説明

テープ貼付装置

【課題】幅方向のいずれの側に塗布領域が存在する非塗布領域であっても、一方の側面である特定側面を非塗布領域と塗布領域との間の境界に一致させつつマスキングテープを非塗布領域に貼付する。
【解決手段】テープ貼付装置は、マスキングテープ1fを基板9上に貼付する貼付機構(すなわち、走査機構およびテープ貼付ヘッド)、テープ貼付ヘッドを走査方向に垂直な方向に移動する移動機構、並びに、基板9を180°回転する回転機構を備える。これにより、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、特定側面103aにおける流動性材料の接触角が、基板9の主面90における流動性材料の接触角よりも大きい低コストのマスキングテープ1fを、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつ非塗布領域92に貼付することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の主面上の非塗布領域に当該非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL(Electro Luminescence)材料を利用した有機EL表示装置の開発が行われており、例えば、高分子有機EL材料を用いたアクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置の製造では、ガラス基板(以下、単に「基板」という。)に対して、TFT(Thin Film Transistor)回路の形成、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)電極の形成、隔壁の形成、正孔輸送材料を含む流動性材料(以下、「正孔輸送液」という。)の塗布、加熱処理による正孔輸送層の形成、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)の塗布、加熱処理による有機EL層の形成、陰極の形成、および、絶縁膜の形成による封止が順次行われる。
【0003】
有機EL表示装置の製造において、正孔輸送液または有機EL液を基板に塗布する装置の1つとして、特許文献1および特許文献2に示すように、流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルを、基板に対して主走査方向および副走査方向に相対移動することにより、基板上に流動性材料をストライプ状に塗布する装置が知られている。
【0004】
有機EL表示装置用の基板の表面には、正孔輸送液や有機EL液等の流動性材料が塗布されるべき塗布領域(すなわち、発光領域)の周囲に、ドライバ回路が組み込まれた領域や絶縁膜による封止のために必要な領域が設けられている。有機EL表示装置の製造では、正孔輸送層や有機EL層の形成工程においてこれらの塗布領域の周囲の領域(以下、「非塗布領域」という。)に流動性材料が付着する可能性があり、流動性材料が付着した状態で後工程が行われると電極の特性劣化や封止不良等が発生する可能性がある。したがって、基板上の非塗布領域に流動性材料が付着することを防止する必要がある。
【0005】
特許文献3では、有機EL素子用の基板上の非塗布領域にマスキングテープを貼付することにより、素子形成領域に選択的に塗布液を塗布する技術が開示されている。特許文献3に記載の有機EL素子の製造方法では、マスキングテープの側面における塗布液との接触角を、基板と塗布液との接触角よりも大きくすることより、マスキングテープの側面における塗布液のメニスカスの発生が抑制され、当該メニスカスの突出により後工程において生じる可能性がある陰極の膜厚不足等の不具合が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−111073号公報
【特許文献2】特開2004−89771号公報
【特許文献3】特開2006−216414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3の製造方法では、複数の素子形成領域の間の各非塗布領域にマスキングテープが1本ずつ貼付されるため、非塗布領域の幅が異なる複数種類の基板に対して塗布液を塗布する場合、基板の種類毎に幅が異なる複数種類のマスキングテープを準備する必要がある。このため、有機EL素子の製造に係る装置が複雑化し、製造に係るコストが増大してしまう。
【0008】
また、マスキングテープは、幅方向の一方側にのみ素子形成領域が存在する非塗布領域にも貼付されるが、このような非塗布領域に貼付されるマスキングテープであっても、両側の側面において塗布液との接触角が大きくされている。すなわち、素子形成領域と接しない側の側面においても接触角が大きくされているため、マスキングテープの製造に係るコストが増大してしまう恐れもある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、幅方向のいずれの側に塗布領域が存在する非塗布領域であっても、特定側面を非塗布領域と塗布領域との間の境界に一致させつつマスキングテープを非塗布領域に貼付することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基板の主面上の非塗布領域に前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置であって、基板を保持する基板保持部と、マスキングテープの一方の側面である特定側面の前記基板側のエッジを、前記基板の主面上の非塗布領域と塗布領域との境界に一致させつつ、前記マスキングテープを前記非塗布領域に貼付する貼付機構と、前記基板を前記主面に垂直な軸を中心に前記貼付機構に対して相対的に180°回転する回転機構と、前記非塗布領域の前記境界に垂直な方向に前記基板を前記貼付機構に対して相対的に移動する移動機構とを備え、前記マスキングテープの前記特定側面における流動性材料の接触角が、前記基板の前記主面における前記流動性材料の接触角よりも大きい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテープ貼付装置であって、前記貼付機構が、前記マスキングテープを繰り出すテープ供給部と、前記マスキングテープの前記テープ供給部から繰り出された部位を前記非塗布領域に向けて押圧する押圧部と、前記マスキングテープが前記押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記非塗布領域の前記境界に平行な走査方向に前記押圧部に対して相対的に移動することにより、前記マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付する走査機構とを備える。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のテープ貼付装置であって、前記回転機構により、前記基板が前記基板保持部と共に回転する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、前記貼付機構、前記回転機構および前記移動機構を制御することにより、前記非塗布領域の前記境界に前記特定側面を向けて前記非塗布領域に前記マスキングテープを貼付し、前記非塗布領域の前記境界とは反対側に位置し、かつ、前記境界に平行なもう1つの境界にもう1つのマスキングテープの一方の側面である特定側面を向けるとともに前記特定側面とは反対側の部位を前記マスキングテープに重ねて前記もう1つのマスキングテープを前記非塗布領域に貼付する制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、幅方向のいずれの側に塗布領域が存在する非塗布領域であっても、特定側面を非塗布領域と塗布領域との間の境界に一致させつつマスキングテープを非塗布領域に貼付することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】関連技術に係る塗布システムの構成を示す図である。
【図2】基板の平面図である。
【図3】マスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図4】テープ貼付装置の平面図である。
【図5】テープ貼付装置の正面図である。
【図6】テープ貼付装置の左側面図である。
【図7.A】テープ貼付ヘッドを拡大して示す左側面図である。
【図7.B】テープ貼付ヘッドの一部を拡大して示す左側面図である。
【図8】マスキングテープの貼付の流れを示す図である。
【図9.A】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図9.B】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図9.C】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図10】塗布装置の平面図である。
【図11】塗布装置の正面図である。
【図12】マスキングテープおよび基板の平面図である。
【図13】マスキングテープおよび基板の断面図である。
【図14】テープ剥離装置の平面図である。
【図15.A】テープ剥離ヘッドを拡大して示す左側面図である。
【図15.B】テープ剥離ヘッドの一部を拡大して示す左側面図である。
【図16】基板の断面図である。
【図17】関連技術に係るマスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図18.A】マスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図18.B】マスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図18.C】基板の一部を示す断面図である。
【図19】一の実施の形態に係るマスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図20】マスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図21】関連技術に係るテープ貼付装置を示す平面図である。
【図22】マスキングテープの貼付の流れを示す図である。
【図23.A】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図23.B】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図23.C】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図23.D】マスキングテープの貼付途上の基板を示す平面図である。
【図24】関連技術に係る塗布システムの構成を示す図である。
【図25】テープ貼付システムを示す平面図である。
【図26】関連技術に係るテープ貼付システムの構成を示す図である。
【図27】マスキングテープ他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に関連する技術に係るテープ貼付装置を備える塗布システム8の構成を示す図である。塗布システム8は、マスキングテープが貼付された平面表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)に画素形成材料を含む流動性材料を塗布するシステムである。塗布システム8において、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用の基板に、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)が塗布される。有機EL液は、有機EL材料の他に、キシレンやメシチレン等の有機溶媒(本関連技術では、キシレン)を含む。
【0017】
図2は、テープ状のマスク部材であるマスキングテープ1が貼付された基板9を示す平面図である。図2では、塗布システム8(図1参照)により有機EL液が塗布される領域(以下、「塗布領域」という。)91に平行斜線を付す(図9.Aないし図9.C、ならびに、図23.Aないし図23.Dにおいても同様)。本関連技術では、基板9上に4つの塗布領域91が設けられ、1枚の基板9から4つの有機EL表示装置用の基板が製造される。4つの塗布領域91の周囲の格子状の領域92は、ドライバ回路の組み込みや後工程における絶縁膜による封止等に利用されるため、有機EL液が塗布されるべきではない領域であり、以下、「非塗布領域92」という。マスキングテープ1は、図2に示すように、基板9の(+Z)側の主面90上の非塗布領域92に貼付されて(すなわち、密着して)非塗布領域92に対する有機EL液の付着を防止する。
