説明

ディスク搬送機構

【課題】スライド部材が高速で移送された場合にも、ブラケットとスライド部材との衝突やディスク搬送ローラとディスクとの衝突を抑制し、異音の発生を抑制する。
【解決手段】ディスク搬送を行うディスク搬送ローラ5と、ディスク搬送ローラ5を支持し、当該ディスク搬送ローラ5をディスクに対して当接・退避させるように回動可能なブラケット6と、ブラケット6に取り付けられ、ディスク搬送ローラ5をディスク20側に付勢するバネと、移送することによりブラケット6を回動させるカム部14を有するスライド部材13と、カム部14に取り付けられ、ブラケット6を付勢する板バネ15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスク搬送を行う際に、ディスク搬送ローラを支持するブラケットをスライダのカム部により回動させ、ディスク搬送ローラをディスクに当接させるディスク搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車載用ディスク装置では、前面のディスク挿入口からディスクを挿入し、ディスク裏面に当接したディスク搬送ローラによってディスク搬送を行うディスク搬送機構を有したスロットイン方式が適用されている。
【0003】
このディスク搬送機構には、ディスク搬送ローラ端部を後方側で支持する側壁を有し、ディスク搬送ローラを上下に移送するように、前方側を支点に回動可能なブラケットが設けられている。また、ブラケットには、ディスク搬送ローラをディスク側に付勢する圧縮コイルバネが取り付けられている。また、一方の側壁の後方側には突起が形成されている。
この突起は、前後方向に移動可能なスライド部材のカム部と当接している。カム部は、スライド部材が後方に移送された際に突起を上方に移動させ、スライド部材が前方に移送された際に突起を下方に移動させる斜面状に形成されている。
【0004】
このように構成されたディスク搬送機構において、ディスク搬送を行う際には、スライド部材を後方に移送させる。この際、圧縮コイルバネの付勢力によって、突起がカム部の斜面に沿って上方に移送され、ブラケットは前方側を支点に上向きに回動される。これにより、ディスク搬送ローラが上方に移送されてディスクに当接される。その後、ディスク搬送ローラを所定方向に回転させることによってディスク搬送を行う。
一方、ディスク再生を行う際には、スライド部材を前方に移送させる。この際、突起がカム部の斜面に沿って下方に移送され、ブラケットは前方側を支点に下向きに回動される。これにより、ディスク搬送ローラが下方に移送されてディスクから退避される。その後、再生部のターンテーブル上に載置されたディスクを回転させ、光ピックアップによりディスクの情報を読み取ることによってディスク再生を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−283494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなディスク搬送機構において、スライド部材が高速で移送された場合には、このスライド部材の移送にブラケットの回動が追従できず、カム部と突起との間に一瞬隙間ができ、その後、圧縮コイルバネの付勢力により衝突してしまい、異音(たたき音)が発生してしまうという課題があった。また、この際、ディスク搬送ローラがディスクに衝突し、異音が発生してしまうという課題があった。
【0007】
一方、特許文献1に開示されるスライダ機構では、バネ付勢力による異音発生を防止するため、付勢方向がスライダ位置により反転する第2のバネと、第2のバネの反転制御を行う2枚のスライダとを用いている。しかしながら、この特許文献1に開示されるスライダ機構は、スライド部材が高速移送され、ブラケットの回動が追従できないことに起因する衝突異音を抑制するものではない。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ディスク搬送ローラを支持するブラケットをスライド部材のカム部により回動させ、ディスク搬送ローラをディスクに対して当接・退避させるディスク搬送機構において、スライド部材が高速で移送された場合にも、ブラケットとスライド部材との衝突やディスク搬送ローラとディスクとの衝突を抑制し、異音の発生を抑制することができるディスク搬送機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るディスク搬送機構は、ディスク搬送を行うディスク搬送ローラと、ディスク搬送ローラを支持し、当該ディスク搬送ローラをディスクに対して当接・退避させるように回動可能なブラケットと、ブラケットに取り付けられ、ディスク搬送ローラをディスク側に付勢するバネと、移送することによりブラケットを回動させるカム部を有するスライド部材と、カム部に取り付けられ、ブラケットを付勢する板バネとを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、スライド部材が高速で移送された場合にも、ブラケットとスライド部材との衝突やディスク搬送ローラとディスクとの衝突を抑制し、異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るディスク装置の外観を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るディスク搬送機構の構成を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るディスク搬送機構によるディスク再生を行う際の動作を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るディスク搬送機構によるディスク搬送を行う際の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
ディスク装置1は、光等によりディスク20に対する情報の記録のみ、再生のみまたは記録・再生の両方を行うスロットイン方式の車載用ディスク装置である。
図1,2に示すように、このディスク装置1の前面にはディスク挿入口2が設けられ、ディスク装置1内部にはディスク再生を行う再生部3が設けられている。この再生部3には、ディスクが載置されるターンテーブル3aと、このターンテーブル3aを回転させるスピンドルモータ3bとが設けられている。また、ディスク挿入口2と再生部3との間でディスク搬送を行うディスク搬送機構4が設けられている。
