説明

テープ検出構造およびこれを備えたテープ印刷装置

【課題】ケースを活用して、処理テープの有無を精度良く検出することができるテープ検出構造等を提供する。
【解決手段】反射型の光センサー(第1光電素子26)とリボンケース64との間隙に印刷テープ32の送り経路を構成し、第1光電素子26により、送り経路上における印刷テープ32の有無を検出するテープ検出構造であって、リボンケース64は、第1光電素子26と対峙するセンサー対峙部841を有し、センサー対峙部841は、少なくとも第1光電素子26の光を受ける部分が暗色(黒色)に着色されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型の光センサーにより、送り経路上における処理テープの有無を検出するテープ検出構造およびこれを備えたテープ印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のテープ検出構造を備え、長尺状のラベル用紙に印刷を行うラベルプリンタが知られている(特許文献1参照)。ラベル用紙には、各ラベルのピッチに合わせて孔または切欠によるラベルマークが形成されており、ラベル用紙は、ロール状に巻回された状態から繰出され、送り経路に沿って送られる。また、送り経路の上方にはインクリボンが設けられており、インクリボンは、繰出しコアから繰出され、ラベル用紙と併走した後、巻取りコアに巻き取られる。一方、ラベル用紙とインクリボンが併走する部分には、プラテンローラーとサーマルヘッドとが配設され、プラテンローラーによるラベル用紙およびインクリボンの送りに同期して、サーマルヘッドが駆動することにより、ラベル用紙の印刷が行われる。
具体的には、プラテンローラーの上流側近傍には、ラベルマークを光学的に検出する検出器が配設されており、検出器よる検出結果に基づいて、サーマルヘッドが駆動され、ラベル用紙のラベル部分に熱転写による印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−180506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のラベルプリンタでは、ラベルマークを検出する検出器が、ラベルマークを介してインクリボンと対峙する構成になっている。すなわち、発光素子から放射された光がインクリボンに吸収され、受光素子で受光されないことによりラベルマークが検出される。しかし、インクリボンが黒色の場合は問題ないが、赤色や青色等の黒色以外の色彩の場合には、インクリボンから光の一部が反射してしまい、これを受光素子が受光して誤検出となる問題があった。もっとも、検出器を、インクリボンから外れるようにラベル用紙の送り方向上流側に設ければ、かかる不具合は解消する。しかし、このようにすると、光を吸収する部材が別途必要になると共に、検出器の位置がヘッドから大きく離れるため、ラベルに対し所望の位置(頭出し)に印刷が行われなくなる問題が生ずる。
【0005】
本発明は、ケースを活用して、処理テープの有無を精度良く検出することができるテープ検出構造およびこれを備えたテープ印刷装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープ検出構造は、反射型の光センサーとケースとの間隙に処理テープの送り経路を構成し、光センサーにより、送り経路上における処理テープの有無を検出するテープ検出構造であって、ケースは、光センサーと対峙するセンサー対峙部を有し、センサー対峙部は、少なくとも光センサーの光を受ける部分が暗色に着色されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、センサー対峙部において、少なくとも光センサーの光を受ける部分が暗色に着色されているため、センサー対峙部に到達した光センサーの光を、この部分に反射することなく確実に吸収させることができる。すなわち、ケースを活用して、処理テープの有無を精度良く検出することができる。なお、ケースがインクリボンを収容するケースであれば、露出するインクリボンの近傍、ひいては印刷ヘッドの近傍に光センサーを配置することができる。
【0008】
この場合、センサー対峙部は、黒色のラベルで構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ケースのケース色が黒色(暗色)で無い場合において、ケースに塗装等の着色加工を施すことなく、センサー対峙部を簡単に構成することができる。
【0010】
また、ケースは、インクリボンを収容したリボンカートリッジのリボンケースであり、センサー対峙部は、リボンケースから露出したインクリボンの近傍に配置されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、リボンケースにおいて、露出するインクリボンの近傍、ひいては印刷ヘッドの近傍に光センサーを配置することができる。これにより、処理テープの先端検出等の頭出しや尾端検出等のテープエンドを、精度良く検出することができる。
【0012】
本発明のテープ印刷装置は、上記したテープ検出構造と、光センサーに対し処理テープの送り方向下流側に配設され、処理テープを送りながらインクリボンからの熱転写による印刷を行う印刷・送り手段と、光センサーの検出結果に基づいて、印刷・送り手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この場合、制御手段は、光センサーがセンサー対峙部を検出し続けたときに、処理テープ「無」と判断して、印刷・送り手段を停止させることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、送り経路上に処理テープの無い場合に、印刷・送り手段を停止させるようにしているため、いわゆる空印刷を防止することができ、空印刷に基づく印刷・送り手段の劣化を有効に防止することができる。また、光センサーを印刷・送り手段に近づけて配置することができるため、処理テープの先端による頭出しや処理テープの被検出孔による頭出しを精度良く行うことができ、位置的な印刷品質を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】蓋ケースを開放し、テープカートリッジおよびリボンカートリッジを装着した状態のテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図3】蓋ケースを開放し、テープカートリッジおよびリボンカートリッジを取り外した状態のテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図4】本実施形態に係るテープ印刷装置の側断面図である。
【図5】テープ搬送機構の搬送駆動装置の側面図である。
【図6】(a)は、印刷テープおよびサーマルヘッドの平面図、(b)は、印刷テープ、サーマルヘッドおよびプラテンローラーの側面図である。
