説明

ディスインテグリン変種及びその薬学的使用

ディスインテグリン変種及びその薬学的使用を開示する。ディスインテグリン変種は、インテグリンavβ3受容体拮抗活性を有する単離ポリペプチドであって、野生型ディスインテグリンよりも実質的に低いインテグリンaIIbβ3及び/又はa5β1受容体遮断活性を有する単離ポリペプチドを含む。ディスインテグリン変種は、改変アミノ酸配列をコードする改変ディスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされ、インテグリンaIIbβ3及び/又はa5β1に対して野生型ディスインテグリンよりも実質的に低い親和性を有するポリペプチドを生成する。ディスインテグリン変種は、骨粗しょう症、骨腫よう又は癌増殖、血管新生に関連した腫よう増殖及び転移、骨中の腫よう転移、悪性腫よう誘発性高カルシウム血症、血管新生に関連した眼疾患、パジェット病、リウマチ性関節炎、並びに骨関節炎を含めて、ほ乳動物におけるavβ3インテグリン関連疾患の治療及び/又は防止に有用である。血管新生に関連した眼疾患としては、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視、未熟児網膜症などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、35 U.S.C.§119(e)に準じて、2006年12月26日に出願された米国仮特許出願第60/871,854号の利益を主張するものであり、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、全般にディスインテグリン変種に関し、より詳細にはαvβ3インテグリン関連疾患の治療及び防止用の選択的αvβ3インテグリン拮抗物質としてのディスインテグリン変種に関する。
【背景技術】
【0003】
骨は、「骨リモデリング」と称する再生と修復の過程を連続的に受ける幾つかの細胞タイプで構成された複合組織である。骨リモデリングを担う2つの主要な細胞タイプは、骨を吸収する破骨細胞と、新しい骨を形成する骨芽細胞である。骨リモデリングは、幾つかの全身ホルモン(例えば、副甲状腺ホルモン、1,25−ジヒドロキシビタミンD、性ホルモン及びカルシトニン)及び局所因子(例えば、一酸化窒素、プロスタグランジン、成長因子及びサイトカイン)によって調節されていることが知られている[1]。
【0004】
インテグリンは、細胞を基質に固定し、外部から誘導されるシグナルを原形質膜を横切って伝達する、ヘテロ2量体マトリックス受容体である[5]。インテグリンαvβ3は、生体内[6]とインビトロ[7、8]の両方で、破骨細胞によって媒介される骨吸収に関与する。このヘテロ2量体分子は、オステオポンチン、骨シアロタンパク質などの骨基質タンパク質に含まれるアミノ酸モチーフArg−Gly−Asp(RGD、配列番号2)を認識する[7、8]。インテグリンαvβ3は、破骨細胞中で発現され[9]、その発現は吸収性ステロイド及びサイトカインによって調節される[10]。ブロッキング実験に基づいて、αvβ3インテグリンは、主要な機能的接着受容体として破骨細胞上で同定された。インテグリンαvβ3阻害剤は、破骨細胞の骨結合能力及び骨吸収能力を低下させる[7、11]。インテグリンαvβ3は、破骨細胞の機能において主要な役割を果たし[7、11、12]、このインテグリンの阻害剤は、骨粗しょう症[11]、溶骨性転移[13]及び悪性腫よう誘発性高カルシウム血症を防止すると考えられている。
【0005】
破骨細胞によって媒介される骨溶解に関連した多数の骨疾患が存在する。骨粗しょう症は、骨の吸収と形成が調和せず、骨の分解が骨の構築を上回るときに誘発される最も一般的な骨疾患である。骨粗しょう症は、ホルモンの不均衡、疾患、投薬(例えば、コルチコステロイド又は抗てんかん薬)などの別の条件によっても誘発される[2]。骨は、ヒト乳癌、前立腺癌、肺癌及び甲状腺癌並びに他の癌による最も一般的な転移部位の1つである[3、4]。骨粗しょう症は、閉経後のエストロゲン欠乏症からも生じ得る。続発性骨粗しょう症は、リウマチ様関節炎に付随し得る。骨転移は、他の器官の転移には見られない破骨細胞性骨吸収の極めて独特な段階を示す。癌に付随する骨溶解は破骨細胞によって本質的に媒介され、破骨細胞は、活性化されていると考えられ、また、骨芽細胞によって間接的に又は腫よう生成物によって直接的に、活性化され得ることが広く受け入れられている[4]。また、高カルシウム血症(高血中カルシウム濃度)は、溶骨性骨疾患の重大な合併症である。高カルシウム血症は、大規模な骨破壊を有する患者で比較的頻繁に起き、特に乳癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌及びすい癌並びに骨髄腫に一般的である[4]。
【0006】
ディスインテグリンは、血小板上、並びに血管内皮細胞及び幾つかの腫よう細胞を含めた他の細胞上で発現されるインテグリンαIIbβ3、α5β1及びαvβ3に特異的に結合する低分子量RGD含有ペプチドの1ファミリーである[14、15]。その強力な抗血小板活性に加えて、ディスインテグリンの研究によって、循環器疾患の診断における新しい用途、並びに動脈血栓症、骨粗しょう症及び血管新生に関連した腫ようの増殖と転移における治療薬の設計が明らかになった[15]。マレーマムシ(Calloselasma rhodostoma)の毒液に由来するディスインテグリンであるロドストミン(Rhodostomin)(Rho)は、血小板糖タンパク質αIIbβ3を遮断することによって、生体内及びインビトロでの血小板凝集を阻害することが見いだされた[16、17]。また、ロドストミンは、腫よう細胞の生存度に影響を及ぼさずに、非ミネラル化とミネラル化の両方の骨細胞外基質に対する乳癌細胞及び前立腺癌細胞の接着を用量依存的に阻害することが報告された。また、ロドストミンは、乳癌細胞及び前立腺癌細胞の遊走及び浸潤を阻害する[18]。ロドストミンは、脂肪生成及び肥満を抑制することも判明した[19]。しかし、ロドストミンは、インテグリンαIIbβ3、α5β1及びαvβ3に非特異的に結合するので、ロドストミンの薬学的使用は重大な副作用を引き起こす。例えば、ロドストミンを癌治療に適用するとき、血小板凝集阻害は、望ましくない副作用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】van’t Hof RJ, Ralston SH. (2001 ) Nitric oxide and bone. Immunology 103:255−61
【非特許文献2】Miyauchi AJ, Alvarez EM, Greenfield A, Teti M1 Grano S, Colucci A, Zambonin−Zallone FP, Ross SL, Teitelbaum, Cheresh D. (1991 ) Recognition of osteopontin and related peptides by an αvβ3 integrin stimulates immediate cell signals in osteoclasts. J Biol Chem 266:20369−20374
【非特許文献3】Crippes BA, Engleman VW, Settle SL, Delarco J, Ornberg RL, Helfrich MH, Horton MA, Nickols GA. (1996) Antibody to β3 integrin inhibits osteoclast− mediated bone resorption in the thyroparathyroidectomized rat. Endocrinology 137:918−924
【非特許文献4】Horton MA, Taylor ML, Arnett TR, Helfrich MH. (1991 ) Arg−gly−asp (RGD) peptides and the anti−vitronectin receptor antibody 23C6 inhibit dentine resorption and cell spreading by osteoclasts. Exp Cell Res 195:368−375
【非特許文献5】Ross FP, Alvarez Jl, Chappel J, Sander D, Butler WT, Farach−Carson MC, Mintz KA, Robey PG, Teitelbaum SL, Cheresh DA. (1993) Interactions between the bone matrix proteins osteopontin and bone sialoprotein and the osteoclast integrin αvβ3 potentiate bone resorption. J Biol Chem 268:9901− 9907
【非特許文献6】lnoue M, Teitelbaum SL, Hurler L, Hruska K, Seftor E, Hendrix M, Ross FP. (1995) GM−CSF regulates expression of the functional integrins αvβ3 and αvβ5 in a reciprocal manner during osteoclastogenesis. J Bone Miner Res 10:S163a. (Abstr.)
【非特許文献7】Mimura H, Cao X, Ross FP, Chiba M1 Teitelbaum SL. (1994) 1 ,25(OH)2D3 vitamin D3 transcriptionally activates the β3−integrin subunit gene in avian osteoclast precursors. Endocrinology 134:1061−1066
【非特許文献8】Engleman VW, Nickols GA, Ross FP, Horton MA, Griggs DW, Settle SL, Ruminski PG, Teitelbaum SL. (1997) A peptidomimetic antagonist of the alpha(v)beta3 integrin inhibits bone resorption in vitro and prevents osteoporosis in vivo. J Clin Invest 99:2284−2292
【非特許文献9】Nakamura I1 Tanaka H, Rodan GA, Duong LT. (1998) Echistatin inhibits the migration of murine prefusion osteoclasts and the formation of multinucleated osteoclast−like cells. Endocrinology 139:5182−5193.
【非特許文献10】Mundy G. R. (1991 ) Mechanisms of osteolytic bone destruction. BoneSuppl:S1−6
【非特許文献11】Goltzman D. (2002) Discoveries, drugs and skeletal disorders. Nat Rev Drug Discov 1 :784−96
【非特許文献12】Yoneda T1 Williams PJ, Hiraga T, Niewolna M, Nishimura RA. (2001 ) Bone− seeking clone exhibits different biological properties from the MDA−MB−231 parental human breast cancer cells and a brain−seeking clone in vivo and in vitro. J Bone Miner Res 16:1486−95
【非特許文献13】Mundy G. R. (2002) Metastasis to bone: causes, consequences and therapeutic opportunities. Nat Rev Cancer 2:584−93
【非特許文献14】Gould RJ, Polokoff MA, Friedman PA, Huang TF, Holt JC, Cook JJ, Niewiarowski S. (1990) Disintegrins: a family of integrin inhibitory proteins from viper venoms. Proc Soc Exp Biol Med 195:168−171
【非特許文献15】Huang TF. (1998) What have snakes taught us about integrins ? Cell MoI Life Sci 54: 527−540
【非特許文献16】Huang TF, Ouyang C, Teng CM. (1990) Rhodostomin, a snake venom peptide and its fragment inhibit platelet aggregation by acting as fibrinogen receptor antagonist. 11th International Congress on Thrombosis; Ljubljana, Yugoslavia, Abstract 141
【非特許文献17】Yeh CH, Peng HC, Yang RS, Huang TF. (2001 ) Rhodostomin, a snake venom disintegrin, inhibits angiogenesis elicited by basic fibroblast growth factor and suppresses tumor growth by a selective αvβ3 blockade of endothelial cells. MoI Pharmacol 59:1333−1342
【非特許文献18】Yang, R.S., Tang, CH. , Chuang, WJ. , Huang, T.H., Peng, H.C., Huang, T.F. and Fu, W. M. (2005) Inhibition of tumor formation by snake venom disintegrin. Toxicon 45:661−669
【非特許文献19】Lin et al., 2005, Biocehmical Pharmacology 70:1469−1478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、特にインテグリンαvβ3に対して特異的選択性を有するディスインテグリン変種の製造に関連して、当分野ではこれらの欠陥及び不適切な点に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明によれば、本発明の一態様は、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドである。このポリペプチドは、αIIbβ3及び/又はα5β1インテグリンに対する結合性が野生型ディスインテグリンよりも低い。このポリペプチドは、改変アミノ酸配列をコードする改変ディスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされ、αIIbβ3及び/又はα5β1インテグリン結合活性が低い。このポリペプチドは、ポリエチレングリコール化することができ又はアルブミンと複合化することができる。
【0010】
このディスインテグリンヌクレオチド配列は、ヘビ毒に由来し得る。ディスインテグリンは、ロドストミン、アルボラブリン(albolabrin)、アプラギン(applagin)、バシリシン(basilicin)、バトロキソスタチン(batroxostatin)、ビチスタチン(bitistatin)、セレベリン、セラスチン(cerastin)、クロタトロキシン(crotatroxin)、ズリシン(durissin)、エレガンチン(elegantin)、フラボリジン(flavoridin)、フラボスタチン(flavostatin)、ハリシン(halysin)、ハリスタチン(halystatin)、ジャララシン(jararacin)、ジャラスタチン(jarastatin)、キストリン(kistrin)、ラチェシン(lachesin)、ルトシン(lutosin)、モロシン(molossin)、サルモシン(salmosin)、サキサチリン(saxatilin)、テルゲミニン(tergeminin)、トリメスタチン、トリムクリン(trimucrin)、トリムターゼ(trimutase)、ウスリスタチン(ussuristatin)及びビリジン(virigin)から選択することができる。
【0011】
本発明の別の一態様は、ロドストミンの変種であるポリペプチドであり、該ロドストミンは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明の別の一態様は、ポリペプチドは、配列番号30−42から選択されるアミノ酸を含む。
【0013】
本発明の別の一態様は、配列番号1のアミノ酸48、50、52又は53に対応する位置における4個のアミノ酸置換の1、2、3個を更に含む、配列番号29のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0014】