【0018】
図1に示すように、塗布システム8は、基板9上の非塗布領域92にマスキングテープ1(図2参照)を貼付するテープ貼付装置2、マスキングテープ1が貼付された基板9に向けて有機EL液をノズルから連続的に吐出しつつノズルを基板9に対して相対的に移動してマスキングテープ1を含む領域に有機EL液を塗布する塗布装置3、および、有機EL液が塗布された基板9からマスキングテープ1を剥離するテープ剥離装置4を備える。塗布システム8は、また、テープ貼付装置2と塗布装置3との間、および、塗布装置3とテープ剥離装置4との間に固定型の搬送ロボット81をさらに備える。
【0019】
図3は、図2に示すマスキングテープ1および基板9の一部を、図2中のA−Aの位置にてマスキングテープ1の長手方向(すなわち、図2中のY方向)に垂直に切断した断面図である。図3に示すように、2本のマスキングテープ1はそれぞれ、テープ状の基材11、および、基材11の一方の面(すなわち、図3中における(−Z)側の面)に形成された粘着剤層12を備える。本関連技術では、基材11は、例えば、プラスチックフィルムにより形成されており、粘着剤層12は、例えば、ポリエステル系粘着剤、または、アクリル系粘着剤により形成されている。
【0020】
マスキングテープ1では、一方の側面103(すなわち、図3中における(+X)側の側面)のみが、テープ断面における形状が調えられた特定側面(図3中において符号103aを付す。)となっている。また、マスキングテープ1では、基材11および粘着剤層12は長手方向の全長に亘って図3に示す断面と同形状を有する。
【0021】
テープ貼付装置2では、特定側面103aの基板9側のエッジ(すなわち、粘着剤層12の後述する2つの下面エッジ124のうち、特定側面103a側の一方)を基板9の主面90上の非塗布領域92と塗布領域91との境界920(すなわち、図2中においてY方向に伸びる境界)に一致させつつ、マスキングテープ1が基板9の非塗布領域92に貼付される。また、2本のマスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位は、基板9の非塗布領域92上において重なっている。
【0022】
図3に示す各マスキングテープ1では、基材11の粘着剤層12側の主面112(すなわち、図3中における(−Z)側の面であり、以下、「基材下面112」という。)と、基材下面112とは反対側の主面111(以下、「基材上面111」という。)との間の距離、すなわち、基材11の厚さが約37μmとされる。また、粘着剤層12の基材11側の主面121(以下、「粘着剤層上面121」という。)と、基材11側とは反対側の主面122(以下、「粘着剤層下面122」という。)との間の距離、すなわち、粘着剤層12の厚さは約15μmとされる。なお、図3では、図示の都合上、マスキングテープ1の厚さを幅に比べて実際よりも厚く描いている(図17および図19においても同様)。
【0023】
図3に示すように、マスキングテープ1では、基材下面112の特定側面103a側にて長手方向に伸びるエッジ114(以下、「下面エッジ114」という。)が、粘着剤層上面121の特定側面103a側にて長手方向に伸びるエッジ123(以下、「上面エッジ123」という。)と重なる。また、粘着剤層下面122の特定側面103a側にて長手方向に伸びるエッジ124(以下、「下面エッジ124」という。)は、長手方向に垂直な幅方向に関して粘着剤層12の上面エッジ123よりも内側に位置する。換言すれば、粘着剤層12の下面エッジ124は、上面エッジ123よりもマスキングテープ1の幅方向(すなわち、図3中のX方向)における中心線に近づく側に位置する。
【0024】
ここで、基材11の特定側面103a側の下面エッジ114、並びに、粘着剤層12の特定側面103a側の上面エッジ123および下面エッジ124を第1エッジ、第2エッジおよび第3エッジとした場合、マスキングテープ1では、第1エッジと第2エッジとが幅方向に関して重なり、第3エッジが幅方向に関して第2エッジよりも内側に位置することになる。
【0025】
図3に示すように、特定側面103a(すなわち、基材11の側面および粘着剤層12の側面)は、断面において直線状となる平滑面とされ、基板9の主面90から厚さ方向に離れるに従って、マスキングテープ1の中心線から離れて基板9の主面90上に張り出す逆テーパ状とされる。マスキングテープ1では、粘着剤層下面122と粘着剤層12の特定側面103a側の側面との為す角度θは約100°とされる。
【0026】
マスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の側面103は、基板9の主面90に対しておよそ垂直となっているが、特定側面103aとは異なり、テープ断面における形状は特に調えられてはいない。
【0027】
上述のように、マスキングテープ1の断面は長手方向の全長に亘って同形状とされるため、図3に示すマスキングテープ1の形状に関する上記説明は、マスキングテープ1(すなわち、基材11および粘着剤層12)の長手方向に垂直な任意の断面において同様である。
【0028】
図4ないし図6はそれぞれ、テープ貼付装置2の構成を示す平面図、正面図および左側面図である。図4ないし図6に示すように、テープ貼付装置2は、基板9を保持する基板保持部21、基板9を基板保持部21と共に基板9の主面90(図2参照)に平行な所定の移動方向(すなわち、図4ないし図6中のY方向であり、以下、「走査方向」という。)に移動する走査機構22、有機EL液が塗布される前の基板9上の非塗布領域92にマスキングテープ1(図2参照)を貼付するテープ貼付ヘッド23、テープ貼付ヘッド23を走査方向に垂直な方向(すなわち、図4ないし図6中のX方向)に移動する移動機構24、および、基板9の主面90に垂直な回転軸を中心に基板9を基板保持部21と共に180°回転する回転機構25を備える。
【0029】
テープ貼付装置2では、走査機構22により、基板保持部21がレール221に沿って水平方向に移動する。また、移動機構24により、テープ貼付ヘッド23が基板9の移動範囲の上方においてレール241に沿って水平方向に移動する。テープ貼付装置2は、また、図4に示すように、走査機構22、テープ貼付ヘッド23、移動機構24および回転機構25を制御する制御部26を備える。
【0030】
図7.Aは、テープ貼付ヘッド23の構成を拡大して示す左側面図である。図7.Aでは、テープ貼付ヘッド23のハウジング231に収容される内部構成を描いている。テープ貼付ヘッド23では、ベーステープ271の一方の主面にマスキングテープ1が保持された2層構造のテープ27を利用してマスキングテープ1の貼付が行われる。本関連技術では、マスキングテープ1の特定側面103a(図3参照)は、図7.A中の(+X)側に位置している。
【0031】
図7.Aに示すように、テープ貼付ヘッド23は、未使用のテープ27が巻き付けられるとともに当該テープ27(すなわち、マスキングテープ1およびベーステープ271)を繰り出すテープ供給部である供給リール232、供給リール232から繰り出されたテープ27からマスキングテープ1を分離するとともに当該分離された部位(すなわち、マスキングテープ1の供給リール232から繰り出された部位)を基板9の非塗布領域92(図2参照)に向けて押圧する押圧部233、マスキングテープ1が分離された後のテープ27(すなわち、ベーステープ271)を巻き取って回収するテープ回収部である回収リール234、および、これらの構成を収容するハウジング231を備える。
【0032】
テープ貼付装置2による基板9にマスキングテープ1が貼付される際には、まず、図4ないし図6に示す移動機構24によりテープ貼付ヘッド23がX方向に移動されて基板9の移動経路の上方に位置する。このとき、基板9は、テープ貼付ヘッド23の(−Y)側に位置している。続いて、走査機構22により基板9が(+Y)方向に移動し、図7.Aに示す貼付開始位置に位置する。基板9が貼付開始位置に位置すると、テープ貼付ヘッド23の押圧部233の切断部235により、テープ27の切断部235と対向する側においてマスキングテープ1のみが切断される。
【0033】
切断されたマスキングテープ1は、供給リール232および回収リール234が図7.A中における反時計回りに回転することにより、ベーステープ271と共に押圧部233のテープ分離部材236の先端へと送られ、当該先端において、ベーステープ271が送られてきた方向とはおよそ反対側に導かれることにより、マスキングテープ1がベーステープ271から剥離し、その先端部がハウジング231の下部開口237から基板9に向かって移動する。
【0034】
これと並行して、エアシリンダ238により貼付ローラ239が下部開口237を介して下方に移動し、図7.Bに示すように、マスキングテープ1の先端部を上側から基板9の主面90に向けて押圧して貼付するとともに、走査機構22(図6参照)により基板9が図7.Aの(+Y)方向に移動を開始する。そして、供給リール232からテープ27が継続的に送り出されるとともに、マスキングテープ1が押圧部233の貼付ローラ239により押圧された状態で、走査機構22により基板9が非塗布領域92の境界920(図2参照)に平行な走査方向(すなわち、(+Y)方向)に移動することにより、図2に示すように、基板9の主面90上においてマスキングテープ1が非塗布領域92の境界920に沿って順次貼付される。
【0035】
図7.Aに示すテープ貼付ヘッド23では、切断部235によりテープ27上のマスキングテープ1のみが再び切断され、マスキングテープ1が後端部まで基板9に貼付されることによりマスキングテープ1が基板9の主面90に密着する。テープ貼付装置2では、走査機構22およびテープ貼付ヘッド23が、マスキングテープ1の特定側面103aの基板9側のエッジ(すなわち、図3中の下面エッジ124)を非塗布領域92と塗布領域91との境界920に一致させつつマスキングテープ1を非塗布領域92に貼付する貼付機構となっている。
【0036】
なお、マスキングテープ1の貼付開始は、テープ27を供給しつつテープ27の供給速度に等しい速度で左方向へと移動している基板9に対して行われてもよい。また、テープ貼付ヘッド23では、マスキングテープ1の先端部および後端部の貼付時には、マスキングテープ1が押圧部233の貼付ローラ239により基板9に向けて押圧されている必要があるが、先端部および後端部の貼付時以外は、貼付ローラ239がハウジング231内へと退避してマスキングテープ1の押圧が解除されていてもよい。換言すれば、テープ貼付装置2の貼付機構では、マスキングテープ1の少なくとも先端部および後端部の貼付時にマスキングテープ1が基板9に対して押圧された状態で、基板9がテープ貼付ヘッド23の押圧部233に対して走査方向に相対的に移動することにより、マスキングテープ1が基板9上の非塗布領域92に貼付される。
【0037】
テープ貼付装置2では、図2に示すように、基板9の格子状の非塗布領域92のうち、走査機構22による基板9の移動方向である走査方向に平行に伸びる3つの領域(すなわち、図2中のY方向に伸びる領域)にのみマスキングテープ1が貼付される。以下の説明では、マスキングテープ1が貼付される当該3つの領域を、図2中の(−X)側からそれぞれ、「第1領域921」「第2領域922」および「第3領域923」と呼ぶ。本関連技術では、第1領域921および第3領域923にはそれぞれ1本のマスキングテープ1が貼付され、第2領域922には2本のマスキングテープ1が貼付される。なお、非塗布領域92のうち、走査方向に垂直に伸びる領域(すなわち、図2中のX方向に伸びる領域)にはマスキングテープ1の貼付は行われない。後述するように、塗布システム8では、マスキングテープ1の貼付が省略された領域に対しては有機EL液の塗布は行われない。
【0038】
図8は、テープ貼付装置2による4本のマスキングテープ1(図2参照)の貼付の流れを示す図である。また、図9.Aないし図9.Cは、マスキングテープ1の貼付途上の基板9を示す平面図である。以下では、図8、図9.Aないし図9.C、並びに、他の図を参照しつつ、テープ貼付装置2によるマスキングテープ1の貼付について説明する。
