説明

テールピース台車及びその移動方法、並びに連続ベルトコンベアの延長方法

【課題】少ない人数で効率良く移動させることが可能なテールピース台車及びその移動方法、並びに連続ベルトコンベアの延長方法を提供する。
【解決手段】テールピース台車1は、連続ベルトコンベア2のテールピース部3を載置するための架台4と、第1の伸縮手段5と、架台4を相対移動可能に支持するための支持台6と、第2の伸縮手段7と、連続ベルトコンベア2を延長する方向へ架台4を移動させるための駆動装置8と、支持台6を搭載する自走可能な無限軌道車9と、テールピース部3の高さを測定するための測定器10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを延長することが可能な連続ベルトコンベアのテールピース部が載置されたテールピース台車及びその移動方法、並びに連続ベルトコンベアの延長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トンネル工事現場等において、地山の掘削により生ずるズリを排出する排出設備の一つとして、連続ベルトコンベアが用いられている。この連続ベルトコンベアは、トンネル内の切羽付近に設置され、ベルトを折り返すためのテールピース部と、ベルトを複数回折り返して収納するカセット部と、から構成されており、トンネルの掘削進度に合わせてテールピース部を進行方向へ移動させるとともに、カセット部からベルトを繰り出すことにより、ベルトを延長するものである。
【0003】
一般的なテールピース部を進行方向へ移動させる方法として、トンネル内にレールを敷設し、そのレール上を、テールピース部が載置されたテールピース台車を走行させる方法がある。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、無限軌道車を備えたテールピース台車が開示されており、トンネルの掘削進度に合わせて無限軌道車を駆動させてテールピース台車を進行方向へ移動させることによりテールピース部を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−176692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したテールピース台車の移動方法では、次のような問題点があった。
(1)テールピース台車を進行方向へ移動させる際は、連続ベルトコンベアのベルトに作用している張力よりも大きな力で移動させることとなるため、長大トンネルにおいて適用しようとすると、大型の走行装置を用いなければならず、設備投資費が高くなる。
(2)走行装置の大型化を避けようとすると、テールピース台車を移動する前に、ベルトの張力を解放し、テールピース台車を移動させた後に、ベルトに張力を導入して慣らし運転を行わなければならない。しかし、この作業には半日程度の時間を要するため、頻繁にテールピース台車を移動させることは困難である。
(3)張力の解放・導入及び慣らし運転等には、手間及び人手がかかるため、トンネルの掘削に付帯する他の作業と並行して行うことができない。したがって、テールピース台車を移動させる際は、トンネル内での他の作業をすべて停止しなければならない。
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、少ない人数で効率良く移動させることが可能なテールピース台車及びその移動方法、並びに連続ベルトコンベアの延長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、連続ベルトコンベアのテールピース部を載置したテールピース台車であって、
前記テールピース部を載置するための架台と、
前記架台に接続され、前記架台を昇降させることが可能な第1の伸縮手段と、
前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台を相対移動可能に支持するための支持台と、
前記支持台に接続され、前記支持台を昇降させることが可能な第2の伸縮手段と、
一端が前記架台に、他端が前記支持台に接続され、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台と前記支持台とを相対的に移動させるための駆動装置と、
前記支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1の伸縮手段を伸張させてその下端を地面に接地させることにより、架台を支持することができる。また、第2の伸縮手段を伸張させてその下端を地面に接地させることにより、無限軌道車とともに、支持台を支持することができる。
【0010】
そして、第1の伸縮手段をその下端が地面から離間するまで収縮し、第2の伸縮手段をその下端が地面に接地するまで伸張させて、無限軌道車とともに、第2の伸縮手段により支持台を支持した状態で、駆動装置を駆動させるとことにより、架台を支持台に対して連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。これにより、テールピース台車を連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。その際、連続ベルトコンベアのベルトに作用する張力よりも大きい力で駆動装置を駆動させるにより、ベルトに張力を作用させた状態のままでテールピース部を移動させて、ベルトを延長することができる。このとき、無限軌道車とともに、第2の伸縮手段を地面に接地させて支持台を支持しているので、ベルトの張力に抵抗してテールピース部を移動させることができる。さらに、第1の伸縮手段及び第2の伸縮手段を伸縮して、テールピース部の高さを調整することにより、ベルト延長作業後のテールピース部の高さを延長作業前と同じ高さに維持することができる。すなわち、ベルトに張力を作用させた稼働状況に近い状態で延長作業を行うことができる。
