説明

ディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構

【課題】 パッドを非制動時にてディスクロータから適正量だけ離間させ得る簡易な構成からなるディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構を提供する。
【解決手段】 摩擦材21と裏板20とを備えるパッド2を非制動時にてディスクロータRから離間させるパッドリトラクション機構3であって、裏板20を厚み方向に貫通し先端部がディスクロータRに当接するロッド5と、ロッド圧入用の取付孔が形成された弾性部材4とを有する。弾性部材4は、外周部側が裏板20に取付けられ、取付孔4a側にてロッド5を保持する。そして制動時にて弾性変形してパッド2がディスクロータRに向けて移動することを許容し、非制動時にて弾性変形の復元作用にてパッド2をディスクロータRから離間させ、かつ摩擦材21が摩耗した際には、ロッド5に対して摺動して、パッド2とともにロッド5に対してディスクロータRに向けて位置ズレする構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクロータに摺接されることで制動力を生ずる摩擦材と、その摩擦材の裏面を支持する裏板とを備えるパッドを非制動時にてディスクロータから離間させるディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構に関する。
【背景技術】
【0002】
パッドは、制動時にディスクロータに押圧され、非制動時にパッドリトラクション機構によってディスクロータから離間される。そしてパッドリトラクション機構は、従来様々な構成のものが知られており、例えば特許文献1,2に記載の構成のものが知られている。
特許文献1に記載のパッドリトラクション機構は、パッドとマウンティングの間に取付けられるバネ部材を有していた。マウンティングは、パッドをロータ軸方向に摺動可能に支持する部材であって、バネ部材は、制動時にパッドがマウンティングに対して摺動されることで弾性変形される。そして非制動時にて弾性変形の復元作用にてパッドをディスクロータから離間する構成になっていた。
【0003】
しかしパッドをディスクロータから離間させる離間量は、できるだけ少ない方が好ましいのにも関わらず、当該パッドリトラクション機構は、パッドの摩擦材の厚さに関係なく、パッドをディスクロータから離間させる構成になっていた。さらに前記離間量は、ディスクロータの振れやパッドの熱変形量等をも考慮する必要もある。そのため非制動時におけるパッドのディスクロータからの離間量が大きくなってしまい、制動の際に必要な液量が増加してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して特許文献2に記載のパッドリトラクション機構は、パッドのディスクロータからの離間量を常に適正値とする構成を有していた。
例えば特許文献2に係る図1に記載のパッドリトラクション機構は、パッドの裏板に取付けられる線バネから構成されるバネ部材を有していた。バネ部材は、裏板に取付けられる一端部と、ディスクロータに当接する他端部とを有しており、一端部と他端部の間に螺旋状の螺旋部(スプリング部)を有していた。したがって螺旋部の弾性力によってパッドをディスクロータから離間させる方向に弾性的に戻し得る構成になっていた。そして摩擦材が摩耗することでバネ部材に対してパッドがディスクロータ側へ位置ズレする構成になっていた。
【0005】
特許文献2に係る図4,5に記載のパッドリトラクション機構は、パッドをディスクロータから離間させるためにロッドとスプリング部材とを有していた。ロッドは、一端部がディスクロータに当接する構成になっていた。スプリング部材は、コイル状になっており、ロッドの中間位置に設けられたストッパに一端部が取付けられ、他端部がパッドの裏板に設けられた係合部材に取付けられていた。そして係合部材は、パッドの摩擦材が摩耗した際にパッドをロッドに対してディスクロータ側に位置ズレさせる構成になっていた。
【特許文献1】実開昭59−139638号公報
【特許文献2】実公平5−1702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし図4,5に記載のパッドリトラクション機構は、複雑な構成になっており、コスト高になるなどの問題があった。一方、図1に記載のパッドリトラクション機構は、シンプルな構造であるものの摩擦材が薄くなった際に、螺旋部が邪魔になってしまう。そのため十分に性能が発揮できず、実用性に乏しい構成になっていた。
