ディスク装置及びディスクカートリッジ
【課題】可撓性のある光ディスクの面ぶれを抑制する。
【解決手段】安定化部材(30)のディスク(20)に沿った面は、ディスクの回転軸と光ディスク上のヘッド(26)が移動する動線を含む第1面での断面がディスクに対して凸形状であり、該動線のディスク回転方向下流側には肉盗み部(30a)が形成されている。したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、ディスクの動線近傍の面ぶれが抑制される。
【解決手段】安定化部材(30)のディスク(20)に沿った面は、ディスクの回転軸と光ディスク上のヘッド(26)が移動する動線を含む第1面での断面がディスクに対して凸形状であり、該動線のディスク回転方向下流側には肉盗み部(30a)が形成されている。したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、ディスクの動線近傍の面ぶれが抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置及びディスクカートリッジに係り、さらに詳しくは、ディスクに対する情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうディスク装置、及びディスクを収容するディスクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が開始されるなど、情報のデジタル化に伴い記録媒体としてのディスクへ記録される情報の高密度化に対する要求が高まっている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくすることがあげられる。
【0003】
レーザ光のスポット径を小さくするには、その波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効である。レーザ光の波長に関しては、従来からCD(Compact Disk)には、例えば780nm程度の波長の近赤外光が用いられ、DVD(Digital
Versatile Disk)には、例えば650nm程度の波長の赤色光が用いられているが、近年では、青紫のレーザ光を発振する半導体レーザが開発され、今後400nm近傍の波長のレーザ光が用いられることが予想されている。また、対物レンズについては、従来、CD用の対物レンズのNAは0.5未満であり、DVD用の対物レンズのNAは0.6程度であったが、今後はさらにNAが増大する傾向にある。
【0004】
しかしながら、光の波長を短くすることや、対物レンズのNAを増大することは、対物レンズを含む光学系の焦点深度の狭小化を招く。このため、フォーカスサーボ精度を向上させる必要が生じる。また、対物レンズのNAが増大すると、その対物レンズとディスクの記録面との距離を小さく設定する必要があるため、ディスクの面ぶれを小さくする必要がある。その理由は、始動時のフォーカスサーボを開始する直前に対物レンズを含むピックアップとディスクとが接触するなどの事態を回避する必要があるからである。
【0005】
このような背景から、可撓性を有するシート(薄膜)に記録面が形成されたディスクの開発がすすめられ、このディスクを安定化板上で回転させることにより、ディスクに生じる面ぶれを空気力学的に抑制するディスク装置が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載されているディスク装置は、円形板の両端を折り曲げて形成されたバックプレートと呼ばれる安定化部材を備え、ディスクに対して情報の記録又は再生を行なう際には、バックプレートを回転するディスクの記録面に押し当ててヘッド近傍の面ぶれを抑制しようとするものである。この方法では、光ディスクは凹面を形成する平面によって規定される折れ曲がりの部分に追従して非常に特異な屈曲動作を行う必要があり、回転の高速化にともなって屈曲動作が追いつかなくなってしまうことがある。
【0007】
一方、非特許文献1に記載されているディスク装置は、サドルプレートと呼ばれる安定化板と、U字型スタビライザ(U-shaped stabilizer)とよばれる安定化部材を備え、ディスクに対し情報の記録又は再生を行なう際には、ディスクをU字型スタビライザのギャップに挟んだ状態で回転させるとともに、サドルプレートを用いて負圧力を作用させ、ディスクを前述した特許文献1に記載のディスク装置とは逆方向へ湾曲させることにより、面ぶれをギャップ内の特定領域で選択的に安定化させようとするものである。この方法では、回転を高速化するとサドルプレートによって発生する負圧がディスクに作用する遠心力に負けて、最終的にディスクを所望の湾曲形状にすることができなくなり、ギャップ内の特定領域においても面振れが増大してしまうという不都合がある。
【0008】
ところで、特許文献1には、連続的に一様に曲がった凹面(以下、連続面ともいう)を有する安定化部材は可撓性を有する光ディスク媒体の安定化には不適であるとの記述があるが、鋭意検討の結果、発明者等は回転数が4000rpmを越える領域では、この連続面が可撓性ディスクの安定化に有効に作用することをつきとめた。さらに、単純な連続面を有する安定化部材では、ディスクの内周領域(例えばφ120mmのディスクでは半径55mmの円形領域)に比較して、外周領域(内周量領域以外の領域)のディスク面ぶれ特性が不安定になることが判明した。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−33619号公報
【非特許文献1】「オプティカル・リードアウト・オブ・ビデオディスク」 アイイーイーイー・トランザクション・オン・コンシューマー・エレクトロニクス(“OPTICAL READOUT OF VIDEODISC”,IEEE TRANSACTION ON CONSUMER ELECTRONICS),1976年11月、P.304−308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、可撓性のあるディスクの面振れを抑制し、情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能なディスク装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、可撓性のあるディスクの面振れを抑制することが可能なディスクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスク装置である。
【0013】
これによれば、安定化部材のディスクに沿った面は、ディスクの回転軸と光ディスク上のヘッドが移動する動線を含む第1面での断面がディスクに対して凸形状であり、ヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状となっている。
【0014】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、ディスクの動線近傍の面ぶれが、内周部から外周部にかけての全域で抑制され、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスク装置である。
【0016】
これによれば、安定化部材のディスクに沿った面はディスクの回転軸を含みヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状であり、ディスク上の動線の下流側かつ外周部近傍の領域には肉盗み部が形成されている。
【0017】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、動線近傍の面ぶれが内周部から外周部にかけての全域で抑制され、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0018】
この場合において、請求項3に記載のディスク装置の如く、前記肉盗み部は排気口であることとすることができる。
【0019】
請求項1〜3に記載の各ディスク装置において、請求項4に記載のディスク装置の如く、前記安定化部材の外周には、前記ディスクを包囲する側壁部が設けられ、該側壁部は、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることとすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0021】
これによれば、安定化部材のディスクに沿った面は、ディスクの回転軸と光ディスク上のヘッドが移動する動線を含む第1面での断面がディスクに対して凸形状であり、ヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状となっている。
