説明

テールゲート組み付け調整治具、組み付け方法

【課題】テールゲートを支持した状態で位置決めしながらルーフパネルに組み付ける。
【解決手段】テールゲートを支持する枠体2と、枠体2の下部に配設されテールゲート開口部W1に設けた位置決め穴(W21)に挿入する位置決めピン24と、枠体2の下部に配設され、テールゲートの下部に設けた開口穴部(W4)を規制してテールゲートを位置決めする位置決め部4と、枠体2の上部の両側に配設され車体Wの後部の両側面に形成された当接形状部(W3)に係合させて枠体2を位置決めする位置決め係合部3と、枠体2の上部に配設されルーフパネルRPとテールゲートとを車体Wの前後方向に沿う方向に挟持して中央部を位置決めする第1の位置決め手段5と、ヒンジブラケット8の近傍に位置するように枠体2に配設され、ルーフパネルRPとテールゲートに固定されたヒンジブラケット8を挟持して位置決めする第2の位置決め手段6と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テールゲートの組み付け調整治具、および組み付け方法に係り、特に、テールゲートを支持した状態で位置決めしながらルーフパネルに組み付けることができるテールゲートの組み付け調整治具、および組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接ラインにおいて、ルーフパネルにテールゲートを組み付け、ヒンジ部を締結する際、テールゲートの自重や締め付け手順等により隙間やずれ等が発生するため、仮組み後に後工程で正確に位置合わせして再調整する必要があった。例えば、予め組み付けされたトランクリッドと車体の開口部とのスキや段差を測定して調整する組み付け用治具を備えたトランクリッド組み付け装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−139348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置でテールゲートを組み付ける場合、組み付け用の仮組み工程と位置合わせ用の調整工程が別個に独立した作業として必要となり、組み付け調整作業が重複するので工数が増大するという問題があった。また、装置稼動においてバキューム、アクチュエータ等の動力も必要となるため、装置が大型化し作業性が低下する恐れがある。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、テールゲートを支持した状態で位置決めしながらルーフパネルに組み付けることが可能な組み付け調整治具、および組み付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、テールゲートを支持した状態でヒンジブラケットを締結具で固定して車体のルーフパネルに組み付ける組み付け調整治具であって、前記車体の前記テールゲート開口部に設置して前記テールゲートを支持する枠体と、この枠体の下部に配設され前記テールゲート開口部に設けた位置決め穴に挿入し前記車体に対して位置決めする位置決めピンと、前記枠体の下部に配設され、前記テールゲートの下部に設けた開口穴部を規制して当該枠体に対して当該テールゲートを位置決めする位置決め部と、前記枠体の上部の両側に配設され前記車体の後部の両側面に形成された当接形状部に係合させて当該枠体を位置決めする位置決め係合部と、前記枠体の上部に配設され前記ルーフパネルと前記テールゲートとを前記車体の前後方向に沿う方向に挟持して当該テールゲートと当該ルーフパネルとの中央部を位置決めする第1の位置決め手段と、前記ヒンジブラケットの近傍に位置するように前記枠体に配設され、前記ルーフパネルと前記テールゲートに固定されたヒンジブラケットを挟持して位置決めする第2の位置決め手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、前記枠体の下部を位置決めピンにより前記車体に位置決めし、前記枠体の上部を位置決め係合部により車体の当接形状部に位置決めすることで、前記車体の前記テールゲート開口部に対して前記枠体を適切に位置決めすることができる。
【0008】
そして、前記位置決め部によりテールゲートの下部に設けた開口穴部を規制することで、テールゲートと枠体とをテールゲートの下部で位置決めすることができる。このため、テールゲートの上部をテールゲートに固定したヒンジブラケットに締結具を挿通してルーフパネルに形成されたヒンジピン穴に挿通してテールゲートを懸垂支持することで、テールゲートを枠体に対して位置決めすることができる。
