説明

ディスクプレーヤ

【課題】樹脂製ターンテーブルの生産性を高めてコストダウンが図り易い「ディスクプレーヤ」を提供する。
【解決手段】射出成形により成形された樹脂製のターンテーブル3と、シャーシに取り付けられたモータとを備え、このモータを駆動源としてターンテーブル3を回転することにより、ターンテーブル3上に載置されたディスクが一体的に回転するようになっているディスクプレーヤにおいて、ターンテーブル3の外周縁側にディスクの載置面となる環状凸部31を形成すると共に、この環状凸部31を複数の凹部31aによって周方向に分断し、環状凸部31の内側の段落ち部32に各凹部31aに対向する貫通孔33を形成することにより、凹部31a内に射出成形時に発生するウエルドラインが位置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等のディスクに対して情報の記録および/または再生を行うディスクプレーヤに係り、特に、モータを駆動源としてディスクを回転するターンテーブルの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にディスクプレーヤには、モータを駆動源として回転するターンテーブルと、このターンテーブルの上方に対向配置されたクランパとが備えられており、装置内に搬送されたディスクをターンテーブルとクランパとでチャッキングした状態で、モータの駆動力によってターンテーブルが回転駆動されるようになっている。このようなディスクプレーヤにおいて、ターンテーブルを金属製としたものも知られているが、近年は安価で製造の簡単な樹脂製のターンテーブルが広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。かかる樹脂製ターンテーブルは円板状の成形品からなり、その上面中央にディスクの位置決め用突部が形成されると共に、上面外周縁にディスク載置面としての円環状凸部が形成されている。
【0003】
この種の樹脂製ターンテーブルは、位置決め用突部の中心に設けられた取付孔がモータの回転軸に圧入・固定され、モータを駆動源としてディスクと一体的に回転するようになっている。その際、ディスクの中心孔が位置決め用突部に嵌り込むと共に、ディスクの下面が円環状凸部に載置されるため、ディスクはターンテーブルにセンタリングされた状態でモータの回転軸と直交する平面内を回転する。したがって、回転するディスクの径方向へ光ピックアップを移動させることにより、ディスクに対して情報の情報の記録および/または再生を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3520689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した樹脂製ターンテーブルは、型締めした金型内のキャビティにシリンダ本体のノズルから溶融樹脂を射出し、この溶融樹脂をキャビティ内で冷却・固化した後、金型を型開きしてキャビティ内の成形品をエジェクトするという射出成形によって得られる。しかしながら、このような射出成形においては、溶融樹脂の流れが合流する箇所にウエルドラインと呼ばれる線状痕が必ず発生するため、ディスクの載置面となる円環状凸部の表面にウエルドラインが発生した場合、円環状凸部の平坦度が悪化してディスク載置面における面振れを無視できなくなる。このような理由から従来の樹脂製ターンテーブルでは、成形品におけるウエルドラインの発生状態を目視検査したり、何らかの後処理を施してディスク載置面の表面を平滑化しているが、そのことが生産性を低下させる要因となっていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、樹脂製ターンテーブルの生産性を高めてコストダウンが図り易いディスクプレーヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、射出成形により成形された樹脂製のターンテーブルと、シャーシに取り付けられたモータとを備え、このモータを駆動源として前記ターンテーブルを回転することにより、該ターンテーブル上に載置されたディスクが一体的に回転するようになっているディスクプレーヤにおいて、前記ターンテーブルの外周縁側にディスクの載置面となる環状凸部が形成されていると共に、この環状凸部が複数の凹部によって周方向に分断されており、前記凹部内に射出成形時に発生するウエルドラインを位置させるようにした。
【0008】
このように構成されたディスクプレーヤでは、射出成形によって成形された樹脂製のターンテーブルが使用されており、この樹脂製ターンテーブルの外周縁側にディスクの載置面となる環状凸部が形成されると共に、この環状凸部を周方向に分断する凹部内にウエルドラインが位置するようにしてあるため、煩雑な後処理を施さなくても環状凸部の平坦度が良好に保たれ、高精度で面振れの小さな樹脂製ターンテーブルを安価に成形することができる。