したがって、従来、連続ベルトコンベアの延長前後に行っていたベルトの張力の解放・導入が不要になり、慣らし運転の時間も短縮できる。
【0011】
また、第2の伸縮手段をその下端が地面から離間するまで収縮するとともに、第1の伸縮手段をその下端が地面に接地するまで伸張させて、第1の伸縮手段のみにより架台を支持した状態で、駆動装置を駆動させることにより、支持台及び無限軌道車を架台に対して連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。これにより、テールピース台車を連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。
【0012】
そして、第1の伸縮手段、第2の伸縮手段、駆動装置及び無限軌道車を用いることにより、少ない人数で連続ベルトコンベアの延長作業及びテールピース台車の移動作業を効率良く行うことができる。これにより、他の作業員は別の作業を行うことができるので、工期を短縮することができる。
【0013】
また、無限軌道車を走行させることにより、連続ベルトコンベアを延長する方向と直交する直交方向であるトンネルの幅方向へテールピース部を移動させることができる。また、無限軌道車の向きを変更することにより、テールピース部の向きを変更することができる。したがって、カーブを有するトンネルにも本発明のテールピース台車を適用することができる。
さらに、無限軌道車を、テールピース台車の進行方向への移動に用いるのではなく、幅方向への移動や向きの変更にのみ用いることにより、小型で安価なものを用いることができる。
【0014】
また、本発明において、前記駆動装置は、圧力計を有するジャッキを備えることとすれば、圧力の大きさを確認しながら一定の圧力で連続ベルトコンベアを延長することができる。
さらに、ジャッキを用いることにより、地面に凹凸があってもその影響を受けること無く、ベルトに張力を作用させた状態のままベルトを破損すること無く進行方向へ延長することができる。その際に、架台や支持台を所望の向きへ所定の距離だけ精度良く移動させることができる。
【0015】
また、本発明において、前記テールピース部の高さを測定するための測定器を更に備えることとしてもよい。
【0016】
また、本発明は、連続ベルトコンベアのテールピース部を載置するための架台と、前記架台に接続され、前記架台を昇降させることが可能な第1の伸縮手段と、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台を相対移動可能に支持するための支持台と、前記支持台に接続され、前記支持台を昇降させることが可能な第2の伸縮手段と、一端が前記架台に、他端が前記支持台に接続され、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台と前記支持台とを相対的に移動させるための駆動装置と、前記支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、を備えるテールピース台車の移動方法において、
前記第1の伸縮手段を地面から離間させた状態で、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する支持台支持工程と、
前記架台を前記支持台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアに作用している張力よりも大きい力で前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる架台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面から離間するまで前記第1の伸縮手段を伸張して、前記第1の手段にて前記架台を支持する架台支持工程と、
前記支持台及び前記無限軌道車を前記架台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる支持台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面に接するまで前記第1の伸縮手段を収縮して、前記第1の伸縮手段にて前記架台を支持し、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する台車支持工程と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、少ない人数で連続ベルトコンベアの延長作業及びテールピース台車の移動作業を効率良く行うことができる。これにより、他の作業員は別の作業を行うことができるので、工期を短縮することができる。
【0018】