そこで本発明は、パッドを非制動時にてディスクロータから適正量だけ離間させ得る簡易な構成からなるディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備えるディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によると、パッドの裏板を厚み方向に貫通し先端部がディスクロータに当接するロッドと、ロッド圧入用の取付孔が形成された弾性部材とを有している。弾性部材は、外周部側が裏板に取付けられ、取付孔側にてロッドを保持する。そして制動時にて弾性変形してパッドがディスクロータに向けて移動することを許容し、非制動時にて弾性変形の復元作用にてパッドをディスクロータから離間させる。そして摩擦材が摩耗した際には、ロッドに対して摺動して、パッドとともにロッドに対してディスクロータに向けて位置ズレする構成になっている。
【0008】
したがって弾性部材は、非制動時にてパッドをディスクロータから離間させる機能と、摩擦材が摩耗した際にパッドをロッドに対してディスクロータに向けて位置ズレさせる機能とを兼ね備えている。そのためパッドリトラクション機構は、弾性部材に二つの機能を持たせることによって従来の構成に比べて簡易な構成になっている。
また弾性部材は、パッドとともにロッドに対して位置ズレするために、摩擦材が薄くなった際においても有効にパッドをディスクロータから離間させ得る構成になっている。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、ロッドは、ディスクロータと同じまたはそれよりも小さい靭性を有する材料から成形されている。
したがってロッドによってディスクロータが攻撃されるおそれが少なくなり、ディスクロータの寿命が短くなることが防止される。
【0010】
請求項3に記載の発明によると、弾性部材がディスクロータから離間する方向に裏板から抜けることを防止するために、弾性部材の裏面側にて裏板に取付けられる保持部材を有している。そしてその保持部材に、弾性部材の弾性変形量を一定量に規制する弾性量規制部が設けられている。
したがって弾性部材は、保持部材によって裏板に対して抜けてしまうことが防止される。
また弾性部材の弾性変形量は、弾性量規制部によって一定量に規制されている。そして弾性変形量によって非制動時におけるパッドのディスクロータから離間される離間量が決定される。したがって弾性量規制部によって前記離間量を適正値に調節し得る構成になっている。
【0011】
請求項4に記載の発明によると、弾性量規制部は、環状またはC字状に形成した保持部材における内周縁の弾性部材側を面取り状にした構成になっている。
したがって弾性量規制部は、簡易な構成になっている。例えば、面取り加工、あるいは保持部材の成形型にて成形され得る。
【0012】
請求項5に記載の発明によると、摩擦材の厚さが所定量以下になったことを感知するために、裏板にスイッチ部材が取付けられている。そしてスイッチ部材は、摩擦材が摩耗してパッドがロッドに対してディスクロータに向けて位置ズレし、その位置ズレ量が所定量になった際に、ロッドと接触する構成になっている。
したがってスイッチ部材とロッドは、摩擦材の厚さが所定量以下になった際に接触する。そのためスイッチ部材とロッドは、摩耗警報装置の構成部材として利用され得る。またロッドは、(請求項1に記載するように)パッドをディスクロロータから離間させるための一の構成部材でもある。したがってロッドは、二つの機能を兼ね備えた構成になっており、部品の共通化に寄与し得る構成になっている。
【0013】
請求項6に記載の発明によると、ロッドは、導電性のある材料によって形成されており、スイッチ部材は、ロッドと接触してロッドを介してディスクロータと電気的に接続される構成になっている。
したがって摩耗警報装置を簡易な構成にすることができる。例えばスイッチ部材がロッドとディスクロータとを介してアース接続される構成にすることによって、摩耗警報装置専用の配線を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1を図1〜6にしたがって説明する。
