説明

ディスク装置のディスクローディング機構

【課題】ディスク媒体の記録面を傷つけることなく、該ディスク媒体を正確にローディングし、かつトリガーアームの変形を防止すること。
【解決手段】ディスク装置に挿入されるディスク媒体Aを再生位置まで搬送するディスク装置のディスクローディング機構において、クランプアーム15と、トリガーアーム17とを備え、トリガーアーム17は、クランプアーム15に形成される被係合部31aと係合する係合部38bを有し、トリガーアーム17はクランプアーム15に対して隙間Hを有した状態で回動可能に軸支され、トリガーアーム17とクランプアーム15との間に配設される付勢部材37の付勢力に抗してトリガーアーム17を回動させてディスク媒体Aを搬送させると、トリガーアーム17が付勢部材37の付勢力によって隙間Hを埋める方向にスライドすることで、トリガーアーム17の係合部38bがクランプアーム15の被係合部31aに係合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置のディスクローディング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用ディスクプレーヤ等のディスク装置では、小径のディスク媒体である8cmCDおよび大径のディスク媒体である12cmCDの双方をスロットから挿入した際に、これらのディスク媒体を再生位置までローディングするディスクローディング機構が採用されている。
【0003】
このようなディスクローディング機構では、8cmCDと12cmCDのそれぞれを再生位置にて位置決めするために、トリガーアームと呼ばれる部品が採用されている。特許文献1には、トリガーアームに対応するディスクエンド検知レバーを用いて、ディスク媒体を再生位置までローディングするディスクローディング機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−113546号公報(図9〜図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているディスクローディング機構では、ディスク媒体が再生位置までローディグされた状態では、ディスクエンド検知レバーの一部がディスク媒体の下側(記録面側)に入り込んでいる。このため、ディスク媒体に傷がつくおそれがある。
【0006】
また、高温環境下においてディスク装置を長時間使用すると、ディスクエンド検知レバーがクリープ変形してローディングの際にガタツキが発生するといった問題が生じる。さらに、ディスク媒体の下側にディスクエンド検知レバーが入り込んだ状態となるため、ディスクエンド検知レバーをディスク媒体から離す際に、ディスクエンド検知レバーが押圧力や変形から解放されて、異音を発生するおそれがある。また、ディスクエンド検知レバーは、ロックスライダーによって位置決めされるため、ロックスライダーの位置決め精度が低下すると、ディスクエンド検知レバーによるディスク媒体のローディング位置にバラツキが生じてしまう。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスク媒体の記録面を傷つけることなく、該ディスク媒体を正確にローディングし、かつトリガーアームの変形を防止することができるディスク装置のディスクローディング機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、ディスク装置に挿入されるディスク媒体を再生位置まで搬送するディスク装置のディスクローディング機構において、再生位置に搬送されたディスク媒体を押圧するクランプアームと、クランプアームに、ディスク媒体の挿入方向および排出方向に回動可能に取り付けられるトリガーアームと、を備え、トリガーアームは、クランプアームに形成される被係合部と係合する係合部を有し、トリガーアームはクランプアームに対して隙間を有した状態で回動可能に軸支されると共に、トリガーアームとクランプアームとの間には、隙間を埋める方向に付勢力を作用させる付勢部材が配設され、付勢部材の付勢力に抗してトリガーアームを回動させてディスク媒体を再生位置まで搬送させると、トリガーアームが付勢部材の付勢力によって隙間を埋める方向にスライドすることで、トリガーアームの係合部がクランプアームの被係合部に係合し、トリガーアームの回動がロックされるものである。
【0009】
また、被係合部は、トリガーアームの回動支点を中心とした円弧状の形態を有する円弧孔の内周側の領域に形成されており、該内周側の領域には回動支点に向かって段差状に切り欠かれた段差部が形成され、係合部が段差部に引っ掛かることによりトリガーアームの回動がロックされるものとするのが好ましい。
【0010】