【0022】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、ディスクの動線近傍の面ぶれが、内周部から外周部にかけての全域で抑制され、ディスク面を確実に安定化することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0024】
これによれば、安定化部材の、ディスクに沿った面はディスクの回転軸を含みヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状であり、ディスク上の動線の下流側で外周部近傍の領域には肉盗み部が形成されている。
【0025】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、動線近傍の面ぶれが内周部から外周部にかけての全域で抑制され、ディスク面を確実に安定化することが可能となる。
【0026】
この場合において、請求項7に記載のディスクカートリッジの如く、前記肉盗み部は排気口であることとすることができる。
【0027】
請求項5〜7に記載の各ディスクカートリッジにおいて、請求項8に記載のディスクカートリッジの如く、前記ケーシングは、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることとすることができる。
【0028】
請求項5〜8に記載の各ディスクカートリッジにおいて、請求項9に記載のディスクカートリッジの如く、前記ケーシングは、前記ディスクを包囲する円筒状の側壁部を有することとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態に係るディスク装置100の概略構成が示されている。
【0030】
ディスク装置100は、可撓性のある光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうことが可能な光ディスク装置である。このディスク装置100は、図1に示されるように、Z軸に平行な回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、光ディスク20の回転を安定させる安定化部材30、これら各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0031】
光ディスク20としては、図2の平面図に示されるように、例えば、厚さ100μm、外径120mmで中央に丸孔が形成された円形板状のポリカーボネイト製のシート20aの表面に記録層が成膜された可撓性を有する光ディスクが用いられる。
【0032】
記録層は、図2において着色して示されたシート20aの内周直径50mmから外周直径116mmまでの領域20bに、まずスタンパのピッチ0.6μm、幅0.3μmのグルーブを熱転写した後に、スパッタリングにより順次厚さ120nmのAg反射層、厚さ7nmの(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、厚さ10nmのAgInSbTeGe層、厚さ25nmのZnS−SiO2層、厚さ10nmのSi3N4層をそれぞれ成膜することにより形成されている。
【0033】
また、光ディスク20の表裏面には、記録層やディスク基板の保護のために、スピンコートしたUV樹脂を紫外線を照射して硬化させることにより形成した厚さ10μmの透明保護膜が形成され、中央部には、例えば、厚さ0.3mm、外径30mmで中心部に内径15mmの丸孔が形成された円形プレート20cが、その中心がシート20aの中心と一致するように取りつけられている。
【0034】
安定化部材30は、図1と、安定化部材30を下方から見た図である図3とを総合するとわかるように、例えば、中央に直径32mmの円形開口が形成された外径125mmの高さの低い円柱状部材であり、+Z側の面がハウジング10の天井面に固定され、−Z側の面は回転する光ディスクに対し空気力学的な力を作用させる凹面(以下、作用面ともいう)となっている。ここで、説明の便宜上図3に示されるように、安定化部材30の−Z側の面の中心oを原点とするxy座標系を定義する。
【0035】
安定化部材30の作用面は、その作用面の中心を通る母線がy軸に平行で、例えば曲率半径1000mmで湾曲しており、図3に示されるように、y軸から−x方向及び+x方向へ距離S(ここでは35mmとする)隔てたy軸に平行な2本の直線と、作用面の外周とによって規定される領域、すなわち図3において着色された領域が平坦部となっている。そして、y軸と15度の角度をなす直線Lと作用面の外周が重なる位置の近傍には、一対の肉盗み部30aが形成されている。この肉盗み部30aは、一例として、図4(A)及び図3における安定化部材30のAA’断面を示す図である図4(B)を総合するとわかるように、+Z側に窪んだすり鉢形状となっている。
【0036】
図1に戻り、スピンドルシャフト24は、円柱状の大径部と、該大径部の上端に設けられた小径部とを有する段付き円柱状の部材である。光ディスク20は円形プレート20cの丸孔にスピンドルシャフト24の小径部が挿入され、大径部の上面によって下方から支持されることにより、記録層を下面としてスピンドルシャフト24に装着されている。また、本実施形態では一例として光ディスク20は、該光ディスク20が平坦と仮定した時の記録面と、安定化部材30の安定化面の平坦部との距離が150μmとなるようにスピンドルシャフト24に装着されているものとする。
【0037】
モータ22は、回転軸22aを駆動することによりスピンドルシャフト24を介して光ディスク20を、例えば約4000〜14000rpmの範囲内で回転させる。光ディスク20の回転数などは、不図示の制御装置により制御される。
【0038】
ピックアップ26は、光ディスク20の下方(−Z側)に配置され、光源、対物レンズを含む光学系、受光素子などを含む周知の構成のものが用いられている。ピックアップ26は、モータ22により回転される光ディスク20の記録面にレーザ光を集光するとともに、記録面からの反射光を受光して光ディスク20からの情報の読み取り(再生)、及び光ディスクに対する情報の書き込み(記録)などを行う。このピックアップ26は、不図示のピックアップ駆動装置によって光ディスク20の半径に沿ってY軸方向に駆動される。
【0039】
次に、上述のように構成されたディスク装置100により、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なった場合の安定化部材30の作用について説明する。光ディスク20が回転すると、光ディスク20にはその回転により発生する遠心力により水平な状態になろうとする復元力と、光ディスク20の面形状に起因して、上下面にそれぞれ作用する圧力の差による反発力が発生する。安定化部材30は、光ディスク20に対し空気力学的な力を作用させ、光ディスク20に生じる復元力と反発力のつりあいをとることにより、いわゆる光ディスク20の面ぶれ(ディスク20の回転方向の振れ)を低減するものである。
【0040】
発明者等は、上述した一対の肉盗み部30aが形成された安定化部材30と、肉盗み部が形成されていない安定化部材(以下、便宜上安定化部材30’と表すものとする)を用いて光ディスク20の安定化実験を行なった。安定化実験は、図5(A)に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させた状態で、光ディスク20の外周の−Y側端の点P2と、点P2から外周に沿って−30度及び+30度の位置にある点P1及びP3とにより規定される中心角60度の円周上の各位置で観測される、光ディスク20の面ぶれにより生じるZ軸方向の振幅を計測するものである。
【0041】
まず、図1における安定化部材30を安定化部材30’に交換し、光ディスク20をモータ22を介して所定の回転数で回転させたときに、ディスク20の外周部に生じる面ぶれによる振幅を計測した。この場合、点P2の光ディスク20の回転方向下流側(P1側)の位置近傍では、光ディスク20に対し安定化部材30’から離れる方向の力が作用する。したがって、この離れた部分には安定化部材30’が十分に作用せず、ディスク20の外周部の面ぶれ特性は図5(B)に一点鎖線で示される曲線のようになった。
【0042】
この面ぶれ特性から、点P2の回転方向下流側近傍でディスク20の面ぶれが局部的に増加し、安定化部材30’はその機能を果たさなくなっていることがわかる。このような現象は、光ディスク20の回転数がさほど速くない4000rpm付近で確認され、回転数が10000rpmを越える高速域になるとその影響は顕著となる。そこで、この現象に関して鋭意検討を重ねた結果、光ディスク20が所定の回転数以上で回転することにより生じる、光ディスク20を安定化部材から引き離す方向に作用する力を抑制することが肝要であるという結論に至った。
