説明

ディジタル・イメージング・システムのためのゲイン較正及び補正手法

【課題】ディジタル・イメージング・システムにおいて、試験モード時に得られる暗画像データのみを用いてチャネル・ゲイン・マップを較正し、また環境の影響に対処するようにシステムの非稼働時間にチャネル・ゲイン・マップを自動的に較正する。
【解決手段】ディジタル・イメージング・システムのためのゲイン補正及び較正手法を提供する。一実施形態では、方法が、X線システム(10)のディジタル検出器(22)を介して複数の暗画像を取得するステップ(180、184)を含み得る。複数の暗画像を取得するステップは、データ・チャネルに較正電圧(154)が印加されている(178、182)ディジタル検出器のアナログ試験モード時にディジタル検出器の複数のデータ・チャネル(68)からデータを取得することを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルX線イメージング・システムに関し、具体的には、かかるシステムによって取得される画像データにおけるゲインのばらつきを補正する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な設計の多数の放射線イメージング・システムが公知であり、現に利用されている。かかるシステムは一般的には、着目した被検体に向けて照射されるX線の発生に基づく。X線は被検体を横断してフィルム又はディジタル検出器に入射する。例えば医療診断の状況では、かかるシステムを用いて体内組織を視覚化して患者の病気を診断することができる。他の状況では、部品、手荷物、小荷物及び他の被検体を画像化して、内容物を検査したり他の目的に供したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7138636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかるX線システムが、被検体の介在構造による減弱、散乱又は吸収を受けたX線を検出するために固体検出器のようなディジタル・サーキットリを用いる場合が次第に多くなっている。かかるX線システムを介して取得される未処理の画像データは、多数のアーティファクト、又は補正しないとこれら未処理の画像データに基づいて再構成される画像に視覚的アーティファクトを生じ得る他の望ましくない要素を含み得ることが認められよう。次にこれらの視覚的アーティファクトは、画像のさらに微小な細部を識別する利用者又はコンピュータの能力に悪影響を与え得る。例えば、X線ビーム、ディジタル検出器のダイオード及び/又はデータ・チャネル等のようなX線システムの様々な観点の非一様性が、取得される未処理の画像データにゲインのばらつきを生じ得る。かかるゲインのばらつきについて画像データを補正する幾つかのアプローチが公知であるが、これらのアプローチはしばしば時間浪費的で資源集約的であり、またゲインのばらつきに影響を与え得る幾つかの要因に対処し切れない場合がある。従って、ディジタル・イメージング・システムのゲイン較正及び補正に対する改善されたアプローチの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、独自に請求される発明の範囲に沿った幾つかの観点について述べる。これらの観点は、本発明が取り得る幾つかの形態の簡単な概要を読者に提供するために提示されるに過ぎず、また本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本発明は、以下では説明されない多様な観点を含み得る。
【0006】
本発明の幾つかの実施形態は一般的には、ディジタルX線イメージング・システムを介して取得される画像データにおけるゲインのばらつきを補正し、またかかるシステムをゲイン補正のために較正する手法に関連し得る。幾つかの実施形態では、方法が、システムのディジタル検出器から付加的チャネル入力電圧によって暗画像を得るステップと、チャネル・ゲインを較正するためにこれらの暗画像を用い、また場合によってはこれらの暗画像のみを用いるステップとを含み得る。システムに記憶されているチャネル・ゲイン補正マップを用いて、取得される画像データを補正することができる。幾つかの実施形態では、画像データのゲイン補正の少なくとも一部がディジタル検出器において実行される。また、かかる実施形態では、付加的なゲイン補正がディジタル検出器の外部でも生じ得る。他の実施形態では、ゲイン補正の全てがディジタル検出器の外部で実行され得る。さらに他の実施形態では、チャネル・ゲイン補正マップが患者の検査と検査との間に実時間で更新されて、温度又は他の環境要因の変化に対処することができる。
【0007】
以上に記載した各特徴の様々な改良が本発明の様々な観点に関連して存在し得る。また、さらに他の特徴をこれらの様々な観点に組み込むこともできる。これらの改良及び付加的な特徴は、個別に又は任意の組み合わせで存在し得る。例えば、以下で図示される実施形態の1又は複数と関連して議論される様々な特徴を、本発明の上述の各観点の任意のものに対し単独で又は任意の組み合わせで組み込むことができる。繰り返しになるが、上に掲げた簡単な概要は、請求される主題に制限を加えることなく本発明の幾つかの観点及び状況を読者に十分に知らせることのみを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上述の特徴、観点及び利点並びに他の特徴、観点及び利点は、添付の図面に関して以下の詳細な説明を参照するとさらに十分に理解されよう。図面全体を通して類似の符号は類似の部材を表わす。
【図1】本発明の手法を利用し得るディジタルX線イメージング・システムの全体図である。
【図2】再構成用の画像データを生成する図1のシステムの検出器の作用サーキットリの線図である。
【図3】一実施形態による一次元ゲイン・マップ及び二次元ゲイン・マップを介したディジタル画像データのゲイン補正を施すステップを含む撮像工程を全体的に示す図である。
【図4】一実施形態による本書に記載される作用を具現化するように構成され得るプロセッサ方式装置又はシステムのブロック図である。
【図5】一実施形態によるディジタルX線検出器のアナログ・データのディジタル・データへの変換に用いられ得る2段サンプリング工程を全体的に表わすグラフである。
【図6】一実施形態によるディジタルX線検出器からのアナログ・データのディジタル・データへの変換の線図である。