【0009】
上記の構成において、樹脂製ターンテーブルの中央部にディスクの位置決め用突部が形成されており、この位置決め用突部に溶融樹脂の充填口であるゲートが設定されていると共に、位置決め用突部と凹部との間に貫通孔がそれぞれ形成されていると、ゲートから充填された溶融樹脂が貫通孔の両脇を通って凹部で合流するため、凹部内にウエルドラインを確実に位置させることができて好ましい。また、このような貫通孔が樹脂製ターンテーブルに形成されていると、予めターンテーブルをモータの回転軸に固定して軸芯合わせした状態で、貫通孔に挿入したドライバ等の治具を用いてモータをシャーシに簡単に取り付けることができると共に、面振れと芯振れの両方を抑えることができる。
【0010】
この場合において、貫通孔の個数は特に限定されないが、3個以上の貫通孔が周方向に等間隔を保って配列されていると共に、3個以上のゲートが周方向に等間隔を保って設定されていることが好ましい。特に、貫通孔の個数が4以上の偶数であり、これら各貫通孔のうち、1個置きに連続する半数個の貫通孔の径方向内側にそれぞれゲートが位置しており、残り半数個の貫通孔は周方向に隣接する一対のゲートの間に位置していると、1つのゲートから充填された溶融樹脂が該ゲートに近接する貫通孔だけでなく、その両隣に位置する貫通孔に沿って流動するため、各貫通孔に対向する凹部内にウエルドラインを確実に位置させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のディスクプレーヤは、射出成形によって成形された樹脂製のターンテーブルを使用し、この樹脂製ターンテーブルの外周縁側にディスクの載置面となる環状凸部が形成されると共に、この環状凸部を周方向に分断する凹部内にウエルドラインが位置するようにしてあるため、ターンテーブルを射出成形する際に、煩雑な後処理を施さなくても環状凸部の平坦度を良好に保つことができる。その結果、高精度で面振れの小さな樹脂製ターンテーブルが安価に成形可能となるため、ディスクプレーヤのトータルコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態例に係るディスクプレーヤの要部平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すディスクプレーヤの分解斜視図である。
【図4】該ディスクプレーヤの組立状態を示す斜視図である。
【図5】該ディスクプレーヤに備えられるターンテーブルの斜視図である。
【図6】該ターンテーブルの平面図である。
【図7】該ターンテーブルの裏面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1〜図3に示すように、本発明の実施形態例に係るディスクプレーヤは、金属板製のシャーシ1と、シャーシ1に取り付けられたモータ2と、モータ2の回転軸2aに圧入・固定された樹脂製のターンテーブル3等を備えており、ターンテーブル3の上方には図示せぬクランパが回転可能に対向配置されている。そして、これらターンテーブル3とクランパとの間にCDやDVD等のディスクDをチャッキングし、かかるチャッキング状態でモータ2を回転駆動すると、ターンテーブル3とディスクDおよびクランパの三者が一体的に回転するため、図示せぬ光ピックアップをディスクDの径方向へ移送させることにより、ディスクDに対して情報の記録および/または再生が行えるようになっている。
【0014】
シャーシ1には凹部1aが形成されており、この凹部1aの底面には複数の透孔1bが穿設されている。また、シャーシ1にはモータ2やターンテーブル3の外形寸法よりも大きな開口1cが形成されており、この開口1cの一部は凹部1aの中心に向かって延びる切欠き1dと連通している。
【0015】
モータ2はシャーシ1の上方から各透孔1bに挿入した複数本のネジ4を用いて凹部1aの裏面側に取り付けられており、モータ2の回転軸2aは切欠き1dを挿通して凹部1aの上方へ突出している。
【0016】
ターンテーブル3はPC(ポリカーボネイト)等の合成樹脂を用いて製造された円板状の成形品であり、図5〜図7に示すように、このターンテーブル3には、ディスクDをセンタリングする位置決め用突部30と、ディスクDの載置面となる環状凸部31とが一体形成されている。位置決め用突部30の中心には取付孔30aが形成されており、この取付孔30aにモータ2の回転軸2aを圧入・固定することにより、ターンテーブル3はモータ2の回転軸2aと直交する面内を回転するようになっている(図2参照)。また、位置決め用突部30の外縁部には複数の弾性爪30bが形成されており、ディスクDの中心孔D1が各弾性爪30bを押し撓めながら位置決め用突部30に挿入されることにより、ディスクDはターンテーブル3に対してガタのない状態でセンタリングされるようになっている。なお、本実施形態例における弾性爪30bの数は3つであり、これら弾性爪30bは位置決め用突部30の周方向に沿って120度の等間隔に配置されている。