このようにして、テールゲートを枠体で位置決め支持することで、テールゲートを車体のテールゲート開口部に対して幅方向で適切に位置決めすることができる。
【0009】
そして、テールゲートを幅方向で適切に位置決めした状態で、第1の位置決め手段により当該テールゲートと当該ルーフパネルとの中央部を挟持するようにしてテールゲートを支持しながらルーフパネルに対して位置決めすることで、テールゲートをテールゲート開口部に対して前記車体の前後方向ないし上下方向でも適切に位置決めすることができる。
【0010】
このようにして、テールゲート開口部に対してテールゲートを適切に位置決めした状態で、第2の位置決め手段により前記ルーフパネルと前記テールゲートに固定されたヒンジブラケットを挟持して、前記ルーフパネルと前記テールゲートを位置決めして保持する。
【0011】
最後に、この位置決め保持した状態でヒンジブラケットをルーフパネルに締結することで、テールゲートを枠体で支持した状態で、ルーフパネルとテールゲートとの位置合わせ調整と組み付けが完了する。
【0012】
よって、本発明は、簡易な構成により、テールゲートの組み付け作業と位置合わせ調整作業を一緒に実行することができるので、重複する作業を削減して効率的な組み付け作業が可能となり工数削減を図ることができる組み付け調整治具を提供することができる。また、本発明に係る組み付け調整治具は、テールゲートと車体において、確実な位置合わせができるため、車体組立などの後工程で再度調整作業を削減することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のテールゲートの組み付け調整治具であって、前記位置決め穴は、前記テールゲートを固定するストライカの固定穴を利用し、前記開口穴部は、前記ストライカと係合するロック部品の開口穴部を利用し、前記位置決め係合部は、前記車体の後端部における前記車体のサイドパネルとルーフパネルの接合部に形成されたモヒカン側壁部を利用したこと、を特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、前記車体に形成されるストライカの固定穴やモヒカン側壁部を利用することで、別途位置合わせ用の穴加工や形状加工を必要としないため、工数増加を抑制しながら、効率的に組み付け作業が実行可能な組み付け調整治具を実現することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のテールゲートの組み付け調整治具であって、前記第1の位置決め手段は、前記ルーフパネルのルーフレールに係合する第1の係合部材と、前記テールゲートに係合する第2の係合部材と、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材を所定の押圧力で挟持するように回動させるトグルクランプ装置と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材を所定の押圧力で挟持するように回動させるトグルクランプ装置を備えたことで、効率よく正確にテールゲートをルーフパネルに位置合わせした状態で保持することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のテールゲートの組み付け調整治具であって、前記第2の位置決め手段は、前記ヒンジブラケットにおけるルーフパネル側ブラケットの上部を保持するようにスライド移動して配設されるスライドバーと、前記ルーフパネルの上部を保持するように配設される上部係合部材と、前記ルーフパネルの下部を保持するように配設される下部係合部材と、前記スライドバーおよび前記上部係合部材と、前記下部係合部材と、の間で前記ルーフパネルと前記ヒンジブラケットを挟持するように作動させるトグルクランプ装置と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、前記ルーフパネルと前記ヒンジブラケットを挟持するように作動させるトグルクランプ装置を備えたことで、効率よく正確にテールゲートをルーフパネルに位置合わせした状態で保持することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組み付け調整治具を使用して前記ルーフパネルに前記テールゲートを組み付けるテールゲートの組み付け方法であって、前記枠体を前記テールゲート開口部に設置して前記車体と当該枠体を位置決めする枠体位置決め工程と、前記テールゲートに固定された前記ヒンジブラケットに挿通した前記締結具を前記ルーフパネルに形成されたヒンジ穴に挿通して懸垂支持するとともに、前記枠体の位置決