説明

テープ印字装置

【課題】テープエンドセンサ等を設けなくても、テープエンド状態での印刷物作成の続行に基づく上記部品の摩耗や故障等の弊害を防止する。
【解決手段】印字ラベル作成装置1は、コピー印字若しくはナンバリング印字、を行う。CPU212は、カートリッジホルダ9に装着されたカートリッジ8の検出結果に応じて、カバーフィルム103の搬送方向に沿った最大長さLmaxを決定し、搬送されるカバーフィルム103の搬送長さを累積して算出し、算出されるカバーフィルム103の搬送長さSが、最大長さLmaxに対応した所定の印字停止長さLstopとなった場合に、カバーフィルム103に対する印字形成及び搬送を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字テープに対して所望の印字を行う、テープ印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被印字テープに対して所望の印字を行う、テープ印字装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術のテープ印字装置(テープ印刷装置)では、カートリッジホルダ(カセット収納部)にカートリッジ(テープカセット)が装着されると、カートリッジから供給される被印字テープ(被印刷テープ)がテープ送りローラによって搬送される。その搬送される被印字テープに対し、印字手段(サーマルヘッド)によって印字データに基づく印字が行われる。これにより、所望の長さを備え所望の印字が形成された印刷物(プリントラベル)が作成される。また、この印字装置では、各印刷物の被印字テープに対し、コピー印字(互いに同一内容の印字データにより印字を行う)やナンバリング印字(印字データに含まれる文字又は数字を自動的に所定法則で変更して印字を行う)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−247449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなテープ印字装置において、カートリッジ内に収納される被印字テープは有限であることから、上記のようにして複数の印刷物が順次作成されるにつれ、カートリッジ内の被印字テープは徐々に消費され、最終的にはカートリッジから被印字テープを供給できない状態(いわゆるテープエンド状態)となる。このようなテープエンド状態となったにもかかわらず上記印刷物の作成が続行されると、消費され尽くして動かない被印字テープに対して印字手段からの印字形成や搬送手段の搬送駆動力の伝達が行われることとなり、各部の部品の摩耗や故障等を招くおそれがある。
【0005】
なお、上記テープエンド状態を検出するテープエンドセンサ等を設ければ上記の弊害を回避可能であるが、この場合、構造が複雑となると共に製造コストの増大を招く。
【0006】
本発明の目的は、テープエンドセンサ等を設けなくても、テープエンド状態での印刷物作成の続行に基づく上記部品の摩耗や故障等の弊害を防止できる、テープ印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明は、被印字テープを供給可能なカートリッジを着脱するカートリッジホルダと、前記カートリッジホルダに装着された前記カートリッジから供給される前記被印字テープを搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記被印字テープに対し、印字データに基づく所望の印字を行う印字手段と、を有し、前記搬送手段の搬送方向に沿った所望の長さをそれぞれ備えかつ所望の印字が前記被印字テープにそれぞれ形成された複数の印刷物を、作成可能なテープ印字装置であって、前記複数の印刷物それぞれの前記被印字テープに対して互いに同一内容の印字データにより印字を行うコピー印字、若しくは、前記印字データに含まれる文字又は数字を各印刷物ごとに自動的に所定法則で変更しつつ、前記複数の印刷物それぞれの前記被印字テープに対し印字を行うナンバリング印字、を行うように、前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する、第1連携制御手段と、前記カートリッジホルダに装着された前記カートリッジを検出するカートリッジ検出手段と、前記カートリッジ検出手段の検出結果に応じて、前記カートリッジホルダに装着された前記カートリッジに収納された前記被印字テープの、前記搬送方向に沿った最大長さを決定する最大長さ決定手段と、前記複数の印刷物の作成において前記搬送手段により搬送される前記被印字テープの搬送長さを累積して算出する搬送長さ算出手段と、前記搬送長さ算出手段により算出される前記被印字テープの前記搬送長さが、前記最大長さ決定手段により決定された前記最大長さに対応した所定の印字停止長さとなった場合に、前記被印字テープに対する印字形成及び搬送を停止するように、前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する、第2連携制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本願発明のテープ印字装置は、搬送手段及び印字手段を有する。カートリッジホルダにカートリッジが装着されると、カートリッジから供給される被印字テープが搬送手段によって搬送される。その搬送される被印字テープに対し、印字手段によって印字データに基づく印字が行われる。これにより、所望の長さを備え所望の印字が形成された印刷物が作成される。特に本願発明では、第1連携制御手段が搬送手段及び印字手段を連携して制御することにより、各印刷物の被印字テープに対し、コピー印字(互いに同一内容の印字データにより印字を行う)やナンバリング印字(印字データに含まれる文字又は数字を自動的に所定法則で変更して印字を行う)が行われる。
【0009】
また本願発明では、カートリッジ検出手段と、最大長さ決定手段と、搬送長さ算出手段と、が設けられる。カートリッジ検出手段によってカートリッジホルダに装着されたカートリッジが検出されると、その検出結果に応じて、最大長さ決定手段が、当該カートリッジに係わる被印字テープの最大長さを決定する。この最大長さとは、カートリッジに収納された被印字テープの、搬送方向に沿った長さの最大値である。すなわち、カートリッジは、製造時において、内部に収納する被印字テープの長さ(収納長さ)が予め決定されている。未使用のカートリッジがカートリッジホルダに装着された場合には、当該カートリッジから供給可能な被印字テープの長さは、上記収納長さとなる。一方、既に使用歴のある使いかけのカートリッジがカートリッジホルダに装着された場合には、当該カートリッジから供給可能な被印字テープの長さは、上記収納長さから既に使用された被印字テープの長さを差し引いた長さ(すなわち上記収納長さよりも小さい値)となる。上記最大長さ決定手段は、上記収納長さを、最大長さとして決定する。