また、トリガーアームはディスク装置の底面側に向かって突出するロッドを有しており、該ロッドには、ディスク媒体の搬送時の回動方向とは逆方向にトリガーアームを押圧するトリガースライダが接離するように構成されており、トリガースライダがロッドから離間して、該ロッドがトリガースライダからの押圧力から解放されると、付勢部材の付勢力が作用してトリガーアームが隙間を埋める方向にスライドし、係合部が被係合部に係合するものとするのが好ましい。
【0011】
また、トリガースライダはクランプ時にロッドから離間するものとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ディスク媒体の記録面を傷つけることなく、該ディスク媒体を正確にローディングし、かつトリガーアームの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るディスク装置のメカ機構部の斜視図である。
【図2】図1のディスク装置を左右が逆になるように裏返した状態を示す斜視図である。
【図3】図1中のクランプアームを左右が逆になるように裏返した状態を示す底面図である。
【図4】図1中の一点鎖線Aで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクを挿入する前の状態を示す図である。
【図5】図3中の一点鎖線Bで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクを挿入する前の状態を示す図である。
【図6】図1中の一点鎖線Aで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクが挿入された後の状態を示す図である。
【図7】図3中の一点鎖線Bで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクが挿入された後の状態を示す図である。
【図8】図2中の一点鎖線Cで囲んだ部分を拡大した図であり、トリガースライダがロッドに当接している状態を示す図である。
【図9】図2中の一点鎖線Cで囲んだ部分を拡大した図であり、トリガースライダがロッドとの当接から解放されている状態を示す図である。
【図10】図1中のトリガーアームの動作を表側から見た状態で説明するための図であり、実線は光ディスクを挿入する前のトリガーアームの状態を示す図であり、二点鎖線はトリガーアームがクランプアームに対してロックされた状態を示す図である。
【図11】図3中のトリガーアームの動作を裏側から見た状態で説明するための図であり、実線は光ディスクを挿入する前のトリガーアームの状態を示す図であり、二点鎖線はトリガーアームがクランプアームに対してロックされた状態を示す図である。
【図12】図2中のトリガースライダの動作を説明するための図であり、実線は光ディスクを挿入する前のトリガースライダの状態を示す図であり、二点鎖線はトリガーアームがクランプアームに対してロックされた際のトリガースライダの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係るディスク装置1のディスクローディング機構12について、図面を参照しながら説明する。このディスク装置1は再生装置とされているが、記録装置や記録再生装置としても良い。なお、以下の説明において、図1〜図12に示す矢示X方向を前方、矢示X方向を後方、このX方向とX方向と水平方向で直交する方向となる矢示Y方向を左方、矢示Y方向を右方、このXY平面と直交する方向の矢示Z方向を上方および矢示Z方向を下方とそれぞれ規定する。また、図4および図5における時計方向を時計方向と、反時計方向を反時計方向と規定する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係るディスク装置1のメカ機構部の斜視図である。図2は、図1のディスク装置1を左右が逆になるように裏返した状態を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、ディスク装置1は、ディスク媒体であるCD、DVDなどの光ディスクAを再生するスロットイン方式のディスク再生装置である。このディスク装置1は上方が開口した略枠状の形態を有するシャーシ2と、該シャーシ2の内部に備えられ、光ディスクAに記録されている情報を読み取り、再生する再生デッキ3とを有している。シャーシ2には、光ディスクAを挿入または排出するためのスロット4が設けられている。スロット4は横長の略矩形状の形態を有しており、その長手方向の口径は挿入される光ディスクAの直径に対応するように形成されている。このスロット4に挿入される光ディスクAは、後述するディスクローディング機構12によって再生位置までローディングされる。なお、光ディスクAは、後述するディスクガイド5によって保持されながら再生デッキ3のクランプ位置まで搬送される。なお、光ディスクAの代わりに磁気ディスク等の他の種類のディスク媒体を挿入するようにしても良い。
