説明

ディスクバルブ

【課題】グリース等の潤滑成分を必要とせず、また自己潤滑性を有する材料であることを必須としない、良好な摺動性能を有するディスクバルブを提供する。
【解決手段】少なくとも片方に流水孔11を有する、いずれもセラミックス材よりなる第一のディスク部材と第二のディスク部材から成り、第一のディスク部材と第二のディスク部材を摺接させた状態で相対移動させることによって流水孔11の連通・遮断を行うディスクバルブであって、第一のディスク部材の、第二のディスク部材と摺接する摺動面のJISB0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)の合計値が15nm以下であり、かつ第一のディスク部材と第二のディスク部材との間に潤滑剤を供給せずに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクバルブおよびそれを利用した水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水栓のバルブとしてセラミックディスクが広く利用されている(例えば、特開昭56−134671号公報(特許文献1))。セラミックは金属と比較して硬度、強度等の機械的特性に優れることから、これを利用することによって、ディスクバルブの耐久性能を向上させようとするものである。実際の利用にあたっては、セラミックス同士の摩擦を低減する目的で、バルブの摺動面にグリースなどの潤滑成分を供給することが広く行われてきた。
【0003】
しかしながら、長年の使用によってグリースなどの潤滑成分が枯渇し、摩擦低減が不十分となり摺動特性が悪化してしまうという課題が存在した。また、潤滑成分の種類によっては、使用期間による変質や固化、異物の付着によって摺動特性が悪化してしまうという課題も存在した。
【0004】
これらの課題に対処するため、特開平02−256973号公報(特許文献2)は、摺動面に機械加工を施し、摺動特性を改善する技術を提案している。この公報によれば、ディスクバルブにおいて、2枚の弁体のうち少なくとも一方の摺接面を中央部が凸状となった中高形状としたことによって、シール性を保ったまま各弁体間の摺動特性をよくすることができ、潤滑剤を用いることなく操作トルクを小さくできるとされている。具体的には、一つの摺接面を中央部の突出高さが1〜3μmの凸曲面状の中高形状とし、他方の摺接面を平坦度1μm以下とする。さらに、各摺接面の算術平均粗さRaを0.1μm以下にするとしている。
【0005】
また特開平07−190208号公報(特許文献3)は、ディスクバルブを自己潤滑性を有する炭化珪素―炭素系複合材料によって構成することにより、ディスクバルブの摺動特性を改善する技術を提案している。この公報にあっては、自己潤滑性を有する材料により良好な摺動特性が得られることが、比較例との対比により明らかにされている。この公報における比較例は、可動ディスク、固定ディスクともに純度89%のアルミナを用い、固定側ディスクは平坦度0.9μm、算術平均粗さRaは0.1μmであり、可動ディスクは平坦度0.6μm、算術平均粗さRaは0.1μmであった。耐久試験では、シリコン系グリースを塗布しない条件で行ったところ操作トルクの増加が激しく、5万回で操作不能となったとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−134671号公報
【特許文献2】特開平02−256973号公報
【特許文献3】特開平07−190208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、今般、ディスク部材の摺動面を特定の条件を満たすものとすることにより、グリース等の潤滑成分を必要とせず、また自己潤滑性を有する材料であることを必須とせずとも、良好な摺動特性を有するディスクバルブが実現できるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明はグリース等の潤滑成分を必要とせず、また自己潤滑性を有する材料であることを必須としない、良好な摺動性能を有するディスクバルブの提供をその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明によるディスクバルブは、少なくとも片方に流水孔を有する、いずれもセラミックス材よりなる第一のディスク部材と第二のディスク部材から成り、前記第一のディスク部材と第二のディスク部材を摺接させた状態で相対移動させることによって前記流水孔の連通・遮断を行うディスクバルブであって、