【0010】
上記のようにカートリッジが装着されて複数の印刷物が作成されていくとき、搬送長さ算出手段が、搬送手段により搬送される被印字テープの搬送長さを累積して算出する。そして、この算出される搬送長さが、上記最大長さに対応した所定の印字停止長さになったときには、第2連携制御手段の制御により、搬送手段による被印字テープの搬送と印字手段による被印字テープへの印字形成が停止される。
【0011】
これにより、カートリッジホルダにカートリッジが装着されて印刷物の作成が行われる際、少なくとも上記収納長さ分の搬送が行われたときには、搬送及び印字形成を停止することができる。この結果、テープエンドセンサ等を設けなくても、テープエンド状態での印刷物作成の続行に基づく部品の摩耗や故障等の弊害を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テープエンドセンサ等を設けなくても、テープエンド状態での印刷物作成の続行に基づく上記部品の摩耗や故障等の弊害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の印字ラベル作成装置を斜め上方向から見た外観を表す斜視図である。
【図2】下カバーを開放した状態の印字ラベル作成装置を斜め下方向から見た外観を表す斜視図である。
【図3】カートリッジの内部構造を模式的に表す拡大平面である。
【図4】印字ラベル作成装置の制御系を表す機能ブロック図である。
【図5】印字・搬送が強制停止されない比較例における挙動を説明する概念図である。
【図6】印字・搬送が強制停止される本発明の実施形態における挙動を説明する概念図である。
【図7】CPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図8】操作者が操作入力した任意の搬送長さで強制停止する変形例において、CPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図9】固定的に記憶した長さ比率を用いて一律に搬送・印字停止する変形例において、CPUによって実行される制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
本実施形態は、本発明を、テープ印字装置としての印字ラベル作成装置1に適用したものである。この印字ラベル作成装置1は、所望の印字を行った印字済ラベル用テープを所定の長さに切断することにより、印刷物としての印字ラベルL(後述の図5参照)を作成する。
【0016】
<概略構成>
まず、この印字ラベル作成装置1の概略構成について図1を用いて説明する。なお、本実施形態において印字ラベル作成装置1の前・後・左・右・上・下というときは、図1及び図2等に示す方向を指す。
【0017】
図1及び図2に示すように、印字ラベル作成装置1の筐体2は、装置下面を構成する下カバー15と、装置側面を構成する横カバー16と、装置上面を構成する上カバー17とにより構成されている。上カバー17には、前方向から後方向に向けて、文字入力等の種々の操作が行われるキーボード3(操作手段)と、電源スイッチや印刷キー等の印字ラベル作成装置1の各種機能を実行させるための機能キー群4と、入力した文字や記号等を表示するための液晶ディスプレイ5と、が設けられている。また横カバー16の右側後方には、印刷された印字済ラベル用テープ109(図3参照)を手動でカットするためのカッターレバー7が設けられている。
【0018】
印字ラベル作成装置1の下側後方には、カートリッジ8を着脱可能なカートリッジホルダ9が設けられている。このカートリッジホルダ9は、印字ラベル作成装置1の前端部を回転軸として開閉可能に構成された上記下カバー15を閉じると覆われ、下カバー15を開放すると露出されるようになっている。
【0019】
また、図2に示すように、印字ラベル作成装置1の下側後方には、カートリッジホルダ9に隣接して、電池BT(後述の図4参照)を複数個収納可能な電池収納部70が設けられている。なお、図2中、符号60は、外部電源としてのACアダプタ220(後述の図4参照)の出力プラグが接続されるDCジャックである。
【0020】
<カートリッジ>
図3に示すように、カートリッジ8は、筐体8Aと、この筐体8A内に配置され帯状の基材テープ101が巻回された第1ロール102(実際は渦巻き状であるが、図では簡略的に同心円状に示す)と、上記基材テープ101と略同じ幅であり、透明なカバーフィルム103(被印字テープ)が巻回された第2ロール104(実際は渦巻き状であるが、図では簡略的に同心円状に示す)と、インクリボン105(熱転写リボン、但し被印字テープが感熱テープの場合は不要)を繰り出すリボン供給側ロール111と、印字後のリボン105を巻取るリボン巻取りローラ106と、カートリッジ8のテープ排出部の近傍に回転可能に支持されたテープ送りローラ27とを有する。
【0021】
テープ送りローラ27は、上記基材テープ101と上記カバーフィルム103とを押圧し接着させ上記印字済ラベル用テープ109としつつ、図3中矢印Aで示す方向にテープ送りを行う(圧着ローラとしても機能する)。
【0022】
第1ロール102は、リール部材102aの周りに上記基材テープ101を巻回している。基材テープ101はこの例では4層構造となっており、詳細な図示を省略するが、内側に巻かれる側よりその反対側へ向かって、適宜の粘着剤からなる貼り合わせ用粘着層、PET(ポリエチレンテレフタラート)等から成る色付きのベースフィルム、適宜の粘着剤からなる貼り付け用粘着層、剥離紙の順序で積層され構成されている。
【0023】
第2ロール104は、リール部材104aの周りに上記カバーフィルム103を巻回している。第2ロール104より繰り出されるカバーフィルム103の裏面に、サーマルヘッド23(印字手段)により押圧されるインクリボン105が、当接する。
【0024】