【0043】
この結論から導かれた具体的な方法として採用されたのが上述した安定化部材30である。安定化部材30を用いた安定化実験でも同様に、図5(A)に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させ、光ディスク20の外周に沿った点P1、P2、P3で規定される円周上の各位置における、光ディスク20の面ぶれによるZ軸方向の振幅を計測した。安定化部材30は、上述したようにy軸と作用面の外周が交わる点から時計回りに15度の位置近傍に一対の肉盗み部30aが形成されている。このため、安定化部材30’の安定化実験のときに、点P2近傍の回転方向下流側に生じた光ディスク20を引き剥がす方向に働く力が緩和され、ディスク20の外周部の面ぶれ特性は図5(B)に実線で示される曲線のようになった。この結果から、安定化部材30を用いると、面ぶれ特性は図5(B)中に一点鎖線で示される曲線に比べて全体的に平坦となり、特に点P2の回転方向下流側近傍の面ぶれが著しく改善されているのがわかる。
【0044】
また、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、光ディスク20の中心から−y方向へ25mm隔てた位置にある点P4、40mm隔てた位置にある点P5、58mm隔てた位置にある点P6で観測される光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測した。次表1は、安定化部材30’を用いたときの測定結果を示したものであり、次表2は、安定化部材30を用いたときの測定結果を示したものである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1に示されるように、安定化部材30’を用いた場合には、点P4及び点P5で観測される振幅は、いずれの回転数においても10μm以内に抑えられているが、点P6で観測される振幅は15μmを越えて急激に増大しているのがわかる。一方、安定化部材30を用いた場合には、表2に示されるように、点P4、P5及びP6で観測される振幅は、いずれの回転数においても10μm以内に抑えられているのがわかる。
【0048】
したがって、従来から用いられている安定化部材30’と比較して、本実施形態にかかる安定化部材30を用いると、光ディスク20に生じる、ピックアップ26の動線(図2の矢印a、a’で示されるピックアップ26が移動する経路を示す線)近傍の面ぶれを著しく低減することができることがわかる。
【0049】
以上説明したように、本第1の実施形態にかかるディスク装置100によると、スピンドルシャフト24に保持された光ディスク20は、モータ22により所定の回転数で回転され、ピックアップ26によって記録層20bに情報の記録又は再生が行なわれる際には、安定化部材30により、光ディスク20の記録層20bが形成された、例えば半径25mmから半径58mmまでの領域の面ぶれが効果的に抑制され、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、本第1の実施形態では、安定化部材30に一対の肉盗み部30aが形成されている場合について説明したが、これに限らず、肉盗み部30aに代えて図6(A)に示されるように、排気口30bが設けられた安定化部材30Aを用いてもよい。この安定化部材30Aに形成された排気口30bは、図6(A)と図6(A)におけるAA’断面を示す図である図6(B)を総合するとわかるように、安定化部材30Aの一側から他側へ抜ける貫通孔である。
【0051】
この安定化部材30Aを用いて上述した安定化実験を行なったところ、次表3に示されるような測定結果が得られた。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示された結果から、安定化部材30Aを用いた場合にも、点P4〜P5において観測される面ぶれによる振幅を10μm以下に抑えることができ、肉盗み部30aを設けた場合と同様に、光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度を向上を図ることが可能であることがわかる。
【0054】
また、安定化部材30に代えて、その作用面が図7(A)に示されるように、y軸から+x方向へ距離S隔てたy軸に平行な2本の直線と、x軸から+y方向へ距離S隔てたx軸に平行な2本の直線とによって規定された領域、すなわち図7(A)において着色された領域が平坦部になっており、xZ断面が光ディスク20に対し凹形状で、yZ断面が図7(B)に示されるように、光ディスク20に対して凸形状となっている安定化部材30Bを用いてもよい。この場合安定化部材30Bの作用面は複雑な3次元曲面となるが、安定化部材30Bの作用面の形状を決める主要な要素、例えば、xZ断面の凹形状の曲線部分の曲率半径は1000mmであり、図7(B)に示される凸形状の曲線部分の曲率半径は3000mmである。
【0055】
この安定化部材30Bを用いて上述した安定化実験を行なったところ、次表4に示されるような計測結果が得られた。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示された結果から、安定化部材30Bを用いた場合にも、点P4〜P5において観測される面ぶれによる振幅を10μm以下に抑えることができ、同様に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の向上を図ることが可能となることがわかる。
【0058】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図8〜図10に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0059】
図8には、第2の実施形態に係るディスク装置100の概略構成が示されている。ディスク装置100は、図8に示されるように、回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、不図示の保持部材に着脱自在に保持されたディスクカートリッジ40、ディスクカートリッジ40に収納された光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0060】
ディスクカートリッジ40は、一例として、図8に示されるように、相互に係合するカバー42及びベース44と、カバー42とベース44とにより形成された内部空間に収容される安定化部材30、及び光ディスク20を備えている。
【0061】
カバー42は、平面視正方形板状で下面(−Z側の面)には、安定化部材30の上面が固定されている。
【0062】
ベース44は、図9に示されるように、正方形板状の部材で、上面中央には光ディスク20よりやや大きい円形の部分が下方(−Z方向)に窪んだ円形状の凹部44cが形成されている。この凹部44cの内部底面はXY面に平行で、長手方向をY軸方向とする鍵穴状のスロット45が形成されている。このスロット45は円形の開口部45aと長方形状の開口部45bが連通したような形状を有し、開口部45aはその中心が凹部44cの内部底面の中心と一致するように形成され、開口部45bは開口部45aの−Y側から凹部44cの内壁面まで延びるように形成されている。また、凹部44cの内壁面には、図9及びベース44の平面図である図10を総合するとわかるように、凹部44cの内壁面の+Y側端及び−Y側端の部分より図10における時計回りにそれぞれ約15度ずれた位置からベース44の外壁面に抜ける一対の排気通路44aが形成されている。該排気通路42は、例えば断面形状が縦2mmで横2mmの正方形状であり、Y軸と45度の角度をなすように形成されている。
【0063】
そして、ベース44は、図8に示されるように、カバー42の下面に固定された安定化部材30と、該安定化部材30の下方に配置された光ディスク20とが、凹部44cに収容された状態で、カバー42の下面に固定されている。
【0064】
このように構成されたディスクカートリッジ40は、ディスク装置100の保持部材(不図示)に装着されると、内部に収容された光ディスク20は、カートリッジ40の下方から、ベース42に形成されたスロット45の開口部45aを介して挿入されたスピンドルシャフト24に回動可能に支持されるとともに、ピックアップ26がスロット45の開口部45bを介して光ディスク20にアクセス可能な状態となる。制御装置は、モータ22を制御して光ディスクを所定の回転数で回転駆動し、ピックアップ駆動装置を介してピックアップ26をスロット45の開口部26bに沿ってY軸方向に移動させながら、光ディスク20の記録層に対し情報の再生又は記録を行なう。