【図7】一実施形態によるディジタルX線イメージング・システムを動作させる方法の流れ図である。
【図8】一実施形態によるディジタルX線システムを動作させるもう一つの方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここに開示される主題の1又は複数の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を掲げる試みにおいて、本明細書では実際の具現化形態の全ての特徴を記載する訳ではない。任意のかかる実際の具現化形態の開発時には、あらゆる工学プロジェクト又は設計プロジェクトと同様に、具現化形態毎に異なり得るシステム関連の制約及び業務関連の制約に対するコンプライアンスのような開発者の特定の目標を達成するために、多数の特定具現化形態向け決定を下さなければならないことを認められたい。また、かかる開発の試みは複雑であり時間も掛かるが、それでも本開示の利益を享受する当業者にとっては設計、製造及び製品化の通常業務的な作業であることを認められたい。
【0010】
本発明の様々な実施形態の要素を導入するときに、単数不定冠詞、定冠詞、「該」、「前記」等は、1又は複数の当該要素が存在することを意味するものとする。また「備えている」、「含んでいる」及び「有している」等の用語は内包的であるものとし、また所載の要素以外に付加的な要素が存在し得ることを意味するものとする。さらに、「例示的な」との用語が、ここに開示されている主題の各観点又は各実施形態の幾つかの例に関連して本書で用いられている場合があるが、これらの例は本質的に例を示すものであって、開示される一観点又は一実施形態に関する如何なる優先性も要件も示さないように本書で用いられていることを認められよう。さらに、「上部」、「下部」、「上」、「下」との用語、他の位置用語、及びこれらの用語の変形のあらゆる利用は便宜的に行なわれているのであって、所載の構成要素の如何なる特定の配向も要求しない。
【0011】
ここで図面を参照すると、図1は、離散型ピクセル画像データを取得して処理するイメージング・システム10を線図で示す。図示の実施形態では、システム10は、本発明の手法に従って原画像データを取得すること及び画像データを表示のために処理することの両方を行なうように設計されたディジタルX線システムである。図1に示す実施形態では、イメージング・システム10は、コリメータ14に隣接して配置されたX線放射線の線源12を含んでいる。コリメータ14は、患者18のような被検体が配置されている領域に放射線流16を流入させる。放射線の一部20が、被検体を透過し又は被検体の周囲を通過して、参照番号22に全体的に示すディジタルX線検出器に入射する。後にさらに詳述するように、検出器22は、検出器表面において受光されるX線フォトンを低エネルギのフォトンに変換し、続いて電気信号に変換して、これらの電気信号が取得され処理されて、被検体内部の諸特徴の画像を再構成する。
【0012】
線源12は、検査系列のための電力信号及び制御信号の両方を供給する電力供給/制御回路24によって制御される。さらに、検出器22は、当該検出器22において発生される信号の取得を命令する検出器制御器26に結合されている。検出器制御器26はまた、ダイナミック・レンジの初期調節及びディジタル画像データのインタリーブ処理等のような様々な信号処理作用及びフィルタ処理作用を実行することができる。電力供給/制御回路24及び検出器制御器26の両方がシステム制御器28からの信号に応答する。一般的には、システム制御器28は、検査プロトコルを実行して取得された画像データを処理するようにイメージング・システムの動作を命令する。ここでの状況では、システム制御器28はまた、典型的には汎用又は特定応用向けディジタル・コンピュータを基本構成要素とする信号処理サーキットリと、コンピュータによって実行されるプログラム及びルーチン、並びに構成パラメータ及び画像データを記憶する付設のメモリ・サーキットリと、インタフェイス回路等とを含んでいる。
【0013】
図1に示す実施形態では、システム制御器28は、参照番号30に示す表示器又はプリンタのような少なくとも一つの出力装置に結合されている。出力装置は、標準型又は特殊目的のコンピュータ・モニタ及び付設されている処理サーキットリを含み得る。1又は複数の操作者ワークステーション32をさらにシステムに結合して、システム・パラメータを出力する、検査を依頼する、及び画像を観察する等を行なうことができる。一般的には、システム内に供給される表示器、プリンタ、ワークステーション及び同様の装置は、データ取得構成要素に対してローカルに位置していてもよいし、これらの構成要素に対してリモートに位置していてもよく、例えば同じ施設内若しくは病院内の他の場所又は全く異なる場所等に位置して、インターネット及び仮想私設網等のような1又は複数の構成可変型網を介して画像取得システムに結合されていてもよい。
【0014】
図2はディジタル検出器22の作用構成要素の線図である。図2はまた、典型的には検出器制御器26の内部に構成される撮像検出器制御器すなわちIDC34を表わしている。IDC34は、CPU又はディジタル信号プロセッサ、及びメモリ回路を含んでおり、検知された信号の検出器からの取得を命令する。IDC34は双方向光ファイバ導体を介して検出器22の内部の検出器制御サーキットリ36に結合される。現在思量される幾つかの実施形態では、イーサネット(商標)通信プロトコル、並びに無線通信装置及びプロトコルのような他の通信システム及び通信技術を用いることもできる。これにより、IDC34は、動作時に検出器の内部の画像データについての指令信号を交換する。
【0015】
検出器制御サーキットリ36は、参照番号38に全体的に示す電源から直流電力を受け取る。検出器制御サーキットリ36は、システムの動作のデータ取得段階時に、画像データを取得するのに用いられる縦列及び横列の電子回路のためのタイミング命令及び制御命令を発生するように構成されている。従って、サーキットリ36は電力信号及び制御信号を参照/調整器(レギュレータ)サーキットリ40に送信し、サーキットリ40からディジタル画像ピクセル・データを受け取る。
【0016】