前記第一のディスク部材の、第二のディスク部材と摺接する摺動面のJIS B 0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)の合計値が15nm以下であり、かつ前記第一のディスク部材と第二のディスク部材との間に潤滑剤を供給せずに用いることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例にかかるディスク部材を示す上面図である。
【図2】本発明の実施例にかかるシングルレバー水栓の内部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例にかかる操作トルクの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるディスクバルブは、ディスクバルブを構成する第一の及び第二のディスク部材が後記する要件を満たすものであること以外は、本発明が属する分野においてディスクバルブと分類または理解され、さらに今後理解されるものと、同一のものを意味する。
【0012】
本発明によるディスクバルブの具体的構成の例示は後記するが、本発明によるディスクバルブは、少なくとも二つのディスク部材から構成される。通常、ディスク部材は可動ディスクと固定ディスクと呼ばれる少なくとも二つのディスクから構成され、本発明において第一のディスク部材および第二のディスク部材は、可動ディスクおよび固定ディスクのいずれかであってよいが、好ましくは第一のディスク部材を可動ディスクとする。
【0013】
本発明にあっては、その第一のディスク部材の摺動面のJIS B 0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)の合計値を15nm以下とし、好ましくは10nm以下とする。ディスクバルブの第一のディスク部材の摺動面のRkおよびPpkの合計値を上記数値以下とすることで、自己潤滑性のある材料の使用や、潤滑剤の供給を行わなくても良好な摺動性能を発揮することが可能となる。
【0014】
本発明においてディスクバルブの第一のディスク部材の摺動面をJIS B 0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)で規定する。一般的に、表面の平滑性を評価する際にはJIS B 0601に規定される算術平均粗さRaが用いられることが多い。しかしながら本発明者らの得た知見によれば、このRaよりもむしろ、これらRkおよびRpkの合計値が、ディスクバルブのディスク部材の摺動特性をより的確に示す指標であった。RkおよびRpkの合計値は、表面の粗さ曲線から、その平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計、平均した値である。
【0015】
このRkおよびRpkの合計値の指標が意味するところと、ディスクバルブのディスク部材の摺動特性との関係は定かではないが、以下の様に考えられる。すなわち、本発明にあっては、ディスクバルブの第一のディスク部材の摺動面は、RkおよびRpkの合計値で15nm以下である。このRkおよびRpkの合計値と、Raとを直接比較することは出来ないが、傾向として、近似した値を示す。しかしながら、本発明によるディスクバルブの第一のディスク部材のような極めて高い表面平滑性をもつ表面にあっては、Raは表面に存在する孔(ポア)の影響を大きく受けるが、このような孔(ポア)が存在していても、それが密着性、あるいは摺動特性に与える影響は小さいことが見出された。すなわち、従来、好ましいと考えられていたRaは0.1μm以下の程度、つまり100nm以下の程度であるが、これよりもさらに高い表面平滑性である15nm以下の領域では、Raでは摺動性能に影響を与える凸部の状態を正確に判定できないことが見出されたのである。そして、このような高い平滑性を持つ表面を有するディスク部材によれば、自己潤滑性のある材料の使用や、潤滑剤の供給を行わなくても良好な摺動性能を発揮するという顕著な効果が得られたのである。従って、例えば、材料の密度が低く摺動面にポアが存在する場合であっても、RkおよびRpkの合計値が上記範囲内であることにより、極めて良好な摺動性能を発揮することができるので、本発明は、材料選択の面でもさらに有利なものとなる。
【0016】
本発明にあっては、JIS B 0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)、突出山部高さRpk、突出谷部深さ(Rvk)のうち、コア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)を指標とする。これにより、材料の密度に起因するポアの影響を取り除きながら、摺動性能に影響を与える凸部の状態を正確に判定することが可能となる。
【0017】