【0065】
以上説明したように、本第2の実施形態にかかるディスクカートリッジ40によると、内部に収容された光ディスク20がモータ22により所定の回転数で回転されると、ディスクカートリッジ40のカバー40の下面に固定された安定化部材30により、光ディスク20の記録層20bが形成された領域(光ディスクの内周直径50mmから外周直径116mmまでの領域)の面ぶれが効果的に抑制される。
【0066】
また、一般に可撓性のあるディスクを閉鎖空間で回転させる場合には、ディスクの面ぶれが助長される傾向にあるが、ディスクカートリッジ40のベース44には、安定化部材30に形成された肉盗み部30aの近傍から外部空間にぬける排気通路44aが設けられている。このため、光ディスク20の回転によりベース44のスロット45などから進入した空気は、安定化部材30により光ディスク20に対し面ぶれを抑制する力を生じさせた後、排気通路44aから速やかに排出される。したがって、光ディスク20は、閉鎖空間であるディスクカートリッジ40の内部に収容されているにもかかわらず、安定化部材30の作用により面ぶれが効果的に抑制され、安定的に回転することが可能となっている。
【0067】
また、本第2の実施形態では安定化部材30に1対の肉盗み部30aが形成されている場合について説明したが、図6(A)に示されるように、肉盗み部30aに代えて排気口30bが形成された安定化部材30Aを用いてもよい。
【0068】
また、図7(A)に示されるように、着色された領域が平坦部になっており、x軸を含みyz面に垂直な面での断面が光ディスク20に対し凹形状で、y軸を含みyx面に垂直な面での断面が図7(B)に示されるように、光ディスク20に対して凸形状となった安定化部材30Bを用いてもよい。
【0069】
なお、上記各実施形態における安定化部材30の外径、及び作用面の曲率半径の値は一例であり、ディスク装置100に用いられるディスクに応じて、最適な値とすることができる。例えば、ディスクの外径が小さくなればそれに応じて安定化部材30の外径も小さくすればよく、ディスク基板の厚さや材質が光ディスク20と異なるものを用いる場合には、例えば、実験やシミュレーションなどにより最適な安定化部材の形状を決定すればよい。
【0070】
また、安定化部材としては、例えばプラスティックの射出整形や、金属板を板金加工することにより製造することができる。
【0071】
また、上記各実施形態では安定化部材30が、光ディスク20の上方に配置されている場合について説明したが、これに限らず、下方に配置されていてもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、光ディスク20の一側に設けられた安定化部材30のみによって、光ディスク20の面ぶれを抑制したが、これに限らず、安定化部材30に加えて、図11(A)及び図11(B)に示されるように、光ディスク20の他側に、肉盗み部30aなどを除いて、安定化部材30の作用面を反転させた形状の作用面を有する補助安定化部材32を配置してもよい。
【0073】
また、上記各実施形態では、光ディスク20をディスクカートリッジ40に収納させた場合に、光ディスク20が収容された空間から、外部空間に通じる排気通路44aを設けることとしたが、これに限らず、ディスクカートリッジ40を用いない場合であっても、ドライブ装置100の閉鎖空間内で光ディスク20を回転駆動する場合には、該閉鎖空間から外部空間へ通じる排気通路を設けることで、空気の乱流による面ぶれの助長を抑制することができる。また、光ディスク20を囲む閉鎖空間としては、例えば、光ディスク20の外周に沿った円筒状の内壁面により規定される空間であることが望ましい。
【0074】
また、上記各実施形態では、ディスク装置100が1つのピックアップ26を備えている場合について説明したが、これに限らず、例えば、ピックアップ26の他に、スピンドルシャフト24を挟んで他のピックアップを配置してもよい。このようにすれば、ディスク装置100で、例えば2つのピックアップを用いた転送レートの高速化が図れるようになる。
【0075】
また、上記各実施形態では、一対の肉盗み部30a及び排気口30bがそれぞれ設けられている場合について説明したが、これに限らず、ピックアップ26近傍にのみ肉盗み部30a又は排気口30bが形成されていてもよい。要は、ピックアップ26近傍に生じる光ディスク20の面ぶれを抑制し、ピックアップ26が精度よく記録層にアクセスできればよい。
【0076】
また、上記各実施形態では、安定化部材30により可撓性のある光ディスクを安定化する場合について説明したが、これに限らず、例えば、磁気ディスクや光磁気ディスクなどの可撓性を有するディスクにも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明のディスク装置100は、可撓性のあるディスクに対し、情報の再生及び記録を行なうのに適しており、本発明のディスクカートリッジ40は、可撓性のあるディスクを収納するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるディスク装置100の概略的な構成を示す図である。
【図2】図1における光ディスク20を説明するための図である。
【図3】図1における安定化部材30を示す平面図である。
【図4】図4(A)は安定化部材30の側面図であり、図4(B)は安定化部材の断面図である。
【図5】図5(A)は光ディスク20の面ぶれの計測位置を示す図であり、図5(B)は光ディスク20の面ぶれ特性を示す図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、安定化部材30の第1の変形例を示す図である。
【図7】図7(A)及び図7(B)は、安定化部材30の第2の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかるディスク装置100の概略的な構成を示す図である。
【図9】図1におけるディスクカートリッジ40のベース44を示す斜視図である。
【図10】図1におけるディスクカートリッジ40のベース44を示す平面図である。
【図11】図11(A)は第1の実施形態にかかるディスク装置100の変形例を示す図であり、図11(B)は第2の実施形態にかかるディスク装置100の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
20…光ディスク、26…ピックアップ、30,30A,30B…安定化部材、10…本体(ハウジング)、20a…シート、20b…領域(記録層)、24…スピンドルシャフト、22…モータ、22a…回転軸、32…補助安定化部材、40…ディスクカートリッジ、42…カバー、44…ベース、44a…排気通路、44c…凹部、45…スロット、45a,45b…開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置及びディスクカートリッジに係り、さらに詳しくは、ディスクに対する情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうディスク装置、及びディスクを収容するディスクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が開始されるなど、情報のデジタル化に伴い記録媒体としてのディスクへ記録される情報の高密度化に対する要求が高まっている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくすることがあげられる。
【0003】
レーザ光のスポット径を小さくするには、その波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効である。レーザ光の波長に関しては、従来からCD(Compact Disk)には、例えば780nm程度の波長の近赤外光が用いられ、DVD(Digital
Versatile Disk)には、例えば650nm程度の波長の赤色光が用いられているが、近年では、青紫のレーザ光を発振する半導体レーザが開発され、今後400nm近傍の波長のレーザ光が用いられることが予想されている。また、対物レンズについては、従来、CD用の対物レンズのNAは0.5未満であり、DVD用の対物レンズのNAは0.6程度であったが、今後はさらにNAが増大する傾向にある。
【0004】
