説明

テープ状織物、それを用いた肩紐、カップ部を有する衣類、及び、織物の製造方法

【課題】十分な通気性を確保しつつ目立ちにくいテープ状織物、それを用いた肩紐、カップ部を有する衣類、及び、織物の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1方向に延在する経糸71と、これと交差する第2方向に延在する緯糸72とを有するテープ状織物42において、経糸71を、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸とし、緯糸72を非弾性糸とする。また、経糸71及び緯糸72を、互いに交差する位置で係合し、隣接する経糸71同士の一部を、互いに接する位置で融着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状織物、それを用いた肩紐、カップ部を有する衣類、及び、織物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラジャーなどのカップ部を有する衣類においては、着用者の肩に掛け渡されるストラップ(肩紐)が設けられている。例えばブラジャーの肩紐が露出した場合、下着の一部が見え、清潔感に欠けるという印象を与えることがある。そのため、肩紐を目立たないようにしたいという要望ある。そこで、透明な軟質樹脂によって構成された肩紐が提案されている。例えば、特許文献1には、熱可塑性ポリウレタンエラストマー製の透明ゴムによって構成された肩紐が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−316912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、肩紐として、熱可塑性ポリウレタンエラストマー製の透明ゴムが使用されているため、通気性が不十分であり、蒸れやすく、炎症などの医療障害を引き起こすおそれがあった。そのため、十分な通気性を確保しつつ目立ちにくい肩紐の開発が望まれていた。また、発汗などにより肩紐が皮膚に密着すると、着用者に不快感を生じさせるおそれがあるため、通気性の確保が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、十分な通気性を確保しつつ目立ちにくいテープ状織物、それを用いた肩紐、カップ部を有する衣類、及び、織物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるテープ状織物は、第1方向に延在する経糸と、第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有するテープ状織物であって、経糸は、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸であり、緯糸は、非弾性糸であり、経糸及び緯糸は、互いに交差する位置で係合され、隣接する経糸の一部は、互いに接する位置で融着されていることを特徴としている。
【0007】
このように本発明のテープ状織物では、経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸を使用している。以下、場合により「熱融着性を有する(低融点)ポリウレタン弾性糸」を「ポリウレタン弾性糸」と略称する。ポリウレタン弾性糸のベア糸は、被覆されていないポリウレタン弾性糸であり、カバーリング糸が巻きつけられていないものである。ポリウレタン弾性糸は、透明であるので、カバーリング糸が巻きつけられていないベア糸として使用することで、透明感を有する織物を形成することができる。そのため、皮膚上に配置された場合に、目立ちにくいテープ状織物を形成することができる。また、本発明は、織物によって構成されているため、通気性を確保することが容易である。
【0008】
従来、ポリウレタン弾性糸のベア糸を用いて、織物を形成しようとすると、ポリウレタン弾性糸が収縮する現象(以下、「スリップイン」という。)が発生してしまい、好適な織物を形成することが困難であった。本発明のテープ状織物では、経糸として、ポリウレタン弾性糸のベア糸が使用され、経糸及び緯糸の交点において、経糸及び緯糸が係合し、隣接する経糸同士において、互いに接する部分が融着している。そのため、ポリウレタン弾性糸のベア糸を使用しても、スリップインの発生を防止することができる。また、本発明のテープ状織物では、上記の融着が施されているため、経糸及び緯糸のズレが抑制され、目割れの発生を防止することができる。これらにより、スリップイン、目割れを防止して、好適なテープ状織物を形成することができる。
【0009】