本実施形態では、検出器22は、検査時に検出器表面において受光されるX線フォトンを低エネルギ(光)フォトンに変換するシンチレータから成っている。次いで、光検出器のアレイがこれらの光フォトンを、検出器表面の個別のピクセル領域に衝突するフォトンの数又は放射線の強度を表わす電気信号に変換する。現在思量される幾つかの実施形態では、X線フォトンを電気信号に直接変換することもできる。読み出し電子回路が、得られるアナログ信号をディジタル値に変換し、これらのディジタル値を処理し記憶して、画像の再構成に続いて表示器30又はワークステーション32等に表示することが可能となる。現形態では、光検出器のアレイはアモルファス・シリコンで形成されている。アレイの素子は横列及び縦列を成して構成されており、各々の素子がフォトダイオード及び薄膜トランジスタから成っている。各々のダイオードのカソードはトランジスタのソースに接続され、全てのダイオードのアノードが負バイアス電圧に接続されている。各々の横列のトランジスタのゲートは共に接続され、横列電極は以下で説明するように走査用電子回路に接続されている。1列の縦列のトランジスタのドレインは共に接続され、各々の縦列の電極は読み出し電子回路の個々のデータ・チャネルに接続されている。
【0017】
図2に示す特定の実施形態では、例として述べると、横列バス42が検出器の様々な横列からの読み出しをイネーブルにし、さらに望まれる場合には横列をディスエーブルにして選択された横列に電荷補償電圧を印加する複数の導体を含んでいる。縦列バス44が、横列が相次いでイネーブルにされる間に各縦列からの読み出しを命令する付加的な導体を含んでいる。横列バス42は一連の横列ドライバに46に結合されて、横列ドライバ46の各々が検出器の一連の横列のイネーブル化を命令する。同様に、読み出し電子回路48が、検出器の全ての縦列の読み出しを命令する縦列バス44に結合される。
【0018】
図示の実施形態では、横列ドライバ46及び読み出し電子回路48は検出器パネル50に結合され、検出器パネル50は複数の区画52に細分され得る。各々の区画52が横列ドライバ46の一つに結合され、多数の横列を含んでいる。同様に、各々の縦列ドライバ48が一連の縦列に結合される。これにより、前述のフォトダイオード及び薄膜トランジスタ構成は、横列56及び縦列58を成して構成された一連のピクセル又は離散型画素54を画定する。各横列及び各縦列は、高さ62及び幅64を有する画像マトリクス60を画定する。
【0019】
やはり図2に示すように、各々のピクセル54は、縦列電極(又はデータ線)68が横列電極(又は走査線)70に交差する横列と縦列との交点に全体的に画定される。前述のように、薄膜トランジスタ72が各々のピクセルについて各々の交点位置に設けられており、フォトダイオード74も同様に設けられている。各々の横列が横列ドライバ46によってイネーブルにされるのに伴って各々のフォトダイオード74からの信号が読み出し電子回路48を介して取り出され、後続の処理及び画像再構成のためにディジタル信号に変換され得る。このように、アレイ内のピクセルの1列の横列全体が、当該横列のピクセルの全てのトランジスタのゲートに取り付けられた走査線70が起動されるときに同時に制御される。結果として、この特定の横列のピクセルの各々がスイッチを介してデータ線68に接続されて、このデータ線が読み出し電子回路によって用いられてフォトダイオード74に電荷を復元し、照射から生じた電荷の消耗量を測定する。
【0020】
尚、幾つかのシステムでは、電荷が1列の横列の全てのピクセルに対して関連する専用読み出しチャネルの各々によって同時に復元されているときに読み出し電子回路は前列からの測定値をアナログ電圧からディジタル値へ変換していることを特記しておく。さらに、読み出し電子回路は各横列からのディジタル値を、診断画像をモニタに表示する又はフィルムに書き込むのに先立って何らかの処理を実行する取得サブシステムに対して予め伝達していてもよい。少なくとも幾つかの実施形態では、ディジタル検出器22は、ディジタル検出器自体の内部の検出器パネル50を介して取得されるデータの何らかのローカル処理を実行するように構成されているデータ処理サーキットリ66を含み得る。例えば、以下でさらに詳細に議論するように、ディジタル検出器22は、システム制御器28のようなホスト処理システムとは独立に、取得されたデータにチャネル・ゲイン補正を施すように構成されていてよい。加えて、一実施形態では、ディジタル検出器22は、システム10の他の構成要素にデータを出力する前に、取得されたデータにかかる補正を施すことができる。
【0021】
各横列をイネーブルにするのに用いられるサーキットリを、ここでの状況では横列イネーブル・サーキットリと呼ぶこともできるし、かかるイネーブル化(横列駆動)のための電界効果トランジスタ(FET)の利用に基づいて電界効果トランジスタ・サーキットリと呼ぶこともできる。上述の横列イネーブル・サーキットリに付設されるFETは、横列をイネーブルにするためには「入」状態又は導電状態に置かれ、横列が読み出しのためにイネーブルにされないときには「切」状態にされ又は非導電状態に置かれる。かかる言語に拘わらず、横列ドライバ及び縦列読み出し電子回路に用いられる特定の回路構成要素は様々であってよく、本発明はFET又は如何なる特定の回路構成要素の利用にも限定されないことを特記しておく。
【0022】
図1のシステム10の撮像ワークフローの一例が、一実施形態による図3の線図80として全体的に示されている。ここでのワークフローは、画像データが患者に関して取得される医用状況に関して一般的に説明されるが、ここに開示される手法は非医用状況においても利用され得ることを認められよう。一実施形態では、ブロック82に全体的に示すように、患者18は、患者の解剖学的構造の撮像を容易にするように放射線源12及びディジタル検出器22に関して配置され得る。
【0023】
一旦、患者が配置されると、ブロック84によって全体的に示すように検出器22が曝射されて、患者の解剖学的構造を表わす画像データ86を生成する。未処理の画像データ86は多数のアーティファクト又は他の望ましくない要素を含む場合があり、一般的には様々なフィルタ処理、補正及び/又は他の処理手法を施して、例えばアーティファクトを低減して画像データの品質を高め得ることが特記される。かかる手法の一つとして、ブロック88に全体的に示すようなゲイン補正手法がある。
【0024】
認められるように、ディジタル検出器22のフォトダイオード74、及びディジタル検出器のデータ線68に対応するデータ・チャネルの各々が、他のフォトダイオード及びデータ・チャネルに対してゲインのばらつきを呈する場合がある。この非一様性は、検出器パネル50から取得される未処理の画像データに望ましくないアーティファクトを生じ得る。加えて、放射線源12からのX線が非一様な態様で検出器パネル50に入射する場合があり、またディジタル検出器のシンチレータも非一様性を含む場合があり、これにより未処理の画像データにさらなるアーティファクトが生じ得る。