本発明の別の一態様は、配列番号1の位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn、並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択されるアミノ酸置換を含むポリペプチドである。
【0015】
本発明の別の一態様は、配列番号43−56から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである。
【0016】
本発明の別の一態様は、αIIbβ3及び/又はα5β1に対する親和性がロドストミンの約1/5、1/50又は1/100以下であるポリペプチドである。本発明の一実施形態において、ポリペプチドは、αIIbβ3及び/又はα5β1インテグリンに対する親和性がロドストミンの約1/200以下である。本発明の別の一実施形態において、ポリペプチドは、αIIbβ3及び/又はα5β1インテグリンに対する親和性がロドストミンの約1/1000又は1/2000以下である。本発明の別の一実施形態において、ポリペプチドは、血小板に対する親和性がロドストミンの約1/5、1/50、1/100、1/1000又は1/2000以下である。本発明の更に別の一実施形態において、ポリペプチドは、血液凝固時間の延長活性がロドストミン及び又は野生型ディスインテグリンよりも実質的に低い。
【0017】
本発明の更に別の一態様は、本発明のポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物である。
【0018】
本発明の別の一態様は、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0019】
本発明の更に別の一態様は、ヒトを含めたほ乳動物におけるαvβ3インテグリン関連疾患の治療及び/又は防止にディスインテグリン変種を使用する方法である。この方法は、治療を必要とするほ乳動物にディスインテグリン変種の治療有効量を投与する段階を含む。この方法に使用されるポリペプチドは、ポリエチレングリコール化することができ又はアルブミンと複合化することができる。
【0020】
本発明の一態様においては、ディスインテグリンは、ヘビ毒に由来し得、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンの1つから選択することができる。
【0021】
本発明の一態様においては、ディスインテグリンはロドストミンである。
【0022】
本発明の別の一態様においては、ロドストミンは、配列番号1のアミノ酸配列を含むロドストミンの変種を含む。
【0023】
別の一態様においては、ロドストミンは、配列番号30−42から選択されるアミノ酸を含むRGDモチーフ変種を含む。
【0024】
別の一態様においては、ロドストミンは、配列番号57−69から選択されるアミノ酸を含む。
【0025】
本発明の一態様において、αvβ3インテグリン関連疾患としては、骨粗しょう症、骨腫よう又は癌増殖及びこれに関連した症候、血管新生に関連した腫よう増殖及び転移、骨中の腫よう転移、悪性腫よう誘発性高カルシウム血症、血管新生に関連した眼疾患、パジェット病、リウマチ性関節炎、並びに骨関節炎が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0026】
本発明の別の一態様において、本発明のポリペプチドは、血管新生に関連した眼疾患の治療及び/又は防止に使用される。該眼疾患としては、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視及び未熟児網膜症が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0027】
本発明の更に別の一態様において、本発明のポリペプチドは、骨粗しょう症の治療及び/又は防止に使用される。骨粗しょう症は、閉経後エストロゲン欠乏症、続発性骨粗しょう症、リウマチ様関節炎、卵巣切除、パジェット病、骨癌、骨腫よう、骨関節炎、破骨細胞形成の増加、及び破骨細胞活性の増加から選択される病的症状に付随し得る。また、骨粗しょう症としては、卵巣切除誘発性又は閉経後の骨粗しょう症又は骨量減少が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0028】
本発明の更に別の一態様は、ヒトを含めたほ乳動物における卵巣切除誘発性の生理学的変化の治療及び/又は防止に本発明のポリペプチドを使用する方法である。
【0029】
本発明の更に別の一態様は、ヒトを含めたほ乳動物における骨中の腫よう細胞増殖及びそれに関連した症候の抑制及び/又は防止にディスインテグリン変種を使用する方法である。
【0030】
本発明の更に別の一態様は、本発明のポリペプチドを製造する方法であり、該方法は、以下の段階、すなわち、(a)前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に移入する段階、(b)前記宿主細胞を培地中で増殖させる段階、及び前記ポリペプチドを単離する段階を含む。本発明の方法は、アミノ酸を含まない培地中で宿主細胞を増殖させること、及び上清を収集して前記ポリペプチドを得ることを更に含み得る。本発明の方法は、メタノールを培地に添加して、宿主細胞中でポリペプチド発現を誘発することを更に含み得る。本発明の方法は、カラムクロマトグラフィーを実施して、前記ポリペプチドを得る段階を更に含み得る。一実施形態において、本発明の方法は、HPLCを実施して、単離ポリペプチドを得る段階を更に含み得る。
【0031】
本発明の別の一態様は、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、このポリペプチドは、ヘビ毒から単離されるディスインテグリンの変種であり得る。
【0032】
本発明の別の一態様においては、ディスインテグリンは、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択される。
【0033】
本発明の別の一態様においては、ディスインテグリンは、ロドストミンを含む。
【0034】
本発明の別の一態様においては、ディスインテグリンは、配列番号1のアミノ酸配列を含むロドストミンの変種を含む。
【0035】
本発明の別の一態様においては、ポリペプチドは、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を有するRGDモチーフ変種を含む。
【0036】
本発明の別の一態様においては、ポリヌクレオチドは、配列番号43−56及び78−135から選択される配列を含む。
【0037】
本発明の別の一態様においては、ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸48、50、52又は53に対応する位置における4個のアミノ酸置換の1、2、3個を有するポリペプチドをコードし得る。
【0038】
本発明の別の一態様は、本発明のポリヌクレオチドと厳密な条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドである。
【0039】
本発明の別の一態様は、本発明のポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドである。
【0040】
これら及び他の態様は、以下の図面と併せて、以下の種々の実施形態の記述から明らかであるが、その変更及び改変は、開示の新規の概念の精神及び範囲から逸脱することなく作用し得る。
【0041】
添付図面は、本発明の1つ以上の実施形態を示し、本明細書と一緒に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0042】
本発明の追加の目的及び効果は、以下の記述である程度説明され、以下の記述からある程度明らかであり、又は本発明の実施によって習得することができる。本発明の目的及び効果は、添付の特許請求の範囲に特に示された要素及び組合せによって、理解し、達成されるはずである。
【0043】
上記一般的記述と以下の詳細な説明の両方は、単なる例示及び説明に過ぎず、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0044】
本明細書の一部に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、記述と一緒に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、マウスにおける出血時間に対してRD、HSA−RD及びARLDDLがロドストミンタンパク質よりも影響の小さいことを示すグラフである。
【図2】図2Aは、PGPタンパク質で処置したラットにおける卵巣切除誘発性海綿骨量減少の抑制を示す海綿骨の写真である。横棒=1mm。図2Bは、PGPタンパク質で処置したラットにおける破骨細胞数の卵巣切除誘発性増加の抑制を示す、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)で染色された海綿骨の写真である。横棒=100mm。
【図3】図3は、RDタンパク質又はアレンドロナート(薬物処置)で処置したラットにおける卵巣切除誘発性破骨細胞活性化の阻害、薬物離脱期間中の破骨細胞マーカー濃度の反跳、及びRD又はアレンドロナートの再投与中の、卵巣切除誘発性破骨細胞活性の増加の逆転を示すグラフである。
【図4】図4A〜Dは、RDタンパク質で処置した関節炎ラットにおける軟骨細胞層破壊の阻害を示す、サフラニンO及びヘマトキシリン染色膝関節の写真である。矢印は軟骨細胞層を示す。
【図5】図5A〜Cは、RDタンパク質で処置した骨関節炎ラットにおける血液サイトカイン上昇の抑制を示すグラフである。
【図6】図6A〜Cは、RDタンパク質で処置した骨関節炎マウスにおける血液サイトカイン上昇の抑制を示すグラフである。
【図7】図7は、RDタンパク質で処置し、アレンドロナートでは処置していないSCIDマウスにおけるPC−3骨腫よう増殖の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、RDタンパク質で処置したSCIDマウスにおける腫よう誘発性体重減少の抑制を示すグラフである。
【図9】図9Aは、RDタンパク質で処置したSCIDマウスにおける、(中間のパネルにおいて矢印で示した)PC−3細胞のけい骨内(intratibial)注射、及び骨腫よう増殖の阻害の後に、各肢の近位けい骨における目に見える球状の腫よう増殖を示す写真である。図9Bは、RDタンパク質で処置したSCIDマウスにおけるPC−3腫よう細胞誘発性溶骨性骨病変の阻害を示す、けい骨のX線像である。図9Cは、RDタンパク質で処置したSCIDマウスにおけるPC−3腫よう誘発性骨溶解の阻害を示す、図9Bのデータを定量化したグラフである。図9Dは、RDタンパク質で処置したSCIDマウス中のI型コラーゲンのC末端テロペプチドにおけるPC−3腫よう誘発性増加の抑制を示すグラフである。図9Eは、RDタンパク質又はアレンドロナートで処置したSCIDマウスの血清カルシウム濃度におけるPC−3腫よう誘発性増加の抑制を示すグラフである。
【図10】図10Aは、RDタンパク質で処置したヌードマウスにおけるMDA−MB−231骨腫よう増殖の阻害を示すグラフである。図10Bは、RDタンパク質で処置したヌードマウス中のI型コラーゲンのC末端テロペプチドにおけるMDA−MB−231骨腫よう誘発性増加の抑制を示すグラフである。図10Cは、RDタンパク質で処置したヌードマウスにおけるMDA−MB−231骨腫よう誘発性高カルシウム血症の阻害を示すグラフである。図10Dは、MDA−MB−231細胞を注射し、RDタンパク質で処置したヌードマウスにおいて白血球数の変化がないことを示すグラフである。図10Eは、MDA−MB−231細胞を注射し、RDタンパク質で処置したヌードマウスにおいて赤血球数の変化がないことを示すグラフである。図10Fは、MDA−MB−231細胞を注射し、RDタンパク質で処置したヌードマウスにおいて血小板数の変化がないことを示すグラフである。
【図11】図11Aは、未処置対照マウスと比較した、RD又はRD−アルブミン(HSA−RD)タンパク質で処置したC57BL/6マウスから得られたMATRIGEL(商標)栓中の血管密度の低下を示す写真である。図11Bは、未処置対照マウスと比較した、RD(毎日−RD/1日又は隔日−RD/2日)又はRD−アルブミン(HSA−RD−隔日)タンパク質で処置したC57BL/6マウスから得られたMATRIGEL(商標)栓中のヘモグロビン含有量の低下を示すグラフである。
【図12】図12Aは、未熟児網膜症(ROP)マウスモデルにおける血管新生、及びRDタンパク質で処置したROPマウス(ROP+RD)における血管新生の減少を示す写真である。矢印は、血管プロファイル(BVP)を示す。図12Bは、RDタンパク質で処置した未熟児網膜症(ROP)マウスモデルにおけるBVPの減少を示すグラフである。
【図13】図13Aは、RD又はRD−アルブミンタンパク質で処置したマウスにおける卵巣切除誘発性破骨細胞活性化の阻害を示すグラフである。図13Bは、RD又はRD−アルブミンタンパク質で処置したマウスにおける卵巣切除誘発性アルカリホスファターゼ(ALP)不活性化の阻害を示すグラフである。図13Cは、BMDの卵巣切除誘発性減少の抑制を示すグラフである。図13Dは、BMCの卵巣切除誘発性減少の抑制を示すグラフである。
【図14A】図14Aは、ロドストミン変種のアミノ酸配列配列番号1及び57−59を示す図である。
【図14B】図14Bは、ロドストミン変種のアミノ酸配列配列番号60−63を示す図である。
【図14C】図14Cは、ロドストミン変種のアミノ酸配列配列番号64−67を示す図である。
【図14D】図14Dは、ロドストミン変種のアミノ酸配列配列番号68−69を示す図である。
【図15A】図15Aは、ロドストミン変種のヌクレオチド配列配列番号43−48を示す図である。
【図15B】図15Bは、ロドストミン変種のヌクレオチド配列配列番号49−54を示す図である。
【図15C】図15Cは、ロドストミン変種のヌクレオチド配列配列番号55−56を示す図である。
【図16A】図16Aは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号78−85を示す図である。
【図16B】図16Bは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号86−92を示す図である。
【図16C】図16Cは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号93−100を示す図である。
【図16D】図16Dは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号101−108を示す図である。
【図16E】図16Eは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号109−116を示す図である。
【図16F】図16Fは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号117−124を示す図である。
【図16G】図16Gは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号125−132を示す図である。
【図16H】図16Hは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列配列番号133−135を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本発明を以下の実施例でより具体的に記述する。実施例は、その多数の改変及び変更が当業者には明らかなはずであり、単なる説明のためのものにすぎない。本発明の種々の実施形態を以下に詳述する。以下の記述において、また、特許請求の範囲を通して、特に示さない限り、単数形は複数形を含む。また、以下の記述において、また、特許請求の範囲を通して、「in」の意味は、特に示さない限り、「in」及び「on」を含む。さらに、本明細書で用いる幾つかの用語をより具体的に以下に定義する。本明細書で引用し、考察するすべての参考文献を、各参考文献を参照により個々に組み入れたのと同じ程度に、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。
【0047】
本発明に含まれる本実施形態(例示的実施形態)を以下に詳細に記述する。本発明の実施例を添付図面に示す。
【0048】
定義
本明細書で使用する用語は、本発明の状況において、また、各用語を使用する具体的状況において、一般に、当分野におけるその通常の意味を有する。本発明の記述に関して追加の手引を実務家に提供するために、本発明の記述に使用する特定の用語を、以下又は本明細書の中で考察する。特定の用語の同義語を記述する。1個以上の同義語の列挙は、別の同義語の使用を排除しない。本明細書で考察する任意の用語の例を含めて、本明細書の例の使用は、単なる説明に過ぎず、本発明又は任意の例示用語の範囲及び意味を決して限定しない。本発明は、本明細書に記載の種々の実施形態に限定されない。
【0049】
特に断らない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。矛盾が生じた場合には、定義を含めて本文書を基準とする。
【0050】
「ほぼ」、「約」又は「およそ」は、一般に、所与の値又は範囲の20パーセント以内、10パーセント以内、5、4、3、2又は1パーセント以内を意味するものとする。記述する数量は近似であり、「ほぼ」、「約」又は「およそ」という用語を明示しない場合でも、それらを暗示し得ることを意味する。
【0051】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド配列」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、区別なく使用され、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/又はその類似体若しくは誘導体を含み得る。この用語は変種を含む。変種としては、挿入体、付加体、欠失体、置換体などが挙げられる。ヌクレオチド配列は、5’から3’方向に記述する。
【0052】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、区別なく使用され、任意の長さのアミノ酸の重合体を指し、天然アミノ酸、コードアミノ酸、非コードアミノ酸、化学若しくは生化学修飾アミノ酸、誘導体化アミノ酸、デザイナーアミノ酸、アミノ酸類似体、ペプチド模倣物及びデプシペプチド、並びに修飾、環式、二環式、デプシ環式(depsicyclic)又はデプシ二環式(depsibicyclic)ペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。この用語は、単鎖タンパク質及び多量体を含む。この用語は、FITC、ビオチン、並びに64Cu、67Cu、90Y、99mTc、111In、124I、125I、131I、137Cs、186Re、211At、212Bi、213Bi、223Ra、241Am及び244Cmを含めて、ただしこれらだけに限定されない放射性同位体などの標識;検出可能な生成物(例えば、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼなど)を有する酵素;蛍光剤及び蛍光標識、蛍光放射金属、例えば152Eu又はランタン系列の別の元素、電気化学発光化合物、化学発光化合物、例えば、ルミノール、イソルミノール又はアクリジニウム塩;特異的結合分子、例えば、磁性粒子、ミクロスフェア、ナノスフェアなどと複合化されたタンパク質も含む。この用語は、治療薬と複合化されたペプチドも含む。
【0053】
これらの用語は、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、生物発光タンパク質(例えば、ルシフェリン又はエクオリン(緑色蛍光タンパク質))などの異種アミノ酸配列との融合タンパク質、異種及び相同リーダー配列との融合タンパク質、N末端メチオニン残基を含む又は含まない融合タンパク質、ポリエチレングリコール化タンパク質、並びに免疫学的タグ付き又はhisタグ付きタンパク質を含めて、ただしこれらだけに限定されない融合タンパク質も含む。かかる融合タンパク質は、エピトープとの融合体も含む。かかる融合タンパク質は、本発明のペプチドの多量体、例えば、ホモ2量体又はホモ多量体並びにヘテロ2量体及びヘテロ多量体を含み得る。この用語はペプチドアプタマーも含む。
【0054】
ポリヌクレオチドに関連した「特異的にハイブリッド形成する」という用語は、厳密な条件下でのハイブリド形成を指す。DNA/DNAとDNA/RNAの両方のハイブリド形成反応の厳密性を高める条件は周知であり、当分野で公表されている。厳密なハイブリド形成条件の例としては、4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中で約65−70℃のハイブリド形成、又は4×SSC+50%ホルムアミド中で約42−50℃のハイブリド形成、続いて1×SSC中で約65−70℃での1回以上の洗浄が挙げられる。
【0055】
「リガンド」という用語は、受容体を含めて、別の分子に結合する分子を指す。
【0056】
「宿主細胞」は、任意の組換えベクター又はポリヌクレオチドのレシピエントであり得る、又はレシピエントであった、各細胞又は細胞培養物である。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、自然、偶発的又は計画的な変異及び/又は変化のために、最初の親細胞と(形態又は全DNA補体が)必ずしも完全に同一ではない場合もある。宿主細胞としては、本発明の組換えベクター又はポリヌクレオチドを生体内又はインビトロで移入又は感染させた細胞などが挙げられる。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は「組換え宿主細胞」とも称する。
【0057】
「治療(treatment)」は、ヒトを含めたほ乳動物における疾患の治療薬の任意の投与又は適用を包含し、例えば、退行又は失われた、欠損した若しくは不完全な機能の復元若しくは修復又は非効率的なプロセスの刺激による、疾患の抑制、その進行の抑止又は疾患の軽減を含む。この用語は、所望の薬理的及び/又は生理的効果を得ることを含み、ヒトを含めたほ乳動物における病的症状又は障害のあらゆる処置(treatment)を包含する。その効果は、障害若しくは症候を完全若しくは部分的に防止する点で予防的であり得、及び/又は障害及び/又は障害に起因し得る有害感情(adverse affect)の部分的若しくは完全治癒の点で治療的であり得る。したがって、本発明は、治療と予防の両方を提供する。本発明は、(1)障害を起こしやすいが、まだ徴候のない対象における障害の発生又は再発の防止、(2)障害の進行の抑止などの障害の抑制、(3)例えば、失われた、欠損した若しくは不完全な機能の復元若しくは修復によって又は非効率的なプロセスの刺激によって、障害又はその症候の退行など、宿主が障害又はその症候にもはや罹患しないような、障害又は少なくともその関連症候の停止又は終結、又は(4)障害又はそれに付随する症候の軽減、緩和又は改善(改善は、炎症、とう痛及び/又は腫ようサイズなどのパラメータの大きさの少なくとも減少を指すのに広い意味で使用される。)を含む。
【0058】
「薬学的に許容される担体」とは、任意の従来のタイプの無毒の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料、処方助剤又は賦形剤を指す。薬学的に許容される担体は、使用投与量及び濃度でレシピエントに無毒であり、製剤の別の成分に適合する。
【0059】
「組成物」とは、薬学的に許容される担体などの担体又は賦形剤を通常含む混合物を指し、該担体又は賦形剤は、当分野で従来のものであり、治療、診断又は予防目的で対象に投与するのに適切である。「組成物」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドが細胞又は培地中に存在する、細胞培養物を含み得る。例えば、経口投与用組成物は、溶液剤、懸濁液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、洗口剤又は散剤を形成し得る。
【0060】
「疾患」とは、医療行為を必要とする、又は医療行為が望まれる、任意の症状、感染症、障害又は症候群を指す。かかる医療行為としては、治療、診断及び/又は防止が挙げられる。
【0061】
ペプチド
本発明のペプチドは、当分野で公知の方法によって発現され得る。細胞を用いた方法及び無細胞方法は、本発明のペプチドの生成に適切である。細胞を用いた方法は、一般に、核酸構築物を宿主細胞にインビトロで導入すること及び発現に適切な条件下で宿主細胞を培養すること、次いでペプチドを培地から若しくは(例えば、宿主細胞を破壊することによって)宿主細胞から又は両方から収穫することを含む。本発明は、当分野で周知である無細胞インビトロ転写/翻訳方法によってペプチドを生成する方法も提供する。
【0062】
適切な宿主細胞としては、例えば、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫及びほ乳動物細胞を含めて、原核細胞、真核細胞などが挙げられる。
【0063】
通常、異種ペプチドは、修飾であろうと無修飾であろうと、上述したように、それ自体で発現されることができ、又は融合タンパク質として発現されることができ、分泌シグナルだけでなく、分泌リーダー配列も含み得る。本発明の分泌リーダー配列は、ある種のタンパク質を小胞体(ER)に誘導することができる。ERは、膜結合タンパク質を別のタンパク質から分離する。タンパク質は、ERに置かれると、分泌小胞を含めた小胞、原形質膜、リソソーム及び別の細胞小器官への分布のために更にゴルジ装置に誘導されることができる。
【0064】
さらに、ペプチド部分及び/又は精製タグをペプチドに付加することができる。かかる領域は、ポリペプチドの最終調製前に除去することができる。とりわけ、分泌又は排出、安定性改善、及び精製の容易化のために、ペプチド部分をポリペプチドに付加することは、当分野ではよく知られた定常的技術である。適切な精製タグとしては、例えば、V5、ポリヒスチジン、アビジン及びビオチンが挙げられる。ビオチンなどの化合物とペプチドの複合化は、当分野で周知の技術によって実施することができる。(Hermanson ed. (1996) Bioconjugate Techniques; Academic Press)。ペプチドは、当分野で公知の技術によって、放射性同位体、毒素、酵素、蛍光標識、コロイド状金、核酸、ビノレルビン及びドキソルビシンと複合化することもできる。(Hermanson ed. (1996) Bioconjugate Techniques; Academic Press; Stefano et al.(2006)。
【0065】
本発明での使用に適切な融合パートナーとしては、例えば、フェチュイン、ヒト血清アルブミン、Fc及び/又はその断片の1個以上が挙げられる。ポリエチレングリコール複合体などの複合タンパク質も挙げられる。
【0066】
本発明のペプチドは、当分野で公知の技術によって化学合成することもできる(例えば、Hunkapiller et al., Nature, 310: 105 111(1984)、Grant ed. (1992) Synthetic Peptides, A Users Guide, W.H. Freeman and Co.、米国特許第6,974,884号))。例えば、ポリペプチドの断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成装置を用いて、又は当分野で公知の固相方法を使用して、合成することができる。
【0067】
また、必要に応じて、非古典的アミノ酸又は化学アミノ酸類似体を置換体又は付加体としてポリペプチド配列に導入することができる。非古典的アミノ酸としては、一般的アミノ酸のD異性体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸(b−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸など)、及びアミノ酸類似体全般が挙げられるが、これらだけに限定されない。また、アミノ酸は、D(右旋性)の場合もL(左旋性)の場合もある。
【0068】
本発明のポリペプチドは、化学合成及び組換え細胞培養物から標準方法によって回収及び精製することができる。標準方法としては、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられるが、これらだけに限定されない。一実施形態において、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に使用する。ポリペプチドが単離及び/又は精製中に変性するときには、周知のタンパク質再折りたたみ技術によって、活性な高次構造を再生することができる。
【0069】
本発明のペプチド又はペプチド模倣物は、種々の親水性ポリマーの1種類以上を用いて改変して、又は種々の親水性ポリマーの1種類以上と共有結合させて、ペプチドの溶解性及び循環半減期を増加させることができる。ペプチドとのカップリングに適切な非タンパク質親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールによって例示されるポリアルキルエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオキシアルケン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース及びセルロース誘導体、デキストラン並びにデキストラン誘導体が挙げられるが、これらだけに限定されない。一般に、かかる親水性ポリマーは、約500から約100,000ダルトン、約2,000から約40,000ダルトン又は約5,000から約20,000ダルトンの平均分子量を有する。ペプチドは、Zallipsky, S.(1995) Bioconjugate Chem., 6: 150−165、Monfardini, C., et al.(1995) Bioconjugate Chem. 6: 62−69、米国特許第4,640,835号、同4,496,689号、同4,301,144号、同4,670,417号、同4,791,192号、同4,179,337号、又は国際公開第95/34326号に記載の方法のいずれかによって、かかるポリマーを用いて誘導体化することができる又はかかるポリマーに結合させることができる。
【0070】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、薬学的に許容される担体、賦形剤及び希釈剤と一緒の処方で提供される。多種多様な担体、賦形剤及び希釈剤が当分野で公知である。これらの薬剤担体、賦形剤及び希釈剤としては、USP pharmaceutical excipients listing. USP and NF Excipients, Listed by Categories, p.2404−2406, USP 24 NF 19, United States Pharmacopeial Convention Inc., Rockville, Md.(ISBN 1−889788−03−1)に記載のものが挙げられる。薬学的に許容されるビヒクルなどの賦形剤、アジュバント、担体又は希釈剤は、公的に容易に利用可能である。さらに、pH調節・緩衝剤、浸透圧調節剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容される補助物質も、公衆に容易に利用可能である。
【0071】
適切な担体としては、水、デキストロース、グリセリン、食塩水、エタノール、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらだけに限定されない。担体は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、アジュバントなど、製剤の有効性を高める追加の薬剤を含むことができる。局所用担体としては、液体石油、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、エタノール(95%)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(5%)水溶液、ラウリル硫酸ナトリウム(5%)水溶液などが挙げられる。抗酸化剤、湿潤剤、粘度安定剤、類似薬剤などの他の材料も必要に応じて添加することができる。Azoneなどの経皮浸透賦活薬も含めることができる。
【0072】
医薬剤形においては、本発明の組成物は、薬学的に許容される塩の形で投与することができ又は単独で若しくは他の薬学的活性化合物との適切な会合及び組合せで使用することもできる。本発明の組成物は、可能な投与方法に従って処方される。
【0073】
治療方法
αvβ3インテグリン関連疾患としては、骨粗しょう症、骨腫よう又は癌増殖及びこれらに関連した症候、血管新生に関連した腫よう増殖及び転移、骨中の腫よう転移、悪性腫よう誘発性高カルシウム血症、血管新生に関連した眼疾患、パジェット病、リウマチ性関節炎、並びに骨関節炎が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0074】
本発明のペプチドは、治療を必要とする対象に、静脈内注射などの全身的注射によって投与することができ又は(部位が手術中に露出するときには部位に直接注射若しくは直接適用することによってなど)関連部位に注射若しくは適用することによって投与することができ又は例えば障害が皮膚の場合など局所適用によって投与することができる。
【0075】
本発明のペプチドは、単剤療法として使用することができる。或いは、本発明のペプチドは、標準投薬計画と併用して、αvβ3インテグリン関連疾患を治療することができる。
【0076】
薬剤は、経口、頬、経鼻、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、皮下、静脈内、動脈内、心臓内、脳室内、頭蓋内、気管内、鞘内投与など、又は移植若しくは吸入を含めて、種々の方法で投与することができる。したがって、本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、エアロゾル剤などの固体、半固体、液体又はガス状の製剤中に処方することができる。以下の方法及び賦形剤は、単なる例示に過ぎず、決して限定的なものではない。
