説明

ディスクアレイ装置及び論理ボリュームアクセス方法

【課題】ホスト装置から特定の論理ボリュームへのライトアクセスが要求された場合における、当該ライトアクセスの前記特定の論理ボリュームへの影響を抑止する。
【解決手段】実施形態によれば、ディスクアレイ装置は、少なくとも1つのアレイとアレイコントローラとを具備する。アレイコントローラは、第1のホスト装置を含む複数のホスト装置と接続され、スナップショット作成手段と論理ボリューム切り替え手段とを含む。スナップショット作成手段は、第1のホスト装置からアクセス可能な第1の論理ボリュームのスナップショットを、他のホスト装置からのアクセスが禁止される第2の論理ボリュームとして仮想的に作成する。論理ボリューム切り替え手段は、第1の論理ボリュームのスナップショットの作成後、第1のホスト装置からの第1の論理ボリュームへのライトアクセスを第2の論理ボリュームへのライトアクセスに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ディスクアレイ装置及び論理ボリュームアクセス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディスクアレイ装置は、1つ以上のディスク装置、例えば複数のハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)と、これらのHDDと接続されたアレイコントローラとを備えている。アレイコントローラは、一般に知られる例えばRAID(Redundant Arrays of Inexpensive DisksまたはRedundant Arrays of Independent Disks)の手法により複数のHDDを管理する。つまり、アレイコントローラは、ホスト装置(ホスト計算機)からのデータ読み出し/書き込み要求に対し、接続された複数のHDDを並列に動かしてデータの読み出し/書き込みを分散して実行することでアクセスの高速化を図ると共に、冗長構成によって信頼性の向上を図っている。
【0003】
ディスクアレイ装置は、上記した複数のHDD(または1つ以上のHDD)の記憶領域が連続した1つの領域として定義されるアレイ(ディスクアレイ)を含む。また、ディスクアレイ装置は、ホスト装置から認識される論理ディスク(論理ボリューム)を有する。論理ディスクは、その領域(論理アドレス空間)にアレイ内の記憶領域(物理領域)が割り当てられることにより構成される。
【0004】
このようなディスクアレイ装置では、ホスト装置がアクセスを行う論理ディスクと、その論理ディスクを構成する物理領域を提供するアレイとの対応関係は固定的である。したがって、システムによっては、実際に論理ディスクとして使用されていない領域の割合が高くなり、無駄が大きい場合がある。
【0005】
そこで、例えばディスクアレイ装置に含まれるアレイの全領域(物理領域)をエクステント(物理エクステント)という一定サイズに区分して管理し、論理ディスクへのライトアクセスが発生した場合に当該ライトアクセスの対象となる領域に割り当てる物理エクステントを実際に確保するという仮想論理ディスク方式が提案されている。
【0006】
つまり、ディスクアレイ装置では、当該ディスクアレイ装置に含まれるアレイの全領域が分割された全物理エクステントのうちの1つ以上の物理エクステントを組み合わせることによって、ホスト装置から認識される論理ディスクが構成される。
【0007】
このようなディスクアレイ装置は、ホスト装置からアクセス(認識)される論理ディスクと当該論理ディスクの領域に割り当てられる物理エクステントとの対応関係を管理し、論理ディスクの構築後にホスト装置から書込み要求を受信する都度、当該論理ディスク上の対応する領域に割り当てる物理エクステントを確保するという仮想論理ボリューム機能を備える。
【0008】
また、一旦物理エクステントを確保した後、不使用となった領域をディスクアレイ装置自身が検出することによって、当該確保された物理エクステントを再度解放し、記憶容量を効率よく使う仕組みが提案されている。
【0009】
一方、ある任意のタイミングでの第1の論理ボリュームのデータのスナップショットを第2の論理ボリュームとして作成し、作成された第2の論理ボリュームをバックアップボリュームとして管理する技術が知られている。このような技術として、コピー・オン・ライト(Copy-On-Write:COW)技術が知られている。
【0010】
COW技術では、運用ボリュームが上記第1の論理ボリュームに相当しており、当該第1の論理ボリュームのスナップショットが第2の論理ボリューム(つまりバックアップボリューム)として仮想的に作成される。このCOW技術は、第1の論理ボリュームに対して書き込みが発生するタイミングで、当該第1の論理ボリュームの書き込み対象となっている領域のデータ(つまり元データ)を第2の論理ボリュームへコピーした後、第2の論理ボリュームのデータを書き込みデータで更新する技術である。COW技術によれば、スナップショット作成時のデータの読み出しは次のように行われる。目的のデータが第2の論理ボリュームに存在する場合には当該第2の論理ボリューム内の目的のデータが読み出され、目的のデータが第2の論理ボリュームに存在しない場合には第1の論理ボリューム内の目的のデータが読み出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4331220号公報
【特許文献2】特許第4292882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、論理ボリューム内に作成されたデータ(例えば、データベース)に、複数のホスト装置が同時にアクセスすることにより、当該論理ボリュームを複数のホスト装置がそれぞれ別の用途で活用したり、複数のホスト装置が並列計算を行うことにより、処理の高速化を図る要求がある。
【0013】
その一方、ホスト装置が、論理ボリューム内に作成されたデータにアクセスするための準備処理(例えば、ファイルシステムへのマウント)を行うことにより、例えば特定のホスト装置専用の制御データが論理ボリュームに書き込まれることがある。このような場合、論理ボリュームへの他のホスト装置からの正常アクセスが不可能となる可能性がある。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、ホスト装置から特定の論理ボリュームへのライトアクセスが要求された場合における、当該ライトアクセスの前記特定の論理ボリュームへの影響を抑止できるディスクアレイ装置及び論理ボリュームアクセス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態によれば、ディスクアレイ装置は、少なくとも1つのアレイと、前記少なくとも1つのアレイへのアクセスを制御するアレイコントローラとを具備する。前記アレイコントローラは、第1のホスト装置を含む複数のホスト装置と接続され、前記少なくとも1つのアレイが有する物理領域を複数の物理エクステントに区分して管理し、前記複数の物理エクステントのうちの1つ以上を論理ディスクの論理エクステントに割り当てて論理ボリュームを構築する。前記アレイコントローラは、スナップショット作成手段と、論理ボリューム切り替え手段とを含む。前記スナップショット作成手段は、前記第1のホスト装置からアクセス可能な第1の論理ボリュームのスナップショットを、他のホスト装置からのアクセスが禁止される第2の論理ボリュームとして仮想的に作成する。前記論理ボリューム切り替え手段は、前記第1の論理ボリュームのスナップショットの作成後、前記第1のホスト装置からの前記第1の論理ボリュームへのライトアクセスを前記第2の論理ボリュームへのライトアクセスに切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係るディスクアレイ装置を備えたストレージシステムの構成を示すブロック図。
【図2】同第1の実施形態において、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される動画データ編集システムの構成の一例を示すブロック図。
【図3】図1に示されるホスト管理テーブルのデータ構造と当該ホスト管理テーブルの更新を説明するための図。
【図4】ホスト装置からディスクアレイ装置へのライトアクセスの第1の例を説明するための図。
【図5】ホスト装置からディスクアレイ装置へのライトアクセスの第2の例を説明するための図。
【図6】ホスト装置からディスクアレイ装置へのリードアクセスの第1の例を説明するための図。
【図7】ホスト装置からディスクアレイ装置へのリードアクセスの第2の例を説明するための図。
【図8】ホスト装置からディスクアレイ装置へのリードアクセスの第3の例を説明するための図。
【図9】第2の実施形態において、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される第2のシステムの構成の一例を示すブロック図。
【図10】第3の実施形態において、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される第3のシステムの構成の一例を示すブロック図。
【図11】第4の実施形態において、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される第4のシステムの構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係るディスクアレイ装置を備えたストレージシステムの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すストレージシステムは、ディスクアレイ装置1と、ホスト装置H1,H2及びH3とから構成される。ディスクアレイ装置1とホスト装置H1,H2及びH3とは、例えばストレージエリアネットワークSANを介して接続されている。ホスト装置H1,H2及びH3は、ディスクアレイ装置1を例えば自身の外部記憶装置として利用する。また第1の実施形態では、ホスト装置H4及びH5が、任意のタイミングで、ストレージエリアネットワークSANを介してディスクアレイ装置1と接続可能である。