しかしながら、光の波長を短くすることや、対物レンズのNAを増大することは、対物レンズを含む光学系の焦点深度の狭小化を招く。このため、フォーカスサーボ精度を向上させる必要が生じる。また、対物レンズのNAが増大すると、その対物レンズとディスクの記録面との距離を小さく設定する必要があるため、ディスクの面ぶれを小さくする必要がある。その理由は、始動時のフォーカスサーボを開始する直前に対物レンズを含むピックアップとディスクとが接触するなどの事態を回避する必要があるからである。
【0005】
このような背景から、可撓性を有するシート(薄膜)に記録面が形成されたディスクの開発がすすめられ、このディスクを安定化板上で回転させることにより、ディスクに生じる面ぶれを空気力学的に抑制するディスク装置が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載されているディスク装置は、円形板の両端を折り曲げて形成されたバックプレートと呼ばれる安定化部材を備え、ディスクに対して情報の記録又は再生を行なう際には、バックプレートを回転するディスクの記録面に押し当ててヘッド近傍の面ぶれを抑制しようとするものである。この方法では、光ディスクは凹面を形成する平面によって規定される折れ曲がりの部分に追従して非常に特異な屈曲動作を行う必要があり、回転の高速化にともなって屈曲動作が追いつかなくなってしまうことがある。
【0007】
一方、非特許文献1に記載されているディスク装置は、サドルプレートと呼ばれる安定化板と、U字型スタビライザ(U-shaped stabilizer)とよばれる安定化部材を備え、ディスクに対し情報の記録又は再生を行なう際には、ディスクをU字型スタビライザのギャップに挟んだ状態で回転させるとともに、サドルプレートを用いて負圧力を作用させ、ディスクを前述した特許文献1に記載のディスク装置とは逆方向へ湾曲させることにより、面ぶれをギャップ内の特定領域で選択的に安定化させようとするものである。この方法では、回転を高速化するとサドルプレートによって発生する負圧がディスクに作用する遠心力に負けて、最終的にディスクを所望の湾曲形状にすることができなくなり、ギャップ内の特定領域においても面振れが増大してしまうという不都合がある。
【0008】
ところで、特許文献1には、連続的に一様に曲がった凹面(以下、連続面ともいう)を有する安定化部材は可撓性を有する光ディスク媒体の安定化には不適であるとの記述があるが、鋭意検討の結果、発明者等は回転数が4000rpmを越える領域では、この連続面が可撓性ディスクの安定化に有効に作用することをつきとめた。さらに、単純な連続面を有する安定化部材では、ディスクの内周領域(例えばφ120mmのディスクでは半径55mmの円形領域)に比較して、外周領域(内周量領域以外の領域)のディスク面ぶれ特性が不安定になることが判明した。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−33619号公報
【非特許文献1】「オプティカル・リードアウト・オブ・ビデオディスク」 アイイーイーイー・トランザクション・オン・コンシューマー・エレクトロニクス(“OPTICAL READOUT OF VIDEODISC”,IEEE TRANSACTION ON CONSUMER ELECTRONICS),1976年11月、P.304−308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、可撓性のあるディスクの面振れを抑制し、情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能なディスク装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、可撓性のあるディスクの面振れを抑制することが可能なディスクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスク装置である。
【0013】
これによれば、安定化部材のディスクに沿った面は、ディスクの回転軸と光ディスク上のヘッドが移動する動線を含む第1面での断面がディスクに対して凸形状であり、ヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状となっている。
【0014】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、ディスクの動線近傍の面ぶれが、内周部から外周部にかけての全域で抑制され、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスク装置である。
【0016】
これによれば、安定化部材のディスクに沿った面はディスクの回転軸を含みヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状であり、ディスク上の動線の下流側かつ外周部近傍の領域には肉盗み部が形成されている。
【0017】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、動線近傍の面ぶれが内周部から外周部にかけての全域で抑制され、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0018】
この場合において、請求項3に記載のディスク装置の如く、前記肉盗み部は排気口であることとすることができる。
【0019】
請求項1〜3に記載の各ディスク装置において、請求項4に記載のディスク装置の如く、前記安定化部材の外周には、前記ディスクを包囲する側壁部が設けられ、該側壁部は、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることとすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0021】
これによれば、安定化部材のディスクに沿った面は、ディスクの回転軸と光ディスク上のヘッドが移動する動線を含む第1面での断面がディスクに対して凸形状であり、ヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状となっている。
【0022】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、ディスクの動線近傍の面ぶれが、内周部から外周部にかけての全域で抑制され、ディスク面を確実に安定化することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0024】
これによれば、安定化部材の、ディスクに沿った面はディスクの回転軸を含みヘッドの動線に垂直な面での断面がディスクに対して凹形状であり、ディスク上の動線の下流側で外周部近傍の領域には肉盗み部が形成されている。
【0025】
したがって、例えば1500rpm以上の回転数でディスクを回転させて情報の記録及び再生を行なう際には、安定化部材によりディスクに空気力学的な力が作用し、動線近傍の面ぶれが内周部から外周部にかけての全域で抑制され、ディスク面を確実に安定化することが可能となる。
【0026】
この場合において、請求項7に記載のディスクカートリッジの如く、前記肉盗み部は排気口であることとすることができる。
【0027】
請求項5〜7に記載の各ディスクカートリッジにおいて、請求項8に記載のディスクカートリッジの如く、前記ケーシングは、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることとすることができる。
【0028】
請求項5〜8に記載の各ディスクカートリッジにおいて、請求項9に記載のディスクカートリッジの如く、前記ケーシングは、前記ディスクを包囲する円筒状の側壁部を有することとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態に係るディスク装置100の概略構成が示されている。
【0030】
ディスク装置100は、可撓性のある光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうことが可能な光ディスク装置である。このディスク装置100は、図1に示されるように、Z軸に平行な回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、光ディスク20の回転を安定させる安定化部材30、これら各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0031】
光ディスク20としては、図2の平面図に示されるように、例えば、厚さ100μm、外径120mmで中央に丸孔が形成された円形板状のポリカーボネイト製のシート20aの表面に記録層が成膜された可撓性を有する光ディスクが用いられる。
【0032】