【図7】(a)は、テープカートリッジの斜視図、(b)は、テープ体および軸ホルダーの斜視図、(c)は、(b)のA−A線における断面図である。
【図8】テープカートリッジの分解斜視図である。
【図9】(a)は、軸ホルダーの正面図、(b)は、軸ホルダーの側面図および(a)のB−B線における断面図である。
【図10】(a)は、装置側制動機構および装置側制動伝達機構の斜視図、(b)は、装置側制動機構および装置側制動伝達機構の分解斜視図である。
【図11】リボンカートリッジの斜視図である。
【図12】リボンカートリッジの分解斜視図である。
【図13】(a)は、カートリッジ側制動機構の分解斜視図、(b)は、カートリッジ側制動機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態であるテープ印刷装置について説明する。このテープ印刷装置は、ロール状に巻回した印刷テープを収納したテープカートリッジおよびインクリボンを収納したリボンカートリッジを装着し、印刷テープおよびインクリボンを繰り出し、併走させながら印刷を行い、印刷テープの印刷済み部分を切断してラベルを作成するものである。
【0017】
図1ないし図5を参照して、テープ印刷装置1について説明する。図1は、テープ印刷装置1の外観斜視図である。図2は、蓋ケース15を開放し、テープカートリッジ12およびリボンカートリッジ17を装着した状態のテープ印刷装置1の外観斜視図である。図3は、蓋ケース15を開放し、テープカートリッジ12およびリボンカートリッジ17を取り外した状態のテープ印刷装置1の外観斜視図である。図4は、テープ印刷装置1の側断面図である。図5は、テープ搬送機構22の搬送駆動装置22bの側面図である。なお、以下の説明では、各図に矢印で示すように上下および前後左右を規定する。
【0018】
図1ないし図4に示すように、テープ印刷装置1は、その主要な外殻を形成する装置本体ケース10と、装置本体ケース10内に組み込まれた搬送アッセンブリー11と、搬送アッセンブリー11内に着脱自在に装着されたテープカートリッジ12と、リボンカートリッジ17から繰り出されたインクリボン61にバックテンションを与える装置側制動機構13(図5および図10参照)と、装置側制動機構13の制動力をインクリボン61に伝達する装置側制動伝達機構14(図5および図10参照)と、装置本体ケース10上を覆うようにして開閉自在に設けられた蓋ケース15と、蓋ケース15内に組み込まれた印刷アッセンブリー16と、印刷アッセンブリー16内に着脱自在に装着されたリボンカートリッジ17と、を備えている。
【0019】
また、テープ印刷装置1には、各構成装置を駆動制御する制御装置(図示省略)が内蔵されている。さらに、テープ印刷装置1には、接続ポートを介して制御端末18(パーソナルコンピューター等)が接続されており、ユーザーは、制御端末18を介してテープ印刷装置1を操作し、印刷動作を実行させる。なお、装置本体ケース10と蓋ケース15とで、テープ印刷装置1全体の外観を形成する装置ケースを構成している。
【0020】
装置本体ケース10の前方中央には、印刷された印刷テープ32を外部に排出するためのシート排出口20が設けられている。印刷テープ32は、後部に配設されたテープカートリッジ12から繰出され、シート排出口20に向って送られる途中で印刷に供される。
【0021】
<搬送アッセンブリー>
搬送アッセンブリー11は、テープカートリッジ12を装着するテープ装着部21と、テープカートリッジ12から印刷テープ32を繰り出しながら送るテープ搬送機構22(図4および図5参照)と、印刷済みの印刷テープ32を切断するカッター機構23と、搬送計路上に繰り出された印刷テープ32の有無を検出するテープ検出機構24と、を備えている。
【0022】
テープ装着部21は、装置本体ケース10の後方において内側に窪入形成されており、テープカートリッジ12を、いわゆる中寄せ(左右方向中心)位置にセットできるようになっている。
【0023】
図3ないし図5に示すように、テープ搬送機構22は、テープ装着部21の前方に配設されており、いわゆるプラテンローラー22aと、これを回転駆動する搬送駆動装置22bと、を有している。プラテンローラー22aは、テープカートリッジ12から繰り出された印刷テープ32の下面に当接し、印刷テープ32を、後述するサーマルヘッド521と協働してその前方に連通しているシート排出口20へと搬送する(図4(a)の破線参照)。
【0024】
図5に示すように、搬送駆動装置22bは、動力源となるDCモーター221と、DCモーター221の出力軸に接続されたウォームギヤ222と、ウォームギヤ222に噛み合うウォームホイールギヤ223と、プラテンローラー22aに回転力を伝達するプラテン側ギヤ列224と、後述するリボンカートリッジ17の巻取コア63に回転力を伝達する巻取側ギヤ列225と、を有している。搬送駆動装置22bは、プラテンローラー22aと巻取コア63とを同期して回転させる。
【0025】
プラテン側ギヤ列224は、ウォームホイールギヤ223に噛み合うプラテン入力ギヤ226と、プラテン入力ギヤ226に噛み合うと共にプラテンローラー22aの一端に軸着した(回転自在に取り付けられた)プラテン出力ギヤ227と、を有している。
【0026】
巻取側ギヤ列225は、ウォームホイールギヤ223に噛み合う巻取入力ギヤ列228と、巻取入力ギヤ列228の出力側のギヤに噛み合うと共に、巻取コア63に接続された巻取側駆動伝達機構75の巻取側ギヤ77(後述する。)に噛み合う巻取出力ギヤ229と、を有している。
【0027】
言うまでもないが、それぞれのギヤとギヤとの間にはバックラッシュが存在する。そのため、バックラッシュに基づく遊びが、プラテンローラー22aの回転方向の僅かながたつきの原因となっている。本実施形態に係るテープ印刷装置1(制御装置)は、印刷開始前およびカッター機構23によるテープカット前後にバックラッシュに基づく遊びを除去するためのDCモーター221の駆動制御を行う。なお、ネジ歯車であるウォームギヤ222とウォームホイールギヤ223との間のバックラッシュは無視することができ、また、プラテンローラー22aに回転力を加えてもウォームギヤ222を回転させることはできない。
【0028】
図4に示すように、カッター機構23は、固定刃と可動刃とが印刷テープ32を挟んで上下に対抗して臨む、いわゆる鋏式のものであり、プラテンローラー22aの前方に設けられている。印刷処理が終了した印刷テープ32は、カッター機構23により切断され、シート排出口20から外部に排出される。
【0029】
図2および図4に示すように、テープ検出機構24は、いわゆる反射型のフォトセンサーであり、テープカートリッジ12とテープ搬送機構22との間に設けられた第1摺接部材25に組み込まれた第1光電素子26と、カッター機構23の前方のシート排出口20に設けられ第2摺接部材27に組み込まれた第2光電素子28と、を有している。第1光電素子26および第2光電素子28は、印刷テープ32の下面に臨むように配設されている。