【0019】
ホスト装置Hi(i=1,2,3)は、後述するホストインタフェースIF1を介してディスクアレイ装置1との間のデータ転送を含むデータ通信を行う。つまりホスト装置Hiは、ディスクアレイ装置1(より詳細には、ディスクアレイ装置1に構築される論理ディスク、つまり論理ボリューム)に対してリードアクセスやライトアクセスを行う。
【0020】
ディスクアレイ装置1は、アレイコントローラ10及びアレイ部20から構成される。アレイ部20は、1つ以上のディスク装置(ストレージデバイス)、例えばp個の磁気ディスクドライブ(HDD)21-1(#1)〜21-p(#p)を備えている。HDD21-1〜21-pの一部または全部は、1つ以上のアレイ、例えば複数のアレイを構成するのに用いられる。複数のアレイの各々は、HDD21-1〜21-pのうちの1つ以上のHDDの記憶領域の一部または全部が連続した1つの領域として定義される。第1の実施形態では、HDD21-1〜21-pのうちのそれぞれ異なるHDDの集合により、アレイ210-0,210-1及び210-2を含むアレイの群が構成されているものとする。
【0021】
アレイコントローラ10は、上述のアレイ群へのアクセス(より詳細には、アレイ群を構成するHDD21-1〜21-pへのアクセス)を制御すると共に、ホスト装置Hiとの間のデータ送受信を行う。アレイコントローラ10は、ホストインタフェースIF1、ディスクインタフェースIF2及び主制御部100から構成される。
【0022】
ホストインタフェースIF1は、ホスト装置Hiとの間の、データ入出力処理を含むインタフェース処理を担当する。ディスクインタフェースIF2は、HDD21-1〜21-pとの間の、データ入出力処理を含むインタフェース処理を担当する。主制御部100は、アレイコントローラ10の中枢をなし、例えばRAIDの手法によりHDD21-1〜21-pを管理する。より詳細に述べるならば、主制御部100は、ホスト装置Hiからのリード/ライトアクセスの要求に応じて、HDD21-1〜21-pの一部または全部を並列に動かしてデータの読み出し/書き込みを分散して実行する。
【0023】
主制御部100は、論理ディスク構成部101、管理テーブル記憶部102、物理エクステント確保部103、データコピー部104、ホスト管理部105、スナップショット作成部106、論理ユニットマスキング設定部(以下、LUマスキング設定部と称する)107及びアクセス部108を備えている。
【0024】
論理ディスク構成部101は、例えば、ホスト装置H1〜H3のいずれかからの指示に応じて、1つ以上の論理エクステントから構成される1つ以上の論理ディスク(論理ボリューム)を構築する。第1の実施形態では、複数の論理エクステントから構成される複数の論理ボリュームが構築されるものとする。複数の論理ボリュームは、後述する論理ボリュームA(図2参照)を含むものとする。管理テーブル記憶部102は、ホスト管理テーブル102a(図3参照)を含む各種の管理テーブルを記憶するのに用いられる。ホスト管理テーブル102aは、論理ボリューム毎に、対応する論理ボリュームへのアクセスが許可されるホスト装置を管理するのに用いられる。ホスト管理テーブル102aの具体例については後述する。
【0025】
物理エクステント確保部103は、論理ディスクへのライトアクセスが発生した場合に当該ライトアクセスの対象となる論理エクステントに割り当てる物理エクステントを、アレイ210-0〜210-2のいずれかから確保する。
【0026】
データコピー部104は、例えば、論理ボリューム(第1の論理ボリューム)の第1の論理エクステントに割り当てられた第1の物理エクステントのデータを、当該論理ボリュームのスナップショット(第2の論理ボリューム)の第2の論理エクステント(より詳細には、第1の論理エクステントに対応する第2の論理エクステント)に割り当てられた第2の物理エクステントにコピーする。このデータコピー部104によるコピーは、例えば、ホスト装置Hiによって要求された論理ボリュームの第1の論理エクステント内の領域へのライトアクセスのために、当該論理ボリュームのスナップショットの第2の論理エクステントに第2の物理エクステントが割り当てられた際に行われる。
【0027】
ホスト管理部105は、管理テーブル記憶部102に格納されているホスト管理テーブル102aに基づいて、ホスト装置Hiからの論理ボリュームへのアクセスを管理する。ホスト管理部105は、ホスト装置Hiからのアクセス要求に対して要求されたアクセスを許可するか否かを判定する。
【0028】
スナップショット作成部106は、論理ボリュームのスナップショット(スナップショットボリューム)を作成する。第1の実施形態においてスナップショット作成部106による論理ボリュームのスナップショットの作成は、ホスト装置Hiから論理ボリュームへのライトアクセスが要求され、且つホスト装置Hi専用の当該論理ボリュームのスナップショットが存在しない場合に行われる。
【0029】
LUマスキング設定部107は、ホスト管理テーブル102aを更新する。LUマスキング設定部107の具体的動作については後述する。アクセス部108は、ホスト装置Hiからのアクセス要求に応じて、論理的には、ホスト管理部105により許可された論理ボリュームにアクセスする。アクセス部108は、物理的には、アクセス要求で指定されたアクセス範囲が属する論理ボリューム内の論理エクステントに割り当てられている物理エクステントにアクセスする。
【0030】
第1の実施形態において、論理ディスク構成部101、物理エクステント確保部103、データコピー部104、ホスト管理部105、スナップショット作成部106、LUマスキング設定部107及びアクセス部108は、例えば、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10が一般に有するCPUが、当該ディスクアレイ装置1の記憶装置に格納されたプログラムを読み込んで実行することにより実現される機能モジュールであるものとする。
【0031】
第1の実施形態の特徴は、図1に示すストレージシステムを、1つのオリジナル動画データに対して、ホスト装置H1,H2及びH3(更にはホスト装置H4及びH5)から同時にアクセス可能な第1のシステム(以下、動画データ編集システムと称する)に適用したことにある。
【0032】
図2は、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される動画データ編集システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、ディスクアレイ装置1には、当該ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10によって管理される論理ボリュームAが構築されている。この論理ボリュームAは、アレイコントローラ10の主制御部100内の論理ディスク構成部101によって構築される。論理ボリュームAは、ホスト装置H1〜H3のいずれか、或いは図示せぬ管理装置からの要求によって構築されるものとする。
【0033】
論理ボリュームAにはオリジナル動画データが格納(より詳細には論理的に格納)されている。このとき、論理ボリュームA内のオリジナル動画データが格納(論理的に格納)されている論理エクステント群には、アレイ210-0〜210-2のいずれかのアレイ内の物理エクステント群が割り当てられている。この論理エクステント群に割り当てられた物理エクステント群には、オリジナル動画データが実際に格納(物理的に格納)されている。論理ボリュームAの論理エクステントと当該論理エクステントに割り当てられる物理エクステントとの対応関係は、エクステント管理テーブル(図示せず)によって管理される。エクステント管理テーブルは、管理テーブル記憶部102に格納される。
【0034】
さて、ホスト装置H1,H2及びH3から、論理ボリュームA内のオリジナル動画データに対して同時に動画編集を行うならば、当該オリジナル動画データに不整合が生じる可能性がある。そのため、ホスト装置H1,H2及びH3から論理ボリュームAへのライトアクセスは、排他的に行われる必要がある。また、論理ボリュームAに格納されているオリジナル動画データは、編集されることなく保存される必要がある。このため、動画編集が、オリジナル動画データに対して直接行われないようにする必要がある。
【0035】
そこで第1の実施形態では、論理ディスク構成部101によって論理ボリュームAが構築された場合、当該論理ボリュームAに格納されているオリジナル動画データが、編集(つまり更新)されることなく保存されるように、論理ボリュームAが所定の動作モードに設定される。所定の動作モードは、例えば論理ディスク構成部101が動作モード設定手段として機能することにより、当該論理ディスク構成部101によって設定されるものとする。なお、動作モード設定手段が、論理ディスク構成部101から独立して主制御部100内に設けられていてもよい。
【0036】
論理ボリュームAが所定の動作モードに設定されると、後述する所定の条件が成立した際に、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットが、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のスナップショット作成部106によって作成される。作成されたホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットは、ホスト装置H1,H2及びH3専用の仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として用いられる。つまり、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットが、ホスト装置H1,H2及びH3専用の仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として作成される。