また、第1の伸縮手段をその下端が地面から離間するまで収縮し、第2の伸縮手段をその下端が地面に接地するまで伸張させて、無限軌道車とともに、第2の伸縮手段により支持台を支持した状態で、駆動装置を駆動させるとことにより、架台を支持台に対して連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。これにより、テールピース台車を連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。その際、連続ベルトコンベアのベルトに作用する張力よりも大きい力で駆動装置を駆動させるにより、ベルトに張力を作用させた状態のままでテールピース部を移動させて、ベルトを延長することができる。このとき、無限軌道車とともに、第2の伸縮手段を地面に接地させて支持台を支持しているので、ベルトの張力に抵抗してテールピース部を移動させることができる。さらに、第1の伸縮手段及び第2の伸縮手段を伸縮して、テールピース部の高さを調整することにより、ベルト延長作業後のテールピース部の高さを延長作業前と同じ高さに維持することができる。
したがって、従来、連続ベルトコンベアの延長前後に行っていたベルトの張力の解放・導入が不要になり、慣らし運転の時間も短縮できる。
【0019】
また、第2の伸縮手段をその下端が地面から離間するまで収縮するとともに、第1の伸縮手段をその下端が地面に接地するまで伸張させて、第1の伸縮手段のみにより架台を支持した状態で、駆動装置を駆動させることにより、支持台及び無限軌道車を架台に対して連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。これにより、テールピース台車を連続ベルトコンベアの延長方向へ移動させることができる。
【0020】
また、本発明において、前記無限軌道車を走行させて、前記テールピース台車を前記連続ベルトコンベアを延長する方向と直交する直交方向へ移動させる、或いは、前記テールピース台車の向きを変更する方向修正工程を更に備えることとしてもよい。
【0021】
本発明によれば、無限軌道車を走行させることにより、連続ベルトコンベアを延長する方向と直交する直交方向であるトンネルの幅方向へテールピース部を移動させることができる。また、無限軌道車の向きを変更することにより、テールピース部の向きを変更することができる。
【0022】
また、本発明において、前記支持台支持工程、前記架台送り工程、前記架台支持工程、前記支持台送り工程、前記台車支持工程及び前記方向修正工程のうち、少なくともいずれかの工程を、トンネル掘削に付帯する他の作業と並行して当該トンネル坑内で行うこととすれば、工期を大幅に短縮することができる。
【0023】
また、本発明は、連続ベルトコンベアのテールピース部を載置するための架台と、前記架台に接続され、前記架台を昇降させることが可能な第1の伸縮手段と、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台を相対移動可能に支持するための支持台と、前記支持台に接続され、前記支持台を昇降させることが可能な第2の伸縮手段と、一端が前記架台に、他端が前記支持台に接続され、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台と前記支持台とを相対的に移動させるための駆動装置と、前記支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、を備えるテールピース台車を用いた連続ベルトコンベアの延長方法において、
前記第1の伸縮手段を地面から離間させた状態で、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する支持台支持工程と、
前記架台を前記支持台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアに作用している張力よりも大きい力で前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる架台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面から離間するまで前記第1の伸縮手段を伸張して、前記第1の手段にて前記架台を支持する架台支持工程と、
前記支持台及び前記無限軌道車を前記架台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる支持台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面に接するまで前記第1の伸縮手段を収縮して、前記第1の伸縮手段にて前記架台を支持し、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する台車支持工程と、
を備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明において、前記無限軌道車を走行させて、前記テールピース部を前記連続ベルトコンベアを延長する方向と直交する直交方向へ移動させる、或いは、前記テールピース部の向きを変更する方向修正工程を更に備えることとしてもよい。
【0025】
また、本発明において、前記支持台支持工程、前記架台送り工程、前記架台支持工程、前記支持台送り工程、前記台車支持工程及び前記方向修正工程のうち、少なくともいずれかの工程を、トンネル掘削に付帯する他の作業と並行して当該トンネル坑内で行うこととしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、少ない人数で効率良く移動させることが可能なテールピース台車及びその移動方法、並びに連続ベルトコンベアの延長方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るテールピース台車の側面図である。