【0030】
図示は省略するが、第1光電素子26および第2光電素子28は、それぞれ発光素子と受光素子とを有しており、発光素子から放射された光が受光素子で受光の有無によって、後述する各被検出孔323や印刷テープ32の有無が検出される。本実施形態に係るテープ印刷装置1(制御装置)は、印刷テープ32が無くなり、第1光電素子26が反射光を受光できない(後述するセンサー対峙部841(ラベルシール842)を検出し続ける)場合に、テープ搬送機構22および印刷機構52を停止させる。
【0031】
具体的には、第1光電素子26が、各被検出孔323を検出することで印刷テープ32(ラベル322)の頭出しを行い、また印刷テープ32の有無を検出することで所謂テープエンド検出を行っている。テープエンド検出を行うことで、所謂空印刷を防止することができ、空印刷に基づくプラテンローラー22aやサーマルヘッド521の劣化や損傷を有効に防止することができる。また、第2光電素子28は、印刷テープ32の排出を検出する。
【0032】
第1摺接部材25および第2摺接部材27は、繰り出された印刷テープ32が摺接して搬送される経路(搬送経路)となるものであり、印刷テープ32の最大幅と略同一幅でテーブル状に形成されている。また、第1摺接部材25の左右方向略中央には、第1光電素子26の光路となる第1開口部25aが形成され、同様に第2摺接部材27には、第2光電素子28の光路となる第2開口部27aが形成されている。第1光電素子26の発光素子および受光素子(図示省略)は、第1摺接部材25の上端面から突出しないように第1開口部25a内に配設され、同様に、第2光電素子28の発光素子および受光素子(図示省略)は、第2摺接部材27の上端面から突出しないように第2開口部27aに配設されている。
【0033】
このように、テープ検出機構24は、各摺接部材25,27上の印刷テープ32の検出が可能であると共に、各光電素子26,28と印刷テープ32との距離が一定に維持されるようになっている。これにより、搬送中の印刷テープ32が、搬送経路上において僅かに揺らぐ場合であっても、印刷テープ32と各光電素子26,28との間隔を一定に保つことができ、確実、且つ、安定した印刷テープ32の検出をすることができる。なお、光の拡散や反射を極力少なくすべく、第1摺接部材25および第2摺接部材27を省略するようにしてもよい。
【0034】
<テープカートリッジ>
続いて、図2、図4、図6ないし図9を参照して、テープカートリッジ12について詳細に説明する。図6(a)は、印刷テープ32およびサーマルヘッド521の平面図、図6(b)は、印刷テープ32、サーマルヘッド521およびプラテンローラー22aの平面図である。図7(a)は、テープカートリッジ12の斜視図、図7(b)は、テープ体30よび軸ホルダー34の斜視図、図7(c)は、図7(b)のA−A線における断面図である。図8は、テープカートリッジ12の分解斜視図である。図9(a)は、軸ホルダー34の正面図、図9(b)は、軸ホルダー34の側面図および図9(a)のB−B線における断面図である。
【0035】
テープカートリッジ12は、印刷テープ32をテープコア33に巻回してなるテープ体30と、テープコア33を回転自在に支持するカートリッジケース31と、を備えている。なお、テープカートリッジ12は、テープ装着部21に対して着脱可能に装着されている。テープカートリッジ12には、幅や色などが異なる種類の印刷テープ32が収容されている。また、ユーザーフレンドリーを考慮し、所謂ロール紙やダイカットテープが用意されている。
【0036】
図6(a)に示すように、印刷テープ32は、長尺の剥離紙321上に複数のラベル322が等間隔で貼着された、所謂ダイカットテープである。剥離紙321は、ラベル322よりも腰の弱い薄手に形成されている。
【0037】
各ラベル322の間における剥離紙321の部分には、被検出孔323が等間隔で複数形成されている。この複数の被検出孔323は、上述したテープ検出機構24により検出されるものである。テープ検出機構24が、各被検出孔323を検出することにより、各ラベル322に対する印刷タイミングが計算され、位置ずれのない正確な印刷が行われる。
【0038】
各被検出孔323は、剥離紙321(印刷テープ32)の幅方向の中間位置において、剥離紙321の厚み方向に貫通して形成されている。各被検出孔323は、印刷テープ32の正送り方向の後側となる孔端が、幅方向に対し平行に形成され、正送り方向の前側となる孔端が、幅方向に対し円弧状(非平行)に形成されている。つまり、各被検出孔323は、平面から見て「D」字状に形成されている。なお、「正送り」とは、通常の印刷動作時の印刷テープ32の搬送を指し、「逆送り」とは、正送りとは反対の方向への搬送を指す。
【0039】
ここで、複数の被検出孔323が形成された印刷テープ32の搬送の際、印刷テープ32には、センター(幅方向中央)に寄せ込もうとする微小な分力が作用し(図6(a)の破線矢印参照)、送り方向の後側の孔端が、後述するサーマルヘッド521やリボン経路変更軸522に引っ掛り、印刷テープ32が損傷する場合がある(図6(b)参照)。そこで、本実施形態に係る印刷テープ32は、各被検出孔323の平面形状を「D」字状とすることで、上記印刷テープ32の引っ掛りおよび損傷を防止している。
【0040】
具体的には、印刷テープ32を逆送りする場合、逆送り方向の前側の孔端は、プラテンローラー22aによる押えが利いて孔端の盛り上がりが押えられ、また逆送り方向の後側の孔端は、プラテンローラー22aによる押えが除々に利いてゆき最終的に孔端の盛り上がりが押えられる。一方、正送り方向の前側の孔端は、プラテンローラー22aによる押えが利いて孔端の盛り上がりが押えられ、また正送り方向の後側の孔端は、プラテンローラー22aの一部が被検出孔323に臨むと、この外周面の一部が変形して被検出孔323に入り込み、被検出孔323を押し広げることで、盛り上がりが押えられる。すなわち、正送り方向前側(逆送り方向後側)の孔端を幅方向に対し円弧状(非平行)とすることにより、被検出孔323およびその周囲にプラテンローラー22aの押えを有効に作用させることができ、被検出孔323がサーマルヘッド521等に引っ掛るのを有効に防止することができる。
【0041】
また、プラテンローラー22aによる送りの際に生ずる印刷テープ32をセンター(幅方向中央)に寄せ込もうとする微小な分力に対し、被検出孔323の円弧部分がこれに抗する形状となるため、両孔端に生ずる盛り上がりを極力少なくすることができる。さらに、正送り方向後側(逆送り方向前側)の孔端が幅方向に対し平行に形成されているため、テープ検出機構24(第1光電素子26および第2光電素子28)により被検出孔323の位置を正確に検出することができる。
【0042】