め部により当該テールゲートの下部に設けた開口穴部を規制して位置決めするテールゲート位置決め工程と、前記第1の位置決め手段により前記テールゲートの中央部を挟持して位置決めする工程と、前記第2の位置決め手段により前記テールゲートの両縁部を挟持して位置決めする工程と、前記テールゲートを前記枠体に支持した状態で前記ヒンジブラケットを前記締結具で固定して前記ルーフパネルに当該テールゲートを組み付ける工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、テールゲート位置決め工程、および前記テールゲートの中央部を挟持して位置決めする工程を含むことで、テールゲートをテールゲート開口部に対して前記車体の幅方向、および前後方向ないし上下方向でも適切に位置決めすることができる。
【0021】
このようにして、本発明は、前記第2の位置決め手段により前記テールゲートの両縁部を挟持して位置決めした状態で前記ヒンジブラケットを前記締結具で固定して前記ルーフパネルに当該テールゲートを組み付けることで、重複する作業を削減して効率的な組み付け作業が可能となり工数削減を図ることができる組み付け方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、テールゲートを支持した状態で位置決めしながらルーフパネルに組み付けることが可能な組み付け調整治具、および組み付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る組み付け調整治具をテールゲート開口部に設置した状態を示す図であり、車体を後方から見た図である。
【図2】本発明の実施形態に係る組み付け調整治具をテールゲート開口部に設置した状態を示す図1の斜視図であり、ヒンジブラケットを抜き出して示したものである。
【図3】本発明の実施形態に係る枠体の下部にテールゲートを支持した状態を示す図であり、(a)は部分拡大斜視図、(b)は図1のA方向から見た側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第1の位置決め手段の構成を示す図1のB方向から見た側面図であり、(a)はトグルクランプを押して挟持して位置決めした状態、(b)はトグルクランプを引いて開放した状態を示す。
【図5】本発明の実施形態に係る第2の位置決め手段の構成を示す図1のC方向から見た側面図であり、(a)はトグルクランプを押し上げて挟持して位置決めした状態、(b)はトグルクランプを押し下げて開放した状態を示す。
【図6】第2の位置決め手段の上部構造に係るスライドバーの構成を示す斜視図であり、(a)はスライドバーをルーフパネル側ブラケットの上部に移動した状態、(b)はスライドバーをヒンジブラケットから回避した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係るテールゲートの組み付け調整治具1の構成について、適宜図1から図6を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る組み付け調整治具1は、図1と図2に示すように、車体Wの後部のテールゲート開口部W1(テールゲート(不図示)が装着される開口部)に設置され、テールゲートTG(図3参照)を支持してテールゲート開口部W1に位置決めしながら車体Wの後部に組み付ける治具である。
【0025】
車体Wの後部は、図1に示すように、サイドパネルSPと、ルーフパネルRPと、フロアパネルFPと、を接合して構成され、テールゲート開口部W1が形成されている。テールゲート(不図示)は、ルーフパネルRPにヒンジブラケット8を介して開閉自在に装着される。
そして、ヒンジブラケット8は、予め不図示のテールゲートの両縁部に配設して固定され(図5を参照)、位置合わせ調整後にボルト等の締結具でルーフパネルRPの車内側からナット等の締結具を締めてルーフパネルRPに締結される。
【0026】
なお、図1と図2においては、説明の便宜上、テールゲートを図示しないが、テールゲートは、車体Wに装着された状態になるように位置合わせされ、テールゲート開口部W1を覆うようにして組み付け調整治具1に支持されている(図3参照)。
【0027】
組み付け調整治具1は、図1に示すように、テールゲート(不図示)を支持する枠体2と、この枠体2の下部に配設された位置決めピン24と、枠体2の上部の両側に配設された位置決め係合部3と(図4参照)、テールゲートTGを枠体2に対して位置決めする位置決め部であるテールゲート位置決め部4と、枠体2の上部に配設されテールゲートTGとルーフパネルRPとの中央部を位置決めする第1の位置決め手段5と(図4参照)、ルーフパネルRPとテールゲートTGに固定されたヒンジブラケット8を挟持して位置決めする第2の位置決め手段6と、を備えている。