【0017】
環状凸部31はターンテーブル3の外周縁に沿って円環状に延びており、位置決め用突部30の外周部と環状凸部31の内周部との間は段落ち部32となっている。環状凸部31には複数の凹部31aが形成されており、これら凹部31aによって環状凸部31は周方向に分断されている。本実施形態例における凹部31aの数は6つであり、これら凹部31aは環状凸部31の周方向に沿って60度の等間隔に配置されている。なお、ディスクDの載置面となる環状凸部31の上面に対して凹部31aは凹んでいなければならないが、凹部31aと段落ち部32は本実施形態例のように段差を持って連続していても良く、あるいは凹部31aと段落ち部32が同一面で連続していても良い。
【0018】
ターンテーブル3の段落ち部32には複数の貫通孔33が形成されており、これら貫通孔33は取付孔30aと各凹部31aを結ぶ直線上に配列されている。すなわち、本実施形態例の場合、凹部31aが環状凸部31の周方向に沿って60度の等間隔に配置されている関係上、貫通孔33も段落ち部32の周方向に沿って60度の等間隔に配置されており、計6個の凹部31aの内側領域にそれぞれ貫通孔33が対向配置されている。これら6個の貫通孔33のうち、1個置きに連続する半数(3個)の貫通孔33は正円形の孔であるが、残り半数(3個)の貫通孔33は円形の内周側に弾性爪30bを位置させた異形状の孔となっている。
【0019】
上記した樹脂製のターンテーブル3は、型締めした金型内のキャビティにシリンダ本体のノズルからPC等の溶融樹脂を射出し、この溶融樹脂をキャビティ内で冷却・固化した後、金型を型開きしてキャビティ内の成形品をエジェクトするという射出成形によって得られる。その際、成形後のターンテーブル3には溶融樹脂の充填口であるゲートGの痕跡が残り、本実施形態例では、位置決め用突部30の裏面側の3箇所がゲートGの設定位置となっている。図7に示すように、これら3つのゲートGは位置決め用突部30の周方向に沿って120度の等間隔に配置されており、段落ち部32に形成された6個の貫通孔33のうち、1個置きに連続する正円形の貫通孔33の内側がそれぞれゲートGの設定位置となっている。3つのゲートGをこのような位置関係に設定すると、図7の矢印で示すように、1つのゲートGから充填された溶融樹脂が、それに対向する貫通孔33の両脇を通ってキャビティの最外側へ流動するだけでなく、該貫通孔33の両隣に位置する貫通孔33の脇を通ってキャビティの最外側へ流動することになる。その結果、3つのゲートGから充填された溶融樹脂が各貫通孔33の外側に位置する計6個の凹部31aで合流するため、それぞれの凹部31a内にノッチ状に盛り上がったウエルドラインと呼ばれる線状痕が発生することになる。なお、図6中の凹部31aにウエルドラインは表示されていないが、図8の拡大図から明らかなように、ウエルドラインWの盛り上がり量は凹部31aの深さに比べて十分に小さいため、ウエルドラインWの上端が環状凸部31の上面(ディスクDの載置面)から突出することはない。
【0020】
ターンテーブル3はシャーシ1の凹部1a上に突出するモータ2の回転軸2aに固定された状態でディスクプレーヤに組み込まれるが、その際、予めモータ2の回転軸2aをターンテーブル3の取付孔30aに圧入・固定した後、このモータ2をシャーシ1の裏面側に取り付けてターンテーブル3を凹部1a上に配置するようにしている。すなわち、まずモータ2の回転軸2aをターンテーブル3の取付孔30aに軸芯が合うように圧入・固定した後、図4に示すように、この状態のままモータ2をシャーシ1の開口1cから凹部1aの裏面側へと移動する。次いで、凹部1aに穿設された透孔1bの真上にターンテーブル3の貫通孔33を位置合わせした後、ネジ4を貫通孔33から透孔1bに挿入して図示せぬドライバ等の治具で締着すると、図1と図2に示すように、ターンテーブル3が固定されたモータ2を凹部1aの裏面側に簡単に取り付けることができ、ターンテーブル3の面振れと芯振れの両方を抑えることができる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態例に係るディスクプレーヤは、射出成形によって成形された樹脂製のターンテーブル3を使用しており、このターンテーブル3の外周縁側にディスクDの載置面となる環状凸部31が形成されると共に、この環状凸部31を周方向に分断する凹部31a内にウエルドラインWが位置するようにしてあるため、ターンテーブル3を射出成形する際に、煩雑な後処理を施さなくても環状凸部31の平坦度を良好に保つことができる。その結果、高精度で面振れの小さな樹脂製ターンテーブル3を安価に製造することができるため、ディスクプレーヤのトータルコストを低減することができる。