ディスクブレーキ1は、図1に示すように浮動型のディスクブレーキであって車体側に固定されるマウンティング10と、マウンティング10に対して移動可能に支持されるキャリパ11とを有している。
マウンティング10には、一対のパッド2が摺動可能に取付けられており、パッド2とディスクロータ(以下ロータという)Rの間には、図2に示すようにパッド2をロータRから離間させる複数のパッドリトラクション機構3が設けられている。
【0015】
キャリパ11は、図1に示すようにロータRの外周外方にてロータRをロータ軸方向に跨いでおり、スライドピンによってマウンティング10に対してロータ軸方向に移動可能に支持されている。
キャリパ11のインナ側(車体側)には、シリンダ部11aが設けられており、シリンダ部11a内にピストン12が配設されている。アウタ側(車体外側)には、複数の爪部11bが形成されている。
【0016】
ピストン12は、シリンダ部11a内の液圧によってインナ側のパッド2をロータRに向けて押圧する。そしてインナ側のパッド2がロータRに押圧されることで、キャリパ11がその押圧反力によってインナ側(図中右側)に移動する。これにより爪部11bがアウタ側のパッド2をロータRに向けて押圧する。かくして一対のパッド2がロータRの摩擦面に押圧される。
【0017】
パッド2は、図2に示すように摩擦材21と裏板20を有している。
摩擦材21は、ロータRに対して摺接されることで制動力を生じる。裏板20は、金属板等から形成されており摩擦材21の裏面にて摩擦材21を支持する。
裏板20のロータ周方向両端には、図3に示すように一対の耳部20aが突出状に形成されている。これら耳部20aは、マウンティング10に凹設されたガイド部10aに摺動可能に掛け止められており、ガイド部10aにてロータ軸方向(紙面厚み方向)に摺動する。
【0018】
裏板20の各耳部20aとロータRの間には、パッドリトラクション機構3が設けられている。
パッドリトラクション機構3は、非制動時の際にパッド2をロータRに対して離間させる機構であって、図2に示すように弾性部材4とロッド5と保持部材6を有している。
裏板20の耳部20aには、図4に示すように溝部20bと貫通孔20cが形成されている。溝部20bは、裏板20裏面側にて円筒状に形成された溝であって、溝部20b内に弾性部材4と保持部材6が内設される。貫通孔20cは、溝部20bの溝底中央から裏板20を貫通しており、貫通孔20cにロッド5が挿通される。
【0019】
弾性部材4は、弾性係数の高い材料、例えばゴム材または弾性に富む樹脂材を原材料に円環状に形成されている。弾性部材4は、中央に厚み方向に貫通する取付孔4aを有しており、取付孔4aにロッド5が圧入される。このためロッド5は、取付孔4aの孔壁面とロッド5の外周面との間に生じる摩擦によって弾性部材4に対して保持される。そして好ましくは該摩擦に併せて弾性部材4の弾性力にても保持される。
【0020】
ロッド5は、柱状、例えば円柱状に形成されている。
ロッド5は、図4に示すように裏板20を厚み方向に貫通し、ロータRの摩擦面に対してほぼ直交する。そして先端部5aがロータRの摩擦面に当接している。
ロッド5は、弾性係数の低い材料、例えばカーボンまたは銅を原材料に成形されている。そして好ましくはロータRの摩擦面と同じまたはそれよりも小さい靭性を有する材料から成形され、さらに好ましくは、摩擦材21の原材料に含まれている材料の一部と同じ材料から成形されている。
【0021】
保持部材6は、金属などを原材料に図3,4に示すように円環状またはC字状に形成されている。保持部材6は、内径がロッド5の径よりも大きく、ロッド5が貫通される構成になっている。
保持部材6は、弾性部材4に続いて溝部20bに嵌め込まれ、外周縁が溝部20bの構成壁面に取付けられる。したがって保持部材6は、弾性部材4の裏面側にて裏板20に取付けられ、弾性部材4がロータRから離間する方向に裏板20から抜けることを防止する。
【0022】
一方、弾性部材4のロータR側への移動は、図4に示すように溝部20bの底面を構成する張出片20dによって規制されている。
したがって弾性部材4は、張出片20dと保持部材6とによって外周部側が保持されて、外周部側にて裏板20に取付けられている。そして取付孔4a側にてロッド5を保持する構成になっている。
【0023】
保持部材6の内周縁には、図4に示すように内周縁に沿って弾性量規制部6aが設けられている。