【0028】
枠体2は、図1および図2に示すように、略5角形のフレーム構造をなし、水平方向に配設される上フレーム21と、垂直方向に配設されるサイドフレーム22と、逆二等辺三角形の頂点が下部に位置するように配設される下フレーム23とを備えている。
【0029】
枠体2の下フレーム23の下部には、図1に示すように、車体W、つまりテールゲート開口部W1に対して位置決めする位置決めピン24と、テールゲート開口部W1の下部に位置するフロアパネルFPの上面W22(図3参照)に当接させて位置決めする座面25(図3参照)と、フロアパネルFPの内側面に当接させて位置決めする突き当て面26(図3を併せて参照)と、を備えている。
そして、位置決めピン24は、図3(b)に示すように、フロアパネルFPに形成されたテールゲートTGのロック部品と係合するストライカの位置決め固定穴W21に挿入され、座面25および突き当て面26と協働することで枠体2を位置決めする。
【0030】
位置決め係合部3は、枠体2の上フレーム21の両側縁部に配設され、モヒカン側壁部W3(図2参照)に係合させるゲージ部31と、枠体2に固定するための連結部材32と、を備えている。
位置決め係合部3は、車体Wの後部の両側面に形成された当接形状部であるモヒカン側壁部W3に係合させて枠体2の上部を車体Wに位置決めする部材である。
【0031】
具体的には、モヒカン側壁部W3は、図2に示すように、車体WのサイドパネルSPとルーフパネルRPの接合部に形成された溝(いわゆるモヒカン)の側壁面であり、モヒカンは適切な剛性を有し車体Wの上部後端部まで到達して形成されている。このため、モヒカン側壁部W3を利用して、このモヒカン側壁部W3に係合するように成形したゲージ部31を車体Wの内側の両方からモヒカン側壁部W3に係合するように当接させて枠体2の上部を位置決めしている。
【0032】
このようにして、枠体2は、下部の中央部を位置決めピン24により位置決めし、上部の両側縁部に設けたゲージ部31をモヒカン側壁部W3(図2参照)に係合させて位置決めして、車体Wのテールゲート開口部W1に対して支持されている。
【0033】
一方、テールゲートの枠体2に対する位置決めは、図1に示すように、テールゲートTGの下部を枠体2の下部中央に配設されたテールゲート位置決め部4で位置決めされている(図3を併せて参照)。
テールゲート位置決め部4は、図3(a)に示すように、幅方向を位置決めする両側に形成された左右当接面41,42と、車体Wの後部側に形成され前後方向を規制する後部当接面43と、を備えている。
【0034】
かかる構成により、テールゲート位置決め部4は、図3に示すように、テールゲートTGの下部に形成されたロック部品を装着するための矩形の開口穴部W4の3辺W41,W42,W43に当接するように規制してテールゲートTGを枠体2に対して、すなわち車体Wのテールゲート開口部W1(図1)に対して位置決めしている。
【0035】
テールゲートの上部は、図2に示すように、テールゲート(不図示)に固定されたヒンジブラケット8を介して、ルーフパネルRPに懸垂支持して位置決めされている。
ここで、ヒンジブラケット8は、テールゲート側ブラケット81と、ルーフパネル側ブラケット82と、テールゲート側ブラケット81とルーフパネル側ブラケット82を回動自在に連結するヒンジピン83と、を備えている。
【0036】
そして、テールゲート側ブラケットを図示しないボルト等の締結具でテールゲートに締結し、ルーフパネル側ブラケット82には、締結具であるヒンジボルト84が挿通されている。このようにして、ヒンジブラケット8をテールゲートに締結した状態で、ルーフパネル側ブラケット82に挿通したヒンジボルト84(溶接等により固定してもよい)をルーフパネルに形成されたヒンジ穴(不図示)に挿通して、テールゲートをルーフパネルRPから懸垂支持している。
【0037】
以上のようにして、テールゲート(不図示)は、上部をルーフパネルRPに懸垂支持し、下部を枠体2のテールゲート位置決め部4で位置決め支持することで、枠体2およびルーフパネルRPに対して、同時にテールゲート開口部W1に対して位置決めされている。
【0038】
第1の位置決め手段5は、図4に示すように、ルーフパネルRPのルーフレールW5に係合する第1の係合部材51と、テールゲートTGの外側からに係合する第2の係合部材52と、第1の係合部材51と第2の係合部材52を所定の押圧力で挟持するように回動させるトグルクランプ装置53と、上フレーム21に固定する本体部54と、を備えている。