【0037】
仮想の論理ボリュームAiには、論理ボリュームAに格納されているオリジナル動画データのコピーが格納される。このデータコピーは、データコピー部104によって次のように行われる。データコピー部104はエクステント管理テーブルに基づき、論理ボリュームA(第1の論理ボリューム)内の論理エクステント群のうち、第1の物理エクステントが割り当てられている第1の論理エクステントを探す。そしてデータコピー部104は、第1の論理エクステントに割り当てられている第1の物理エクステントのデータを、第2の物理エクステントにコピーする。この第2の物理エクステントは、第1の論理エクステントに対応する仮想の論理ボリュームAi内の第2の論理エクステントに新たに割り当てられる物理エクステントであり、物理エクステント確保部103によって確保される。
【0038】
第1の実施形態において、仮想の論理ボリュームAi(つまり論理ボリュームAのスナップショット)は、所定の条件が成立した場合、例えばホスト装置Hiからディスクアレイ装置1に対して、動画データの編集のために、所定の動作モードに設定されている論理ボリュームAへの最初のライトアクセスが要求された場合に作成される。つまり、所定の動作モードにおいて、ホスト装置Hiから論理ボリュームAへのライトアクセスが要求され、且つその際に論理ボリュームAのスナップショット(スナップショットボリューム)であるホスト装置Hi専用の仮想の論理ボリュームAiが未だ存在しない場合に、当該仮想の論理ボリュームAiが作成される。
【0039】
ホスト装置Hiからの論理ボリュームAへのライトアクセス(より詳細には、論理ボリュームA内の領域へのライトアクセス)の要求に応じて仮想の論理ボリュームAiが作成されると、LUマスキング設定部107は、当該仮想の論理ボリュームAiが作成されたことが反映されるように、ホスト管理テーブル102aを更新する。つまりLUマスキング設定部107はテーブル更新手段として機能して、ホスト装置Hiからのアクセスが許可される論理ボリュームが、論理ボリュームAから論理ボリュームAiに切り替えられるように、ホスト管理テーブル102a(より詳細には、ホスト管理テーブル102aによる後述するLUマッピング)を更新する。
【0040】
なお実際には、ホスト装置Hiからは論理ボリュームAまたはAiを直接認識することができない。そこで第1の実施形態では、論理ボリュームAまたはAiが、ホスト装置Hiから直接認識可能な論理ユニット(LU)に割り当てられる。ホスト装置Hiからディスクアレイ装置1に対して、論理ボリュームAまたはAiに割り当てられた論理ユニットへのアクセスが要求された場合に、当該論理ボリュームAまたはAiへのアクセスが許可される。但し、説明の簡略化のために、論理ボリュームAまたはAiに割り当てられた論理ユニットへのアクセスの要求を、単に論理ボリュームAまたはAiへのアクセスの要求と称することもある。
【0041】
図3は、ホスト管理テーブル102aのデータ構造と当該ホスト管理テーブル102aの更新を説明するための図である。
まず、論理ディスク構成部101は論理ボリュームAを構築した場合にテーブル初期設定手段として機能して、図3(a)に示すホスト管理テーブル102aを、管理テーブル記憶部102に初期登録する。なお、この初期登録が、LUマスキング設定部107によって実行されても構わない。ホスト管理テーブル102aの各エントリは、論理ボリューム番号フィールド31とホストIDフィールド32との組から構成される。
【0042】
論理ボリューム番号フィールド31は、論理ボリュームを識別するための情報、例えば論理ボリューム番号を保持するのに用いられる。ホストIDフィールド32は、ホスト装置に固有のID、例えばファイバチャネルのWWPN(World Wide Port Name)のようなID(以下、ホストIDと称する)、及び当該ホスト装置から認識される論理ユニット(LU)を識別するための論理ユニット番号(LUN)の対を保持するのに用いられる。図3の例では、ホストIDフィールド32には、ホストID及び論理ユニット番号LUNの対が、ID(LUN)の形式で保持される。
【0043】
論理ボリューム番号フィールド31及びホストIDフィールド32の組により、論理ボリューム番号フィールド31の示す論理ボリュームが、ホストIDフィールド32(ホストID)の示すホスト装置から認識される、当該ホストIDフィールド32(LUN)の示す論理ユニットに割り当てられる。この割り当てをLUマッピングと称する。第1の実施形態では、ホストIDフィールド32の示すホスト装置からディスクアレイ装置1に対して、当該ホストIDフィールド32の示す論理ユニットへのアクセスが要求された場合、ホスト管理部105は、ホスト管理テーブル102aによる上述のLUマッピングに従い、当該論理ユニットに対応付けられた論理ボリュームへのアクセスを許可する。つまりホストIDフィールド32に保持されるホストIDは、当該ホストIDフィールド32に保持される論理ユニット番号の論理ユニットへのアクセスが、対応する論理ボリューム番号フィールド31の示す論理ボリュームへのアクセスとして許可されるホスト装置を示す。
【0044】
第1の実施形態では、論理ボリュームAが構築された段階では、当該論理ボリュームAは、ホスト装置H1,H2,H3,H4及びH5からそれぞれ認識される論理ユニット番号が0,1,0,0及び0の論理ユニットに割り当てられるものとする。このため、図3(a)に示す初期のホスト管理テーブル102aの例えば先頭エントリの論理ボリューム番号フィールド31にはAが設定され、当該論理ボリューム番号フィールド31に対応するホストIDフィールド32にはH1(0),H2(1),H3(0),H4(0)及びH5(0)が設定されている。この先頭エントリは、ホスト装置H1,H2,H3,H4及びH5からディスクアレイ装置1に対して、それぞれ論理ユニット番号0,1,0,0及び0の論理ユニットへのアクセスが要求された場合に、論理ボリュームAへのアクセスが許可されることを示す。
【0045】
さて、論理ボリュームAが所定の動作モードに設定され、且つホスト管理テーブル102aが図3(a)に示す状態にある場合に、ホスト装置H1からディスクアレイ装置1に対して、論理ボリュームAへのライトアクセス(より詳細には、論理ボリュームAが割り当てられている、ホスト装置H1によって認識される論理ユニット番号が0(LUN=0)の論理ユニットへのライトアクセス)が要求されたものとする。このホスト装置H1からのライトアクセス要求は、ディスクアレイ装置1のホストインタフェースIF1で受信される。このとき、ホスト装置H1専用の、論理ボリュームAのスナップボリューム(つまり仮想の論理ボリュームA1)は存在しないものとする。するとスナップショット作成部106は、論理ボリュームA及びホスト装置H1に関して所定の条件が成立したものとして、論理ボリュームAのスナップショットボリュームを、ホスト装置H1専用の仮想の論理ボリュームA1として作成する。
【0046】
ホスト装置H1専用の仮想の論理ボリュームA1が作成されると、LUマスキング設定部107は、当該仮想の論理ボリュームA1が作成されたことが反映されるように、ホスト管理テーブル102aを更新する。図3(b)は、この仮想の論理ボリュームA1の作成に応じて更新されたホスト管理テーブル102aを示す。
【0047】
図3(b)の例では、ホスト管理テーブル102aの2番目のエントリの論理ボリューム番号フィールド31に、新たに作成された仮想の論理ボリュームA1の論理ボリューム番号が設定される。また、ホスト管理テーブル102aの先頭エントリのホストIDフィールド32に設定されていたH1(0)(つまり、ホストID=H1及びLUN=0の対)が、上記2番目のエントリのホストIDフィールド32に移動される。このホスト管理テーブル102aの更新により、ホスト装置H1から認識可能な論理ユニット番号0の論理ユニットへの論理ボリュームの割り当てが、論理ボリュームAから論理ボリュームA1に変更される。つまり、論理ボリュームAのH1(0)へのマッピング(LUマッピング)が解消されて、論理ボリュームA1のH1(0)へのマッピングが新たに設定される。
【0048】
以後、ディスクアレイ装置1においては、ホスト装置H1からの論理ボリュームAへのアクセスの要求は、仮想の論理ボリュームA1へのアクセスの要求として処理される。より詳細には、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のホスト管理部105においては、ホスト装置H1からの論理ユニット番号が0の論理ボリュームへのアクセスの要求は、論理ボリュームAへのアクセスの要求としてではなく、仮想の論理ボリュームA1へのアクセスの要求として処理される。つまり、ホスト管理部105は論理ボリューム切り替え手段として機能して、ホスト装置H1からの論理ボリュームAへのアクセスを、仮想の論理ボリュームA1へのアクセスに切り替える。
【0049】
これにより、ホスト装置H1からのライトアクセスは仮想の論理ボリュームA1に対して行われる。つまり、動画編集者P1の操作に基づくホスト装置H1からの動画編集が仮想の論理ボリュームA1に格納されている動画データに対して行われる。これにより、論理ボリュームAの内容は変更されず、オリジナルの状態を維持する。つまり論理ボリュームAは、オリジナル動画データを保存するマスタ論理ボリュームとして用いられる。仮想の論理ボリュームA1へのアクセスは、ホスト管理テーブル102aの設定によって、ホスト装置H1からのみ可能である。
【0050】