本発明による肩紐は、第1方向に延在する経糸と、第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有するテープ状織物を備えた肩紐であって、経糸は、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸であり、緯糸は、非弾性糸であり、経糸及び緯糸は、互いに交差する位置で係合し、隣接する経糸の一部は、互いに接する位置で融着されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の肩紐は、テープ状織物を用いたものであり、このテープ状織物では、経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸を使用している。ポリウレタン弾性糸のベア糸は、被覆されていないポリウレタン弾性糸であり、カバーリング糸が巻きつけられていないものである。ポリウレタン弾性糸は、透明であるので、カバーリング糸が巻きつけられていないベア糸として使用することで、透明感を有する織物を形成することができる。そのため、皮膚上に配置された場合に、目立ちにくいテープ状織物を形成することができる。また、本発明は、織物によって構成されているため、通気性を確保することが容易である。
【0011】
また、本発明のテープ状織物を用いた肩紐では、経糸として、ポリウレタン弾性糸のベア糸が使用され、経糸及び緯糸の交点において、経糸及び緯糸が係合し、隣接する経糸同士において、互いに接する部分が融着している。そのため、ポリウレタン弾性糸のベア糸を使用しても、スリップインの発生を防止することができる。また、本発明のテープ状織物を用いた肩紐では、上記の融着が施されているため、経糸及び緯糸のズレが抑制され、目割れの発生を防止することができる。これらにより、スリップイン、目割れを防止して、好適な肩紐を形成することができる。また、テープ状織物は、肌色に着色されていてもよい。このように肌色に着色することで、目立ちにくい肩紐を形成することができる。
【0012】
本発明によるカップ部を有する衣類は、バストを覆うように形成された左右一対のカップ部と、カップ部に連結され着用者の肩に掛け渡される肩紐とを備えた衣類であって、肩紐は、第1方向に延在する経糸と、第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有するテープ状織物を備え、経糸は、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸であり、緯糸は、非弾性糸であり、経糸及び緯糸は、互いに交差する位置で係合し、隣接する経糸の一部は、互いに接する位置で融着されていることを特徴としている。
【0013】
このように本発明のカップ部を有する衣類では、肩紐としてテープ状織物が使用されている。そして、このテープ状織物では、経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸が使用されている。ポリウレタン弾性糸のベア糸は、被覆されていないポリウレタン弾性糸であり、カバーリング糸が巻きつけられていないポリウレタン弾性糸である。ポリウレタン弾性糸は、透明であるので、カバーリング糸が巻きつけられていないベア糸として使用することで、透明感を有する織物を形成することができる。そのため、皮膚上に配置された場合に、目立ちにくいテープ状織物を形成することができる。また、本発明のカップ部を有する衣類の肩紐は、織物によって構成されているため、通気性を確保することが容易である。これらにより、十分な通気性を確保しつつ目立ちにくい肩紐を備えた、カップ部を有する衣類を実現することができる。
【0014】
また、本発明のカップ部を有する衣類の肩紐は、テープ状織物によって構成されている。この肩紐のテープ状織物では、経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸が使用され、経糸及び緯糸の交点において経糸及び緯糸が係合し、隣接する経糸同士において、互いに接する部分が融着している。そのため、ポリウレタン弾性糸のベア糸を使用しても、スリップインの発生を防止することができる。また、本発明のカップ部を有する衣類のテープ状織物では、上記の融着が施されているため、経糸及び緯糸のズレが抑制され、目割れの発生を防止することができる。これらにより、スリップイン、目割れを防止して、好適なテープ状織物を形成することができる。
【0015】
本発明による織物の製造方法は、第1方向に延在する経糸と、第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有する織物を製造する方法であって、経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸を使用し、緯糸として、非弾性糸を使用し、隣接する経糸の一部を融着可能とする経糸密度で織物を製織する製織工程と、経糸及び緯糸を、互いに交差する位置で係合させると共に、隣接する経糸の一部を互いに接する位置で融着させる融着工程と、を備えることを特徴としている。
【0016】