【図2】連続ベルトコンベアを延長するとともに、テールピース台車を進行方向へ移動する工程を示す図である。
【図3】連続ベルトコンベアを延長するとともに、テールピース台車を進行方向へ移動する工程を示す図である。
【図4】連続ベルトコンベアを延長するとともに、テールピース台車を進行方向へ移動する工程を示す図である。
【図5】連続ベルトコンベアを延長するとともに、テールピース台車を進行方向へ移動する工程を示す図である。
【図6】連続ベルトコンベアを延長するとともに、テールピース台車を進行方向へ移動する工程を示す図である。
【図7】トンネルのカーブに沿ってテールピース台車を移動する工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係るテールピース台車1の側面図である。
図1に示すように、テールピース台車1は、連続ベルトコンベア2のテールピース部3を載置するための架台4と、架台4を支持するための第1の伸縮手段5と、架台4を相対移動可能に支持するための支持台6と、支持台6を支持するための第2の伸縮手段7と、連続ベルトコンベア2を延長する方向(以下、進行方向という)へ架台4を移動させるための駆動装置8と、支持台6を搭載する自走可能な無限軌道車9と、テールピース部3の高さを測定するための測定器10と、を備える。
【0030】
なお、連続ベルトコンベア2の周りには、多くの各種設備が設置されているが、本発明の説明上、不要であるため、図示を省略している。
【0031】
架台4は、所定の隙間4aを設けて上下に配置された2枚の鋼板4b、4cから構成されており、上側の鋼板4b上にテールピース部3が設置されている。また、隙間4aには、鋼板からなる支持台6が鋼板4b、4cに対して滑動可能に設けられている。
【0032】
第1の伸縮手段5は、油圧にて伸縮可能なアウトリガーであり、架台4に複数取り付けられている。第1の伸縮手段5を伸張させてその下端を地面11に接地させることにより、架台4を支持することができる。
【0033】
また、第2の伸縮手段7も、第1の伸縮手段5と同様に、アウトリガーであり、支持台6に複数取り付けられている。第2の伸縮手段7を伸張させてその下端を地面11に接地させることにより、無限軌道車9とともに、支持台6を支持することができる。
【0034】
また、第1の伸縮手段5及び第2の伸縮手段7は、それぞれを単独で伸縮させることができる。このため、地面11に凹凸が存在しても、各第1の伸縮手段5及び各第2の伸縮手段7の長さを調整することにより、架台4を水平にして、テールピース部3を予め設計等により決定された所定の高さ位置に正確に設置することができる。すなわち、連続ベルトコンベア2の高さを常に一定に保つことができる。
【0035】
駆動装置8は、隙間4a内に配置されており、その一端が架台4の進行方向前端部に、他端が支持台6の進行方向前端部に接続されている。駆動装置8として、本実施形態においては、例えば、圧力計を備えたジャッキを用いた。
【0036】
テールピース台車1を進行方向へ移動させる際は、まず、第2の伸縮手段7をその下端が地面11に接地するまで伸張するとともに、第1の伸縮手段5を収縮し、第1の伸縮手段5を地面11から離間させた状態で、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7により支持台6を支持する。そして、駆動装置8を伸張することにより、架台4を支持台6に対して進行方向へ移動させる。駆動装置8の伸張する力を連続ベルトコンベア2のベルトに作用する張力よりも大きくすることにより、ベルトに張力を作用させた状態のままでテールピース部3を移動させて、ベルトを延長することができる。このとき、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7の下端を地面11に接地させて支持台6を支持しているので、ベルトの張力に抵抗してテールピース部3を移動させることができる。
【0037】
次に、第2の伸縮手段7及び無限軌道車9が地面11から離間するまで第1の伸縮手段5を伸張し、第1の伸縮手段5のみにより架台4を支持した状態で、駆動装置8を収縮することにより、支持台6を架台4に対して進行方向へ移動させる。
【0038】
そして、架台4及び支持台6を交互に進行方向へ移動させることを繰り返してテールピース台車1を移動する。
【0039】
駆動装置8を伸張する際の圧力は、連続ベルトコンベア2のベルトの張力、架台4及び支持台6の重さ等に応じて決定される。ベルトの張力が大きくて、駆動装置8を伸張する際の圧力が過大となる場合には、駆動装置8を複数台用いてもよい。
【0040】
無限軌道車9として、本実施形態においては、油圧にて駆動可能なクローラーを用いた。無限軌道車9を用いることにより、トンネルのカーブ箇所を通過する際に、後述するように、テールピース台車1をトンネルの壁側に移動させたり、向きを変更したりすることができる。
【0041】
測定器10は、テールピース部3の側面に設けられており、予め設定された基準点からの高さを計測する。
【0042】