【0039】
図4に示すテープ貼付装置2では、まず、制御部26により貼付機構(すなわち、走査機構22およびテープ貼付ヘッド23)が制御されることにより、テープ貼付ヘッド23の供給リール232(図7.A参照)からマスキングテープ1が繰り出され、繰り出された部位が、図9.Aに示す非塗布領域92の第1領域921における(+Y)側の部位に押圧部233(図7.A参照)により押圧される。そして、マスキングテープ1が押圧部233により押圧された状態で、走査機構22(図4参照)により基板9が(+Y)方向(すなわち、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に平行な走査方向)に移動することにより、1本目のマスキングテープ(以下、「マスキングテープ1a」という。)が第1領域921に順次貼付される(ステップS11)。このとき、マスキングテープ1aは、第1領域921の(+X)側(すなわち、第2領域922側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第1領域921に貼付される。
【0040】
続いて、図4に示す制御部26により移動機構24が制御されることにより、テープ貼付ヘッド23が図4中の(+X)方向に移動し、基板9上の非塗布領域92の第2領域922に対応する位置(すなわち、X方向に関して第2領域922と重なる位置)に位置する。また、テープ貼付ヘッド23の移動と並行して、基板9が図4中におけるテープ貼付ヘッド23の(−Y)側へと戻される。
【0041】
そして、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で基板9が再び図4中の(+Y)方向に移動されることにより、2本目のマスキングテープ(以下、「マスキングテープ1b」という。)が第2領域922に対して貼付される(ステップS12)。図9.Aに示すように、マスキングテープ1bは、第2領域922の(+X)側(すなわち、第3領域923側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第2領域922に貼付される。
【0042】
マスキングテープ1bの幅は、第2領域922の幅(すなわち、X方向の幅)よりも小さいため、マスキングテープ1bは第2領域922の(+X)側の部分のみを覆う。このとき、マスキングテープ1bの特定側面103aとは反対側の側面103の下面エッジ124(図3参照)は、非塗布領域92の第2領域922上の切断領域(すなわち、1枚の基板9から複数枚の有機EL表示装置用の基板を得る際に切断されるため製品として使用されない領域であり、隣接する塗布領域91の間に位置する非塗布領域92のほぼ中央に位置する。)上に位置する。
【0043】
次に、図4に示す制御部26により回転機構25が制御されることにより、基板9が貼付機構(すなわち、走査機構22およびテープ貼付ヘッド23)に対して相対的に180°回転する(ステップS13)。これにより、図9.Bに示すように、第1領域921および第2領域922に貼付されたマスキングテープ1a,1bの特定側面103aが、各マスキングテープの(−X)側に位置することとなる。
【0044】
基板9の回転が終了すると、基板9が図4中におけるテープ貼付ヘッド23の(−Y)側へと戻され、必要に応じて移動機構24によりテープ貼付ヘッド23の位置が調整された後、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で基板9が図4中の(+Y)方向に移動されることにより、図9.Cに示すように、3本目のマスキングテープ(以下、「マスキングテープ1c」という。)が第2領域922に対して順次貼付される(ステップS14)。
【0045】
マスキングテープ1cは、図9.C中の第2領域922の(−X)側(すなわち、第1領域921側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ非塗布領域92の第2領域922に貼付される。第2領域922では、マスキングテープ1cの特定側面103aが向けられる境界920は、マスキングテープ1bの特定側面103aが向けられる境界920とは反対側に位置し、かつ、当該境界920に平行なもう1つの境界920となっている。
【0046】
また、マスキングテープ1cの特定側面103aとは反対側の部位(すなわち、図9.C中における(−X)側の部位)は、マスキングテープ1bの特定側面103aとは反対側の部位(すなわち、図9.C中における(+X)側の部位)上に重ねられ、マスキングテープ1b上に貼付される。
【0047】
ここで、第2領域922に貼付される2本のマスキングテープ1b、1cのうち、先に貼付されるマスキングテープ1bを第1マスキングテープとし、後から貼付されるマスキングテープ1cを第2マスキングテープとすると、第2マスキングテープは、第2マスキングテープの特定側面103aである第2特定側面とは反対側の部位を、第1マスキングテープの特定側面103aである第1特定側面とは反対側の部位上に重ねて非塗布領域92に貼付されることとなる。
【0048】
マスキングテープ1cの貼付が終了すると、移動機構24によりテープ貼付ヘッド23が図4中の(−X)方向に移動し、非塗布領域92の第3領域923に対応する位置に位置する。また、テープ貼付ヘッド23の移動と並行して、基板9が図4中におけるテープ貼付ヘッド23の(−Y)側へと戻される。
【0049】
続いて、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で基板9が図4中の(+Y)方向に移動されることにより、4本目のマスキングテープ(以下、「マスキングテープ1d」という。)が第3領域923に対して順次貼付される(ステップS15)。図9.Cに示すように、マスキングテープ1dは、第3領域923の(+X)側(すなわち、第2領域922側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第3領域923に貼付される。
【0050】
マスキングテープ1a〜1dが貼付された基板9は、図4に示す回転機構25により再び180°回転されて元の姿勢に戻された後、図1に示す搬送ロボット81によりテープ貼付装置2から搬出されて塗布装置3に搬入される。なお、以下の説明では、マスキングテープ1a〜1dを区別する必要がない場合には、まとめてマスキングテープ1と呼ぶ。
【0051】
次に、基板9に有機EL液を塗布する塗布装置3について説明する。図10および図11は、塗布装置3を示す平面図および正面図である。図10および図11に示すように、塗布装置3は、マスキングテープ1が非塗布領域92(図2参照)に貼付された基板9を保持する基板保持部31を備え、基板保持部31は内部にヒータによる加熱機構(図示省略)を備える。図10および図11では、図示の都合上、基板9の主面90上に貼付されたマスキングテープ1の図示を省略している。
【0052】
塗布装置3は、また、基板保持部31を基板9の主面に平行な所定の方向(すなわち、図10中のY方向であり、以下、「副走査方向」という。)に水平移動するとともに垂直方向に向く軸を中心として回転する基板移動機構32、基板9上に形成された位置調整用目印(図示省略)を撮像して検出する目印検出部33、基板保持部31上の基板9に向けて3本のノズル37から有機EL液を連続的に吐出する吐出機構である塗布ヘッド34、塗布ヘッド34を基板9の主面に平行であって副走査方向に垂直な方向(すなわち、図10中のX方向であり、以下、「主走査方向」という。)に水平移動するヘッド移動機構35、主走査方向に関して基板保持部31の両側に設けられるとともに塗布ヘッド34からの有機EL液を受ける2つの受液部36、および、塗布ヘッド34の3本のノズル37に有機EL液を供給する流動性材料供給部38を備える。塗布装置3では、ヘッド移動機構35および基板移動機構32が、3本のノズル37を基板9に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動する主走査機構および副走査機構となる。
【0053】
塗布ヘッド34では、3本のノズル37が、図10中のX方向(すなわち、主走査方向)に関して略直線状に離れて配列されるとともに図10中のY方向(すなわち、副走査方向)に僅かにずれて配置され、これらのノズル37から吐出された有機EL液が、基板9の塗布領域91(図2参照)に予め形成されている主走査方向に伸びる隔壁の間の溝に塗布される。本関連技術では、隣接する2本のノズル37の間の副走査方向に関する距離は、隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」という。)に等しい。塗布ヘッド34では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が3本のノズル37から吐出される。
【0054】
塗布装置3により有機EL液の塗布が行われる際には、まず、テープ貼付装置2により非塗布領域92にマスキングテープ1(図2参照)が貼付された基板9が基板保持部31に載置されて保持され、目印検出部33からの出力に基づいて基板移動機構32が駆動されて基板9が図10中に実線にて示す塗布開始位置に位置する。塗布ヘッド34は予め図10および図11中に実線にて示す位置に位置している。
【0055】
続いて、流動性材料供給部38から塗布ヘッド34へと有機EL液が供給されてノズル37から有機EL液の吐出が開始されるとともに、ヘッド移動機構35が駆動されて塗布ヘッド34の移動が開始される。塗布装置3では、ノズル37から有機EL液を基板9に向けて連続的に吐出しつつ、ノズル37を基板9に対して図10中の(−X)側から(+X)側へと(すなわち、基板9に貼付されたマスキングテープ1の長手方向と垂直に交差する主走査方向に)相対的に移動することにより、基板9の隔壁間の3つの隣接する溝、および、マスキングテープ1上に有機EL液が塗布される。
【0056】
塗布ヘッド34が図10および図11中に二点鎖線にて示す位置まで移動すると、基板移動機構32が駆動され、基板9が基板保持部31と共に図10中の(+Y)側に(すなわち、副走査方向に)隔壁ピッチの3倍の距離だけ移動する。このとき、塗布ヘッド34では、3本のノズル37から受液部36に向けて有機EL液が連続的に吐出されている。
【0057】
副走査方向における基板9の移動が終了すると、塗布ヘッド34が有機EL液を吐出しつつ図10中において(+X)側から左(−X)側へと(すなわち、主走査方向に)移動することにより、基板9上に3種類の有機EL液が塗布された後、副走査方向における基板9の移動が再び行われる。
【0058】
図12は、マスキングテープ1が貼付された基板9を示す平面図であり、図13は、図12中のB−Bの位置におけるマスキングテープ1および基板9の断面図である。塗布装置3では、基板9が図10中に二点鎖線にて示す塗布終了位置に位置するまで、塗布ヘッド34の主走査方向への移動、および、塗布ヘッド34の1回の主走査毎に行われる基板9の副走査方向へのピッチ移動が繰り返され、これにより、図12および図13に示すように、基板9上のマスキングテープ1を含む領域(すなわち、非塗布領域92に貼付されたマスキングテープ1上の領域、および、塗布領域91の隔壁間の溝)に有機EL液93がストライプ状に塗布される。そして、基板9が塗布終了位置まで移動すると、ノズル37からの有機EL液の吐出が停止されて基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。なお、図12では、図示の都合上、基板9上に塗布された有機EL液93の幅およびピッチを実際よりも大きく描いている。
【0059】
塗布装置3では、有機EL液93の塗布が行われている間、塗布ヘッド34のノズル37(図10および図11参照)から有機EL液93が連続的に吐出されている。塗布装置3では、非塗布領域92のうち基板9の移動方向に垂直に伸びる領域(すなわち、図12中においてX方向に伸びる領域であり、マスキングテープ1の貼付が省略されている領域)に対して、塗布ヘッド34を受液部36上に待機させた状態で、基板9を当該領域の幅(すなわち、図12中のY方向の幅)と等しい距離だけ副走査方向に移動することにより、当該領域への有機EL液93の塗布が回避される。
【0060】