【0025】
しかしながら、一実施形態では、システム10はステップ88において1又は複数のゲイン補正マップを用いて未処理の画像データ86のかかるゲインのばらつきを補正することができる。かかるゲイン・マップは、例えば1又は複数のチャネル・ゲイン・マップ90及び/又はダイオード・ゲイン・マップ92を含み得る。一般的には、ダイオード・ゲイン・マップ92は因子の二次元行列を含んでおり、この行列によってピクセルの出力信号を修正することができる。例えば、2048ピクセル×2048ピクセルのディジタル検出器では、ダイオード・ゲイン・マップは、ピクセルからの信号を補正するための対応する2048×2048の係数行列を含んで、ピクセルの非一様性を補償することができる。ダイオード・ゲイン・マップ92は、例えばダイオード非一様性、X線非一様性、又はシンチレータ非一様性について別個のゲイン補正マップを含み得る。さらに、幾つかの実施形態では、ダイオード・ゲイン・マップ92は1又は複数の複合ゲイン補正マップを含んでいてよく、複合ゲイン補正マップでは補正係数が上述のピクセル非一様性の2以上に対処する。また、ダイオード、シンチレータ及びX線ビームの非一様性の範囲は、異なるX線フィルタ、及び線源12(例えばX線管)に印加される異なるピーク・キロボルト(kVp)レベルに関連して、異なるX線スペクトルに関して区々となり得ることが特記される。結果的に、一実施形態では、ダイオード・ゲイン・マップ92は、異なるフィルタ及び/又は異なるkVpレベルについて様々なゲイン補正マップを含み得る。例えば、特定のシステム10を、多数の別個のkVpレベル、又は一定範囲のkVpレベル(例えば40kVp〜120kVp)をX線管に印加するように構成することができる。かかる実施形態では、ダイオード・ゲイン・マップ92は、別個のkVpレベルの各々又は一定範囲内の代表的なkVpレベル(例えば一実施形態では60kVp、80kVp及び120kVp)について1又は複数のゲイン補正マップを含み得る。
【0026】
反対に、検出器22の各データ・チャネルは各データ線68に対応しており、各々のデータ線がピクセル54の縦列1列ずつに結合されているため、幾つかの実施形態では、チャネル・ゲイン・マップ90は、それぞれのデータ・チャネルからの信号に各々適用されてデータ・チャネルのゲインの非一様性を補正し得る因子の一次元行列(例えば1×2048行列)を含み得る。データ・チャネルの非一様性は、特定応用向けに選択される感度レベルに比例して変動し得る。例えば、一実施形態では、システム10をラジオグラフィ画像取得及びフルオロスコピィ画像取得の両方に利用することができる。ラジオグラフィ応用では、システム10の感度レベルは、カウント当たり電子2200個(この場合にはシステムは2200個の検出電子を1ディジタル単位に等しいものとする)又はカウント当たり電子4400個のように1又は複数のレベルに設定され得る。しかしながら、フルオロスコピィ応用では、感度レベルはカウント当たり電子550個又はカウント当たり電子1100個に留まる場合がある。かかる実施形態では、チャネル・ゲイン・マップ90は四つのチャネル・ゲイン補正マップ、すなわちシステムの各々の感度レベルに一つずつのチャネル・ゲイン補正マップを含み得る。チャネル・ゲイン・マップ90及びダイオード・ゲイン・マップ92は、少なくとも幾つかの実施形態においては互いに別個であるが、これらのマップは他の実施形態では結合され得る(例えば、ダイオード・マップの各々の縦列を対応するチャネル・マップに乗算することにより二次元結合ゲイン・マップを形成する)ことが特記される。
【0027】
未処理の画像データ86は、上述の手法及びその他任意の所望の手法を介して補正されて、補正済み画像データ94を生成することができる。この補正済み画像データ94は、電子システムのメモリ装置のようなデータベース96に記憶され得る。ステップ98では、補正済み画像データ94を用いて患者の解剖学的構造の1又は複数の画像を再構成することができる。再構成された画像は、記憶のためにデータベース96に出力することができ、また表示器又はプリンタ等を介して医療従事者又は他の利用者に向けて出力することができる。
【0028】
本書に記載される検出器22の画像データのゲイン補正及び較正を含む様々な作用は、プロセッサ方式システム110によって、又はシステム110と共に実行することができ、このことが一実施形態に従って図4に全体的に示されている。例えば、本書で議論される様々な制御器及びサーキットリが、ここに図示されるもののようなプロセッサ方式システムを含んでいてもよいし、かかるシステムにおいて部分的に又は全体的に実装されていてもよい。例示的なプロセッサ方式システム110は、本書に記載される作用の全て又は一部を具現化するソフトウェアを含む多様なソフトウェアを実行するように構成されたパーソナル・コンピュータのような汎用コンピュータであってよい。代替的には、他の実施形態では、プロセッサ方式システム110は、システムの一部として提供される専門型ソフトウェア及び/又はハードウェアを基本としてここに記載される作用の全て又は一部を具現化するように構成された分散型計算機システム、又は特定応用向けコンピュータ若しくはワークステーションを特に含み得る。さらに、プロセッサ方式システム110は、ここに開示される作用の具現化形態を容易にするために、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサの何れを含んでいてもよい。
【0029】
一実施形態では、例示的なプロセッサ方式システム110は、システム110の様々なルーチン及び処理作用を実行する中央処理ユニット(CPU)のようなマイクロコントローラ又はマイクロプロセッサ112を含んでいる。例えば、マイクロプロセッサ112は、様々なオペレーティング・システム命令及び幾つかの工程を実行するように構成されているソフトウェア・ルーチンを実行することができ、これらの命令及びルーチンは、メモリ114(例えばパーソナル・コンピュータのランダム・アクセス・メモリ(RAM))のような1若しくは複数のコンピュータ読み取り可能な媒体(少なくともソフトウェア・ルーチンを集合的に記憶しているもの)又は1若しくは複数の大容量記憶装置116(例えば内蔵若しくは外付けのハード・ドライブ、固体記憶装置、CD−ROM、DVD、又は他の記憶装置)を含めた製品に記憶されており、又はかかる製品によって提供される。加えて、マイクロプロセッサ112は、コンピュータ方式の具現化形態として本書に記載されているこの主題の一部として提供されるデータのように、様々なルーチン又はソフトウェア・プログラムへの入力として供給されるデータを処理する。