本発明の一つの好ましい態様によれば、第二のディスク部材の摺動面の、算術平均粗さRaは好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以下であり、最も好ましくは0.2μm以下である。第二のディスク部材の表面平滑性がこの範囲であることによって、ディスクバルブ全体の良好な摺動性能および良好なシール性能を得ることができる。
【0018】
本発明の別の好ましい態様によれば、第一のディスク部材、第二のディスク部材は摺動面の中央部に凸部を有する中高形状であることが好ましい。ディスク部材の摺動面がこのような形状であることによって、接触面積を制御することが出来、良好なシール性能を維持したまま、摺動性能をさらに向上させることが可能となる。
【0019】
本発明において、摺動面を中高形状とした場合、平坦度については、上限が好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。平坦度がこの範囲にあることで良好な耐水圧性が発揮され、摺動面から液体が漏れる可能性が低減できる。ここでいう平坦度とは、基準平面に対する面の起伏のことをいい、例えば、富士フィルム(株)製FUJINON F601コンパクトレーザー干渉計にて測定される。
【0020】
本発明におけるディスク部材を形成する材料としては、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの非酸化物系セラミックおよびその複合材や、アルミナ、ジルコニア(完全安定化、部分安定化したものを含む)などの酸化物系セラミック材料およびその複合材を好適に利用することができる。炭化ケイ素は良好な性能の観点から好ましく、アルミナは製造コストの観点から好ましい材料である。
【0021】
本発明におけるディスク部材においては、上記のセラミックに加えて種々の副成分を加えることができる。例えば、特開2005−206460号公報に記載のように、アルミナにナトリウム、マグネシウム、カルシウム、シリコン、コバルト、ニッケルなどの種々の副成分を添加することや、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどの粘度鉱物を添加することで内部ポアの減少および低温焼結性の向上などを向上させることができる。このとき、添加する副成分は10重量%以下0重量%以上が好ましく、6重量%以下4重量%以上が特に好ましい。
【0022】
また、アルミナを主成分として、ジルコニアを添加することによって、耐摩耗性能を向上させたものを使用することも好ましい。この場合、添加するジルコニアとしては耐水性の面から安定化ジルコニアが好ましく、特に部分安定化ジルコニアを使うことが好ましい。添加するジルコニアの量としては10重量%以下2.5重量%以上が好ましく、特に5重量%程度が好ましい。ジルコニアの部分安定化の為に添加される材料としては、MgO、CaO、Yなどが好適に利用でき、強度の観点からYが好ましい。添加量としては2mol%以上8mol%以下が好ましく、3mol%程度が好ましい。
【0023】
本発明によるディスク部材の成型にあたっては、既存セラミックの成型方法を好適に利用できる。例えば、粉末のセラミック材料を金型、鋳込み、射出法などにより成型し、常圧成型する方法が考えられる。
【0024】
本発明によるディスク部材の製造方法として、周知の製造方法が好適に利用できる。生産性の観点からは常圧焼結が好まれるが、ガス圧焼結、ホットプレス、熱間静水圧加圧焼結(HIP)などにより製造しても良い。
【0025】
上記の方法で製造したディスク部材の摺動面について、周知の方法で表面加工を行うことで平滑性を向上させる。例えば、ラップ工程で所期の表面粗さが得られるように、遊離砥粒又固定砥粒で焼成体を加工した後、最終的に機械ラップで所期の表面粗さと表面形状・精度が得られるようにダイヤモンドの遊離砥粒で加工する。
【0026】
本発明によるディスクバルブのディスク部材の模式図を図1に示す。図1(a)に可動ディスク1を、図1(b)に固定ディスク2をそれぞれ示す。可動ディスク1の摺動面にはその中央部付近に可動ディスク流水孔11が形成されている。また、固定ディスク2の摺動面には、水栓の吐水口へ接続される吐水流水孔21、給水管に接続される給水流水孔22、給湯管に接続される給湯流水孔23がそれぞれ接続されている。
【0027】
可動ディスク1と固定ディスク2はそれぞれの摺動面が接する形でディスクバルブを形成する。止水状態においては給水流水孔22、給湯流水孔23は、可動ディスク流水孔11とは遮断された状態となっており、給水管、給湯管からの湯水は止水された状態となっている。
【0028】