塗布装置3では、基板9上に塗布された有機EL液の溶媒成分が、基板保持部31(図9参照)の加熱機構により蒸発するため、有機EL液が乾燥した状態にてマスキングテープ1および塗布領域91上に付着している。図1に示す塗布システム8では、有機EL液が塗布された基板9が、搬送ロボット81により塗布装置3から搬出されてテープ剥離装置4に搬入される。
【0061】
次に、有機EL液が塗布された基板9からマスキングテープ1を剥離するテープ剥離装置4について説明する。図14は、テープ剥離装置4を示す平面図である。図14に示すように、テープ剥離装置4は、図4ないし図6に示すテープ貼付装置2のテープ貼付ヘッド23に代えてテープ剥離ヘッド43を備える。テープ剥離装置4のその他の構成はテープ貼付装置2とほぼ同様である。
【0062】
テープ剥離装置4は、基板9を保持する基板保持部41、基板9を基板保持部41と共に図14中のY方向に移動する基板移動機構42、マスキングテープ1(図2参照)を保持して剥離するテープ剥離ヘッド43、および、テープ剥離ヘッド43を基板9の移動方向に垂直な方向(すなわち、図14中のX方向)に移動するヘッド移動機構44を備える。テープ剥離装置4では、基板移動機構42により、基板9が基板保持部41と共にレール421に沿って水平方向に移動するとともに垂直方向を向く回転軸を中心として回転する。また、ヘッド移動機構44により、テープ剥離ヘッド43が基板9の移動範囲の上方においてレール441に沿って水平方向に移動する。
【0063】
図15.Aは、テープ剥離ヘッド43の構成を拡大して示す左側面図である。図15.Aでも、図7.Aと同様に、テープ剥離ヘッド43のハウジング431の内部構成を描いている。図15.Aに示すように、テープ剥離ヘッド43は、マスキングテープ1に粘着することによりマスキングテープ1の少なくとも一部を保持する剥離テープ45、剥離テープ45の粘着面をマスキングテープ1に対向させつつ剥離テープ45を案内して基板9上のマスキングテープ1に順次粘着させる剥離テープ案内部である粘着機構433、未使用の剥離テープ45を粘着機構433に供給する剥離テープ供給部である供給リール432、剥離テープ45を剥離テープ45に粘着されたマスキングテープ1と共に基板9から引き上げて回収する剥離テープ回収部である回収リール434、および、これらの構成を収容するハウジング431を備える。粘着機構433は、エアシリンダ436および押圧ローラ437を備える。また、剥離テープ45の幅は、マスキングテープ1の幅よりも大きい。
【0064】
図14に示すように、テープ剥離装置4により基板9からマスキングテープ1が剥離される際には、まず、基板移動機構42およびヘッド移動機構44により基板9およびテープ剥離ヘッド43が移動されて剥離開始位置に位置する。このとき、図15.Aに示すように、剥離対象であるマスキングテープ1の先端が、テープ剥離ヘッド43のハウジング431の下部開口435の下方に位置する。
【0065】
続いて、エアシリンダ436により押圧ローラ437が下部開口435を介して下方に移動し、剥離テープ45を上側(すなわち、剥離テープ45の粘着面とは反対側)からマスキングテープ1の先端部に押圧して粘着する。次に、基板移動機構42により基板9が図15.A中の(+Y)方向に移動を開始する。これと同時に、供給リール432および回収リール434の図15.A中における時計回りの回転が開始されて供給リール432に巻き付けられている剥離テープ45が送り出されるとともに、押圧ローラ437が上方に移動して元の位置に戻ることにより、図15.Bに示すように、剥離テープ45に粘着されたマスキングテープ1の先端部が基板9から剥離する。そして、供給リール432から剥離テープ45が継続的に送り出されるとともに基板9が移動を継続することにより、基板9上のマスキングテープ1が剥離テープ45に粘着されつつ基板9から剥離し、回収リール434により巻き取られて回収される。
【0066】
図16は、図13に対応する基板9の断面図である。テープ剥離装置4では、有機EL液93が塗布された基板9からマスキングテープ1が剥離されることにより、図16に示すように、基板9の塗布領域91上にのみ有機EL液93が残置される。このように、図14に示すテープ剥離装置4では、テープ剥離ヘッド43によりマスキングテープ1を保持して持ち上げた状態で、基板移動機構42により基板9をマスキングテープ1が貼付されている方向に沿って移動することにより、基板9からのマスキングテープ1の剥離が行われる。
【0067】
上述のように、マスキングテープ1では、図3にしめすように、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に下面エッジ124が一致する特定側面103a側において、基材11の下面エッジ114と粘着剤層12の上面エッジ123とが重なり、さらに、粘着剤層12の下面エッジ124が上面エッジ123よりも幅方向に関して内側に位置する。このため、マスキングテープ1の基板9からの剥離時に、粘着剤層12の特定側面103a側の下面エッジ124近傍の部位が、基材11により強固に支持されて安定して上向きに引っ張られる。これにより、特定側面103a側において(すなわち、境界920近傍において)粘着剤層12の一部が残渣として基板9上に残ることを防止することができる。その結果、塗布領域91のみに有機EL液が塗布されており、かつ、非塗布領域92の境界920近傍に有機EL液やマスキングテープ1の残渣が付着していない基板9を容易に得ることができる。
【0068】
なお、マスキングテープ1bの特定側面103aとは反対側の側面103の下面エッジ124は、上述のように、非塗布領域92上の切断領域(すなわち、製品として使用されない領域)に位置するため、粘着剤層12の当該下面エッジ124近傍の部位が非塗布領域92上に残渣として残ったとしても、有機EL表示装置の品質に影響を及ぼすことはない。
【0069】
テープ剥離装置4では、有機EL液が付着したマスキングテープ1の上面を剥離テープ45により覆ってマスキングテープ1を基板9から剥離するため、マスキングテープ1上に付着した有機EL液を基板9に落下させることなくマスキングテープ1を回収することができる。なお、剥離テープ45のマスキングテープ1への粘着開始は、剥離テープ45を供給しつつ剥離テープ45の供給速度に等しい速度で移動している基板9に対して行われてもよい。
【0070】
図1に示す塗布システム8では、マスキングテープ1の基板9からの剥離が終了すると、基板9がテープ剥離装置4から塗布システム8外へと搬出されて基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。なお、塗布システム8では、実際には、マスキングテープ1の貼付、有機EL液の塗布、および、マスキングテープ1の剥離が、複数の基板に対して連続的に行われる。
【0071】
以上に説明したように、塗布システム8のテープ貼付装置2は、マスキングテープ1を基板9上に貼付する貼付機構(すなわち、走査機構22およびテープ貼付ヘッド23)、テープ貼付ヘッド23を走査方向に垂直な方向に移動する移動機構24、並びに、基板9を180°回転する回転機構25を備える。これにより、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、一方の側面のみが剥離時の残渣を防止する断面形状とされた特定側面103aであるマスキングテープ1を、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつ非塗布領域92に貼付することができる。
【0072】
また、一方の側面103のみが断面形状が調えられた特定側面103aであるマスキングテープ1を利用することにより、両側の側面の断面形状が調えられた高価なマスキングテープを利用する場合に比べて、非塗布領域92のマスク、および、流動性材料の塗布に要するコストを低減することができる。さらには、マスキングテープ1の特定側面103aが、断面において直線状となる平滑面とされることにより、マスキングテープ1の製造を容易とし、マスキングテープ1の製造に要するコストを低減することができる。
【0073】
テープ貼付装置2の貼付機構では、テープ貼付ヘッド23の供給リール232から繰り出されたマスキングテープ1が押圧部233により基板9に向けて押圧された状態で、走査機構22により基板9が移動されることにより、非塗布領域92に対してマスキングテープ1を位置精度良く、かつ、迅速に貼付することができる。
【0074】
テープ貼付装置2では、非塗布領域92のうち、幅方向の両側に塗布領域91が存在する領域(すなわち、第2領域922)をマスクする際に、両側の境界920に、2本のマスキングテープ1b,1cの特定側面103a側の下面エッジ124をそれぞれ一致させつつマスキングテープ1b,1cが第2領域922に貼付される。このように、幅方向の両側の境界920にそれぞれ別のマスキングテープ1を対応させつつ複数のマスキングテープ1により第2領域922をマスクすることにより、基板種類の変更等により第2領域922の幅が変更になった場合であっても、幅の異なるマスキングテープを新たに準備することなく第2領域922を容易にマスクすることができる。また、マスキングテープ1b,1cの特定側面103aとは反対側の部位が重ねられることにより、第2領域922を確実にマスクすることができる。
【0075】
次に、本発明に関連する他の技術に係るテープ貼付装置について説明する。関連技術に係るテープ貼付装置では、図3に示すマスキングテープ1とは異なるマスキングテープが基板9に貼付される。その他の構成は、図4ないし図7.Bに示すテープ貼付装置2と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0076】
図17は、関連技術に係るテープ貼付装置により基板9の非塗布領域92に貼付されるマスキングテープ1e、および、基板9の一部を、マスキングテープ1eの長手方向に垂直に切断した断面図である。図17に示すように、マスキングテープ1eの両側の側面は基板9の主面90に略垂直とされる。マスキングテープ1eは、テープ状の基材11、基材下面112上に形成された粘着剤層12、並びに、マスキングテープ1eの(+X)側の側面である特定側面103a内に(具体的には、特定側面103a側において基材11および粘着剤層12の側方に形成された長手方向に伸びる溝部に)設けられる吸収性部材13を備える。
【0077】
吸収性部材13は、基材11および粘着剤層12よりも有機EL液に対する吸収性が高い材料により形成されている。マスキングテープ1eでは、基材11および粘着剤層12は、有機EL液に対して実質的に非吸収性である材料により形成されている。ここで、基材11および粘着剤層12の有機EL液に対する実質的な非吸収性とは、塗布システム8の塗布装置3(図1参照)によりマスキングテープ1に塗布された微量の有機EL液が短時間(例えば、数秒)にて乾燥する間に、有機EL液が基材11および粘着剤層12にほとんど(あるいは、全く)吸収されないことを意味する。
【0078】
マスキングテープ1eでは、基材11は、例えば、プラスチックフィルムにより形成されており、粘着剤層12は、例えば、ポリエステル系粘着剤、または、アクリル系粘着剤により形成されている。吸収性部材13としては、例えば、メンブレンフィルタ等に利用される多孔性ポリマが使用される。この場合、吸収性部材13からのパーティクルの発生を防止するために、多孔性ポリマにパーティクル防止対策が施されたものが好ましい。
【0079】
図17に示すように、マスキングテープ1eの特定側面103aでは、マスキングテープ1eの基板9の面のエッジ(すなわち、粘着剤層12の下面エッジ124)に沿って伸びる粘着剤層12の側方端面1031が、基板9に塗布される有機EL液に対して非吸収性を示す領域となり、吸収性部材13の特定側面103aにおける露出領域1032が、粘着剤層12の側方端面1031の上側において有機EL液に対して吸収性を有する領域となる。以下、粘着剤層12の側方端面1031を、「非吸収領域1031」と呼び、吸収性部材13の露出領域1032を、「吸収領域1032」と呼ぶ。
【0080】
換言すれば、マスキングテープ1eの特定側面103aは、マスキングテープ1eの粘着剤層12の下面エッジ124に接するとともに下面エッジ124に沿って存在する非吸収領域1031、および、非吸収領域1031の上側(すなわち、マスキングテープ1eの基板9側とは反対側の面である基材上面111と非吸収領域1031との間)に下面エッジ124から離れて配置される吸収領域1032を備える。すなわち、特定側面103aは、マスキングテープ1eの表面の中で表面状態が調えられた面となっている。