【0030】
かかるデータは、メモリ114又は大容量記憶装置116に記憶されてもよいし、メモリ114又は大容量記憶装置116によって供給されてもよい。代替的には、かかるデータは、1又は複数の入力装置118を介してマイクロプロセッサ112に供給されてもよい。入力装置118は、キーボード及びマウス等のような手動の入力装置を含み得る。加えて、入力装置118は、有線若しくは無線イーサネット・カード、無線網アダプタ、又は構内網若しくはインターネットのような任意の適当な通信網を介して他の装置との通信を容易にするように構成されている様々なポート若しくは装置の任意のもののようなネットワーク装置を含んでいてよい。かかるネットワーク装置を通じて、システム110は、当該システム110に近接しているか遠隔であるかを問わず、網に組み入れられた他の電子回路システムとデータを交換し、通信することができる。
【0031】
1又は複数の記憶されたルーチンに従ってデータを処理することにより得られる結果のようなマイクロプロセッサ112によって生成される結果は、表示器120及び/又はプリンタ122のような1又は複数の出力装置を介して操作者に提供され得る。表示された又は印刷された出力に基づいて、操作者は、入力装置118等を介して付加的な処理若しくは代替的な処理を依頼し、又は追加のデータ若しくは代替的なデータを提供することができる。プロセッサ方式システム110の様々な構成要素同士の間の通信は典型的には、システム110の各構成要素を電気的に接続するチップセット及び1又は複数のバス若しくは相互接続を介して達成され得る。一実施形態では、例示的なプロセッサ方式システム110は、画像データを受け取り、1又は複数のゲイン補正マップを介して画像データにゲイン補正を施し、補正済み画像データを出力するように特に構成されていてよい。
【0032】
上で一般的に記載したように、ディジタル検出器22のピクセル54は、検出器パネル50に入射するX線に応答してアナログ電圧信号を発生する。次いで、これらのアナログ信号は検出器22によってディジタル値に変換された後にシステム制御器28のようなシステム10の他の構成要素に出力され得る。一実施形態では、単一段でアナログ信号をサンプリングして信号レベルを決定するのではなく、アナログ信号を多段を通じてサンプリングして、アナログからディジタルへの変換に要する時間量を減少させる。
【0033】
2段のサンプリング段を用いた変換工程の一例が、図5を参照するとさらに十分に理解されよう。具体的には、描かれているグラフ130は、アナログ電圧レベル(縦軸134に沿う)に対応する変換レベル・カウンタ又は変換レベル番号(横軸132に沿う)を全体的に表わす曲線136を含んでいる。一実施形態では、アナログ信号及び対応するカウンタ・レベルの可能な範囲を多数の区画138に分割することができ、アナログ信号は、当該信号が属する特定の区画138(電圧及びカウンタ・レベルの両方の部分領域に対応する)を決定するために粗いサンプリングを受けることができる。続いて、アナログ信号は、当該区画138の内部で細かいサンプリングを受けて信号の大きさ及び対応するディジタル値を決定することができる。例えば、粗いサンプリングは、信号が特定の区画140の内部にあり、この区画が電圧範囲142及びカウンタ・レベル範囲144に対応することを決定することができる。次いで、この信号を区画140の内部でサンプリングし(例えば電圧範囲142内の様々な離散型電圧レベルと同等)、信号の電圧及び関連するカウンタ・レベル(ディジタル値)を決定することができる。一実施形態では、様々な区画138についての部分領域は、量子化雑音のX線量子雑音に対する所与の比及び信号ダイナミック・レンジについて実際の変換レベル数を最小にするように選択され得る。
【0034】
一実施形態では、細かいサンプリングのために、区画138(又は傾き)をプログラム可能なゲインによって所要の分解能に一致するように調節することができる。例えば、各々の区画138(又は傾き)は、プログラム可能なゲインG′{k}によって調節される勾配を有し得る。しかしながら、このプログラム可能なゲインは、チャネル間で区々となり得る。結果として、サンプリングされて復号されたデータは、傾きに適用されるゲインのばらつきに影響され得る。加えて、区画138はここでは説明のために線分として描かれているが、区画138(及び区画138が表わす電圧とディジタル信号との間の対応)は他の実施形態では非線形であってよいことが特記される。
【0035】
一実施形態によるアナログからディジタルへの変換工程の較正をさらに表わすブロック図150を図6に示す。一実施形態では、ディジタル検出器22のデータ・チャネルは、アナログ試験モードを含んでいる。このモードでは、各々のデータ線68が薄膜トランジスタを介してダイオードに接続され、データ線68からの電荷が図のブロック152に全体的に表わされている。ディジタル検出器22のアナログ電圧源は、参照番号154に全体的に示す較正電圧(Vcal)を提供するように構成される。一実施形態では、検出器データ・チャネルの入力は、参照番号156に全体的に示すように関連するデータ線68からの電荷と較正電圧との和である。この信号は、参照番号158に全体的に示すように感度ゲインG{s}(j)によって増幅されることができ、ここでs=0,1,…,S−1であってSはシステム10の感度レベルの数であり、j=0,1,…,J−1であってJはシステム10のチャネルの数である。
【0036】
参照番号160及び162によってそれぞれ全体的に表わすように、信号はオフセット減算と等価の粗いサンプリングを受けることができ、ここでオフセットはO{k}(j)であり、k=0,1,…,K−1であって、Kは上で述べた異なる区画136の数である。幾つかの実施形態では、Kは0又は1に等しくてよいが、他の実施形態では、上で一般的に述べたように、Kは、さらに高速のアナログからディジタルへの変換を可能にするようにさらに大きい数(例えば16)に等しくてもよい。信号は続いて、参照番号164に全体的に示すように、プログラム可能なチャネル・ゲインG{k}(j)によってスケーリングされることができ、ここでG{k}(j)=1/G′{k}(j)である。さらに、参照番号166に全体的に示すように、次いでスケーリング後の信号は区画136の内部で細かいサンプリングを受けて、信号を表わすディジタル値168を決定することができる。