本発明の織物の製造方法では、経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸を使用して、製織する。ポリウレタン弾性糸のベア糸は、被覆されていないポリウレタン弾性糸であり、カバーリング糸が巻きつけられていないものである。ポリウレタン弾性糸は、透明であるので、カバーリング糸が巻きつけられていないベア糸として使用することで、透明感を有する織物を形成することができる。例えば、透明感を有する織物が皮膚上に配置された場合、皮膚が透けて見えるため、織物が目立ちにくくなる。
【0017】
また、本発明の製織工程では、隣接する経糸の一部を融着させるような経糸密度に設定されて、織物が製織される。そして、融着工程では、経糸及び緯糸の交点において、経糸及び緯糸を係合させると共に、隣接する経糸の一部を、互いに接する位置で融着させる。これにより、そのため、ポリウレタン弾性糸のベア糸を使用しても、スリップインの発生を防止することが可能な織物を製造することができる。また、このような融着工程を行うことで、経糸及び緯糸のズレが抑制され、目割れの発生を防止することが可能な織物を製造することができる。
【0018】
本発明の織物の製造方法では、製織工程で製織された織物を肌色に染色する染色工程を備えるものでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分な通気性を確保しつつ、着用した際に目立ちにくいテープ状織物、それを用いた肩紐、カップ部を有する衣類、及び、織物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るブラジャーを示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るブラジャーの肩紐を示す正面図である。
【図3】肩紐に適用される織物の組織図である。
【図4】肩紐に適用される織物の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明によるテープ状織物、肩紐、カップ部を有する衣類、及び、織物の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るブラジャーを示す正面図である。ブラジャー1は、左右一対のカップ部10、土台布20、バック布30、及び肩紐40を備える。なお、ブラジャー(カップ部を有する衣類)1は、左右対称であるため、左右の一方のみによって説明する。
【0022】
カップ部10は、着用者のバストを前面側から覆うものであり、バスト形状に対応させた椀形状となっている。カップ部10は、例えば不職布や発砲ポリウレタンといった一定の保形性及び弾力性を有する素材によって形成されている。カップ部10の脇から下部にかけて、非伸縮性の土台布20が縫着され、カップ部10は、土台布20によって支持されている。さらに、土台布20の脇側には伸縮性のバック布30が縫着されている。また、カップ部10の脇側上端10aには、伸縮性の肩紐40が縫着されている。なお、肩紐40は、ホックなどが設けられ、取り外し可能な構成でもよい(図2参照)。
【0023】
カップ部10の裏側には、カップ部10の下辺10bと土台布20との境界、すなわちバージスラインに沿って、厚手の布からなるカップ部下縁テープが縫着されている。このカップ部下縁テープの中には、ワイヤーが装着されている。
【0024】
バック布30は、土台布20から連続して形成され、着用者の脇側から背側中央に向かって帯状に形成される。バック布30は、例えばパワーネットなどの伸縮性を有する素材によって形成されている。また、バック布30の背側の端部にはホック31が設けられており、左右のバック部30は、このホック31によって係脱自在に連結される。
【0025】
肩紐40は、カップ部10の上部(頂部)とバック布30とに各々接続され、カップ部10の上部とバック布30の背側とを結ぶように掛け渡されている。図2は、本発明の実施形態に係るブラジャーの肩紐を示す正面図である。なお、図2では、両端部にホック43が設けられた肩紐40が示されている。肩紐40には、長さ調整具41が介設されており、着用者の体型に合わせた長さ調整が可能となっている。
【0026】
ここで、肩紐40は、透明感を有する織物テープ42によって形成されている。肩紐40の織物テープ42は、第1方向Yに延在し、薄型であり、所定の幅wを有するものである。織物テープ42の幅wは、例えば、12mmである。また、織物テープ42は、極めて薄く、例えば、書類の上に配置した場合、書類の文字を読み取ることが可能な程度の透明感を有している。
【0027】
図3は、肩紐に適用された織物の組織図であり、図4は、肩紐に適用された織物の縦断面図である。織物テープ42は、第1方向Yに延在する経糸71、及び第1方向Yと交差する第2方向Xに延在する緯糸72が互いに交錯されて形成されている。
【0028】
経糸71は、低融点ポリウレタン弾性糸のベア糸のみによって構成されている。ベア糸とは、被覆されていない糸であり、カバーリング糸が巻きつけられていないものである。従来の、いわゆる芯糸のみによって形成されたものである。また、低融点ポリウレタン弾性糸は、ポリウレタンを主成分として所定の弾性を有する。経糸71をベアのポリウレタン弾性糸によって形成することにより、長手方向Yにおける伸度を高いものとしている。
