説明

ディスク装置

【課題】ディスクにおける記録面がピックアップに当ってしまう障害を有効に防止できるディスク装置を提供する。
【解決手段】ターンテーブル用シャーシ20の裏面側にピックアップ用シャーシ40を配置し、ピックアップ30をターンテーブル用シャーシ20の表面に突出させ、ピックアップ30をディスクに対して非接触状態で走査するディスク装置において、ターンテーブル用シャーシ20におけるディスクの非記録面に対向する位置に開口部を形成し、ピックアップ用シャーシ40に受け部50を設け、この受け部50を、開口部を通してターンテーブル用シャーシ20の表面に突出させ、ディスクの傾きを非記録面において受け部50が受けて阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンテーブルに装着されているディスクに対してピックアップを非接触状態で径方向に移動させ、該ディスクの記録面を走査するディスク装置に係り、ディスクの記録面がピックアップに当たって損傷してしまうことを防止するディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置としては、例えば、レーザービームを用いた光学的な記録または再生を行うものが広く普及している。記録媒体としてのディスクは、高速に回転するターンテーブルに装着されている。ディスク装置は、高速回転するディスクに対し非接触状態で配置されたピックアップを有し、このピックアップをディスクの径方向に移動して記録面の走査を行うものである。
【0003】
この種のディスク装置は、ディスクが回転軸方向に強い衝撃を受けると傾くことがある。このようにディスクが傾くと記録面がカバーや本体シャーシに取り付けたベースに接して記録面が破損し、記録面に記録されたデータが破壊されてしまう。
【0004】
そこで、従来においては、例えば、下記の特許文献1(特開平10−106248号公報)で示す技術が提案されている。この従来技術は、本体に対して摺動するディスク装着用のトレーを設けたディスク装置において、ディスクの情報記録面を保護するものである。具体的には、ディスクが傾くと最外周にある未記録領域に摺接する凸部をトレー上に設けたものである。このようにして、ディスクが傾いてベースに当たる前に凸部に当接させてそれ以上に傾かないように規制し、記録面の破損を防止している。
【0005】
また、他の従来のディスク装置においては、ターンテーブルを取り付けたターンテーブル用シャーシと、ピックアップを取り付けたピックアップ用シャーシとが一体に組み付けられて構成されているものがある。ピックアップ用シャーシはターンテーブル用シャーシの裏面に配されている。そして、ピックアップ用シャーシに取り付けられたピックアップはターンテーブル用シャーシに形成した開口部に臨まされている。
【0006】
そこで、上記他の従来技術のディスク装置は、ディスクの最外周にある非記録面に対向するターンテーブル用シャーシ上に前記凸部を設け、ディスクが傾いてもピックアップに当たらないようにしている。
【特許文献1】特開平10−106248号公報(段落[0078]〜、段落[0081]、段落[0088])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術においては、ピックアップを取り付けたシャーシ、トレーなどはターンテーブル用シャーシと独立にディスク装置に組み込まれていた。そのため、トレーやターンテーブル用シャーシに設けられた凸部は、ピックアップに対する位置が組み立て誤差、部品のばらつき、各部材の経年変化などにより設計値と大きく相違することがある。従って、凸部のディスクに当接する位置が大きく後退して、ディスクの傾きを規制することが不可能になることがある。
【0008】
このようなディスク装置においては、衝撃などによってディスクが傾きピックアップに当たってしまうので、記録面が破損することを防止できないという問題点があった。そこで、凸部を十分に突出させてディスクの傾きを積極的に阻止しようとすると、ディスクが正常に回転している状態で凸部に接触してしまい、記録または再生が不可能になってしまう。
【0009】
特に、ディスク装置が薄型化されている現状では、ピックアップとディスクとの距離が小さくなっているため、別部材であるターンテーブル用シャーシとピックアップ用シャーシとの位置関係を最良な状態に調整して組み込むことは極めて困難なことであった。
【0010】
そこで、本発明は、上述したような従来の問題点を解消してディスクにおける記録面の保護を効果的に行うことができるディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、ターンテーブル用シャーシの裏面側にピックアップ用シャーシを配置し、該ピックアップ用シャーシに設けられたピックアップを該ターンテーブル用シャーシの表面に突出させ、該ピックアップを該ターンテーブル用シャーシに設けられたターンテーブルに装着されているディスクに対して非接触状態で径方向に移動させて該ディスクの記録面を走査するディスク装置において、
前記ターンテーブル用シャーシにおける前記ディスクの最外周の非記録面に対向する位置に形成した開口部(例えば、開口部203、204)と、
前記開口部を通して前記ターンテーブル用シャーシの表面に突出し、この突出した位置で前記ディスクの非記録面に対向した受け面を有する前記ピックアップ用シャーシに設けられた受け部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明においては、請求項1に係るディスク装置において、前記受け部は、前記ピックアップに対し前記ディスクの回転方向に沿って上流側と下流側に配置したことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項3に係る発明においては、請求項1または請求項2に係るディスク装置において、前記受け部は、前記ピックアップ用シャーシと同一材料によって一体成型によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述した解決手段により以下に述べる通りの優れた効果を奏する。即ち、本願の請求項1に係る発明によれば、前記ディスクが前記ピックアップに異常に接近したときに、前記ピックアップ用シャーシに設けた前記受け部の受け面で前期ディスクの非記録面を受けるようにしたので、前記ディスクが前記ピックアップの上面に当たることがない。しかも、前記ピックアップと前記受け部とは直接に一体化されているので、前記ピックアップの位置と前記受け面の位置との関係は、組み立て誤差、部品のバラつきなどの影響を受けない。