このとき、上記のカートリッジ8の構成に対応して、カートリッジホルダ9には、上記使用済みのインクリボン105を巻き取るためのリボン巻き取り軸107と、印字済ラベル用テープ109を搬送するための上記テープ送りローラ27を駆動するためのテープ送りローラ駆動軸108(搬送手段)と、が設けられている。またカートリッジホルダ9には、上記カバーフィルム103に所望の印刷を行う上記サーマルヘッド23が、カートリッジ8の装着時にその開口部14(図2参照)に位置するように設けられている。
【0025】
上記リボン巻取りローラ駆動軸107及び上記テープ送りローラ駆動軸108には、カートリッジ8外に設けた例えばパルスモータである駆動モータ211(後述の図4参照)の駆動力が、図示しないギヤ機構を介して伝達される。この結果、リボン巻取りローラ106及びテープ送りローラ27が互いに連動して回転駆動される。
【0026】
カートリッジ8が上記カートリッジホルダ9に装着されロールホルダが上記リリース位置から上記印字位置に移動されると、カバーフィルム103及びインクリボン105が、上記サーマルヘッド23と、このサーマルヘッド23に対向して設けたプラテンローラ26との間に狭持される。これとともに、基材テープ101及びカバーフィルム103が、テープ送りローラ27と、テープ送りローラ27に対向して設けた圧着ローラ28との間に狭持される。そして、上記駆動モータ211の駆動力によってリボン巻取りローラ106及びテープ送りローラ27が図3中矢印B及び矢印Cで示す方向にそれぞれ同期して回転駆動される。このとき、前述のテープ送りローラ駆動軸108と上記圧着ローラ28及びプラテンローラ26はギヤ機構(図示せず)にて連結されており、テープ送りローラ駆動軸108の駆動に伴いテープ送りローラ27、圧着ローラ28及びプラテンローラ26が回転する。これにより、第1ロール102から基材テープ101が繰り出され、上述のようにテープ送りローラ27へ供給される。一方、第2ロール104からはカバーフィルム103が繰り出されるとともに、サーマルヘッド制御回路217(後述の図4参照)によりサーマルヘッド23に設けられた複数の発熱素子が通電され、発熱する。
【0027】
このとき、カバーフィルム103の裏面側(すなわち上記基材テープ101と接着される側)には、リボン巻取りローラ106により駆動されるインクリボン105が、上記サーマルヘッド23に押圧されて当接させられる。この結果、カバーフィルム103の裏面に、印字データに対応した所望の内容の印字が印刷される。そして、上記基材テープ101と上記印刷が終了したカバーフィルム103とが上記テープ送りローラ27及び圧着ローラ28の押圧により上記貼り合わせ用粘着層により接着されて一体化され、上記印字済ラベル用テープ109として形成されてカートリッジ8外へと排出される。カバーフィルム103への印字が終了したインクリボン105は、リボン巻取りローラ駆動軸107の駆動によりリボン巻取りローラ106に巻取られる。
【0028】
カートリッジ8外へ排出された印字済ラベル用テープ109の搬送経路の下流側には、固定刃40と可動刃41を備えた切断機構42が設けられている。切断機構42の可動刃41は後述するCPU212の制御により動作する。すなわち、可動刃41を駆動するソレノイド219aを駆動するソレノイド駆動回路219(後述の図4参照)が設けられており、ソレノイド駆動回路219がCPU212の制御信号により制御されることで可動刃41を駆動して上記印字済ラベル用テープ109が切断され、印字ラベルL(後述の図5参照)が生成される。なお、前述したようにカッターレバー7の操作により手動で可動刃41を動作させることもできる。なお、本実施形態の印字ラベル作成装置1では、主として、互いに同一内容の印字データにより同一内容の印字を備えた複数の印字ラベルLを作成する、いわゆるコピー印字が行われる。あるいは、印字データに含まれる文字又は数字を各印字ラベルLごとに自動的に所定法則で変更しつつ、複数の印字ラベルLを作成する(いわゆるナンバリング印字)を行う場合もある。
【0029】
一方、カートリッジホルダ9の適宜の箇所には、カートリッジセンサ218が設けられ、これに対応してカートリッジ8の角部には被検出部112が設けられている。カートリッジセンサ218は、カートリッジ8の装着時に、装着されたカートリッジ8に設けられた被検出部112(図3参照)を、適宜の公知の手法(接触式、光学式、磁気式等)によって検出する。
【0030】
<制御系>
次に、図4を用いて、印字ラベル作成装置1の制御系について説明する。図4において、印字ラベル作成装置1は、所定の演算を行うCPU212を有している。
【0031】
CPU212には、上記液晶ディスプレイ5と、上記キーボード3と、ROM214と、RAM213と、EEPROM221と、が接続されている。そして、CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによって印字ラベル作成装置1全体の制御を行う。EEPROM221は、カバーフィルム103の後述する搬送長さSを記憶する。
【0032】
またCPU212には、上記カートリッジセンサ218に接続され、カートリッジセンサ218が検出したカートリッジ8の被検出部112の検出結果が入力される。これにより、CPU212は、カートリッジホルダ9に対するカートリッジ8の装着・非装着や、装着時におけるカートリッジ8の種別情報等が検出可能である。この実施形態では、カートリッジ8の種別として、当該カートリッジ8に収容されているカバーフィルム103の全長が互いに異なる、複数種類が用意されている。そして、各カートリッジ8をカートリッジホルダ9に装着したとき、上記被検出部112に対するカートリッジセンサ218の検出結果により、いずれの種類のカートリッジ8が装着されたか(言い換えれば、カートリッジ8内のカバーフィルム103の全長がどれだけであるか)が、CPU212によって検知される。これにより、CPU212は、カートリッジ8がカートリッジホルダ9内部に装着されたことを確認するとともに、以後の各種制御、例えば後述するカバーフィルム103の最大長さを決定する(後述)等の各種処理を実行する。
【0033】
なお、本実施形態では、各カートリッジ8において、収容されるカバーフィルム103の全長が同じ長さ(例えば8[m])である場合には、CPU212は、上記したカートリッジ8の種別を必ずしも識別する必要はなく、カートリッジホルダ9にカートリッジ8が装着されたかどうかだけをカートリッジセンサ218の検出結果に基づき識別すれば足りる。また、カートリッジ8の種類として、上述のような基材テープ101とこれに貼り合わされるカバーフィルム103を有するラミネートタイプ以外に、上記貼り合わせを行わず感熱テープ(被印字テープ)を供給する感熱タイプが用意されていてもよい。あるいは、互いにカバーフィルム103や基材テープ101の幅や色や材質が異なる、複数種類のカートリッジ8が用意されていてもよい。