上述した構成のテールピース台車1は、第1伸縮手段及び第2伸縮手段にてそれぞれ架台4及び支持台6を支持するとともに、テールピース部3を所定の高さに設置した状態で、連続ベルトコンベア2を運転させて掘削土砂の搬出作業を行う。
【0043】
次に、上述した構成からなるテールピース台車1を用いた連続ベルトコンベア2の延長方法及びテールピース台車1の移動方法について、作業手順に従って説明する。
【0044】
図2〜図7は、連続ベルトコンベア2を延長するとともに、テールピース台車1を進行方向へ移動する工程を示す図である。
【0045】
まず、図2に示すように、第1の伸縮手段5の下端が地面11から離れるまで第1の伸縮手段5を収縮し、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7にて支持台6を支持する(支持台支持工程)。
【0046】
次に、図3に示すように、連続ベルトコンベア2のベルトに作用する張力よりも大きい力で駆動装置8を伸張させて、架台4を支持台6に対して進行方向へ、ベルトに張力を作用させた状態のまま移動させる(架台送り工程)。すなわち、ベルトの張力を緩めること無く、ベルトを回転させていた状態のまま架台4に載置されたテールピース部3を前進させて、連続ベルトコンベア2を延長する。このとき、駆動装置8の作動圧が予め設定された規定値を超えないように、圧力計で駆動装置8の圧力を確認しながら作業を行う。
【0047】
なお、連続ベルトコンベア2を延長した分のベルトは、坑口側に設置されたベルト収納用のカセット部(図示しない)から繰り出される。
【0048】
次に、図4に示すように、第2の伸縮手段7及び無限軌道車9が地面11から離間するまで第1の伸縮手段5を伸張して架台4を支持する(架台支持工程)。この際に、第2の伸縮手段7を収縮してもよい。
【0049】
次に、図5に示すように、駆動装置8を収縮させて、支持台6及び無限軌道車9を架台4に対して進行方向へ移動させる(支持台送り工程)。支持台6を進行させる距離は、上記架台送り工程にて架台4を進行させた距離と同じにする。
【0050】
次に、図6に示すように、無限軌道車9が地面11に接地するまで第1の伸縮手段5を収縮して、第1の伸縮手段5にて架台4を支持するとともに、第2の伸縮手段7をその下端が地面11に接地するまで伸張して、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7にて支持台6を支持する(台車支持工程)。
【0051】
このとき、第2の伸縮手段7の下端が当接する地面11に凹凸が存在する場合があるため、テールピース部3が所定の高さとなるように、各第1の伸縮手段5及び各第2の伸縮手段7の伸縮量を調整する。具体的には、テールピース部3の高さを測定器10にて測定し、テールピース部3が予め設定された所定の高さに存在しているかを確認する。基準点からテールピース部3までの高さを測定して、予め設定された所定の高さよりもテールピース部3が高い場合は、第1の伸縮手段5又は第2の伸縮手段7を収縮させて、テールピース部3の高さを所定の高さに調整する。一方、所定の高さよりもテールピース部3が低い場合は、第1の伸縮手段5又は第2の伸縮手段7を伸張させて、テールピース部3の高さを所定の高さに調整する。
【0052】
その後、ベルトを延長した部分に延長用部材を取り付けることで、連続ベルトコンベア2を運転可能な状態となる。
【0053】
なお、テールピース部3の向きを変更する必要がある場合、例えば、トンネルのカーブ箇所を通過する際、或いは直線状のトンネル内でも連続ベルトコンベア2の向きを調整する際等には、無限軌道車9を自走させて向きを変更する(方向修正工程)。
また、トンネルのカーブ箇所をテールピース台車1が通過する際に、そのカーブに沿うようにテールピース台車1をトンネルの幅方向、具体的には、壁に近づく方向或いは壁から離れる方向へ移動させる必要がある場合には、図7中に矢印で示すように、無限軌道車9を後進させながら向きを変えて所望の位置に移動する。
【0054】
なお、トンネルが直線状で、テールピース部3をトンネルの幅方向へ移動させたり、向きを変更したりする必要が無い場合は、方向修正工程を省略してもよい。
【0055】
テールピース部3を壁側へ移動させた後や向きを変更した後は、第1の伸縮手段5及び第2の伸縮手段7を伸張させて、第1の伸縮手段5にて架台4を支持し、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7にて支持台6を支持する(図6参照)ことにより、連続ベルトコンベア2を運転可能な状態となる。
【0056】
以上の工程により、連続ベルトコンベア2を延長するとともに、テールピース台車1を移動させることができる。
【0057】
上述した本実施形態におけるテールピース台車1によれば、第1の伸縮手段5を伸張させてその下端を地面11に接地させることにより、架台4を支持することができる。また、第2の伸縮手段7を伸張させてその下端を地面11に接地させることにより、無限軌道車9とともに、支持台6を支持することができる。
【0058】