【0017】
図1に示すように、シャーシ2は、上方が開口した開口領域6を有する。このシャーシ2は、左右両端から下方に向かって立ち下がる左壁部7aおよび右壁部7bを有する。また、シャーシ2は、その後端から下方に向かって立ち下がる後壁部8および前方に設けられる前壁部9を有する。
【0018】
図1に示すように、再生デッキ3は、シャーシ2の開口領域6内に配置される。再生デッキ3は、シャーシ2との間に弾性部材となるつる巻バネ11を引っ掛けることによって、シャーシ2に対して位置保持される。具体的には、つる巻バネ11は、再生デッキ3における四隅近傍の4箇所に引っ掛けられる。
【0019】
再生デッキ3は、スロット4に挿入された光ディスクAのローディングを行うディスクローディング機構12を備えている。ディスクローディング機構12は、スロット4に挿入された光ディスクAを不図示の送りローラとで狭持しながらクランプ位置まで案内するディスクガイド5と、クランプ位置まで搬送されてきた光ディスクAが載置されるターンテーブル14と、モータ13(図2参照)と電気的に接続され、光ディスクAをターンテーブル14側に向かって押圧するクランプアーム15と、クランプアーム15の先端に設けられ、光ディスクAを押圧してターンテーブル14に装着させるクランパ16と、例えば、8cm等の径を有する光ディスクAを、クランプ位置に位置決めするトリガーアーム17と、再生デッキ3の裏側に配置され、前後方向に移動するトリガースライダ18(図2参照)を有する。
【0020】
図1に示すように、ディスクガイド5は、再生デッキ3の上方かつ前方に配置されている。このディスクガイド5は略平板状の形態を有しており、その下側を通過する光ディスクAを安定した状態でクランプ位置まで案内する。上述したように、ディスクガイド5の下方には、不図示の送りローラが配設されており、スロット4に挿入された光ディスクAを不図示の送りローラとディスクガイド5とで狭持しながらクランプ位置まで案内する。
【0021】
ターンテーブル14は略円盤状の形態を有しており、再生デッキ3の略中央に配設されている。ターンテーブル14はその中心軸を中心として周方向に回転可能となっている。このターンテーブル14には、再生デッキ3の略中央まで搬送された光ディスクAが装着される。具来的には、ターンテーブル14の外側に光ディスクAの中央に設けられている円形孔が嵌まることによって光ディスクAがターンテーブル14に装着される。ターンテーブル14に装着された光ディスクAは、ターンテーブル14と共に再生デッキ3内で回転する。
【0022】
図1に示すように、クランプアーム15は再生デッキ3の中央かつ後方に配設されている。このクランプアーム15の中央かつ前方には、光ディスクAを押圧してターンテーブル14に装着させるためのクランパ16が取り付けられている。また、図1に示すように、クランプアーム15における左斜め後方の位置にはトリガーアーム17が上から見て周方向に回動可能に取り付けられている。クランプアーム15は、その後端部分におけるY方向を軸として回動自在に軸支されている。すなわち、クランパ16はY方向に沿った軸を中心として上下に傾くことが可能である。
【0023】
クランプアーム15は、略台形形状を有すると共に、その略中央には窓部10が設けられている。また、図1に示すように、クランプアーム15における後方の左右両端部には、シャーシ2との間に配設されるつる巻バネ11,11の一端が引っ掛けられている。このつる巻バネ11,11によって、クランプアーム15は、シャーシ2に対して位置保持された状態となっている。
【0024】
また、図1に示すように、再生デッキ3の左右両側には、前後方向にスライド可能な左スライド部材45および右スライド部材46がそれぞれ配設されている。当該左スライド部材45および右スライド部材46は、不図示の駆動機構によって駆動されることにより、再生デッキ3に対して所定量だけ前後方向に向かってスライドする。これらスライド部材45,46には、上方に向かって一段高くなるような略段差状に突出する不図示の凸段部が前方から後方に向かって所定の間隔を隔てて複数設けられている。なお、トリガースライダ18は左スライド部材45の動作に連動して移動する。
【0025】
本実施の形態では、光ディスクAを搬入および搬出する際には、左スライド部材45が最も後方の位置まで移動し、右スライド部材46が最も前方の位置まで移動するように設定されている。具体的には、光ディスクAを搬入および搬出する際には、左スライド部材45が最も後方の位置まで移動することで、後述するクランプアーム15の左折曲部24(図3参照)が左スライド部材45の不図示の凸段部に乗り上がると共に、右スライド部材46が最も前方の位置まで移動することで、後述するクランプアーム15の右折曲部26(図3参照)が右スライド部材46の不図示の凸段部に乗り上がった状態となる。このため、光ディスクAを搬入および搬出する際には、クランプアーム15のクランパ16は上方に上がった状態で維持される。