【0034】
またCPU212は、ACアダプタ220に接続され印字ラベル作成装置1の電源のオン・オフ処理を行う電源回路215と、上記プラテンローラ26を駆動する駆動モータ211の駆動制御を行うモータ駆動回路216と、上記サーマルヘッド23の発熱素子の通電制御を行うサーマルヘッド制御回路217と、上記ソレノイド219aの駆動制御を行う上記ソレノイド駆動回路219と、に接続されている。
【0035】
以上の基本構成において、本実施形態の特徴は、カートリッジ8の装着時に、被印字テープ3の搬送距離が、カートリッジセンサ218の検出結果に応じた所定の印字停止長さに達したら印字及び搬送を強制停止する点にある。以下、順を追ってその詳細について説明する。
【0036】
<比較例>
上述したように、印字ラベル作成装置1では、互いに同一内容の印字データにより同一内容の印字を備えた複数の印字ラベルLが作成される(コピー印字)。一例として、全長8[m]の長さのカバーフィルム103を収納したカートリッジ8を用いて、搬送方向に沿った長さが10[cm]である印字ラベルLを上記コピー印字により連続的に作成する場合を例にとって説明する。まず、本実施形態の比較例として、上記のような強制停止を行わない比較例における搬送挙動を図5(a)〜(e)に示す。なお、図5(a)〜(e)において、実際には、カートリッジ8からの印字済ラベル用テープが1枚ごとに切断機構42により切断され互いに分離されて印字ラベルLとなるが、説明の便宜上、複数の印字ラベルLを連結した状態で図示している。
【0037】
図5(a)〜(e)に示すように、カートリッジホルダ9にカートリッジ8が装着され印字ラベルLの作成が開始されると、搬送されるカバーフィルム103に対して、1つの共通の印字データ(この例では「ABC」)により共通のコピー印字Rが繰り返し形成されて印字済ラベル用テープ109となり、当該印字済ラベル用テープ109が所定の長さごとに切断されることで、上記コピー印字R及び上記所定の長さをそれぞれ備えた複数の印字ラベルLが順次作成される。
【0038】
図5(a)は、カートリッジ8がカートリッジホルダ9に装着された直後に、1枚目の印字ラベルLが作成された状態を示している。上述したように1枚の印字ラベルLの搬送方向長さは10[cm]であるから、ここまでのカバーフィルム103の搬送距離は10[cm]となる。
【0039】
図5(b)は、さらに搬送が進み、上記1枚目の印字ラベルLの次の、2枚目の印字ラベルLが作成された状態を示している。カートリッジ8装着後のここまでのカバーフィルム103の搬送距離は20[cm]となる。
【0040】
上記同様にして、1つの印字ラベルLが作成される都度、搬送距離は10[cm]ずつ増えていき、カートリッジ8内に収納されるカバーフィルム103は、10[cm]ずつ消費されていく。図5(c)に示すように、79枚目の印字ラベルが作成された状態では、カートリッジ8装着後のここまでのカバーフィルム103の搬送距離は7.9[m]となる。
【0041】
そして、80枚目の印字ラベルが作成された状態では、図5(d)に示すように、カートリッジ8装着後のここまでのカバーフィルム103の搬送距離は8[m]なる。前述したように、カートリッジ8内に(印字ラベルLの作成に使用可能な部分として)収納されているカバーフィルム103の長さが8[m]である場合、このように搬送距離が8[m]に達すると、もはやカートリッジ8からカバーフィルム103を供給できない状態(いわゆるテープエンド状態)となる。しかしながら、このようなテープエンド状態となったにもかかわらず、(81枚目以降の印字ラベルLの作成が指示されていた場合等により)上記印字ラベルLの作成が続行されると、消費され尽くして動かないカバーフィルム103に対してサーマルヘッド23からの印字形成やテープ送りローラ駆動軸108の搬送駆動力の伝達が行われることとなる。この結果、各部の部品の摩耗や故障等、さらにはサーマルヘッド23の過熱による損傷を招くおそれがある。但し、上記テープエンド状態を検出するテープエンドセンサ等を設ければ上記の弊害を回避可能であるが、この場合、構造が複雑となると共に製造コストの増大を招く。
【0042】
<実施形態>
本実施形態では、上記の弊害を回避するために、所定の印字停止長さで印字及び搬送を強制停止する。すなわち、カートリッジ8がカートリッジホルダ9に装着されたとき、上記カートリッジセンサ218の検出結果により、CPU212は、当該カートリッジ8のカバーフィルム103の全長が8[m]であることを認識する。なお、この8[m]とは、カートリッジ8が未使用の新品状態であるときの値である。そして、上記図5(a)、図5(b)、図5(c)と同様、図6(a)、図6(b)、図6(c)に示すように、1枚の印字ラベルLの作成の都度、カバーフィルム103の搬送距離は10[cm]ずつ増えていく。そして、上記図5(d)と同様、搬送距離が上記印字停止長さである8[m]に達すると、図6(d)に示すように、本実施形態では、CPU212の制御によってサーマルヘッド23からの印字形成やテープ送りローラ駆動軸108の搬送駆動が強制停止される。
【0043】
<CPU212の処理手順>
上記の手法を実現するためにCPU212によって実行される処理の手順を、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
図7において、例えば操作者が機能キー群4を適宜に操作し、印字ラベルLに上記コピー印字Rとして形成したい文字や記号等を入力するとともに、さらに機能キー群4に備えられた上記印刷キーを操作して印字ラベルLの作成を指示することにより、このフローが開始される。まず、ステップS1で、CPU212は、カートリッジセンサ218によるカートリッジ8の上記被検出部112の検出結果を取得する。これにより、前述したように、CPU212は、カートリッジ8のカートリッジホルダ9への装着の有無や、カートリッジの種別を識別することができる。なお、この手順が、各請求項記載のカートリッジ検出手段として機能する。
【0045】