【0015】
そのため、特に多量生産において、前記ピックアップの位置と前記受け面の位置との関係にバラつきをなくし、前記ディスクの傾きによる前期ピックアップに当接する事故を確実に防止できるディスク装置を提供できる。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、請求項1に係るディスク装置において、前記ピックアップに対する前記ディスクの回転方向の前後において、前記受け部が前記ディスクを受けるように配置されているので、前記ディスクが傾いても記録面の前記ピックアップの上面への当接を確実に防止できる。
【0017】
また、本願の請求項3に係る発明によれば、請求項1または請求項2に係るディスク装置において、前記受け部は、前記ピックアップ用シャーシと同一材料によって一体成型によって形成されるものであるから、前記ピックアップに対する位置が正確な前記受け部を簡単に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのディスク装置を例示するものであって、本発明をこの実施例のディスク装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のディスク装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例におけるディスク装置の要部を示す斜視図、図2は図1におけるターンテーブル用シャーシを示す斜視図、図3は図1におけるピックアップ用シャーシを示す斜視図、図4は本発明の実施例における受け部とディスクとの関係を示す側面図である。
【0020】
図1で示すように、ディスク装置の要部1は、ターンテーブル10を取付けたターンテーブル用シャーシ20と、ピックアップ30を取付けたピックアップ用シャーシ40とが一体に組み付けられて構成されている。ターンテーブル用シャーシ20は、合成樹脂製のシャーシ201と金属製のフレーム202とを一体に組みつけられて構成されている。一方、ピックアップ用シャーシ40は合成樹脂の材料を成型することによって形成されている。
【0021】
ターンテーブル用シャーシ20とピックアップ用シャーシ40との組み付けは、ターンテーブル用シャーシ20の裏面にピックアップ用シャーシ40を配してかしめとネジ止めによって行われている。
【0022】
ターンテーブル用シャーシ20とピックアップ用シャーシ40とが組み付けられて構成された要部1は、ディスク装置の基体(図示せず)に取り付けられている。ターンテーブル10には、ディスクを密着して装着するための装着面101が設けられている。また、ターンテーブル10にはディスクを回転させるためのモータ(図示せず)が連結されている。
【0023】
ターンテーブル用シャーシ20には、ターンテーブルに10に装着されたディスクの半径方向に、ターンテーブル10に隣接した位置からディスクの外周縁に対向する位置まで大きく開口した開口部203が形成されている。また、ターンテーブル用シャーシ20の開口部203に隣接したディスクの外周縁に対向する位置に小さな開口部204が形成されている。
【0024】
ピックアップ30は、基部301と、対物レンズ302と、基部301の上面に設けた対物レンズ302を保護するためのプレート303と、基部301の一辺に形成したネジ孔304と、基部301の他辺に形成したガイド溝305とから構成されている。
【0025】
ピックアップ用シャーシ40側には、ネジ孔304に螺合するリ−ドスクリュー306と、ガイド溝305に遊嵌するガイドシャフト307と、リードスクリュー306に連結されたピックアップ駆動用モータ308とが備えられている。
【0026】
基部301は、ピックアップ用シャーシ40に対しリードスクリュー306の回転によって直線的に移動される。この移動動作はガイドシャフト307によってピックアップ用シャーシ40の面に対し平行にガイドされる。
【0027】
ピックアップ用シャーシ40におけるディスクの外周縁に対向する位置には、受け部50が設けられている。この受け部50は2箇所に設けられており、一方の設置箇所は開口部203の端に、他方の設置箇所は開口部204に対応する位置である。また、これらの受け部50の位置は、ピックアップ30に対してディスクの回転方向に沿って上流側と下流側にある。
【0028】
ターンテーブル用シャーシ20とピックアップ用シャーシ40との組み付けは、先に述べたように、ターンテーブル用シャーシ20の裏面にピックアップ用シャーシ40を配してかしめとネジ止めによって行われている。このネジ止めにおいてはバネあるいは弾性座金(図示せず)を用いて行うように構成されており、バネあるいは弾性座金を用いてターンテーブル用シャーシ20に設けられたターンテーブル10とピックアップ用シャーシ40に設けられたピックアップ30との位置関係を調整して組み付ける。この時、受け部50はピックアップ用シャーシ40に同一材料によって一体成型によって形成されているから、ピックアップ30に対する受け部50の位置関係も同時に調整される。
【0029】
受け部50は、図4で詳しく示されているように、ピックアップ用シャーシ40と同一材料の合成樹脂によって一体成型によって形成されている。そして、受け部50の先端部分がターンテーブル用シャーシ20の表面から突出され、この先端部分にディスク60の最外周の非記録面601に対向する位置に形成された受け面501が設けられている。この受け面501は、図4(a)で詳しく示すように、ピックアップ30の上面と正常に装着されているディスク60の下面との間に位置されている。
【0030】
