説明

テールシール装置及び該テールシール装置を備えたトンネル掘削機

【課題】ワイヤブラシの高さ調整が可能で、シール性の向上が図れると共に汎用性を高められるテールシール装置及び該テールシール装置を備えたトンネル掘削機を提供する。
【解決手段】筒状に配されるワイヤブラシ30の前後両端部を断面コ字形でリング状の押え板31A,31Bで担持し、ワイヤブラシ後端側の押え板31Bを筒状のスキンプレート1の後部内周面に固定すると共に、ワイヤブラシ前端側の押え板31Aを押しボルト32により前後方向へ移動可能にスキンプレート1の後部内周面に支持させ、前記ワイヤブラシ30はワイヤブラシ前端側の押え板31Aの前方移動による直線状態から当該押え板31Aの後方移動により弧状に変形して既設セグメントSの外周面に圧接可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの掘削作業時に掘削機内部への地下水等の漏洩を防止するためのテールシール装置及び該テールシール装置を備えたトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種、テールシール装置として、例えば図4に示すようなものが有る(特許文献1参照)。これによれば、円筒状をなすスキンプレート100の後部にはその内周面に沿って前後一対のテールシール101A,101Bが所定の間隔をもって装着されている。この一対のテールシール101A,101Bはほぼ同様の構成となっており、先端部がスキンプレート100の中心側に折曲して既設のセグメントSの外周面に圧接している。即ち、この各テールシール101A,101Bは、複数のワイヤブラシ102の基端部が束ねられると共に外保護板103aと内保護板103bによって挾持され、更に、コ字形状の押え板104に挾持されている。そして、この押え板104が複数の取付ピン105によってスキンプレート100の内周面に固定されている。
【0003】
また、スキンプレート100の外周面には内側にグリース供給溝106が形成されたカバー107が固定されており、このグリース供給溝106の前端部はスキンプレート100に形成されたグリース注入口108に連通し、後端部は前後一対のテールシール101A,101Bの間に形成されたグリース吐出口109に連通している。なお、グリース注入口108には図示しないホースを介してグリース供給機が接続されている。
【0004】
従って、掘削作業中は、グリース供給機によってグリースをグリース供給溝106を介してグリース吐出口109から吐出させる。すると、テールシール101A,101Bの間に位置するスキンプレート100とセグメントSとの空間部にはグリースが充満し、且つ、所定の圧力にて維持されることで、スキンプレート100の後部からの水や土砂の侵入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−238291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1で開示されたようなテールシール装置にあっては、テールシール101A,101Bを一旦スキンプレート100の内周面に固定したら、その高さ、言い換えれば既設セグメントSの外周面に圧接する力(シール圧)を調整することができないという不具合があった。
【0007】
即ち、複数のワイヤブラシ102の先端が摩耗した場合には前記シール圧が低下するし、掘削機の旋回時には旋回内周部のテールシール101A,101B部分と旋回外周部のテールシール101A,101B部分では前記シール圧が変化し、このような場合にはテールシール101A,101Bの高さ調整が必要であるが、それができないのである。また、テールシール装置を推進工法(押管工法)に適用した場合には、複数のワイヤブラシの先端がプレスリングの外周面を前後方向へ交互に摺動することになるので、ワイヤブラシの先端が反転を繰り返してヘたるなどしてシール性が低下するという不具合もあった。
【0008】
そこで、本発明は、テールシール(ワイヤブラシ)の高さ調整が可能で、シール性の向上が図れると共に汎用性を高められるテールシール装置及び該テールシール装置を備えたトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するための本発明に係るテールシール装置は、
筒状に配されるワイヤブラシの前後両端部を断面コ字形でリング状の押え板で担持し、
前記ワイヤブラシ後端側の押え板を筒状の掘削機本体の後部内周面に固定すると共に、
前記ワイヤブラシ前端側の押え板を駆動手段により前後方向へ移動可能に前記掘削機本体の後部内周面に支持させ、
