説明

ディスク搬送ローラの支持構造

【課題】 ベース部材にベアリング部材を介して回転自在に支持されたディスク搬送ローラに想定外の負荷がかかった場合でもベアリング部材がベース部材から外れるようなことのないディスク搬送ローラの支持構造を得ることにある。
【解決手段】 ディスク搬送ローラ5をベース部材3に回転自在に支持させるベアリング部材4が、軸方向のスリット4aを介して径方向に撓み変形可能な二股状に分岐形成されたスナップフィット部4bを有する構成とし、そのスナップフィット部4bをベース部材3のローラ取付穴3aにスラスト方向から挿入し、該挿入後のベアリング部材4にディスク搬送ローラ5のローラ軸5aを回転自在に挿入することにより、当該ローラ軸5aでスナップフィット部4bの撓みを規制してローラ取付穴3aにベアリング部材4を組み付け固定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車載用のディスク装置において、情報記録ディスクを再生乃至排出方向に搬送するディスク搬送ローラの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種のディスク搬送ローラはベース部材にベアリング部材を介して回転自在に支持させるが、この場合、前記ベアリング部材をベース部材にスナップフィットで取り付けることにより、その取付作業の簡易化を図ったディスク搬送ローラの支持構造とすることが考えられる。このようなディスク搬送ローラの支持構造に類似する従来技術として、例えばプリンタや複写機等の画像形成装置の分野では、転写ローラの回転軸端部に挿嵌したブッシュを、アンダーカットされて略U字形状に形成された軸受に対しアンダーカット部から径方向に押し込んだ後、その軸受を、ベース部材(本体フレーム)に一体化された略U字形状の軸受ガイドに対し圧縮スプリングを介して遊嵌保持させることにより、前記転写ローラのメンテナンス性を確保できるように構成された転写ローラの支持構造は既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、画像形成装置におけるシート材排出用のローラ軸を回転駆動するための駆動ギヤに軸方向へ延びるスナップフィット部を一体形成し、このスナップフィット部を本体フレームの貫通孔(ギヤ取付孔)に貫通させることで、そのスナップフィット部によって前記駆動ギヤを本体フレームに支持させた後、前記駆動ギヤの中心嵌合部に前記ローラ軸の端部を嵌合させることで両者を一体回転可能に連結すると共に、前記ローラ軸の端部外周に設けられた軸方向のリブや円筒部からなる倒れ規制部によって、前記スナップフィット部が前記貫通孔の径方向内側に倒れるのを規制するように構成されたローラ軸の支持を兼ねる駆動ギヤの取付構造も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−250333号公報([0012]〜[0015]、図2)
【特許文献2】特開2000−72279号公報([0020]〜[0026]、図2及び図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の画像形成装置における転写ローラの支持構造は以上のように構成されているので、それを車載用のディスク装置におけるディスク搬送ローラの支持に適用した場合、当該ディスク搬送ローラのローラ軸がブッシュと軸受および圧縮スプリングを介して本体フレームの軸受ガイドに弾性的に遊嵌保持された状態となるため、車両走行時の振動で前記ディスク搬送ローラが揺動してディスクの安定搬送を行えないばかりか、アンダーカットされた略U字形状の軸受にアンダーカット部から前記ディスク搬送ローラのローラ軸を径方向に嵌め込み、さらに前記軸受を略U字形状の軸受ガイドに圧縮スプリングを介して押し込んでいるため、前記ディスク搬送ローラに対してディスクが異方向から過度な力で挿入されたり、ディスク以外の例えばカード等の異物が挿入されるなどして前記ディスク搬送ローラに想定外の負荷がかかった場合、前記軸受ガイドから前記軸受が外れたり、前記ディスク搬送ローラが前記軸受から外れなどして動作不能を招くという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示されたローラ軸の支持を兼ねる駆動ギヤの取付構造では、駆動ギヤの中心嵌合部にローラ軸を嵌合して両者を一体回転させるようにしているもので、ローラ軸を本体フレームにベアリング部材で回転自在に支持させる構成となっていないばかりか、前記駆動ギヤを本体フレームのギヤ取付孔に回転自在に取り付けるためのスナップフィット部が前記駆動ギヤに一体形成され、しかも、前記駆動ギヤの中心嵌合部に嵌合されたローラ軸の端部外周には、前記スナップフィット部が前記ギヤ取付孔から外れるのを阻止するための倒れ規制部を設けて前記駆動ギヤとスナップフィット部とローラ軸とが一体回転する構成としているため、その回転時の前記スナップフィット部には前記ギヤ取付孔の内周面との摺接による大きな摩擦抵抗が生じ易くなって前記駆動ギヤおよびローラ軸の回転精度が損なわれ易く、また、前述のようにスナップフィット部を一体に有する駆動ギヤは、それ自体の構造が複雑となって成形精度が要求されコスト高になるなど、車載用ディスク装置におけるディスク搬送ローラの支持には適用できないという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ベース部材にベアリング部材を介して回転自在に支持されたディスク搬送ローラに対してディスクが異方向から過度な力で挿入されたり、ディスク以外の異物が挿入されるなどして前記ディスク搬送ローラに想定外の負荷がかかった場合でもベアリング部材がベース部材から外れるようなことのないディスク搬送ローラの支持構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るディスク搬送ローラの支持構造は、ディスク搬送ローラをベース部材のローラ取付穴にベアリング部材を介して回転自在に支持させるディスク搬送ローラの支持構造において、前記ベアリング部材は、軸方向に沿って設けられたスリットを介して径方向に撓み変形可能な二股状に分岐形成されて前記ローラ取付穴にスラスト方向から挿入され、該挿入時に前記ローラ取付穴の穴縁部に摺接してその穴径内方に撓み変形するスナップフィット部を有する構成とし、前記ローラ取付穴に挿入されたベアリング部材に前記ディスク搬送ローラのローラ軸を回転自在に挿入することにより、当該ローラ軸で前記スナップフィット部の撓み変形を規制して前記ローラ取付穴に前記ベアリング部材を組み付け固定したものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ベース部材のローラ取付穴にベアリング部材のスナップフィット部を撓ませながらスラスト方向から挿入した後、前記ベアリング部材にディスク搬送ローラのローラ軸を回転自在に挿入することにより、当該ローラ軸で前記スナップフィット部の撓みを規制するように構成したので、前記ローラ取付穴の内周と前記ローラ軸との間で前記ベアリング部材を確実に固定保持させることができ、このため、前記ディスク搬送ローラに対してディスクが異方向から過度な力で挿入されたり、ディスク以外の異物が挿入されたりして前記ディスク搬送ローラに想定外の負荷がかかった場合でもベアリング部材がベース部材から外れるようなことがないという効果がある。また、前述のように、ベアリング部材のスナップフィット部をベース部材のローラ取付穴にスラスト方向から挿入してベアリング部材をベース部材に取り付ける構成としたことにより、前記ベース部材のベアリング部材取付部の厚み寸法を低減させて装置の薄型化が図れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるディスク搬送ローラの支持構造を有するディスク再生装置の概要を示す斜視図、図2(a)は図1中のディスク搬送ローラの支持構造におけるベアリング部材挿入前の状態を示す斜視図、図2(b)は図2(a)のベアリング部材によるディスク搬送ローラの取付状態を示す正面図である。
図1に示すディスク再生装置は、ディスク再生機構を内蔵して前面にディスク挿排口(図示せず)を有する装置筐体1と、この装置筐体1の前面側内部に配置されたディスク搬送用のローラユニット2と、前記装置筐体1の上面を覆う天板(図示せず)とを備えている。
【0011】
前記ローラユニット2は、前記ディスク挿排口から挿入されたディスクDに下方から圧接させる方向にバネ部材(図示せず)で付勢されたベースローラ(ベース部材)3と、このベースローラ3にベアリング部材4を介して回転自在に支持されたディスク搬送ローラ5とを備えた構成となっている。さらに詳細を説明すると、図2(a)に示すように前記ベースローラ3に設けられたローラ取付穴3aにベアリング部材4がスラスト方向から挿入嵌着されるようになっている。
【0012】
そのベアリング部材4は、軸方向に沿って設けられたスリット4aを介して径方向に撓み変形可能な二股状に分岐形成されて前記ローラ取付穴3aにスラスト方向から挿入されるスナップフィット部4bを有しており、このスナップフィット部4bの外周には前記スリット4aで分断されて前記ローラ取付穴3aの穴縁部に嵌合させる周方向の係合溝4cが形成され、また、前記スナップフィット部4bの先端部には、当該スナップフィット部4bを前記ローラ取付穴3aに挿入し易くするためのテーパー面4dが形成されている。さらに、前記ローラ取付穴3aの内周面とベアリング部材4の外周面にはベアリング部材4の回り止め部3b,4eが設けられている。
【0013】