【0026】
一方、光ディスクAがクランプ位置まで搬入され、光ディスクAを記録・再生する際には、左スライド部材45が最も前方の位置まで移動し、右スライド部材46が最も後方の位置まで移動するように設定されている。具体的には、光ディスクAを記録・再生する際には、左スライド部材45が最も前方の位置まで移動することで、後述するクランプアーム15の左折曲部24(図3参照)が左スライド部材45の不図示の凸段部から降下して低い位置に存在すると共に、右スライド部材46が最も後方の位置まで移動することで、後述するクランプアーム15の右折曲部26(図3参照)が右スライド部材46の不図示の凸段部から降下して低い位置に存在する。このため、光ディスクAを記録・再生する際には、クランプアーム15のクランパ16が光ディスクAをターンテーブル14に押圧した状態が維持される。
【0027】
図3は、図1中のクランプアーム15を左右が逆になるように裏返した状態を示す底面図である。図4は、図1中の一点鎖線Aで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクAを挿入する前の状態を示す図である。図5は、図3中の一点鎖線Bで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクAを挿入する前の状態を示す図である。図6は、図1中の一点鎖線Aで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクAが挿入された後の状態を示す図である。図7は、図3中の一点鎖線Bで囲んだ部分を拡大した図であり、光ディスクAが挿入された後の状態を示す図である。
【0028】
上述したように、クランプアーム15は略台形形状を有している。また、図3に示すように、窓部10もクランプアーム15とは前後が逆向きとなる略台形形状を有している。窓部10の後端部からは前方に向かって細長状の細長延出部20が延出している。さらに、窓部10の左前方には、後方に向かって鉤状に突出した引掛部19が形成されている(図3および図4等参照)。クランプアーム15における後端側の左右両端部には、下方に向かって延出する略半楕円状の形態を有する板状部材21が設けられており、該板状部材21からは、右方向に向かって略円柱状の軸部21aが突出している(図3参照)。さらに、クランプアーム15の外縁部近傍には、窓部10を中心として左右対称となるように、略四角形状の四角孔22が左右一対設けられている(図3参照)。また、図3に示すように、クランプアーム15における前方の左端部からは、前方に向かって左延出部23が延出しており、その先端には下方に向かって山なりに折り曲げられた左折曲部24が設けられている。さらに、図3に示すように、クランプアーム15における前方の右端部からは、前方に向かって略Jの字状に屈曲する右延出部25が延出しており、その先端には下方に向かって山なりに折り曲げられた右折曲部26が設けられている。
【0029】
また、図3および図4に示すように、クランプアーム15における左側の四角孔22と隣接する位置には、小径にて上方に向かって押し出し加工された支点部27が設けられている。さらに、支点部27の右方には、矩形状の形態を有する矩形孔28が形成されている。また、矩形孔28の右斜め前方と右斜め後方には、支点部27を中心として略円弧状に切り欠かれた前円弧孔30と後円弧孔31が形成されている。さらに、後円弧孔31の右側には、後円弧孔31よりも幅広の略円弧状の形態を有する幅広円弧孔32が形成されている。
【0030】
上述したように、トリガーアーム17は、クランプアーム15における左斜め後方に取り付けられている。図1および図4に示すように、トリガーアーム17は略円弧状の形態を有している。トリガーアーム17における周方向の中央部近傍には、略矩形状の長穴33が形成されている(図4参照)。この長穴33にクランプアーム15の支点部27が隙間Hを有して挿入されることによって、トリガーアーム17はクランプアーム15に対して水平方向にガタツキを有した状態で回動可能に支持されている。また、図4に示すように、トリガーアーム17の右端部には前方に向かって突出する凸部34が設けられており、該凸部34からは略円柱状の形態で下方に向かって突出する当接部35が設けられている(図5参照)。このため、搬入されてきた光ディスクAが当接部35に当接し、該当接部35を後方に向かって押し動かすことで、トリガーアーム17は支点部27を略中心として、図4中の矢示F方向へ回動可能となる。