【0029】
この低融点ポリウレタン弾性糸(熱融着糸)は、加熱処理を行うことで溶融し、融着する特性を有するものである。この低融点ポリウレタン弾性糸は、所定の温度(例えば約130〜150℃)で融着する熱融着性の高いものである。なお、低融点ポリウレタン弾性糸が融着する温度は、その他の温度でもよい。
【0030】
緯糸72は、非弾性糸によって構成されている。緯糸72として、例えばナイロン糸を使用することができる。また、非弾性糸は、ナイロン糸のほか、ポリエステルなどその他の材料によって構成されたものでもよい。
【0031】
肩紐40の織り組織は、例えば変化斜文織である。なお、肩紐40の織り組織としては、平織、斜文織、朱子織など、その他の織り組織を適用してもよい。
【0032】
図3の組織図では、経糸71を図示左側から順に、経糸71a〜71hとして示し、緯糸72を図示上側から順に、緯糸72a〜72hとして示している。以下、経糸71a〜71hを区別する必要がない場合には、経糸71と記し、緯糸72a〜72hを区別する必要がない場合には、緯糸72と記す。図3の組織図では、織物組織において、経糸71が上側(一方側)で、緯糸72が下側(他方側)である場合を、「×」と記し、経糸71が下側で、緯糸72が上側である場合を無印としている。なお、上下は、逆でもよい。
【0033】
図4(a)は、肩紐40を長手方向Yに切った断面図であり、経糸71a側から経糸71d側を見た図である。図3及び図4(a)に示すように、具体的には、経糸71aは、緯糸72a〜72dと交差する場合は、緯糸の下側に配置され、緯糸72e〜72hと交差する場合は、緯糸の上側に配置されている。経糸71bは、緯糸72b〜72eと交差する場合は、緯糸の上側に配置され、緯糸72f〜72h,72aと交差する場合は、緯糸の下側に配置されている。経糸71cは、緯糸72c〜72fと交差する場合は、緯糸の下側に配置され、緯糸72g,72h,72a,72bと交差する場合は、緯糸の上側に配置されている。経糸71dは、緯糸72d〜72gと交差する場合は、緯糸の上側に配置され、緯糸72h,72a〜72cと交差する場合は、緯糸の下側に配置されている。
【0034】
図4(b)は、肩紐40を長手方向Yに切った断面図であり、経糸71e側から経糸71h側を見た図である。図3及び図4(b)に示すように、具体的には、経糸71eは、緯糸72a〜72dと交差する場合は、緯糸の上側に配置され、緯糸72e〜72hと交差する場合は、緯糸の下側に配置されている。経糸71fは、緯糸72b〜72eと交差する場合は、緯糸の下側に配置され、緯糸72f〜72h,72aと交差する場合は、緯糸の上側に配置されている。経糸71gは、緯糸72c〜72fと交差する場合は、緯糸の上側に配置され、緯糸72g,72h,72a,72bと交差する場合は、緯糸の下側に配置されている。経糸71hは、緯糸72d〜72gと交差する場合は、緯糸の下側に配置され、緯糸72h,72a〜72cと交差する場合は、緯糸の上側に配置されている。
【0035】
また、経糸71は、緯糸72と交差する位置(交差位置)で緯糸72に係合している。ここで、上記交差位置における経糸71及び緯糸72の構成について説明すると以下の通りである。経糸71は、緯糸72と当接する部分が緯糸72の形状に対応して窪み形状を呈し、窪み形状を呈する部分に緯糸72が嵌まり込むようにして係合している。
【0036】
また、経糸71は、隣接する経糸71と融着している。換言すると、隣接する経糸71同士は、互いに接する部分が融着している。具体的には、隣接する経糸71a,71bは、緯糸72aの下側、及び緯糸72eの上側で、互いに接する部分が融着している。同様に、隣接する経糸71b,71cは、緯糸72bの上側、及び緯糸72fの下側で、互いに接する部分が融着している。隣接する経糸71c,71dは、緯糸72cの下側、及び緯糸72gの上側で、互いに接する部分が融着している。隣接する経糸71d,71eは、緯糸72dの上側、及び緯糸72hの下側で、互いに接する部分が融着している。隣接する経糸71e,71fは、緯糸72aの上側、及び緯糸72eの下側で、互いに接する部分が融着している。隣接する経糸71f,71gは、緯糸72bの下側、及び緯糸72fの上側で、互いに接する部分が融着している。隣接する経糸71g,71hは、緯糸72cの上側、及び緯糸72gの下側で、互いに接する部分が融着している。隣接する経糸71h,71aは、緯糸72dの下側、及び緯糸72hの上側で、互いに接する部分が融着している。
【0037】
次に、肩紐40として採用された織物テープ42の仕様について、下記の表1に例示する。
【表1】

【0038】