換言すれば、図4(a)で示すディスク60が正常な装着状態では、受け面501はディスク60の非記録面601から離れた位置にある。一方、図4(b)で示すようにディスク60が傾いた状態になると、ディスク60の記録面602がピックアップ30に当たる前に非記録面601が受け面501に当るようになっている。
【0031】
上述した本発明の実施例によるディスク装置の動作を説明する。ターンテーブル用シャーシ20とピックアップ用シャーシ40が組み付けられた状態で、受け部50の受け面501が開口部203、204を通してターンテーブル用シャーシ20の表面上に突出されている。図4(a)で示すように、ディスク60がターンテーブル10の装着面101に正確に装着されている場合には、ディスク60の非記録面601は受け面501から離れている。そして、ピックアップ30は回転しているディスク60の記録面602を走査する。また、トラックをアクセスする走査は、ピックアップ30がピックアップ駆動用モータ308によりディスク60の径方向に移動されることによって行われる。
【0032】
一方、対物レンズ302は記録または再生の開始と同時にディスク60の記録面602に対して接近して最適なフォーカス状態をとるように制御される。そして、対物レンズ302が記録面602と所定の間隔を置いて光学的な記録または再生を行う。
【0033】
この記録または再生中に、ディスク60が何らかの衝撃を受けて傾いてしまったときには、図4(b)に示すようにディスク60がピックアップ30に接近する。このディスク60の接近によって、記録面602がピックアップ30に当ろうとするが、その前に、ディスク60の非記録面601が受け部50の受け面501に当る。そのため、ディスク60の傾きは、記録面602がピックアップ30に当る前に阻止される。
【0034】
ディスク60は、衝撃を受けて傾くこともあるが、装着面101に正確に装着されない状態で回転されてしまう場合にも傾く。また、ディスク60が撓んでしまっている場合においても記録面602がピックアップ30に異常に接近してしまうことがある。これらの場合であっても、受け部50はディスク60がピックアップ40に当ることを阻止する。
【0035】
上述した本発明の実施例によれば、ディスク60が衝撃などを受けてピックアップ30に異常に接近したときに、ピックアップ用シャーシ20に設けた受け部50の受け面501でもってディスク60の非記録面601を受けるようにしたので、ディスク60がピックアップ30の上面に当たることがない。その結果、記録面602がピックアップ30によって損傷されることがない。特に、ディスク60の記録面602はピックアップ30上のプレート303に最も接近するが、受け部50がプレート303への当接を阻止する。
【0036】
ピックアップ30と受け部50とは、ピックアップ用シャーシ40に直接に設けられているので、組み立て誤差、部品のばらつきなどの影響を受けず、予定とおりの位置に配置される。特に、薄型のディスク装置においては、多くの調整作業を行うことなく、受け面501が突出し過ぎたり後退し過ぎたりせずに最適な状態に位置される。
【0037】
また、ピックアップ30に対するディスク60の回転方向の前後の接近した箇所には、夫々受け部50が配置されているので、ディスク60が傾いても記録面602のピックアップ30への当接を有効に防止できる。更に、受け部50は、合成樹脂を材料としてピックアップ用シャーシ40と一体に成型して形成するので、高精度のものを多量に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例におけるディスク装置の要部を示す斜視図である。
【図2】図1におけるターンテーブル用シャーシを示す斜視図である。
【図3】図1におけるピックアップ用シャーシを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例における受け部とディスクとの関係を示す側面図であり、図4(a)はディスクが正常な状態を示す図、図4(b)はディスクが何らかの要因により傾いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 要部
10 ターンテーブル
20 ターンテーブル用シャーシ
30 ピックアップ
40 ピックアップ用シャーシ
50 受け部
60 ディスク
101 装着面
201 シャーシ
202 フレーム
203 開口部
204 開口部
301 基部
302 対物レンズ
303 プレート
304 ネジ孔
305 ガイド溝
306 リードスクリュー
307 ガイドシャフト
308 ピックアップ駆動用モータ
501 受け面
601 非記録面
602 記録面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンテーブル用シャーシの裏面側にピックアップ用シャーシを配置し、該ピックアップ用シャーシに設けられたピックアップを該ターンテーブル用シャーシの表面に突出させ、該ピックアップを該ターンテーブル用シャーシに設けられたターンテーブルに装着されているディスクに対して非接触状態で径方向に移動させて該ディスクの記録面を走査するディスク装置において、
前記ターンテーブル用シャーシにおける前記ディスクの最外周の非記録面に対向する位置に形成した開口部と、
前記開口部を通して前記ターンテーブル用シャーシの表面に突出し、この突出した位置で前記ディスクの非記録面に対向した受け面を有する前記ピックアップ用シャーシに設けられた受け部と、を備えていることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記受け部は、前記ピックアップに対し前記ディスクの回転方向に沿って上流側と下流側に配置したことを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記受け部は、前記ピックアップ用シャーシと同一材料によって一体成型によって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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