次に、ベアリング部材4によるディスク搬送ローラ5のベースローラ3への組み付けについて説明する。その組み付けに際しては、まず、ベアリング部材4のスナップフィット部4bをベースローラ3のローラ取付穴3aにスラスト方向から挿入するが、該挿入時には前記スナップフィット部4b先端のテーパー面4dが前記ローラ取付穴3aの穴縁部に摺接することにより、前記スナップフィット部4bが前記ローラ取付穴3aの穴径内方に撓みながら押し込まれて当該ローラ取付穴3aの穴縁部に前記スナップフィット部4b外周の係合溝4cが嵌め込み係合される。このようにしてベアリング部材4のスナップフィット部4bを前記ローラ取付穴3aに挿入係合させた後、そのベアリング部材4の中心孔部にディスク搬送ローラ5のローラ軸5aを回転自在に挿通することにより、当該ローラ軸5aによって前記スナップフィット部4bの撓みが規制される。そして、前記ローラ軸5aの端部にはギア(図示せず)が嵌着され、このギアを介して前記ディスク搬送ローラ5がモータ(図示せず)で回転駆動されるようになっている。
【0014】
次に動作について説明する。
装置筐体1のディスク挿排口からディスクDを挿入すると、モータが起動してディスク搬送ローラ5が回転駆動されることにより、前記ディスクDは装置筐体1の天板と前記ディスク搬送ローラ5との間に挟持された状態で当該ディスク搬送ローラ5の回転により装置筐体1内に搬送される。
【0015】
以上説明した実施の形態1によれば、ベースローラ3にディスク搬送ローラ5を回転自在に支持させるベアリング部材4が、軸方向のスリット4aを介して径方向に撓み変形可能な二股状に分岐形成されたスナップフィット部4bを有するように構成すると共に、そのスナップフィット部4bを前記ベースローラ3のローラ取付穴3aにスラスト方向から挿入して前記スナップフィット部4b外周の係合溝4cを前記ローラ取付穴3aの穴縁部に嵌め込み係合させた後、前記ベアリング部材4の中心孔部にディスク搬送ローラ5のローラ軸5aを回転自在に挿通して当該ローラ軸5aにより前記スナップフィット部4bの撓みを規制するように構成したので、前記ローラ取付穴3aの内周と前記ローラ軸5aとの間で前記ベアリング部材4を確実かつ堅固に固定保持させることができ、このため、前記ディスク搬送ローラ5に対してディスクDが異方向から過度な力で挿入されたり、ディスク以外の異物が挿入されたりして前記ディスク搬送ローラ5に想定外の負荷がかかった場合でもベアリング部材4がベースローラ3から外れるようなことがないという効果がある。
【0016】
また、前述のように、ベアリング部材4のスナップフィット部4bをベースローラ3のローラ取付穴3aにスラスト方向から挿入して前記ベアリング部材4をベースローラ3に取り付ける構成としたことにより、前記ベースローラ3におけるベアリング部材取付部の厚み寸法を低減させることができて装置の薄型化が図れるという効果がある。さらには、前記ローラ取付穴3aの内周面と前記ベアリング部材4の外周には回り止め部3b,4eを設けたことにより、前記ベアリング部材4がローラ軸5aと共回りするようなことがなく、その共回りによる不都合を解消できるという効果がある。
【0017】
なお、前記ベースローラ3のローラ取付穴3aは丸穴もしくは図2(a)に示すような切欠穴のいずれであってもよく、切欠穴の場合であっても、ベアリング部材4のスナップフィット部4bをスラスト方向からだけしか挿入できないように構成することで、前記実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1によるディスク搬送ローラの支持構造を有するディスク再生装置の概要を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は図1中のディスク搬送ローラの支持構造におけるベアリング部材挿入前の状態を示す斜視図、図2(b)は図2(a)のベアリング部材によるディスク搬送ローラの取付状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 装置筐体、2 ローラユニット、3 ベースローラ(ベース部材)、3a ローラ取付穴、3b 回り止め部、4 ベアリング部材、4a スリット、4b スナップフィット部、4c 係合溝、4d テーパー面、4e 回り止め部、5 ディスク搬送ローラ
、5a ローラ軸、D ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク搬送ローラをベース部材のローラ取付穴にベアリング部材を介して回転自在に支持させるディスク搬送ローラの支持構造において、
前記ベアリング部材は、軸方向に沿って設けられ、径方向に撓み変形可能であり、前記ローラ取付穴の穴縁部に摺接してその穴径内方に撓み変形するスナップフィット部を有する構成となっており、
前記ローラ取付穴に挿入されたベアリング部材に前記ディスク搬送ローラのローラ軸を回転自在に挿入することにより、当該ローラ軸で前記スナップフィット部の撓み変形を規制して前記ローラ取付穴に前記ベアリング部材を組み付け固定したことを特徴するディスク搬送ローラの支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−93685(P2009−93685A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23186(P2006−23186)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】