詳細は後述するが、本実施形態では、印刷テープ32の逆送りを行うことがある。この場合、逆送り方向上流側の印刷テープ32はシート排出口20に臨んでいるため、印刷テープ32にはバックテンションがかかっていない。印刷テープ32にバックテンションを与えず、プラテンローラー22aで送ると、印刷テープ32をセンターに寄せ込もうとする微小な分力がそのまま印刷テープ32に作用する。このような場合でも、本実施形態に係る印刷テープ32を用いることで、被検出孔323およびその周囲にプラテンローラー22aの押えを有効に作用させることができる。
【0043】
なお、被検出孔323は、正送り方向前側(逆送り方向後側)の孔端を幅方向に対し非平行とすればよいため円弧状に限らず、例えば、多くの角を有する形状にしたり、被検出孔323の開口形状を三角形としてもよい。また、本実施形態では、ダイカットテープを用いたが、この他にも、印刷面の裏面に粘着層および剥離層を有し、印刷済み部分をカッター機構23により切断することでラベルを形成する印刷テープ32を用いてもよい。なお、印刷テープ32として感熱ロール紙を用いてもよい。この場合、リボンカートリッジ17を省略することができる。
【0044】
図7および図8に示すように、テープ体30は、紙製で中空円筒状のテープコア33の外周に、印刷面を内側に向けた印刷テープ32が巻回した、所謂内巻きの形態を成している。また、テープ体30は、テープコア33の軸方向両端に位置した軸ホルダー34により回転自在に軸支される。このように、印刷テープ32が記録面となるラベル322を内側にして巻回されているため、印刷前にラベル322が汚れたり、損傷したりすることを防止することができる。なお、テープ体30の両端面には、巻回した印刷テープ32がバラけることを防止するための粘着シート(図示省略)が貼付されている。
【0045】
カートリッジケース31は、テープ体30(テープコア33)の両端を軸支する一対の制動機構36と、各制動機構36を内向きに突設した一対の軸ホルダー34と、一対の軸ホルダー34と共にテープ体30を収容する本体ケース35と、を有している。
【0046】
図7ないし図9に示すように、各軸ホルダー34は、板状に形成されており、その略中央には、制動機構36が突設されている。一対の軸ホルダー34は、テープ体30を両端から挟み込むように位置し、一対の制動機構36(ロール軸37)を介してテープコア33を軸支する。
【0047】
図7および図8に示すように、本体ケース35は、テープ体30の下側周面をカバーするテープカバー部351と、テープカバー部351の左右方向両端に立設した一対の側壁部352と、を有している。テープカバー部351は、その後方が、テープ体30の周面に沿って湾曲して形成されている。各側壁部352は、テープ体30の直径よりも大きい円板状に形成されている。なお、テープカバー部351の下面には、印刷テープ32の種別を検出するための被検出部である複数の突起が設けられている(図示省略)。
【0048】
各側壁部352の内側、前後方向略中央部分には、軸ホルダー34と略相補的な形状に、上下方向に渡って僅かに窪んだ位置規制溝353が形成されている。テープ体30を軸支した一対の軸ホルダー34を、各側壁部352の位置規制溝353に嵌合させると、テープ体30と各側壁部352とが略同軸上に位置するようになっている。
【0049】
また、各側壁部352の外側上端部には、各軸ホルダー34上部の係合頭部341が係合する係合突起354が形成され、各側壁部352の立設部分のテープカバー部351には、各軸ホルダー34下端の係合凸部342が係合する一対の係合孔355が貫通形成されている。
【0050】
図7ないし図9に示すように、各制動機構36は、軸ホルダー34の略中央に突設し、テープコア33を軸支するロール軸37と、ロール軸37に組み込まれ、回転するテープコア33の内周面に摺接してテープ体30に回転制動力を与える制動手段38と、を有している。
【0051】
各ロール軸37は、全体として略中空円筒状に形成され、テープコア33の内周面に対し摺接可能な外径を有している。
【0052】
各制動手段38は、ロール軸37の一部に軸方向に延在して形成されたバネ性を有する一対のバネ片部381と、一対のバネ片部381をテープコア33の内周面に向かって付勢する制動バネ382と、を有している。
【0053】
一対のバネ片部381は、各ロール軸37の前後位置(180°対称位置)において、それぞれ軸方向に切り込まれた一対のスリットにより、切り分けられたロール軸37の一部で形成されている。一対のバネ片部381の先端部の内側には、制動バネ382の一対の線材端を掛け止めするための掛止部383が形成されている。
【0054】
各バネ片部381は、ロール軸37の一部であるため、周方向に円弧状に形成されている。したがって、テープコア33の内周面に沿って摺接するため、紙製のテープコア33の内周面を傷つけてしまうことがない。これにより、所望の回転負荷(制動力)を安定的に得ることができる。また、ロール軸37の一部が、バネ片部381を兼ねているため、テープ体30(テープコア33)に対し、回転負荷を付与しつつテープ体30を回転自在に軸支することができる。これにより、少ない部品点数で簡単に制動手段38を構成することができる。
【0055】
各制動バネ382は、所謂捻りコイルバネで構成されている。各制動バネ382は、線材巻回部分がロール軸37の軸心基部に設けられたバネ位置規制部384によって位置決めされ、一対の線材端が上記した掛止部383に掛け止めされることで固定されている。各制動バネ382が、一対のバネ片部381をテープコア33の内周面に所定の力で押し付けることにより、テープコア33(テープ体30)の回転に負荷が与えられる。なお、一対のバネ片部381以外のロール軸37の部分は、回転するテープコア33の内周面に摺接し、テープコア33(テープ体30)の回転を安定させる。
【0056】
以上のように、各制動バネ382の付勢力は、一対のバネ片部381を介してテープコア33の内周面に作用する。各バネ片部381は、テープコア33の材質や内周面との接触面積を考慮して自由に設定することができる。これにより、バネ片部381を安定した付勢力でテープコア33の内周面に押し付け、安定した摺接状態を維持することができる。また、ロール軸37の対称位置に一対のバネ片部381を設けることにより、テープ体30(テープコア33)に対し、偏りの無いバランスの取れた回転負荷を与えることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、制動バネ382として捻りコイルバネを用いたため、一対のバネ片部381が180°対称位置に設けられていたが、バネ片部381の形成位置および形成数(1つ以上)は、制動バネ382の種類、線材端の位置や数によって、任意に設定することが好ましい。例えば、120°間隔で3つのバネ片部381を設ける場合、若しくは、90°間隔で4つのバネ片部381を設ける場合、または、72°間隔で5つのバネ片部381を設ける場合等が考えられる。また、制動バネ382を省略し、バネ性を有する1つ以上のバネ片部381のみでテープ体30(テープコア33)を制動してもよい。
【0058】
<装置側制動機構および装置側制動伝達機構>