【0081】
関連技術に係るテープ貼付装置によるマスキングテープ1eの貼付の流れは、上述のマスキングテープ1の貼付の流れと同様であり、まず、マスキングテープ1eの特定側面103a側の下面エッジ124を非塗布領域92と塗布領域91との間の境界920に一致させつつ、非塗布領域92の第1領域921および第2領域922(図2参照)にマスキングテープ1eが順次貼付される(図8:ステップS11,S12)。次に、基板9が180°回転された後、第2領域922および第3領域923(図2参照)にマスキングテープ1eが順次貼付される(ステップS13〜S15)。
【0082】
マスキングテープ1eの貼付が終了すると、基板9は、テープ貼付装置から搬出されて塗布装置3(図1参照)に搬入される。塗布装置3では、マスキングテープ1eが貼付された基板9に対して有機EL液が塗布される。図18.Aおよび図18.Bは、有機EL液93が塗布された基板9の一部をマスキングテープ1eの特定側面103a側の一部と共に示す断面図である。図18.Aは、有機EL液93が基板9に塗布された直後の様子を示し、図18.Bは、有機EL液93の塗布から僅かな時間(例えば、数秒)が経過した後の様子を示す。図18.Aおよび図18.Bでは、図示の都合上、有機EL液93の厚さを実際よりも大きく描いている(後述の図18.Cにおいても同様)。
【0083】
図18.Aに示すように、塗布直後の有機EL液93は、基板9の主面90およびマスキングテープ1eの基材上面111においてほぼ均一な厚さとなっており、マスキングテープ1eの特定側面103aでは、重力の影響により、下面エッジ124側が厚くなっている。マスキングテープ1eでは、特定側面103a内に吸収性部材13による吸収領域1032が設けられているため、図18.Bに示すように、特定側面103aに付着した有機EL液93が塗布直後に吸収性部材13により迅速に吸収される。これにより、マスキングテープ1eの特定側面103aに形成されるメニスカス94の高さ(すなわち、基板9の主面90からの高さ)を、非吸収領域1031の高さと同等程度まで小さくすることができる。
【0084】
また、マスキングテープ1eでは、特定側面103aにおいて吸収領域1032と下面エッジ124との間に非吸収領域1031が設けられており、さらに、吸収性部材13が非吸収性の粘着剤層12により基板9の主面90から隔てられているため、吸収性部材13に一旦吸収された有機EL液93が、マスキングテープ1eの下側からしみ出して基板9の非塗布領域92に付着してしまうことを防止することができる。さらには、有機EL液の吸収により脆くなった吸収性部材13の一部がマスキングテープ1eから脱落し、基板9の主面90上に残渣として残ってしまうことを防止することができる。
【0085】
有機EL液の塗布が終了すると、基板9は、塗布装置3から搬出されてテープ剥離装置4(図1参照)に搬入される。テープ剥離装置4では、基板9の非塗布領域92からマスキングテープ1eが剥離される。図18.Cは、マスキングテープ1eが剥離された基板9の一部を示す断面図である。
【0086】
上述のように、マスキングテープ1eの特定側面103aでは、有機EL液93が吸収性部材13(図18.B参照))により吸収されるため、図18.Cに示すように、マスキングテープ1eの剥離後に非塗布領域92と塗布領域91との境界920近傍(すなわち、塗布領域91の非塗布領域92近傍の部位)に残る有機EL液93のメニスカス94の高さを小さくすることができる。すなわち、関連技術に係るテープ貼付装置を備える塗布システム8では、有機EL液の膜厚の均一性を向上しつつ基板9上に有機EL液を塗布することができる。
【0087】
また、関連技術に係るテープ貼付装置では、一方の側面のみが有機EL液のメニスカスの高さを小さくするように表面状態が調えられた特定側面103aである低コストのマスキングテープ1eを利用し、テープ貼付装置2と同様に、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつマスキングテープ1eを非塗布領域92に貼付することができる。
【0088】
次に、本発明の一の実施の形態に係るテープ貼付装置について説明する。本実施の形態に係るテープ貼付装置では、図3に示すマスキングテープ1とは異なるマスキングテープが基板9に貼付される。その他の構成は、図4ないし図7.Bに示すテープ貼付装置2と同様であり、以下の説明において同符号を付す。また、本実施の形態に係るテープ貼付装置によるマスキングテープの貼付の流れは、上述のマスキングテープ1の貼付の流れと同様である。
【0089】
図19は、本実施の形態に係るテープ貼付装置により基板9の非塗布領域92に貼付されるマスキングテープ1f、および、基板9の一部を、マスキングテープ1fの長手方向に垂直に切断した断面図である。図19に示すように、マスキングテープ1fの両側の側面は基板9の主面90に略垂直とされる。また、マスキングテープ1fの(+X)側の側面は、有機EL液の接触角が、基板9の主面90における有機EL液の接触角よりも大きい特定側面103aとなっている。マスキングテープ1fでは、マスキングテープ1fの表面のうち、特定側面103aのみに撥水処理が行われている。
【0090】
このため、テープ貼付装置によりマスキングテープ1fが貼付された基板9に対して塗布装置3において有機EL液が塗布された際に、図20に示すように、特定側面103aにおいて有機EL液93が基板9の主面90側に引きつけられ、その結果、特定側面103aにおけるメニスカスの発生を防止(または、抑制)することができる。
【0091】
本実施の形態に係るテープ貼付装置では、図19に示すように、一方の側面のみが有機EL液のメニスカスの発生を抑制するように有機EL液(または基板9)に対する性質が調えられた特定側面103aである低コストのマスキングテープ1fを利用し、テープ貼付装置2と同様に、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつマスキングテープ1fを非塗布領域92に貼付することができる。
【0092】
次に、本発明に関連するさらに他の技術に係るテープ貼付装置について説明する。図21は、関連技術に係るテープ貼付装置2aを示す平面図である。図21に示すように、テープ貼付装置2aは、図4に示すテープ貼付装置2の構成に加えて、もう1つのテープ貼付ヘッドを備える。以下の説明では、図21中の(−X)側のテープ貼付ヘッドを「第1テープ貼付ヘッド23a」と呼び、(+X)側のテープ貼付ヘッドを「第2テープ貼付ヘッド23b」と呼ぶ。また、テープ貼付装置2aでは、基板9を基板保持部21と共に回転する回転機構は設けられない。その他の構成は、図4ないし図7.Bに示すテープ貼付装置2と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0093】
図21に示すテープ貼付装置2aでは、第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bにより、図3に示すマスキングテープ1が、図2に示す基板9の非塗布領域92に貼付される。図21に示す第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bの構造は、図7.Aに示すテープ貼付装置2のテープ貼付ヘッド23と同様であり、それぞれ、供給リール232、押圧部233、回収リール234およびハウジング231を備える。以下の説明では、第1テープ貼付ヘッド23aの供給リールおよび押圧部をそれぞれ、「第1供給リール(すなわち、第1テープ供給部)」および「第1押圧部」と呼び、第2テープ貼付ヘッド23bの供給リールおよび押圧部をそれぞれ、「第2供給リール(すなわち、第2テープ供給部)」および「第2押圧部」と呼ぶ。
【0094】
第1テープ貼付ヘッド23aの向きは、図7.Aに示すテープ貼付装置2のテープ貼付ヘッド23と同様であり、第1テープ貼付ヘッド23a内において、マスキングテープ1は、特定側面103a(図3参照)が図21中の(+X)側を向くように保持されている。また、第2テープ貼付ヘッド23bは、第1テープ貼付ヘッド23aとは反対向きに配置されており、第2テープ貼付ヘッド23b内において、マスキングテープ1は、特定側面103aが(−X)側を向くように保持されている。
【0095】
図22は、テープ貼付装置2aによるマスキングテープ1の貼付の流れを示す図である。また、図23.Aないし図23.Dは、マスキングテープ1の貼付途上の基板9を示す平面図である。以下では、図22、図23.Aないし図23.D、並びに、他の図を参照しつつ、テープ貼付装置2aによるマスキングテープ1の貼付について説明する。
【0096】
図21に示すテープ貼付装置2aによりマスキングテープ1が貼付される際には、まず、第1テープ貼付ヘッド23aの第1供給リールからマスキングテープ1が繰り出され、繰り出された部位が、図23.Aに示す非塗布領域92の第1領域921における(+Y)側の部位に第1押圧部により押圧される。そして、マスキングテープ1が第1押圧部により押圧された状態で、走査機構22(図21参照)により基板9が(+Y)方向(すなわち、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に平行な走査方向の一方側)に移動することにより、1本目のマスキングテープ1が第1領域921に順次貼付される(ステップS21)。このとき、マスキングテープ1は、第1領域921の(+X)側(すなわち、第2領域922側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第1領域921に貼付される。
【0097】
続いて、基板9が図21に示す第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bの(+Y)側に位置した状態において、移動機構24により第2テープ貼付ヘッド23bのX方向の位置が必要に応じて調整され、図23.Bに示す非塗布領域92の第2領域922に対応する位置に位置する。
【0098】
そして、第2テープ貼付ヘッド23bの第2供給リールから繰り出されたマスキングテープ1が第2押圧部により基板9に向けて押圧された状態で、走査機構22により基板9が(−Y)方向(すなわち、1本目のマスキングテープ1の貼付時とは反対向きである走査方向の他方側)に移動することにより、2本目のマスキングテープ1が第2領域922に順次貼付される(ステップS22)。このとき、マスキングテープ1は、第2領域922の(−X)側(すなわち、第1領域921側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第2領域922の(−X)側の部分に貼付される。
【0099】
2本目のマスキングテープ1が貼付されると、基板9が図21に示す第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bの(−Y)側に位置した状態において、第2テープ貼付ヘッド23bが第2領域922に対応する位置から(+X)方向に退避された後、移動機構24により第1テープ貼付ヘッド23aのX方向の位置が調整され、図23.Cに示す非塗布領域92の第2領域922に対応する位置に位置する。
【0100】
次に、第1テープ貼付ヘッド23aの第1供給リールから繰り出されたマスキングテープ1が第1押圧部により基板9に向けて押圧された状態で基板9が再び(+Y)方向に移動されることにより、3本目のマスキングテープ1が第2領域922に対して順次貼付される(ステップS23)。3本目のマスキングテープ1は、図23.C中の第2領域922の(+X)側(すなわち、第3領域923側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第2領域922の(+X)側の部分に貼付される。また、マスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の側面103の下面エッジ124(図3参照)は、非塗布領域92の第2領域922上の切断領域に位置する。
【0101】