次に、ホスト管理テーブル102aが図3(b)に示す状態にある場合に、ホスト装置H2からディスクアレイ装置1に対して、論理ボリュームAへのライトアクセス(より詳細には、論理ボリュームAが割り当てられている、ホスト装置H2によって認識される論理ユニット番号が1(LUN=1)の論理ユニットへのライトアクセス)が要求されたものとする。このホスト装置H2からのライトアクセス要求は、ディスクアレイ装置1のホストインタフェースIF1で受信される。このとき、ホスト装置H2専用の、論理ボリュームAのスナップボリューム(つまり仮想の論理ボリュームA2)は存在しないものとする。するとスナップショット作成部106は、論理ボリュームA及びホスト装置H2に関して所定の条件が成立したものとして、論理ボリュームAのスナップショットボリュームを、ホスト装置H2専用の仮想の論理ボリュームA2として作成する。
【0051】
ホスト装置H2専用の仮想の論理ボリュームA2が作成されると、LUマスキング設定部107は、当該仮想の論理ボリュームA2が作成されたことが反映されるように、ホスト管理テーブル102aを更新する。図3(c)は、この仮想の論理ボリュームA2の作成に応じて更新されたホスト管理テーブル102aを示す。
【0052】
図3(c)の例では、ホスト管理テーブル102aの3番目のエントリの論理ボリューム番号フィールド31に、新たに作成された仮想の論理ボリュームA2の論理ボリューム番号が設定される。また、ホスト管理テーブル102aの先頭エントリのホストIDフィールド32に設定されていたH2(1)(つまり、ホストID=H2及びLUN=1の対)が、上記3番目のエントリのホストIDフィールド32に移動される。このホスト管理テーブル102aの更新により、ホスト装置H2から認識可能な論理ユニット番号1の論理ユニットへの論理ボリュームの割り当てが、論理ボリュームAから論理ボリュームA2に変更される。
【0053】
以後、ディスクアレイ装置1においては、ホスト装置H2からの論理ボリュームAへのアクセスの要求は、仮想の論理ボリュームA2へのアクセスの要求として処理される。より詳細には、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のホスト管理部105においては、ホスト装置H2からの論理ユニット番号が1の論理ボリュームへのアクセスの要求は、論理ボリュームAへのアクセスの要求としてではなく、仮想の論理ボリュームA2へのアクセスの要求として処理される。つまり、ホスト管理部105は論理ボリューム切り替え手段として機能して、ホスト装置H2からの論理ボリュームAへのアクセスを、仮想の論理ボリュームA2へのアクセスに切り替える。
【0054】
これにより、ホスト装置H2からのライトアクセスは仮想の論理ボリュームA2に対して行われる。つまり、動画編集者P2の操作に基づくホスト装置H2からの動画編集が仮想の論理ボリュームA2に格納されている動画データに対して行われる。この仮想の論理ボリュームA2へのアクセスは、ホスト管理テーブル102aの設定によって、ホスト装置H2からのみ可能である。
【0055】
次に、ホスト管理テーブル102aが図3(c)に示す状態にある場合に、ホスト装置H3からディスクアレイ装置1に対して、論理ボリュームAへのライトアクセス(より詳細には、論理ボリュームAが割り当てられている、ホスト装置H3によって認識される論理ユニット番号が0(LUN=0)の論理ユニットへのライトアクセス)が要求されたものとする。このホスト装置H3からのライトアクセス要求は、ディスクアレイ装置1のホストインタフェースIF1で受信される。このとき、ホスト装置H3専用の、論理ボリュームAのスナップボリューム(つまり仮想の論理ボリュームA3)は存在しないものとする。するとスナップショット作成部106は、論理ボリュームA及びホスト装置H3に関して所定の条件が成立したものとして、論理ボリュームAのスナップショットボリュームを、ホスト装置H3専用の仮想の論理ボリュームA3として作成する。
【0056】
なお、論理ボリュームAが所定の動作モードに設定されたことをもって、論理ボリュームAとホスト装置H1,H2及びH3とに関して所定の条件が成立したものとして、スナップショット作成部106が、ホスト装置H1,H2及びH3にそれぞれ対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームを、ホスト装置H1,H2及びH3専用の仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として作成してもよい。このときスナップショット作成部106が更に、ディスクアレイ装置1に接続されていないホスト装置H4及びH5にそれぞれ対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームを、図3(a)に示すホスト管理テーブル102aに基づいて、ホスト装置H4及びH5専用の仮想の論理ボリュームA4及びA5として作成してもよい。
【0057】
ホスト装置H3専用の仮想の論理ボリュームA3が作成されると、LUマスキング設定部107は、当該仮想の論理ボリュームA3が作成されたことが反映されるように、ホスト管理テーブル102aを更新する。図3(d)は、この仮想の論理ボリュームA3の作成に応じて更新されたホスト管理テーブル102aを示す。
【0058】
図3(d)の例では、ホスト管理テーブル102aの4番目のエントリの論理ボリューム番号フィールド31に、新たに作成された仮想の論理ボリュームA3の論理ボリューム番号が設定される。また、ホスト管理テーブル102aの先頭エントリのホストIDフィールド32に設定されていたH3(0)(つまり、ホストID=H3及びLUN=0の対)が、上記4番目のエントリのホストIDフィールド32に移動される。このホスト管理テーブル102aの更新により、ホスト装置H3から認識可能な論理ユニット番号0の論理ユニットへの論理ボリュームの割り当てが、論理ボリュームAから論理ボリュームA3に変更される。
【0059】
以後、ディスクアレイ装置1においては、ホスト装置H3からの論理ボリュームAへのアクセスの要求は、仮想の論理ボリュームA3へのアクセスの要求として処理される。より詳細には、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のホスト管理部105においては、ホスト装置H3からの論理ユニット番号が0の論理ボリュームへのアクセスの要求は、論理ボリュームAへのアクセスの要求としてではなく、仮想の論理ボリュームA3へのアクセスの要求として処理される。つまり、ホスト管理部105は論理ボリューム切り替え手段として機能して、ホスト装置H3からの論理ボリュームAへのアクセスを、仮想の論理ボリュームA3へのアクセスに切り替える。
【0060】
これにより、ホスト装置H3からのライトアクセスは仮想の論理ボリュームA3に対して行われる。つまり、動画編集者P3の操作に基づくホスト装置H3からの動画編集が仮想の論理ボリュームA3に格納されている動画データに対して行われる。この仮想の論理ボリュームA3へのアクセスは、ホスト管理テーブル102aの設定によって、ホスト装置H3からのみ可能である。
【0061】
このように第1の実施形態においては、ホスト装置H1,H2及びH3からディスクアレイ装置1に対して、それぞれ、論理ボリュームAに格納されている動画データの編集のために最初のライトアクセスを行うと、論理ボリュームAのスナップショットボリュームが、仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として自動的に作成される。そして、仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3(スナップショットボリューム)とホスト装置H1,H2及びH3との間でのLUNマッピングは、図3に示したように、ホスト装置H1,H2及びH3からのライトアクセスの要求に連動して、ホスト装置H1,H2及びH3からのみアクセスされるように自動的に設定される。このとき、ホスト装置H1,H2及びH3から認識される論理ユニット番号は変わらないため、ホスト装置H1,H2及びH3からは、構成の変更を意識する必要がない。また、論理ボリューム(スナップショットボリューム)Aiは、ホスト装置Hi以外のホスト装置から故意または不意にアクセスされることがない。
【0062】
ここで、ホスト装置H1,H2及びH3からのデータの書き込みが可能な仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3(スナップとボリューム)は、通常のスナップショットボリュームと異なり、運用ボリュームとして用いられることに注意されるべきである。つまり仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3が、バックアップボリュームでないことに注意されるべきである。なお、仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3のスナップショットボリュームを、適宜バックアップボリュームとして作成しても構わない。
【0063】
上述したように第1の実施形態においては、論理ボリュームAのスナップショットボリュームである仮想の論理ボリュームAiが作成されると、ホスト装置Hiからの論理ボリュームAへのライトアクセスは、仮想の論理ボリュームAiへのライトアクセスにホスト管理部105によって切り替えられる。これにより、動画編集者Piの操作に基づくホスト装置Hiからのライトアクセスによる動画編集は、仮想の論理ボリュームAi(つまり論理ボリュームAのスナップショットボリューム)に格納されている動画データ(つまりオリジナル動画データのコピー)に対して行われる。したがって、論理ボリュームAに格納されている動画データは、オリジナルの状態を維持する。つまり、オリジナル動画データは論理ボリュームAに保存される。
【0064】
よって、第1の実施形態においては、オリジナル動画データを論理ボリューム(マスタ論理ボリューム)Aに保存しながら、ホスト装置H1,H2及びH3が、動画データを同時に編集することができる。つまり、第1の実施形態においては、図1に示すストレージシステムを用いて、ホスト装置H1,H2及びH3から同時にアクセス可能な動画データ編集システムを実現することができる。
