説明

ディジタル信号送出装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は、ディジタル信号を処理し、処理したディジタル信号をアナログ信号や光ディジタル信号に変換して送出することのできるディジタル信号送出装置に関するものである。
〔従来の技術〕
第3図は従来のディジタル信号送出装置の一例であるコンパクト・ディスク・プレーヤの要部の構成を示すブロック図であり、1は信号処理手段としてのディジタル・シグナル・プロセッサ(以下、DSPという。)を示し、供給されるディジタル信号を処理し、この処理したディジタル信号をアナログ信号に変換するための第1ディジタル信号と、光ディジタル信号に変換するための第2ディジタル信号としてそれぞれ出力するものである。
2は第1ミュート回路を示し、DSP1が出力する第1ディジタル信号を後段に供給するのをオン・オフするものである。
3は第1切換スイッチを示し、オン状態にすると、第1ミュート回路2を非動作状態としてDSP1の出力を後段に供給させ、オフ状態にすると、第1ミュート回路2を動作状態としてDSP1の出力を後段に供給するのを遮断させるためのものである。
4は第1ミュート回路2が出力する第1ディジタル信号をアナログ信号に変換するディジタル・アナログ・コンバータ(以下、DACという。)、5はロー・パス・フィルタ(以下、LPFという。)、6はLPF5の出力を増幅する増幅器を示す。
7は第2ミュート回路を示し、DSP1が出力する第2ディジタル信号を後段に供給するのをオン・オフするものである。
8は第2切換スイッチを示し、オン状態にすると、第2ミュート回路7を非動作状態としてDSP1の出力を後段に供給させ、オフ状態にすると、第2ミュート回路7を動作状態としてDSP1の出力を後段に供給するのを遮断させるためのものである。
9は第2ミュート回路7が出力する第2ディジタル信号に基づいて電気・光変換回路10を動作させる駆動手段としてのドライブ回路、10は駆動手段としてのドライブ回路9によって駆動され、第2ディジタル信号を光ディジタル信号に変換する電気・光変換回路、11は電気・光変換回路10から供給される光ディジタル信号を伝送する光ファイバ、12はDSP1を制御するとともに、図示を省略した各部を制御するマイクロ・コンピュータで構成したシステム・コントローラを示す。
なお、電気・光変換回路10の部分には図示を省略したソケットが設けられ、光ファイバ11はソケットに接続する図示を省略した光コネクタに取り付けられている。
次に、動作について説明する。
まず、DSP1はコンパクト・ディスクに記録されている情報を再生して供給されるEFM(Eight Fourteen Modulation)信号などのディジタル信号を復調するとともに、誤り訂正をして第1ディジタル信号および第2ディジタル信号(バイフェーズ・ディジタル信号)を出力するので、第1ミュート回路2は第1切換スイッチ3の状態に応じて第1ディジタル信号を出力し、第2ミュート回路7は第2切換スイッチ8の状態に応じて第2ディジタル信号を出力する。
このように第1ミュート回路2から出力された第1ディジタル信号はDAC4でアナログ信号に変換された後、LPF5および増幅器6を介してアナログ信号として出力される。
また、第2ミュート回路7から出力された第2ディジタル信号はドライブ回路9を介して電気・光変換回路10を動作させ、光ディジタル信号を光ファイバ11に供給する。
したがって、第1切換スイッチ3または/および第2切換スイッチ8をオン状態にすることにより、アナログ信号または/および光ディジタル信号を送出することができる。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来のディジタル信号送出装置は以上のように構成されているので、アナログ信号系を同一回路基板上に形成した場合、アナログ信号を選択するために第1切換スイッチ3をオン状態とし、第2切換スイッチ8をオフ状態にし忘れると、第2ディジタル信号に基づいて動作するドライブ回路9により、アナログ信号に雑音が発生する。
また、アナログ信号または光ディジタル信号を得るために第1および第2切換スイッチ3,8を逐一切り換えなければならず、操作性が悪いという不都合があった。
そして、電気・光変換回路10と光ファイバ11が離れているので、車載用コンパクト・ディスク・プレーヤに適用させると、振動によって電気・光変換回路10からの光ディジタル信号が光ファイバ11に伝達されなくなり、光ファイバ11を介したディジタル信号に雑音が発生する。
また、光ファイバ11の端面が露出しているので、汚れまたは油などが光ファイバ11の端面に付着すると、光ディジタル信号の伝送における信頼性が劣化する。