弾性量規制部6aは、保持部材6における内周縁の弾性部材4側を面取り状にした構成になっている。したがって弾性部材4の内周部側は、図5に示すように弾性量規制部6aによって弾性変形され得る。そして弾性変形量が弾性量規制部6aの形状によって規制されている。
【0024】
以下に、パッドリトラクション機構3の動作を説明する。
制動時には、図2に示すようにピストン12または爪部11bによってパッド2がロータRに向けて押圧され、図5に示すようにパッド2がロータRに向けて移動する。これに対してロッド5は、先端部5aが当接しているために、ロータRに向けて移動できない。
したがって弾性部材4は、外周部側がパッド2とともにロータRに向けて移動し、内周部側がロッド5とともに静止することで、内周部側が弾性変形する。これによりパッド2がロータRに向けて移動することを許容する。
【0025】
非制動時には、パッド2がピストン12の押圧または爪部11bの押圧から開放される(図2参照)。これにより弾性部材4の弾性変形の復元作用にてパッド2がロータRから離間される。そしてその離間量は、弾性部材4の弾性変形量によって決定され、弾性部材4の弾性量は、弾性量規制部6aによって決定される。したがって弾性量規制部6aによって前記離間量が適正量に調節されている。すなわち離間量は、弾性量規制部6aの形状によってロータRに対してパッド2が摺接しない程度でかつ可能な限り小さな量に調節されている。
【0026】
摩擦材21が摩耗した際には、図6に示すようにパッド2がロッド5に対して弾性部材4とともにロータRに向けて位置ズレする。そのメカニズムは、摩擦材21が摩耗していると、パッド2が図2に示すようにピストン12または爪部11bによってロータRに向けて押圧されるが、弾性部材4の弾性許容量を超えて押圧を受ける。そのため弾性部材4の取付孔4aの孔壁面がロッド5に対して滑って、弾性部材4がロッド5に対して摺動する。かくしてパッド2は、弾性部材4を介してロッド5に対してロータRに向けて位置ズレする。その結果、パッド2は、摩擦材21が摩耗した際においても常に非制動時にてロータRから適正量だけ離間される。
【0027】
以上のようにしてディスクブレーキ1用のパッドリトラクション機構3が形成されている。
すなわちパッドリトラクション機構3は、図4,5に示すようにロッド5と弾性部材4を有している。弾性部材4は、外周部側が裏板20に取付けられ、取付孔4a側にてロッド5を保持している。そして制動時にて弾性変形してパッド2がロータRに向けて移動することを許容し、非制動時にて弾性変形の復元作用にてパッド2をロータRから離間させる。そして摩擦材21が摩耗した際には、図6に示すようにロッド5に対して摺動して、パッド2とともにロッド5に対してロータRに向けて位置ズレする構成になっている。
【0028】
したがって弾性部材4は、非制動時にてパッド2をロータRから離間させる機能と、摩擦材21が摩耗した際にパッド2をロッド5に対してロータRに向けて位置ズレさせる機能とを兼ね備えている。そのためパッドリトラクション機構3は、弾性部材4に二つの機能を持たせることによって従来の構成に比べて簡易な構成になっている。
また弾性部材4は、パッド2とともにロッド5に対して位置ズレするために、摩擦材21が薄くなった際においても有効にパッド2をロータRから離間させることができる構成になっている(図6参照)。
【0029】
またロッド5は、ロータRと同じまたはそれよりも小さい靭性を有する材料から成形されている。
したがってロッド5によってロータRが攻撃されるおそれが少なくなり、ロータRの寿命が短くなることが防止される。
【0030】
またパッドリトラクション機構3は、図5に示すように弾性部材4の裏面側にて裏板20に取付けられる保持部材6を有している。そして保持部材6に、弾性部材4の弾性変形量を一定量に規制する弾性量規制部6aが設けられている。
したがって弾性部材4は、保持部材6によって裏板20に対して抜けてしまうことが防止される。
また弾性部材4の弾性変形量は、弾性量規制部6aによって一定量に規制されている。そして弾性変形量によって非制動時におけるパッド2のロータRから離間される離間量が決定される。したがって弾性量規制部6aによって前記離間量を適正値に調節し得る構成になっている。
【0031】
また弾性量規制部6aは、図4に示すように保持部材6における内周縁の弾性部材4側を面取り状にした構成になっている。
したがって弾性量規制部6aは、簡易な構成になっている。例えば、面取り加工、あるいは保持部材6の成形型にて成形され得る。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2を図7,8にしたがって説明する。