【0065】
さて、図1に示すストレージシステムでは、ホスト装置H4及びH5は、ホスト装置H1,H2及びH3と異なり、ディスクアレイ装置1と接続されていない。しかし第1の実施形態では、論理ボリュームAのLUNマッピングが、図3(a)に示す初期のホスト管理テーブル102aによって、上述のようにホスト装置H4及びH5についても予め設定されている。このため、図1に示すストレージシステムに、ホスト装置H4またはH5を追加して、当該ホスト装置H4またはH5をストレージエリアネットワークSANを介してディスクアレイ装置1に接続した場合に、特別の設定を行うことなく、当該ホスト装置H4またはH5からのアクセス要求を、上述したホスト装置H1,H2及びH3からのアクセス要求と同様に自動的に処理することができる。勿論、ホスト装置H4またはH5を追加する際に、論理ボリュームAのLUNマッピングの設定に関する情報をホスト管理テーブル102aに追加しても構わない。
【0066】
次に、ホスト装置からディスクアレイ装置1へのライトアクセスの第1及び第2の例について、ホスト装置H1からのライトアクセスを例に、それぞれ図4及び図5を参照して説明する。
【0067】
図4及び図5において、論理ボリュームA及びA1内の矩形枠LEA及びLEA1は、それぞれ互いに対応する論理エクステントを示す。図4及び図5において破線で表された矩形は、対応する論理エクステントに物理エクステントが割り当てられていないこと、つまり対応する論理エクステントが物理エクステント未割り当て状態にあることを示す。図4及び図5において実線で表された矩形は、対応する論理エクステントに物理エクステントが割り当てられていること、つまり対応する論理エクステントが物理エクステント割り当て状態にあることを示す。これらの点は、後述する図6乃至図8においても同様である。以下の説明では、矩形枠LEA及びLEA1によってそれぞれ示される論理エクステントを、論理エクステントLEA及びLEA1と称する。
【0068】
まずホスト装置H1が、当該ホスト装置H1から認識可能な論理ユニット番号が0の論理ユニット内の領域WAへのライトアクセスをディスクアレイ装置1に対して要求したものとする。ディスクアレイ装置1のホスト管理部105は、ホスト管理テーブル102aを参照することにより、論理ユニット番号が0の論理ユニットへのライトアクセスの要求を、論理ボリュームAのスナップショットボリュームである、仮想の論理ボリュームA1へのライトアクセスの要求と解釈する。つまりホスト管理部105は論理ボリューム切り替え手段として機能して、初期状態において論理ユニット番号が0の論理ユニットに割り当てられていた論理ボリュームAへのライトアクセスを、仮想の論理ボリュームA1へのライトアクセスに切り替える。そこで以下の説明では、簡略化のために、ホスト装置H1から認識可能な論理ユニット内の領域WAへのライトアクセスの要求を、論理ボリュームA1内の領域WAへのライトアクセスの要求と表現する。また、領域WAをライトアクセス範囲WAと称する。
【0069】
アクセス部108は、ホスト装置H1からのライトアクセスの要求の示すライトアクセス範囲WAが属する論理ボリュームA1内の論理エクステントLEA1に物理エクステントが割り当てられているかをエクステントテーブルに基づいて判定する。ここで、図4に示すように、論理エクステントLEA1に物理エクステントが割り当てられていないものとする。この場合、アクセス部108は、物理エクステント確保部103を用いて、空き状態の物理エクステントを確保する。
【0070】
次にアクセス部108は、図4において矢印41で示すように、確保された物理エクステントを、論理エクステント(第1の論理エクステント)LEAに対応する論理ボリュームA1内の論理エクステント(第2の論理エクステント)LEA1に割り当てる。そしてアクセス部108は、論理エクステントLEA1に対応する論理ボリューム(マスタ論理ボリューム)A内の論理エクステントLEAに物理エクステントが割り当てられているかをエクステントテーブルに基づいて判定する。
【0071】
ここで、図4に示すように、論理エクステントLEAにも物理エクステントが割り当てられていないものとする。この場合、アクセス部108は、論理エクステントLEA1のライトアクセス範囲WAに、図4において矢印42で示すように、ホスト装置H1から要求されたデータを書き込む。このデータ書き込みは、物理的には、論理エクステントLEA1に割り当てられた物理エクステント内の、ライトアクセス範囲WAに対応する領域に、上記要求されたデータを書き込むことによって実現される。
【0072】
このときアクセス部108は、論理エクステントLEAにはデータを書き込まない。このため論理エクステントLEAは、図4において矢印43で示すように何ら変更されず、物理エクステント未割り当て状態を維持する。
【0073】
これに対し、図5に示すように、論理ボリュームA1内の論理エクステントLEA1には物理エクステントが割り当てられていないものの、論理ボリュームA内の論理エクステントLEAには物理エクステント(以下、第1の物理エクステントと称する)が割り当てられているものとする。論理ボリュームA1内の論理エクステントLEA1に物理エクステントが割り当てられていない場合、アクセス部108はまず、図4において矢印41及び42で示す動作に相当する、図5において矢印51及び52で示す動作を行う。
【0074】
即ちアクセス部108は、物理エクステント確保部103によって確保された物理エクステント(以下、第2の物理エクステントと称する)を、矢印51で示すように論理ボリュームA1内の論理エクステントLEA1に割り当てる。次にアクセス部108は、論理エクステントLEA1のライトアクセス範囲WAに、矢印52で示すようにホスト装置H1から要求されたデータを書き込む。このデータ書き込みは、物理的には、論理エクステントLEA1に割り当てられた第2の物理エクステント内の、ライトアクセス範囲WAに対応する領域に、上記要求されたデータを書き込むことによって実現される。
【0075】
さて、図5に示すように、論理ボリュームA内の論理エクステントLEAに物理エクステントが割り当てられている場合、アクセス部108は更に次のような動作を行う。即ちアクセス部108は、論理エクステントLEA1のライトアクセス範囲WA以外の領域NWAx及びNWAyに、それぞれ、論理エクステントLEA内の対応する領域AAx及びAAyのデータを、データコピー部104によって、図5において矢印53x及び53yで示すようにコピーさせる。このデータコピーは、物理的には、論理エクステントLEAに割り当てられた第1の物理エクステント内の、領域AAx及びAAyに対応する領域のデータを、論理エクステントLEA1に割り当てられた第2の物理エクステント内の、領域NWAx及びNWAyに対応する領域にコピーすることによって実現される。
【0076】
このときアクセス部108は、論理エクステントLEAにはデータを書き込まない。このため論理エクステントLEAは、図5において矢印54で示すように何ら変更されず、物理エクステント未割り当て状態を維持する。
【0077】
なお、論理エクステントLEA全体のデータを論理エクステントLEA1にコピーし、しかる後に、当該論理エクステントLEA1のライトアクセス範囲WAにホスト装置H1から要求されたデータを書き込んでも構わない。つまり、論理エクステントLEAに割り当てられた第1の物理エクステント全体のデータを、論理エクステントLEA1に割り当てられた第2の物理エクステントにコピーし、しかる後に当該第2の物理エクステント内の、ライトアクセス範囲WAに対応する領域に、上記要求されたデータを書き込んでも構わない。
【0078】
次に、ホスト装置からディスクアレイ装置1へのリードアクセスの第1乃至第3の例について、ホスト装置H1からのリードトアクセスを例に、図6乃至図8を参照して説明する。
図6乃至図8には、図4及び図5と同様に、論理ボリュームA内の論理エクステントL(第3の論理エクステント)EA及び当該論理エクステントLEAに対応する論理ボリュームA1内の論理エクステント(第4の論理エクステント)LEA1が示されている。図6に示す論理エクステントLEA及びLEA1は、それぞれ、物理エクステント割り当て状態及び物理エクステント未割り当て状態にある。図6に示す論理エクステントLEA及びLEA1は、それぞれ、物理エクステント未割り当て状態及び物理エクステント割り当て状態にある。図8に示す論理エクステントLEA及びLEA1は、いずれも物理エクステント割り当て状態にある。
【0079】
まずホスト装置H1が、当該ホスト装置H1から認識可能な論理ユニット番号が0の論理ユニット内の領域RAへのリードアクセスをディスクアレイ装置1に対して要求したものとする。ディスクアレイ装置1のホスト管理部105は、ホスト管理テーブル102aを参照することにより、論理ユニット番号が0の論理ユニットへのリードアクセスの要求を、仮想の論理ボリュームA1へのリードアクセスの要求と解釈する。つまりホスト管理部105は論理ボリューム切り替え手段として機能して、初期状態において論理ユニット番号が0の論理ユニットに割り当てられていた論理ボリュームAへのライトアクセスを、仮想の論理ボリュームA1へのライトアクセスに切り替える。以下の説明では、簡略化のために、ホスト装置H1から認識可能な論理ユニット内の領域RAへのリードアクセスの要求を、論理ボリュームA1内の領域RAへのライトアクセスの要求と表現する。また、領域RAをリードアクセス範囲RAと称する。
【0080】
アクセス部108は、ホスト装置H1からのリードアクセスの要求の示すリードアクセス範囲RAが属する論理ボリュームA1内の論理エクステントLEA1に物理エクステントが割り当てられているかをエクステントテーブルに基づいて判定する。ここで、図6に示すように、論理エクステントLEA1に物理エクステントが割り当てられていないものとする。この場合、アクセス部108は、論理エクステントLEA1に対応する論理ボリュームA内の論理エクステントLEAに物理エクステントが割り当てられているかをエクステントテーブルに基づいて判定する。