前記ワイヤブラシは前記ワイヤブラシ前端側の押え板の前方移動による直線状態から当該押え板の後方移動により弧状に変形して筒状の掘進反力受け部材の外周面に圧接可能となる、
ことを特徴とする。
【0010】
また、
前記ワイヤブラシ前端側の押え板は断面L字型でリング状のケーシング内を前後方向へ移動し、
前記駆動手段は前記ケーシングの縦壁部に固設したナットに螺合してその先端がケーシング内に貫入し前記押え板の背面側に回動可能でかつ前後方向に係止されて連接する押しボルトである、
ことを特徴とする。
【0011】
また、
前記ケーシング内にリング状の押しプレートが前後方向へ移動可能に収装され、
前記押しプレートの後面に前記ワイヤブラシ前端側の押え板の背面が固設される一方、押しプレートの前面に前記押しボルトの先端に付設された小円板が回動可能でかつ前後方向に係止して収容されるリップ付き溝型断面で円形筐体の係止部材が固設される、
ことを特徴とする。
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係るトンネル掘削機は、
筒状の掘削機本体と、
前記掘削機本体を前進させる推進手段と、
前記掘削機本体の前部に回転自在に装着されたカッタヘッドと、
前記カッタヘッドを駆動回転するカッタヘッド駆動手段と、
前記掘削機本体の後部に配設された筒状の掘進反力受け部材と、
を備えたトンネル掘削機において、
前記掘削機本体の後部内周面に前述したテールシール装置を装備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るテールシール装置及び該テールシール装置を備えたトンネル掘削機によれば、駆動手段によりワイヤブラシ前端側の押え板を前後方向へ移動させることで、ワイヤブラシが弧状に変形し、その高さ調整が可能となって所要のシール圧が得られるので、シール性の向上が図れると共に汎用性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例を示すテールシール装置の断面図である。
【図2】テールシール装置の作用説明図である。
【図3】本テールシール装置を備えた泥土圧式シールド掘削機の概略構成図である。
【図4】従来のテールシール装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るテールシール装置及び該テールシール装置を備えたトンネル掘削機を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は本発明の一実施例を示すテールシール装置の断面図、図2はテールシール装置の作用説明図、図3は本テールシール装置を備えた泥土圧式シールド掘削機の概略構成図である。
【0017】
図3に示すように、泥土圧式シールド掘削機(トンネル掘削機)の筒状をなす掘削機本体1の隔壁(バルクヘッド)3には、カッタヘッド4が軸受等を介して回転自在に装着される。カッタヘッド4の前面にはその回転中心部から放射状をなして複数本のカッタスポーク5がその各々の間に面板(図示せず)を配して固定される。このカッタスポーク5及び面板には多数のカッタビット7が装着される。また、カッタヘッド4の回転中心部にはフィッシュテールカッタ8が装着される。さらに、カッタヘッド4の径方向へ油圧ジャッキ9により伸縮(出没)可能に、適当数のコピーカッタ10が装着される。そして、カッタヘッド4の後部にはリングギア11が固定される。
【0018】
一方、前記隔壁3には、カッタヘッド駆動手段としてのカッタ旋回モータ12が取り付けられ、このカッタ旋回モータ12の駆動ギア13が前記リングギア11に噛み合っている。従って、カッタ旋回モータ12を稼働して駆動ギア13を回転駆動すると、リングギア11を介してカッタヘッド4が回転される。また、隔壁3の中央部には、ロータリジョイント14が組み付けられ、このロータリジョイント14を介して前記コピーカッタ10の油圧ジャッキ9等に対し図示しない油圧源からの圧油の給,排が行われるようになっている。
【0019】
前記掘削機本体1の内部にはスクリューコンベヤ17が配設され、カッタヘッド4で掘削された土砂をトンネルの後方へ排出可能になっている。即ち、スクリューコンベヤ17の前端部(取出口)が隔壁3の下部を貫通して前記カッタヘッド4と隔壁3とで画成されたチャンバ室18に開口すると共に、後下部に設けた排出口(ジャッキ19駆動のゲート20で開閉される)がトンネル内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベア上に対向するのである。このスクリューコンベヤ17は、後上がりに傾斜して配置された円筒管17aの内部に、駆動モータ17bによって回転可能にスクリュー翼17cが装着されてなる。
【0020】