実施の形態2は、実施の形態1とほぼ同様に形成されているが、実施の形態1の構成に加えて摩耗警報装置70が設けられている点が実施の形態1と異なっている。以下、摩耗警報装置70を中心に実施の形態2について説明する。
【0033】
摩耗警報装置70は、図7に示すようにスイッチ部材7と警報用のランプ72とロッド5とを有している。
スイッチ部材7は、導電性の部材から形成されており、一端部7bが裏板20に取付けられている。そしてスイッチ部材7は、一端部7bからロータRから離間する方向に延出し、その先端からロータ周方向外方に延出し、その先端部に当接部7aを有している。当接部7aは、ロッド5の後方に位置しており、図8に示すようにロッド5の後端部5bと接触し得る位置に配設されている。
【0034】
スイッチ部材7の一端部7bは、リード線71によってランプ72の一端子と電気的に接続されている。ランプ72の他の端子は、リード線73を介して車両用バッテリ74のプラス電極と接続されている。車両用バッテリ74のマイナス電極は、アース接続されている。
【0035】
以下に、摩耗警報装置70の動作について説明する。
摩擦材21の摩耗量が少ない際には、図7に示すようにスイッチ部材7とロッド5とが離間している。そのためランプ72に電流が流れず、摩耗警報装置70は、OFFの状態になっている。
摩擦材21が摩耗した際には、パッド2がロッド5に対して徐々にロータR側へ位置ズレする(図6参照)。そして摩擦材21の摩耗量が所定量になった際には、図8に示すようにスイッチ部材7の当接部7aがロッド5の後端部5bに当接する。
【0036】
ロッド5は、導電性のある原材料、例えばカーボンまたは銅などを原材料に成形されている。そしてロータRも導電性のある材料によって形成されている。したがってスイッチ部材7は、当接部7aがロッド5の後端部5bに当接することによってロッド5とロータRとを介してアース接続される。そのためランプ72に電流が流れ、ランプ72が点灯し、摩耗警報装置70がONの状態になる。
【0037】
以上のようにして実施の形態2が形成されている。
すなわち図8に示すように裏板20にスイッチ部材7が設けられている。スイッチ部材7は、摩擦材21が摩耗してパッド2がロッド5に対してロータRに向けて位置ズレし、その位置ズレ量が所定量になった際に、ロッド5と接触する構成になっている。
したがってスイッチ部材7とロッド5は、摩擦材21の厚さが所定量以下になった際に接触する。そのためスイッチ部材7とロッド5は、摩耗警報装置の構成部材として利用され得る。またロッド5は、パッド2をロータRから離間させるための一の構成部材でもある。したがってロッド5は、二つの機能を兼ね備えた構成になっており、部品の共通化に寄与し得る構成になっている。
【0038】
またロッド5は、導電性のある材料によって形成されており、スイッチ部材7は、ロッド5と接触してロッド5を介してロータRと電気的に接続される構成になっている。
したがって摩耗警報装置70は、図7に示すようにスイッチ部材7がロッド5とロータRとを介してアース接続される。そのため摩耗警報装置70は、専用の配線が少ない簡易な構成になっている。
【0039】
(他の実施の形態)
本発明は、実施の形態1,2に限定されず、以下の形態であってもよい。
(1)例えば実施の形態1,2に係るパッドリトラクション機構は、裏板に取付けられる保持部材を有していた。しかし保持部材を有していない形態であっても良い。そしてこの場合には、弾性部材の外周部が直接裏板に取付けられる形態であっても良いし、あるいは他の取付具によって弾性部材の外周部が裏板に取付けられる形態であっても良い。
(2)実施の形態2に係るスイッチ部材は、ロッドに接触することによってアース接続され、ランプに電流が流れる構成になっていた。しかしスイッチ部材がロッドに接触することによってランプに電流が流れる形態であればどんな形態であっても良く、例えば、スイッチ部材がロッドに接触することによって没せられるピンを有しており、そのピンの出没によってON・OFFされるスイッチ部材を介してランプに電流が流れる形態であっても良い。
(3)実施の形態1,2に係る弾性部材は、裏板に対して外周部の全周が取付けられる構成になっていた。しかし弾性部材の外周部の一部または複数部が裏板に対して取付けられる構成になっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1に係るディスクブレーキの断面図である。