【0031】
また、図4に示すように、凸部34には右方に向かって突出する右方突起34aが形成されている。この右方突起34aはトリガーアーム17の上端面よりも一段低い位置から右方に突出している。このため、右方突起34aはクランプアーム15に設けられる細長延出部20の下側に入り込んでいる。したがって、トリガーアーム17は上下方向にガタつくことなく安定した状態で回動することが可能となる。また、図4に示すように、凸部34の左側には、鉤形状をした引掛部36が前方に向かって突出している。この引掛部36と窓部10に設けられた引掛部19との間には、トリガーアーム17をクランパ16側に付勢する付勢部材37が取り付けられている。本実施の形態では、付勢部材37としては引張コイルバネが使用されている。このため、トリガーアーム17は、長穴33を略中心として、常時、時計方向に付勢されることになる。
【0032】
引掛部36の左斜め後方の前後の2箇所の位置には、下方に延出した後、さらに左側に延出する略鉤状の形態を有する前側係合部38aおよび後側係合部38bがそれぞれ形成されている。これら係合部38a,38bは矩形状の形態を有する孔の右側の内周面から下方に向かって延出するように形成されている(図4参照)。図5に示すように、後側係合部38bは後円弧孔31の内側の平板状の領域となる後側被係合部31aに嵌まっている。後側被係合部31aの後端部近傍には、支点部27側に向かって一段低くなるように切り欠かれた段差部31bが形成されている。一方、前側係合部38aは前円弧孔30の内側の平板状の領域となる前側被係合部30aに嵌まっている。前側被係合部30aの前端部近傍にも、支点部27側に向かって一段低くなるように切り欠かれた段差部30bが形成されている。このように、係合部38a,38bが被係合部30a,31aにそれぞれ嵌まることによって、トリガーアーム17はクランプアーム15から外れることなく、長穴33を略中心として周方向に回動することが可能となる。
【0033】
図4に示すように、長穴33と係合部38a,38bとの間には略U字状に切り欠かれることによって、前方に向かって細長く伸びるような形態を有する細状部40が形成されている。図5に示すように、細状部40の先端には略円柱状の形態で下方に向かって突出する規制凸部41が設けられている。この規制凸部41が矩形孔28の前方側の内周面28aと当接することによってトリガーアーム17の前方への回動が規制される。また、トリガーアーム17の後端部には下方に向かって突出する下方突起39が設けられており、該下方突起39は幅広円弧孔32の内部に遊挿されている。この下方突起39が幅広円弧孔32の後方側の内周面32aと当接することによってトリガーアーム17の後方への回動が規制される。すなわち、トリガーアーム17の回動範囲は、規制凸部41と下方突起39によって規制されていることになる。
【0034】
図8は、図2中の一点鎖線Cで囲んだ部分を拡大した図であり、トリガースライダ18がロッド42に当接している状態を示す図である。図9は、図2中の一点鎖線Cで囲んだ部分を拡大した図であり、トリガースライダ18がロッド42との当接から解放されている状態を示す図である。図10は、図1中のトリガーアーム17の動作を表側から見た状態を説明するための図であり、実線は光ディスクAを挿入する前のトリガーアーム17の状態を示す図であり、二点鎖線はトリガーアーム17がクランプアーム15に対してロックされた状態を示す図である。図11は、図3中のトリガーアーム17の動作を裏側から見た状態で説明するための図であり、実線は光ディスクAを挿入する前のトリガーアーム17の状態を示す図であり、二点鎖線はトリガーアーム17がクランプアーム15に対してロックされた状態を示す図である。図12は、図2中のトリガースライダ18の動作を説明するための図であり、実線は光ディスクAを挿入する前のトリガースライダ18の状態を示す図であり、二点鎖線はトリガーアーム17がクランプアーム15に対してロックされた際のトリガースライダ18の状態を示す図である。
【0035】
図3および図5に示すように、トリガーアーム17の左端には、棒状の形態で下方に向かって突出するロッド42が設けられている。ロッド42の外周面からは長穴33の方向に向かって鍔部47が延出している。この鍔部47はロッド42の軸方向に沿って略平板状に形成されている。なお、鍔部47の根元部分は、不図示の隙間を有しており、当該隙間にクランプアーム15の左端側の領域44が入り込むことができるような構成となっている。図2および図8等に示すように、ロッド42は再生デッキ3の裏側まで到達している。
【0036】