記録層は、図2において着色して示されたシート20aの内周直径50mmから外周直径116mmまでの領域20bに、まずスタンパのピッチ0.6μm、幅0.3μmのグルーブを熱転写した後に、スパッタリングにより順次厚さ120nmのAg反射層、厚さ7nmの(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、厚さ10nmのAgInSbTeGe層、厚さ25nmのZnS−SiO2層、厚さ10nmのSi3N4層をそれぞれ成膜することにより形成されている。
【0033】
また、光ディスク20の表裏面には、記録層やディスク基板の保護のために、スピンコートしたUV樹脂を紫外線を照射して硬化させることにより形成した厚さ10μmの透明保護膜が形成され、中央部には、例えば、厚さ0.3mm、外径30mmで中心部に内径15mmの丸孔が形成された円形プレート20cが、その中心がシート20aの中心と一致するように取りつけられている。
【0034】
安定化部材30は、図1と、安定化部材30を下方から見た図である図3とを総合するとわかるように、例えば、中央に直径32mmの円形開口が形成された外径125mmの高さの低い円柱状部材であり、+Z側の面がハウジング10の天井面に固定され、−Z側の面は回転する光ディスクに対し空気力学的な力を作用させる凹面(以下、作用面ともいう)となっている。ここで、説明の便宜上図3に示されるように、安定化部材30の−Z側の面の中心oを原点とするxy座標系を定義する。
【0035】
安定化部材30の作用面は、その作用面の中心を通る母線がy軸に平行で、例えば曲率半径1000mmで湾曲しており、図3に示されるように、y軸から−x方向及び+x方向へ距離S(ここでは35mmとする)隔てたy軸に平行な2本の直線と、作用面の外周とによって規定される領域、すなわち図3において着色された領域が平坦部となっている。そして、y軸と15度の角度をなす直線Lと作用面の外周が重なる位置の近傍には、一対の肉盗み部30aが形成されている。この肉盗み部30aは、一例として、図4(A)及び図3における安定化部材30のAA’断面を示す図である図4(B)を総合するとわかるように、+Z側に窪んだすり鉢形状となっている。
【0036】
図1に戻り、スピンドルシャフト24は、円柱状の大径部と、該大径部の上端に設けられた小径部とを有する段付き円柱状の部材である。光ディスク20は円形プレート20cの丸孔にスピンドルシャフト24の小径部が挿入され、大径部の上面によって下方から支持されることにより、記録層を下面としてスピンドルシャフト24に装着されている。また、本実施形態では一例として光ディスク20は、該光ディスク20が平坦と仮定した時の記録面と、安定化部材30の安定化面の平坦部との距離が150μmとなるようにスピンドルシャフト24に装着されているものとする。
【0037】
モータ22は、回転軸22aを駆動することによりスピンドルシャフト24を介して光ディスク20を、例えば約4000〜14000rpmの範囲内で回転させる。光ディスク20の回転数などは、不図示の制御装置により制御される。
【0038】
ピックアップ26は、光ディスク20の下方(−Z側)に配置され、光源、対物レンズを含む光学系、受光素子などを含む周知の構成のものが用いられている。ピックアップ26は、モータ22により回転される光ディスク20の記録面にレーザ光を集光するとともに、記録面からの反射光を受光して光ディスク20からの情報の読み取り(再生)、及び光ディスクに対する情報の書き込み(記録)などを行う。このピックアップ26は、不図示のピックアップ駆動装置によって光ディスク20の半径に沿ってY軸方向に駆動される。
【0039】
次に、上述のように構成されたディスク装置100により、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なった場合の安定化部材30の作用について説明する。光ディスク20が回転すると、光ディスク20にはその回転により発生する遠心力により水平な状態になろうとする復元力と、光ディスク20の面形状に起因して、上下面にそれぞれ作用する圧力の差による反発力が発生する。安定化部材30は、光ディスク20に対し空気力学的な力を作用させ、光ディスク20に生じる復元力と反発力のつりあいをとることにより、いわゆる光ディスク20の面ぶれ(ディスク20の回転方向の振れ)を低減するものである。
【0040】
発明者等は、上述した一対の肉盗み部30aが形成された安定化部材30と、肉盗み部が形成されていない安定化部材(以下、便宜上安定化部材30’と表すものとする)を用いて光ディスク20の安定化実験を行なった。安定化実験は、図5(A)に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させた状態で、光ディスク20の外周の−Y側端の点P2と、点P2から外周に沿って−30度及び+30度の位置にある点P1及びP3とにより規定される中心角60度の円周上の各位置で観測される、光ディスク20の面ぶれにより生じるZ軸方向の振幅を計測するものである。
【0041】
まず、図1における安定化部材30を安定化部材30’に交換し、光ディスク20をモータ22を介して所定の回転数で回転させたときに、ディスク20の外周部に生じる面ぶれによる振幅を計測した。この場合、点P2の光ディスク20の回転方向下流側(P1側)の位置近傍では、光ディスク20に対し安定化部材30’から離れる方向の力が作用する。したがって、この離れた部分には安定化部材30’が十分に作用せず、ディスク20の外周部の面ぶれ特性は図5(B)に一点鎖線で示される曲線のようになった。
【0042】
この面ぶれ特性から、点P2の回転方向下流側近傍でディスク20の面ぶれが局部的に増加し、安定化部材30’はその機能を果たさなくなっていることがわかる。このような現象は、光ディスク20の回転数がさほど速くない4000rpm付近で確認され、回転数が10000rpmを越える高速域になるとその影響は顕著となる。そこで、この現象に関して鋭意検討を重ねた結果、光ディスク20が所定の回転数以上で回転することにより生じる、光ディスク20を安定化部材から引き離す方向に作用する力を抑制することが肝要であるという結論に至った。
【0043】
この結論から導かれた具体的な方法として採用されたのが上述した安定化部材30である。安定化部材30を用いた安定化実験でも同様に、図5(A)に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させ、光ディスク20の外周に沿った点P1、P2、P3で規定される円周上の各位置における、光ディスク20の面ぶれによるZ軸方向の振幅を計測した。安定化部材30は、上述したようにy軸と作用面の外周が交わる点から時計回りに15度の位置近傍に一対の肉盗み部30aが形成されている。このため、安定化部材30’の安定化実験のときに、点P2近傍の回転方向下流側に生じた光ディスク20を引き剥がす方向に働く力が緩和され、ディスク20の外周部の面ぶれ特性は図5(B)に実線で示される曲線のようになった。この結果から、安定化部材30を用いると、面ぶれ特性は図5(B)中に一点鎖線で示される曲線に比べて全体的に平坦となり、特に点P2の回転方向下流側近傍の面ぶれが著しく改善されているのがわかる。
【0044】
また、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、光ディスク20の中心から−y方向へ25mm隔てた位置にある点P4、40mm隔てた位置にある点P5、58mm隔てた位置にある点P6で観測される光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測した。次表1は、安定化部材30’を用いたときの測定結果を示したものであり、次表2は、安定化部材30を用いたときの測定結果を示したものである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1に示されるように、安定化部材30’を用いた場合には、点P4及び点P5で観測される振幅は、いずれの回転数においても10μm以内に抑えられているが、点P6で観測される振幅は15μmを越えて急激に増大しているのがわかる。一方、安定化部材30を用いた場合には、表2に示されるように、点P4、P5及びP6で観測される振幅は、いずれの回転数においても10μm以内に抑えられているのがわかる。
【0048】
したがって、従来から用いられている安定化部材30’と比較して、本実施形態にかかる安定化部材30を用いると、光ディスク20に生じる、ピックアップ26の動線(図2の矢印a、a’で示されるピックアップ26が移動する経路を示す線)近傍の面ぶれを著しく低減することができることがわかる。
【0049】