【0039】
トグルクランプ装置53は、水平方向に回動するハンドル53aと、ハンドル53aの回動により図示左右方向(車体Wの前後方向)に往復移動する移動体53bと、移動体53bの移動により第1の係合部材51を回動させる第1のリンク機構53cと、移動体53bの移動により第2の係合部材52を回動させる第2のリンク機構53dと、を備えている。
【0040】
そして、かかる構成により、トグルクランプ装置53は、図4(a)に示すように、ハンドル53aを車体Wの車幅方向に沿うように回動させた場合には、移動体53bが図示右方向に移動するため、第1のリンク機構53cにより第1の係合部材51をルーフレールW5に係合するように回動させ、第2のリンク機構53dにより第2の係合部材52をテールゲートTGに係合するように回動させることで、第1の係合部材51と第2の係合部材52によりルーフパネルRPとテールゲートTGとを車体Wの前後方向に沿う方向に所定の押圧力で挟持することができる。
【0041】
なお、所定の押圧力は、例えば、テールゲートTGを挟持した状態でテールゲートTGがテールゲート開口部W1(図2)に対して隙間が調整された正規の位置にくるようにテールゲートTGの自重やストライカ(不図示)にかかる負荷等を考慮して予め設定しておくことができる。
【0042】
一方、図4(b)に示すように、トグルクランプ装置53は、ハンドル53aを車体Wの前後方向に沿うように回動させた場合には、移動体53bが図示左方向に移動して、第1の係合部材51をルーフレールW5から離間するように回動させ、第2のリンク機構53dにより第2の係合部材52をテールゲートTGから離間するように回動させて、図4(a)に示す係合状態を解除する。
【0043】
第2の位置決め手段6は、図5に示すように、ルーフパネルRP(図2)およびヒンジブラケット8のルーフパネル側ブラケット82を上方から保持する上部クランプ手段61と、ルーフパネルRPの下部に配設されたチャイルドアンカバーW6を下方から保持する下部クランプ手段62と、上部クランプ手段61と下部クランプ手段62を作動させるトグルクランプ装置63と、を備えている。そして、第2の位置決め手段6は、ヒンジブラケット8の近傍に位置するようにトラニオンブラケット64を介して枠体2の上フレーム21に回動自在に軸支されている。
【0044】
上部クランプ手段61は、図6に示すように、ルーフパネル側ブラケット82の上部にスライド移動して配設されるスライドバー61aと、スライドバー61aをスライドさせるハンドル61bと、ルーフパネルRPの上部を上方から保持するように配設される上部係合部材61cと、を備え、スライドバー61aをルーフパネル側ブラケット82の上部にスライド移動するとスライドバー61aが上部係合部材61cに嵌入されて一体となるように構成されている。
【0045】
下部クランプ手段62は、図5に示すように、チャイルドアンカバーW6を下方から保持するように配設される下部係合部材62aと、下部係合部材62aを支持する移動体62bと、を備えている。
トグルクランプ装置63は、上下方向に回動するハンドル63aと、ハンドル63aに連結されハンドル63aの回動により上下方向に移動体62bを移動させるガイドロッド63bと、を備えている。
【0046】
かかる構成により、第2の位置決め手段6は、図5(a)に示すように、ハンドル63aを押し上げるように回動させた場合には、移動体62bが上方に移動するため、下部係合部材62aが下側からチャイルドアンカバーW6に当接する。この当接した状態からさらに移動体62bが上方に移動すると、第2の位置決め手段6が全体として図示反時計回りに回動し、これに伴い上部係合部材61cとスライドバー61aが、ルーフパネルRPおよびルーフパネル側ブラケット82を上方から押圧するように回動する。
このようにして、第2の位置決め手段6は、ルーフパネルRPおよびルーフパネル側ブラケット82を上部クランプ手段61と下部クランプ手段62とで挟持して位置決めされた状態で強固に保持することができる。
【0047】
一方、第2の位置決め手段6は、図5(b)に示すように、ハンドル64aを押し下げるように回動させた場合には、上部クランプ手段61と下部クランプ手段62とを逆方向に作動させ、ルーフパネルおよびルーフパネル側ブラケット82を開放することができる。
【0048】