【0077】
適切な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなど及びこれらの組合せである。また、必要に応じて、ビヒクルは、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などのわずかな量の補助的物質を含むことができる。かかる剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であり又は明らかである。投与する組成物又は製剤は、いずれにしても、治療対象において所望の状態を得るのに十分な量の薬剤を含む。
【0078】
本発明のペプチドは、植物油又は他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステル、プロピレングリコールなどの水系溶媒又は非水溶媒にペプチドを溶解、懸濁又は乳化することによって、必要に応じて、可溶化剤、等張化剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、防腐剤などの従来添加剤と一緒に、注射剤中に処方することができる。当分野では慣例のように、別の経口又は非経口送達処方を使用することもできる。
【0079】
「ディスインテグリン」とは、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列を含む、ヘビ毒から精製することができるポリペプチドファミリーを指す。いかなる理論又は機序にも拘泥するものではないが、RGDトリペプチドは、インテグリンに高親和性で結合して、インテグリンとRGD含有タンパク質の相互作用を遮断すると考えられる。したがって、ディスインテグリンは、接着機能を遮断し、血小板凝集阻害剤として作用する。
【0080】
略語「Rho」は、マレーマムシの毒液に由来するディスインテグリンである「ロドストミン」を意味する。ロドストミンは、インテグリンαIIbβ3、α5β1及びαvβ3に非特異的に結合し、血小板糖タンパク質αIIbβ3を遮断して血小板凝集を阻害することによって血液凝固時間を延長する。
【0081】
「ディスインテグリン変種」又は「ロドストミン変種」とは、ロドストミンなどの野生型ディスインテグリンから誘導された、改変された、又は変異したアミノ酸配列を含む機能的に活性なタンパク質、すなわちポリペプチド又はその任意の誘導体を指す。機能的に活性なディスインテグリン/ロドストミン変種は、インテグリンαvβ3活性に特異的に結合し、それを阻害することができる。本発明のディスインテグリン又はロドストミン変種は、本発明の目的に適切な任意の方法によって、一実施形態において部位特異的変異誘発法によって、別の一実施形態においてポリメラーゼ連鎖反応法によって、構築することができる。変種としては、対象ペプチドと比較して、挿入体、付加体、欠失体、置換体などが挙げられる。ポリペプチド配列の変種としては、生物学的に活性な多形変種が挙げられる。
【0082】
本発明のペプチドは、天然及び非天然アミノ酸を含み得る。ペプチドは、Dアミノ酸、Dアミノ酸とLアミノ酸の組合せ、及び種々の「デザイナー」又は「合成」アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸など)を含み、特別な性質を有することができる。さらに、ペプチドは環式であり得る。ペプチドは、特別な高次構造モチーフを導入するために、非古典的アミノ酸を含むことができる。任意の公知非古典的アミノ酸を使用することができる。アミノ酸類似体及びペプチド模倣物をペプチドに組み入れて、LL−Acp(LL−3−アミノ−2−プロペニドン(propenidone)−6−カルボン酸)、βターン誘発性ジペプチド類似体、βシート誘発性類似体、βターン誘発性類似体、αヘリックス誘発性類似体、γターン誘発性類似体、Gly−Alaターン類似体、アミド結合等電子体、トレトラゾル(tretrazol)などを含めて、ただしこれらだけに限定されない特定の二次構造を誘導又は優先することができる。
【0083】
末端アミノ又はカルボキシル基が存在しないように、デスアミノ又はデスカルボキシ残基をペプチド末端に組み入れ、プロテアーゼに対する感受性を低下させ、又は高次構造を限定することができる。C末端官能基としては、アミド、アミド低級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、その低級エステル誘導体、薬学的に許容されるその塩などが挙げられる。
【0084】
「IC50」又は「半値抑制濃度」という用語は、Rho又はその変種の受容体の50%阻害に必要なRho又はその変種の濃度を指す。IC50は、変種の受容体に対する変種の親和性など、生物学的過程を50%阻害するのに必要なRho又はその変種の量の尺度である。
【0085】
使用する「治療有効量」という用語は、生きている対象に投与したときに、生きている対象に所望の効果をもたらす量を指す。例えば、生きている対象に投与する本発明のディスインテグリン又はRho変種の有効量は、インテグリンαvβ3媒介性疾患を防止及び/又は治療する量である。正確な量は、治療目的に応じて決まり、当業者が公知技術を用いて確認することができる。当分野で公知のように、全身送達と局所送達、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作用及び重症度に対する調節が必要な場合もあり、それは当業者が定常的な実験法によって確認することができる。
【0086】
「受容体拮抗物質」という用語は、受容体への作動物質の結合を遮断することによって受容体の機能を阻害する受容体結合リガンド又は作動物質の結合を許容するが、受容体を活性化する作動物質の能力を阻害する受容体結合リガンドを指す。
【0087】
「実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性」という用語は、インテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体の遮断において、野生型ロドストミン又は他のディスインテグリンと比較して1/5以下の低活性を指す。例えば、αIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性の低下を計算するには、フィブリノーゲンなどのマトリックスタンパク質に対するインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1結合の阻害に対するロドストミン変種のIC50をRhoのIC50と比較する。
【0088】
「RGDモチーフ変種」という用語は、ロドストミン中のRGDを含む配列など、対応する野生型配列のRGD配列にまたがるアミノ酸配列中の改変を含むペプチドを指す。「RGDモチーフ変種」の例としては、48ARGDDP5348PRLDMP5348PRIDMP53及び48ARLDDL53が挙げられる。
【0089】
「RD」という用語は、RGDモチーフ変種48PRLDMP53を有するロドストミン変種を指す。
【0090】
「PGP」という用語は、RGDモチーフ変種48PRGDGP53を有するロドストミン変種を指す。
【0091】
ARLDDLという用語は、RGDモチーフ変種48ARLDDL53を有するロドストミン変種を指す。
【0092】
「αIIbβ3及び/又はα5β1受容体と比較したインテグリンαvβ3の抑制性選択性」という用語は、αIIbβ3及び/又はα5β1受容体の阻害に対する変種のIC50とαvβ3受容体の阻害に対する変種のIC50との比として表される、インテグリンαvβ3とαIIbβ3及び/又はα5β1受容体に対する変種の結合選択性を指す。
【0093】
「出血時間の延長における実質的に低い活性」という用語は、本明細書に記載の出血時間実験によって測定して、血液凝固を統計的に有意に阻害する能力の低下を指す。
【0094】
「ポリエチレングリコール化RD」という用語は、RDタンパク質のポリエチレングリコール化生成物を指す。
【0095】
「アルブミン−RD又はHSA−RD」という用語は、RDタンパク質のヒトアルブミン複合生成物を指す。
【0096】
本発明の概要
本発明は、選択的αvβ3インテグリン拮抗物質であるディスインテグリン変種に関する。RD関連化合物などのディスインテグリン変種は、破骨細胞分化をインビトロで強力に阻害する。ディスインテグリン変種は、動物試験において、破骨細胞吸収活性も阻害し、破骨細胞形成の卵巣切除誘発性増加も抑制する。また、RDは、骨中のヒト前立腺及び乳癌細胞の腫よう増殖を阻害する。悪性腫よう誘発性高カルシウム血症も、RD関連タンパク質によって効果的に遮断された。(変形性骨炎としても知られる)パジェット病は、典型的には、骨組織の不規則な分解と形成のために骨が増大及び変形する慢性骨障害である。ビスホスホナートは、パジェット病の治療に認可された。骨関節炎は、破骨細胞活性の増加にも関係する。類似の作用機序に基づくと、RD誘導体は、これらの骨障害の治療にも有効なはずである。30mg/kgの極めて多量のRD又はPGPの静脈内注射は、マウスの生存に影響しなかった(n=3)。また、PGPの6週間の長期投与(I.V.、0.5mg/kg/日)は、クレアチニン、GOT及びGPTの血清レベルに影響せず、腎臓及び肝臓に対する副作用がないことを示唆している。したがって、RD及びその誘導体は、骨粗しょう症、骨腫よう、悪性腫よう誘発性高カルシウム血症、パジェット病、リウマチ性関節炎、骨関節炎及び血管新生に関連した眼疾患の治療薬候補である。
【0097】
ヘビ毒の多くの種類は、RGDドメインを含むタンパク質を含む。これらのRGDドメイン含有タンパク質は、ディスインテグリンと呼ばれる。RGDドメインにまたがる配列の改変により、別の種類のインテグリンに対する結合親和性が低いが、αvβ3インテグリンに対する選択性が高い、極めて独特のポリペプチド変種が生成した。ロドストミン変種を含めたディスインテグリン変種は、とりわけ、骨粗しょう症、骨中の腫よう増殖の抑制、及び血管新生に関連した眼疾患の治療薬候補であることが判明した。さらに、少なくとも1個のアミノ酸置換を含むRGDモチーフ領域を有するロドストミン変種を含めたディスインテグリン変種は、αvβ3インテグリンの選択的拮抗物質を開発するための貴重なツールであり得る。
【0098】
本発明の一態様は、インテグリンαvβ3受容体拮抗活性を有し、野生型ディスインテグリンよりも低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性を有する、ポリペプチドである。このポリペプチドは、実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性を有するポリペプチドをもたらす改変アミノ酸配列をコードする改変ディスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされる。このポリペプチドは、ポリエチレングリコール化することができる又はアルブミンと複合化することができる。
【0099】
ディスインテグリンヌクレオチド配列は、ヘビ毒に由来し得る。本発明によれば、ディスインテグリンとしては、アルボラブリン(Cryptelytrops albolabris)、アプラギン(Agkistrodon piscivorus piscivorus)、バシリシン(Crotalus basiliscus)、バトロキソスタチン(Bothrops atrox)、ビチスタチン(Bitis arietans)、セレベリン(Crotalus oreganus cerberus)、セラスチン(Crotalus cerastes cerastes)、クロタトロキシン(Crotalus atrox)、ズリシン(Crotalus durissus durissus)、エレガンチン(Protobothrops elegans)、フラボリジン(Trimeresurus flavoviridis)、フラボスタチン(Trimeresurus flavoviridis)、ハリシン(Gloydius blomhoffi)、ハリスタチン(Gloydius halys)、ジャララシン(Bothrops jararaca)、ジャラスタチン(Bothrops jararaca)、キストリン(Calloselasma rhodostoma)、ラチェシン(Lachesis muta muta)、ルトシン(Crotalus oreganus lutosus)、モロシン(Crotalus molossus molossus)、サルモシン(Gloydius blomhoffi brevicaudus)、サキサチリン(Gloydius halys)、テルゲミニン(Sistrurus catenatus tergeminus)、トリメスタチン(Trimeresurus flavoviridis)、トリムクリン(Protobothrops mucrosquamatus)、トリムターゼ(Protobothrops mucrosquamatus)、ウスリスタチン(Gloydius ussuriensis)、ビリジン(Crotalus viridis)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0100】
本発明の別の一態様は、ロドストミンの変種である単離ポリペプチドであり、ロドストミンは、配列番号1によって定義されたアミノ酸配列を含み、変種はRGDモチーフ変種を含む。
【0101】
本発明の一実施形態において、RGDモチーフ変種は、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0102】
本発明の別の一態様は、配列番号1のアミノ酸48、50、52又は53に対応する位置における4個のアミノ酸置換の1、2、3個を更に含む、配列番号29のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0103】
本発明の別の一態様は、配列番号1の位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn、並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択されるアミノ酸置換を含むポリペプチドである。
【0104】
本発明の別の一態様は、配列番号43−56から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドである。
【0105】
例えば、具体的に、本発明の別の一実施形態において、RGDモチーフ変種は、配列番号29で示される野生型RGDモチーフのGly50又はMet52に対応する残基における少なくとも1個のアミノ酸置換を含み得る。少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号36−37のLeu50、配列番号39のIle50、配列番号40のHis50、配列番号41のAsn52、又は配列番号42のGly52に対応する残基において起こる。
【0106】
本発明の別の一実施形態において、RGDモチーフ変種は、配列番号29で示される野生型RGDモチーフのPro48とMet52、又はMet52とPro53に対応する残基における少なくとも2個のアミノ酸置換を含み得る。少なくとも2個のアミノ酸置換は、配列番号30のAla48とAsp52、又は配列番号35のAsp52とMet53に対応する残基であり得る。
【0107】
本発明の更に別の一実施形態において、RGDモチーフ変種は、配列番号29で示される野生型RGDモチーフのPro48、Met52及びPro53、又はGly50、Met52及びPro53に対応する残基における少なくとも3個のアミノ酸置換を含み得る。少なくとも3個のアミノ酸置換は、配列番号31のAla48、Asp52及びVal53、配列番号32のAla48、Asp52及びLeu53、配列番号34のAla48、Asp52及びMet53、配列番号37のLeu50、Asp52及びLeu53に対応する残基であり得る。
【0108】
本発明の更に別の一実施形態において、RGDモチーフ変種は、配列番号29で示される野生型RGDモチーフのPro48、Gly50、Met52及びPro53に対応する残基における少なくとも4個のアミノ酸置換を含み得る。少なくとも4個のアミノ酸置換は、配列番号38のAla48、Leu50、Asp52及びLeu53に対応する残基であり得る。
【0109】
本発明の別の一態様は、配列番号44−56から選択される改変ロドストミンヌクレオチド配列を有するDNAによってコードされる単離ポリペプチドである。このポリペプチドは、αIIbβ3及び/又はα5β1に対する親和性がロドストミンの約1/5、1/50又は1/100以下である。本発明の一実施形態において、ポリペプチドは、αIIbβ3及び/又はα5β1インテグリンに対する親和性がロドストミンの約1/200以下である。本発明の別の一実施形態において、ポリペプチドは、αIIbβ3及び/又はα5β1インテグリンに対する親和性がロドストミンの約1/1000又は1/2000以下である。本発明の別の一実施形態において、ポリペプチドは、血小板に対する親和性がロドストミンの約1/5、1/50、1/100、1/1000又は1/2000以下である。本発明の更に別の一実施形態において、ポリペプチドは、血液凝固時間の延長活性がロドストミン又は野生型ディスインテグリンよりも実質的に低い。
【0110】
本発明の更に別の一態様は、本発明のポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物である。