以上説明したように、本第1の実施形態にかかるディスク装置100によると、スピンドルシャフト24に保持された光ディスク20は、モータ22により所定の回転数で回転され、ピックアップ26によって記録層20bに情報の記録又は再生が行なわれる際には、安定化部材30により、光ディスク20の記録層20bが形成された、例えば半径25mmから半径58mmまでの領域の面ぶれが効果的に抑制され、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、本第1の実施形態では、安定化部材30に一対の肉盗み部30aが形成されている場合について説明したが、これに限らず、肉盗み部30aに代えて図6(A)に示されるように、排気口30bが設けられた安定化部材30Aを用いてもよい。この安定化部材30Aに形成された排気口30bは、図6(A)と図6(A)におけるAA’断面を示す図である図6(B)を総合するとわかるように、安定化部材30Aの一側から他側へ抜ける貫通孔である。
【0051】
この安定化部材30Aを用いて上述した安定化実験を行なったところ、次表3に示されるような測定結果が得られた。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示された結果から、安定化部材30Aを用いた場合にも、点P4〜P5において観測される面ぶれによる振幅を10μm以下に抑えることができ、肉盗み部30aを設けた場合と同様に、光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度を向上を図ることが可能であることがわかる。
【0054】
また、安定化部材30に代えて、その作用面が図7(A)に示されるように、y軸から+x方向へ距離S隔てたy軸に平行な2本の直線と、x軸から+y方向へ距離S隔てたx軸に平行な2本の直線とによって規定された領域、すなわち図7(A)において着色された領域が平坦部になっており、xZ断面が光ディスク20に対し凹形状で、yZ断面が図7(B)に示されるように、光ディスク20に対して凸形状となっている安定化部材30Bを用いてもよい。この場合安定化部材30Bの作用面は複雑な3次元曲面となるが、安定化部材30Bの作用面の形状を決める主要な要素、例えば、xZ断面の凹形状の曲線部分の曲率半径は1000mmであり、図7(B)に示される凸形状の曲線部分の曲率半径は3000mmである。
【0055】
この安定化部材30Bを用いて上述した安定化実験を行なったところ、次表4に示されるような計測結果が得られた。
【0056】
【表4】
【0057】
表4に示された結果から、安定化部材30Bを用いた場合にも、点P4〜P5において観測される面ぶれによる振幅を10μm以下に抑えることができ、同様に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の向上を図ることが可能となることがわかる。
【0058】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図8〜図10に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0059】
図8には、第2の実施形態に係るディスク装置100の概略構成が示されている。ディスク装置100は、図8に示されるように、回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、不図示の保持部材に着脱自在に保持されたディスクカートリッジ40、ディスクカートリッジ40に収納された光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0060】
ディスクカートリッジ40は、一例として、図8に示されるように、相互に係合するカバー42及びベース44と、カバー42とベース44とにより形成された内部空間に収容される安定化部材30、及び光ディスク20を備えている。
【0061】
カバー42は、平面視正方形板状で下面(−Z側の面)には、安定化部材30の上面が固定されている。
【0062】
ベース44は、図9に示されるように、正方形板状の部材で、上面中央には光ディスク20よりやや大きい円形の部分が下方(−Z方向)に窪んだ円形状の凹部44cが形成されている。この凹部44cの内部底面はXY面に平行で、長手方向をY軸方向とする鍵穴状のスロット45が形成されている。このスロット45は円形の開口部45aと長方形状の開口部45bが連通したような形状を有し、開口部45aはその中心が凹部44cの内部底面の中心と一致するように形成され、開口部45bは開口部45aの−Y側から凹部44cの内壁面まで延びるように形成されている。また、凹部44cの内壁面には、図9及びベース44の平面図である図10を総合するとわかるように、凹部44cの内壁面の+Y側端及び−Y側端の部分より図10における時計回りにそれぞれ約15度ずれた位置からベース44の外壁面に抜ける一対の排気通路44aが形成されている。該排気通路42は、例えば断面形状が縦2mmで横2mmの正方形状であり、Y軸と45度の角度をなすように形成されている。
【0063】
そして、ベース44は、図8に示されるように、カバー42の下面に固定された安定化部材30と、該安定化部材30の下方に配置された光ディスク20とが、凹部44cに収容された状態で、カバー42の下面に固定されている。
【0064】
このように構成されたディスクカートリッジ40は、ディスク装置100の保持部材(不図示)に装着されると、内部に収容された光ディスク20は、カートリッジ40の下方から、ベース42に形成されたスロット45の開口部45aを介して挿入されたスピンドルシャフト24に回動可能に支持されるとともに、ピックアップ26がスロット45の開口部45bを介して光ディスク20にアクセス可能な状態となる。制御装置は、モータ22を制御して光ディスクを所定の回転数で回転駆動し、ピックアップ駆動装置を介してピックアップ26をスロット45の開口部26bに沿ってY軸方向に移動させながら、光ディスク20の記録層に対し情報の再生又は記録を行なう。
【0065】
以上説明したように、本第2の実施形態にかかるディスクカートリッジ40によると、内部に収容された光ディスク20がモータ22により所定の回転数で回転されると、ディスクカートリッジ40のカバー40の下面に固定された安定化部材30により、光ディスク20の記録層20bが形成された領域(光ディスクの内周直径50mmから外周直径116mmまでの領域)の面ぶれが効果的に抑制される。
【0066】
また、一般に可撓性のあるディスクを閉鎖空間で回転させる場合には、ディスクの面ぶれが助長される傾向にあるが、ディスクカートリッジ40のベース44には、安定化部材30に形成された肉盗み部30aの近傍から外部空間にぬける排気通路44aが設けられている。このため、光ディスク20の回転によりベース44のスロット45などから進入した空気は、安定化部材30により光ディスク20に対し面ぶれを抑制する力を生じさせた後、排気通路44aから速やかに排出される。したがって、光ディスク20は、閉鎖空間であるディスクカートリッジ40の内部に収容されているにもかかわらず、安定化部材30の作用により面ぶれが効果的に抑制され、安定的に回転することが可能となっている。
【0067】
また、本第2の実施形態では安定化部材30に1対の肉盗み部30aが形成されている場合について説明したが、図6(A)に示されるように、肉盗み部30aに代えて排気口30bが形成された安定化部材30Aを用いてもよい。
【0068】
また、図7(A)に示されるように、着色された領域が平坦部になっており、x軸を含みyz面に垂直な面での断面が光ディスク20に対し凹形状で、y軸を含みyx面に垂直な面での断面が図7(B)に示されるように、光ディスク20に対して凸形状となった安定化部材30Bを用いてもよい。
【0069】
なお、上記各実施形態における安定化部材30の外径、及び作用面の曲率半径の値は一例であり、ディスク装置100に用いられるディスクに応じて、最適な値とすることができる。例えば、ディスクの外径が小さくなればそれに応じて安定化部材30の外径も小さくすればよく、ディスク基板の厚さや材質が光ディスク20と異なるものを用いる場合には、例えば、実験やシミュレーションなどにより最適な安定化部材の形状を決定すればよい。
【0070】
また、安定化部材としては、例えばプラスティックの射出整形や、金属板を板金加工することにより製造することができる。
【0071】