なお、本実施形態において、下部クランプ手段62は、チャイルドアンカバーW6がルーフパネルRPに対して適切な剛性をもってルーフパネル側ブラケット82の近傍に配設されているため、このチャイルドアンカバーW6を下方から保持してルーフパネルRPを保持するようにしたが、これに限定されるものではなく、ルーフパネルRPとルーフパネル側ブラケット82をバランスよく上下方向から挟持できる部位であればルーフパネルRPを直接保持するようにしてもよい。
【0049】
続いて、本発明の実施形態に係る組み付け調整治具1を使用してテールゲートをルーフパネルに組み付ける方法について、主として図1と図2を参照しながら説明する。
本発明の実施形態に係るテールゲートの組み付け方法は、枠体2をテールゲート開口部W1に設置して車体Wと枠体2を位置決めする枠体位置決め工程と、ヒンジブラケット8を固定したテールゲートを枠体2で支持して位置決めするテールゲート位置決め工程と、第1の位置決め手段5によりテールゲートの中央部を挟持して位置決めする工程と、第2の位置決め手段6によりテールゲートの両縁部を挟持して位置決めする工程と、テールゲートを枠体2に載置した状態でヒンジブラケットをヒンジボルト84にナットで車内側から締め付けてルーフパネルにテールゲートを組み付ける工程と、を含んでいる。
【0050】
枠体位置決め工程は、枠体2の下部を位置決めピン24により位置決めし、上部を両側縁部に設けたゲージ部31をモヒカン側壁部W3(図2参照)に係合させて位置決めすることで、枠体2を車体Wのテールゲート開口部W1に対して位置決めする工程である。
【0051】
テールゲート位置決め工程は、テールゲートTGの上部をルーフパネル側ブラケット82に挿通したヒンジボルト84をルーフパネルRPに形成されたヒンジ穴(不図示)に挿通して、テールゲートをルーフパネルRPから懸垂支持するとともに(図2参照)、テールゲートTGの下部を枠体2の下部中央に配設されたテールゲート位置決め部4で位置決めする工程である(図3参照)。
【0052】
テールゲートの中央部を挟持して位置決めする工程は、トグルクランプ装置53により、第1の係合部材51と第2の係合部材52を所定の押圧力で挟持するように回動させて、ルーフパネルRPとテールゲートTGとを車体Wの前後方向に沿う方向に挟持してテールゲートTGとルーフパネルRPとの中央部を位置決めする工程である。
【0053】
テールゲートの両縁部を挟持して位置決めする工程は、トグルクランプ装置63を操作して、ルーフパネルRPおよびルーフパネル側ブラケット82を上部クランプ手段61と下部クランプ手段62とで挟持して、テールゲートTGとルーフパネルRPとの両縁部を位置決めする工程である。
【0054】
テールゲートを組み付ける工程は、テールゲートとルーフパネルRPとを第1の位置決め手段5および第2の位置決め手段6で挟持した状態で、ヒンジボルト84(図2)をナット(不図示)で車内側から締め付けてテールゲートをルーフパネルRPに組み付ける工程である。
【0055】
以上のように構成された本発明の実施形態に係る組み付け調整治具1を使用してテールゲートをルーフパネルRPに組み付ける方法は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、テールゲート位置決め工程、およびテールゲートの中央部を挟持して位置決めする工程を含むことで、テールゲートをテールゲート開口部W1に対して車体Wの幅方向、および前後方向ないし上下方向でも適切に位置決めすることができる。
【0056】
このようにして、本発明に係る組み付け方法は、第2の位置決め手段6によりテールゲートの両縁部を挟持して位置決めした状態でヒンジブラケット8を締結具で固定してルーフパネルRPにテールゲートを組み付けることで、重複する作業を削減して効率的な組み付け作業が可能となり工数削減を図ることができる。また、本発明に係る組み付け方法は、テールゲートと車体において、確実な位置合わせができるため、車体組立などの後工程で再度調整作業を削減することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。例えば、本実施形態においては、第1の位置決め手段5および第2の位置決め手段6をそれぞれトグルクランプ装置53,63で構成したが、エアシリンダ等の駆動源を利用して構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 組み付け調整治具
2 枠体
3 位置決め係合部
4 位置決め部
5 第1の位置決め手段
6 第2の位置決め手段
8 ヒンジブラケット
24 位置決めピン
51 第1の係合部材
52 第2の係合部材
53 トグルクランプ装置
61 上部クランプ手段
61a スライドバー
61c 上部係合部材
62a 下部係合部材
62b 移動体
63 トグルクランプ装置