そして、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7により支持台6を支持した状態で、駆動装置8を伸張させるとことにより、テールピース部3を進行方向へ移動させることができる。これにより、テールピース台車1を進行方向へ移動させることができる。その際、連続ベルトコンベア2のベルトに作用する張力よりも大きい力で駆動装置8を伸張させることにより、ベルトに張力を作用させた状態のままでテールピース部3を移動させて、ベルトを延長することができる。このとき、無限軌道車9とともに、第2の伸縮手段7を地面11に接地させて支持台6を支持しているので、ベルトの張力に抵抗してテールピース部3を移動させることができる。
【0059】
また、第2の伸縮手段7及び無限軌道車9が地面11から離間するまで第1の伸縮手段5を伸張し、第1の伸縮手段5のみにより架台4を支持した状態で、駆動装置8を収縮させることにより、支持台6及び無限軌道車9を進行方向へ移動させることができる。これにより、テールピース台車1を進行方向へ移動させることができる。
【0060】
また、無限軌道車9による移動ではなく、駆動装置8の伸張により連続ベルトコンベア2を延長するので、地面11に凹凸があってもその影響を受けること無く、ベルトに張力を作用させた状態のままベルトを破損すること無く進行方向へ延長することができる。その際に、架台4や支持台6を所望の向きへ所定の距離だけ精度良く移動させることができる。
【0061】
さらに、測定器10にてテールピース部3の高さを測定しながら、各第1の伸縮手段5及び各第2の伸縮手段7の長さを調整することにより、架台4を水平にして、連続ベルトコンベア2の延長後のテールピース部3を延長前と同じ高さにすることができる。
したがって、延長前に行うベルトの張力を解放する作業や、延長後に行うベルトの張力を導入する作業を行う必要が無い。また、慣らし運転の時間も短縮することができる。
【0062】
また、無限軌道車9を走行させることにより、テールピース部3を幅方向へ移動させたり、テールピース部3の向きを変更したりすることができる。これにより、カーブを有するトンネルにも本発明のテールピース台車1を適用することができる。
そして、無限軌道車9を、テールピース台車1の進行方向への移動に用いるのではなく、幅方向への移動や向きの変更にのみ用いることにより、小型で安価なものを用いることができる。
【0063】
さらに、第1の伸縮手段5、第2の伸縮手段7、駆動装置8及び無限軌道車9等を用いることにより、少ない人数で連続ベルトコンベア2の延長及びテールピース台車1の移動を効率良く行うことができる。これにより、他の作業員は別の作業を行うことができるので、工期を短縮することができる。
【0064】
また、少ない人数で効率良くテールピース台車1の移動を行うことができるので、頻繁にテールピース台車1を移動させることができる。これにより、切羽からテールピース台車1までの距離が短くなるので、ズリだし作業を効率的に行うことができる。
【0065】
なお、支持台支持工程、架台送り工程、架台支持工程、支持台送り工程、台車支持工程及び方向修正工程の少なくともいずれかを、トンネル掘削に付帯する他の作業と並行して行うこととすれば、工程を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 テールピース台車
2 連続ベルトコンベア
3 テールピース部
4 架台
4a 隙間
4b 鋼板
4c 鋼板
5 第1の伸縮手段
6 支持台
7 第2の伸縮手段
8 駆動装置
9 無限軌道車
10 測定器
11 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続ベルトコンベアのテールピース部を載置したテールピース台車であって、
前記テールピース部を載置するための架台と、
前記架台に接続され、前記架台を昇降させることが可能な第1の伸縮手段と、
前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台を相対移動可能に支持するための支持台と、
前記支持台に接続され、前記支持台を昇降させることが可能な第2の伸縮手段と、
一端が前記架台に、他端が前記支持台に接続され、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台と前記支持台とを相対的に移動させるための駆動装置と、
前記支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、
を備えることを特徴とするテールピース台車。
【請求項2】
前記駆動装置は、圧力計を有するジャッキを備えることを特徴とする請求項1に記載のテールピース台車。
【請求項3】
前記テールピース部の高さを測定するための測定器を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のテールピース台車。
【請求項4】
連続ベルトコンベアのテールピース部を載置するための架台と、前記架台に接続され、前記架台を昇降させることが可能な第1の伸縮手段と、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台を相対移動可能に支持するための支持台と、前記支持台に接続され、前記支持台を昇降させることが可能な第2の伸縮手段と、一端が前記架台に、他端が前記支持台に接続され、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台と前記支持台とを相対的に移動させるための駆動装置と、前記支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、を備えるテールピース台車の移動方法において、