その後、ステップS2で、CPU212は、上記ステップS1での取得結果に基づき、カートリッジホルダ9にカートリッジ8が新規に装着された状態であるか否かを判定する。「新規に装着」とは、カートリッジホルダ9にカートリッジ8が装着されていない状態からカートリッジ8が装着された場合、及び、前回印字ラベル作成時の電源OFF時に装着されていたカートリッジ8とは異なるカートリッジ8が今回カートリッジホルダ9に装着された場合、の両方を含む。言い換えれば、前回印字ラベル作成時の電源OFF時に装着されていたカートリッジ8と同じカートリッジ8がそのままカートリッジホルダ9に装着されていた場合、以外の場合である。この判断を行うために、後述のフロー終了時又は電源OFF時において、カートリッジセンサ218によるカートリッジ8の上記被検出部112の検出結果をEEPROM221等に記憶しておくようにしてもよい。あるいは、上記下カバー15の開閉を検出する開閉センサ(図示せず)を別途設けてもよい。この場合、前回印字ラベル作成時の電源OFF時に装着されていたカートリッジ8と同じカートリッジ8がそのままカートリッジホルダ9に装着されている限りは上記下カバー15の開閉は生じないから、上記開閉センサが下カバー15の開閉を検出したことをもって、上記のようにカートリッジホルダ9にカートリッジ8が新規に装着された状態である、と判定してもよい。
【0046】
カートリッジ8が新規装着されていれば、ステップS2の判定が満たされ(S2:YES)、ステップS3に移行する。新規に装着されたカートリッジ8でなければ、ステップS2の判定が満たされず(S2:NO)、後述のステップS4に移行する。
【0047】
ステップS3では、CPU212は、印字ラベルLを作成するときにカバーフィルム103(印字済ラベル用テープ109に含まれるものも含む。以下同様)の搬送とともにカウントアップされるカバーフィルム103の搬送長さS(詳細は後述)をS=0に設定する。その際、既にEEPEOM221に前回までの印字ラベルLの作成によって搬送長さSの値が記憶されていた場合には、当該記憶された搬送長さの値も0に初期化し、更新する。その後、ステップS5に移行する。なお、この手順が、各請求項記載の更新処理手段として機能する。
【0048】
一方、ステップS4では、CPU212は、前回の印字ラベル作成時にEEPROM221に記憶されているカバーフィルム103の搬送長さS(例えばS=4[m]等)を読み出し、ステップS5に移行する。
【0049】
ステップS5では、CPU212は、上記ステップS1で取得したカートリッジ8の上記被検出部112の検出結果に基づき、カバーフィルム103の最大長さLmaxを決定する。この最大長さLmaxは、カートリッジ8に収納されたカバーフィルム103の、搬送方向に沿った長さの最大値である。言い換えれば、前述したように、未使用のカートリッジ8がカートリッジホルダ9に装着された場合に当該カートリッジ8から供給可能なカバーフィルム103の長さ(製造時において内部に収納されている収納長さ)に相当する長さである。前述の図5及び図6に示した例に沿うと、この最大長さLmaxは8[m]に決定される。なお、同一のカートリッジ8(=未使用状態では8[m]のカバーフィルムを供給可能なカートリッジ)が使用歴のある使用途中の状態でカートリッジホルダ9に装着された場合であっても、このステップS5では、上記同様、最大長さLmaxは8[m]に決定される。なお、この手順が、各請求項記載の最大長さ決定手段として機能する。その後、ステップS6に移る。
【0050】
ステップS6では、CPU212は、前述したように、強制的に印字及び搬送を停止する判断基準となる印字停止長さLstopを、上記ステップS6で決定した最大長さLmaxに等しい値に、設定する。なお、この手順が、各請求項記載の印字停止長さ決定手段として機能する。その後、ステップS7に移る。
【0051】
ステップS7では、CPU212は、前述のように操作者による機能キー群4等の操作により入力されEEPROM221又はROM214等に記憶済みの、上記コピー印字Rを形成するための印字データを、当該EEPROM221又はROM214から取得する。その後、ステップS8に移る。
【0052】
ステップS8では、CPU212は、操作者のキーボード3等の操作により、ピー印字を行うためのコピー枚数(すなわち印字ラベルLの作成枚数)が設定済みであるか否かを判定する。作成枚数が既に設定されていた場合には、ステップS8の判定が満たされ(S8:YES)、ステップS9に移行する。作成枚数が設定されない場合には、ステップS8の判定が満たされず(S8:NO)、当該判定が満たされるまでループ待機する。
【0053】
そして、ステップS9では、CPU212は、モータ駆動回路216に制御信号を出力し、駆動モータ211によりテープ送りローラ駆動軸108及びリボン巻取りローラ駆動軸107を駆動開始する。これにより、カバーフィルム103、基材テープ101、及び印字済ラベル用テープ109が搬送開始される。その後、ステップS10に移る。
【0054】
ステップS10では、CPU212は、上記ステップS9での搬送開始後のカバーフィルム103の搬送距離を公知の適宜の手法(例えばパルスモータである上記駆動モータ211のパルス数をカウントする等)により算出するとともに、その算出した搬送距離を上記ステップS3又はステップS4により設定されたカバーフィルム103の搬送長さSに累積していく、搬送長さSの累積算出動作を開始する。その後、ステップS11に移る。
【0055】
ステップS11では、CPU212は、上記ステップS10で算出を開始した後、この時点でまででカウントアップされている上記搬送長さSが、上記ステップS6で設定した印字停止長さLstopより大きくなったか否かを判定する。S>Lstopの場合には、ステップS11の判定が満たされ(S11:YES)、後述のステップS23に移行する。一方、S≦Lstopの場合にはステップS11の判定が満たされず(S11:NO)、ステップS12に移行する。
【0056】
ステップS12では、CPU212は、搬送されるカバーフィルム103が、上記ステップS7で取得した印字データに対応した所定の印字開始位置まで搬送されたかどうかを判定する。この判定は、上記同様、例えばステッピングモータからなる駆動モータ211のパルス数をカウントする等、公知の適宜の手法により行えば足りる。カバーフィルム103が印字開始位置まで搬送されたらステップS12の判定が満たされ(S12:YES)、ステップS13に移る。一方、カバーフィルム103が印字開始位置まで搬送されていなければステップS12の判定が満たされず(S12:NO)、ステップS11に戻り、上記同様の手順を繰り返す。
【0057】