【0037】
さらに他の例として、本発明の手法による較正工程を以下に掲げる。この工程では、c(i,j)は画像マトリクス60の横列(行)i及び縦列(列)jに位置するフォトダイオード74の電荷を表わし、較正電圧Vcalがデータ線68に印加される。横列iから読み出されるときには、c(i,j)はVcalと加算され、感度ゲインG{s}(j)によってスケーリングされ、O{k}(j)だけオフセットされて、チャネル・プログラマブル・ゲインG{k}(j)によって増幅され得る。この場合には、検出器の縦列jのデータ・チャネルの出力信号SVcal(i,j,s,k)を
Vcal(i,j,s,k)
=G{k}(j)×{G{s}(j)×[c(i,j)+Vcal]−O{k}(j)} (1)
と表わすことができ、式中、i=0,1,…,I−1、j=0,1,…,J−1、s=0,1,…,S−1、k=0,1,…,K−1である。
【0038】
各々の感度レベルs及び区画kについて、Vcal=x及びVcal=yに対応する二つの暗画像(すなわち検出器22が線源12からの放射線に曝射されていないときに取得される画像)を取得することができ、
(i,j,s,k)
=G{k}(j)×{G{s}(j)×[c(i,j)+x]−O{k}(j)} (2)
及び
(i,j,s,k)
=G{k}(j)×{G{s}(j)×[c(i,j)+y]−O{k}(j)} (3)
となる。
【0039】
式(2)から式(3)を減算すると、
(i,j,s,k)−S(i,j,s,k)
=G{k}(j)×G{s}(j)×[x−y] (4)
となり、ここから、
【0040】
【数1】

によってチャネル・ゲイン及びチャネル・オフセットが与えられる。G{s}(j)及びG{k}(j)は、名目値をG{0}(j)=1として異なるs又はkにおいてG{s,k}(j)を推定することにより分離され得る。オフセットはさらに、
{k}(j)
=G{s}(j)×[c(i,j)+y]−S(i,j,s,k)/G{k}(j)
(6)
によって推定され得る。
【0041】
また、全体画像を用いることにより、さらに堅牢なゲイン及びオフセットの推定を決定することができる。
【0042】
【数2】

及び
【0043】
【数3】

上述のアプローチを用いて、各応用において選択される全てのS感度レベルについてチャネル・ゲインを得て、傾きの勾配に用いられるゲインを区画分割することができる。幾つかの実施形態では、チャネル・ゲイン較正は様々な入力Vcalレベルを有する暗画像しか必要としないので、この較正は、患者の検査と検査との間にバックグラウンドで又は検出器品質管理手順時にシステム10によって実行されて、較正時間を節減することができる。
【0044】
{s}(j)及びG{k}(j)は独立であり、(S+2K)組の暗画像を用いるだけで個々のゲインを決定し得ることが特記される。また、感度及びプログラム可能なチャネル・ゲインを結合することができ、(S×2×K)個のデータ集合を較正に用いることができる。しかしながら、各々の区画kの二つの交点の周りでのVcalの慎重な選択によって、システムが(K+1)個の暗画像を用いてゲインG{k}(j)及びオフセットO{k}(j)を推定するのを可能にすることができる。かかる実施形態では、チャネル・ゲイン較正に(S+K+1)個の暗画像を用いるだけで済む。
【0045】
一実施形態では、チャネル・ゲイン補正をディジタル検出器22自体において施すことができるので、ホスト(例えばシステム制御器28)において受領される全ての画像データがチャネル・ゲインについて既に補正されたものとなる。
【0046】
【数4】

がプログラム可能なゲインkでのJ個のチャネル・ゲインの平均であるとすると、
【0047】
【数5】

及び
【0048】
【数6】

となる。
【0049】
すると、区画kに位置する値を有する全ての画像ピクセル{p(i,j)}を次式のように補正することができる。
【0050】
p(i,j)=
(s,k)(j)×[p(i,j)+O{k}(j)/G(k)(j)] (11)
i=0,1,…,I−1、j=0,1,…,J−1
式中、G(s,k)(j)は較正からの予め記憶されている値であり、k、G{k}(j)及びO{k}(j)は、チャネル・ゲイン及びオフセットによって補償される前のパネル読み出し信号をサンプリングすることにより決定される。次いで、チャネル・ゲイン補正済み画像ピクセルを検出器22からシステム制御器26等に出力することができる。
【0051】
一実施形態では、チャネル・ゲイン・マップ90はシステム10が非稼働のとき又は検出器品質管理手順にある間に自動的に較正されてよく、所与の画像取得手順について選択されるシステム感度レベルに基づいて、取得画像データを補正するのに適当なチャネル・ゲイン・マップ90を選択することができる。一実施形態では、ホストによって受領される全画像又は全画像データが、検出器22において式(11)によって補正されたチャネル・ゲインを有するものとなる。次いで、ホスト例えばシステム制御器26は、限定しないがフォトダイオード74の非一様性、シンチレータの非一様性、並びに異なるkVpレベル及びビーム・フィルタでのX線ビームの非一様性についてのゲイン補正を含めた付加的な補正を施す。
【0052】
しかしながら、もう一つの実施形態では、チャネル・ゲイン補正は、システム制御器26のようにディジタル検出器22の外部で実行されてもよい。かかる実施形態では、一旦チャネル・ゲイン及びチャネル・オフセットが得られたら、ダイオードのゲインDkVp(i,j)を検出器感度レベルの1又は複数において較正することができる。GkVp{s,k}(i,j)が、感度レベルs、ゲイン区画k、及び特定のkVpレベルにおいて得られる全体的な検出器ゲインを表わすとすると、
kVp{s,k}(i,j)=G{s,k}(j)×DkVp(i,j) (12)
となる。さらに、特定のkVpレベルでのダイオード・ゲイン・マップは、
【0053】
【数7】

によって表わすことができる。
【0054】