前記第1の伸縮手段を地面から離間させた状態で、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する支持台支持工程と、
前記架台を前記支持台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアに作用している張力よりも大きい力で前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる架台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面から離間するまで前記第1の伸縮手段を伸張して、前記第1の手段にて前記架台を支持する架台支持工程と、
前記支持台及び前記無限軌道車を前記架台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる支持台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面に接するまで前記第1の伸縮手段を収縮して、前記第1の伸縮手段にて前記架台を支持し、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する台車支持工程と、
を備えることを特徴とするテールピース台車の移動方法。
【請求項5】
前記無限軌道車を走行させて、前記テールピース台車を前記連続ベルトコンベアを延長する方向と直交する直交方向へ移動させる、或いは、前記テールピース台車の向きを変更する方向修正工程を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のテールピース台車の移動方法。
【請求項6】
前記支持台支持工程、前記架台送り工程、前記架台支持工程、前記支持台送り工程、前記台車支持工程及び前記方向修正工程のうち、少なくともいずれかの工程を、トンネル掘削に付帯する他の作業と並行して当該トンネル坑内で行うことを特徴とする請求項4又は5に記載のテールピース台車の移動方法。
【請求項7】
連続ベルトコンベアのテールピース部を載置するための架台と、前記架台に接続され、前記架台を昇降させることが可能な第1の伸縮手段と、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台を相対移動可能に支持するための支持台と、前記支持台に接続され、前記支持台を昇降させることが可能な第2の伸縮手段と、一端が前記架台に、他端が前記支持台に接続され、前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ前記架台と前記支持台とを相対的に移動させるための駆動装置と、前記支持台を搭載する自走可能な無限軌道車と、を備えるテールピース台車を用いた連続ベルトコンベアの延長方法において、
前記第1の伸縮手段を地面から離間させた状態で、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する支持台支持工程と、
前記架台を前記支持台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアに作用している張力よりも大きい力で前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる架台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面から離間するまで前記第1の伸縮手段を伸張して、前記第1の手段にて前記架台を支持する架台支持工程と、
前記支持台及び前記無限軌道車を前記架台に対して、前記駆動装置にて前記連続ベルトコンベアを延長する方向へ移動させる支持台送り工程と、
前記第2の伸縮手段及び前記無限軌道車が地面に接するまで前記第1の伸縮手段を収縮して、前記第1の伸縮手段にて前記架台を支持し、前記無限軌道車とともに、前記第2の伸縮手段にて前記支持台を支持する台車支持工程と、
を備えることを特徴とする連続ベルトコンベアの延長方法。
【請求項8】
前記無限軌道車を走行させて、前記テールピース部を前記連続ベルトコンベアを延長する方向と直交する直交方向へ移動させる、或いは、前記テールピース部の向きを変更する方向修正工程を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の連続ベルトコンベアの延長方法。
【請求項9】
前記支持台支持工程、前記架台送り工程、前記架台支持工程、前記支持台送り工程、前記台車支持工程及び前記方向修正工程のうち、少なくともいずれかの工程を、トンネル掘削に付帯する他の作業と並行して当該トンネル坑内で行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の連続ベルトコンベアの延長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−74678(P2011−74678A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228015(P2009−228015)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(594145297)タグチ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】