また、上記各実施形態では安定化部材30が、光ディスク20の上方に配置されている場合について説明したが、これに限らず、下方に配置されていてもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、光ディスク20の一側に設けられた安定化部材30のみによって、光ディスク20の面ぶれを抑制したが、これに限らず、安定化部材30に加えて、図11(A)及び図11(B)に示されるように、光ディスク20の他側に、肉盗み部30aなどを除いて、安定化部材30の作用面を反転させた形状の作用面を有する補助安定化部材32を配置してもよい。
【0073】
また、上記各実施形態では、光ディスク20をディスクカートリッジ40に収納させた場合に、光ディスク20が収容された空間から、外部空間に通じる排気通路44aを設けることとしたが、これに限らず、ディスクカートリッジ40を用いない場合であっても、ドライブ装置100の閉鎖空間内で光ディスク20を回転駆動する場合には、該閉鎖空間から外部空間へ通じる排気通路を設けることで、空気の乱流による面ぶれの助長を抑制することができる。また、光ディスク20を囲む閉鎖空間としては、例えば、光ディスク20の外周に沿った円筒状の内壁面により規定される空間であることが望ましい。
【0074】
また、上記各実施形態では、ディスク装置100が1つのピックアップ26を備えている場合について説明したが、これに限らず、例えば、ピックアップ26の他に、スピンドルシャフト24を挟んで他のピックアップを配置してもよい。このようにすれば、ディスク装置100で、例えば2つのピックアップを用いた転送レートの高速化が図れるようになる。
【0075】
また、上記各実施形態では、一対の肉盗み部30a及び排気口30bがそれぞれ設けられている場合について説明したが、これに限らず、ピックアップ26近傍にのみ肉盗み部30a又は排気口30bが形成されていてもよい。要は、ピックアップ26近傍に生じる光ディスク20の面ぶれを抑制し、ピックアップ26が精度よく記録層にアクセスできればよい。
【0076】
また、上記各実施形態では、安定化部材30により可撓性のある光ディスクを安定化する場合について説明したが、これに限らず、例えば、磁気ディスクや光磁気ディスクなどの可撓性を有するディスクにも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明のディスク装置100は、可撓性のあるディスクに対し、情報の再生及び記録を行なうのに適しており、本発明のディスクカートリッジ40は、可撓性のあるディスクを収納するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるディスク装置100の概略的な構成を示す図である。
【図2】図1における光ディスク20を説明するための図である。
【図3】図1における安定化部材30を示す平面図である。
【図4】図4(A)は安定化部材30の側面図であり、図4(B)は安定化部材の断面図である。
【図5】図5(A)は光ディスク20の面ぶれの計測位置を示す図であり、図5(B)は光ディスク20の面ぶれ特性を示す図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、安定化部材30の第1の変形例を示す図である。
【図7】図7(A)及び図7(B)は、安定化部材30の第2の変形例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかるディスク装置100の概略的な構成を示す図である。
【図9】図1におけるディスクカートリッジ40のベース44を示す斜視図である。
【図10】図1におけるディスクカートリッジ40のベース44を示す平面図である。
【図11】図11(A)は第1の実施形態にかかるディスク装置100の変形例を示す図であり、図11(B)は第2の実施形態にかかるディスク装置100の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
20…光ディスク、26…ピックアップ、30,30A,30B…安定化部材、10…本体(ハウジング)、20a…シート、20b…領域(記録層)、24…スピンドルシャフト、22…モータ、22a…回転軸、32…補助安定化部材、40…ディスクカートリッジ、42…カバー、44…ベース、44a…排気通路、44c…凹部、45…スロット、45a,45b…開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
前記肉盗み部は排気口であることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記安定化部材の外周には、前記ディスクを包囲する側壁部が設けられ、該側壁部は、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3に記載のディスク装置。
【請求項5】
可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項6】
可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項7】
前記肉盗み部は排気口であることを特徴とする請求項6に記載のディスクカートリッジ。
【請求項8】
前記ケーシングは、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることを特徴とする請求項5〜7に記載のディスクカートリッジ。
【請求項9】
前記ケーシングは、前記ディスクを包囲する円筒状の側壁部を有することを特徴とする請求項5〜8に記載のディスクカートリッジ。
【請求項1】
可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
可撓性を有するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対して情報の記録又は再生のいずれかを行う際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
前記肉盗み部は排気口であることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記安定化部材の外周には、前記ディスクを包囲する側壁部が設けられ、該側壁部は、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3に記載のディスク装置。
【請求項5】
可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸と前記ヘッドの移動経路を含む第1面での断面が前記ディスクに対し凸形状であり、前記ディスクの回転軸を含み前記第1面に垂直な第2面での断面が前記ディスクに対し凹形状であることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項6】
可撓性を有するディスクを回動可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に沿ってヘッドを相対移動しつつ情報の記録又は再生のいずれかを行なう際に前記ディスクの回転を安定化する安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材は、前記ディスクの回転軸を含み、前記ヘッドの移動経路に垂直な面での断面が前記ディスクに対し凹形状であり、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する部分に肉盗み部が形成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項7】
前記肉盗み部は排気口であることを特徴とする請求項6に記載のディスクカートリッジ。
【請求項8】
前記ケーシングは、ディスク上の、少なくともヘッドの下流側かつ外周部近傍の領域に対応する位置に通孔部が形成されていることを特徴とする請求項5〜7に記載のディスクカートリッジ。
【請求項9】
前記ケーシングは、前記ディスクを包囲する円筒状の側壁部を有することを特徴とする請求項5〜8に記載のディスクカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−80336(P2007−80336A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264991(P2005−264991)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(503391577)長太郎エンジニアリング株式会社 (16)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(503391577)長太郎エンジニアリング株式会社 (16)
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