【0081】
ここで、図6に示すように、論理エクステントLEAに物理エクステントが割り当てられているものとする。この場合、アクセス部108は、論理エクステントLEA1のリードアクセス範囲RAに対応する論理エクステントLEA内の領域BAのデータを、図6において矢印61で示すようにリードデータとして読み出す。このデータ読み出しは、物理的には、論理エクステントLEAに割り当てられた物理エクステント内の、リードアクセス範囲RAに対応する領域からデータを読み出すことによって実現される。リードデータは、ホスト装置H1からのリードアクセスの要求に対する応答として、ホストインタフェースIF1から当該ホスト装置H1に転送される。
【0082】
次に、図7または図8に示すように、論理ボリュームA1内の論理エクステントLEA1に物理エクステントが割り当てられているものとする。この場合、アクセス部108は、論理エクステントLEA1のリードアクセス範囲RAのデータを、図7において矢印71または図8において矢印81で示すようにリードデータとして読み出す。この動作は、論理エクステントLEA1に対応する論理ボリュームA内の論理エクステントLEAに物理エクステントが割り当てられているか(図8の場合)、或いは割り当てられていないか(図7の場合)に無関係に行われる。
【0083】
一方、論理エクステントLEA1及びLEAのいずれにも物理アドレスが割り当てられていない場合、アクセス部108は、予め定められたダミーデータ(例えば全ビットがゼロのダミーデータ)をリードデータとして生成する。このダミーデータがホストインタフェースIF1からホスト装置H1に転送される。
【0084】
なお、ホスト装置H2またはH3からディスクアレイ装置1に対してライトアクセスまたはリードアクセスが要求された場合の動作も、上述と同様に実行される。但し、対象となる論理ボリュームは論理ボリュームA1ではなくて、論理ボリュームA2またはA3となる。
【0085】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態の特徴は、図1に示す構成のストレージシステムを用いて、1つのオペレーティングシステム(以下、OSと称する)のインストールイメージ(つまり、OSインストールイメージ)を、複数のホスト装置(例えばホスト装置H1〜H3)から独立して使用でき、OSの個別インストールを不要とする第2のシステムを実現することにある。
【0086】
図9は、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される第2のシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図9に示す第2のシステムにおいて、ディスクアレイ装置1に構築されている論理ボリュームAには、OSインストールイメージ(より詳細には、設定変更等が行われていないデフォルトOSインストールイメージ)が格納されている。第2の実施形態において、OSインストールイメージとは、論理ボリュームAへのOSのインストールが完了して、当該ディスクアレイ装置1がシャットダウンした状態における、当該論理ボリュームAのデータ(OSデータ)を指す。
【0087】
論理ボリュームAにデフォルトOSインストールイメージが格納されている場合、ホスト装置H1,H2及びH3は、当該論理ボリュームA内のデフォルトOSインストールイメージにアクセスすることができる。しかし、ホスト装置H1,H2及びH3が、論理ボリュームA内のデフォルトOSインストールイメージに対して、設定変更や、アプリケーションY1,Y2及びY3のインストールを、同時に行うならば、OSデータに不整合が生じる可能性がある。そのため、第1の実施形態における動画編集と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3からの論理ボリュームAへのライトアクセスは、排他的に行われる必要がある。また、デフォルトOSインストールイメージは、変更されることなく保存される必要がある。このため、OSに対する設定変更が、デフォルトOSインストールイメージに対して直接行われないようにする必要がある。
【0088】
そこで第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットが、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のスナップショット作成部106によって作成される。つまり、ホスト装置H1,H2及びH3が、論理ボリュームA内のデフォルトOSインストールイメージに対して、それぞれ、設定変更や、アプリケーションY1,Y2及びY3のインストールをするために、ディスクアレイ装置1にライトアクセスを要求すると、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームが自動的に作成される。
【0089】
作成されたホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームは、図9に示すように、ホスト装置H1,H2及びH3専用の仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として用いられる。
【0090】
ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応するスナップショットボリューム(つまり仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3)とホスト装置H1,H2及びH3との間のLUNマッピングは、第1の実施形態と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3からのライトアクセスの要求に連動して、ホスト装置H1,H2及びH3からのみアクセスされるように、LUマスキング設定部107によってホスト管理テーブル102a上に自動的に設定される(図3参照)。また、ホスト装置H1,H2またはH3からライトアクセスまたはリードアクセスが要求された場合の動作も、第1の実施形態と同様に実行される。
【0091】
よって、第2の実施形態によれば、1つのOSインストールイメージを、複数のホスト装置から独立して使用し、個別インストールが不要となるようなシステムを実現することができる。
【0092】
[第3の実施形態]
次に第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態の特徴は、図1に示す構成のストレージシステムを用いて、サーバ仮想化環境にて、1つの論理ボリューム内に複数の仮想ディスクを格納し、それら仮想ディスクに対して物理サーバ(ホスト装置)からのアクセスを可能とする第3のシステムを実現することにある。
【0093】
図10は、図1に示す構成のストレージシステムを用いて実現される第3のシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図10に示す第3のシステムにおいて、ホスト装置H1,H2及びH3は物理サーバである。ホスト装置H1,H2及びH3上では、それぞれ仮想サーバ(仮想マシン)VM1,VM2及びVM3が動作している。周知のように仮想サーバVM1,VM2及びVM3は、他のホスト装置(物理サーバ)に移動可能である。例えばホスト装置H3に障害が発生した場合、仮想サーバVM3はホスト装置H1またはH2に移動可能である。
【0094】
ディスクアレイ装置1に構築されている論理ボリュームAには、サーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFS(デフォルトのサーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFS)が作成されている。このサーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFS内には、仮想サーバVM1,VM2及びVM3から、それぞれ、ディスクとして認識される仮想ディスクファイルV1,V2及びV3が作成されている。論理ボリュームAにはまた、仮想サーバ(仮想マシン)構成管理情報VMC(図示せず)が格納されている。仮想サーバ構成管理情報VMCは、仮想サーバと、当該仮想サーバから認識(アクセス)可能な仮想ディスクファイルとの対応関係を示す。ここでは仮想サーバ構成管理情報VMCにより、仮想サーバVM1,VM2及びVM3は、それぞれ仮想ディスクファイルV1,V2及びV3と対応付けられている。つまり仮想サーバVMj(j=1,2,3)は、仮想ディスクファイルVjと対応付けられている。
【0095】
ホスト装置H1,H2及びH3は、いずれもサーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFS内の仮想ディスクファイルV1,V2及びV3に対してアクセス可能である。より詳細には、ホスト装置Hi上で仮想サーバVMjが動作しているならば、ホスト装置Hi(上の仮想サーバVMj)は、仮想ディスクファイルVjにアクセス可能である。
【0096】
図10の例では、仮想サーバVM1,VM2及びVM3は、それぞれ、ホスト装置H1,H2及びH3上で動作している。この場合、ホスト装置H1,H2及びH3は、それぞれサーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFS内の仮想ディスクファイルV1,V2及びV3に対してアクセス可能である。しかし、例えばホスト装置H1,H2及びH3から仮想ディスクファイルV1,V2及びV3へのライトアクセスで、サーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFSのメタデータを変更するならば、当該VFSのメタデータに不整合が生じる可能性がある。そのため、第1の実施形態における動画編集と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3からの論理ボリュームAへのライトアクセスは、排他的に行われる必要がある。