ステップS13では、CPU212は、上記ステップS7で取得された印字データに基づき、サーマルヘッド制御回路217に制御信号を出力してサーマルヘッド23の発熱素子に通電を行い、上記コピー印字Rの印字形成を開始する。これにより、カバーフィルム103に、上記通電された発熱素子によりインクリボン105のインクが転写され、コピー印字Rが形成される。その後、ステップS14に移る。
【0058】
ステップS14では、CPU212は、上記ステップS11同様、上記ステップS10で算出を開始した後この時点でまででカウントアップされている上記搬送長さSが、上記印字停止長さLstopより大きくなったか否かを判定する。S>Lstopの場合には、ステップS14の判定が満たされ(S14:YES)、後述のステップS23に移行する。一方、S≦Lstopの場合にはステップS14の判定が満たされず(S14:NO)、ステップS15に移行する。
【0059】
ステップS15では、CPU212は、搬送されるカバーフィルム103が上記ステップS7で取得した印字データに対応した所定の印字終了位置まで搬送されたかどうかを判定する。この判定も上記同様の公知の手法により行えば足りる。カバーフィルム103が印字終了位置まで搬送されたらステップS15の判定が満たされ(S15:YES)、ステップS16に移る。一方、カバーフィルム103が印字終了位置まで搬送されていなければステップS15の判定が満たされず(S15:NO)、ステップS14に戻って、上記同様の手順を繰り返す。
【0060】
ステップS16では、CPU212は、サーマルヘッド制御回路217に制御信号を出力し、サーマルヘッド23のすべての発熱素子を通電停止状態として印字を停止する。その後、ステップS17に移る。
【0061】
ステップS17では、CPU212は、上記ステップS11及びステップS14と同様、上記ステップS10で算出を開始した後この時点でまででカウントアップされている上記搬送長さSが、上記印字停止長さLstopより大きくなったか否かを判定する。S>Lstopの場合には、ステップS17の判定が満たされ(S17:YES)、後述のステップS23に移行する。一方、S≦Lstopの場合にはステップS17の判定が満たされず(S17:NO)、ステップS18に移行する。
【0062】
ステップS18では、CPU212は、搬送されるカバーフィルム103が、上記ステップS7で取得した印字データに対応した所定の切断位置まで搬送されたかどうか(切断位置に上記可動刃41が正対する搬送方向位置になるまで、印字済ラベル用テープ109が搬送されたかどうか)、を判定する。この判定も、前述と同様の公知の手法により行えば足りる。カバーフィルム103が切断位置まで搬送されたらステップS18の判定が満たされ(S18:YES)、ステップS19に移る。一方、カバーフィルム103が切断位置まで搬送されない場合には、ステップS18の判定が満たされず(S18:NO)、ステップS17に戻って、同様の判定処理が実行される。
【0063】
ステップS19では、CPU212は、モータ駆動回路216に制御信号を出力し、駆動モータ211によるテープ送りローラ駆動軸108及びリボン巻取りローラ駆動軸107の駆動を停止する。これにより、カバーフィルム103、基材テープ101、及び印字済ラベル用テープ109の搬送が停止する。その後、ステップS20に移行する。
【0064】
ステップS20では、CPU212は、ソレノイド駆動回路219に制御信号を出力し、ソレノイド219aへの通電により切断機構42の可動刃41を駆動する。これにより、上記印字済ラベル用テープ109が切断され、印字ラベルLが生成される。その後、ステップS21に移行する。
【0065】
ステップS21では、CPU212は、ステップS8で設定された全ラベル枚数の印字ラベルLの作成が終了したか否かを判定する。全枚数の印字ラベルLの作成が終了していた場合には、ステップS21の判定が満たされ(S21:YES)、後述のステップS22に移る。一方、全枚数の印字ラベルLの作成が終了していない場合には、ステップS21の判定が満たされず(S21:NO)、上記ステップS9に戻り、同様の手順を繰り返す。なお、このステップS21が、各請求項記載の第1連携制御手段として機能する。
【0066】
ステップS22では、CPU212は、上記ステップS10で算出を開始した後この時点までにカウントアップされている上記搬送長さSの値を、EEPROM221に記憶する。なお、このステップS22及び上記ステップS10が、各請求項記載の搬送長さ算出手段として機能する。このステップS22が完了すると、このフローを終了する。
【0067】
一方、上記したステップS11、ステップS14、ステップS17の判定が満たされて移行するステップS23では、CPU212は、上記ステップS16と同様、サーマルヘッド制御回路217に制御信号を出力し、サーマルヘッド23のすべての発熱素子を通電停止状態として印字を停止する。その後、ステップS24に移行する。
【0068】
ステップS24では、CPU212は、上記ステップS19と同様、モータ駆動回路216に制御信号を出力し、駆動モータ211によるテープ送りローラ駆動軸108及びリボン巻取りローラ駆動軸107の駆動を停止する。これにより、カバーフィルム103、基材テープ101、及び印字済ラベル用テープ109の搬送が停止する。その後、ステップS25に移行する。
【0069】
ステップS25では、CPU212は、上記液晶ディスプレイ5に表示信号を出力し、これによって液晶ディスプレイ5において、S>Lstopとなったことに対応する警告表示が行われる。この後、このフローを終了する。
【0070】
なお、以上の各手順において、ステップS11、ステップS14、ステップS17、ステップS23、及びステップS24が、各請求項記載の第2連携制御手段として機能する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、カートリッジホルダ9にカートリッジ8が装着されて印字ラベルLの作成が行われる際、テープエンド状態であるにも係わらず搬送及び印字形成が続行される場合と異なり、少なくともそのカートリッジ8の収納長さ(=未使用状態のときに供給可能なカバーフィルム103の長さ)分の搬送が行われたときには、搬送及び印字形成を停止することができる。したがって、テープエンドセンサ等を設けなくても、テープエンド状態での印字ラベルL作成の続行に基づく上記部品の摩耗や故障等の弊害を防止することができる。
【0072】