かかる実施形態では、システムは上述の非一様性についてのゲイン補正を、感度レベル及び区画の各々についてのチャネル・ゲイン、並びにkVpレベルの各々についてのダイオード・ゲインを記憶するだけで提供することができる。結果的に、ゲイン補正マップを記憶するのに必要とされるメモリ空間を著しく小さくすることができる。例えば、ディジタル検出器22を三つの異なるkVpレベル、四つの感度レベル、並びに五つのプログラム可能なチャネル・ゲイン・レベル及びチャネル・オフセット・レベルについて較正する場合には、新たなゲインのためのメモリ空間は、((3×4×5×I×J)+(4×5×J))語ではなく((3×I×J)+(2×4×5×J))語によって表わすことができる。しかしながら、ゼロチャネル・オフセットとして1個のみのプログラム可能なチャネル・ゲインを有する実施形態では、新たなゲインのメモリ空間は、(3×4×I×J)語ではなく(3×I×J)+(4×J)語に留まり、約四分の三のメモリ空間の節減となる。加えて、ゲイン・マップの数が四分の三に減少すると、本発明の手法によるゲイン較正時間も同様に約四分の三に短縮され得る。
【0055】
以上の議論は、画像マトリクス60の各々の縦列が同一のデータ・チャネルから読み出されると仮定していることが特記される。しかしながら、他の実施形態では、検出器22は分割型パネルを含んでいてよく、この場合には、画像の上半部及び下半部が二つの異なるデータ・モジュールから読み出される(すなわち各々の縦列の上半部が一つのチャネルから読み出され、下半部が異なるチャネルから読み出される)。かかる実施形態では、本開示に鑑みて当業者には明らかとなるような単純な改変を施しつつ上述のアプローチを依然として適用することができる。
【0056】
上で参照した手法に従ってディジタルX線システムを較正して画像データを取得する方法の例を図7及び図8に全体的に示す。先ず図7を参照すると、方法176が、検出器22の1又は複数のデータ線68に第一の較正電圧を印加するステップ178と、ステップ180において検出器22から暗画像を取得するステップとを含んでいる。上で一般的に記載したように、暗画像は一般的には、放射線源12による非曝射時間での検出器22のデータ・チャネルからのデータ取得に対応する。かかる暗画像は、患者撮像セッションとセッションとの間に、又は検出器曝射と曝射との間の非稼働時間に取得され得る。ステップ182では、第二の較正電圧をデータ線68に印加することができ、ステップ184では付加的な暗画像を取得することができる。次いで、上でさらに詳細に議論したように、システム10に記憶されているチャネル・ゲイン・マップを、ステップ180及びステップ184において取得された暗画像に基づいてステップ186において較正することができる。
【0057】
ステップ188では、システム10の感度レベルが選択され得る。感度レベルはシステム10によって自動的に選択されてもよいし、且つ/又はシステム10への担当者入力のような利用者入力に応答してシステム10によって選択されてもよい。ステップ190では、検出器22は続いて放射線源12によって曝射されて、X線画像データを取得する。システム10はまた、前述のような較正済みチャネル・ゲイン・マップに基づいてステップ192においてチャネル・ゲイン補正を施すことができる。一実施形態では、感度レベル選択を用いて多数の異なるチャネル・ゲイン補正マップの一つを選択することができ、このチャネル・ゲイン補正マップを用いて、取得されたX線画像データにチャネル・ゲイン補正を施すことができる。加えて、ステップ194では、さらに他の補正又は他の形式の補正を画像データに施してもよい。次いで、補正済み画像データがステップ196において出力され得る。
【0058】
図8では、さらに他の方法200が、上で全体的に議論されたようにシステム10を介して第一の患者から画像データを取得するステップ202と、取得済みデータをステップ204において補正するステップとを全体的に含む第一の取得工程を含み得る。方法200はまた、ステップ206において検出器22のアナログ試験モード時に暗画像のような試験データを取得し、ステップ208において1又は複数のゲイン較正マップ(例えばチャネル・ゲイン較正マップ)を修正する較正工程を含み得る。加えて、方法200は、第二の患者から画像データを取得する図示のステップ210、及び取得された画像データを較正済みゲイン・マップによって補正する図示のステップ212に全体的に対応する第二の画像取得工程を含み得る。少なくとも幾つかの実施形態では、較正工程は第一の撮像工程と第二の撮像工程との間にシステム10によって自動的に実行されてよく、温度又は他の環境要因のばらつきに対処するように実時間でのゲイン較正マップの更新を全体的に容易にすることができる。
【0059】
本発明の技術的効果としては、試験モード時に得られる暗画像データのみを用いてチャネル・ゲイン・マップを較正する能力、及び環境の影響に対処するようにシステムの非稼働時間にチャネル・ゲイン・マップを自動的に較正する能力がある。加えて、チャネル・ゲイン補正を検出器自体において実行して、システム・ホストに加わる処理負荷を軽減することができる。さらに、現行の最新技術と比較してメモリ空間及び較正時間についての要件が大幅に縮小されると考えられる。
【0060】
発明の幾つかの特徴のみを図示して本書で説明したが、当業者には多くの改変及び変形が想到されよう。従って、特許請求の範囲は、本発明の真意に含まれるような全ての改変及び変形を網羅するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0061】
10 イメージング・システム
12 放射線源
14 コリメータ
16 放射線
18 患者
20 放射線
22 検出器
24 電力供給/制御回路
26 検出器制御器
28 システム制御器
30 表示器/プリンタ
32 操作者ワークステーション
34 IDC
36 検出器制御サーキットリ
38 電源
40 参照調整器サーキットリ
42 横列バス
44 縦列バス
46 横列ドライバ
48 読み出し電子回路
50 検出器パネル
52 区画
54 ピクセル
56 横列
58 縦列
60 画像マトリクス
62 高さ
64 幅
66 データ処理サーキットリ
68 データ線/チャネル
70 走査線
72 トランジスタ
74 フォトダイオード
80 図
82 患者を配置する
84 検出器を曝射する
86 画像データ
88 ゲイン補正を施す
90 チャネル・ゲイン・マップ
92 ダイオード・ゲイン・マップ
94 補正済み画像データ
96 データベース
98 画像を再構成する
110 プロセッサ方式システム
112 マイクロプロセッサ
114 メモリ
116 大容量記憶装置
118 入力装置
120 表示器
122 プリンタ
130 グラフ
132 横軸
