと、前記印字ヘッドに対向配置されたプラテンローラと、前記プラテンローラと前記印字ヘッドとのいずれか一方を保持し、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に当接する第1位置、及び、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に離間する第2位置との間で移動可能なホルダ部材と、前記カセット保持部を開閉可能なカバー部材と、を備えたテープ印字装置において、
前記カバー部材の開閉動作に連動して移動可能に構成され、カバー部材の閉塞動作時に前記ホルダ部材を前記第1位置に向かって移動させる作動部材と、
前記作動部材に設けられ、前記カバー部材の開放動作時に、ホルダ部材を強制的に第2位置まで移動させる強制移動手段とを備えることを特徴とするテープ印字装置。
【請求項2】
前記強制移動手段は、前記作動部材に形成されるとともに、前記カバー部材の開放動作時に前記ホルダ部材の一部を押圧してホルダ部材を前記第2位置に移動させるカム押圧部材を有することを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。
【請求項3】
前記強制移動手段は、
前記ホルダ部材に設けられた突起部材と、
前記作動部材に形成されるとともに、前記突起部材に係合可能な係合溝とを有し、
前記ホルダ部材は、前記カバー部材の開放動作時に前記係合溝が前記突起部材と係合することに基づき、前記第2位置に移動されることを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−239912(P2006−239912A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55352(P2005−55352)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】