また、既に述べたように、カートリッジ8内に収納されるカバーフィルム103の上記収納長さは、通常、カートリッジ8の種類により長短様々である。そこで、本実施形態では特に、CPU212は、カートリッジ8がカートリッジホルダ9から取り外され、その後カートリッジセンサ218により新たなカートリッジ8のカートリッジホルダ9への装着が検出された場合には、ステップS3において、搬送長さSを0に設定し上記EEPROM221に記憶された搬送長さSを0に初期化し、更新する。これにより、上記カートリッジ8の交換が行われた場合であっても、当該交換後、少なくとも、新たに装着されたカートリッジ8の収納長さ分の搬送が行われたときには、搬送及び印字形成を停止する。
【0073】
また、本実施形態では特に、印字停止長さLstopが最大長さLmaxに等しい値に設定される。これにより、カートリッジホルダ9に未使用の新品のカートリッジ8が装着された場合には、収納長さ分の搬送が行われ、ちょうどテープエンドとなった過不足のない状態で、カバーフィルム103の搬送及び印字形成を停止することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。以下そのような変形例を順を追って説明する。
【0075】
(1)操作者が操作入力した任意の搬送長さで強制停止する場合
すなわち、本変形例においては、上記印字及び搬送を強制停止するときの基準となる上記印字停止長さLstopを、操作者がキーボード3により例えば「m」単位で入力する。この変形例におけるCPU212によって実行される処理を、図8のフローチャートにより説明する。
【0076】
図8に示すフローでは、上記実施形態の図7に示したステップS5とステップS7との間のステップS6に代えて、ステップS61、ステップS62、ステップS63が新たに設けられる。それ以外の各ステップは上記図7と同等の内容であるので、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0077】
図8において、上記図7と同様のステップS1、ステップS2、及びステップS3(又はステップS4)を経て、ステップS5において前述と同様にして被検出部112の検出結果に基づく最大長さLmaxが決定されると、新たに設けたステップS61に移る。ステップS61では、CPU212は、上記のようにして操作者の操作によりキーボード3で入力された印字停止長さLstopを取得する。その後、ステップS62に移る。
【0078】
ステップS62では、CPU212は、上記ステップS62で取得した印字停止長さLstopが、前述のようにしてステップS5で決定された最大長さLmaxより大きいか否か、を判定する。Lstop>Lmaxの場合には、ステップS62の判定が満たされ(S62:YES)、ステップS63に移行する。一方、Lstop≦Lmaxの場合には、ステップS62の判定が満たされず(S62:NO)、ステップS7に移行する。なお、ステップS62が各請求項記載の判定手段として機能する。
【0079】
ステップS63では、CPU212は、上記液晶ディスプレイ5に表示信号を出力する。これにより、液晶ディスプレイ5において、Lstop>Lmaxであること、すなわち不適当な値が入力されたことに対応する報知(エラー表示)が行われる。なお、上記ステップS61において、操作者がキーボード3において印字停止長さLstopを「m」単位で入力する代わりに「最大長さLmax」の何倍か(例えば1/2か1/4か)を入力するようにしても良い。この場合には、当該入力された値が1よりも大きい値であるとエラーとなって、ステップS63でエラー表示が行われる。このステップS63が各請求項記載の報知手段として機能する。その後のステップS7以降は、上記図7と同様であるので説明を省略する。
【0080】
本変形例においては、カバーフィルム103の搬送長さSが、操作者がキーボード3を介し操作入力した所望の印字停止長さLstopの値となったときに、搬送及び印字形成を停止することができる。この結果、前述の比較例において図5を用いて説明したような、テープエンド状態での印字ラベルL作成の続行に基づく上記部品の摩耗や故障等の弊害を、確実に防止することができる。
【0081】
また、ステップS62において、操作者が誤って上記収納長さである最大長さLmaxよりも大きな不適正な印字停止長さLstopの値を入力した場合には、その旨を報知して操作者に注意を喚起することができる。
【0082】
(2)固定的に記憶した長さ比率を用いて一律に搬送・印字停止する場合
すなわち、本変形例では、長さ比率記憶手段としての上記ROM214が、カバーフィルム103の印字停止長さLstopと最大長さLmaxとの長さ比率α(予め1未満の値として固定的に定められている)を予め記憶している。そして、CPU212は、上記長さ比率αを最大長さLmaxに乗じて印字停止長さLstopを算出し、カバーフィルム103の搬送長さSが当該算出した印字停止長さLstopとなったら、カバーフィルム103に対する印字形成及び搬送を強制停止する。本変形例におけるCPU212によって実行される処理を、図9のフローチャートにより説明する。
【0083】
図9に示すフローでは、上記実施形態の図7に示したステップS6に代えてステップS6′が設けられ、ステップS5と当該ステップS6′との間に、新たにステップS64が設けられる。それ以外の各ステップは上記実施形態と同等の内容であるので、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0084】
図9において、上記図7と同様のステップS1、ステップS2、及びステップS3(又はステップS4)を経て、ステップS5において前述と同様にして被検出部112の検出結果に基づく最大長さLmaxが決定されると、新たに設けたステップS64に移る。ステップS64では、CPU212は、上記のようにして予め記憶されていた上記長さ比率αをROM214より読み出して取得する。その後、上記ステップS6′に移る。
【0085】
ステップS6′では、CPU212は、印字停止長さLstopを、上記ステップS64で読み出した長さ比率αにステップS5で決定された最大長さLmaxを乗じた値に、設定する。具体的には、例えば、ROM214に記憶されている長さ比率αがα=1/2であって、最大長さLmax=8[m]の場合には、印字停止長さLstopは4[m]となる。その後のステップS7以降は、上記図7と同様であるので説明を省略する。
【0086】
本変形例においては、カバーフィルム103の搬送長さSが、少なくともカートリッジ8の上記収納長さに所定の長さ比率αを乗じた値に達したときに、いったん搬送及び印字形成を停止することができる。この結果、前述の比較例において図5を用いて説明したような、テープエンド状態での印字ラベルL作成の続行に基づく上記部品の摩耗や故障等の弊害を、確実に防止することができる。