第2領域922では、3本目のマスキングテープ1の特定側面103aが向けられる境界920は、2本目のマスキングテープ1の特定側面103aが向けられる境界920とは反対側に位置し、かつ、当該境界920に平行なもう1つの境界920となっている。また、3本目のマスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位(すなわち、図23.C中における(−X)側の部位)は、2本目のマスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位(すなわち、図23.C中における(+X)側の部位)上に重ねられて貼付される。
【0102】
3本目のマスキングテープ1が貼付されると、基板9が図21に示す第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bの(+Y)側に位置した状態において、第1テープ貼付ヘッド23aが第2領域922に対応する位置から(−X)方向に退避された後、移動機構24により第2テープ貼付ヘッド23bのX方向の位置が調整され、図23.Dに示す非塗布領域92の第3領域923に対応する位置に位置する。
【0103】
次に、第2テープ貼付ヘッド23bの第2供給リールから繰り出されたマスキングテープ1が第2押圧部により基板9に向けて押圧された状態で基板9が(−Y)方向に移動されることにより、4本目のマスキングテープ1が第3領域923に対して順次貼付される(ステップS24)。4本目のマスキングテープ1は、図23.D中の第3領域923の(−X)側(すなわち、第2領域922側)の境界920に特定側面103aを向け、特定側面103aの下面エッジ124(図3参照)を当該境界920に一致させつつ第3領域923に貼付される。
【0104】
ここで、第1テープ貼付ヘッド23aにより貼付されるマスキングテープ1およびその特定側面103aを、「第1マスキングテープ」および「第1特定側面」とし、第2テープ貼付ヘッド23bにより貼付されるマスキングテープ1およびその特定側面103aを、「第2マスキングテープ」および「第2特定側面」とすると、テープ貼付装置2aでは、第1テープ貼付ヘッド23aおよび走査機構22が、第1マスキングテープの第1特定側面の基板9側のエッジ(すなわち、下面エッジ124)を非塗布領域92と塗布領域91との境界920に一致させつつ第1マスキングテープを非塗布領域92に貼付する第1貼付機構となっている。また、第2テープ貼付ヘッド23bおよび走査機構22が、第2マスキングテープの第2特定側面の基板9側のエッジ(すなわち、下面エッジ124)を非塗布領域92の上記境界920に平行なもう1つの境界920に一致させつつ第2マスキングテープを非塗布領域92に貼付する第2貼付機構となっている。
【0105】
さらに、基板9の非塗布領域92のうちの第2領域922に対するマスキングテープの貼付では、図21に示す制御部26により第1貼付機構および第2貼付機構が制御されることにより、第2マスキングテープが、第2マスキングテープの特定側面103aである第2特定側面とは反対側の部位が、第1マスキングテープの特定側面103aである第1特定側面とは反対側の部位と重なる状態にて非塗布領域92に貼付されている。
【0106】
以上に説明したように、テープ貼付装置2aは、第1貼付機構および第2貼付機構(すなわち、第1テープ貼付ヘッド23a、第2テープ貼付ヘッド23bおよび走査機構22)を備える。そして、これらの構成により、テープ貼付装置2と同様に、一方の側面のみが剥離時の残渣を防止するように断面形状が調えられた特定側面103aである低コストのマスキングテープ1を利用し、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつマスキングテープ1を非塗布領域92に貼付することができる。
【0107】
第1貼付機構および第2貼付機構ではそれぞれ、供給リール232から繰り出されたマスキングテープ1が押圧部233により基板9に向けて押圧された状態で、走査機構22により基板9が移動されることにより、非塗布領域92に対してマスキングテープ1を位置精度良く、かつ、迅速に貼付することができる。
【0108】
テープ貼付装置2aでは、マスキングテープ1の貼付時に基板9の回転を行う必要がないため、マスキングテープ1をより迅速に貼付することができる。また、第1テープ貼付ヘッド23aによるマスキングテープ1の貼付時、および、第2テープ貼付ヘッド23bによるマスキングテープ1の貼付時における基板9の移動方向がそれぞれ、走査方向の一方側および他方側とされることにより、1本のマスキングテープ1を貼付する毎に基板9をテープ貼付ヘッド23の一方側に戻すテープ貼付装置に比べて、マスキングテープ1をさらに迅速に貼付することができる。なお、上述の説明では、基板9の(−X)側から順にマスキングテープ1が貼付されているが、マスキングテープ1の貼付順序は適宜変更されてよい。
【0109】
テープ貼付装置2aでは、非塗布領域92の第2領域922をマスクする際に、幅方向の両側の境界920にそれぞれ別のマスキングテープ1を対応させつつ複数のマスキングテープ1によりマスクすることにより、基板種類の変更等により第2領域922の幅が変更になった場合であっても、幅の異なるマスキングテープを新たに準備することなく第2領域922を容易にマスクすることができる。また、2本のマスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位が重ねられることにより、第2領域922を確実にマスクすることができる。
【0110】
マスキングテープ1は、上述のように、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に下面エッジ124が一致する特定側面103a側において、図3に示すように、基材11の下面エッジ114と粘着剤層12の上面エッジ123とが重なり、さらに粘着剤層12の下面エッジ124が上面エッジ123よりも幅方向に関して内側に位置する。このため、マスキングテープ1の基板9からの剥離時に、特定側面103a側において(すなわち、境界920近傍において)粘着剤層12の一部が残渣として基板9上に残ることを防止することができる。
【0111】
テープ貼付装置2aでは、マスキングテープ1に代えて、マスキングテープ1e(図17参照)が、第1貼付機構および第2貼付機構により基板9の非塗布領域92に貼付されてもよい。この場合、図17に示すように、マスキングテープ1eの特定側面103aが、粘着剤層12の下面エッジ124に接するとともに下面エッジ124に沿って存在する非吸収領域1031、および、基材上面111と非吸収領域1031との間に下面エッジ124から離れて配置される吸収領域1032を備えることにより、上述のように、マスキングテープ1eの特定側面103aに形成されるメニスカス94(図18.B参照)の高さを、非吸収領域1031の高さと同等程度まで小さくすることができる。
【0112】
また、テープ貼付装置2aでは、マスキングテープ1に代えて、マスキングテープ1f(図19参照)が、第1貼付機構および第2貼付機構により基板9の非塗布領域92に貼付されてもよい。この場合、図19に示すように、マスキングテープ1fの特定側面103aにおける有機EL液の接触角が、基板9の主面90における有機EL液の接触角よりも大きくされることにより、上述のように、特定側面103aにおけるメニスカスの発生を防止(または、抑制)することができる。
【0113】
次に、本発明に関連するさらに他の技術に係るテープ貼付システムについて説明する。図24は、関連技術に係るテープ貼付システム20を備える塗布システム8aの構成を示す図である。図24に示すように、塗布システム8aは、図1に示すテープ貼付装置2に代えて、テープ貼付システム20を備える。その他の構成は、図1に示す塗布システム8と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0114】
テープ貼付システム20は、図1に示すテープ貼付装置2と同様に、基板9の主面90上の非塗布領域92(図2参照)に対する有機EL液の付着を防止するマスキングテープ1(図2参照)を非塗布領域92に貼付するシステムである。マスキングテープ1では、図3に示すように、一方の側面のみが特定側面103aとされる。
【0115】
図25は、テープ貼付システム20を示す平面図である。図25に示すように、テープ貼付システム20は、図4ないし図7.Bに示すテープ貼付装置2と同様の構造を備える2つのテープ貼付装置(以下の説明では、図25中の(−X)側のテープ貼付装置を「第1テープ貼付装置201a」と呼び、(+X)側のテープ貼付装置を「第2テープ貼付装置201b」と呼ぶ。)、および、第1テープ貼付装置201aと第2テープ貼付装置201bとの間に配置されて基板9を第1テープ貼付装置201aから第2テープ貼付装置201bへと搬送する搬送機構202を備える。
【0116】
第1テープ貼付装置201aは、図4に示すテープ貼付装置2と同様に、基板9を保持する第1基板保持部21a、基板9を走査方向(すなわち、図25中のY方向)に移動する第1走査機構22a、基板9上の非塗布領域92にマスキングテープ1を貼付する第1テープ貼付ヘッド23c、第1テープ貼付ヘッド23cを走査方向に垂直な方向(すなわち、図25中のX方向)に移動する第1移動機構24aを備える。
【0117】
第2テープ貼付装置201bも、図4に示すテープ貼付装置2と同様に、基板9を保持する第2基板保持部21b、基板9を走査方向に移動する第2走査機構22b、基板9上の非塗布領域92にマスキングテープ1を貼付する第2テープ貼付ヘッド23d、第2テープ貼付ヘッド23dを走査方向に垂直な方向)に移動する第2移動機構24bを備える。なお、第1テープ貼付装置201aおよび第2テープ貼付装置201bでは、基板9を回転する回転機構は設けられない。
【0118】
第1テープ貼付ヘッド23c内および第2テープ貼付ヘッド23d内ではそれぞれ、マスキングテープ1は、特定側面103a(図3参照)が(+X)側を向くように保持されている。また、第1テープ貼付装置201aでは、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で、基板9が第1テープ貼付ヘッド23cの(−Y)側から(+Y)側へと移動することによりマスキングテープ1が基板9に貼付される。第2テープ貼付装置201bでも同様に、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で、基板9が第2テープ貼付ヘッド23dの(−Y)側から(+Y)側へと移動することによりマスキングテープ1が基板9に貼付される。
【0119】
ここで、第1テープ貼付ヘッド23cにより貼付されるマスキングテープ1およびその特定側面103aを、「第1マスキングテープ」および「第1特定側面」とし、第2テープ貼付ヘッド23dにより貼付されるマスキングテープ1およびその特定側面103aを、「第2マスキングテープ」および「第2特定側面」とすると、第2マスキングテープでは、第1マスキングテープの第1特定側面と同じ側の側面が第2特定側面となっている。
【0120】
また、第1テープ貼付装置201aでは、第1テープ貼付ヘッド23cおよび第1走査機構22aが、第1マスキングテープの第1特定側面の基板9側のエッジ(すなわち、下面エッジ124(図3参照))を非塗布領域92と塗布領域91との境界920(図2参照)に一致させつつ第1マスキングテープを非塗布領域92に貼付する第1貼付機構となっている。そして、第2テープ貼付装置201bでは、第2テープ貼付ヘッド23dおよび第2走査機構22bが、第2マスキングテープの第2特定側面の基板9側のエッジ(すなわち、下面エッジ124)を非塗布領域92の上記境界920に平行なもう1つの境界920に一致させつつ第2マスキングテープを非塗布領域92に貼付する第2貼付機構となっている。
【0121】
テープ貼付システム20では、第1テープ貼付装置201aにより、図2に示す基板9の非塗布領域92のうち、第1領域921および第2領域922に各1本のマスキングテープ1が貼付される。このとき、第1領域921に貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第2領域922側の境界920に向けられ、第2領域922に貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第3領域923側の境界920に向けられる。
【0122】