134 アナログ電圧レベル
136 曲線
138、140 区画
142 電圧範囲
144 カウンタ・レベル範囲
150 ブロック図
152 データ線からの電荷
154 プログラム可能な較正電圧
156 和
158 感度ゲインによるスケーリング
160 チャネル・オフセット
162 和
164 プログラム可能なチャネル・ゲインによるスケーリング
166 区画内でのアナログからディジタルへの変換
168 ディジタル値
176 方法
178 第一の較正電圧を印加する
180 第一の暗画像を取得する
182 第二の較正電圧を印加する
184 第二の暗画像を取得する
186 チャネル・ゲイン・マップを較正する
188 感度レベルを選択する
190 X線画像データを取得する
192 チャネル・ゲイン補正を施す
194 付加的なゲイン補正を施す
196 ゲイン補正済み画像データを出力する
200 方法
202 第一の患者の画像データを取得する
204 第一の患者の画像データを補正する
206 試験データを取得する
208 ゲイン較正マップを修正する
210 第二の患者の画像データを取得する
212 第二の患者の画像データを補正する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線システム(10)のディジタル検出器(22)を介して複数の暗画像を取得するステップ(180、184)であって、前記ディジタル検出器の複数のデータ・チャネル(68)から、較正電圧(154)が当該データ・チャネルに印加されている(178、182)前記ディジタル検出器のアナログ試験モード時にデータを取得することを含んでいる、複数の暗画像を取得するステップ(180、184)と、
前記複数の暗画像に基づいて前記検出器のチャネル・ゲイン・マップ(90)を較正するステップ(186)と
を備えたコンピュータ実装型の方法。
【請求項2】
前記チャネル・ゲイン・マップを較正するステップは、前記X線システムの放射線源(12)により前記ディジタル検出器を照射することにより形成されるあらゆる画像から独立に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャネル・ゲイン・マップを較正するステップは、前記各データ・チャネルについてそれぞれのチャネル・ゲイン・レベルを決定するステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の暗画像を取得するステップは、
第一の較正電圧において第一の暗画像を取得するステップ(180)と、
前記第一の較正電圧とは異なる第二の較正電圧において第二の暗画像を取得するステップ(184)と
を含んでいる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
それぞれのチャネル・ゲイン・レベルを決定するステップは、前記それぞれの第一の較正電圧と第二の較正電圧とにおける少なくとも一つのデータ・チャネルの出力信号電圧の差の前記第一の較正電圧と第二の較正電圧との間の差に対する比を決定するステップを含んでいる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ディジタル検出器を介してX線画像データを取得するステップ(190)と、
前記較正済みチャネル・ゲイン・マップに基づいて前記X線画像データを補正するステップ(192)と
を含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記X線画像データを補正するステップは、前記ディジタル検出器の内部で前記X線画像データを補正するステップを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ディジタル検出器から前記チャネル・ゲイン補正済みX線画像データを出力するステップ(196)と、
1又は複数の付加的なゲイン・マップ(92)に基づいて前記X線画像データを補正するステップと
を含んでいる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記X線システムは医用X線システムを含んでおり、前記チャネル・ゲイン・マップを較正するステップは、当該チャネル・ゲイン・マップ較正が患者撮像セッション間で変化し得る環境要因に対処するように、前記X線システムによる患者撮像セッションとセッションとの間に自動的に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
放射線源(12)と、
画像データ(86)を生成するように構成されているディジタル検出器(22)と、
該ディジタル検出器から前記画像データを取得するように構成されている制御サーキットリ(28、112)と、
1又は複数のゲイン補正マップ(90、92)を介して前記画像データにゲイン補正を施す(88)ように構成されており、前記放射線源による曝射と曝射との間に前記ディジタル検出器から取得される一連の暗画像(180、184)に基づいて少なくとも一つのゲイン補正マップを較正する(186)ようにさらに構成されている処理サーキットリ(28、112)と
を備えたイメージング・システム。
【請求項11】
前記少なくとも一つのゲイン補正マップは、メモリ装置(114)に記憶されているチャネル・ゲイン補正マップ(90)を含んでいる、請求項10に記載のイメージング・システム。
【請求項12】
前記ディジタル検出器は、前記メモリ装置と、前記処理サーキットリの少なくとも一部とを含んでおり、前記チャネル・ゲイン・マップを介して前記画像データにチャネル・ゲイン補正を施すように構成されている、請求項11に記載のイメージング・システム。
【請求項13】
前記ディジタル検出器は、前記チャネル・ゲイン補正済み画像データを当該検出器の外部の前記処理サーキットリの付加的な部分に出力するように構成されており、前記処理サーキットリの前記付加的な部分は、前記チャネル・ゲイン補正済み画像データに付加的なゲイン補正を施すように構成されている、請求項12に記載のイメージング・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−171974(P2010−171974A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6383(P2010−6383)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】