次に、図10を参照して、装置側制動機構13および装置側制動伝達機構14はについて説明する。図10(a)は、装置側制動機構13および装置側制動伝達機構14の斜視図、図10(b)は、装置側制動機構13および装置側制動伝達機構14の分解斜視図である。
【0059】
図10(b)に示すように、装置側制動機構13は、環状の装置側板バネ131と、装置側板バネ131との摺動抵抗を安定させる環状のシール132と、を有している。
【0060】
図10に示すように、装置側制動伝達機構14は、後述するリボンカートリッジ17の繰出側制動伝達機構71の繰出側ギヤ73に係脱自在(噛み合わせたり、解いたりすることが可能)に噛み合う装置側ギヤ41と、テープ印刷装置1のフレーム42に支持され、装置側ギヤ41が回動自在に支持する装置側支軸43と、を有している。
【0061】
装置側ギヤ41は、周面に複数の歯が形成されたギヤ本体44と、ギヤ本体44のフレーム42側においてギヤ本体44よりも大径に形成されたフランジ部45と、を有している。装置側ギヤ41の中心には装置側支軸43が挿入される軸孔46が貫通形成され、装置側ギヤ41は装置側支軸43に回転自在に支持される。
【0062】
装置側ギヤ41のフランジ部45側には、装置側制動機構13が装着される環状凹設部47が窪入形成されている。この環状凹設部47には、シール132と装置側板バネ131とがこの順番で嵌め込まれる。そして、環状凹設部47に装置側制動機構13を装着した装置側ギヤ41を装置側支軸43に軸支させると、装置側板バネ131は、環状凹設部47の底面とフレーム42との間に臨む。すなわち、装置側板バネ131が、環状凹設部47の底面とフレーム42とに摺接することで、装置側ギヤ41の回転に負荷(制動力)がかかる。
【0063】
なお、装置側板バネ131は、シール132を介して環状凹設部47の底面に摺接するため、該底面の磨耗を防ぐことができる。またなお、装置側制動機構13による制動力は、後述するカートリッジ側制動機構65(正確には繰出側制動機構65a)の制動力よりも小さく設定されている。
【0064】
<蓋ケース>
図1ないし図4に示すように、蓋ケース15は、後端部に設けられたヒンジ15aを中心に前方を跳ね上げるようにして回動可能に設けられ、搬送アッセンブリー11(テープ装着部21)を開放する開閉蓋として用いられる。また、蓋ケース15の開放により、印刷アッセンブリー16(リボン装着部51)を開放することとなる。これにより、テープカートリッジ12およびリボンカートリッジ17の交換が可能となると共に、各機構のメンテナンスが可能となる。
【0065】
<印刷アッセンブリー>
図2ないし図4に示すように、印刷アッセンブリー16は、リボンカートリッジ17を装着するリボン装着部51と、印刷テープ32に印刷処理を行う印刷機構52と、を備えている。
【0066】
リボン装着部51は、蓋ケース15の内側において、印刷機構52の後側に窪入形成された繰出装着部511と、印刷機構52の前側に窪入形成された巻取装着部512と、を有している。すなわち、リボンカートリッジ17は、印刷機構52を跨ぐようにしてリボン装着部51に装着される。なお、繰出装着部511は、図2および図3において巻取装着部512よりも手前側(蓋ケース15を閉じた状態で下方)に位置している。
【0067】
印刷機構52は、いわゆるサーマルヘッド521と、サーマルヘッド521を駆動制御するヘッド駆動装置(図示省略)と、インクリボン61がサーマルヘッド521の発熱部に臨むように、サーマルヘッド521の前後に配設され、インクリボン61の走行路66を変更する一対のリボン経路変更軸522と、で構成されている。サーマルヘッド521は、プラテンローラー22aの配設位置で、上側からインクリボン61を介して印刷テープ32に摺接するように配設されている(図4参照)。
【0068】
<リボンカートリッジ>
次に、図2、図4、図11ないし図13を参照して、リボンカートリッジ17について説明する。図11は、リボンカートリッジ17の斜視図である。図12は、リボンカートリッジ17の分解斜視図である。図13(a)は、カートリッジ側制動機構65の分解斜視図、図13(b)は、カートリッジ側制動機構65の断面図である。
【0069】
図2および図4に示すように、リボンカートリッジ17は、インクリボン61を繰出コア62に巻回してなるリボン体60と、使用後のインクリボン61を巻き取る巻取コア63と、繰出コア62および巻取コア63を回転自在に支持するリボンケース64と、リボン体60(繰出コア62)および巻取コア63に制動力を与えるカートリッジ側制動機構65(図11(b)参照)と、を備えている。
【0070】
図11および図12に示すように、繰出コア62および巻取コア63は、それぞれ中空円筒状に形成されている。繰出コア62の右端には、繰出側制動伝達機構71が取り付けられ、巻取コア63の右端には、巻取側駆動伝達機構75が取り付けられている。
【0071】
繰出側制動伝達機構71は、繰出コア62の軸心に嵌合固定され、リボンケース64の側壁部352に回転自在に支持された繰出側支軸72と、繰出側支軸72に軸着された繰出側ギヤ73(カートリッジ側ギヤ)と、を有している。
【0072】
繰出側支軸72は、繰出コア62(リボン体60)の右端面が当接すると共に、後述する繰出ケース部80の右側内側面に摺接する繰出フランジ部74を有している。繰出側ギヤ73は、蓋ケース15を閉じた状態で、上述した装置側制動伝達機構14の装置側ギヤ41に噛み合う(図5参照)。これにより、繰出コア62の回転には、装置側制動機構13からの負荷(トルク)が作用し、この負荷がインクリボン61にバックテンションを与える。
【0073】
同様に、巻取側駆動伝達機構75は、巻取コア63の軸心に嵌合固定され、リボンケース64の側壁部352に回転自在に支持された巻取側支軸76と、巻取側支軸76に軸着された巻取側ギヤ77と、を有している。
【0074】
巻取側支軸76は、巻取コア63の右端面が当接すると共に、後述する巻取ケース部81の右側内側面に摺接する巻取フランジ部78を有している。巻取側ギヤ77は、蓋ケース15を閉じた状態で、上述した搬送駆動装置22bの巻取出力ギヤ229に噛み合う(図5参照)。これにより、巻取コア63は、搬送駆動装置22b(DCモーター221)からの駆動力が伝達され、インクリボン61を巻き取る方向に回転する。
【0075】
繰出側ギヤ73および巻取側ギヤ77は、繰出コア62および巻取コア63を手動で回転させるための操作ノブを兼ねている。これにより、意図せず繰出コア62または巻取コア63が回転し、インクリボン61が弛んでしまった場合でも、繰出側ギヤ73または巻取側ギヤ77を操作ノブとして使用し、弛んだインクリボン61を各コア62,63に再び巻き取ることができる。
【0076】