肩紐40の織物テープ42では、製品幅wは12mmであり、経糸本数は178本である。ニードル織機を使用した場合、緯糸72は、通常1往復(28Tが2本となる)で1回の打ち込みとなり、緯糸72は、1cm間に46回入ることになる。本実施形態では、緯糸の番手が28Tである例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、33T程度の番手のナイロン糸を用いるものとしても良い。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係る肩紐に適用される織物の製造方法について説明する。本実施形態に係る織物の製造方法では、製織工程(第1工程)、融着工程(第2工程)、染色工程(第3工程)を行う。まず、製織工程では、経糸として、ポリウレタン弾性糸のベア糸を使用し、緯糸として、ナイロン糸を使用する。この製織工程では、隣接する経糸の一部同士を融着させるように、経糸密度が設定される。このように経糸密度を設定して製織を行うことで、適切な経糸本数を実現して、融着しやすい経糸の配置を実現することができる。
【0040】
融着工程では、製織工程によって製織された織物に加熱処理を施すことで、経糸71を溶融させて融着を行う。すなわち、加熱処理を行うことで、経糸71を緯糸72に係合させると共に、隣接する経糸71同士の互いに接する部分を融着させる。
【0041】
ここで、経糸71が緯糸72に係合する構成についてより具体的に説明する。経糸71は、加熱処理を施されて軟化しているため緯糸72と当接する部分が緯糸72の押圧力によって窪む。そのため、緯糸72は経糸71に形成された窪み部分に嵌まり込み係合される。続く、染色工程では、融着された織物を肌色に染色する。
【0042】
このように構成された織物テープ42、それを用いた肩紐40では、経糸71として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸を使用している。ポリウレタン弾性糸のベア糸は、被覆されていない状態のポリウレタン弾性糸であるため、透明感を有する織物を形成することができる。この織物テープ42は、文字が透けて見えるほどの透明感を有するものである。したがって、例えば肌の上に配置された場合、肩紐40は目立ちにくくなる。また、肩紐40は、織物テープ40を用いているので、十分な通気性が確保されている。これらにより、十分な通気性を確保しつつ目立ちにくいテープ状織物42、肩紐40を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態の織物テープ42、それを用いた肩紐40によれば、経糸71として、ポリウレタン弾性糸のベア糸が使用され、経糸71及び緯糸72の交点において、経糸71及び緯糸72が融着し、隣接する経糸71同士において、互いに接する部分が融着している。そのため、ポリウレタン弾性糸のベア糸を使用しても、スリップインの発生を防止することができる。また、本発明のテープ状織物42、それを用いた肩紐40では、上記の融着が施されているため、経糸71及び緯糸72のズレが抑制され、目割れの発生を防止することができる。これらにより、スリップイン、目割れを防止して、好適なテープ状織物42、それを用いた肩紐40を実現することができる。
【0044】
また、ブラジャー1の肩紐40は、上記の織物テープによって構成されている。これにより、肩紐40は、十分な通気性を有すると共に、着用した際に目立ちにくいものとなる。その結果、ブラジャー1の肩紐40が、露出した場合にあっても、他人に不快感を与えることがない。また、ブラジャー1の肩紐40は、十分な通気性を有するため、医療障害の発生を防止することができる。また、肩紐40は、十分な通気性を有するため、発汗などにより、肩紐40が皮膚と密着することが防止され、着用者に不快感を与えることがない。
【0045】
また、従来のブラジャーでは、肩紐によってバストの揺れを充分に吸収することができなかった。このため、バストの揺れによる荷重変化が充分に緩和されないままバストの揺れに伴う荷重変化が肩紐を介して着用者の肩に作用し肩への負担が大きくなるという問題があった。
【0046】
これに対し、本実施形態では、バストの揺れによってカップ部10に作用する荷重が変化しても肩紐40の伸縮によって肩に作用する荷重の変化が緩和される。このため、着用者の運動等によってバストが揺れても肩に作用する荷重の変化が緩やかなものとなり、バストの揺れに伴う肩の負担を軽減するという効果も得ることができる。
【0047】
また、ブラジャー1の肩紐40では、経糸であるポリウレタン弾性糸が、緯糸であるナイロン糸に熱融着されているため、従来よりも薄手なものとしつつも、パワー感の低下が防止されている。
【0048】
また、肩紐40は、織物によって構成されているため、織物表面の凹凸によって肌すべりが生じにくくなる。そのため、肩紐40が着用者の肩から滑り落ちることが防止される。また、肩紐40は、肌色に着色されているため、着用者の肌の上に配置された場合に、特に目立たなくなる。
【0049】