【0111】
本発明の更に別の一態様は、ヒトを含めたほ乳動物におけるαvβ3インテグリン関連疾患の治療及び/又は防止にディスインテグリン変種を使用する方法である。この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与する段階を含む。その中のポリペプチドは、インテグリンαvβ3受容体拮抗活性を有し、野生型ディスインテグリンよりも実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はインテグリンα5β1受容体遮断活性を有し、それによってほ乳動物におけるαvβ3インテグリン関連疾患を治療及び/又は防止する。このポリペプチドは、実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はインテグリンα5β1受容体遮断活性を有するポリペプチドをもたらす改変ディスインテグリンアミノ酸配列をコードする改変ディスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされる。この方法に使用されるポリペプチドは、ポリエチレングリコール化することができる又はアルブミンと複合化することができる。
【0112】
上述したように、ディスインテグリンヌクレオチド配列は、ヘビ毒に由来し得、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択することができる。
【0113】
本発明の一実施形態において、この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与する段階を含み、ポリペプチドは配列番号1のアミノ酸配列を含み、変種は、RGDモチーフ変種を含む。
【0114】
本発明の別の一実施形態において、この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与する段階を含み、ポリペプチドは、配列番号1によって定義されたアミノ酸配列を含むロドストミンの変種であり、変種は、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を有するRGDモチーフ変種を含む。
【0115】
本発明の更に別の一実施形態において、この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与する段階を含み、ポリペプチドは、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0116】
本発明の一実施形態において、本発明のポリペプチドは、αvβ3インテグリン関連疾患の治療及び/又は防止に使用される。αvβ3インテグリン関連疾患としては、骨粗しょう症、骨腫よう又は癌増殖及びそれに関連した症候、血管新生に関連した腫よう増殖及び転移、骨中の腫よう転移、悪性腫よう誘発性高カルシウム血症、血管新生に関連した眼疾患、パジェット病、リウマチ性関節炎、並びに骨関節炎が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0117】
本発明の別の一実施形態において、本発明のポリペプチドは、血管新生に関連した眼疾患の治療及び/又は防止に使用される。該眼疾患としては、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視及び未熟児網膜症が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0118】
本発明の更に別の一実施形態において、本発明のポリペプチドは、骨粗しょう症の治療及び/又は防止に使用される。骨粗しょう症は、閉経後エストロゲン欠乏症、続発性骨粗しょう症、リウマチ様関節炎、卵巣切除、パジェット病、骨癌、骨腫よう、骨関節炎、破骨細胞形成の増加、及び破骨細胞活性の増加から選択される病的症状を伴う。また、骨粗しょう症としては、卵巣切除誘発性骨粗しょう症又は骨量減少、及び閉経後骨粗しょう症又は骨量減少が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0119】
本発明の更に別の一態様は、ヒトを含めたほ乳動物における、卵巣切除又は閉経後の骨粗しょう症により誘発された生理学的変化の治療及び/又は防止のためのディスインテグリン変種の使用方法である。この方法は、インテグリンαvβ3受容体拮抗活性を有し、野生型ディスインテグリンよりも実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性を有し、それによってほ乳動物における卵巣切除により誘発された生理学的変化を治療及び/又は防止する単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量をそれを必要とするほ乳動物に投与することを含む。ポリペプチドは、実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性を有する前記ポリペプチドをもたらす改変アミノ酸配列をコードする改変ディスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされる。ディスインテグリンヌクレオチド配列は、ヘビ毒に由来し得、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンの1種類から選択することができる。
【0120】
ほ乳動物における卵巣切除誘発性又は閉経後の生理学的変化の治療及び/防止に使用されるポリペプチド変種は、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含むRGDモチーフ変種を含み得る。
【0121】
本発明の一実施形態において、この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与することを含み、ポリペプチド変種は、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む。別の一実施形態において、ポリペプチド変種は、ポリエチレングリコール化される又はアルブミンと複合化される。
【0122】
本発明の更に別の一態様は、ヒトを含めたほ乳動物における骨中の腫よう細胞増殖及びそれに関連した症候の抑制及び/又は防止にディスインテグリン変種を使用する方法である。この方法は、インテグリンαvβ3受容体拮抗活性を有し、野生型ディスインテグリンよりも実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性を有し、それによってほ乳動物における骨中の腫よう細胞増殖及びそれに関連した症候を抑制及び/又は防止する単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を治療を必要とするほ乳動物に投与することを含む。ポリペプチドは、改変アミノ酸配列をコードし、それによって実質的に低いインテグリンαIIbβ3及び/又はα5β1受容体遮断活性を有する前記ポリペプチドをもたらす改変ディスインテグリンヌクレオチド配列によってコードされる。
【0123】
ディスインテグリンヌクレオチド配列は、ヘビ毒に由来し得、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択することができる。
【0124】
骨中の腫よう細胞増殖に関連した病理学的症候としては、破骨細胞活性の増加、骨吸収の増加、骨病変、高カルシウム血症、体重減少、これらの任意の組合せなどが挙げられる。骨中の腫よう細胞増殖は、前立腺癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、すい癌又は骨髄腫から生ずる骨癌細胞及び転移癌細胞を含む。
【0125】
本発明の一実施形態において、この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与することを含み、ポリペプチドはロドストミンの変種であり、ロドストミンは、配列番号1によって定義されたアミノ酸配列を含み、変種はRGDモチーフ変種を含む。RGDモチーフ変種は、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0126】
本発明の別の一実施形態において、この方法は、治療を必要とするほ乳動物に単離ポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与する段階を含み、ポリペプチドは、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む。ポリペプチド変種は、ポリエチレングリコール化することができる又はアルブミンと複合化することができる。
【0127】
本発明の更に別の一態様は、本発明のポリペプチドを製造する方法であり、この方法は、(a)前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換して、1種類以上の形質転換体を得る段階、(b)形質転換体に挿入された前記DNA構築物の1個以上の複製物を有する形質転換体を選択する段階、(c)形質転換体を培地中で増殖させて、その細胞集団を増幅する段階、(d)形質転換細胞を収穫する段階、(e)収集した形質転換細胞をアミノ酸を含まない培地中で増殖させる段階、及び(g)上清を収集して前記ポリペプチドを得る段階を含む。
【0128】
上記段階(e)は、メタノールを培地に添加して、形質転換細胞中でポリペプチド発現を誘発する段階を更に含み得る。一実施形態において、段階(g)は、カラムクロマトグラフィーを実施して、前記ポリペプチドを得る段階を更に含み得る。更なる一実施形態において、上記方法は、HPLCを実施して、精製された単離ポリペプチドを得る段階を更に含み得る。
【0129】
本発明のこれら及び他の態様をより具体的に以下に記述する。
【0130】
ヒト組換えRANKL及びM−CSFをR&D Systems(Minneapolis、MN)から購入した。I型コラーゲンのC末端テロペプチドELISAキットをCross Laps(Herlev、Denmark)から入手した。別のすべての化学物質をSigmaから入手した。
【実施例1】
【0131】
ロドストミン及び変種をコードするDNAの構築
ロドストミンをクローン化し、ベクターpGEX−2KS[20]中でテンプレートとして発現させた。RhoをコードするDNAは、ピキア パストリス(Pichia pastoris)において優先的に用いられるコドンで構成された。精製を容易にするためにEco R1認識及び6個のヒスチジン残基を有するセンスプライマー5’−GAATTCGAATTCCATCATCATCATCATCATCATGGTAAGGAATGTGACTGTTCTT−3’(Rho−Pic−1、配列番号3)を用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によってRho DNAを増幅した。アンチセンスプライマーは、Sac II認識及びTCA(又はTTA)終止コドンを有する5’−CCGCGGCCGCGGTCAGTGGTATCTTGGACAGTCAGC−3’又は5’−CCGCGGCCGCGGTTAGTGGTATCTTGGACAGTCAGC−3’(Rho−Pic−2、配列番号4)である。PCR産物を精製し、次いで酵母組換えベクターpPICZαAのEco R1及びSac II部位に連結した。組換えプラスミドを用いてDH5α系統を形質転換し、低塩LB(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、1.5%寒天、pH7.0)及び25μg/ml抗生物質Zeocinを用いてコロニーを寒天板上で選択した。
【0132】
ロドストミン変種を合成し、Eco RI及びSac II制限酵素切断部位を含むプライマーを用いた重複オリゴヌクレオチド戦略を使用してポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって増幅させた。変種の合成又は確認に用いた種々のプライマーのヌクレオチド配列を表1に示す。RD−HSA融合タンパク質を類似の手順によって構築した。ヒト血清アルブミンのcDNAをInvitrogenから購入し、アルブミンの構造遺伝子をRho遺伝子のN末端においてGSGSGSリンカーアミノ酸配列と融合させ、N末端において6個のヒスチジン残基と融合させた。
【0133】
【表1】

【0134】
備考:プライマーα因子を配列決定プライマーとして用いた。5’−AOX1&3’−AOX1プライマーを用いて、挿入DNAの有無について調べた。
【0135】
ポリメラーゼ連鎖反応法を95℃1分間、55℃1分間、次いで72℃1分間の25サイクル実施した。プライマー混合物を用いて、複数の変異部位も作製した。PCR産物を2%アガロースゲル上で分離させ、臭化エチジウム染色によって可視化した。所望のPCR産物を精製し、次いで酵母導入ベクターpPICZαAのEco RI及びSac II部位に連結した。組換えプラスミドを用いて、エシェリキア コリ(Escherichia coli)XL1−blue系統を形質転換し、抗生物質Zeocinを含む寒天板上でコロニーを選択した。E.コリXL1−blueコロニーを採取し、プラスミドDNAを単離し、挿入断片の配列決定によって配列を確認した。表2に、ロドストミン及び種々の変種をコードするDNAの合成に用いたプライマー配列番号を示す。
【0136】
【表2】

【実施例2】
【0137】
ロドストミン及び変種のタンパク質発現及び精製
ピキアにおけるロドストミン及びその変種のタンパク質発現を、軽微な改変を加えたPichia EasyComp(商標)Kitのプロトコルに従って実施した。手短に述べると、ロドストミン又はその変種をコードするDNAを含むプラスミド合計10μgを精製し、Sac Iで消化して、プラスミドを線状にした。Invitrogen(登録商標)製Pichia EasyComp(商標)キットを用いて、熱ショック法によって、ピキア系統X33を線状構築物で形質転換した。形質転換体は、1回の組換え(single crossover)によって5’AOX1座において統合された。PCRによってピキア組み込み体を分析して、Rho遺伝子がピキアゲノムに組み込まれたかどうか確認し、細胞をLyticase(Sigma)によって溶解させた。YPD(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース及び2%寒天)及び100μg/ml Zeocinを含む寒天板上でコロニーを選択した。Rho遺伝子挿入物の複数の複製物を含む幾つかのクローンを選択して、最高のRhoタンパク質発現を示すクローンを採取した。
【0138】
組換えRho及びその変種を以下のように生成させた。選択したコロニーを、100μg/ml Zeocinを含むYPD培地(1%酵母エキス、2%ペプトン及び2%デキストロース)中で30℃で増殖させた。48時間後、細胞を遠心分離によって収集し、(硫酸アンモニウムを含み、アミノ酸を含まない1.34%酵母窒素ベースと4×10−5%ビオチンとを含む)最小メタノール培地1リットル中で増殖させた。メタノール合計1%を24時間ごとに1回添加して、Rho又は変種発現を2日間誘導した。上清を遠心分離によって収集し、5リットル緩衝剤A(5mM EDTA、8M尿素及び10mMリン酸Na緩衝剤、pH7.7)で2回透析した。最終溶液をニッケル−キレートカラムに充填し、200mMイミダゾール勾配で溶出させた。組換えロドストミン及びその変種をHPLC(逆相C18 HPLC)によって更に精製した。精製組換えRhoは、トリシン−SDS−PAGEによって判断して、95%を超える純度であった。
【0139】
続いて、Rho及びその変種をエレクトロスプレー質量分析にかけて、分子量を調べた。Rho及び変種のRGDモチーフのアミノ酸配列を表3に示す。
【0140】
【表3】

【実施例3】
【0141】
出血時間に対するRD及びその誘導体の効果
出血時間を以下のように測定した。マウスにトリクロロアセトアルデヒド(200mg/kg)を用いて麻酔し、軽微な改変を加えた既報の方法によって出血時間を測定した[21]。食塩水又はタンパク質をマウス(ICR、雄性、平均体重23.5±1.8g)の尾静脈を介して静脈内注射した。注射5分後にマウスの尾先端から0.5mmを鋭く切った。次いで、尾を食塩水充填ビーカーに即時に浸漬し、37℃で維持し、出血時間を測定した。
【0142】
図1は、マウスにおける尾出血時間に対するRD及びARLDDLタンパク質の効果を示す。HSA−RD(5mg/kg)の食塩水、RD、ARLDDL、ロドストミン(各0.6mg/kg)の静脈内投与5分後に尾出血時間を測定した。ロドストミン(0.5mg/kg)の静脈内注射は、マウスにおける凝固時間の延長に顕著な効果を発揮した。しかし、αvβ3インテグリンに選択性を示すRDとARLDDLの両方(0.5mg/kg)は、ロドストミンに比べて、マウスにおける凝固時間にわずかしか影響を及ぼさなかった。結果を平均±S.E.M(n=6)で表す。
【実施例4】
【0143】
血小板凝集アッセイ
少なくとも2週間投薬を受けていない健康なドナーから得られた静脈血(9部)試料を3.8%クエン酸ナトリウム(1部)中に収集した。血液試料を150×gで10分間遠心分離して、多血小板血しょう(PRP)を得、5分間放置し、PRPを収集した。乏血小板血しょう(PPP)を残りの血液から2000×gで25分間遠心分離して調製した。PPP血小板数を血液分析計によって測定し、250,000血小板/μlに希釈した。PRP 190μlとRho又はPBS緩衝剤10μlの溶液をHema Tracer 601血小板凝集計中で37℃で5分間温置した。200μMアデノシン二リン酸(ADP)10マイクロリットルを更に添加して、光透過によって血小板凝集の応答をモニターした。