続いて、搬送機構202により、基板9が第1テープ貼付装置201aから搬出されるとともに、基板9の主面90(図2参照)に垂直な軸を中心に180°回転されつつ第2テープ貼付装置201bに搬入される。具体的には、搬送機構202のアーム2021が(−X)方向にスライドして第1テープ貼付装置201aの第1基板保持部21aから基板9を受け取り、アーム2021が(+X)方向へスライドしつつ回転軸2022を中心として180°回転する。その後、アーム2021が(+X)方向へスライドして第2テープ貼付装置201bの第2基板保持部21b上に基板9を載置する。
【0123】
次に、第2テープ貼付装置201bにより、基板9の非塗布領域92のうち、第2領域922および第3領域923に各1本のマスキングテープ1が貼付される。このとき、第2領域922貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第1領域921側の境界920に向けられ、当該マスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位は、基板9の切断領域上において、第1テープ貼付装置201aにより先に貼付されているマスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位上に重ねられる。また、第3領域923に貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第2領域922側の境界920に向けられる。
【0124】
テープ貼付システム20では、テープ貼付装置2と同様に、一方の側面のみが特定側面103aである低コストのマスキングテープ1を利用し、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつマスキングテープ1を非塗布領域92に貼付することができる。
【0125】
塗布システム8aでは、塗布システム8と同様に、マスキングテープ1の貼付、有機EL液の塗布、および、マスキングテープ1の剥離が、複数の基板に対して連続的に行われ、テープ貼付システム20では、第1テープ貼付装置201aおよび第2テープ貼付装置201bにより、2枚の基板に対して並行してマスキングテープ1の貼付が行われる。これにより、テープ貼付システム20では、マスキングテープ1を迅速に貼付することができる。
【0126】
なお、テープ貼付システム20では、マスキングテープ1e(図17参照)が基板9の非塗布領域92に貼付されてもよく、マスキングテープ1f(図19参照)が非塗布領域92に貼付されてもよい。
【0127】
次に、本発明に関連するさらに他の技術に係るテープ貼付システムについて説明する。図26は、関連技術に係るテープ貼付システム20aを示す平面図である。テープ貼付システム20aは、図25に示すテープ貼付システム20とほぼ同様の構成を備え、以下の説明において同符号を付す。
【0128】
テープ貼付システム20aは、図25に示すテープ貼付システム20と同様に、第1テープ貼付装置201a、第2テープ貼付装置201bおよび搬送機構202aを備える。第2テープ貼付装置201bの第2テープ貼付ヘッド23dは、第1テープ貼付装置201aの第1テープ貼付ヘッド23cとは反対向きに配置されている。第1テープ貼付ヘッド23c内では、マスキングテープ1は、特定側面103a(図3参照)が(+X)側を向くように保持されており、第2テープ貼付ヘッド23d内では、マスキングテープ1は特定側面103aが(−X)側を向くように保持されている。
【0129】
また、第1テープ貼付装置201aでは、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で、基板9が第1テープ貼付ヘッド23cの(−Y)側から(+Y)側へと移動することによりマスキングテープ1が基板9に貼付される。第2テープ貼付装置201bでは、マスキングテープ1が基板9に向けて押圧された状態で、基板9が第2テープ貼付ヘッド23dの(+Y)側から(−Y)側へと移動することによりマスキングテープ1が基板9に貼付される。
【0130】
ここで、第1テープ貼付ヘッド23cにより貼付されるマスキングテープ1およびその特定側面103aを、「第1マスキングテープ」および「第1特定側面」とし、第2テープ貼付ヘッド23dにより貼付されるマスキングテープ1およびその特定側面103aを、「第2マスキングテープ」および「第2特定側面」とすると、第2マスキングテープでは、第1マスキングテープの第1特定側面とは反対側の側面が第2特定側面となっている。
【0131】
テープ貼付システム20aでは、図25に示すテープ貼付システム20と同様に、第1テープ貼付装置201aにより、図2に示す非塗布領域92の第1領域921および第2領域922に各1本のマスキングテープ1が貼付される。このとき、第1領域921に貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第2領域922側の境界920に向けられ、第2領域922に貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第3領域923側の境界920に向けられる。
【0132】
続いて、搬送機構202aにより、基板9が第1テープ貼付装置201aから搬出されて第2テープ貼付装置201bに搬入される。具体的には、搬送機構202aのアーム2021が(−X)方向にスライドして第1テープ貼付装置201aの第1基板保持部21aから基板9を受け取り、基板9を保持するスライダ2023がアーム2021に沿って(+X)方向にスライドするとともにアーム2021も(+X)方向へスライドする。そして、アーム2021の(+X)側の端部まで移動したスライダ2023により、基板9が第2テープ貼付装置201bの第2基板保持部21b上に載置される。テープ貼付システム20aでは、テープ貼付システム20(図25参照)とは異なり、搬送機構202aにより基板9が第1テープ貼付装置201aから第2テープ貼付装置201bへと搬送される際に、基板9が回転されることはない。
【0133】
次に、第2テープ貼付装置201bにより、基板9の非塗布領域92のうち、第2領域922および第3領域923に各1本のマスキングテープ1が貼付される。このとき、第2領域922貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第1領域921側の境界920に向けられ、当該マスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位は、基板9の切断領域上において、第1テープ貼付装置201aにより先に貼付されているマスキングテープ1の特定側面103aとは反対側の部位上に重ねられる。また、第3領域923に貼付されるマスキングテープ1の特定側面103aは、第2領域922側の境界920に向けられる。
【0134】
テープ貼付システム20aでは、テープ貼付装置2と同様に、一方の側面のみが特定側面103aである低コストのマスキングテープ1を利用し、幅方向のいずれの側に塗布領域91が存在する場合であっても、非塗布領域92と塗布領域91との境界920に特定側面103a側の下面エッジ124を一致させつつマスキングテープ1を非塗布領域92に貼付することができる。
【0135】
また、テープ貼付システム20aでは、テープ貼付システム20と同様に、第1テープ貼付装置201aおよび第2テープ貼付装置201bにより、2枚の基板に対して並行してマスキングテープ1の貼付が行われることにより、マスキングテープ1を迅速に貼付することができる。
【0136】
テープ貼付システム20aでは、第1テープ貼付装置201aから第2テープ貼付装置201bへと基板9を搬送する際に基板9を回転する必要がないため、搬送機構202aの構造を簡素化することができる。一方、図25に示すテープ貼付システム20では、第1テープ貼付装置201aおよび第2テープ貼付装置201bの構造を、テープ貼付ヘッド内におけるマスキングテープ1の特定側面103aの向きに至るまで同様とすることができるため、テープ貼付システム20の構造を簡素化することができる。
【0137】
なお、テープ貼付システム20aでは、マスキングテープ1e(図17参照)が基板9の非塗布領域92に貼付されてもよく、マスキングテープ1f(図19参照)が非塗布領域92に貼付されてもよい。
【0138】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0139】
関連技術に係るテープ貼付装置2では、走査機構22による基板9の走査方向への移動に代えて、貼付機構のテープ貼付ヘッド23が走査方向に移動されることにより、基板9の押圧部233に対する相対的な移動が実現されてもよい。また、移動機構24によるテープ貼付ヘッド23の走査方向に垂直な方向(すなわち、非塗布領域92の第1領域921、第2領域922および第3領域923の境界920に垂直な方向)への移動に代えて、基板9が基板保持部21と共に移動されることにより、基板9の貼付機構に対する相対的な移動が実現されてもよい。
【0140】
さらには、回転機構25による基板9の回転に代えて、テープ貼付ヘッド23が基板9の主面90に垂直な軸を中心として回転することにより、基板9の貼付機構に対する相対的な回転が実現されてもよい。ただし、テープ貼付装置2のように、回転機構25により基板9を基板保持部21と共に回転する構造とすることにより、テープ貼付ヘッド23を回転する構造とする場合に比べて、テープ貼付装置2の構造を簡素化することができる。なお、テープ貼付装置2では、回転機構25に代えて、基板9を一旦基板保持部21上から持ち上げて180°回転させた後に基板保持部21に戻す他の回転機構が設けられてもよい。
【0141】
関連技術に係るマスキングテープ1では、基材11の特定側面103a側の下面エッジ114が、マスキングテープの全長に亘って粘着剤層12の特定側面103a側の上面エッジ123と重なっているが、例えば、粘着剤層12から粘着剤の微小部分が脱落したり、マスキングテープ1の製造時の僅かな製造誤差等により、マスキングテープ1の長手方向のごく一部において、粘着剤層12の上面エッジ123が基材11の下面エッジ114から僅かにずれていてもよい。換言すれば、基材11の特定側面103a側の下面エッジ114は、マスキングテープ1のほぼ全長に亘って粘着剤層12の特定側面103a側の上面エッジ123と重なっている。この場合であっても、関連技術と同様に、マスキングテープ1が基板9から剥離される際に、粘着剤層12の一部が残渣として基板9上に残ることを防止することができる。
【0142】
関連技術に係るマスキングテープ1の断面形状は、必ずしも図3に示すものには限定されず、例えば、図27に示すマスキングテープ1gのように、特定側面103aが基板9に垂直な平滑面となるように断面形状が調えられてもよい。この場合、マスキングテープ1gの特定側面103a側では、基材11の下面エッジ114が粘着剤層12の上面エッジ123と重なるとともに、粘着剤層12の下面エッジ124が、幅方向に関して上面エッジ123と同じ位置に位置する。なお、マスキングテープ1gの特定側面103aとは反対側の側面103は、基板9の主面90に対しておよそ垂直となっているが、特定側面103aとは異なり、テープ断面における形状は特に調えられてはいない。
【0143】
マスキングテープ1gの剥離時には、マスキングテープ1(図3参照)と同様に、粘着剤層12の特定側面103a側の下面エッジ124近傍の部位が、基材11により強固に支持されて安定して上向きに引っ張られることにより、特定側面103a側において粘着剤層12の一部が残渣として基板9上に残ることを防止することができる。
【0144】
マスキングテープ1およびマスキングテープ1gでは、特定側面103aと粘着剤層下面122とがそれぞれ為す角度θはそれぞれ、100°および90°とされるが、当該角度θは100°または90°には限定されない。ただし、角度θは、90°以上160°以下(より好ましくは、90°以上150°以下)とされることが好ましい。角度θが90°以上とされることにより、粘着剤層12の下面エッジ124の真上において基材下面112まで連続的に粘着剤を存在させることができる。その結果、マスキングテープの剥離時に、粘着剤層12の下面エッジ124近傍の部位が基材11に強固に支持されて基板9から剥離されるため、当該部位が粘着剤層12から脱落して基板9上に残ってしまうことをより確実に防止することができる。また、角度θが160°以下とされることにより、有機EL液がマスキングテープと基板9との間に浸入することを防止し、非塗布領域92に対する有機EL液の付着(すなわち、マスキング不良)を防止することができる。