リボンケース64は、繰出コア62を回転自在に収納する繰出ケース部80と、巻取コア63を回転自在に収納する巻取ケース部81と、繰出ケース部80および巻取ケース部81の左右両端部においてインクリボン61の走行路66を挟んで前後方向に連結する一対の連結部82と、を有している。リボン体60から繰り出されたインクリボン61は、繰出ケース部80に形成されたリボン送出口83から、露出して走行路66を通り、巻取ケース部81に形成されたリボン引込口87に引き込まれ、巻取コア63に巻き取られる(図2および図4参照)。
【0077】
繰出ケース部80は、下繰出ケース84に対し、上繰出ケース85が後端部を中心に前側を跳ね上げるようにして回動可能に設けられている。同様に、巻取ケース部81は、下巻取ケース88に対し、上巻取ケース89が前端部を中心に後側を跳ね上げるようにして回動可能に設けられている。
【0078】
図2および図4に示すように、下繰出ケース84の下面には、第1光電素子26が対峙するセンサー対峙部841が形成されている。センサー対峙部841は、印刷テープ32の搬送経路(図4の破線参照)に倣った形状に形成されている。
【0079】
このため、第1光電素子26は、露出するインクリボン61の近傍、ひいてはサーマルヘッド521の近傍に配置することができる。また、センサー対峙部841と搬送経路上の印刷テープ32とを最大限近付けて配置することができる。これにより、装置ケースの隙間部分等から侵入した外部の光が、第1光電素子26に達するのを極力阻止することができる。そして、各被検出孔323や印刷テープ32の有無を精度良く検出することにより、ラベル322の頭出しやテープエンド検出(テープコア33に巻回した印刷テープ32が全て繰り出されたこと)を精度良く行うことができる。すなわち、リボンケース64を部分的に形状変更することで、印刷テープ32(各被検出孔323)の誤検出を有効に防止することができる。
【0080】
また、センサー対峙部841は、左右方向、略中央部に黒色のラベルシール842が貼着されている。ラベルシール842は、下繰出ケース84に倣うように「L」字状に折り曲げて貼着されている(図2参照)。これにより、センサー対峙部841(ラベルシール842)に到達した第1光電素子26からの発光を、この部分で確実に吸収させることができる。また、リボンケース64に塗装等の着色加工を施すことなく、センサー対峙部841を簡単に構成することができる。なお、ラベルシール842を省略し、センサー対峙部841を黒色等の暗色で着色してもよい。
【0081】
以上より、センサー対峙部841は、リボンカートリッジ17から露出したインクリボン61や一対のリボン経路変更軸522から外れた位置に形成されており、第1光電素子26は、センサー対峙部841に対向する位置で印刷テープ32の下面に臨み、搬送経路上の印刷テープ32等を検出するようになっている。このため、第1光電素子26は、インクリボン61が印刷テープ32と同系色である場合でも、インクリボン61を印刷テープ32として誤検出することがない。これにより、テープエンド検出を確実に検出することができ、印刷処理の停止やテープカートリッジ12の交換の報知等、適切な処置を行うための契機とすることができる。なお、第2光電素子28も、第1光電素子26と同様の構成としてもよい。この場合、下巻取ケース88の下面に、第2光電素子28が対峙するセンサー対峙部841を形成する。
【0082】
図11および図12に示すように、繰出ケース部80および巻取ケース部81には、それぞれ左右両端面に軸受開口86が形成されている。右側の各軸受開口86は、繰出側支軸72および巻取側支軸76を介して繰出コア62および巻取コア63を回動自在に軸支できるように円形に形成されている。他方、左側の各軸受開口86は、後述するカートリッジ側制動機構65の受け部材91を回転不能となるように、一辺の直線部を有した略円形(D字状)に形成されている。
【0083】
ここで、リボンカートリッジ17では、繰り出したインクリボン61が弛まないようにするために、繰出コア62に対して制動をかけ、バックテンションを与えながらインクリボン61を繰り出すことが重要となる。また、リボンカートリッジ17の交換時に、プラテンローラー22aに張り付いたインクリボン61を引き離す際の弛み防止や、リボンカートリッジ17のハンドリング(持ち運び等)時のインクリボン61の弛みを防止するため、巻取コア63に対して制動をかける必要がある。
【0084】
図11ないし図13に示すように、カートリッジ側制動機構65は、繰出コア62およびこれに巻回したインクリボン61を制動対象物とする繰出側制動機構65aと、巻取コア63およびこれに巻回したインクリボン61を制動対象物とする巻取側制動機構65bと、を有している。なお、詳細は後述するが、繰出側制動機構65aの制動力は、装置側制動機構13による制動力よりも十分大きく設定されている。
【0085】
繰出側制動機構65aおよび巻取側制動機構65bは、それぞれ、繰出コア62および巻取コア63の左側から軸心に固定されて各コア62,63と一体に回転する一対の回転部材90と、各回転部材90と同軸上に配設され、左側の各軸受開口86に回転不能に固定される一対の受け部材91と、各受け部材91および各回転部材90の相互の対向面にそれぞれ形成した単一のバネ収容部92と、バネ収容部92に収容され、回転部材90に回転制動力を付与する2種類の環状のカートリッジ側板バネ93と、を備えている。
【0086】
カートリッジ側板バネ93は、径および付勢力の大きな大径板バネ93a、および、大径板バネ93aに比して、径および付勢力の小さな小径板バネ93bの2種類があり、繰出側制動機構65aには大径板バネ93aが組み込まれ、巻取側制動機構65bには小径板バネ93bが組み込まれている。なお、繰出側制動機構65aと巻取側制動機構65bとは、組み込まれるバネの種類が異なること意外は略同様の構成を有している。
【0087】
各回転部材90は、各コア62,63の中空の軸心に嵌合する可動筒状部94と、可動筒状部94の一方の端部に設けられ、バネ収容部92の対向面を構成する可動フランジ部95と、を有している。
【0088】
可動筒状部94は、可動フランジ部95においてバネ収容部92の対向面となる面の裏面に突設されている。可動フランジ部95の該対向面となる面には、大径板バネ93aを外周部分で位置決めする可動側環状突起96が突設されている。なお、可動筒状部94、可動フランジ部95および可動側環状突起96は、同軸(同心円)上に配設されている。また、可動筒状部94および可動フランジ部95には、受け部材91の固定軸部98が挿通する貫通孔97が形成されている。
【0089】
各受け部材91は、可動筒状部94を抜止め状態で且つ回転自在に支持する固定軸部98と、固定軸部98の一方の端部に設けられ、バネ収容部92の対向面を構成する固定フランジ部99と、を有している。
【0090】
固定軸部98は、固定フランジ部99においてバネ収容部92の対向面となる面に突設されている。固定軸部98は先端部分が4つの片に分割され、各片の外側には引掛り部981が形成されている。これにより、固定軸部98が回転部材90の貫通孔97に挿通されると可動筒状部94の先端面に各引掛り部981が係合し、回転部材90と受け部材91とが抜止め状態となる。