【0013】
ディスク搬送機構4には、図2に示すように、ディスク装置1内でディスク20裏面と当接してディスク搬送を行うディスク搬送ローラ5が設けられている。このディスク搬送ローラ5は、駆動用モータ(不図示)によりギア(不図示)を介して軸心周りにローラが所定方向に回転されることによって、ディスク挿入口2から挿入されたディスク20を再生部3へ搬入し、あるいは、再生部3内のディスク20をディスク挿入口2へ搬出する。
【0014】
また、ディスク搬送ローラ5の下部にはブラケット6が設けられている。このブラケット6の長手方向両端には、ディスク搬送ローラ5端部を支持する側壁7a,7bが形成されている。側壁7aの後方側には、ディスク搬送ローラ5の一端を支持する係合穴8が形成されている。また、側壁7bの後方側には、ディスク搬送ローラ5の他端を支持する係合溝9が形成され、突起10が形成されている。さらに、側壁7a,7bには、ディスク搬送ローラ5をディスク20側に付勢する圧縮コイルバネ11(図3,4参照)が取り付けられている。このブラケット6は、支持しているディスク搬送ローラ5を上下に移送するように、前方側の支点A(図3,4参照)を中心に回動可能に構成されている。
【0015】
また、側壁7bの後方には、駆動モータ(不図示)によりラックギア12を介して前後方向に移送可能なスライド部材13が設けられている。このスライド部材13の前方側にはカム部14が形成されている。カム部14は、スライド部材13が後方に移送された際に突起10を上方に移動させ、スライド部材13が前方に移送された際に突起10を下方に移動させる斜面状に形成されている。
【0016】
また、カム部14には、ブラケット6の付勢力で撓むことによって突起10を下方(カム部14側とは反対側)に付勢する板バネ15がカシメ等により取り付けられている。この板バネ15は、板金部材や樹脂部材等によりカム部14の斜面形状と同様の形状に形成され、後方側のみ固定されている。なお、板バネ15の付勢力は、ブラケット6の回動力以下に設定されている。
【0017】
次に、上記のように構成されたディスク搬送機構4の動作について説明する。
ディスク再生を行う際には、図3に示すように、駆動モータによりラックギア12を介してスライド部材13を前方に移送させる(矢印B)。この際、圧縮コイルバネ11の付勢力よりも大きな力で移送させる。このスライド部材13の移送により、突起10がカム部14の斜面に沿って下方に移送され、ブラケット6は支点Aを中心に下向きに回動される(矢印C)。これによりディスク搬送ローラ5が下方に移送されて図4に示す状態となり、ディスク搬送ローラ5をディスク20から退避させることができる。
その後、再生部3のターンテーブル3a上に載置されたディスク20をスピンドルモータ3bにより回転させ、光ピックアップ(不図示)によりディスク20の情報を読み取ることによってディスク再生を行う。
【0018】
一方、ディスク搬送を行う際には、図4に示すように、駆動モータによりラックギア12を介してスライド部材13を後方に移送させる(矢印D)。この際、圧縮コイルバネ11の付勢力により、突起10がカム部14の斜面に沿って上方に移送され、ブラケット6は支点Aを中心に上向きに回動される(矢印E)。これによりディスク搬送ローラ5が上方に移送されて図3に示す状態となり、ディスク搬送ローラ5をディスク20に当接させることができる。
その後、駆動用モータによりギアを介してディスク搬送ローラ5を所定方向に回転させることによってディスク搬送を行う。
【0019】
ここで、スライド部材13を後方に移送させている際に、板バネ15は、ブランケット6の付勢力で撓むことによって突起10を常に下方に付勢している。そのため、スライド部材13が高速で移送された場合にも、突起10と板バネ15との間に隙間ができることはなく、ブラケット6とスライド部材13との衝突を抑制し、また、ディスク搬送ローラ5とディスク20との衝突速度を減速させることができ、異音の発生を抑制することができる。
【0020】
以上のように、この実施の形態1によれば、ディスク搬送ローラ5を支持するブラケット6をスライド部材13のカム部14により回動させ、ディスク搬送ローラ5をディスク20に対して当接・退避させるディスク搬送機構4において、カム部14に板バネ15を配置するように構成したので、スライド部材13が高速で移送された場合にも、板バネ15によりブラケット6の突起10を常に付勢することで、ブラケット6とスライド部材13との衝突を抑制し、ディスク搬送ローラ5とディスク20との衝突速度を減速させることができ、異音の発生を抑制することができる。
【0021】
なお、実施の形態1では、スライド部材13と板バネ15を別体に構成した場合について説明したが、スライド部材13と板バネ15を成形材料(樹脂材料等)で一体成形するように構成してもよい。このようにスライド部材13と板バネ15を一体成形することで、部品点数を削減することができ、コスト低減を図ることができる。
また、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ディスク装置、2 ディスク挿入口、3 再生部、3a ターンテーブル、3b スピンドルモータ、4 ディスク搬送機構、5 ディスク搬送ローラ、6 ブラケット、7a,7b 側壁、8 係合穴、9 係合溝、10 突起、11 圧縮コイルバネ、12 ラックギア、13 スライド部材、14 カム部、15 板バネ、20 ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク搬送を行うディスク搬送ローラと、
前記ディスク搬送ローラを支持し、当該ディスク搬送ローラをディスクに対して当接・退避させるように回動可能なブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられ、前記ディスク搬送ローラをディスク側に付勢するバネと、
移送することにより前記ブラケットを回動させるカム部を有するスライド部材と、
前記カム部に取り付けられ、前記ブラケットを付勢する板バネと
を備えたディスク搬送機構。
【請求項2】
スライド部材および板バネは一体成形により構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のディスク搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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