光ディスクAがスロット4に挿入されると、光ディスクAがトリガーアーム17の当接部35に当接し、光ディスクAが当接部35を後方へ押し動かす。このため、トリガーアーム17は付勢部材37の付勢力に抗して図4および図5の状態から矢示F方向に回動し、図6および図7の状態へ移行していく。すなわち、図10および図11の実線の状態から二点鎖線の状態に移行していく。この際、後述するように、トリガーアーム17は長穴33中に形成される隙間H分だけ左方向にスライドする。また、ロッド42はトリガーアーム17と一体に設けられているため、ロッド42もトリガーアーム17の矢示F方向への回動に伴って周方向へ回動する。
【0037】
図2に示すように、トリガースライダ18は再生デッキ3の裏側における右斜め後方に配設されている。このトリガースライダ18はバネ43によって後方側に向かって付勢されている。このため、図8に示すように、トリガースライダ18はロッド42に当接し、該ロッド42を後方に向かって押圧している。したがって、トリガーアーム17には、付勢部材37およびバネ43の双方から時計方向に向かう付勢力が作用する。このため、スロット4に挿入された光ディスクAが、当接部35に当接して、トリガーアーム17を後方へ押し動かすと、トリガーアーム17は付勢部材37およびバネ43の付勢力に抗して反時計方向(矢示F方向)に回動する。
【0038】
このように、トリガーアーム17が矢示F方向に回動すると、トリガースライダ18はロッド42と当接した状態で、図8の状態から前方へと移動する。すなわち、ロッド42がバネ43の付勢力に抗してトリガースライダ18を前方に押し動かす。この状態では、ロッド42には、バネ43の付勢力が図8における後方に向かって作用し続けている。したがって、トリガーアーム17には、図6に示すように、付勢部材37からの付勢力である矢示D方向への力と、バネ43からの付勢力である矢示E方向への力が作用する。
【0039】
このため、光ディスクAが搬送されている状態では、トリガーアーム17は、付勢部材37からの付勢力である矢示D方向への力およびバネ43からの付勢力である矢示E方向への力に抗して、図4の状態から矢示F方向に回動していく。この際、前側係合部38aは、前側被係合部30aに嵌まった状態で後方に向かって周方向に移動する。後側係合部38bも後方に向かって周方向に移動し、後側被係合部31aの先端部が段差部31bに差しかかった状態となる。このとき、後側係合部38bは図7や図11の実線の状態とは異なり、段差部31bに完全に係合して(引っ掛かって)いない。これは、トリガーアーム17には、バネ43からの矢示E方向の力が作用しており、該バネ43のバネ定数の方が付勢部材37のバネ定数よりも大きく設定されているためである。このように、バネ43からの付勢力がトリガーアーム17に作用している限り、後側係合部38bが段差部31bに完全に係合する(引っ掛かる)ことはなく、トリガーアーム17がトリガースライダ18に対して位置決めされること、すなわち周方向への回動動作がロックされることはない。
【0040】
また、上述したように、再生デッキ3の左右両側には、前後方向にスライド可能な左スライド部材45および右スライド部材46がそれぞれ設けられている。そして、光ディスクAがクランプされる際には、左スライド部材45は最も前方の位置まで移動するため、この動作に伴ってトリガースライダ18は前方に移動する。このため、クランプする際には、図9および図12の二点鎖線で示すように、トリガースライダ18はロッド42から離間した状態となる。この状態では、トリガーアーム17には、付勢部材37からの付勢力である矢示D方向の力のみが作用し、バネ43からの付勢力である矢示E方向の力は作用しない。したがって、トリガーアーム17には、矢示D方向の力のうち左方向への成分が作用し、該トリガーアーム17は図4および図10に示す隙間Hを埋める方向である、図6の矢示E方向とは逆の方向にスライドする。その結果、図7および図11の二点鎖線に示すように、後側係合部38bが段差部31bに嵌まりこむ(引っ掛かる)。このため、トリガーアーム17はクランプアーム15に対して位置決めされ、時計方向に移動することがなくなる。すなわち、時計方向への回動がロックされた状態となる。
【0041】
次に、直径8cmの光ディスクAがスロット4から挿入された後の動作について説明する
【0042】
図1に示すように、光ディスクAはスロット4から挿入される。光ディスクAがスロット4に挿入される際には再生デッキ3のクランパ16は上がった状態に維持されている。光ディスクAがスロット4の内部に挿入されると、該光ディスクAは、再生デッキ3内をディスクガイド5によって案内されながらクランプ位置に向かって搬送されていく。光ディスクAがクランプ位置に向かって搬送されていくと、該光ディスクAはトリガーアーム17の凸部34に設けられる当接部35に当接する。
【0043】