【0087】
なお、上記図7、図8、図9の各フローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0088】
また、上記図4中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0089】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0090】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 印字ラベル作成装置(テープ印字装置)
8 カートリッジ
9 カートリッジホルダ
23 サーマルヘッド(印字手段)
103 カバーフィルム(被印字テープ)
108 テープ送りローラ駆動軸(搬送手段)
212 CPU
214 ROM(長さ比率記憶手段)
221 EEPROM(搬送長さ記憶手段)
L 印字ラベル(印刷物)
Lmax 最大長さ
Lstop 印字停止長さ
S 搬送長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字テープを供給可能なカートリッジを着脱するカートリッジホルダと、
前記カートリッジホルダに装着された前記カートリッジから供給される前記被印字テープを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記被印字テープに対し、印字データに基づく所望の印字を行う印字手段と、
を有し、
前記搬送手段の搬送方向に沿った所望の長さをそれぞれ備えかつ所望の印字が前記被印字テープにそれぞれ形成された複数の印刷物を、作成可能なテープ印字装置であって、
前記複数の印刷物それぞれの前記被印字テープに対して互いに同一内容の印字データにより印字を行うコピー印字、若しくは、前記印字データに含まれる文字又は数字を各印刷物ごとに自動的に所定法則で変更しつつ、前記複数の印刷物それぞれの前記被印字テープに対し印字を行うナンバリング印字、を行うように、前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する、第1連携制御手段と、
前記カートリッジホルダに装着された前記カートリッジを検出するカートリッジ検出手段と、
前記カートリッジ検出手段の検出結果に応じて、前記カートリッジホルダに装着された前記カートリッジに収納された前記被印字テープの、前記搬送方向に沿った最大長さを決定する最大長さ決定手段と、
前記複数の印刷物の作成において前記搬送手段により搬送される前記被印字テープの搬送長さを累積して算出する搬送長さ算出手段と、
前記搬送長さ算出手段により算出される前記被印字テープの前記搬送長さが、前記最大長さ決定手段により決定された前記最大長さに対応した所定の印字停止長さとなった場合に、前記被印字テープに対する印字形成及び搬送を停止するように、前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する、第2連携制御手段と、
を有することを特徴とするテープ印字装置。
【請求項2】
請求項1記載のテープ印字装置において、
前記搬送長さ算出手段により累積して算出された前記被印字テープの搬送長さを記憶する搬送長さ記憶手段と、
前記カートリッジ検出手段により前記カートリッジが前記カートリッジホルダから取り外され、その後前記カートリッジ検出手段により新たな前記カートリッジの前記カートリッジホルダへの装着が検出された場合には、前記搬送長さ記憶手段の記憶内容を初期化して更新する、更新処理手段と
を有することを特徴とするテープ印字装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のテープ印字装置において、
前記印字停止長さを操作者が入力可能な操作手段を有し、
前記第2連携制御手段は、
前記搬送長さ算出手段により算出された前記被印字テープの前記搬送長さが、前記操作手段により入力された前記印字停止長さとなった場合に、前記印字形成及び搬送を停止するように前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する
ことを特徴とするテープ印字装置。
【請求項4】
請求項3記載のテープ印字装置において、
前記操作手段により入力された前記印字停止長さが、前記最大長さ決定手段により決定された前記最大長さより大きいか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記入力された前記印字停止長さが前記最大長さより大きいと判定された場合に、対応する報知を行う報知手段と、
を有することを特徴とするテープ印字装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のテープ印字装置において、
前記最大長さ決定手段により決定された前記最大長さに等しい値となるように、前記印字停止長さを決定する印字停止長さ決定手段を有し、
前記第2連携制御手段は、
前記被印字テープの前記搬送長さが、前記印字停止長さ決定手段により決定された前記印字停止長さとなった場合に、前記被印字テープに対する印字形成及び搬送を停止するように、前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する
ことを特徴とするテープ印字装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載のテープ印字装置において、
予め1未満の値として固定的に定められた、前記印字停止長さと前記最大長さとの長さ比率を記憶する長さ比率記憶手段を有し、
前記第2連携制御手段は、
前記被印字テープの前記搬送長さが、前記長さ比率記憶手段に記憶された前記長さ比率に前記最大長さを乗じて得られる前記印字停止長さとなった場合に、前記印字形成及び搬送を停止するように前記搬送手段及び前記印字手段を連携して制御する
ことを特徴とするテープ印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111962(P2013−111962A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263233(P2011−263233)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】