【0091】
固定フランジ部99の該対向面となる面と固定軸部98との継ぎ目部分には、小径板バネ93bを内周部分で位置決めする固定側環状突起100が突設されている。固定フランジ部99の該対向面となる面の裏面には、左側の「D」字状の各軸受開口86に嵌合するように、「D」字状のD字環状突起101が形成されている。D字環状突起101が左側の各軸受開口86に嵌合することで、各受け部材91が回転不能に固定される。
【0092】
固定フランジ部99は、可動側環状突起96の外径と略同一径に形成されている。固定軸部98を貫通孔97に挿通して回転部材90と受け部材91とを連結した状態で、固定フランジ部99は可動側環状突起96に当接する。すなわち、可動側環状突起96の内側面と、可動フランジ部95および固定フランジ部99の対向面と、で囲まれた範囲がバネ収容部92となる。
【0093】
バネ収容部92に収容した大径板バネ93a(小径板バネ93b)は、受け部材91を受けとして、回転部材90を軸方向(右方向)に付勢する。すなわち、この付勢力によって、繰出コア62(巻取コア63)は、回転部材90と繰出ケース部80(巻取ケース部81)の右側内側面との間に挟まれ、制動力(回転負荷)が与えられる。これにより、リボン装着部51に未装着のリボンカートリッジ17内の繰出コア62および巻取コア63には、回転制動力が与えられ、インクリボン61の弛みが防止される。
【0094】
また、可動側環状突起96は、固定フランジ部99が当接した状態で、カートリッジ側板バネ93(大径板バネ93aまたは小径板バネ93b)の潰れが弾性限界内に収まる寸法(高さ)に形成されている。すなわち、組み立ての際に板バネに弾性限界を超える力が加わっても可動側環状突起96がストッパーとして機能し、カートリッジ側板バネ93の潰れが防止される。これにより、組み立て後、バネ収容部92内においてカートリッジ側板バネ93は、正常な付勢力を発揮することができる。これにより、回転部材90の回転を適正に制動することができる。
【0095】
大径板バネ93aは可動フランジ部95側(可動側環状突起96)で位置決めされ、小径板バネ93bは固定フランジ部99側(固定側環状突起100)で位置決めされる。これにより、大径板バネ93aおよび小径板バネ93bのうちいずれか一方を、間違いなく、正確に位置決めした状態でカートリッジ側制動機構65を簡単に組み立てることができる。具体的には、大径板バネ93aを用いる場合、可動側環状突起96を上に向けた状態で、可動側環状突起96の内側に大径板バネ93aを載置し、その後、上から受け部材91を嵌め込む。他方、小径板バネ93bを用いる場合、固定側環状突起100(固定軸部98)を上に向けた状態で、小径板バネ93bを固定軸部98に挿通させて固定側環状突起100に嵌め込み、その後、上から回転部材90を嵌め込む。以上のように、簡単に且つ精度良くカートリッジ側制動機構65を組み立てることができる。
【0096】
以上のように、繰出側制動機構65aには付勢力の大きな大径板バネ93aが組み込み、他方、巻取側制動機構65bには小径板バネ93bが組み込むことで、繰出コア62と巻取コア63とにそれぞれ異なる回転制動力を与えることができる。これにより、インクリボン61に常に張り(バックテンション)を与えることができる。また、単一のバネ収容部92に、付勢力が異なる大径板バネ93aまたは小径板バネ93bを選択的に収容することができため、受け部材91および回転部材90を設計変更することなく、回転部材90(繰出コア62および巻取コア63)の制動力を容易に変更することができる。さらに、大径板バネ93aおよび小径板バネ93bは、それぞれ全体が受け部材91および回転部材90の相互の対向面(バネ収容部92)に摺接するため、回転部材90等に対し安定した制動力を与えることができる。
【0097】
<リボンカートリッジの装着>
図2に示すように、リボンカートリッジ17をリボン装着部51に装着する際は、先ず繰出ケース部80を繰出装着部511に装着し、次に繰出ケース部80を軸にして、巻取ケース部81を回動させるようにして巻取装着部512に装着する。これにより、走行路66に繰り出されたインクリボン61が、サーマルヘッド521および一対のリボン経路変更軸522に当接するようになっている。
【0098】
このとき、巻取装着部512に装着するために回動された巻取ケース部81が、サーマルヘッド521や下流側のリボン経路変更軸522に接触することが考えられる。この場合、繰出ケース部80と巻取ケース部81との間隔(走行路66)を大きく開けることで、該接触を防止することができる。しかし、走行路66を長くした場合、リボンカートリッジ17(テープ印刷装置1)の大型化やインクリボン61に弛みが生じやすくなる等の問題がある。
【0099】
そこで、上記したように、本実施形態に係るリボン装着部51は、図2および図3において繰出装着部511を巻取装着部512よりも手前側に位置させることで、繰出ケース部80の装着を容易に行うことができるようになっている。すなわち、リボン装着部51にリボンカートリッジ17を装着し、蓋ケース15を閉じた状態では、巻取装着部512よりも繰出装着部511が下方に位置する(図4参照)。また、これにより、走行路66を拡大することなく、回動させた巻取ケース部81がサーマルヘッド521や下流側のリボン経路変更軸522に接触することを防ぐことができる。
【0100】
<繰出し側制動機構と装置側制動機構との関係>
ここで、蓋ケース15を閉じた状態で、リボンカートリッジ17に設けられた繰出側制動伝達機構71の繰出側ギヤ73は、装置側制動伝達機構14の装置側ギヤ41よりも前方で互いに噛み合うこととなる(図3参照)。仮に、装置側ギヤ41の回転負荷が大きく、繰出側ギヤ73の回転負荷が小さい場合、リボンカートリッジ17をリボン装着部51に装着して蓋ケース15を閉じる際、装置側ギヤ41は回転せず、繰出側ギヤ73がインクリボン61の繰り出し方向に回転しながら、互いのギヤが噛み合うことになる。この場合、走行路66上においてインクリボン61に弛みが発生し、正常なインクリボン61の搬送動作を行えなくなる。そこで、本実施形態に係る繰出側制動機構65aの制動力は、装置側制動機構13による制動力よりも十分大きく設定されている。
【0101】
未装着のリボンカートリッジ17には、カートリッジ側制動機構65から回転制動力が付与され、これによりインクリボン61の弛みを防止することができる。また、装着後のリボンカートリッジ17には、カートリッジ側制動機構65の他に装置側制動機構13により、繰り出されたインクリボン61にバックテンションが付与される。そして、装置側制動機構13の制動力は、繰出側制動機構65aの制動力よりも小さく設定されているため、リボンカートリッジ17をセットし蓋ケース15を閉じる際に、装置側ギヤ41が繰出側ギヤ73(繰出コア62)を回転させるように当接したとしても、繰出コア62は、カートリッジ側制動機構65の制動力により回転することがない。これにより、リボン装着部51に装着し、巻取コア63側に繰り出されたインクリボン61に弛みを防止し、正常な搬送を行うことができる。