また、肩紐40の織物は、変化斜文織によって構成されているため、従来と比較して薄くすることができ、単位面積当りの経糸本数を増加させることが可能となる。また、変化斜文織によって構成された織物では、肩紐40をフラットに見せることができる。
【0050】
以上、本発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、テープ状織物をブラジャーの肩紐として採用しているが、その他の製品に本発明のテープ状織物を採用してもよい。例えば、衣類に設けられた開口の周縁部にテープ状織物を採用してもよい。ボトム衣類において、着用者の足が挿通される開口の周縁部にテープ状織物を採用することができる。
【0051】
また、上記実施の形態では、経糸の全てをベアのポリウレタン弾性糸としているが、経糸の一部にその他の糸を採用してもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、織物を肌色に着色しているが、その他の色に着色してもよく、着色されていない織物でもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、織物を製造する方法において、融着工程の後に、染色工程を実行しているが、融着工程の前に染色工程を実行してもよい。染色を行うと共に融着させる融着工程としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ブラジャー(カップ部を有する衣類)
10 カップ部
40 肩紐
42 織物テープ(テープ状織物)
71,71a〜71h 経糸
72,72a〜72h 緯糸
X 幅方向(第2方向)
Y 長手方向(第1方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在する経糸と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有するテープ状織物であって、
前記経糸は、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸であり、
前記緯糸は、非弾性糸であり、
前記経糸及び前記緯糸は、互いに交差する位置で係合し、
隣接する前記経糸の一部は、互いに接する位置で融着されていることを特徴とするテープ状織物。
【請求項2】
第1方向に延在する経糸と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有するテープ状織物を備えた肩紐であって、
前記経糸は、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸であり、
前記緯糸は、非弾性糸であり、
前記経糸及び前記緯糸は、互いに交差する位置で係合し、
隣接する前記経糸の一部は、互いに接する位置で融着されていることを特徴とする肩紐。
【請求項3】
前記テープ状織物が肌色に着色されていることを特徴とする請求項2記載の肩紐。
【請求項4】
バストを覆うように形成された左右一対のカップ部と、前記カップ部に連結され着用者の肩に掛け渡される肩紐とを備えた衣類であって、
前記肩紐は、第1方向に延在する経糸と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有するテープ状織物を備え、
前記経糸は、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸であり、
前記緯糸は、非弾性糸であり、
前記経糸及び前記緯糸は、互いに交差する位置で係合し、
隣接する前記経糸の一部は、互いに接する位置で融着されていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項5】
第1方向に延在する経糸と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する緯糸とを有する織物を製造する方法であって、
前記経糸として、熱融着性を有するポリウレタン弾性糸のベア糸を使用し、前記緯糸として、非弾性糸を使用し、隣接する前記経糸の一部を融着可能とする経糸密度で織物を製織する製織工程と、
前記経糸及び前記緯糸を互いに交差する位置で係合させると共に、隣接する前記経糸の一部を互いに接する位置で融着させる融着工程と、
を備えることを特徴とする織物の製造方法。
【請求項6】
前記製織工程で製織された前記織物を肌色に着色する着色工程を備えることを特徴とする請求項5記載の織物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−26740(P2011−26740A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174656(P2009−174656)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【出願人】(509211354)井上リボン工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】