【0145】
図17に示すマスキングテープ1eでは、吸収性部材13の上側が基材11の一部により覆われているが、吸収性部材13は、その上面が基材上面111(図17参照)に一致するように、換言すれば、吸収性部材13の上面がマスキングテープ1の上面において露出するように設けられてもよい。
【0146】
図21に示すテープ貼付装置2aでは、走査機構22による基板9の走査方向への移動に代えて、第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bが走査方向に移動されることにより、基板9の第1押圧部および第2押圧部に対する相対的な移動が実現されてもよい。また、移動機構24による第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bの走査方向に垂直な方向への移動に代えて、基板9が基板保持部21と共に移動されることにより、基板9の第1貼付機構および第2貼付機構に対する相対的な移動が実現されてもよい。
【0147】
テープ貼付装置2aでは、第1テープ貼付ヘッド23aと第2テープ貼付ヘッド23bとが同じ向きに配置され、基板9が(−Y)方向(または、(+Y)方向)に移動する際に、両テープ貼付ヘッドによりマスキングテープ1が貼付されてもよい。この場合も、第2テープ貼付ヘッド23b内におけるマスキングテープ1の特定側面103aは、マスキングテープ1の(−X)側に位置する。
【0148】
基板9上に塗布領域91が1つのみ設けられる場合(すなわち、基板9から有機EL表示装置用の基板が1枚だけ得られる場合)、テープ貼付装置2aでは、第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bを、塗布領域91の両側において非塗布領域92に対応する位置に配置することができるのであれば、第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bを走査方向に垂直な方向に移動する移動機構24は省略されてよい。
【0149】
テープ貼付装置2aでは、第1テープ貼付ヘッド23aおよび第2テープ貼付ヘッド23bの各構成が、1つのハウジングに収容され、移動機構24により一体的に走査方向に垂直な方向に移動されてもよい。
【0150】
上述のテープ貼付装置およびテープ貼付システムでは、基板9の非塗布領域92の第2領域922において、2本のマスキングテープの特定側面103aとは反対側の部位がそれぞれ、基板9の切断領域上に位置するのであれば、当該2本のマスキングテープの特定側面103aとは反対側の部位は、必ずしも重なっている必要はない。例えば、第2領域922に貼付される2本のマスキングテープの間に隙間があってもよい。また、マスキングテープの幅に対して第2領域922の幅が比較的大きい場合には、3本以上のマスキングテープにより第2領域922がマスクされてもよい(第1領域921および第3領域923において同様)。
【0151】
関連技術に係るテープ貼付装置およびテープ貼付システムにより貼付されるマスキングテープの特定側面103aは、必ずしも、図3に示すマスキングテープ1のように、マスキングテープの剥離時における残渣防止を目的として断面形状が調えられたものである必要はなく、また、図17に示すマスキングテープ1eのように、特定側面103aに形成されるメニスカスを小さくすることを目的として表面状態が調えられたものである必要もない。さらには、図19に示すマスキングテープ1fのように、特定側面103aにおけるメニスカスの発生を防止(または、抑制)することを目的として有機EL液(または基板9)に対する性質が調えられたものである必要もない。マスキングテープの特定側面103aは、有機EL液の塗布における様々な要求に適する断面形状や表面状態、または、有機EL液や基板等に対する性質が調えられた側面であればよい。
【0152】
上述のテープ貼付装置およびテープ貼付システムは、上述の有機EL液の塗布以外に、有機EL表示装置用の基板9に対して正孔輸送材料を含む流動性材料を塗布する際に、非塗布領域92に対するマスキングテープの貼付に利用されてもよい。ここで、「正孔輸送材料」とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、「正孔輸送層」とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0153】
また、テープ貼付装置およびテープ貼付システムは、必ずしも有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を画素形成材料として含む流動性材料の塗布時におけるマスキングテープの貼付にのみ利用されるわけではなく、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置等の平面表示装置用の基板に対し、着色材料や蛍光材料等の他の種類の画素形成材料を含む流動性材料を塗布する際やその他の流動性材料を塗布する際のマスキングテープの貼付に利用されてもよい。さらには、有機薄膜太陽電池用基板や半導体ウエハ、光ディスク用基板等の様々な基板に対する流動性材料の塗布の際のマスキングテープの貼付に利用されてもよい。
【0154】
上記実施の形態では、ノズルから基板に向けて流動性材料を連続的に吐出して塗布する方法について説明したが、テープ貼付装置およびテープ貼付システムは、これ以外の塗布方法(例えば、インクジェット法やスピンコート法)により流動性材料を基板に塗布する際のマスキングテープの貼付にも利用されてよい。
【0155】
また、基板に対するマスキングテープの貼付は、必ずしも上述のテープ貼付装置やテープ貼付システムにより行われる必要はなく、例えば、非塗布領域の境界に沿って伸ばされたマスキングテープを保持するテープ保持部が、基板上の非塗布領域に対して当該マスキングテープを全長に亘って押圧することにより1本目のマスキングテープが貼付され、基板が主面に垂直な軸を中心として180°回転された後、テープ保持部に保持された2本目のマスキングテープが、非塗布領域に対して全長に亘って押圧されて貼付されてもよい。
【符号の説明】
【0156】
1,1a〜1g マスキングテープ
2,2a テープ貼付装置
9 基板
11 基材
12 粘着剤層
20,20a テープ貼付システム
21 基板保持部
21a 第1基板保持部
21b 第2基板保持部
22 走査機構
22a 第1走査機構
22b 第2走査機構
23 テープ貼付ヘッド
23a,23c 第1テープ貼付ヘッド
23b,23d 第2テープ貼付ヘッド
24 移動機構
25 回転機構
26 制御部
90 主面
91 塗布領域
92 非塗布領域
93 有機EL液
103a 特定側面
114 下面エッジ
123 上面エッジ
124 下面エッジ
201a 第1テープ貼付装置
201b 第2テープ貼付装置
202,202a 搬送機構
232 供給リール
233 押圧部
920 境界
1031 非吸収領域
1032 吸収領域
S11〜S15,S21〜S24 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上の非塗布領域に前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
マスキングテープの一方の側面である特定側面の前記基板側のエッジを、前記基板の主面上の非塗布領域と塗布領域との境界に一致させつつ、前記マスキングテープを前記非塗布領域に貼付する貼付機構と、
前記基板を前記主面に垂直な軸を中心に前記貼付機構に対して相対的に180°回転する回転機構と、
前記非塗布領域の前記境界に垂直な方向に前記基板を前記貼付機構に対して相対的に移動する移動機構と、
を備え、
前記マスキングテープの前記特定側面における流動性材料の接触角が、前記基板の前記主面における前記流動性材料の接触角よりも大きいことを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテープ貼付装置であって、
前記貼付機構が、
前記マスキングテープを繰り出すテープ供給部と、
前記マスキングテープの前記テープ供給部から繰り出された部位を前記非塗布領域に向けて押圧する押圧部と、
前記マスキングテープが前記押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記非塗布領域の前記境界に平行な走査方向に前記押圧部に対して相対的に移動することにより、前記マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付する走査機構と、
を備えることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテープ貼付装置であって、
前記回転機構により、前記基板が前記基板保持部と共に回転することを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、
前記貼付機構、前記回転機構および前記移動機構を制御することにより、前記非塗布領域の前記境界に前記特定側面を向けて前記非塗布領域に前記マスキングテープを貼付し、前記非塗布領域の前記境界とは反対側に位置し、かつ、前記境界に平行なもう1つの境界にもう1つのマスキングテープの一方の側面である特定側面を向けるとともに前記特定側面とは反対側の部位を前記マスキングテープに重ねて前記もう1つのマスキングテープを前記非塗布領域に貼付する制御部をさらに備えることを特徴とするテープ貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図8】
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【図9.A】
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【図9.B】
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【図9.C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15.A】
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【図15.B】
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【図16】
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【図17】
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【図18.A】
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【図18.B】
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【図18.C】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23.A】
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【図23.B】
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【図23.C】
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【図23.D】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−101218(P2012−101218A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250756(P2011−250756)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2007−122383(P2007−122383)の分割
【原出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】