通水状態においては可動ディスク1が摺動することにより、可動ディスク流水孔11が給水流水孔22、給湯流水孔23と連通する状態となる。このとき、給水流水孔22、給湯流水孔23から供給された湯水が可動ディスク流水孔11を通り、吐水流水孔21へ流入することで、通水する仕組みとなっている。
【0029】
また、可動ディスク1を紙面方向左右に傾動させることにより、可動ディスク流水孔11を給水流水孔22、給湯流水孔23との連通面積を変化させることによって、吐水される湯水の混合比率を変更させることが可能となり、どちらかだけと連通させることによって、湯または水だけを吐水することも可能となる。ここでは、湯水混合水栓に用いるディスク部材の例を示したが、ディスク部材は固定ディスク、可動ディスクの少なくともどちらかに流水孔を設け、相対移動により連通、遮断が行われるものではあればどのような形であってもよく、周知のディスク部材の形状を好適に適用できる。
【0030】
上記方法で加工したディスク部材を、周知の部材と周知の方法により組み立てることによって本発明におけるディスクバルブとする。また、このディスクバルブを周知の方法で水栓に組込むことでレバー水栓を得ることができる。レバー水栓は単水栓や湯水混合水栓など、ディスクバルブを使用するものであれば特に限定されない。
【0031】
本発明を適用したディスクバルブとしては、ディスク部材は二枚以上でもよい。例えば、図2に示すように、固定ディスク2´を設け、可動ディスク1を固定ディスク2、2´で挟みこむように配置する。
【0032】
本発明によるディスクバルブは材質に関わらず良好な摺動性能を有する。具体的には、本発明によるディスクバルブにあっては、材料の密度が低く摺動面にポアが存在する場合であっても、表面の突出部およびコア部の平滑性が所定の範囲内であることにより良好な摺動性能を発揮することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明をシングルレバー型湯水混合水栓のディスクバルブに応用した実施例および比較例により、さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
炭化珪素粉末に焼結助剤として、炭素(C)、炭化ホウ素(B4C)を所定量配合し、さらに所定量の成形バインダーを添加してスラリーを得た。こうして得たスラリーを噴霧乾燥させて顆粒とし、これをプレス成型後、常圧焼結により炭化ケイ素焼結体を得た。得られた炭化珪素焼結体の摺動部を固定砥粒で研削加工し、その後機械ラップ加工を行い、固定ディスクを得た。このとき、機械ラップ加工ではダイヤモンドの遊離砥粒で加工を行った。可動ディスクは、固定ディスクと同様の手順に加えて、さらに精度のよい表面粗さが得られるように、より細かいダイヤモンドの遊離砥粒を用いて追加の機械ラップ加工を行った。
【0035】
得られたディスク部材の加工後の平坦度を、富士フィルム(株)製FUJINON F601コンパクトレーザー干渉計を用いて測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.27μm、固定ディスク摺動面のそれは0.26μmであった。また、表面粗さを、表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所 サーフコーダSE3500)を用いて測定した。その結果、可動ディスク摺動面のJIS B 0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)の合計値は4.7nmであり、固定ディスク摺動面の算術平均粗さ(Ra)は0.16μmであった。
【0036】
これらのディスク部材を組込むことによって、図2に示すようなシングルレバー型湯水混合水栓を得た。なお、図2において、シングルレバー型湯水混合水栓は、可動ディスク1、固定ディスク2、操作レバー3、および摺動ロッド4からなる。使用者が操作レバー3を上下させることによって、操作レバー3と接続された摺動ロッド4が可動し、それに伴い可動ディスク1が固定ディスク2に対して相対的に摺動することによって、それぞれに設けられた流水孔が貫通し、通水する仕組みである。
【0037】
得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った結果、図3に示すように、10万回を超えても良好な操作トルクを維持するという結果が得られた。
【0038】
実施例2
実施例1と同様にして得た焼成体を、実施例1と同様に加工後して固定ディスクおよび可動ディスクを得た。これらのディスク部材の摺動面を実施例1と同様の方法を用いて測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.26μm、固定ディスク摺動面のそれ0.28μmであった。また、表面粗さについては、可動ディスク摺動面のRk及びRpkの合計値が3.8nmであり、固定ディスク摺動面のRaは0.14μmであった。