【0022】
また、ターンテーブル3の中央部にディスクDをセンタリングするための位置決め用突部30が形成されており、この位置決め用突部30の裏面に溶融樹脂の充填口であるゲートGが設定されていると共に、環状凸部31の凹部31aと位置決め用突部30との間に貫通孔33が形成されているため、ゲートGから充填された溶融樹脂は貫通孔33の周縁に沿って凹部31aで合流することになり、凹部31a内にウエルドラインWを確実に位置させることができる。また、このような貫通孔33が樹脂製ターンテーブル2に形成されていると、予めターンテーブル3をモータ2の回転軸2aに固定して軸芯合わせした状態で、貫通孔33に挿入したドライバ等の治具を用いてモータ2をシャーシ1の裏面側に簡単に取り付けることができると共に、ターンテーブル3の面振れと芯振れの両方を抑えることができる。
【0023】
また、ターンテーブル3の段落ち部32に6個の貫通孔33が周方向に等間隔を保って配列されると共に、位置決め用突部30の裏面に3個のゲートGが周方向に等間隔を保って設定されており、これら6個の貫通孔33のうち、1個置きに連続する3個の貫通孔33の径方向内側にそれぞれゲートGの位置が設定されているため、1つのゲートGから充填された溶融樹脂が該ゲートGに対向する貫通孔33の周縁に沿ってキャビティの最外側へ流動するだけでなく、そのゲートGの両隣に位置する貫通孔33の周縁に沿ってキャビティの最外側へ流動することになる。その結果、3つのゲートGから充填された溶融樹脂が各貫通孔33の外方に位置する凹部31aで合流するため、少ない数(3個)のゲートGを用いたのにも関わらず多く(6個)の凹部31a内にウエルドラインWを確実に位置させることができる。ただし、凹部31aと貫通孔33の数は6個でなくても4以上の偶数であれば良く、例えば、ターンテーブル3の段落ち部32に8個の貫通孔33を周方向に等間隔を保って形成した場合、1個置きに連続する4個の貫通孔33の径方向内側にそれぞれゲートGを設定し、残り4個の貫通孔33を各ゲートGの間に位置させれば良い。この場合も、4つのゲートGから充填された溶融樹脂は各貫通孔33の外方に位置する凹部31aで合流するため、少ない数(4個)のゲートGを用いたのにも関わらず多く(8個)の凹部31a内にウエルドラインWを確実に位置させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 シャーシ
1a 凹部1a
1b 透孔
1c 開口
1d 切欠き
2 モータ
2a 回転軸
3 ターンテーブル
4 ネジ
30 位置決め用突部
30a 取付孔
30b 弾性爪
31 環状凸部
31a 凹部
32 段落ち部
33 貫通孔
D ディスク
D1 中心孔
G ゲート
W ウエルドライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により成形された樹脂製のターンテーブルと、シャーシに取り付けられたモータとを備え、このモータを駆動源として前記ターンテーブルを回転することにより、該ターンテーブル上に載置されたディスクが一体的に回転するようになっているディスクプレーヤにおいて、
前記ターンテーブルの外周縁側にディスクの載置面となる環状凸部が形成されていると共に、この環状凸部が複数の凹部によって周方向に分断されており、前記凹部内に射出成形時に発生するウエルドラインを位置させたことを特徴とするディスクプレーヤ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ターンテーブルの中央部にディスクの位置決め用突部が形成されており、この位置決め用突部に溶融樹脂の充填口であるゲートが設定されていると共に、前記位置決め用突部と前記凹部との間に貫通孔がそれぞれ形成されていることを特徴とするディスクプレーヤ。
【請求項3】
請求項2の記載において、3個以上の前記貫通孔が周方向に等間隔を保って配列されていると共に、3個以上の前記ゲートが周方向に等間隔を保って設定されていることを特徴とするディスクプレーヤ。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記貫通孔の個数が4以上の偶数であり、これら各貫通孔のうち、1個置きに連続する半数個の前記貫通孔の径方向内側にそれぞれ前記ゲートが位置しており、残り半数個の前記貫通孔は周方向に隣接する一対の前記ゲートの間に位置していることを特徴とするディスクプレーヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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