【0097】
例えば、1つの論理ボリュームに関して排他アクセスを行う手段として、SCSI(Small Computer System Interface)コマンドのリザーブコマンドによって論理ボリュームをリザーブすることが知られている。しかし、この手段では、あるホスト装置が論理ボリュームをリザーブしている期間、他のホスト装置からの当該論理ボリュームへのアクセスが不可能となるため、性能や可用性の低下を招く。また、デフォルトのサーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFS(以下、デフォルトVFSイメージと称する)は、変更されることなく保存される必要がある。このため、仮想ディスクファイルV1、V2またはV3の変更が、デフォルトVFSイメージに対して直接行われないようにする必要がある。
【0098】
そこで第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットが、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のスナップショット作成部106によって作成される。つまり、ホスト装置H1,H2及びH3が、論理ボリュームA内のデフォルトVFSイメージに対して、それぞれ、設定変更のためにディスクアレイ装置1にライトアクセスを要求すると、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームが自動的に作成される。
【0099】
作成されたホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームは、図10に示すように、ホスト装置H1,H2及びH3専用の仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として用いられる。仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3は、いずれもディスクファイルV1,V2及びV3を含むサーバ仮想化ソフトウェア用ファイルシステムVFSを備えている。但し、仮想の論理ボリュームAi内のディスクファイルV1,V2及びV3は、ホスト装置H1,H2及びH3(仮想サーバVM1,VM2及びVM3)からのライトアクセスによって更新される。
【0100】
ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応するスナップショットボリューム、つまり仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3とホスト装置H1,H2及びH3との間のLUNマッピングは、第1の実施形態と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3からのライトアクセスの要求に連動して、ホスト装置H1,H2及びH3からのみアクセスされるように、LUマスキング設定部107によってホスト管理テーブル102a上に自動的に設定される(図3参照)。また、ホスト装置H1,H2またはH3からライトアクセスまたはリードアクセスが要求された場合の動作も、第1の実施形態と同様に実行される。
【0101】
これにより、仮想サーバV1が動作しているホスト装置H1からの論理ボリュームA内の仮想ディスクファイルV1へのアクセスは、論理ボリュームA1内の仮想ディスクファイルV1へのアクセスに切り替えられる。同様に、仮想サーバV2及びV3が動作しているホスト装置H2及びH3からの、それぞれ、論理ボリュームA内の仮想ディスクファイルV2及びV3へのアクセスは、論理ボリュームA2内の仮想ディスクファイルV2及び論理ボリュームA3内の仮想ディスクファイルV3へのアクセスに切り替えられる。
【0102】
よって、第3の実施形態によれば、サーバ仮想化環境にて、論理ボリュームA内に仮想ディスクファイルV1,V2及びV3(つまり複数の仮想ディスク)を格納し、当該仮想ディスクファイルV1,V2及びV3に対して1つ以上の物理サーバからアクセスを行うような第3のシステムを実現することができる。第3の実施形態においては、論理ボリュームA内に複数の仮想ディスクを格納している場合であっても、当該複数の仮想ディスクは各ホスト装置から専用使用される。このため各ホスト装置は、排他処理のためのリザーブによって、他のホスト装置からアクセス制限を受けることもなく、排他処理のリザーブを不要とすることも可能である。
【0103】
[第4の実施形態]
次に第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態の特徴は、図1に示す構成と等価な構成のストレージシステムを用いて、1つのデータベースに対して複数のホスト装置がそれぞれクエリ(データベースクエリ)を同時に発行するような第4のシステムを実現することにある。
【0104】
図11は、図1に示す構成と等価な構成のストレージシステムを用いて実現される第4のシステムの構成の一例を示すブロック図である。但し、以下の説明では、便宜的に図1を援用する。第4のシステムを実現するための、図1に示す構成と等価な構成のストレージシステムでは、アレイ部20の一部もしくは全部がソリッドステートドライブ(以下、SSDと称する)から構成されているものとする。周知のように、SSDはフラッシュメモリから構成される高速ストレージデバイスである。
【0105】
図11に示す第4のシステムにおいて、ディスクアレイ装置1に構築されている論理ボリュームAには、データベースが作成されている。ホスト装置H1,H2及びH3は、それぞれ、論理ボリュームA内のデータベースにアクセスするための例えばデータベースクエリ(DBクエリ)Q1,Q2及びQ3をディスクアレイ装置1に発行することにより、当該データベースにアクセス可能である。しかし、ホスト装置H1,H2及びH3から、それぞれDBクエリQ1,Q2及びQ3を発行する際、当該ホスト装置H1,H2及びH3のファイルシステムへのマウントや当該DBクエリQ1,Q2及びQ3の実行によって、論理ボリュームAのデータの一部が変更される可能性がある。このため、ホスト装置H1,H2及びH3からのDBクエリの実行に関して、データベースに不整合が生じる可能性がある。また、ホスト装置H1,H2及びH3からのDBクエリは、データベースアクセス(データベース操作)に関して、所定の動作制御を伴いながら実行される必要がある。この場合、データベースアクセスに関して単一のホスト装置からのDBクエリを実行する場合に比べて、DBクエリ実行の性能の低下を招く可能性がある。また、複数のホスト装置からの同時アクセスに対応していないデータベースでは、そもそも複数のホスト装置からのDBクエリの実行(つまり、マルチクエリの実行)が不可能なこともある。また、デフォルトのデータベースイメージは、変更されることなく保存される必要がある。データベースアクセスのためのDBクエリは、デフォルトのデータベースイメージに対して直接実行されないようにする必要がある。
【0106】
そこで第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットが、ディスクアレイ装置1のアレイコントローラ10内のスナップショット作成部106によって作成される。つまり、ホスト装置H1,H2及びH3が、論理ボリュームA内のデータベースへのアクセスのために、それぞれ、ディスクアレイ装置1に対してDBクエリQ1,Q2及びQ3を発行すると、ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームが自動的に作成される。
【0107】
作成されたホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応する論理ボリュームAのスナップショットボリュームは、図11に示すように、ホスト装置H1,H2及びH3専用の仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3として用いられる。仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3は、いずれもデータベースを含む。但し、仮想の論理ボリュームAi内のデータベースは、ホスト装置HiからのDBクエリQiの実行によって更新される。
【0108】
ホスト装置H1,H2及びH3のそれぞれに対応するスナップショットボリューム、つまり仮想の論理ボリュームA1,A2及びA3とホスト装置H1,H2及びH3との間のLUNマッピングは、第1の実施形態と同様に、ホスト装置H1,H2及びH3からのDBクエリQ1,Q2及びQ3の発行に伴うライトアクセスに連動して、ホスト装置H1,H2及びH3からのみアクセスされるように、LUマスキング設定部107によってホスト管理テーブル102a上に自動的に設定される(図3参照)。また、ホスト装置H1,H2またはH3からのアクセスも、第1の実施形態と同様に実行される。
【0109】
よって、第4の実施形態によれば、データベースに対して、複数のホスト装置からのクエリ(DBクエリ)を同時に実行し、複数のクエリ間の動作制御を不要とした高速データベースアクセスを可能とする第4のシステムを実現することができる。複数のクエリが実行される第4の実施形態では、論理ボリュームAに対するリードアクセスが増加する。しかし、第4の実施形態では、フラッシュメモリから構成されるSSDを用いた高速なディスクアレイ装置を用いることによって、充分な性能を維持することができる。また、スナップショットの活用によって、高価なフラッシュメモリ容量を有効に活用できる。