その後、光ディスクAは当接部35を後方に押し動かし、クランプ位置まで移動していく。すなわち、トリガーアーム17は、光ディスクAに押圧され、付勢部材37およびバネ43の付勢力に抗して、図10および図11の矢示F方向に回動していく。具体的には、トリガーアーム17は、支点部27を中心として、図10および図11の実線の状態から矢示F方向へ回動していく。この回動動作中、ロッド42は、図12の実線で示すように、トリガースライダ18に当接している。このため、トリガーアーム17が図10および図11の矢示F方向に回動する際、トリガースライダ18はロッド42と当接した状態で、図12の実線の状態から前方へと移動する。したがって、ロッド42には、バネ43の付勢力が図8における後方に向かって作用し続けることになる。このように、ロッド42がトリガースライダ18と当接した状態でトリガーアーム17が矢示F方向に回動するため、トリガーアーム17には、図6に示すように、付勢部材37からの付勢力である矢示D方向への力と、バネ43からの付勢力である矢示E方向への力が作用する。
【0044】
一方、光ディスクAが当接部35に当接した直後の状態では、図11の実線で示すように、各係合部38a,38bは各被係合部30a,31aに嵌まっている。上述したように、光ディスクAが当接部35を押圧して、トリガーアーム17が矢示F方向へ回動していく際、トリガーアーム17には、図6に示すように、矢示D方向の力と矢示E方向の力が作用する。したがって、この状態では、トリガーアーム17は長穴33を中心として周方向に移動するのみで、隙間Hを埋めるように左方向へはスライドしない。このため、後側係合部38bが段差部31bに嵌まりこむことはなく、クランプアーム15に対する位置決め、すなわちトリガーアーム17の周方向への回動のロックはなされない。ここで、左スライド部材45が最も前方の位置まで移動すると共に、右スライド部材46が最も後方の位置まで移動して、クランプがなされると、トリガースライダ18はロッド42から離間する方向に移動して、図12の二点鎖線で示す状態となる。すると、トリガーアーム17にはバネ43からの付勢力が作用しなくなり、トリガーアーム17には図6の矢示D方向の力のみが作用する状態となる。したがって、トリガーアーム17には、矢示D方向の力のうち左方向への成分が作用し、該トリガーアーム17は図10に示す隙間Hを埋める方向である図6の矢示E方向とは逆の方向にスライドする。このため、図11の二点鎖線で示すように、後側係合部38bが段差部31bに嵌まり込み、トリガーアーム17はクランプアーム15に対して位置決めされ、時計方向への回動がロックされる。
【0045】
以上のように構成されたディスク装置1のディスクローディング機構12では、トリガーアーム17の当接部35が光ディスクAの外周部に当接することによって、光ディスクAを再生位置に位置決めしている。このため、付勢部材37によってトリガーアーム17が光ディスクA側に付勢されても、トリガーアーム17が光ディスクAの記録面側に入り込むことがない。したがって、光ディスクAの記録面に傷がつくのを防止できる。
【0046】
また、ディスクローディング機構12では、付勢部材37の横方向への力を利用して、該トリガーアーム17をスライドさせ、後側係合部38bを段差部31bに係合させている。すなわち、付勢部材37の付勢力でトリガーアーム17をスライドさせて、該トリガーアーム17のクランプアーム15に対する周方向への回動をロックしている。このため、クランプアーム15以外の部品を用いずにトリガーアーム17をクランプ位置に位置決めすることができる。このため、他の部品の影響を受けることがなく、単純な構成によってトリガーアーム17の周方向への回動をロックすることが可能となる。したがって、光ディスクAのクランプ位置への位置決め精度の低下を防止することができる。
【0047】
また、ディスクローディング機構12では、トリガーアーム17が光ディスクAの記録面側に入り込むことがないため、トリガーアーム17が温度等の影響でクリープ変形することがなくなる。このため、トリガーアーム17が光ディスクAから離れる際に異音が発生するのを防止できる。
【0048】
また、ディスクローディング機構12では、クランプ時以外はロッド42をトリガースライダ18に接触させ、クランプ時にはロッド42をトリガースライダ18から離間させる構成としている。このため、クランプ時に確実にトリガーアーム17をスライドさせて、該トリガーアーム17をクランプアーム15に対して位置決めすることが可能となる。
【0049】
また、ディスクローディング機構12では、細状部40に設けられる規制凸部41を矩形孔28の内周面28aに当接させると共に、下方突起39を幅広円弧孔32の内周面32aに当接させることによって、トリガーアーム17の回動を規制している。このため、単純な構成で、正確に光ディスクAをクランプ位置まで搬送することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0051】