【実施例5】
【0144】
細胞接着阻害アッセイ
細胞接着阻害アッセイを既報のように実施した[27]。手短に述べると、96ウェルのImmulon−2マイクロタイタープレート(Costar、Corning、USA)のウェルに、基質を含むリン酸緩衝食塩水(PBS:10mMリン酸緩衝剤、0.15M NaCl、pH7.4)100μlを50−500nMの濃度で塗布し、4℃で終夜温置した。基質及びその塗布濃度は、フィブリノーゲン(Fg)200μg/ml、ビトロネクチン(Vn)50μg/ml及びフィブロネクチン(Fn)25μg/mlであった。各ウェルを熱変性1%ウシ血清アルブミン(BSA、Calbiochem)200μlと一緒に室温(25℃)で1.5時間温置することによって、非特異的タンパク質結合部位をブロックした。熱変性BSAを廃棄し、各ウェルをPBS 200μlで2回洗浄した。
【0145】
αvβ3(CHO−αvβ3)及びαIIbβ3(CHO−αIIbβ3)インテグリンを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)100μl中で維持した。インテグリンαvβ3(CHO−αvβ3)及びαIIbβ3(CHO−αIIbβ3)を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、Dr. Y. Takada(Scripps Research Institute)の好意により提供された。ヒト赤白血病K562細胞をATCCから購入し、5%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地中で培養した。対数期増殖したCHO及びK562細胞をトリプシン処理によって剥離し、それぞれ3×10及び2.5×10細胞/mlでアッセイに使用した。Rho及びその変種を培養細胞に添加し、37℃、5%COで15分間温置した。Rho及びその変種を濃度0.001−500μMで阻害剤として使用した。次いで、処置した細胞を被覆プレートに添加し、37℃、5%COで1時間反応させた。次いで、温置溶液を廃棄し、PBS 200μlで2回洗浄して、非接着細胞を除去した。結合細胞をクリスタルバイオレット染色によって定量した。手短に述べると、ウェルを10%ホルマリン100μlで10分間固定し、乾燥させた。次いで、0.05%クリスタルバイオレット50マイクロリットルをウェルに室温で20分間添加した。各ウェルを蒸留水200μlで4回洗浄し、乾燥させた。着色溶液(50%アルコール及び0.1%酢酸)150μlを添加して着色した。生じた吸光度を600nmで読んだ。読みは、接着細胞数と相関した。阻害を、阻害%=100−[OD600(ロドストミン変種処置試料)/OD600(未処置試料)]×100として定義した。
【実施例6】
【0146】
インテグリンαvβ3、αIIbβ3及びα5β1に対するRD及びその誘導体の阻害効果
インテグリン結合に対するRD及びその誘導体のIC50を、上記実施例5に記載の細胞接着アッセイによって得た。手短に述べると、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲンなどのマトリックスタンパク質を、実施例5に記載のように、一定濃度でマイクロタイタープレートに塗布し、インテグリンを発現する細胞にRho及びその変種を0.001−500μMの異なる濃度で添加してIC50を得た。IC50が低いほど、変種の特異性又は作用強度が高い。
【0147】
RhoのRGDモチーフの改変は、Rhoの生物活性に独特の効果を示した。すなわち、配列改変の結果として、マトリックスタンパク質に対するインテグリンαIIbβ3又はα5β1の結合を阻害する活性が低下し、インテグリンαvβ3に対する選択性が増加した。表4は、Rho及びその誘導体による細胞接着阻害のIC50の結果である。
【0148】
【表4】

【0149】
ロドストミン変種は、αIIbβ3及び/又はα5β1に対する親和性がRhoよりも極めて低い(表4)。表4に示すように、例えば、インテグリンαIIbβ3及びα5β1の阻害におけるRD(すなわち、PRLDMP)のIC50は、Rhoのそれぞれ104倍及び10倍を超えて増加した。さらに、インテグリンαIIbβ3及びα5β1の阻害におけるARLDDLのIC50は、Rhoの2000倍を超えて増加した。αIIbβ3結合に対するポリエチレングリコール化RD及びヒトアルブミン複合化RDのIC50は、Rhoのそれぞれ113.7及び129.9倍増加した(表5)。したがって、血小板に対する変種の親和性は、Rhoよりも顕著に低下した(表5)。
【実施例7】
【0150】
破骨細胞形成に対するRD及びその誘導体の効果
破骨細胞は、骨髄造血前駆体から分化した特殊化した単球/マクロファージファミリーメンバーである。M−CSF(20ng/ml)及びsRANKL(50ng/ml)の存在下で破骨細胞前駆体を8日間培養すると、TRAPなどの成熟表現型マーカーの獲得を特徴とする、多核の大きい成熟破骨細胞が形成された。骨髄の培養造血細胞からの破骨細胞形成方法、並びに破骨細胞形成に対するRD及びその誘導体の効果を以下のように検討した。
【0151】
6−8週齢SDラットから大腿骨を取り出し、20mM HEPES及び10%熱失活FCS、2mMグルタミン、ペニシリン(100U/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したa−MEMを骨髄腔に流して、骨髄細胞を調製した。非接着細胞(造血細胞)を収集し、24時間後に破骨細胞前駆体として使用した。ヒト組換え可溶性RANKL(50ng/ml)及びネズミM−CSF(20ng/ml)の存在下で、24ウェルプレート中に1×10細胞/ウェル(0.5ml)で細胞を蒔いた。培地を3日ごとに交換した。8日目に、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)のアッセイによって破骨細胞形成を確認した。手短に述べると、接着細胞をリン酸緩衝食塩水中の10%ホルムアルデヒドで3分間固定した。エタノール/アセトン(50:50v/v)で1分間処理後、細胞表面を風乾し、0.01%ナフトールAS−MXホスファート(Sigma)及び0.03%ファーストレッドバイオレットLB塩(Sigma)を含む酢酸緩衝剤(0.1M酢酸ナトリウム、pH5.0)中で50mM酒石酸ナトリウムの存在下で室温で10分間温置した。3個を超える核を含むTRAP陽性多核細胞を計数することによって、各ウェルの破骨細胞様TRAP陽性細胞を採点した。
【0152】
RD誘導体は、破骨細胞の分化を著しく阻害し、αvβ3に対するその抑制活性と相関した(表5)。一方、AKGDWN及びPRGEMPは、インテグリンαvβ3及び破骨細胞分化の阻害にそれほど有効ではなかった(表5)。
【0153】
【表5】

【実施例8】
【0154】
卵巣切除誘発性骨粗しょう症
雌性スプレーグドーリーラット(3月齢、270−290g)又はICRマウス(4週齢、22−28g)をこの試験に用いた。トリクロロアセトアルデヒド麻酔下でラット又はマウスの両側の卵巣を切除し(OVX)、対照ラットを比較のために偽手術した(Sham)。動物をすべて室温(22±1℃)及び12時間明暗サイクルの制御条件下で維持した。動物にPurina Laboratory Rodent Diet(PMI;St.Louis、MO)(0.95%カルシウム)及び水を自由に摂らせた。ラットの体重を毎週記録した。
【実施例9】
【0155】
骨密度(BMP)及び骨塩量(BMC)の分析
実験の最後に、ラット又はマウスを断頭して屠殺した。けい骨及び大腿骨を取り出し、軟部組織を除去し、けい骨及び大腿骨の長さ及び重量をWeinreb等[26]によって記述されたように精密ノギス(±0.05mm)で測定した。けい骨のBMD及びBMCを二重エネルギーX線吸収測定器(DEX、XR−26; Norland、Fort Atkinson、WI)によって測定した。小対象測定用モードを使用した。Chih−Hsin et al., ”Enhancement of Fibronectin Fibrillogenesis and Bone Formation by Basic Fibroblast Growth Factor via Protein Kinase C−Dependent Pathway in Rat Osteoblasts,” Mol. Pharmacol: 66: 440−449, (2004)を参照されたい。腰椎ファントムについてBMDを1年以上毎日測定して0.7%の変動係数が計算された[22、23]。吸光光度計によってけい骨及び大腿骨全体を走査し、BMD及びBMCを測定した。
【実施例10】
【0156】
骨の組織形態計測
けい骨を4%ホルムアルデヒドで固定し、次いで12%EDTAを用いて脱灰し、エタノール溶液、次いでアセトンで脱水し、パラフィンで包埋した。連続切片(5mm)を長軸方向に切断し、マイヤーのヘマトキシリン−エオシン溶液で染色した。成長板及び近位けい骨の像をオリンパス顕微鏡によって写真撮影した。骨体積を二次海綿骨において画像解析ソフトウェア(Image−pro plus 3.0)を用いて測定した。二次海綿骨は、一次海綿骨の下に位置し、より大きい骨梁のネットワークを特徴とする。破骨細胞数を測定するために、切片を酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)で染色した。
【実施例11】
【0157】
生体力学的三点曲げ試験
材料試験システム(MTS−858、MTS System Inc.、Minneapolis、MN)において三点曲げ試験を実施して、骨組織の機械的性質を測定した。2個の支持点間の距離は20ミリメートルであり、変形速度は1mm/minであった。荷重/変形曲線をコンピュータに入力し、Team 490ソフトウェア(バージョン4.10、Nicolet Instrument Technologies Inc.、Madison、WI)によって分析した。断面パラメータを写真から測定して、断面慣性モーメントの計算に用いた。断面が楕円形であると仮定して断面慣性モーメントを計算した[24]。
【0158】
I=π[(ab3×(a×2t)(b×2t)3)/64
式中、aは内外方向の断面幅であり、bは体軸方向の断面幅であり、tは皮質の厚さの平均である。これらのパラメータはすべてイメージソフトウェアImage Pro Plus 3.0 for Windows(登録商標)(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)を用いて得られた。最大応力、極限応力及び弾性率(ヤング率)を以下の式によって計算した[25]。
σ=FLc/4l
E=F/d ∋ L3/48l
式中、σは極限応力であり、cは質量中心からの距離であり(上述したように1/2bに等しい。)、Fは負荷荷重(N)であり、dは変位(mm)であり、Lは、折り曲げ具の2個の支持点間の距離(mm)である。また、極限応力におけるエネルギーを、それぞれの応力ひずみ曲線下面積を計算することによって測定した。
【実施例12】
【0159】
マウスにおけるRD誘導体によるOVX誘発性骨量減少の抑制
骨量減少に対するRD誘導体の効果を検討するために、実施例8に記載のように、雌性マウスにおいて卵巣切除(OVX)によって骨粗しょう症を誘発させた。OVXマウスは、全身のBMD及びBMCの減少を示した。RD誘導体(I.M.、1.5mg/kg/隔日)又はアレンドロナート(p.o.、1.5mg/kg/隔日)による2週間の処置は、BMD及びBMCの減少を抑制した(表6)。コラーゲンのC末端テロペプチドの血中濃度は、破骨細胞活性を反映し得る。表6に示すように、RD誘導体又はアレンドロナートは、破骨細胞活性の卵巣切除誘発性増加も抑制した(表6)。RD誘導体の一部は、アレンドロナートよりもはるかに有効であると考えられた。また、週1回2週間のRD処置(I.M.、1.5mg/kg)も、BMD及びBMCの減少を抑制した(表6)。これらのデータによれば、RD及びその誘導体は、骨粗しょう症をより長い投薬間隔で抑制することができる。
【0160】
【表6】

【実施例13】
【0161】
ラットにおけるPG0 P及びRD誘導体による卵巣切除誘発性骨量減少の抑制
PGP(RD誘導体)を選択して、ラットにおける卵巣切除(OVX)誘発性骨量減少からの保護をより詳細に検討した。実施例8のように、成体雌性ラット(3月齢)の卵巣を切除し、実施例9−11のように、骨体積を卵巣切除から6週間後に測定した。PGPタンパク質は、卵巣切除誘発性骨体積減少と破骨細胞数増加の両方を抑制することが判明した。
【0162】
図2Aに示すように、偽手術ラット(Sham)と比較して、卵巣切除(OVX)は、海綿骨をかなり減少させた。しかし、PGP処置(IV、0.3mg/kg/日又はIM、1.5mg/kg/隔日)は、二次海綿骨における海綿骨の卵巣切除誘発性減少をかなり抑制した。
【0163】
図2Bにおいては、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色によって、破骨細胞が海綿骨周辺に主に局在し、PGPが破骨細胞形成におけるOVX誘発性増加を抑制することが判明した。
【0164】
OVXラットは、実験の最後に体重増加も示した。PGP処置(I.V.、0.3mg/kg/日又はI.M.、1.5mg/kg/隔日)は、体重のOVX誘発性増加をかなり抑制した。
【0165】
ラットは、卵巣切除から6週間後に大腿骨とけい骨の両方の湿重量、BMD及びBMCも減少した(表7)。PGP処置(I.V.又はI.M.)は、OVXラットにおいてけい骨と大腿骨の両方の湿重量、BMD及びBMCの減少を抑制した。組織形態計測によって、卵巣切除が二次海綿骨において海綿骨減少を起こすことが示された(図2)。PGP処置は、骨体積減少を著しく逆転させた(図2及び表7)。また、TRAP染色によって、破骨細胞が海綿骨周辺に主に局在し、OVXが破骨細胞数を増加させることが示された。PGPの長期投与は、OVX誘発性破骨細胞形成に拮抗した(図2及び表7)。コラーゲンのC末端テロペプチドの血清レベルは、破骨細胞活性を反映する。値は、Sham群よりもOVX群で著しく増加したのに対して、PGP処置は破骨細胞活性のOVX誘発性増加に効果的に拮抗することが判明した(表7)。
【0166】
【表7】


【0167】
大腿骨の三点曲げ試験を実施して、大腿骨の機械的活性を調べた。偽手術群と比較して、最大荷重、極限荷重、ヤング率及び極限応力はOVXラットで減少した。PGP処置は、骨強度のOVX誘発性減少に対して保護作用を示した(表8)。これらの結果は、PGP様タンパク質薬物が、卵巣切除に起因する骨量減少を顕著に抑制し得ることを示唆している。
【0168】
【表8】

【実施例14】
【0169】
RDタンパク質の後処置は、OVX誘発性破骨細胞活性化を阻害した
破骨細胞活性に対するRD誘導体の動的治療効果を生体内で検討するために、骨粗しょう症を雌性ラットにおいて卵巣切除によって誘発させ、I型コラーゲンのC末端テロペプチドを血液から異なる間隔で測定した。偽手術ラット(Sham)に比較して、卵巣切除(OVX)は、破骨細胞活性をかなり増大させた。COL(1)α1鎖のC末端テロペプチドの血清レベルの測定によれば、OVXラットにおける破骨細胞活性が増大した。I型コラーゲンのC末端テロペプチドは、卵巣切除から28日後に、361±25.6(n=15)の基底レベルから708±50.7ng/ml(n=15)に増加した。
【0170】
次いで、RD又はアレンドロナートを卵巣切除から1か月後に後処置した。RD(I.M.、1.5mg/kg/隔日)又はアレンドロナート(p.o.、1.5mg/kg/隔日)による後処置は、破骨細胞活性の卵巣切除誘発性増加を逆転させ、RDはアレンドロナートよりもはるかに有効であった(図3)。破骨細胞活性は、RD又はアレンドロナート処置を中止すると回復した。破骨細胞活性の回復は、RD処置群よりもアレンドロナート処置群がはるかに速かった。しかし、RDを再適用すると、破骨細胞活性の卵巣切除誘発性増加を効果的に抑制した。RD処置に応答した破骨細胞の値は、アレンドロナート処置に応答した破骨細胞の値よりもはるかに低かった(図3)。これらの結果によれば、RD関連タンパク質は、卵巣切除誘発性破骨細胞活性化に起因する骨量減少に対して治療効果を有する。
【0171】
第2の薬物処置期間後、ラットを屠殺し、けい骨及び大腿骨のBMD及びBMCを測定した。表9に示すように、RDの後処置は、卵巣切除の骨量減少効果を有効に逆転させた。骨体積の維持に関しては、RDはアレンドロナートよりも有効であった。
【0172】
【表9】

【実施例15】
【0173】
骨関節炎動物におけるRDによる軟骨細胞損傷の阻害
雄性スプレーグドーリーラットの右膝のみの手術によって、骨関節炎動物モデルを得た。手術は、前十字靭帯(anterior cruciate ligation)処置及び部分的内側半月板切除を含んだ。手術後、手術から6週間後にラットを屠殺した最終日まで、RDタンパク質を筋肉内経路(1.5mg/kg/隔日)又は局所的関節内注射(1回/週)によって投与した。各関節をパラフィン蝋で包埋し、薄片を作製し、0.1%サフラニン−O及びヘマトキシリンで染色した。図4Bに示すように、右膝関節の軟骨細胞層は、関節炎による損傷を受け、筋肉内注射(図4D)又は局所投与(図4C)のRDは、軟骨細胞層破壊を抑制した。