【0110】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ホスト装置から特定の論理ボリュームへのライトアクセスが要求された場合における、当該ライトアクセスの前記特定の論理ボリュームへの影響を抑止できるディスクアレイ装置及び論理ボリュームアクセス方法を提供することができる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1…ディスクアレイ装置、10…アレイコントローラ、20…アレイ部、101…論理ディスク構成部(動作モード設定手段)、102…管理テーブル記憶部、102a…ホスト管理テーブル、103…物理エクステント確保部、104…データコピー部、105…ホスト管理部(論理ボリューム切り替え手段)、106…スナップショット作成部、107…LUマスキング設定部(テーブル更新手段)、108…アクセス部、210-0〜210-3…アレイ、H1〜H5…ホスト装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアレイと、
前記少なくとも1つのアレイへのアクセスを制御するアレイコントローラであって、第1のホスト装置を含む複数のホスト装置と接続され、前記少なくとも1つのアレイが有する物理領域を複数の物理エクステントに区分して管理し、前記複数の物理エクステントのうちの1つ以上を論理ディスクの論理エクステントに割り当てて論理ボリュームを構築するアレイコントローラとを具備し、
前記アレイコントローラは、
前記第1のホスト装置からアクセス可能な第1の論理ボリュームのスナップショットを、他のホスト装置からのアクセスが禁止される第2の論理ボリュームとして仮想的に作成するスナップショット作成手段と、
前記第1の論理ボリュームのスナップショットの作成後、前記第1のホスト装置からの前記第1の論理ボリュームへのライトアクセスを前記第2の論理ボリュームへのライトアクセスに切り替える論理ボリューム切り替え手段とを含むディスクアレイ装置。
【請求項2】
前記アレイコントローラは、前記第1の論理ボリュームの構築後、前記第1の論理ボリュームを、前記第1の論理ボリュームが更新されるのを抑止するための所定の動作モードに設定する動作モード設定手段を更に含み、
前記スナップショット作成手段は、前記第1の論理ボリュームが前記所定の動作モードに設定されている場合、所定の条件が成立した際に、前記第1の論理ボリュームのスナップショットを作成する請求項1記載のディスクアレイ装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記第1のホスト装置から前記第1の論理ボリュームへの最初のライトアクセスが要求された場合、または前記第1の論理ボリュームが前記所定の動作モードに設定された場合に成立する請求項2記載のディスクアレイ装置。
【請求項4】
前記アレイコントローラは、
論理ボリュームと当該論理ボリュームにアクセス可能なホスト装置との対応を管理するためのホスト管理テーブルであって、少なくとも、第1の論理ボリュームと前記第1のホスト装置との対応を示す第1のエントリ情報が初期設定されたホスト管理テーブルと、
前記ホスト管理テーブルを更新するテーブル更新手段であって、前記第1の論理ボリュームの前記スナップショットの作成に応じて前記ホスト管理テーブルを更新することにより、前記第1の論理ボリュームと前記第1のホスト装置との対応を解消し、且つ前記第2の論理ボリュームと前記第1のホスト装置とを新たに対応付けるテーブル更新手段とを更に含み、
前記論理ボリューム切り替え手段は、前記ホスト管理テーブルに基づいて、前記第1のホスト装置からの前記第1の論理ボリュームへのライトアクセスを前記第2の論理ボリュームへのライトアクセスに切り替える
請求項3記載のディスクアレイ装置。
【請求項5】
前記第1のエントリ情報は、前記第1の論理ボリュームと前記第1のホスト装置を含むホスト装置群との対応を示しており、
前記テーブル更新手段は前記第1の論理ボリュームの前記スナップショットの作成に応じて、前記第1のエントリ情報から前記第1のホスト装置を示す情報を削除し、且つ前記第2の論理ボリュームと前記第1のホスト装置との対応を示す第2のエントリ情報を前記ホスト管理テーブルに設定する
請求項4記載のディスクアレイ装置。
【請求項6】
前記アレイコントローラは、前記ホスト管理テーブルに基づいて、前記第1のホスト装置を含む前記複数のホスト装置の各々からのアクセスを管理するホスト管理手段であって、前記第1のホスト装置以外のホスト装置からの前記第2の論理ボリュームへのアクセスの要求を拒否するホスト管理手段とを更に含み、
前記ホスト管理手段は、前記論理ボリューム切り替え手段を含む
請求項5記載のディスクアレイ装置。
【請求項7】
前記第1のエントリ情報は、前記第1の論理ボリュームへのアクセスが可能な前記ホスト装置群それぞれを識別するためのホストIDと、前記第1の論理ボリュームが割り当てられる、前記ホスト装置群それぞれから認識される論理ユニットの論理ユニット番号とを含み、
前記第2のエントリ情報は、前記第2の論理ボリュームへのアクセスが可能な前記第1のホスト装置のホストIDと、前記第2の論理ボリュームが割り当てられる、前記第1のホスト装置から認識される第1の論理ユニットの論理ユニット番号とを含み、
前記第1のホスト装置は、前記第1の論理ユニットの論理ユニット番号を指定することで前記ディスクアレイに対して前記第1の論理ユニットへのアクセスを要求し、
前記論理ボリューム切り替え手段は、前記第1のホスト装置から、前記第1の論理ユニットの論理ユニット番号の指定によるアクセスが要求された場合、前記ホスト管理テーブルにより前記第1のホスト装置のホストID及び前記第1の論理ユニットの論理ユニット番号に対応付けられた前記第2の論理ボリュームへのアクセスに切り替える
請求項6記載のディスクアレイ装置。
【請求項8】
前記アレイコントローラは、論理ボリュームへのアクセスを処理するアクセス手段を更に含み、
前記アクセス手段は、前記切り替えられた第2の論理ボリュームへのライトアクセスにおいて、
前記ホスト装置から要求されたライトアクセス範囲が属する前記第2の論理ボリュームの第2の論理エクステントが物理エクステント未割り当ての場合には、前記第2の論理エクステントに第2の物理エクステントを割り当てた後に、
前記第2の論理エクステントに対応する前記第1の論理ボリュームの第1の論理エクステントが物理エクステント未割り当てであるならば、前記ホスト装置から要求されたデータを前記第2の論理ボリュームの前記ライトアクセス範囲に書き込み、
前記第1の論理エクステントが物理エクステント割り当て済みであるならば、前記第2の論理エクステントに割り当てられた前記第2の物理エクステント、または前記第2の物理エクステント内の前記ライトアクセス範囲に対応しない第2の領域に、前記第1の論理エクステントに割り当て済みの第1の物理エクステントのデータ、または前記第1の物理エクステント内の前記第2の領域に対応する第1の領域のデータをコピーし、且つ前記ホスト装置から要求されたデータを前記第2の論理ボリュームの前記ライトアクセス範囲に書き込む
請求項1記載のディスクアレイ装置。
【請求項9】
前記アクセス手段は、前記切り替えられた第2の論理ボリュームへのリードアクセスにおいて、
前記ホスト装置から要求されたリードアクセス範囲が属する前記第2の論理ボリュームの第4の論理エクステントが物理エクステント割り当て済みの場合には、前記リードアクセス範囲に対応する前記第2の論理ボリュームの領域のデータを読み出し、
前記第2の論理ボリュームの前記第4の論理エクステントが物理エクステント未割り当てであるが、前記第4の論理エクステントに対応する前記第1の論理ボリュームの第3の論理エクステントが物理エクステント割り当て済みの場合には、前記リードアクセス範囲に対応する前記第1の論理ボリュームの領域のデータを読み出す
請求項8記載のディスクアレイ装置。
【請求項10】
少なくとも1つのアレイと、前記少なくとも1つのアレイへのアクセスを制御するアレイコントローラであって、第1のホスト装置を含む複数のホスト装置と接続され、前記少なくとも1つのアレイが有する物理領域を複数の物理エクステントに区分して管理し、前記複数の物理エクステントのうちの1つ以上を論理ディスクの論理エクステントに割り当てて論理ボリュームを構築するアレイコントローラとを備えたディスクアレイ装置における論理ボリュームアクセス方法であって、
前記アレイコントローラのスナップショット作成手段が、前記第1のホスト装置からアクセス可能な第1の論理ボリュームのスナップショットを、他のホスト装置からのアクセスが禁止される第2の論理ボリュームとして仮想的に作成するステップと、
前記第1の論理ボリュームのスナップショットの作成後、前記第1のホスト装置からの前記第1の論理ボリュームへのライトアクセスを、前記アレイコントローラの論理ボリューム切り替え手段が前記第2の論理ボリュームへのライトアクセスに切り替えるステップと
を具備する論理ボリュームアクセス方法。
【請求項11】
少なくとも1つのアレイへのアクセスを制御するアレイコントローラであって、第1のホスト装置を含む複数のホスト装置と接続され、前記少なくとも1つのアレイが有する物理領域を複数の物理エクステントに区分して管理し、前記複数の物理エクステントのうちの1つ以上を論理ディスクの論理エクステントに割り当てて論理ボリュームを構築するアレイコントローラを、
前記第1のホスト装置からアクセス可能な第1の論理ボリュームのスナップショットを、他のホスト装置からのアクセスが禁止される第2の論理ボリュームとして仮想的に作成するスナップショット作成手段と、
前記第1の論理ボリュームのスナップショットの作成後、前記第1のホスト装置からの前記第1の論理ボリュームへのライトアクセスを前記第2の論理ボリュームへのライトアクセスに切り替える論理ボリューム切り替え手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−155583(P2012−155583A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15049(P2011−15049)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】