前記掘削機本体1の内周部には、覆工部材としてトンネルの内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメント(筒状の掘進反力受け部材)Sに対し伸縮し得る推進ジャッキ22が円周方向へ所定間隔離間して多数本配設される。また、掘削機本体1の後端部(スキンプレート)は、テールシール装置23を介して前記既設セグメントSの外周に嵌合している。また、掘削機本体1の後部には前記セグメントSを組み立てるエレクタ25と後方張出台24が組み付けられ、この後方張出台24上に、組み立てたセグメントSの真円保持を行うセグメントアジャスタ26が装備される。
【0021】
このように構成されるため、泥土圧式シールド掘削機による掘削にあたっては、先ず、全ての推進ジャッキ22が縮んだ初期位置(図3の状態)で、カッタ旋回モータ12を稼働させてカッタヘッド4を回転させる。
【0022】
次に、前記状態から全て又は任意の推進ジャッキ22を伸ばして掘削機本体1を1ストローク推進(前進)させる。この際、推進反力は既設セグメントSで受ける。そして、この推進により、カッタヘッド4に装着された多数のカッタビット7が前方の地盤を掘削する。掘削された土砂はチャンバ室18からスクリューコンベヤ17等によって外部に排出される。
【0023】
次に、カッタヘッド4の旋回を止めた状態で、推進ジャッキ22を部分的に順次縮めてエレクタ25及びセグメントアジャスタ26によりセグメントSを組み立てると共にその真円保持を行う。
【0024】
以降、前述した工程を繰り返して、所定長さのトンネルを掘削・形成していくが、これらの工程中、テールシール装置23はスキンプレートの内周面と既設セグメントSの外周面との隙間をシールして掘削機本体1の内部への地下水等の漏洩を防止する。
【0025】
そして、本実施例では、前述したテールシール装置23は、図1に示すように、筒状に配されるワイヤブラシ30の前後両端部を断面コ字形でリング状の押え板31A,31Bで担持し、ワイヤブラシ後端側の押え板31Bを筒状の掘削機本体(スキンプレート)1の後端部内周面に溶接等で固定すると共に、ワイヤブラシ前端側の押え板31Aを押しボルト32及びナット33(駆動手段)により前後(掘進)方向へ移動可能に前記スキンプレート1の後端部内周面に支持させてなる。
【0026】
そして、前記ワイヤブラシ30は、図2に示すように、ワイヤブラシ前端側の押え板31Aの前方移動(位置)による直線状態(図2の(a)参照)から当該押え板31Aの後方移動により弧状に変形して(撓んで)その頂部が既設セグメントSの外周面に圧接し(図2の(b)参照)、スキンプレート1の後端部内周面と既設セグメントSの外周面との隙間をシール可能になっている。
【0027】
図示例では、前記ワイヤブラシ前端側の押え板31Aは断面L字型でリング状のケーシング34内を前後方向へ移動し、このケーシング34の縦壁部34aに前記ナット33が固設されている。そして、前記押しボルト32はナット33に螺合してその先端がケーシング34内に貫入し、前記押え板31Aの背面側に回動可能でかつ前後方向に係止されて連接されている。
【0028】
更に、詳細には、前記ケーシング34内にリング状の押しプレート35が前後方向へ移動可能に収装され、この押しプレート35の後面に前記ワイヤブラシ前端側の押え板31Aの背面が固設される一方、押しプレート35の前面に前記押しボルト32の先端に付設された小円板36が回動可能でかつ前後方向に係止して収容されるリップ付き溝型断面で円形筐体の係止部材37が固設されている。尚、押しプレート35は周方向に複数分割されると共に、係止部材37は押しボルト32に対応した数で周方向に複数配設される。
【0029】
従って、本テールシール装置23にあっては、図2に示すように、押しボルト32を正逆方向に螺回転させることで、押しプレート35を介してワイヤブラシ前端側の押え板31Aを前後方向へ移動させることができる。
【0030】
これにより、ワイヤブラシ前端側の押え板31Aが最前方に位置させられると、図2の(a)のように、ワイヤブラシ30が直線状態(フラットな状態)となり、既設セグメントSの外周面との間に所定の隙間が形成される。従って、組付け時等においてテールシール装置23をこのような状態にすることで円滑な組付け作業が行える。
【0031】
上記状態からワイヤブラシ前端側の押え板31Aを後方へ移動させると、図2の(b)のように、ワイヤブラシ30が弧状に変形して(撓んで)その頂部が既設セグメントSの外周面に圧接し、スキンプレート1の後端部内周面と既設セグメントSの外周面との隙間をシールする。即ち、押しボルト32のねじ込み度合いによりワイヤブラシ30の高さが調整可能となって所要のシール圧が得られ、シール性の向上が図れると共に汎用性を高められるのである。