さらに、光ファイバ11は電気・光変換回路10から平行方向に引き出すため、光ファイバ11を直交方向に曲げるためには曲率が大きくなり、光ファイバ11を引き回す距離が長くなるなどの不都合があった。
この発明は、上記したような不都合を解消するためになされたもので、例えばアナログ信号系を同一回路基板上に形成した場合でも、ドライブ回路の動作よってアナログ信号系に悪影響を及ぼさないようにしたディジタル信号送出装置を提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
この発明にかかるディジタル信号送出装置は、供給されるディジタル信号を処理する信号処理手段と、該信号処理手段により処理したディジタル信号をアナログ信号に変換して送出する手段と、前記信号処理手段により処理したディジタル信号を光ディジタル信号に変換する電気・光変換手段と、前記信号処理手段により処理したディジタル信号に基づいて前記電気・光変換手段を駆動する駆動手段と、前記電気・光変換手段によって変換された光ディジタル信号を送出する光ファイバと、該光ファイバが接続されるソケットとを備えるディジタル信号送出装置において、前記ソケットに光ファイバが接続されたことを検出する検出手段と、該検出手段が光ファイバの接続を検出していないとき、前記ディジタル信号に基づく前記駆動手段の駆動動作を停止させる手段とを備えることを特徴としている。
また、他の発明にかかるディジタル信号送出装置は、前記光ファイバが自身を前記ソケットに接続するためのコネクタを有し、該コネクタが前記電気・光変換手段を内蔵していることを特徴としている。
また、更に他の発明にかかるディジタル信号送出装置は、前記ソケットが第1端子〜第4端子を有し、前記コネクタが前記ソケットの前記第1端子〜第4端子にそれぞれ対応する第1の端子〜第4の端子を有し、前記ソケットに対し前記コネクタを介して前記光ファイバを接続することにより、前記第1端子及び前記第2端子と前記第1の端子及び前記第2の端子とが相互接続されて前記駆動手段による前記電気・光変換手段の駆動を可能にする回路を形成すると共に、前記第3端子及び第4端子と前記第3の端子及び第4の端子とが相互接続されて前記検出手段による前記光ファイバの接続の検出を可能にする回路を形成することを特徴としている。
〔作 用〕
上記構成のディジタル信号送出装置によれば、検出手段がソケットへの光ファイバの接続を検出していないとき、信号処理手段により処理したディジタル信号に基づく駆動手段の駆動動作を停止させるので、光ファイバが接続されてないとき、切替操作を何ら行うことなく、駆動手段がディジタル信号に基づいて駆動動作することを自動的になくすることができ、切換操作忘れによって駆動手段が駆動動作をしたままになることがなくなる。
また、光ファイバが自身をソケットに接続するためのコネクタを有し、このコネクタが電気・光変換手段を内蔵しているので、光ファイバと電気・光変換手段が離れることがなくなる。
更に、ソケットに対しコネクタを介して光ファイバを接続することにより、第1端子及び第2端子と第1の端子及び第2の端子とが相互接続されて駆動手段による電気・光変換手段の駆動を可能にする回路を形成すると共に、第3端子及び第4端子と第3の端子及び第4の端子とが相互接続されて検出手段による光ファイバの接続の検出を可能にする回路を形成するので、信号処理手段により処理したディジタル信号を電気・光変換手段により光ディジタル信号に変換し、この変換した光ディジタル信号を光ファイバに送出するために光ファイバをコネクタを介してソケットに接続していないときには、第3端子及び第4端子と第3の端子及び第4の端子とが相互接続されることがなく、検出手段による光ファイバの接続の検出を可能にする回路が形成されない。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
第1図はこの発明の一実施例によるディジタル信号送出装置であるコンパクト・ディスク・プレーヤの要部の構成を示すブロック図であり、第3図と同一部分には同一符号が付してある。
第1図において、21は4つの端子21a,21b,21cおよび21dを備えたソケットを示し、端子(第1端子)21aと端子(第2端子)21bはドライブ回路9に接続され、端子(第3端子)21cは第1ミュート回路2Aと第2ミュート回路7に接続され、端子(第4端子)21dはアース電位とされている。
22は4つの端子22a,22b,22cおよび22dを備えた光コネクタを示し、端子(第1の端子)22aと端子(第2の端子)22bは内蔵した電気・光変換素子23の両端に接続され、端子(第3の端子)22cと端子(第4の端子)22dは互いに導通している。
24は光コネクタ23に取り付けられた光ファイバを示し、電気・光変換素子23から供給される光ディジタル信号を伝送するものである。