【実施例16】
【0174】
骨関節炎ラットにおけるRDによる血液サイトカイン上昇の抑制
上述したように、骨関節炎ラットを手術によって作製した。手術から6週間後、血清を得て、サイトカインの血中濃度を測定した。図5A−5Cに示すように、C反応性タンパク質、IL−1β、IL−6などのサイトカインの血清レベルは、骨関節炎ラットにおいて増加し、RD投与は、サイトカインの骨関節炎誘発性上昇を著しく抑制した。
【実施例17】
【0175】
骨関節炎マウスにおけるRDによる血液サイトカイン上昇の抑制
上述したように、骨関節炎マウスを手術によって作製した。手術から6週間後、血清を得て、サイトカインレベルを測定した。図6A−6Cに示すように、C反応性タンパク質、IL−1 ?、IL−6などのサイトカインの血清レベルは、骨関節炎マウスにおいて増加し、RD投与は、サイトカインの骨関節炎誘発性上昇を著しく抑制した。
【実施例18】
【0176】
マウスにおける前立腺又は乳癌細胞のけい骨内注射
動物隔離飼育器(IVCラック)中で特定病原体除去(SPF)条件下で22±2℃で飼育した体重20−22g(6週齢)の重症複合免疫不全(SCID)雄性マウス又はBALB/c−nu/nu雄性マウスを用いた。ヒト前立腺腺癌PC−3細胞又はヒト乳癌MDA−MB−231細胞(無菌PBS 15ml中1×10細胞)を1日目にそれぞれSCIDマウス又はヌードマウスの左右けい骨の骨髄に注射した。11日目に、動物を3群に無作為に割り当て、試験物質投与を開始した。1日1回合計15回(5日間投与、2日間休止で3週間)、RD(1.5mg/kg)を筋肉内(IM)注射によって投与し、アレンドロナート(1.5mg/kg)を皮下(SC)注射によって投与した。実験期間中、体重及び腫よう増殖状態を毎週観察し、記録した。1か月後、マウスを屠殺し、後肢の重量を測定した。対照肢の重量を減算して、相対腫よう重量とした。また、赤血球(RBC)、白血球(WBC)及び血小板の血球算定、並びにI型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX)及び血清カルシウム濃度の測定のために、血液試料を実験の最後に収集した。
【0177】
骨溶解を確認するために、X線像を軟X線発生装置(Young−kid Enterprise Co., Ltd.、Taipei、Taiwan)によって撮影した。動物にトリクロロアセトアルデヒド一水和物によって深麻酔をかけ、Kodak Scientific Imagingフィルム(13×18cm)上に腹臥位で横たえ、45kVで5秒間X線露光を実施した。骨溶解度を画像解析ソフトウェア(Image−pro plus 3.0)を用いて測定した。
【実施例19】
【0178】
骨及び高カルシウム血症における腫よう増殖の阻害
骨中の腫よう細胞増殖は、骨吸収活性と関係がある。したがって、骨中の前立腺癌細胞の腫よう増殖に対するRDタンパク質の効果を調べた。PC−3細胞(1×10)をSCIDマウスの両方のけい骨の骨髄腔に局所注射した。腫よう細胞移植から10日後にRD又はアレンドロナートを投与した。1日1回合計15回(5日間投与、2日間休止で3週間)、RD 1.5mg/kgを筋肉内(IM)経路によって投与し、アレンドロナートを1.5mg/kgで皮下(SC)注射によって投与した。33日目に、腫よう増殖を示す後肢の膨潤を計算した。実験期間を通して体重を測定した。その結果、RD 1.5mg/kgは、33日目に後肢の腫よう細胞誘発性膨潤をかなり抑制した(43.8±4.1%、n=21−22)(図7)。しかし、アレンドロナート1.5mg/kgの皮下投与は後肢の腫よう増殖を抑制しなかった(図7)。
【0179】
図8は、SCIDマウスにおける腫よう増殖に応じた体重減少に対するRDの効果である。未処置対照マウスは、実験の最後に体重減少を示した。RD処置は、腫よう増殖に起因する体重減少を防止した。アレンドロナートを正の対照として使用した。
【0180】
図9は、SCIDマウスにおけるRDによる腫よう増殖及び溶骨性骨病変の阻害を示す。骨溶解を確認するために、X線像を軟X線発生装置によって撮影した。図9Aにおいて、写真は、PC−3細胞のけい骨内注射から33日後に撮影された。可視球状腫ようは、近位けい骨から成長した。RD処置(I.M.、1.5mg/kg/隔日)は腫よう増殖を阻害した。図9Bにおいて、33日目に撮影したX線像によれば、癌細胞を注射したけい骨に溶骨性病変部が出現し、RD処置は骨溶解を抑制した。図9Cは、データを定量化したものである。図9Dは、ELISA法によって、RDがタイプ−コラーゲン(破骨細胞活性マーカー)のC末端テロペプチドにおける腫よう誘発性増加を抑制したことを示す。図9Eによれば、RD及びアレンドロナート(1.5mg/kg/隔日)は、血清カルシウム濃度の腫よう誘発性増加(すなわち、高カルシウム血症)も抑制した。:対照に比べてp<0.05。#:PC−3注射群に比べてp<0.05。
【0181】
乳癌は、骨に転移する傾向が強い。図10は、ヌードマウスにおけるRDによる腫よう増殖の阻害を示す。ヒト乳癌細胞MDA−MB−231(1×10)をヌードマウスの両方のけい骨の骨髄腔に局所注射した。腫よう細胞移植から10日後にRD(I.M.、1mg/kg/日)を合計14日間投与した。2週間のRD処置(IM、1.5mg/kg/日)は、骨中の腫よう増殖のMDA−MB−231誘発性増加を抑制した(図10A)。また、RDは、破骨細胞活性(図10B)及び高カルシウム血症(図10C)の腫よう誘発性増加も抑制したが、RBC、WBC及び血小板の血球算定には影響を及ぼさなかった(図10D−10F)。:対照に比べてp<0.05。#:MDA−MB−231注射群に比べてp<0.05。
【実施例20】
【0182】
RDタンパク質のポリエチレングリコール化
ポリエチレングリコール化生成物、又はアルブミンとの複合化は、持続時間を延長し、タンパク質薬物の抗原性を減少させることができる。RDタンパク質の抗原性を最小化し、持続時間を延長するために、ポリエチレングリコール化RDタンパク質を以下のように調製した。pH5の20mM NaCNBH中のRDタンパク質(4mg)を5mM PEGk5−プロピオンアルデヒド(O−メチル−O’−[2−(6−オキソカプロイルアミノ)エチル]ポリエチレングリコール5,000)(Sigma)と4℃で12時間反応させた。ポリエチレングリコール化RDタンパク質を逆相C18 HPLCによって精製した。精製後のポリエチレングリコール化RDタンパク質の最終収率は、60%を超えた。
【0183】
表6に示すように、ポリエチレングリコール化RDは、破骨細胞の分化を阻害した。また、2週間のポリエチレングリコール化RD処置(I.M.、1.5mg/kg、週1回)は、BMD及びBMCの減少を抑制した(表6)。これらのデータによれば、ポリエチレングリコール化RDは、その活性を生体内で失わなかった。
【実施例21】
【0184】
MATRIGEL(商標)栓血管新生抑制アッセイ
インテグリンαvβ3は血管新生に関係することが報告された。したがって、RDタンパク質が血管新生を阻害し得るかどうかを、既報のものに軽微な改変を加えてMATRIGEL(商標)栓血管新生アッセイによって検討した[32]。手短に述べると、200ng/ml VEGFを含むMATRIGEL(商標)(Becton Dickinson Lab.)の一定分量(500μl)を6−8週齢C57BL/6マウスの背部に皮下注射した。MATRIGEL(商標)は、急速に栓を形成した。RDを毎日(RD/1日)又は先日(RD/2日又はHSA−RD)筋肉内投与し(3mg/kg)、その後屠殺した。8日後、栓を取り、写真撮影した(図11A)。ドラブキン法及びドラブキン試薬キット525(Sigma)を用いて、栓のヘモグロビンを血管形成の指標として測定することによって、新生血管を定量化した(図11B)。図11A及び11Bに示すように、RDタンパク質は、MATRIGEL(商標)栓アッセイによって血管新生を阻害するのに有効であった。:対照群に対してP<0.05。
【実施例22】
【0185】
放射性リガンド結合アッセイ:RD関連タンパク質の特異性
RD及びその誘導体PGPがαvβ3インテグリンに加えて別の受容体に結合するかどうかを確認するために、RD及びその誘導体PGPを使用して、そのリガンドがタンパク質である受容体に対する標的特異性を分析した(MDS Pharma services、Taipei、Taiwanによって評価された。)。
【0186】
表10に示すように、RD及びPGPは、カルシトニン、エンドセリンETA、エンドセリンETB、インスリン、レプチン、ナトリウムチャネル、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)、腫よう壊死因子(TNF)及び血管内皮増殖因子(VEGF)とそのそれぞれの受容体との結合活性に影響を及ぼさなかった。これは、RD関連タンパク質が標的タンパク質αvβ3に対して生体内で選択的結合活性を発揮することを示している。
【0187】
【表10】

【実施例23】
【0188】
未熟児網膜症マウスモデルにおけるRDによる血管新生阻害
Wilkinson−Berka et al.[28]に記載のように低酸素誘発性血管新生によって、マウスにおける未熟児網膜症の動物モデルを作製した。手短に述べると、7日齢の子及びその母を、75%O及び空気を含む密閉チャンバーに収容した。マウスを密閉チャンバー内に5日間置き(過酸素期間、P7からP12)、次いで室内気中に更に7日間収容した(低酸素誘発性血管形成期間、出生後12日から出生後19日、すなわちP12からP19)。12日目にRD(2μg)を硝子体内経路を介して投与し、19日目にマウスを屠殺した。
【0189】
各動物の眼の一方から3切片を作製し、脱パラフィンし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。網膜内層の血管プロファイル(BVP)を数えた。血管プロファイル(BVP)は、内境界膜に付着した血管を含んだ。計数を写真用顕微鏡(Leica)を用いて倍率100×で実施した。
【0190】
図12Aに示すように、RDタンパク質は、未熟児網膜症(ROP)マウスモデルにおける血管新生を阻害した。図12Bは、RDタンパク質で処置した未熟児網膜症(ROP)マウスモデルにおけるBVPの減少を示す。3個のヘマトキシリン・エオシン染色切片から、網膜内層の硝子体腔に伸びる血管プロファイル(BVP)を数えて、血管新生を定量した。RD(2μg)で処置したROP群(すなわち、ROP+RD)は、ビヒクルで処置したROP群(ROP)に比較して、血管新生の約46%を減少させた。(各ROP群n=7、sham群n=2)データを平均±SEとして示す。#:sham群に比べてp<0.01。**:ROP群に比べてp<0.001。
【実施例24】
【0191】
アルブミン複合化RDによる卵巣切除誘発性骨粗しょう症の阻害
骨粗しょう症に対するアルブミン複合化RDの効果を、卵巣切除した雌性マウスにおいて検討した。ヒト血清アルブミン複合化RD(すなわち、RD−アルブミン)を、図13A及び13Bの矢印で示すように投与した。RDのデータを図13A−13Dに比較のために入れた。I型コラーゲンのC末端ペプチド及びアルカリホスファターゼ(ALP)の血清レベルを、それぞれ破骨細胞及び骨芽細胞活性の指標として測定した。図13C及び13Dに示すように、BMD及びBMCも2週間ごとに測定した。RD−アルブミン処置(15mg/kg/週)は、破骨細胞を著しく減少させたが、ALP、活性を可逆的に増加させた。
【実施例25】
【0192】
RDによるリウマチ様関節炎の阻害
リウマチ様関節炎は、進行性関節破壊をもたらす浸潤性滑膜過形成を特徴とする原因不明の慢性全身的炎症性障害である。単球/マクロファージ系列に由来する破骨細胞は、リウマチ様関節炎における軟骨下骨破壊において重大な役割を果たす。X線撮影による研究によれば、リウマチ様関節炎においては、軟骨下骨の骨減少及び骨びらんが疾患初期に始まり、徐々に悪化する[29]。骨を吸収する破骨細胞は、びらん性の滑膜/骨界面に認められる[30]。最近の総説は、リウマチ様関節炎における破骨細胞の役割を考察している[31]。したがって、破骨細胞の機能を著しく阻害するRD関連タンパク質は、リウマチ様関節炎の治療に有用であり得る。
【0193】
LewisラットにウシII型コラーゲン(フロイント不完全アジュバント中2mg/ml)を皮内/皮下(SC)注射する。ラットがリウマチ様疾患を発症したら、幾つかの試験群に無作為に分割する。例えば足関節の膨潤によって明らかである、関節炎の臨床徴候が明確に見えた初日に治療を開始する。足の体積を測定後、ラットを屠殺し、組織病理学的変化を検討するために足首及び膝関節を収集する。
【0194】
図14A−Dは、Rho及びその変種のアミノ酸配列、それぞれ配列番号1及び57−69を示す。図15A−Cは、ロドストミン変種のヌクレオチド配列、配列番号43−56を示す。図16A−Hは、ディスインテグリン変種のアミノ酸及びヌクレオチド配列、配列番号78−135を示す。
【0195】
本発明の例示的実施形態の上記記述は、単なる説明及び記述のためのものに過ぎず、網羅的なものではなく、開示した正確な形式に本発明を限定するものでもない。上記教示に照らして、多数の改変及び変更が可能である。
【0196】
本明細書の考察、及び本明細書に開示する本発明の実施から、本発明の別の実施形態が当業者に明白となるはずである。本明細書及び実施例は、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の正確な範囲及び精神をもって、単なる例示と考えられることが意図される。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
αvβ3インテグリン関連疾患の治療及び/又は防止が必要なほ乳動物にポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与することを含み、該ポリペプチドは、αvβ3インテグリンに選択的であるディスインテグリン変種を含む、αvβ3インテグリン関連疾患の治療及び/又は防止方法。
【請求項2】
ディスインテグリンが、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択されるディスインテグリンの変種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ディスインテグリン変種がロドストミンの変種を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ロドストミン変種が、配列番号1のアミノ酸配列の変種を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ロドストミン変種が、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ロドストミン変種が、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドがポリエチレングリコール化されている又はアルブミンと複合化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
αvβ3インテグリン関連疾患が、骨粗しょう症、骨腫よう又は癌増殖及びそれに関連した症候、血管新生に関連した腫よう増殖及び転移、骨中の腫よう転移、悪性腫よう誘発性高カルシウム血症、血管新生に関連した眼疾患、パジェット病、リウマチ性関節炎並びに骨関節炎から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
血管新生に関連した眼疾患が、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視及び未熟児網膜症から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
αvβ3インテグリン関連疾患が骨粗しょう症を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記骨粗しょう症が、閉経後エストロゲン欠乏症、続発性骨粗しょう症、卵巣切除、パジェット病、骨癌、骨腫よう、骨関節炎、破骨細胞形成の増加及び破骨細胞活性の増加から選択される病的症状を伴う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
骨粗しょう症が閉経後骨粗しょう症又は骨量減少を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ほ乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
卵巣切除により誘発された生理学的変化の治療及び/又は防止が必要なほ乳動物にポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与することを含み、該ポリペプチドは、αvβ3インテグリンに選択的であるディスインテグリン変種を含む、卵巣切除により誘発された生理学的変化の治療及び/又は防止方法。
【請求項15】