【図2】非制動時における図1の矢印A方向からのパッドとロータの上面図、およびピストンと爪部の一部上面図である。
【図3】図1の矢印B−B線方向からのパッドとマウンティングの正面からの断面図である。
【図4】図2の一部拡大図である。
【図5】制動時における図4に相当する図である。
【図6】摩擦材が摩耗した際の図4に相当する図である。
【図7】実施の形態2に係る図4に相当する図である。
【図8】摩擦材の厚さが所定量以下になった際の図7に相当する図である。
【符号の説明】
【0041】
1…ディスクブレーキ
2…パッド
3…パッドリトラクション機構
4…弾性部材
4a…取付孔
5…ロッド
5a…先端部
6…保持部材
6a…弾性量規制部
7…スイッチ部材
10…マウンティング
11…キャリパ
11b…爪部
12…ピストン
20…裏板
21…摩擦材
70…摩耗警報装置
R…ロータ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータに摺接されることで制動力を生ずる摩擦材と、その摩擦材の裏面を支持する裏板とを備えるパッドを非制動時にて前記ディスクロータから離間させるディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であって、
前記裏板を厚み方向に貫通し先端部がディスクロータに当接するロッドと、ロッド圧入用の取付孔が形成された弾性部材とを有し、前記弾性部材は、外周部側が前記裏板に取付けられ、前記取付孔側にて前記ロッドを保持し、制動時にて弾性変形して前記パッドが前記ディスクロータに向けて移動することを許容し、非制動時にて弾性変形の復元作用にて前記パッドを前記ディスクロータから離間させ、かつ前記摩擦材が摩耗した際には、前記ロッドに対して摺動して、前記パッドとともに前記ロッドに対して前記ディスクロータに向けて位置ズレする構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であって、
ロッドは、ディスクロータと同じまたはそれよりも小さい靭性を有する材料から成形されていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であって、
弾性部材がディスクロータから離間する方向に裏板から外れることを防止するために、前記弾性部材の裏面側にて前記裏板に取付けられる保持部材を有し、その保持部材に、前記弾性部材の弾性変形量を一定量に規制する弾性量規制部が設けられていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構。
【請求項4】
請求項3に記載のディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であって、
弾性量規制部は、環状またはC字状に形成した保持部材における内周縁の弾性部材側を面取り状にした構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であって、
摩擦材の厚さが所定量以下になったことを感知するために、裏板にスイッチ部材が取付けられており、該スイッチ部材は、前記摩擦材が摩耗してパッドがロッドに対してディスクロータに向けて位置ズレし、その位置ズレ量が所定量になった際に、前記ロッドと接触する構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構。
【請求項6】
請求項5に記載のディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構であって、
ロッドは、導電性のある材料によって形成されており、
スイッチ部材は、前記ロッドと接触して前記ロッドを介してディスクロータと電気的に接続される構成になっていることを特徴とするディスクブレーキ用のパッドリトラクション機構。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−64050(P2006−64050A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246629(P2004−246629)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】