81 テールゲート側ブラケット
82 ルーフパネル側ブラケット
83 ヒンジピン
84 ヒンジボルト
RP ルーフパネル
TG テールゲート
W 車体
W1 テールゲート開口部
W3 当接形状部(モヒカン側壁部)
W4 開口穴部
W5 ルーフレール
W6 チャイルドアンカバー
W21 ストライカの位置決め固定穴(ストライカの固定穴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テールゲートを支持した状態でヒンジブラケットを締結具で固定して車体のルーフパネルに組み付ける組み付け調整治具であって、
前記車体の前記テールゲート開口部に設置して前記テールゲートを支持する枠体と、
この枠体の下部に配設され前記テールゲート開口部に設けた位置決め穴に挿入し前記車体に対して位置決めする位置決めピンと、
前記枠体の下部に配設され、前記テールゲートの下部に設けた開口穴部を規制して当該枠体に対して当該テールゲートを位置決めする位置決め部と、
前記枠体の上部の両側に配設され前記車体の後部の両側面に形成された当接形状部に係合させて当該枠体を位置決めする位置決め係合部と、
前記枠体の上部に配設され前記ルーフパネルと前記テールゲートとを前記車体の前後方向に沿う方向に挟持して当該テールゲートと当該ルーフパネルとの中央部を位置決めする第1の位置決め手段と、
前記ヒンジブラケットの近傍に位置するように前記枠体に配設され、前記ルーフパネルと前記テールゲートに固定されたヒンジブラケットを挟持して位置決めする第2の位置決め手段と、
を備えたことを特徴とするテールゲートの組み付け調整治具。
【請求項2】
前記位置決め穴は、前記テールゲートを固定するストライカの固定穴を利用し、
前記開口穴部は、前記ストライカと係合するロック部品の開口穴部を利用し、
前記位置決め係合部は、前記車体の後端部における前記車体のサイドパネルとルーフパネルの接合部に形成されたモヒカン側壁部を利用したこと、
を特徴とする請求項1に記載のテールゲートの組み付け調整治具。
【請求項3】
前記第1の位置決め手段は、前記ルーフパネルのルーフレールに係合する第1の係合部材と、前記テールゲートに係合する第2の係合部材と、前記第1の係合部材と前記第2の係合部材を所定の押圧力で挟持するように回動させるトグルクランプ装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテールゲートの組み付け調整治具。
【請求項4】
前記第2の位置決め手段は、
前記ヒンジブラケットにおけるルーフパネル側ブラケットの上部を保持するようにスライド移動して配設されるスライドバーと、
前記ルーフパネルの上部を保持するように配設される上部係合部材と、
前記ルーフパネルの下部を保持するように配設される下部係合部材と、
前記スライドバーおよび前記上部係合部材と、前記下部係合部材と、の間で前記ルーフパネルと前記ヒンジブラケットを挟持するように作動させるトグルクランプ装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のテールゲートの組み付け調整治具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組み付け調整治具を使用して前記ルーフパネルに前記テールゲートを組み付けるテールゲートの組み付け方法であって、
前記枠体を前記テールゲート開口部に設置して前記車体と当該枠体を位置決めする枠体位置決め工程と、
前記テールゲートに固定された前記ヒンジブラケットに挿通した前記締結具を前記ルーフパネルに形成されたヒンジ穴に挿通して懸垂支持するとともに、前記枠体の位置決め部により当該テールゲートの下部に設けた開口穴部を規制して位置決めするテールゲート位置決め工程と、
前記第1の位置決め手段により前記テールゲートの中央部を挟持して位置決めする工程と、
前記第2の位置決め手段により前記テールゲートの両縁部を挟持して位置決めする工程と、
前記テールゲートを前記枠体に支持した状態で前記ヒンジブラケットを前記締結具で固定して前記ルーフパネルに当該テールゲートを組み付ける工程と、
を含むことを特徴とするテールゲートの組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−173536(P2011−173536A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39696(P2010−39696)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】