【0102】
また、カートリッジ側制動機構65は、リボンカートリッジ17と共に使い捨てを前提としているため、耐久性は要求されない。他方、装置側制動機構13は、小さな制動力を発揮するもので足りる。このため、各制動機構13,65は低コストで構成することができる。
【0103】
さらに、繰出コア62は、繰出側制動機構65aと装置側制動機構13とにより、軸方向両端において回転制動力を付与された状態で軸支される。これにより、繰出コア62に対し、均等で安定した制動力を与えることができるため、繰出されたインクリボン61には均一なバックテンションを付与することができる。
【0104】
なお同様に、巻取側駆動伝達機構75の巻取側ギヤ77も、搬送駆動装置22bの巻取出力ギヤ229よりも前方に位置し、互いに噛み合うこととなり、搬送方向に回転するが、この場合は、インクリボン61の巻き取り方向への回転なので、インクリボン61に弛みが生じることはない。
【0105】
<印刷テープの搬送経路>
図4に示すように、印刷テープ32は、インクリボン61を介してサーマルヘッド521とプラテンローラー22aとの間に挟まれ、プラテンローラー22aの回転により、テープ体30から繰り出されながら、サーマルヘッド521により印刷処理がなされる。印刷処理は、DCモーター221により、巻取コア63およびプラテンローラー22aを同期して回転させて行われる。印刷処理後の印刷テープ32は、シート排出口20へと送られ、他方、インクリボン61は、巻取コア63に巻き取られる。なお、サーマルヘッド521およびプラテンローラー22aは、印刷テープ32の最大幅と略同一幅に形成されている。
【0106】
テープカートリッジ12は、装置本体ケース10の後方に位置するテープ装着部21に装着され、印刷テープ32は、テープカートリッジ12内に内巻きの形態で軸支されている。印刷テープ32は、下側から巻き解かれラベル322をサーマルヘッド521側に向けてシート排出口20まで繰り出される。すなわち、印刷テープ32は、斜め上前方に繰り出されるため、搬送される印刷テープ32が、蓋ケース15を閉じた状態で巻取装着部512よりも下方に位置する繰出装着部511に干渉することがない(図4参照)。したがって、印刷テープ32の搬送経路を変更せずに、印刷テープ32を適切にサーマルヘッド521に臨ませることができる。
【0107】
また、搬送経路の変更が不要であるため、印刷テープ32を無理に屈曲させる必要もない。したがって、印刷前に剥離紙321からラベル322が剥がれてしまうことがない。さらに、テープ装着部21を必要以上にサーマルヘッド521(印刷機構52)およびリボンカートリッジ17(リボン装着部51)から遠ざける必要がないため、テープ印刷装置1を小型化することができる。
【0108】
<テープカートリッジの装着および頭出し制御>
ユーザーは、蓋ケース15を開放し、印刷テープ32を内巻きに巻回したテープ体30を収容したテープカートリッジ12をテープ装着部21に装着する。そして、ユーザーは、印刷テープ32をカートリッジケース31から引き出し、その印刷テープ32の先端をシート排出口20に差し込み、その後、蓋ケース15を閉じる。
【0109】
テープ印刷装置1は、印刷を開始する前に、シート排出口20に臨むラベル322が印刷されないまま切断されることを防止するため、印刷テープ32を逆送り方向に搬送する(頭出し制御)。詳細には、テープ印刷装置1は、プラテンローラー22aを逆転させ、シート排出口20に設けられた第2光電素子28が、印刷テープ32(剥離紙321)に開口した被検出孔323の円弧状(逆送り方向の後側)の孔端を最初に検出するまで印刷テープ32を逆送りする。その後、通常の印刷処理と同様に、プラテンローラー22aを正転させ、上流側の第1光電素子26による被検出孔323の検出に基づいて、サーマルヘッド521に臨むラベル322に印刷が行われる。これにより、未処理のラベル322を無駄に消費することを防止することができる。
【0110】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【符号の説明】
【0111】
1:テープ印刷装置、10:装置本体ケース、12:テープカートリッジ、15:蓋ケース、17:リボンカートリッジ、18:制御端末、21:テープ装着部、22:テープ搬送機構、22a:プラテンローラー、24:テープ検出機構、25:第1摺接部材、26:第1光電素子、27:第2摺接部材、28:第2光電素子、31:カートリッジケース、32:印刷テープ、35:本体ケース、64:リボンケース、521:サーマルヘッド、841:センサー対峙部、842:ラベルシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型の光センサーとケースとの間隙に処理テープの送り経路を構成し、
前記光センサーにより、前記送り経路上における前記処理テープの有無を検出するテープ検出構造であって、
前記ケースは、前記光センサーと対峙するセンサー対峙部を有し、
前記センサー対峙部は、少なくとも前記光センサーの光を受ける部分が暗色に着色されていることを特徴とするテープ検出構造。
【請求項2】
前記センサー対峙部は、黒色のラベルで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のテープ検出構造。
【請求項3】
前記ケースは、インクリボンを収容したリボンカートリッジのリボンケースであり、
前記センサー対峙部は、前記リボンケースから露出した前記インクリボンの近傍に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のテープ検出構造。
【請求項4】
請求項3に記載のテープ検出構造と、
前記光センサーに対し前記処理テープの送り方向下流側に配設され、前記処理テープを送りながら前記インクリボンからの熱転写による印刷を行う印刷・送り手段と、
前記光センサーの検出結果に基づいて、前記印刷・送り手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記光センサーが前記センサー対峙部を検出し続けたときに、前記処理テープ「無」と判断して、前記印刷・送り手段を停止させることを特徴とする請求項4に記載のテープ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−10620(P2013−10620A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145512(P2011−145512)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000129437)株式会社キングジム (241)
【Fターム(参考)】