そして、ソケット21に光コネクタ22を接続状態または非接続状態にしたのを検出する検出手段は、端子21c,21d,22cおよび22dで構成されている。
なお、第1ミュート回路2Aはアース電位が供給されると、動作状態になり、第2ミュート回路7はアース電位が供給されると、非動作状態になる。
次に、動作について説明する。
まず、光コネクタ22をソケット21に接続しないときは、第1および第2ミュート回路2A,7にアース電位が供給されないので、第1ミュート回路2Aは非動作状態になり、第2ミュート回路7は動作状態になる。
したがって、ドライブ回路9にはDSP1からの信号処理されたディジタル信号が入力されることがなくなり、ドライブ回路9がディジタル信号に基づいて動作しなくなり、ドライブ回路9がディジタル信号に基づいて駆動動作することによって発生する雑音(ノイズ)がアナログ信号系に混入するような悪影響がなくなる。
次に、光コネクタ22をソケット21に接続すると、端子21aと端子22a、端子21bと端子22b、端子21cと端子22c、端子21dと端子22dがそれぞれ接続され、第1および第2ミュート回路2A 7にアース電位が供給されるので、第1ミュート回路2Aは動作状態になり、第2ミュート回路7は非動作状態になる。すなわち、第3端子21c及び第4端子22cと、第3の端子21d及び第4の端子22dは、ソケット21にコネクタ22を介して光ファイバ24が接続されたことを検出する検出手段を構成し、ソケット21に対しコネクタ22を介して光ファイバ24を接続することにより、第3端子21c及び第4端子21dと第3の端子22c及び第4の端子22dとが相互接続されて検出手段による光ファイバの接続の検出を可能にする回路を形成する。そして、第2ミュート7は光ファイバ24の接続を検出していないとき、ディジタル信号に基づくドライバ回路9は駆動動作を停止させる手段を構成している。
したがって、ドライブ回路9にはDSP1からの信号処理された第2ディジタル信号が入力され、ドライブ回路9がディジタル信号に基づいて駆動動作するので、電気・光変換素子23が動作して光ディジタル信号が光ファイバ24によって伝送される。すなわち、ソケット21に対しコネクタ22を介して光ファイバ24を接続することにより、第1端子21a及び第2端子21bと第1の端子22a及び第2の端子22bとが相互接続されてドライブ回路9による電気・光変換素子23の駆動を可能にする回路を形成する。
このように、第1図の実施例によれば、光コネクタ22をソケット21に接続したか否かを検出手段で検出して第1および第2ミュート回路2A,7を制御するので、逐一第1または第2ミュート回路2A,7を選択する必要がなくなり、操作性が向上する。
そして、電気・光変換素子23が光コネクタ22に内蔵されているので、車載用コンパクト・ディスク・プレーヤに適用させても、振動によって光ディジタル信号に雑音が発生せず、光ディジタル信号の伝送における送信側の信頼性が向上する。
また、光ファイバ24を任意の方向に引き出せるので、光ファイバ24を引き回す距離を短くすることができる。
さらに、第1および第2ミュート回路2A,7を選択する切換スイッチ(従来例における第1および第2切換スイッチ3,8)が不要になるので、安価に構成できる。
第2図はこの発明の他の実施例によるディジタル信号送出装置であるコンパクト・ディスク・プレーヤの要部の構成を示すブロック図であり、第1図または第3図と同一部分には同一符号が付してある。
第2図において、端子21cはシステム・コントローラ12Aに接続されている。
そして、システム・コントローラ12Aは、端子21cからアース電位が供給されないと、第1ミュート回路2を非動作状態にするとともに、第2ミュート回路7を動作状態にし、端子21cからアース電位が供給されると、第1ミュート回路2を動作状態にするとともに、第2ミュート回路7を非動作状態にする。
この第2図の実施例によれば、第1図の実施例と同様な効果を得ることができる。
なお、上記した実施例では、第1および第2ミュート回路2または2A,7を単独の構成とする例で説明したが、DSPの中に各ミュート回路を組み込み、システム・コントローラ12AでDSPに組み込んだ各ミュート回路を制御することも可能である。
また、コンパクト・ディスク・プレーヤに適用した例で説明したが、ディジタル・オーディオ・テープレコーダ、BSチューナ、レーザ・ディスク・プレーヤなどにも適用できることは言うまでもない。
〔発明の効果〕
以上のように、この発明によれば、光ファイバが接続されていないとき、切替操作を何ら行うことなく、駆動手段がディジタル信号に基づいて駆動動作することを自動的になくすることができ、切換操作忘れによって駆動手段が駆動動作をしたたままになることがなくなるので、例えば切換スイッチ等の面倒な操作を行うことなく確実に、駆動手段が駆動動作をしたときに発生するノイズがアナログ信号に混入することを未然に防止することができる。