ディスインテグリンが、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択されるディスインテグリンの変種である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ディスインテグリン変種がロドストミンの変種を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ロドストミンが、配列番号1のアミノ酸配列の変種を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ロドストミン変種が、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ロドストミン変種が、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリペプチドがポリエチレングリコール化されている又はアルブミンと複合化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ほ乳動物がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
骨中の腫よう細胞増殖及びそれに関連した症候の抑制及び/又は防止が必要なほ乳動物にポリペプチド又は薬学的に許容されるその塩の治療有効量を投与することを含み、該ポリペプチドが、αvβ3インテグリンに選択的であるディスインテグリン変種を含む、骨中の腫よう細胞増殖及びそれに関連した症候の抑制及び/又は防止方法。
【請求項23】
ディスインテグリンが、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択されるディスインテグリンの変種である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ディスインテグリン変種がロドストミンの変種を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ロドストミン変種が配列番号1の変種を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ロドストミン変種が、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ロドストミン変種が、配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリペプチドがポリエチレングリコール化されている又はアルブミンと複合化されている、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記症候が、破骨細胞活性の増加、骨吸収の増加、骨病変、高カルシウム血症、体重減少及びこれらの任意の組合せから選択される病理学的症候を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
骨中の腫よう細胞増殖が、骨癌細胞、並びに前立腺癌、乳癌、肺癌、甲状腺癌、腎臓癌、卵巣癌、すい癌及び骨髄腫の1つ以上から生ずる転移癌細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
ほ乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
ポリペプチドがディスインテグリンの変種である、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチド。
【請求項33】
ディスインテグリンが、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択されるディスインテグリンの変種である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
ディスインテグリンがロドストミンの変種を含む、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記ロドストミン変種が配列番号1の変種を含む、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項36】
前記ロドストミン変種が、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項35に記載のポリペプチド。
【請求項37】
前記ロドストミン変種が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、配列番号1の位置48、50、52又は53から選択される位置における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項38】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項39】
アミノ酸置換が位置50又は52におけるものである、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項40】
ポリペプチドが、配列番号1の位置48、50、52及び53から選択される少なくとも2つの位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項41】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項40に記載のポリペプチド。
【請求項42】
アミノ酸置換が位置48及び52におけるものである、請求項41に記載のポリペプチド。
【請求項43】
アミノ酸置換が位置52及び53におけるものである、請求項41に記載のポリペプチド。
【請求項44】
ポリペプチドが、配列番号1の位置48、50、52及び53から選択される少なくとも3つの位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項45】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項44に記載のポリペプチド。
【請求項46】
アミノ酸置換が位置48、52及び53におけるものである、請求項45に記載のポリペプチド。
【請求項47】
アミノ酸置換が位置50、52及び53におけるものである、請求項45に記載のポリペプチド。
【請求項48】
ポリペプチドが、配列番号1の位置48、50、52及び53から選択される少なくとも4つの位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項37に記載のポリペプチド。
【請求項49】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項48に記載のポリペプチド。
【請求項50】
前記ポリペプチドが、配列番号43−56から選択されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項51】
前記ポリペプチドが、αIIbβ3及び/又はα5β1に対する親和性がロドストミンの約1/5、1/50又は1/100以下である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項52】
前記ポリペプチドが、αIIbβ3及び/又はα5β1に対する親和性がロドストミンの約1/200以下である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項53】
前記ポリペプチドが、αIIbβ3及び/又はα5β1に対する親和性がロドストミンの約1/1000又は1/2000以下である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項54】
前記ポリペプチドが、血小板に対する親和性がロドストミンの約1/5、1/50、1/100、1/1000又は1/2000以下である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項55】
前記ポリペプチドが、血液凝固時間の延長活性がロドストミンよりも低い、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項56】
前記ポリペプチドがポリエチレングリコール化されている又はアルブミンと複合化されている、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項57】
請求項37に記載のポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物。
【請求項58】
請求項40に記載のポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物。
【請求項59】
請求項44に記載のポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物。
【請求項60】
請求項48に記載のポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物。
【請求項61】
請求項50に記載のポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、生理的に許容される組成物。
【請求項62】
前記ポリペプチドがポリエチレングリコール化されている又はアルブミンと複合化されている、請求項57に記載の生理的に許容される組成物。
【請求項63】
配列番号57−69から選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項64】
a. 請求項32に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に移入する段階、
b. 前記宿主細胞を培地中で増殖させる段階、及び
c. 前記ポリペプチドを単離する段階
を含む、請求項32に記載のポリペプチドを製造する方法。
【請求項65】
(b)が、メタノールを前記培地に添加することを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
アミノ酸を含まない培地中で宿主細胞を増殖させることを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
(c)が、カラムクロマトグラフィーを実施して前記ポリペプチドを得ることを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
HPLCを実施して前記ポリペプチドを得ることを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記宿主細胞が酵母細胞である、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドがディスインテグリンの変種である、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項71】
ディスインテグリンが、ロドストミン、アルボラブリン、アプラギン、バシリシン、バトロキソスタチン、ビチスタチン、セレベリン、セラスチン、クロタトロキシン、ズリシン、エレガンチン、フラボリジン、フラボスタチン、ハリシン、ハリスタチン、ジャララシン、ジャラスタチン、キストリン、ラチェシン、ルトシン、モロシン、サルモシン、サキサチリン、テルゲミニン、トリメスタチン、トリムクリン、トリムターゼ、ウスリスタチン及びビリジンから選択されるディスインテグリンの変種である、請求項70に記載のポリヌクレオチド。
【請求項72】
ディスインテグリンがロドストミンの変種を含む、請求項70に記載のポリヌクレオチド。
【請求項73】
前記ロドストミン変種が配列番号1の変種を含む、請求項72に記載のポリヌクレオチド。
【請求項74】
前記ディスインテグリン変種が、配列番号30−42から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項73に記載のポリヌクレオチド。
【請求項75】
前記ロドストミン変種が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、配列番号1の位置48、50、52又は53から選択される位置における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、請求項70に記載のポリヌクレオチド。
【請求項76】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn、並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項75に記載のポリヌクレオチド。
【請求項77】
アミノ酸置換が位置50又は52におけるものである、請求項76に記載のポリヌクレオチド。
【請求項78】
ポリペプチドが、配列番号1の位置48、50、52及び53から選択される少なくとも2つの位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項75に記載のポリヌクレオチド。
【請求項79】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置52のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項78に記載のポリヌクレオチド。
【請求項80】
アミノ酸置換が位置48及び52におけるものである、請求項79に記載のポリヌクレオチド。
【請求項81】
アミノ酸置換が位置52及び53におけるものである、請求項79に記載のポリヌクレオチド。
【請求項82】
ポリペプチドが、配列番号1の位置48、50、52及び53から選択される少なくとも3つの位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項75に記載のポリヌクレオチド。
【請求項83】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置42のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項82に記載のポリヌクレオチド。
【請求項84】
アミノ酸置換が位置48、52及び53におけるものである、請求項83に記載のポリヌクレオチド。
【請求項85】
アミノ酸置換が位置50、52及び53におけるものである、請求項83に記載のポリヌクレオチド。
【請求項86】
ポリペプチドが、配列番号1の位置48、50、52及び53から選択される少なくとも4つの位置におけるアミノ酸置換を含む、請求項75に記載のポリヌクレオチド。
【請求項87】
アミノ酸置換が、位置48のAla、位置50のLeu、Ile及びHis、位置42のAsp、Met及びAsn並びに位置53のVal、Leu及びMetから選択される、請求項86に記載のポリヌクレオチド。
【請求項88】
ポリヌクレオチドが、配列番号43−56及び78−135から選択される配列を含む、請求項70に記載のポリヌクレオチド。
【請求項89】
ポリヌクレオチドが、請求項37に記載のポリペプチドをコードする、請求項70に記載のポリヌクレオチド。
【請求項90】
ポリペプチドがインテグリンの変種であり、ポリヌクレオチドが、請求項40に記載のポリペプチドをコードする、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項91】
ポリペプチドがインテグリンの変種であり、ポリヌクレオチドが、請求項44に記載のポリペプチドをコードする、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項92】
ポリペプチドがインテグリンの変種であり、ポリヌクレオチドが、請求項48に記載のポリペプチドをコードする、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項93】
ポリペプチドがインテグリンの変種であり、ポリヌクレオチドが、請求項50に記載のポリペプチドをコードする、αvβ3インテグリンに選択的なポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項94】
請求項73に記載のポリヌクレオチドと厳密な条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチド。
【請求項95】
請求項94に記載のヌクレオチドによってコードされる、ポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図16G】
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【図16H】
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【公表番号】特表2010−514444(P2010−514444A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544049(P2009−544049)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026125
【国際公開番号】WO2008/088548
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509180256)ナシヨナル・タイワン・ユニバーシテイ (1)
【出願人】(509180108)デイーシービー−ユーエスエイ・エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】