【0039】
これらのディスク部材を実施例1と同様に組込むことで、シングルレバー型湯水混合水栓を得た。得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った。その結果、図2に示すように、10万回を超えても良好な操作トルクを維持するという結果が得られた。
【0040】
比較例1
実施例1と同様にして得た焼成体の摺動部を、固定砥粒にて研削加工を行い、可動ディスクを得た。また、可動ディスクと同様の手順に加えて、ダイヤモンドの遊離砥粒で機械ラップ加工を行い、固定ディスクを得た。
【0041】
加工後、実施例1と同様の方法を用いてそれらの摺動面を測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.53μm、固定ディスク摺動面のそれは0.25μmであった。また表面粗さについては、可動ディスク摺動面のRk及びRpkの合計値は122.5nmであり、固定ディスク摺動面のRaは0.15μmであった。
【0042】
これらのディスク部材を実施例1と同様に組込むことで、シングルレバー型湯水混合水栓を得た。得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った結果、図2に示すように操作トルクの増加が激しく、3万回で止水不良が発生し操作不能となった。
【0043】
比較例2
実施例1と同様にして得た焼成体の摺動部を固定砥粒で研削加工し、その後ダイヤモンドの遊離砥粒にて機械ラップ加工を行うことにより、固定ディスクおよび可動ディスクを得た。
【0044】
加工後、実施例1と同様の方法を用いてそれらの摺動面を測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.21μm、固定ディスク摺動面のそれは0.26μmであった。また表面粗さについては、可動ディスク摺動面のRk及びRpkの合計値は46.7nmであり、固定ディスク摺動面のRaは0.16μmであった。
【0045】
これらのディスク部材を実施例1と同様に組込むことで、シングルレバー型湯水混合水栓を得た。得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った結果、図2に示すように操作トルクの増加が激しく、5万回で止水不良が発生し操作不能となった。
【0046】
比較例3
実施例1と同様にして得た焼成体の摺動部を遊離砥粒で研削加工し、その後、ダイヤモンドの遊離砥粒にて機械ラップ加工を行うことにより、固定ディスクおよび可動ディスクを得た。
【0047】
加工後、実施例1と同様の方法を用いてそれらの摺動面を測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.22μm、固定ディスク摺動面のそれは0.25μmであった。また、表面粗さについては、可動ディスク摺動面のRk及びRpkの合計値は38.6nmであり、固定ディスク摺動面のRaは0.16μmであった。
【0048】
これらのディスク部材を実施例1と同様に組込むことで、シングルレバー型湯水混合水栓を得た。得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った結果、図2に示すように操作トルクの増加が激しく、7万回で止水不良が発生し操作不能となった。
【0049】
実施例3
易焼結製アルミナ(昭和電工製:AL160SG)に部分安定化ジルコニア(東ソー製:TZ−3Y−E)を5%添加し、さらに所定量の成型用バインダーを添加してスラリーを得た。こうして得られたスラリーを噴霧乾燥させて顆粒とし、これをプレス成型後、大気焼成によりジルコニア添加アルミナ焼結体を得た。得られた焼結体の摺動面を固定砥石で研削加工し、その後機械ラップ加工を行い、固定ディスクを得た。このとき機械ラップ加工ではダイヤモンドの遊離砥石で加工を行った。可動ディスクは、固定ディスクと同様の手順に加えて、さらに精度のよい表面粗さが得られるように、より細かいダイヤモンドの遊離砥粒を用いて追加の機械ラップ加工を行った。
【0050】
加工後、実施例1と同様の方法を用いてそれらの摺動面を測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.3μm、固定ディスク摺動面のそれは0.25μmであった。また、表面粗さについては、可動ディスク摺動面のRk及びRpkの合計値は12nmであり、固定ディスク摺動面のRaは0.15μmであった。
【0051】