【0032】
従って、例えばワイヤブラシ30部分を低く調整する先端が摩耗した場合にはワイヤブラシ30の高さを高く調整すれば良く、また掘削機本体1の旋回時には旋回内周部のワイヤブラシ30部分を低く調整する一方、旋回外周部のワイヤブラシ30部分を高く調整することで、常に一定のシール圧を保持することができる。
【0033】
更には、本実施例のテールシール装置23を推進工法(押管工法)に適用した場合には、弧状に変形したワイヤブラシ30の頂部がプレスリング(筒状の掘進反力受け部材)の外周面を前後方向へ交互に摺動することになるので、従来のワイヤブラシの先端がプレスリングの外周面を前後方向へ交互に摺動することでワイヤブラシの先端が反転を繰り返してヘたるなどしてシール性が低下するというようなことは生じない。
【0034】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることはいうまでもない。例えば、駆動手段は押しボルト32及びナット33に代えて油圧ジャッキやその他のアクチュエータを用いても良いし、ケーシング34内にゴムシールを収装して異物の侵入を防止するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るトンネル掘削機は、泥土圧式シールド掘削機に限らず、泥水式シールド掘削機やトンネルボーリングマシーン(TBM)等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 掘削機本体
3 隔壁
4 カッタヘッド
5 カッタスポーク
7 カッタビット
8 フィッシュテールカッタ
9 油圧ジャッキ
10 コピーカッタ
11 リングギア
12 カッタ旋回モータ
13 駆動ギア
14 ロータリジョイント
17 スクリューコンベヤ
18 チャンバ室
19 ジャッキ
20 ゲート
22 推進ジャッキ
23 テールシール
24 後方張出台
25 エレクタ
26 セグメントアジャスタ
30 ワイヤブラシ
31A,31B 押え板
32 押しボルト
33 ナット
34 ケーシング
35 押しプレート
36 小円板
37 係止部材
S セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に配されるワイヤブラシの前後両端部を断面コ字形でリング状の押え板で担持し、
前記ワイヤブラシ後端側の押え板を筒状の掘削機本体の後部内周面に固定すると共に、
前記ワイヤブラシ前端側の押え板を駆動手段により前後方向へ移動可能に前記掘削機本体の後部内周面に支持させ、
前記ワイヤブラシは前記ワイヤブラシ前端側の押え板の前方移動による直線状態から当該押え板の後方移動により弧状に変形して筒状の掘進反力受け部材の外周面に圧接可能となる、
ことを特徴とするテールシール装置。
【請求項2】
前記ワイヤブラシ前端側の押え板は断面L字型でリング状のケーシング内を前後方向へ移動し、
前記駆動手段は前記ケーシングの縦壁部に固設したナットに螺合してその先端がケーシング内に貫入し前記押え板の背面側に回動可能でかつ前後方向に係止されて連接する押しボルトである、
ことを特徴とする請求項1に記載のテールシール装置。
【請求項3】
前記ケーシング内にリング状の押しプレートが前後方向へ移動可能に収装され、
前記押しプレートの後面に前記ワイヤブラシ前端側の押え板の背面が固設される一方、押しプレートの前面に前記押しボルトの先端に付設された小円板が回動可能でかつ前後方向に係止して収容されるリップ付き溝型断面で円形筐体の係止部材が固設される、
ことを特徴とする請求項2に記載のテールシール装置。
【請求項4】
筒状の掘削機本体と、
前記掘削機本体を前進させる推進手段と、
前記掘削機本体の前部に回転自在に装着されたカッタヘッドと、
前記カッタヘッドを駆動回転するカッタヘッド駆動手段と、
前記掘削機本体の後部に配設された筒状の掘進反力受け部材と、
を備えたトンネル掘削機において、
前記掘削機本体の後部内周面に前述したテールシール装置を装備した、
ことを特徴とするトンネル掘削機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−87531(P2013−87531A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230296(P2011−230296)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(309036221)三菱重工メカトロシステムズ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】