また、切換スイッチ等の切換手段が不要になるので、安価に構成でき、さらにアナログ信号系を同一回路基板上に形成した場合でも、駆動手段であるドライブ回路の動作よってアナログ信号系に悪影響を及ぼさなくなる。
他の発明によれば、光ファイバのコネクタが電気・光変換手段を内蔵し、光ファイバと電気・光変換手段が離れることがないので、振動によって光ファイバと電気・光変換手段が離れて光ディジタル信号が光ファイバに伝達されなくなって、これに伴うノイズが光ディジタル信号に入り込むことがなくなり、光ディジタル信号の伝送における送信側の信頼性が向上するとともに、光ファイバを任意の方向に引き出して引き回す距離を短くすることができる。
更に他の発明によれば、ソケットに対しコネクタを介して光ファイバを接続することにより、駆動手段によるコネクタ内の電気・光変換手段の駆動を可能にする回路を形成すると共に、検出手段による光ファイバの接続の検出を可能にする回路を形成するようになっているので、光ファイバをコネクタを介してソケットに接続していないときには、検出手段による光ファイバの接続の検出を可能にする回路が形成されることがなく、検出手段がソケットへの光ファイバの接続を検出せず、ディジタル信号に基づく駆動手段の駆動動作を何等の切換操作も行うことなく停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例によるディジタル信号送出装置であるコンパクト・ディスク・プレーヤの要部の構成を示すブロック図、
第2図はこの発明の他の実施例によるディジタル信号送出装置であるコンパクト・ディスク・プレーヤの要部の構成を示すブロック図、
第3図は従来のディジタル信号送出装置の一例であるコンパクト・ディスク・プレーヤの要部の構成を示すブロック図である。
1……ディジタル・シグナル・プロセッサ、2,2A……第1ミュート回路、7……第2ミュート回路、9……ドライブ回路、12,12A……システム・コントローラ、21……ソケット、21a,21b,21c,21d……端子、22……光コネクタ、21a,22b,22c,22d……端子、23……電気・光変換素子、24……光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】供給されるディジタル信号を処理する信号処理手段と、該信号処理手段により処理したディジタル信号をアナログ信号に変換して送出する手段と、前記信号処理手段により処理したディジタル信号を光ディジタル信号に変換する電気・光変換手段と、前記信号処理手段により処理したディジタル信号に基づいて前記電気・光変換手段を駆動する駆動手段と、前記電気・光変換手段によって変換された光ディジタル信号を送出する光ファイバと、該光ファイバが接続されるソケットとを備えるディジタル信号送出装置において、前記ソケットに光ファイバが接続されたことを検出する検出手段と、該検出手段が光ファイバの接続を検出していないとき、前記ディジタル信号に基づく前記駆動手段の駆動動作を停止させる手段とを備えることを特徴とするディジタル信号送出装置。
【請求項2】前記光ファイバが自身を前記ソケットに接続するためのコネクタを有し、該コネクタが前記電気・光変換手段を内蔵していることを特徴とする請求項(1)記載のディジタル信号送出装置。
【請求項3】前記ソケットが第1端子〜第4端子を有し、前記コネクタが前記ソケットの前記第1端子〜第4端子にそれぞれ対応する第1の端子〜第4の端子を有し、前記ソケットに対し前記コネクタを介して前記光ファイバを接続することにより、前記第1端子及び第2端子と前記第1の端子及び前記第2の端子とが相互接続されて前記駆動手段による前記電気・光変換手段の駆動を可能にする回路を形成すると共に、前記第3端子及び第4端子と前記第3の端子及び第4の端子とが相互接続されて前記検出手段による前記光ファイバの接続の検出を可能にする回路を形成することを特徴とする請求項(2)記載のディジタル信号送出装置。

【第3図】
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【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2843400号
【登録日】平成10年(1998)10月23日
【発行日】平成11年(1999)1月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−29490
【出願日】平成2年(1990)2月13日
【公開番号】特開平3−235266
【公開日】平成3年(1991)10月21日
【審査請求日】平成4年(1992)6月24日
【出願人】(999999999)パイオニア株式会社
【参考文献】
【文献】実開 平1−97611(JP,U)