上述の実施の形態では、付勢部材37としては引張コイルバネが用いられているが、付勢部材37は引張コイルバネに限定されるものではなく、例えば、板バネ、捻りコイルバネもしくはスポンジ等の他の弾性部材を用いても良い。また、圧縮バネを用いてトリガーアーム17を前方に向かって付勢するような構成にしても良い。また、付勢部材37とは別にトリガーアーム17を左方向に付勢する付勢部材を配設して、トリガーアーム17を確実に左方にスライドさせるような構成としても良い。
【0052】
また、上述の実施の形態では、後側係合部38bを段差部31bに引っ掛かけることによって、トリガーアーム17をクランプアーム15に対して位置決めさせているが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、前側被係合部30aに段差部を設け、前側係合部38aを該段差部に引っ掛けることによって、トリガーアーム17をクランプアーム15に対して位置決めするようにしても良い。また、前側被係合部30aおよび後側被係合部31aの双方に段差部を設けるようにしても良い。
【0053】
また、上述の実施の形態では、トリガーアーム17はクランプアーム15の左後方に設けられているが、トリガーアーム17の配設位置は当該部位に限定されるものではなく、例えば、クランプアーム15の右後方に配設するようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
1…ディスク装置 12…ディスクローディング機構 15…クランプアーム 17…トリガーアーム 18…トリガースライダ 31…後円弧孔(円弧孔) 31a…後被係合部(被係合部) 31b…段差部 37…付勢部材 38b…後係合部(係合部) 42…ロッド A…光ディスク(ディスク媒体) H…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク装置に挿入されるディスク媒体を再生位置まで搬送するディスク装置のディスクローディング機構において、
再生位置に搬送された上記ディスク媒体を押圧するクランプアームと、
上記クランプアームに、上記ディスク媒体の挿入方向および排出方向に回動可能に取り付けられるトリガーアームと、
を備え、
上記トリガーアームは、上記クランプアームに形成される被係合部と係合する係合部を有し、上記トリガーアームは上記クランプアームに対して隙間を有した状態で回動可能に軸支されると共に、上記トリガーアームと上記クランプアームとの間には、上記隙間を埋める方向に付勢力を作用させる付勢部材が配設され、上記付勢部材の付勢力に抗して上記トリガーアームを回動させて上記ディスク媒体を上記再生位置まで搬送させると、上記トリガーアームが上記付勢部材の付勢力によって上記隙間を埋める方向にスライドすることで、上記トリガーアームの上記係合部が上記クランプアームの上記被係合部に係合し、上記トリガーアームの回動がロックされることを特徴とするディスク装置のディスクローディング機構。
【請求項2】
請求項1記載のディスク装置のディスクローディング機構において、前記被係合部は、前記トリガーアームの回動支点を中心とした円弧状の形態を有する円弧孔の内周側の領域に形成されており、該内周側の領域には上記回動支点に向かって段差状に切り欠かれた段差部が形成され、前記係合部が前記段差部に引っ掛かることにより前記トリガーアームの回動がロックされることを特徴とするディスク装置のディスクローディング機構。
【請求項3】
請求項1または2記載のディスク装置のディスクローディング機構において、前記トリガーアームは前記ディスク装置の底面側に向かって突出するロッドを有しており、該ロッドには、前記ディスク媒体の搬送時の回動方向とは逆方向に前記トリガーアームを押圧するトリガースライダが接離するように構成されており、前記トリガースライダが上記ロッドから離間して、該ロッドが上記トリガースライダからの押圧力から解放されると、前記付勢部材の付勢力が作用して前記トリガーアームが前記隙間を埋める方向にスライドし、前記係合部が前記被係合部に係合することを特徴とするディスク装置のディスクローディング機構。
【請求項4】
請求項3記載のディスク装置のディスクローディング機構において、前記トリガースライダはクランプ時に前記ロッドから離間することを特徴とするディスク装置のディスクローディング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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