これらのディスク部材を実施例1と同様に組込むことで、シングルレバー型湯水混合水栓を得た。得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った。その結果、10万回を超えても良好な操作トルクを維持していた。
【0052】
実施例4
MgO、CaO、SiO、およびFeからなる挟雑成分を混合した96%アルミナ混合粉に、所定量の成型用バインダーを添加してスラリーを得た。こうして得られたスラリーを噴霧乾燥させて顆粒とし、これをプレス成型後、大気焼成により96%アルミナ焼結体を得た。得られた焼結体摺動面を固定砥石で研削加工し、その後機械ラップ加工を行い、固定ディスクを得た。このとき機械ラップ加工ではダイヤモンドの遊離砥石で加工を行った。可動ディスクは、固定ディスクと同様の手順に加えて、さらに精度のよい表面粗さが得られるように、より細かいダイヤモンドの遊離砥粒を用いて追加の機械ラップ加工を行った。
【0053】
加工後、実施例1と同様の方法を用いてそれらの摺動面を測定した。その結果、可動ディスク摺動面の平坦度は0.32μm、固定ディスク摺動面のそれは0.28μmであった。また、表面粗さについては、可動ディスク摺動面のRk及びRpkの合計値は15nmであり、固定ディスク摺動面のRaは0.14μmであった。
【0054】
これらのディスク部材を実施例1と同様に組込むことで、シングルレバー型湯水混合水栓を得た。得られたシングルレバー型湯水混合水栓において、吐水量を水側、湯側ともに8L/minにてレバーを上下左右に動かして耐久試験を行った。その結果、10万回を超えても良好な操作トルクを維持していた。
【0055】
【表1】

【符号の説明】
【0056】
1 可動ディスク
11 可動ディスク流水孔
2 固定ディスク
21 吐水流水孔
22 給水流水孔
23 給湯流水孔
3 操作レバー
4 摺動ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片方に流水孔を有する、いずれもセラミックス材よりなる第一のディスク部材と第二のディスク部材から成り、前記第一のディスク部材と第二のディスク部材を摺接させた状態で相対移動させることによって前記流水孔の連通・遮断を行うディスクバルブであって、
前記第一のディスク部材の、第二のディスク部材と摺接する摺動面のJIS B 0671に規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)の合計値が15nm以下であり、かつ前記第一のディスク部材と第二のディスク部材との間に潤滑剤を供給せずに用いることを特徴とする、ディスクバルブ。
【請求項2】
前記第一のディスク部材の摺動面の、JIS B 0671で規定されるコア部のレベル差(Rk)及び突出山部高さ(Rpk)の合計値が10nm以下である、請求項1に記載のディスクバルブ。
【請求項3】
前記第二のディスク部材の、第一のディスク部材と摺接する摺動面の、算術平均粗さRaが0.2μm以下である、請求項1または2に記載のディスクバルブ。
【請求項4】
前記第一のディスク部材及び/又は前記第二のディスク部材の摺動面が、中央部に高さが0.5μm以下の凸部を有する形状である、請求項1乃至3のいずか一項に記載のディスクバルブ。
【請求項5】
前記第一のディスク部材及び/又は前記第二のディスク部材の摺動面がアルミナにより形成されてなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のディスクバルブ。
【請求項6】
前記第一のディスク部材の摺動面が炭化珪素により形成されてなる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のディスクバルブ。
【請求項7】
前記第一のディスク部材が自己潤滑性を有さないセラミックス材からなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のディスクバルブ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のディスクバルブと、
前記ディスクバルブを摺接させた状態で相対移動させるレバーハンドルと、
前記ディスクバルブの流水孔に連結した給水路、を有した水栓ボディとを備えてなり、
前記第一のディスク部材と第二のディスク部材との間に潤滑剤を供給せずに用いられることを特徴とする、レバー式水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29194(P2013−29194A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−44942(P2012−44942)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】